こ う じ の う き の う し ょ う が い ・高次脳機能障害とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 こ う じ の う き の う し ょ う が い うたが ・高次脳機能障害が疑われるとき・・・・・・・・・・・・3 こ う ど う か ん じ ょ う し ょ う が い ・行動と感情の障害とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・4・5 し つ ご し ょ う ・失語症とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 ち ゅ う い し ょ う が い ・注意障害とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 き お く し ょ う が い ・記憶障害とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 は ん そ く く う か ん む し ・半側空間無視とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 す い こ う き の う し ょ う が い ・遂行機能障害とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 し っ こ う し ょ う ・失行症とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 は ん そ く し ん た い し つ し の ぶ ・半側身体失認とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 ち し て き し ょ う が い ・地誌的障害とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 し か く し つ に ん ・視覚失認とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 こ う じ の う き の う し ょ う が い そ う だ ん し え ん ・高次脳機能障害の相談支援について・・・・・・・15 1 1 こ う じ の う き の う しょうが い 高次脳機能障害とは? 病気や事故などの様々な原因で脳が部分的に損傷を受けたために、言語、思考、記憶、行為、 学習、注意等の知的な機能に障害が起きた状態を指します。注意力や集中力の低下、比較的古 い記憶は保たれているのに新しいことが覚えられない、感情や行動の抑制がきかなくなるなどの 精神・心理的症状が出現し、周囲の状況にあった適切な行動ができなくなり、生活に支障をきた すようになります。 高次脳機能障害の特徴 ① 外見上は障害が目立たない ② 本人自身も障害を十分に認識できていないことがある ③ 障害は、診察場面や入院生活よりも在宅での日常生活、特に社会活動場面(職場、学校、 買い物、役所や銀行の手続き、交通機関の利用など)で出現しやすいため、医療スタッフに 見落とされやすい 高次脳機能障害と間違えられやすい状態 きおくしょうがい もう ◆ せん妄: げんかく せん妄状態とは、軽い意識障害(注意力散漫な状態など)、幻覚 と落ち着きのなさを伴い、落ち着かずに歩き回ったり大声で泣い ちゅういしょうがい たり、怒鳴ったりする状態。高齢者では夜間に増悪することが多 い。 すいこうきのうしょうがい ◆ 認知症: 認知症とは、全般的に知的能力が低下し、日常生活に支障をき けんとう しき たすようになった状態。記憶障害、時間や場所に対する見当識 (認識)障害が認められるようになる。さらに、それまで行えてき た仕事を続けられなくなったり、興味があった趣味などに対する 関心も失われ 2 2 <引用>http://www.mie-reha.jp 高次脳機能障害が疑われるとき 主な症状 分類 気持ちが沈みがち こうどう 突然興奮したり、怒り出す かんじょう しょうがい 行動と感情の障害 気持ちが動揺する なめらかにしゃべれない しつごしょう 相手の話を理解できない 失語症 字の読み書きができない 作業にミスが多い ち ゅ う い しょうがい 注意障害 気が散りやすい 物の置き場所を忘れる き お く しょうがい 記憶障害 何度も同じ事を話したり質問する 片側を見落としやすい はんそく く う か ん む し 半側空間無視 片側にあるものにぶつかりやすい 行き当たりばったりの行動をする す い こ う き の う しょうがい 遂行機能障害 一つ一つ指示されないと行動できない 道具がうまく使えない し っ こうしょう 失行症 動作がぎこちなく、うまくできない 麻痺した手足がないように振る舞う は ん そ く し ん たい し つ に ん 麻痺がないように振る舞う 半側身体失認 麻痺がなくても片側の身体を使わない 自宅でトイレに迷う ち し て き しょうがい 地誌的障害 近所で道に迷う 物の形(色)が分からない し か く しつにんしょう 視覚失認症 人の顔が分からない、見分けられない 3 3 行動と感情の障害とは? 