高次脳機能障害教室

高次脳機能障害教室
小児の高次脳機能障害
福井県高次脳機能障害支援センター
平成 23 年 3 月 10 日
高次脳機能障害教室
■ 日
時:毎月第 2 木曜日
今後の予定
*教 室 13:30~14:30
*交流会 14:30~15:30(変更になることがあります)
■ 場 所:福井総合クリニック 6 階小会議室
■ 参加費:無料
■ 申込み:下記申込み先にご連絡ください
開催日
4月
5 月 12 日
平
成
23
年
平
成
24
年
内容(予定)
お休み
高次脳機能障害の原因疾患~脳卒中と外傷性脳損傷を中心に~
6月9日
高次脳機能障害の基礎知識~用語の解説~
7 月 14 日
高次脳機能障害のリハビリテーション~介入編~
8 月 11 日
高次脳機能障害のリハビリテーション~入院生活を支える編~
9月8日
高次脳機能障害のリハビリテーション~集団リハビリテーション編~
10 月 13 日
高次脳機能障害~家族にできること
11 月 10 日
高次脳機能障害~暮らしに役立つアイテム
12 月 8 日
高次脳機能障害~仕事探し、みんなはどうしているの?
1月 12 日
高次脳機能障害~当事者からのメッセージ
2月9日
福井県脳外傷友の会「福笑井」(高次脳機能障害者と家族の会)活動の紹介
3月8日
高次脳機能障害~障害者手帳・障害年金、私は申請できるの?
【問合せ・申込み】
福井県高次脳機能障害支援センター支援コーディネーター
〒910-0067
電話
木田裕子
福井県福井市新田塚 1-42-1 福井総合クリニック内
0776-21-1300(内線 5934) FAX 0776-25-8264
Mail [email protected]
小児の高次脳機能障害
福井県高次脳機能障害支援センター
福井総合クリニック リハビリテーション科
富田 浩生
高次脳機能障害の診断基準
Ⅲ.除外項目
1.脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障
害として認定可能である症状を有するが、主要症
状を欠く者は除外する。
2.診断にあたり、受傷または発症以前から有する症
状と検査所見は除外する。
3.先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、
進行性疾患を原因とする者は除外する。
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高次脳機能障害の診断
【診断のポイント】
①病歴を聞き取る
日常生活や学校生活の様子を尋ねる
②検査に頼りすぎない
子供では行える検査が尐なく、協力が得られにくい
③医療的検査
脳画像検査(MRI、CT)、脳波、脳血流検査など
小児の診断は成人よりも難しい
小児の死亡原因
0歳
1~4歳
1位
先天奇形・変形及び染色体異常 不慮の事故
2位
周産期に特異的な呼吸障害等
3位
5~9歳
10~14歳
不慮の事故
不慮の事故
先天奇形・変形及
び染色体異常
悪性新生物
悪性新生物
乳幼児突然死症候群
悪性新生物
先天奇形・変形及
び染色体異常
心疾患
4位
不慮の事故
肺炎
心疾患
自殺
5位
胎児及び新生児の出血性障害
など
心疾患
その他の新生物
肺炎
6位
心疾患
その他の新生物
他殺
その他の新生物
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小児の高次脳機能障害の症状
認知障害
○記憶障害
○注意障害
○遂行機能障害
○病識欠落
○半側空間無視
○失語・失認・失行
●全般的知的機能の低下
●学習障害的
●疲れやすい
社会的行動障害
○依存性・退行
○感情コントロール低下
○対人技能拙劣
○固執性
○意欲・発動性の低下
○抑うつ
○感情失禁
●常識がない
○=モデル事業の診断基準に記載
●=実際に小児によく見られる症状
高次脳機能障害の内訳
モデル事業結果
千葉リハ小児調査結果(35名分)
病識欠落
感情コントロール低下
固執性
意識・発動性の低下
依存性・退行
対人拙劣
遂行機能障害
半側空間無視
注意障害
記憶障害
0
20
40
60
80
100
3
小児の高次脳機能障害の特徴
①発達に伴い症状が変化する
②脳の可塑性があるために症状の改善がある
③原因疾患により、特徴的な症状がある
④検査方法が限られている
⑤日常生活や学校生活からの情報が有力
⑥就学するまで障害が目立たないことが多い
⑦環境により症状が変化する
⑧二次障害の予防が欠かせない
小児の
高次脳機能障害の評価
4
評価
高次脳機能検査を行う前に・・・
全般的な発達検査・知能検査
- 遠城寺式・乳幼児分析発達検査、新版K式発達検査、
田中ビネー知能検査V、WISC-Ⅲ、WPPSI知能検査 等
言語能力検査
- 絵画語彙発達検査、ITPA言語学習能力診断検査 等
視力・聴力検査
上記のような検査が必要
評価のコツ
 受傷・発症前の生活歴、知的レベル、行動特性
