第 10 号

2010 年 9 月1日
あいちの植防協会だより
第10号
<発行> 社団法人愛知県植物防疫協会
〒460-0002
名古屋市中区丸の内二丁目1番 11 号
愛知県農業共済会館内
TEL 052-204-2411 FAX 052-204-0539
あいちの植防
協会だより
会長あいさつ
社団法人愛知県植物防疫協会
会 長 神 谷
学
このたび、平成 22 年度第1回通常総会におきま
して、会員の皆様の御推挙により、会長に就任い
たしました。微力ではございますが、与えられま
した職責をしっかりと果たしてまいりたいと存じ
ますので、どうか、よろしくお願いします。
さて、今、食料の安全・安心に対して強い関心
が寄せられています。一口に安全・安心といって
も様々な側面があり、食品の消費期限や産地の偽
装などもその一つですが、最も関心の高いのは私
たちの関わる農薬の農産物残留や人への健康被害
であり、より一層、農薬の適正使用が求められて
います。
また、環境の保全も重要な課題で、本年は来月
に愛知・名古屋で生物多様性条約 10 回締約国会議
目
(COP10)が開催される節目の年です。農薬は農
業生産にとって不可欠な資材ですが、これまで以
上に環境にやさしい使い方や新たな農薬の開発が
求められています。
協会では、これまで新農薬の登録試験や植物防
疫研修会等の事業をとおして、一定の役割を果た
してきたところですが、今後とも県や関係機関・
団体等と密接な連携を図りつつ、時代の要請を踏
まえた植物防疫事業を推進し、愛知県農業の発展
に寄与してまいりたいと考えております。
どうか、今後とも皆様方の一層の御支援と御協
力を御願い申し上げまして就任のごあいさつとい
たします。
次
1 会長あいさつ・目次
…………………………………… 1
2 平成 22 年度事業計画
…………………………………… 2
3 役員・幹事・賛助会員名簿
……………‥…………………… 3
4 生物多様性と環境と安全に配慮した農業の推進について
(愛知県農林水産部農業経営課)
……………………………… 4∼5
5 新規登録農薬現地適合性試験の実施状況
(愛知県農業総合試験場企画普及部広域指導グループ 市川耕治) …………… 6∼7
6 ダイズほ場における生物多様性を評価する指標生物の選抜
(愛知県農業総合試験場環境基盤研究部病害虫グループ 西本浩之) ………… 8∼9
7 愛知県におけるミナミアオカメムシの分布拡大と季節的変遷
(愛知県農業総合試験場環境基盤研究部病害虫防除グループ
大野 徹・小出哲哉* (* 現新城設楽農林水産事務所)) ………………… 10∼11
8 ダイズほ場に発生する帰化アサガオ類の畦間除草
(愛知県農業総合試験場作物研究部作物グループ 遠藤征馬) ………………… 12∼13
9 ポジティブリスト制度導入後の状況(農薬工業会中部支部) ………………………… 14
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2010 年 9 月1日
あいちの植防協会だより
第10号
平成 22 年度事業計画
平成 22 年度の事業計画は、平成 22 年 3 月 29 日に開催しました平成 21 年度第2回通常総会において承
認されました。その概要は、次のとおりです。なお、事業は現在計画どおり進展しています。
1
新農薬の登録試験及び新規登録農薬現地適合性試験の実施
新農薬の登録試験は、本県の病害虫防除等に必要な新農薬の登録を促進させるため、社団法人日本植
物防疫協会及び財団法人日本植物調節剤研究協会並びに愛知県経済農業協同組合連合会から 132 点を受
託し、愛知県(農業総合試験場)へ委託して実施します。このうち、平成 15 年度から実施している本県
特産のマイナー作物に係る登録促進のための試験は、今年度も7点を実施します。愛知県に委託して実
施する試験のほか、本協会の主任試験員が実施する試験が殺虫剤、殺菌剤など 15 点となっています。
新規登録農薬現地適合性試験は、新規に登録された農薬のうち、特に本県農業に必要と思われる農薬
を選定し、地域における効果・普及性を確認するため、愛知県(農業改良普及課)へ委託して行うもの
で、県内農家のほ場 100 か所で試験を行います。年度末には成績書としてまとめ印刷・配布します。
2
植物防疫研修会の開催
最近における植物防疫推進上の諸課題等をテーマに、会員を対象に植物防疫研修会を開催します。
3
農薬安全使用と安全対策の推進
毎年実施される農林水産省、厚生労働省及び愛知県主催の農薬危害防止運動に参画し、ポスター900
枚を会員、関係団体等に配布し農薬の安全使用について啓発します。また、愛知県が主催する農薬安全
使用対策講習会、農薬管理指導士認定研修に協力、参画します。
4
効率的病害虫防除技術の推進
愛知県農業用無人ヘリコプター安全防除推進連絡会と連携をとりながら、安全防除研修会等に協力す
るとともに、効率的な病害虫防除を推進します。
5
害虫発生予察情報の提供
愛知県農業総合試験場が毎月はじめに発表する病害虫発生予察情報等をメール、FAXで会員に提供
します。
6
各種植物防疫関係資料等の作成配布
各種植物防疫に関する資料や、
