バイタルメディア カラー Candida 寒天培地 発表記録

バイタルメディア カラー Candida 寒天培地 発表記録
Candida 属鑑別培地バイタルメディアカラーカンジダ(仮称)の基礎的検討
1)
○杉山 知代1) 、佐藤 智明 1) 、豊田 耕一 2)
静岡県立静岡がんセンター 感染症科、2) 極東製薬工業株式会社 微生物学術グループ
Ⅰ.はじめに
近年多くの検査室で、発育コロニーの色調により Candida 属を鑑別する培地が使用されている。
今回、色調による Candida 属鑑別用培地『バイタルメディアカラーカンジダ』(極東製薬工業より発売予定、以下検討培地)に
ついて検討を行なった。
Ⅱ.対象と方法
検討培地で鑑別可能とされている 7 菌種について、ATCC 株を用いてコロニーの色調を確認した。
また、臨床分離株を用いて 他社類似品である A 社培地との鑑別能を比較した。
Ⅲ.結果
z主要 Candida 属の鑑別
①
②
④
③
⑤
⑥
⑦
(35 ℃ 48 時間培養後)
菌種
実際の呈色
① C. albicans
緑色
② C. glabrata
薄ピンク色
備考
24 時間培養でも緑色を呈するため鑑別可能
C. parapsilosis と色調は似ているが、こちらの方がコロニーが
大きい
③ C. parapsilosis
薄ピンク色~ピンク色
C. glabrata と色調は似ているが、コロニーの大きさが他と比べ
小さい
④ C. krusei
薄ピンク色 R 型
⑤ C. tropicalis
赤紫色~赤茶色
⑥ C. guillermondii
薄ピンク色~ピンク色
色調・コロニーの大きさ、ともに C. parapsilosis に似ており、やや
鑑別は難しい
⑦ C. dubliniensis
緑色
C. albicans と酷似しており鑑別困難
R 型の大きい特徴のあるコロニーで容易に鑑別可能
zCandida 属以外の真菌の発育
Cryptococcus neoformans は、48 時間培養で微小コロニー
が認められ、72 時間培養では白色の C. parapsilosis に似た
コロニーの発育が認められた。
48時間培養後
72時間培養後
Trichosporon beigelii は、48 時間培養にて青緑色の R 型(しわっぽい)
コロニーを呈するため、他の菌種との鑑別は可能であった。
24 時間培養での判定を試みると、緑色を呈するもののコロニーの形態が
はっきりしないため、C. albicans と誤って識別してしまう可能性が考えられた。
48時間培養後
バイタルメディア カラー Candida 寒天培地 発表記録
zP. aeruginosa の発育
検討培地には P. aeruginosa が発育するとされるが、発育すると
コロニー辺縁部が透明でいびつな形となり、中央は赤色を呈した。
また、発育箇所の培地自体の色が若干黄変した。
C. tropicalis も同系色の赤色を呈するが、コロニー形態が明らかに
異なるため鑑別は可能である。
48時間培養後
z臨床分離株の発育①
喀痰検体を直接検討培地に分離した場合、Candida 属以外の
菌種の発育は抑制され、 C. albicans のみ発育が確認できた。
左側:検討培地、右側:血液寒天培地 48 時間培養後
z臨床分離株の発育②―血液培養陽性検体より Candida 発育例 (1)
C. albicans のみの発育かと思われたが、48 時間培養にて
検討培地に C. glabrata の発育が確認でき、Candida が 2 菌種
検出された。
同時に分離していた A 社培地は、48 時間培養では
C. albicans のみの発育しか確認がされなかったが、後に
C. glabrata の微小コロニーが確認できた。
検討培地:
緑色コロニーに混じって薄いピン
ク色コロニーを確認再分離したと
ころC. glabrata と同定
A 社培地:
緑色コロニーの発育が認め
られ、ごくわずかピンク色の
微小コロニーが認められる
z臨床分離株の発育②―血液培養陽性検体より Candida 発育例 (2)
24 時間、48 時間培養それぞれにて、検討培地での色調による識別が困難であった。同時に分離していた A 社培地では
色調よりC. tropicalis が推定された。菌量が多かったことによる色調の判定が困難であったと考え、菌量を少なくして再度検
討培地に分離したところ、C. tropicalis と鑑別できた。
菌量を減らし再分離
くすんだピンク色のコロニー
が密集して発育し、鑑別困難
赤紫色のコロニーが発育し、
C. tropicalis と鑑別
Ⅳ.まとめ
検討培地は分離頻度の低い Candida 属では他の同定キットなどを併用する必要があるが、臨床検体にて分離頻度の高い
主要菌種は鑑別可能であり、分離培地や推定同定用培地として有用な培地であると思われた。
また、酵母様真菌薬剤感受性キット:ASTY(極東製薬工業)の添付文書には、サブロー寒天培地に発育したコロニーより検査
を実施するよう記載されているが、検討培地の発育コロニーから本製品に供試したところ、添付文書に従い行った場合との
結果がほぼ一致し、参考値として使用できると考えられた。
この一部は第 20 回日本臨床微生物学会総会(2009.1.31~2,1)で発表した。