行動と感情の障害とは、事故などの脳損傷の後にみられることがあります。 日常生活での現れ方 うつ状態: ・ よく ひあい 抑うつ的、悲哀的、希望のない感じ、気落ちした、ふさぎこんだ気分などが比較的持続する状態。 やる気がでない、横になっていたい、仕事や家事が思うようにできない、趣味に興味がなくなったな どの意欲低下。 ・ いらいら・不安・あせりといった不安状態もよくみられる。 ・ 食欲の減退と体重減尐、不眠、体のことをくよくよと考えてしまいがちになる。 ・ すぐに疲れやすく、体がだるいと倦怠感を訴える。 ・ 頭の回転が鈍り、一見認知症のように見える。 ・ 自己を過小評価し、自身を失い、悲観的となり、自分を責める状態が続く。 げんたい けんたいかん にぶり ひかんてき そう 躁状態: くうきょ ・ 多幸と呼ぶべき、空虚で上っ調子な機嫌の良さが見られる。 ・ 自分の置かれている状態に対して洞察・現実見当識を欠く。 無感情: ・ 自己の周囲への変化への感情の動きが乏しくなり、外界からの刺激に対して無関心になる。 じょうどう 過剰情動反応: ・ こうしん けっぺき 情動反応が昂進し、極端に不正に潔癖になったりする。 情動不安定: ・ 感情の変化が不安定で、簡単に泣いたり笑ったりする。 ・ 感情を抑えることができない場合を感情失禁と呼ぶ。 かんじょう し っ き ん 不安: ・ 不安が増大し、落ち着かなくなることがある。 意欲低下: ・ やる気や意欲が低下して、自発的な行動がとれないことがある。 4 4 日常生活への援助 1.家族の心がけとして ・ 一人で抱え込まないで主治医や看護師、リハビリスタッフ、福祉の相談窓口などに相談する。 ・ あきらめないで困ったことをはっきり訴える。 ・ 治療や訓練については目的や期間をはっきり尋ねる。 ・ 相談するところ、人を頼むところ、通所するところ、訓練を受けるところなどを利用したい所や利用 方法を知っておく。 ・ 同じような障害を持った人との交流や、情報交換も一つの方法。 2.困った行動への対応 感情の起伏が激しくコントロールできない場合・・・ ・ 感情が爆発しているときはどうなだめても冷静に聞くことができないため、周囲のものが席を外した り、話題を変えたりして、爆発が収まるのを待つ。 ・ 爆発が収まった後、状況をともに振り返り自己認識を促す。 自分から何かやろうとしない場合・・・ ・ 生活上、職業上必須のことがあれば声掛けをする。 ・ よわよわしい表現があっても自分から何か始めた時は、もっと先へ進ませたい気持ちを抑え、今で きること、今楽しいことをじっくりやらせてあげる。 しばしば不安がり、ときにはパニックを起こす場合・・・ ・ 不安状態にあるところに新しい事態や環境の変化が加わると緊張や不安が高まり、極度に高まる とパニックが起きる。よくなじんだ環境を整え、安心できるよう周りの人にも協力してもらう。 人への攻撃が激しくなる場合・・・ ・ 周囲の人が一致した状態でのぞみ、公平で一貫性のある対応を心掛ける。 5 5 失語症とは? 失語症とは、脳の病気(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など)により聞く・話す・読む・書くと言った言 語に関係する機能に障害が認められる状態です。どこか外国旅行に行った時のことを想像してもらうと わかりやすいと思います。現地の人の話が理解できませんし、自分でも意思を伝えることができません。 読み書きもできませんので、コミュニケーションがとても不自由となります。 失語症には、言葉の症状の組み合わせによって、いくつかのタイプがあります。大きく分けると、二 つに分けられます。①運動性失語:聞いたり読んだりして理解する能力は比較的良いが、話すことに強 い障害がある。②感覚性失語:聞いて理解する能力の障害が強く、言葉の言い 誤りが多い。 日常生活での現れ方 ・ 話し方がたどたどしくぎこちなくなったり、ものの名前が出づらかったりする。 ・ こちらの話しがうまく通じなかったりする。 ・ 言い間違いや、こちらの理解できない言葉を話す場合がある。 ・ 字を読んだり、書いたり、計算をすることがうまくできなくなる。 日常生活での援助 1.