「あいちの植防協会だより」を作成し、会員及び関係者に配布します。
平成22年度新農薬の登録試験実施計画
受託先
内
訳
計
日植防
殺菌剤 32
殺虫剤 75
作物残留 15
日植調
除草剤 11
生調剤
作物残留
経済連
4
マイナー作物
合
7
計
-2-
2
122
17
7
146
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第10号
社団法人 愛知県植物防疫協会役員・幹事名簿 (平成22年9月1日現在)
役 職 名
会 長
副会長
副会長
理 事
〃
〃
〃
〃
〃
〃
監 事
〃
〃
幹 事
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
所 属 役 職 名
愛知県農業共済組合連合会会長
愛知県経済農業協同組合連合会常務理事
愛知県農薬卸商業協同組合理事長
愛知県農林水産部農業経営課課長
愛知県農業総合試験場環境基盤研究部部長
愛知県経済農業協同組合連合会農産資材部肥料農薬課課長
愛知県農薬卸商業協同組合副理事長
愛知県農薬卸商業協同組合会計
日産化学工業株式会社農業化学品事業部名古屋営業部部長
クミアイ化学工業株式会社名古屋支店支店長
愛知県経済農業協同組合連合会農産資材部部長
愛知県農薬卸商業協同組合理事
北興化学工業株式会社名古屋支店支店長
愛知県農業共済組合連合会園芸農産部部長
愛知県農業共済組合連合会園芸農産部園芸農産課課長
愛知県経済農業協同組合連合会農産資材部肥料農薬課課長補佐
愛知県農薬安全指導者協議会副会長
愛知県農薬販売業者協会西三河支部長
住友化学株式会社アグロ事業部営業部名古屋営業所所長補佐
協友アグリ株式会社中部支店支店長代理
愛知県農林水産部農業経営課主幹
愛知県農業総合試験場企画普及部広域指導グループ゚主任専門員
〃 環境基盤研究部病害虫防除グループ゚総括専門員
〃 環境基盤研究部病害虫グループ゚総括研究員
〃 作物研究部作物グループ総括研究員
氏 名
神谷 学
権田 博康
石黒 功
久野 伸
坂井三千治
都築 敏夫
鈴木 健司
青木 貴行
足立 文義
大森 誠司
大木 孝義
高松 正敏
土屋 幹夫
寺部 晴彦
近藤 正貴
佐藤 賢治
村田 憲英
成瀬 嘉則
吉田裕一郎
後藤 益夫
森本 真治
市川 耕治
山口 和広
中西 英人
加藤 裕司
社団法人 愛知県植物防疫協会賛助会員名簿
会 社 名
アグロカネショウ株式会社 東海支店
アリスタライフサイエンス株式会社 日本営業本部
石原バイオサイエンス株式会社 東京支店
井上石灰工業株式会社 営業部第二グループ
(株)エス・ディー・エス バイオテック 大阪営業所
大塚化学株式会社 アグリテクノ事業部 名古屋支店
科研製薬株式会社 特薬営業部 農薬営業グループ
協友アグリ株式会社 中部支店
協和発酵バイオ株式会社 大阪農薬課
クミアイ化学工業株式会社 名古屋支店
サンケイ化学株式会社 営業本部 技術普及部
会 社 名
東海物産株式会社 第一営業部
南海化学株式会社
日産化学工業株式会社 農業化学品事業部 名古屋営業部
日本化薬株式会社 西部支社 アグロ部
日本曹達株式会社 名古屋営業所
日本農薬株式会社 大阪支店
バイエルクロップサイエンス株式会社 東海・北陸営業所
BASFジャパン株式会社 農薬本部営業部東海北陸エリア営業オフィス
北興化学工業株式会社 名古屋支店
丸善薬品産業株式会社 アグリ事業部 大阪営業部 名古屋グループ
丸和バイオケミカル株式会社 名古屋営業所
住友化学株式会社 アグロ事業部 営業部 名古屋営業所 三井化学アグロ株式会社 名古屋支店
信越化学工業株式会社 有機合成事業部 ファインケミカル部 明治製菓株式会社 生物産業事業本部 農薬名古屋支店
シンジェンタジャパン株式会社 クロッププロテクション営業本部 名古屋事務所
ダウ・ケミカル日本株式会社 ダウ・アグロサイエンス事業部門 中日本支店 名古屋営業所
米澤化学株式会社 株式会社丸山製作所 名古屋営業所
デュポン株式会社 名古屋支店 農業製品事業部
【事務局】 事務局長 澤中 和雄
書記 渡邊 笑己
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第10号
生物多様性と環境と安全に配慮した農業の推進について
愛知県農林水産部農業経営課
今年 10 月には、愛知・名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されます。
生物多様性の保全とその持続可能な利用並びに遺伝資源の利用から生じる利益の公正で公平な配分に
ついて議論され、今後の目標の設定などが行われることになっています。
農業は、自然界における多様な生き物が関わり、動植物等を育みながら営まれており、多くの生き
物にとって貴重な生息・生育環境の提供、特有の生態系の形成・維持など生物多様性にも貢献してい
ます。
愛知県では、農業の持つ物質循環機能を生かし、化学肥料や有機質資材、農薬等を適正に使用する
ことによって、生物多様性の保全にも資するよう環境負荷の低減と農産物の安全確保に最大限配慮し
た農業を推進するとともに、その取組についての県民の理解促進を図っています。