はどうだったか
 家族、教師などからの情報が大切
 日常生活や学校生活から得られる情報から症状を把握
 評価の方法
行動観察による評価
神経心理学的検査による評価
課題を用いた評価
高次脳機能障害の治療の
第1歩は正しい評価をすること
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小児の神経心理学的検査
測定する能力
検査名
WISC-Ⅲ知能検査
K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー
知的機能
コース立方体組み合わせテスト
前頭葉機能
前頭葉機能検査(FAB)
トレイルメーキングテスト(TMT)
注意
フロスティッグ視知覚発達検査
小児の標準値
○
○
○
○
一部○
○
PASAT
×
三宅式記銘力検査
×
小児の評価の難しさと特徴
①標準化されている検査が尐ない
記憶障害
②評価時点で検査が正常域でも、将
来的に正常域を示すとは限らない
意欲障害
注意障害
遂行機能障害
社会的行動障害
etc
③反対に評価時点で障害域であるこ
とが、高次脳機能障害なのか発達
の個人差なのか判断しにくい
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小児の
リハビリテーション
リハビリを行うにあたって
 高次脳機能障害だけに注目しない
発達全体をみていく事が大切
 専門スタッフの支援だけがリハビリではない
基本的な生活習慣、コミュニケーション能力の獲得、
遊びや学習など毎日の生活がリハビリテーション
 劣等感や自信喪失からくる二次障害の予防
 家族だけでなく、本人と家族を取り巻く多くの支
援者との関わり、環境の調整が重要
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目標の設定
小児の社会復帰は「学校」
本人、家族、教師等との話し合いを通じて設定
1.短期目標
本人に分かりやすい具体的で現実的な目標
例)メモ帳をつけてその日のスケジュールを把握する
2.長期目標
将来的な目標
例)前籍の小学校に復学し、友人と一緒の中学校に行く
訓練を行う際の考え方
①認知障害の改善
 種々の課題を行う。小児ではある程度の改善が期待できる
が、必ずしも改善が得られるとは限らない
②障害についての理解を深める
 本人、家族、教師等が障害の理解を高めることにより、代償
手段の活用や環境調整が行いやすくなる
③代償手段の利用
 改善しない認知障害に対し、代償手段を獲得することが日常
生活・学習の助けになる
④環境の調整
 本人が混乱しにくいように環境調整することが大切
 手がかりの提示、行動のパターン化など「環境の構造化」
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高次脳機能障害に
どのように対応するの?
対応の基本
【対応する基本の姿勢】
①安心できる人間関係を作る
親、先生、友達の理解が一番の環境
②児童や生徒の状態・思いをよく受け止める
③関わり方の3つの要素
表情・・・明るく、穏やかに
声の調子・・・はっきり、ゆっくりと
声かけ・・・短く、分かりやすく
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対応の基本
【こんなことに気をつけて・・・】
①「禁止命令」より「おすすめ」を
「~してはいけない」より「~しましょう」
②あいまいよりも選択を
「何にする?」より「○○と△△のどっちがいい?」
③失敗しそうなことは勧めない
④焦らず、ゆったりと時間を組む
⑤対応する私たちが穏やかな気持ちで
対応する時のポイント
 親も子供も混乱している事を忘れないで
ショック、否認、悲しみ・怒りといった感情の中にいる
 一人一人障害内容が違うことを忘れないで
 年齢によって症状や生じる問題が異なる
 幼児期:幼稚園での生活に適応できているか
自分を認識し、遊びを楽しめているか
 小学生:学校生活を順調に送れているか
友人とうまく付きあえているか
 中高生:思春期の成長が認められるか
自分で決めることができるか
将来について考えているか
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家族支援の流れ
後天性障害の発生
家族の心理状態
支援状況
医師・リハスタッフ(特に臨床心理士)
による支援
急激なショック
健常時への思い入れ
時間の
流れ
リハスタッフ(特に院内学級教師・
ケースワーカー)による支援
予後予測の難しさ
補装具・設備の改善
予後に対する期待・不安
患者家族同士の関わり・家族会
訪問指導
障害の受容
それぞれの障害への
具体的な対応
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記憶障害
①記憶障害への理解と心理的支援
②障害された記憶機能を改善させる方法