滑らかにしゃべれない(運動性失語)の人に対して ・ まず、慌てずに尐し様子を見る ・ 言いたい言葉がなかなか見つからない場合で言えそうな時は、先回りして言ってしまわない。 ・ 逆になかなか言えそうにない時は、「はい」「いいえ」で答えられるように質問を工夫する。 ・ 発話以外の表情、身振り、指差しなどから、伝えたい意図を判断する。 2.相手の話を理解できない(感覚性失語症)の人に対して ・ 大声で話す必要はなく、短い簡単な文でゆっくりと話しかける。 ・ 言葉だけに頼らず絵や ジェスチャーを使い、一つ一つゆっくりと話しかける。 ・ うなずきや首振りの信頼性が不十分なこともあるので、重要な事柄はうまく伝わったかどうかを確 認する。 6 6 注意障害とは? 注意障害とは、いくつかある刺激の中から、 特定の物や事柄などにうまく注意が向けられない(注意 選択の障害)、 注意を集中し続けることができない(注意集中困難・注意の持続の障害)、 注意がそ れやすく、脱線して関係のない刺激へと引き込まれやすい(注意転導性の亢進)などの症状が見られ ます。これとは反対に、やや複雑な注意の機能として、 一つの刺激から他の刺激に注意を切り替える ことができない(注意転換の障害・注意の固着)、 又は二つ以上の刺激に同時に注意を配っているこ とができない(注意分配の障害)といった症状も見られます。 日常生活での現れ方 ・ 車椅子で棟内を歩き回り、他の部屋に入っていく。 ・ エレベータのドアが開くとすぐに乗り込んでしまう。 ・ ぼんやりしているおり、指示を間違えるなどの不注意のミスが多くなる。 ・ 気が散り、疲れやすく、作業が長続きしないことがある。 ・ 多数の中から注意して必要なことを選ぶことが難しくなる。 ・ 同時に複数のことに注意を配ったりすることが困難なため、混乱が生じることがある。 日常生活への援助 ・ 課題を完成するまでゆっくり時間を与える。 ・ わかりやすい環境に整えていく。 ・ 環境刺激を尐なくする。(戸を閉めたり、人を尐なくしたり) ・ 情報量が多い時は、重要な場所に線を引いたりする。 ・ 話のまとまりがなくなってきたら、話を戻すようにする。 ・ 注意を持続できるよう、声かけ、メモを活用して注意を促す。 7 7 記憶障害とは? 記憶とは情報をある一定時間保つ働きのことをいいます。記憶は①短期記憶、②長期記憶、に区別 されます。 ①短期記憶 一時的に情報を保ち意識的に操作することができる記憶です。 この記憶内に情報が保持される時間は 20 秒程度です。その後、情報は消えてしまいます。例えば、電 話をかけるために電話帳を見て、電話番号を一時的に覚えておく程度の短いものです。 ②長期記憶 何日も何年にもわたって情報を貯蔵するものです。 てつづき 意味記憶、エピソード記憶、手続記憶に分けられます。意味記憶とはいわゆる知識的な情報に関する 記憶で『日本の首都は東京である』などで、いつでもどこでも誰でも共通して持っている類の記憶です。 エピソード記憶は『先週家族と旅行に出かけた』などの日常生活の出来事に関する記憶のことです。手 続記憶とは自転車の乗り方など、体で覚えている記憶をいいます。 これらの各記憶は個別に障害されることがあります。エピソード記憶(日常生活の出来事の記憶)が けんぼうしょう 障害され、その症状が意識障害や認知症などの他の障害によって生じたものでない場合は、健忘症と き めいりょく 呼びます。健忘症は、新しいことを覚えて学習することができない(記銘力障害)が特徴です。 日常生活での現れ方 ・ ついさっき言ったことを覚えていない。 ・ 以前に起きた出来事を思い出せない。または曖昧にしか思い出せない。 ・ 今日の年月日や自分の今いる場所がよくわからない。 ・ 実際とは違うことを話す。何度も同じことを言う。または尋ねる。 あいまい 日常生活への援助 ・ メモ帳や日記、アラームなどを利用して記憶を補助する。 ・ 覚えておかなければならないことを壁に貼っておき、目印(手がかり)にする。 ・ 分かりやすく工夫をした図や字を用いて工程表を作る。 ・ 障害のある人をできるだけ傷つけないように、周囲の人や本人の生活を守るために、ご家族や周 囲の人が障害のある人のつらさに共感して接することが重要となる。 8 8 半側空間無視とは? 半側空間無視とは片側の刺激に気付かない、または反応しない症状を指します。通常は右大脳半 球の損傷によっておこる左半側空間無視であることが多いです。半側空間無視がなぜ起こるのかにつ いては、現在二つの考え方が有力です。①注意の障害のために一方の空間に注意を向けることが出 来ないという考え方です。②例えば花の絵を見たとき、人間の心の中にはそれを想い浮かべられるシ ひょうしょう ステム(表 象 )が存在するといわれていますが、その過程において想い浮かべられる花が半分になっ てしまい、結果その花を半分にしか捉えられないのだという考え方です。 