1
本県における環境と安全に配慮した農業の状況
環境と安全に配慮した農業の推進にあたっては、化学肥料、有機質資材等の適正な利用、農薬の適
正使用、総合的病害虫・雑草管理(IPM)の普及を推進することにより、平成 18 年度を基準として
平成 23 年度までに化学肥料・化学合成農薬を概ね 10%削減することを目標としています。
平成 20 年度の作付面積当たり化学肥料の使用量は、平成 18 年度比で窒素 73%、リン酸 68%、カリ
71%と平成 23 年度目標を上回って減少しています(第1図)。
指数
(指数H18年=100)
(H20/H18)
窒素
(73)
リン酸
(68)
カリ
(71)
農薬
(111)
160
150
140
130
120
110
100
90
目標ライン(H23)
80
70
60
9
10
11
12
13
14
肥料年度、農薬年度
15
16
17
18
19
20 年度
(資料 農業経営課調べ)
第1図 作付面積当たり化学肥料及び化学合成農薬使用量の推移
一方、平成 20 年度の化学合成農薬使用量は、平成 18 年度比で 111%と増加していますが、これは家
庭園芸等で使用される除草剤や殺虫剤が増加したことが要因と考えられます。
農薬低減技術については、チリカブリダニ等の天敵農薬が、施設野菜において急速に普及してきま
したが、最近では効率的な利用が進んだため、出荷量は減少しています。コナガ等チョウ目に効果が
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あいちの植防協会だより
第10号
あるBT剤等の微生物農薬は、総合防除体系に組み込まれ定着しています。農作物に直接散布せず、
長期間害虫の発生を抑制するラノーテープ等の非散布型農薬は前年に比べ、やや増加しています(第
2図)。
非散布型農薬出荷量
微生物農薬出荷量(t)
20
天敵農薬出荷量(kg)
3,000
18
天敵農薬
2,500
16
14
2,000
12
9.0
10
微生物農薬
1,500
8
1,170
6
4
500
非散布型農薬
2
1,000
0.8
0
9
10
11
12
13
14
15
16
17
0
18 19 20 年度
(資料 農薬要覧)
第2図 化学合成農薬低減技術の普及状況
2
「生物多様性に配慮した農業推進フォーラム」の開催
COP10 の開催を機に、農業生産にともなう環境負荷を低減する取組の普及や、農業が生物多様性
に果たす役割について県民の皆様の理解を促進するため、生物多様性の保全に資するエコファーマー
の取組や有機農業などを広く紹介・意見交換を行う「生物多様性に配慮した農業推進フォーラム」を
開催します。皆様の積極的な御参加をお願いします。
○ 開催日時
平成22年10月20日(水)
午後1時から4時30分
○ 開催場所
ウィルあいち
(名古屋市東区上竪杉町1番地)
○ 参集範囲
消費者、農業者、農業団体、
県及び市町村等関係者
○ 参 加 費
無 料
○ 問い合わせ先
愛知県農林水産部農業経営課環境・植防グループ
電 話 052−954−6411(ダイヤルイン)
FAX 052−954−6931
E.mail [email protected]
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第10号
新規登録農薬現地適合性試験の実施状況
愛知県農業総合試験場企画普及部広域指導グループ
市川 耕 治
新規登録農薬現地適合性試験は、新規登録農薬や登録拡大農薬の効果、特性及び普及性などを把
握 し 、効 果 的 か つ 適 正 な 防 除 指 導 に 生 か す こ と を 目 的 と し て 、農 業 改 良 普 及 課 で 実 施 さ れ て い ま す 。
1
た育苗箱施用の粒剤1剤、スクミリンゴガイに
試験の実施方法
対する本田散布のベイト剤(メタアルデヒド
農薬会杜からの試験申請に対し、広域担当普
及指導員が農業改良普及課や試験場等の要望・
10% ) 1 剤 の 合 計 4 剤 で 試 験 を 実 施 し 、 い ず れ
意見を勘案し試験計画を取りまとめています。
も普及性ありと判定されました。
供 試 す る 農 薬 は 、農 家 の ほ 場 で 試 験 す る た め 、
特に、スクミリンゴガイに対するベイト剤の
登録済みのものに限られています。1剤につき
散布は、散布3日後にはスクミリンゴガイの生
複数か所の試験が原則ですが、地域特産作物な
存貝は見られず、高い殺貝効果と速効性のある
どでは1か所となる場合もあります。また、申
ことがわかりました。
請薬剤すべての試験を行うことは不可能ですの
本県では減農薬栽培が進み、本田での防除回
で、マイナー作物及び花き類など登録農薬の少
数は少なくなっています。種子消毒から育苗期
ない作物、環境にやさしい農薬、難防除病害虫
間の化学農薬使用回数をさらに少なくしたい意
対 象 剤 、新 規 成 分 剤 を 優 先 的 に 選 定 し て い ま す 。
向をもつ地域も多くあり、これを満たす薬剤や
一方、剤型変更の試験や同一薬剤の複数作物で