反復訓練(例:文章を覚えて質問に答える、神経衰
弱 など)、PQRST法、誤りのない学習 など
③環境調整:「記憶する」負担を減らす
例:引き出しにラベルを貼る、教室やトイレに目印
④外的補助手段の活用
例:メモ帳やノートの使い方を身につける
アラームやスケジュール帳の活用
記憶障害
⑤学習する時のコツ
 学習段階を細分化する
 課題の達成に必要な手がかりをたくさん提供する
例:濁音・半濁音の字を想起するために「てんてん付く?付かない?」と
問いかける
 手がかりの量を段階的に減らしていく
⑥授業を進める時のコツ
 環境調整
例:教室の位置を配慮、要所に目印、手順を文字や絵、写真などで示す
 学習課題を工夫する
例:作業にあたっては手順を書いたり、言葉で指示する
一区切りごとに理解を確認して進む
長い文章を読む時にはメモを残す
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注意障害
①注意障害への理解と心理的支援
②覚醒水準を上げる
よく眠り、充分な休息を取る
部屋を明るくし、絵やカレンダーを貼る
③直接刺激法
抹消課題、迷路、クロスワードなどの机上課題
注意しないと失敗する運動訓練
④行動療法の技法を取り入れた訓練
「○○した時は必ず××をする」
例:「ミスをした時は必ず深呼吸をする」 など
注意障害
⑤注意が向きやすくなる手段を取り入れる
名前を呼ぶ、肩を叩くなど、注意を引きつけてから
指示を与える
指示は簡潔にする
動作や絵などの非言語性の指示も用いる
重要なところにマーカーで色をつける
一度に1つのことをする
必要なものだけ机の上に置く
学習時に「ついたて」を用いる
テスト用紙は余白を多くする
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遂行機能障害
①遂行機能への理解と心理的支援
②自己教授法:手順などを言語化し、行動を調整
行動の開始時に「○○をします」、「○×△の順番で
行います」など声に出し、確認しながら行動する
③外的補助手段を活用する
例1:スケジュールノートの活用
行動を時間で枠づける。終了したらチェックする。
例2:手順のマニュアル化
実生活上で困難な行動を確認し、
マニュアル化して用意しておく
遂行機能障害
④小児に自信をつけさせる
失敗しないような方法を取り入れる
成功体験をさせて自信をつけさせる
得意な家事や学習をまかせる
⑤授業を進める時のコツ
予習、復習用のプリントコピーを利用する。授業の
時は聞くことに集中させる
黒板の字をすぐに消さない
「予習⇒授業⇒復習」を大事にする
できたことを褒めて達成感をもたせる
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感情コントロール低下
①感情コントロール低下への理解と心理的支援
②問題行動の分析を繰り返し、原因となる行動パ
ターン(先行刺激)を見つけ出す
③先行刺激の引き金を避ける
④環境を整える
対応方法を統一して、混乱を減らす
新しい学習は前もって説明し準備する余裕を与える
否定語より肯定語を用いる
例:×⇒「動かないで」、○⇒「手を膝に置こう」
感情コントロール低下
⑤問題行動の対応法を考えておく
問題行動が生じたら、何か気を紛らわすものを利用
その場では放っておき、後で説明する
落ち着ける場所を確保しておく
⑥学校での対応のコツ
叱ることを減らし、褒めるようにする
どのような時に生じるのかを把握する
学習面より給食など生活面への課題を多くする
よい行動・悪い行動をしっかりと教える
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対人技能拙劣
①対人技能拙劣への理解と心理的支援
②原因を把握し、問題を分析する
③子供への直接の対応のコツ
当たり前だと思うことでも、具体的にはっきり伝える
良いこと、悪いことを一つ一つ具体的に示す
例:人と話すときの距離、言って良い言葉と悪い言葉
話しをしても良い場所と悪い場所
声の大きさ、嫌がられる話題
固執性
①固執性への理解と心理的支援
②原因となるきっかけを把握する
③環境を整える
見通しを立てる
前もって予定を伝えておく
なるべくスケジュール変更をしない
普段と異なる状況が生じる場合は、前もって理由を
伝える
いくつかの選択肢を呈示して誘う
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意欲・発動性の低下
①「うつ」の場合には、まず「うつ」に対応する
②意欲・発動性の低下への理解と心理的支援
③本人への働きかけのコツ
声をかけて促し、有効な合図を探す
必要以上に励まさず、孤立させない
音楽や美術を通して感情を表出する
定期的な日課を示す
④家族への支援
教師や臨床心理士など専門スタッフが支援する
家族会から支援する
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