日常生活での現れ方 (左半側空間無視の場合・・・) ・ 食事の際、皿の左半分を食べ残す。 ・ 歩いていて、左側の壁にぶつかる。 ・ ベッドと車椅子の移乗の際に、左側のブレーキをかけることやフットプレートを上げることを忘れる。 ・ 常に顔が右に向いている。 ・ 横書きの本を読むときに、左側のページを読まなかったり、行によっては最初の数文字(左側)を省 略して読んでしまう。 日常生活への援助 ・ 横書きの文章を読むときには、左側に目印となるような赤い線を引いておき、注意がそこにつなぎ とめられるようにする。 ・ 患者さんの動作や行動をビデオに撮って見せることで、自分の間違いを理解してもらい修正する。 ・ 歩行の際には床にテープを貼って、その上を歩いてもらう。 ・ 更衣では左袖が見つけられないので、目印となるリボンなどを付ける。 ・ 食事の際、おかずの盛られた皿の数を食べる前に数えることや、丸いお盆の 上に皿を配膳して、食べ終わったらぐるりと回してみる。 ・ 無視側である左側に一定の間隔でアラームが鳴るような装置を設置し、日常 生活の中で、そのアラームを消すために左側に注意を向ける。 ・ 車椅子からベッドに移乗する際に、自分の行動を言語化し、つまりブレーキをかける際には必ず 「ブレーキ左右」と言いながら行うようにする。 9 9 遂行機能障害とは? 遂行機能障害とは、日常生活場面で何らかの問題に遭遇した際、それを解決していくために必要な 一連の認知・行動機能の障害です。言い換えると、目的に合った形で自分の行動を自律的に行ってい く能力であり、「問題解決能力」のような概念です。 遂行機能には具体的に①目標の設定、②プランニング(計画)、③計画の実行、④順序立った効果 的な行動という、4つの要素が含まれると考えられます。例えば「レシピを考えて材料を買い物し、調理 をする。」等、日常生活で何気なく行っているものも一連の機能に当てはまります。 ぜんとう よ う 遂行機能は、脳の前方部(前頭葉機能)との関連が重視されています。前頭葉 は人間において最も発達しており、他の高次機能のコントロールを受け持つ部分 です。前頭葉が損傷を受けると、遂行機能が目立って障害されます。前頭葉の損 傷は、脳血管障害(出血や梗塞)や交通事故による脳外傷においてしばしば現れ ます。日常よく見られるのは、クモ膜下出血や交通事故による後遺症です。 日常生活での現れ方 ・ 思いついたことを何も考えずに行動する。 ・ 自分の問題点がよく分からず、将来についても現実的ではない。 ・ 人前で他人が困るようなことを言ったりやったりする。 ・ すべきでないと分かっていても、ついやってしまう。 ・ 実際になかったことを本当にあったかのように思い、人にその話をする。 ・ 何かをやり始めたり話し始めたりすると、何度も繰り返してしまう。 ・ 物事を決断できなかったり、何をしたいのかを決められなかったりする。 ・ 物事に夢中になり過ぎて、度を越えてしまう。 日常生活への援助 ・ 患者さんに対して、曖昧な指示は避け、具体的かつ要領を得た言葉で指示する。 ・ 具体的な行動が目に見えるように、指示は書き出しておく。 ・ 混乱して修正が出来なくなったら、作業を中止し、他の人の指示を仰ぐ。 ・ 頻繁に立ち止まり、その都度確認させる。 ・ いつ・どこで・誰が・何を・どのように行うか、その結果がどうなるのか、見通しを明確に伝える。 10 10 失行症とは? 失行症とは、ある運動や動作や行為に関して、指示された内容が分かっていて、その運動や動作や 行為をやろうという意欲があるにもかかわらず、指示された簡単な動作を誤って行ったり、手渡された 物品(道具など)を誤って扱ってしまったりする状態が見られるようになります。 ◆失行症の分類 かんねんうんどうしっ こ う ① 観念運動失行:物品を使用しない単純な運動や習慣的動作(例;バイバイ、敬礼など)、また一つの も ほ う 物品を対象とする動作や行為(例;かなづちやはさみの使用など)が口頭指示、模倣(まねをするこ と)、そして実際に物品を与えられた条件下で障害されている状態。 かんねんしっ こ う ② 観念失行:物品を用いる一連の動作や行為(例;お茶を入れるなど)がうまく出来ない状態。動作や 行為を行う際に、動作や行為の順番が入れ違ったりする。 こうせいしっ こ う ③ 構成失行(構成障害):他の運動や動作や行為は問題なく行えるが、「物を形作ること」がうまく出来 き か なくなる。例えば、ひし形や六角形や立方体などの幾何図形がうまく描けなくなったり、絵が下手に なったり、文字の形が崩れたり、積み木をうまく作れなかったりする。 