防除技術が望まれています。また、近年、カメ
の試験は行わない場合があります。
ムシ類、特にカスミカメムシ類やミナミアオカ
2
メムシが多く発生し、斑点米の被害が増加して
評価方法
いるので、カメムシ類に対する新たな防除薬剤
慣行農薬と比較し推奨できるかどうかで評価
の開発が期待されています。
し て い ま す 。ま ず 、薬 剤 の 効 果 と 薬 害 を 評 価 し 、
(2) 水 稲 ・ 大 豆 除 草 剤
さらに使いやすさ、安全性、将来性等について
水稲除草剤は、主にSU抵抗性雑草に有効な
農家の意見を参考に総合的に考察し、普及性を
一発処理剤を取り上げ、水田一年生雑草を対象
判定しています。
評価は、A:慣行より優れる、B:慣行とほ
に1キロ粒剤5剤とジャンボ剤2剤、不耕起V
ぼ同等、C:慣行より劣るの3段階で行ってい
溝直播栽培における水田一年生雑草を対象に水
ます。普及性がA又はBと評価されれば普及性
和剤1剤の合計8剤、大豆では、畑作一年生雑
があると判定しています。なお、対象病害虫の
草を対象に雑草茎葉兼土壌散布(畦間・株間処
発生がないなど評価ができない場合もあります
理)の水和剤1剤で試験を実施し、いずれも普
が、そのときは(−)と表示しています。
及性ありと判定されました。
3
ジ ャ ン ボ 剤 は 、 畦 を 歩 行 し な が ら 10∼ 20個 /
平成21年度試験結果
平 成 21年 度 は 延 べ 57剤 、延 べ 100か 所 で 試 験 を
10aを 投 げ 入 れ る だ け で 処 理 で き る 非 常 に 省 力
実 施 し ま し た 。 結 果 は 「 平 成 21年 度 新 規 登 録 農
的な薬剤であるため、今後のさらなる開発が期
薬現地適合性試験成績書」として取りまとめら
待されています。
(3) 野 菜
れていますが、その概要を説明します。
野菜は、イチゴのうどんこ病、トマトの灰色
(1) 水 稲
水稲はカメムシ類、いもち病、紋枯病に対す
かび病、ミニトマトの葉かび病、ナスの灰色か
る本田散布の粒剤1剤、カメムシ類、いもち病
び病、すすかび病、うどんこ病、キュウリのべ
に対する本田散布の1キロ粒剤1剤、カメムシ
と 病 、ス イ カ の う ど ん こ 病 、キ ャ ベ ツ の 菌 核 病 、
類に対して有効成分が2段階で溶出する製剤技
レタスの灰色かび病、菌核病、非結球レタスの
術により、穂揃期のカメムシ類防除を不要にし
すそ枯病、ネギの軟腐病、べと病、黒斑病、さ
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あいちの植防協会だより
第10号
く予定です。
び 病 を 対 象 に 殺 菌 剤 13剤 、 イ チ ゴ の ハ ダ ニ 類 、
(4) 花 き
ナスのハダニ類、スイカのハダニ類、ハクサイ
のアオムシ、ヨトウムシ、コナガ、ブロッコリ
花きは、カーネーションのアザミウマ類を対
ーのアオムシ、ハスモンヨトウ、コナガ、ハイ
象に殺虫剤1剤で試験を実施し、普及性ありと
マダラノメイガ、チンゲンサイのコナガ、非結
判定されました。
花き類は登録農薬が少ないため、現場からは
球レタスのアブラムシ類、ホウレンソウのアブ
登録拡大の要望が強く寄せられています。
ラムシ類、さといものハスモンヨトウ、レンコ
ン の ア ブ ラ ム シ 類 、え だ ま め の ハ ス モ ン ヨ ト ウ 、
(5) 果 樹
シロイチモジマダラメイガ、マメシンクイガ、
果樹は、かんきつの灰色かび病、ナシの黒星
カメムシ類、ツメクサガ、バジルのアブラムシ
病、心腐れ症(胴枯病菌)、カキの落葉病、炭
類 を 対 象 に 殺 虫 剤 13剤 、ト マ ト の コ ナ ジ ラ ミ 類 、
疽病、ブドウの晩腐病、うめの黒星病を対象に
うどんこ病を対象に殺虫殺菌剤1剤、トマトの
殺菌剤6剤、カンキツのミカンハダニ、サビダ
コナジラミ類を対象に微生物製剤1剤、フキの
ニ 類 、ナ シ の ナ シ ヒ メ シ ン ク イ 、ア ブ ラ ム シ 類 、
ハスモンヨトウを対象に合成性フェロモンによ
カキのカキノヘタムシガ、コナカイガラムシ類
る 交 信 か く 乱 剤 1 剤 の 合 計 29剤 で 試 験 を 実 施 し
を 対 象 に 殺 虫 剤 4 剤 、モ モ の ナ シ ヒ メ シ ン ク イ 、
ました。その結果、いずれも普及性ありと判定
モモハモグリガを対象に合成性フェロモンによ
されました。
る交信かく乱剤1剤、モモのコスカシバを対象
特に、フキのハスモンヨトウを対象にした合
に線虫製剤1剤、ナシの黒星病を対象に微生物
成性フェロモンによる防除試験では、フェロモ
製 剤 1 剤 の 合 計 13剤 で 試 験 を 実 施 し 、 い ず れ も
ン設置後は、調査期間を通してハスモンヨトウ
普及性ありと判定されました。
がトラップに1頭も誘殺されず、交信かく乱効
果樹は、化学合成農薬以外の防除技術が比較
果の高いことが確認できました。フキは生育中
的少なく薬剤に依存することが多いため、今後
期以降は葉が繁茂して、ほ場内での薬剤散布等
は農薬使用回数を低減する効率的な利用が望ま
の作業がやりづらくなるため、本剤による省力
れており、それには薬剤の特徴を把握すること
的な防除に期待が寄せられています。
が現場で重要になっています。一方で、収穫前
日まで散布可能な安全性の高い即効的な薬剤が
野菜では、コナジラミ類、ハダニ類、ハスモ
ンヨトウなどで薬剤抵抗性の発達が問題となっ
要望されています。
ており、ローテーション防除を推進する上で系
4
おわりに
統の異なる薬剤が求められています。また、マ
本 年 度 も 100か 所 で 試 験 を 実 施 し て い ま す 。試
イナー作物などの登録拡大が進み、これら薬剤
験薬剤はもちろんですが、それ以外の薬剤を含
の現地適合性を確認する試験も必要になってい
めた安全かつ効果的な使用方法についての情報
ます。一方、環境保全型農業推進のため、環境
交換の場としても、この事業を生かしていきた
にやさしい薬剤(生物農薬、フェロモン剤、天
い と 思 い ま す 。引 き 続 き 御 協 力 を お 願 い し ま す 。
然物由来の殺虫剤等)は引き続き取り上げてい
平成22年度作目別供試農薬数及び実施か所数(カッコ内は平成21年度)
農薬会社からの
採択した
作 目
試験ほ場設置数
延べ申請薬剤数
延べ薬剤数
作 物、 茶 15 ( 7)
4 ( 4)
9 (10)
作物除草剤 58 (49)
8 ( 9)
24 (26)
野 菜 54 (57)
25 (29)
41 (44)
果 樹 15 (19)
10 (14)
14 (17)
花 き 7 ( 1)
6 ( 1)
12 ( 3)
計
149 (133)
53 (57)
100 (100)
注 同一薬剤でも違う作物で試験した場合、それぞれでカウントしている。
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2010 年 9 月1日
あいちの植防協会だより
第10号
ダイズほ場における生物多様性を評価する指標生物の選抜
愛知県農業総合試験場環境基盤研究部病害虫グループ
西本浩之
りません。本種にとってダイズは餌植物として好
はじめに
持続的な農業の実現には、環境保全型農法を推
まれますが、産卵植物としては適さないのかもし
進し、生物多様性を高めることが必要です。その
れません。マメノミドリヒメヨコバイはダイズに
ためには、生物多様性の達成度を科学的根拠に基
寄生しますが、収量に影響を与えないマイナー害
づいて、定量的に把握する手法の確立が求められ
虫と考えられます。本種は殺虫剤に対して感受性
ています。愛知県農業総合試験場では、平成 20
が高く(図4)、次に紹介するキマダラカマナシカ
年より農林水産省委託事業「農業に有用な生物多
マバチの寄主であることから、指標生物として有
様性の指標及び評価手法の開発」に参画し、ダイ
用であると考えられます。
ズほ場を対象に生物多様性を評価するための指標
3
キマダラカマナシカマバチ
生物の選抜を行いました。農薬に対する感受性が
体長約2mm の寄生蜂(図5)で、マメノミドリ
高く、無農薬や減農薬のダイズほ場で特異的に多
ヒメヨコバイ成虫に半外部寄生するため、本種幼
く出現し、ダイズを減収させる害虫ではない生物
虫の寄生はヒメヨコバイ成虫腹部を観察すること
を探索しました。その結果、カメムシタマゴトビ
によって容易に確認できます(図6)。スィーピン
コバチやマメノミドリヒメヨコバイおよび同種に
グで本種成虫を直接採集することも可能ですが、
寄生するキマダラカマナシカマバチ、カンキツヒ
効率は劣ります。農薬処理によってマメノミドリ
メヨコバイなどを選抜しました。以下にこれら4
ヒメヨコバイのカマバチ寄生率が減少することか
種について簡単に紹介します。
ら、農薬感受性は高いと考えられます(図4)。マ
1
メノミドリヒメヨコバイの個体数とキマダラカマ
カメムシタマゴトビコバチ
ナシカマバチの寄生率を合わせて評価することに
体長約1mm の寄生蜂(図1)で、ダイズの重要
害虫であるホソヘリマメムシやマルカメムシの天
よって、信頼性が高まると考えられます。
敵として知られており、主に西日本の暖地で多く
4
カンキツヒメヨコバイ
見られます。カメムシタマゴトビコバチは農薬散
体長は約4mm、橙色で大型のヒメヨコバイです
布によって個体数が減少することから、農薬に対
(図7)。本種は柑橘の害虫とされており、特に秋
する感受性が高いと考えられます(図2)。しかし、
期に成虫が柑橘果実に集まります。春から夏にマ
カメムシタマゴトビコバチは山間地のダイズほ場
メ科植物で繁殖し、さらに常緑低木樹で越冬・吸
では多く見られるものの、平地では農薬を使用し
汁します。ダイズでは成虫だけでなく幼虫も多く
ていなくても個体数が少なく、隣接する雑木林が
採集されますが、本種によるダイズへの被害は観
本種の生息に深く関与していることが指摘されて
察されていません。カンキツヒメヨコバイは無農
います。このことは本種を指標生物として取り扱
薬ほ場で多く見られますが、減農薬および防除ほ
う場合に整理しておくべき問題なので、今後検討
場では極端に発生個体数が少ないことが分かりま
していく予定です。
した(図8)。このことから、本種は殺虫剤に対す
2
る感受性が非常に高く、その影響を長期にわたっ