ちゃくいしっ こ う ④ 着衣失行(着衣障害):他の運動や動作や行為は問題なく行えるが、服がうまく着られなくなる。服 の上下や左右を取り違えたり、裏表を間違えたりする。 また、服をきちんと整えて着られないために、着方がだらしなく見えるようになる場合もある。 日常生活での現れ方 ・ はさみや歯ブラシなどの日常的な物品(道具)をうまく使えなくなったり、不器用になった。 ・ 形を正確に描けなくなったり、物をうまく形作れなくなったり、服をうまく着られなくなった。 日常生活への援助 ・ 障害の正しい理解と環境整備 か ん そ か 何ができてどのような段階が困難なのかを判断し、困難な動作は回避する。複雑な動作を簡素化 したり、できなくなったところの誘導、言語や視覚手掛かりなどが役立つ。 ・ 心理面への配慮 患者さんは自分の失敗を修正できず、他人に指摘されることで気づかされるのでストレスが溜まり やすい。指示はできるだけ簡潔にして、機会を適切にとらえて、与える。また、「ダメ」や「~してはい けない」など禁止語を使用せずに、患者さんに心理的負担をかけないように心がけることが大切。 11 11 半側身体失認とは? 身体失認とは、空間的な自己の身体像に関する知覚や知識の障害のことを指します。体の半身に 対する認知の異常をまとめて半側身体失認と呼びます。主に左側の麻痺症状をもつ患者さんに認めら れます。 日常生活での現れ方 ・ びょうたいしつにん 半側に認められる麻痺を否定する、または無関心(病態失認)。 麻痺症状の存在を否定したり、「私は歩ける」と言い張ったりする。 ・ 麻痺はないにもかかわらず半身を使わない(不使用)。 “左側が不使用”であれば、通常であったら自然に動かせる左側の手を動かすことなく、何でも右側 の手を使って行う症状がみられる。 ・ そうしつ 身体の喪失感や異物感を訴える。 麻痺している手を自分のものと認めなかったり、「他人のもの(例;先生の手)である」と言ったり、と いうことがみられる。 日常生活への援助 ・ かくせい しっかりと覚醒させる(目覚めてもらう)。 覚醒水準が低下している(ボーっとしている)と症状が出やすくなる。寝ているよりも車椅子に座った りと頭を持ち上げた姿勢をとることで目が覚めやすくなる。 また、大きな動きのある運動を行うことで、より目が覚めやすくなる。 ・ 両手動作を取り入れ、必要に応じて麻痺のない側の使用を抑える。 ・ 他者と自己の身体の部位について確認する。 ・ 転倒に注意する。 12 12 2 地誌的障害とは? 地誌的障害とは、地理や場所に関する障害のことです。熟知している場所で道に迷ったり、自宅の 見取図や近所の地図が書けない症状を指します。 日常生活での現れ方 ・よく知った道順にもかかわらず、道で迷ってしまう。 ・発症後新たに知った場所でも迷ってしまう。 日常生活への援助 ・確実に一人で行動できる範囲を障害のある人御自身によく知ってもらう。 外出が一人でできるようになっても、時によっては道順が分からなくなってしまうことがあるので、その 時どうするかをよく話し合う。 ・不測の事態に備えて名前や住所、連絡先などを書いたカードを身に付けて出かける。 ほ じ ょ ・帰り道が分からなくなってしまうことが理解できずに一人で外出してしまう人の場合は、外的な補助用 具として外出を知らせる福祉用具や現在の居場所がわかる福祉用具などを活用する。 13 13 2 視覚失認とは? 視覚失認とは、絵や物品を見せられてもそれが何であるかを言えません。 日常生活での現れ方 ・ 階段が平面に見える。立体的に捉えられない。 ・ ベッドとシーツ、そしてベッドの下の床面の識別が出来ない。 日常生活への援助 ・ 失認という障害についてよく理解する。 患者さんは、物の名前がわからないが、知能が障害されたり、いわゆる目が見えなくなったのとは 違う。そのため、まわりの人はこの失認という状態をよく理解した上で、本人とよく話し合ってどの程 度まで援助すべきかを決めることが大事。 ・ 本人のプライドを傷つけないように援助する。 14 14 2 高次脳機能障害の相談支援について 高次脳機能障害に対して、滋賀県では平成 18 年度より「高次脳機能障害支援センター」が設置され ました。高次脳機能支援センターでは、当事者・御家族への相談・支援、専門的関係機関への連絡調 整などを行っています。必要であれば、詳細な情報を提供させていただきます。 15 15 2 パンフレットの内容の問い合わせについて パンフレットの内容に御不明な点がございましたら、担当療法士、もしくは病棟詰所まで問い合わせ ください。 平成 23 年 5 月 17 日作成 16
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