マメノミドリヒメヨコバイ
て強く受けると思われます。
体長は約3mm、黄緑色の小型のヨコバイです(図
3)。本種はマメ科植物に広く寄生し、アルファル
おわりに
ファでは害虫として扱われています。ダイズほ場
本事業は平成24年まで続きますが、今後は選
で普通に見られますが、ダイズに被害を与えてい
抜された指標生物の有用性について再確認するた
る様子は観察されていません。また、ダイズ植物
めの調査を行うとともに、効率的な採集方法や評
体で見られる個体の多くは成虫で、幼虫は多くあ
価手法について検討する予定です。
-8-
2010 年 9 月1日
あいちの植防協会だより
カ
メ
ム
シ
タ
マ
ゴ
ト
ビ
コ
バ
チ
個
体
数
第10号
200
150
100
50
0
無農薬
図1
減農薬
防除
図2 無農薬、減農薬(殺虫剤1回処理)、防
除(同2回処理)ダイズほ場におけるカメムシ
タマゴトビコバチの個体数 8月下旬から 10
月上旬まで、計6回のスィーピング 20 回振り
で得られた個体数の合計
カメムシタマゴトビコバチ雌成虫
150
図3
マ
メ
ノ
ミ
ド
リ
ヒ
メ
ヨ
コ
バ
イ
マメノミドリヒメヨコバイ成虫
16
14
12
成
100
虫
個
体
数
10
8
6
50
4
2
0
キ
マ
ダ
ラ
カ
マ
ナ
シ
カ
マ
バ
チ
0
無農薬
減農薬
防除
図4 無農薬、減農薬(殺虫剤1回処理)、防
除(同2回処理)ダイズほ場におけるマメノミ
ドリヒメヨコバイ成虫の個体数とキマダラカ
マナシカマバチによる寄生率 8月中旬から
10 月中旬まで、計 10 回のスィーピング 20 回振
りで得られた成虫個体数の合計と全個体に対
する寄生率
図5(左) キマダラカマナシカマバチ雌成虫
200
図6(右) マメノミドリヒメヨコバイ成虫に寄生
したキマダラカマナシカマバチの幼虫(矢印)
カ
ン
キ
150
ツ
ヒ
メ
ヨ 100
コ
バ
イ 50
個
体
数
0
無農薬
図7
減農薬
防除
図8 無農薬、減農薬(殺虫剤1回処理)、防
除(同2回処理)ダイズほ場におけるカンキツ
ヒメヨコバイ成虫の個体数 8月中旬から 10
月中旬まで、計 10 回のスィーピング 20 回振り
で得られた成幼虫個体数
カンキツヒメヨコバイ成虫
-9-
寄
生
率
%
2010 年 9 月1日
あいちの植防協会だより
第10号
愛知県におけるミナミアオカメムシの分布拡大と季節的変遷
愛知県農業総合試験場環境基盤研究部病害虫防除グループ
大野
1
徹・小出哲哉 * ( * 現 新 城 設 楽 農 林 水 産 事 務 所 )
県内の分布拡大
ミナミアオカメムシ(写真)は、愛知県では平成20年に初めて生息が確認されました。病害
虫防除グループで、同年12月までに16市町村28か所のイネ、ムギ、ダイズ、ハクサイ等のほ場
を調査したところ、5市町で生息が認められました。また、同年12月下旬には西三河のダイズ
栽培地域で本種の加害により、被害面積37ha、減収量27tの甚大な被害が発生しました。これ
を受け、平成21年には調査対象地域を広げ、県内各農林水産事務所農業改良普及課の協力を得
ながら、全市町村のおよそ100か所について、イネ(休耕田を含む)、水田畦畔、ムギ、ダイズ、
野菜ほ場、路傍の雑草などで本種の生息状況を調査しました。その結果、30市町村で本種の発
生を確認し、急速に分布域が拡大していることが判明しました(図1)。
2齢
2齢
1齢
4齢
3齢
5齢
雌成虫
(写真)ミナミアオカメムシ成虫と幼虫
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2010 年 9 月1日
2
あいちの植防協会だより
第10号
生息を確認した植物と越冬場所
今回の調査で本種の生息を確認した植物は、セイヨウカラシナ、アブラナ、水田畦畔や休耕
田のイタリアンライグラス、エンバク、クサネム、イヌホウズキ、栽培作物ではコムギ、イネ、
ダイズ、トマト、ナス、オクラ、ダイコン、ハクサイ、キャベツなどでした。また、越冬場所
として水田内の雑木林、竹林や樹冠、その地上部の落ち葉の下、水田畦畔、物置・板の隙間な
どで本種を確認できました。
3
ミナミアオカメムシの季節的変遷
本種を採集できた季節、植物体上での発生状況などから、県内における本種の季節的変遷を
推察すると(図2)、越冬に成功した個体は春先にセイヨウカラシナやアブラナなどを餌とし
て活動を始めるようです。また、同時期に水田畦畔や休耕田の雑草にも移動します。そこでは
春先から初冬まで成虫や幼虫が確認できることから、年間を通じて重要な発生源になっている
と考えられました。コムギでは出穂期以降成虫が見られるようになりますが、幼虫は確認でき
ていません。イネでは主として出穂期以降成虫の生息が認められ、早期栽培品種では、収穫期
近くになると多数の幼虫が見られるようになります。普通期栽培品種が混在する地域では、餌
としての稲穂の存在期間が長くなるため、本種の発生量が多くなるものと思われます。転作地
域ではイネで増殖した個体群が、稲刈りにより、隣接したダイズほ場に移動していくと推察さ
れます。ダイズほ場では9月上旬から成虫の生息が認められ、子実肥大期にあたる9月下旬以
降多数の幼虫が見られるようになります。ダイズは本種の増殖に適した餌植物と考えられます
が、この時期以降に本種の増殖に適した高温乾燥の条件になると、もう1世代を重ねて個体数
が著しく多くなるものと推察されます。なお、夏季にはトマト、ナス、オクラなどで、成虫及
び幼虫が確認されていることから、これら果菜類はある程度発生源になっている可能性があり
ます。晩秋になるとダイコン、ハクサイ、キャベツ等で比較的多数の成虫が確認されています
が、これらが越冬できるかどうかは確認できていません。晩秋まで生存した個体は順次越冬場
所へ移動すると思われますが、越冬できる個体がどの程度の量であるかは今後の検討課題です。
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2010 年 9 月1日
あいちの植防協会だより
第10号
ダイズほ場に発生する帰化アサガオ類の畦間除草
愛知県農業総合試験場作物研究部作物グループ
遠藤征馬
愛知県のダイズほ場では、帰化アサガオ類(以下アサガオ類)が発生し、ダイズの減収だけ
で は な く 蔓 の 巻 き 付 き に よ る 機 械 作 業 の 阻 害 等 が 生 じ て い ま す 。 ア サ ガ オ 類 は 2000年 代 当 初 に
西三河地域を中心に急速に拡大し、現在では県内全域で確認されており、ダイズ作における大
きな問題となっています。
愛知県ダイズ作の基本的な除草体系は、播種時の土壌処理剤散布と中耕培土ですが、これら
の ア サ ガ オ 類 へ の 除 草 効 果 は 不 十 分 で す 。 ま た 、 2004年 度 に ダ イ ズ 一 年 生 広 葉 雑 草 を 対 象 に ベ
ンタゾン液剤が登録されましたが、本剤はアサガオ類に対して生育抑制効果はあるものの枯殺
効果はほとんどありません。
そこで、農業総合試験場では、アサガオ類に効果の高い非選択性除草剤(ビアラホス剤及び
グルホシネート剤)を乗用管理機を利用して畦間処理を行う手法(以下畦間除草)について検
討してきました。その結果を紹介します。
1
作業機及び作業能率
乗用管理機の前部に畦間散布アタッチメン
トを装着して作業を行います(図1)。作業
能率は、条間等のほ場条件や機械の設定等に
よ り 変 動 し ま す が 、3 条 タ イ プ で 時 間 当 た り 3
0a程 度 で す 。
2 除草適期
以 下 に 述 べ る 2005∼ 2006年 の 現 地 調 査 結
果 か ら 、 ダ イ ズ 6∼ 8葉 期 が 除 草 適 期 で あ る と
判断しました。
ダ イ ズ 7、 8葉 期 の 除 草 で は ア サ ガ オ 類 の 残
草 本 数 が 少 な か っ た 一 方 、ダ イ ズ 3葉 期 で は 多
く な り ま し た (図 2)。 除 草 が 早 過 ぎ る と 、 除 草
後に発生するアサガオ類の生育抑制が不十分
となり除草効果が低下します。他の調査結果
と 総 合 し て 、ダ イ ズ 6葉 期 以 降 で 除 草 効 果 が 高
いことがわかりました。
一方、ダイズが大きく生育した状況では、
乗用管理機の車輪やアタッチメントによりダ
イズが押し倒され予期しない薬害が生じたり、
除草時期が遅くなることでアサガオ類が伸長
し除草作業が阻害される等の事例が観察され
ました。ほ場条件によって幅がありますが、
ダ イ ズ 8葉 期 頃 が 安 定 し て 除 草 作 業 が で き る
限度の目安です。
3 除草効果
2007∼ 2008年 の 現 地 調 査 で は 、ダ イ ズ 成 熟
期のアサガオ類の残草量(発生本数及び乾物
重 ) は 、 畦 間 除 草 に よ り 無 除 草 の 40% 程 度 に
抑 制 さ れ ま し た (図 3 ) 。 こ の 残 草 量 の う ち 、
ダ イ ズ 株 元 に 発 生 し た も の が 全 体 の 92%を 占
めていました。畦間除草の登録では「作物に
薬液がかからないこと」を前提としており、
これに沿った薬剤散布ではダイズ株元の除草
効果が十分ではないことが判明しました。
4
ダイズ生育・収量改善効果
2005∼ 2008年 の 現 地 調 査 で は 、無 除 草 に 対
し主茎長及び主茎節数に差異はありませんで
したが、分枝数及び莢数は大幅に増加し、ま
た百粒重もわずかに増加しました。また、子
実 重( 坪 刈 収 量 )は 平 均 で 無 除 草 対 比 213%と
大幅に向上しました(図4)。なお、子実重
は、畦間除草と同時に実施した手取除草(雑
草の発生がほとんど無い状態の確保と除草剤
散布による生育、収量への悪影響を比較する
目的)と同等の水準であり、適正な畦間除草
作業では除草剤散布によるダイズ収量への悪
影響はないと推察されました。
また、無除草ではアサガオ類の繁茂により
ダイズが押し倒されましたが、畦間除草によ
りダイズの倒伏程度は大幅に軽減されました
(手取除草でも倒伏程度は軽微)(図5)。
ダイズの倒伏はコンバイン収穫における収穫
損失増大の一因となることから、その軽減が
図られることにより子実重の向上と併せて収
量改善効果は高いと考えられました。
5 今後の検討
畦間除草により、ダイズの収量は大幅に向
上することが明らかになりましたが、ダイズ
株元に発生したアサガオ類の残草により種子
の再生産が継続する点が課題です。さらなる
改善には、除草剤散布方法の登録拡大(例え
ば「畦間・株間処理」)や新規除草剤、新た
な除草法の開発等が必須です。現在、ベンタ
ゾン剤や中耕・培土等を活用して畦間除草の
効果を高める体系処理を検討しています。ま
た、新たな技術として蒸気処理により、ほ場
土中のアサガオ類種子を駆除する手法の開発
に取り組んでいます。
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2010 年 9 月1日
あいちの植防協会だより
第10号
M社アタッチメント
図1
H社アタッチメント
乗用管理機を利用した畦間除草
50
250
40
200
20
10
30
20
150
100
10
0
50
0
3葉期
図2
乾物重 g/㎡
30
発生本数 本/㎡
残草本数(本/㎡)
40
7葉期
8葉期
0
無除草
畦間除草
除草時期によるアサガオ類残草量
無除草
図3
2005 年調査。除草剤は、ビアラホス液剤 500ml[100]/10a
畦間除草
無除草
畦間除草の除草効果
2007∼2008 年のダイズ成熟期に調査。
6
手取
畦間除草
5
無除草
試験区数
4
250
**
対無処理区比 %
200
**
100
2
**
150
n.s.
3
n.s.
*
1
0
50
1未満
0
主茎長
図4
主茎節数
分枝数
莢数
百粒重
2以上
3未満
3以上
4未満
4以上
5未満
倒伏程度の範囲
子実重
畦間除草によるダイズ生育・収量改善効果
1以上
2未満
図5
畦間除草によるダイズ倒伏程度の改善
2005∼2008 年調査9ほ場の平均。
2005∼2008年調査の9ほ場の12処理区、5手取区
**,*,n.s. は t 検定による有意差を示す。それぞれ 1%未満、
倒伏程度は達観による0:無∼5:甚の6段階
5%未満、有意差なし
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2010 年 9 月1日
あいちの植防協会だより
第10号
ポジティブリスト制度導入後の状況
農
薬
工
業
会
残留農薬等のポジティブリスト制度は平成 18 年 5 月 29 日に導入されて以後、残留基準値の設定等
が進められるとともに、食の安全・安心に対する関係者の意識の高まりと関係機関の指導により、農
薬使用の適正化が進むなど、かなりの成果が上がっています。
ここでは導入後の制度の動き並びに農薬の使用状況について御紹介します。
1
ポジティブリスト制度のポイント
ポジティブリスト制度のポイントは、次のとおりです。
食品
農薬
農産物のほか、水産物、畜産物、加工食品、ミネラルウォーターなどに拡大
国内外で使用される全ての農薬
ただし、人の健康を損なうおそれのない食品添加物や特定農薬は対象外(66 物質)
② 残留基準のない農薬は一律基準(0.01ppm)を適用
2
③
残留基準を超えて農薬等が残留する食品の販売等を禁止
④
暫定基準値は5年ごとに見直し
ポジティブリスト制度の動き
制度導入後、これまでに次のような制度の見直し・充実が図られています。しかし、5年ごとに
見直すことになっている暫定基準値の見直し作業は大幅に遅れています。
3
①
内閣府食品安全委員会がマシン油、銅など対象外物質の安全性評価を開始
②
魚介類の残留基準値を設定
③
畜産物の残留基準値設定作業を開始
農薬の使用状況及び残留状況
(1)
農林水産省が実施した平成 19 年度の農薬使用状況調査によれば、
調査した農産物販売農家 4,741
戸(穀類、大豆、野菜及び果実)のうち、4,726 戸(99.7%)で適正に使用されていました。残り 15
戸(0.3%)
で次のような不適正な使用事例がみられますが、平成 15 年度の 2.1%に比べると大きく減少してい
ます。
○ 使用してはいけない作物に誤って使用した(3 件) ○ 使用時期が適切でなかった(5 件)
○ 使用量又は希釈倍数が適切でなかった(4 件)
○ 使用回数が適切でなかった(4 件)
(2) 農林水産省が平成 19 年度に 2,087 点(穀類及び豆類 296 点、野菜及び果実 1,791 点)、146 農薬
を対象に実施した農薬残留状況調査によれば、定量限界以上の農薬が検出されたのは 1,027 点
(49.2%)でしたが、このうち残留農薬基準を超えた事例は 2 点(にら、みずな)でした。これら
はいずれも農薬は適正に使用されていることから、残留基準値を超えた原因は土壌に残留・吸着
した農薬が作物に吸収されたか付着したことが一因と考えられています。
農薬工業会としても食の安全・安心への取組の一環として、消費者の農薬に対する不安を払拭
するための活動に一層力を注いでまいります。農家の皆様には、ラベルどおりの使用、ドリフト
防止等「農薬の適正使用」をお願いいたします。
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