"正しい"マルチプルによる株価評価のポイント

EVシリーズ・レポート No.8
「"正しい"マルチプルによる株価評価のポイント」
・ マルチプルによる株価の評価は、最もポピュラーな株価評価方法の一つです。
・ しかし、正しい手順を踏まないと、正確な推定をおこなうことはできません。
・ マルチプルによる株価の評価を正しく行うポイントをご紹介してみたいと思います。
・ ポイントは、
① 収益見通しの予想値を使用する
② 細分化された業種の平均マルチプルを使用する
③ 複数のマルチプルから業種毎に最もフィットしたマルチプルを取り出して使用する
です。
● 復習
✓ 念のために代表的なマルチプルの定義を復習しておきたいと思います。
✓ 株価総額を計算するマルチプルは、事業価値に対する倍率と株式時価総額に対するマルチプルがあります。
[事業価値倍率]
事業価値 = 株式時価総額 + ネット有利子負債 (有利子負債−現預金−短期保有有価証券)
売上マルチプル = 事業価値 / 売上
営業利益マルチプル = 事業価値 / 営業利益
EBITDAマルチプル = 事業価値 / EBITDA
[株式時価総額マルチプル]
PER = 株式時価総額 / 税引き後利益
PBR = 株式時価総額 / 自己資本
✓ 業種平均マルチプルが予件として与えられた場合、5種類の推定株価総額以下のとおり計算されます。
推定株価総額① =
推定株価総額② =
推定株価総額③ =
推定株価総額④ =
推定株価総額⑤ =
対象企業の売上 x 売上マルチプル − ネット有利子負債
対象企業の営業利益 x 営業利益マルチプル − ネット有利子負債
対象企業のEBITDA x EBITDAマルチプル − ネット有利子負債
対象企業の税引き後利益 x PERマルチプル
対象企業の自己資本 x PBRマルチプル
● 収益見通し
✓ 収益見通しには、会社が作成した見通しと第三者による予想の二種類があります。
✓ 会社作成のものは主観的なものであることが多く、また必ずしもタイムリーに発表されないことから、
定期的(少なくとも月次)で更新される第三者による予測値を用いることをお勧めします。
✓ 現時点の株式時価総額に対するマルチプルを計算するには、現時点から1年間の予想収益を用いるのが妥当
です。CPC社では、東洋経済新報社から日次で提供を受けた将来2期分の予想値を用い、期間按分して 現時点か
ら1年間の損益予想値 を生成してマルチプルの計算に用いています。
✓ 現在の株価は将来1年程度の見通しのうえに成り立っているので、予測値の使用は、マルチプルによる株価推定の
精度を上げるうえで非常に重要です。
● 業種平均マルチプル
✓ 業種平均マルチプルの水準は、業種毎に異なります。
少なくとも 100業種 程度に分類された企業グループの 月次平均マルチプル 取得する必要があるでしょう。
CPC社の業種分類は約150です。
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1
0.0
OA機器
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ホームセンター
ホテル
学習塾・予備校
10.0
賃貸不動産
20.0
AVコンテンツ
25.0
通信サービス
空運業
鉄道
通販・無店舗販売
EBITDA倍率
コンビニエンスストア
その他商社
建材・住設機器商社
燃料商社
繊維商社
住宅
土木・道路・橋梁工事
スポーツ用品・娯楽・玩具
PBR
その他精密機器
造船・船舶部品
電子部品
営業利益倍率
その他機械
金属加工機械
工作機械
その他金属製品
その他非鉄金属製品
鍛鋳造
陶器・耐火物
石油・石炭製品
売上倍率
肥料
接粘着剤・有機薬品
農薬・殺虫剤
製紙
その他食料品
乳製品
製油
水産・農林業
業種毎マルチプル水準(サンプル)
35.0
30.0
石油化学
百貨店
15.0
総合・分
譲不動産
5.0
0.0
PER
株価マルチプル/EBITDA
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
5.0
2
● 各マルチプルに与える 重み
✓ 6種類の業種平均マルチプルに対して、個々の会社の株式時価総額に最も近づくよう、各業種における重要性に応じ
て、重み付け を与えます。重み付けはCPC社における 最適化計算 の結果として算出されます。
✓ 各マルチプルに対する重み付けは業種によって異なります。例えば、化学製品製造業ではEBITDAマルチプルが
株価形成に大きな役割を果たし、小売業ではPERとEBITDAマルチプルが株価を左右します。
✓ 重み データは、常に変動しており、最新のものを使う必要があります。CPC社では月次で見直しをしています。
化学製品製造業
小売業
PBR
売上倍率
売上倍率
PBR
営業利益倍率
営業利益倍率
PER
PER
EBITDA倍率
EBITDA倍率
● 公開企業への当てはめ (精度のチェック)
✓ CPC社の株価総額推定モデルを用い、売上1,000億円以下の食料品製造業各社の推定株価総額と実際の株価を比較
してみました。相関の強さを示す決定係数(R2)は0.79となりました。全業種でも 決定係数0.85 程度を達成しています。
株式時価総額の大きさを2000億円以下程度に限定した上で、決定係数0.65以上を達成できれば、意味のある制度を達成
したものといえるでしょう。
100,000
90,000
y = 0.9087x + 4158.3
2
80,000
R = 0.7869
70,000
Y軸
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
60,000
70,000
80,000
90,000
X軸
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3
業種名
水産・農林業
鉱業
食料品
繊維製品
パルプ・紙
化学
医薬品
石油・石炭製品
ゴム製品
ガラス・土石製品
鉄鋼
金属製品
機械
電気機器
決定係数
98.1%
98.7%
92.1%
87.7%
93.5%
92.7%
89.1%
92.9%
99.3%
94.7%
89.3%
94.1%
93.9%
77.0%
業種名
輸送用機器
精密機器
その他製品
建設業
卸売業
小売業
電気・ガス業
陸運業
海運業
倉庫・運輸関連業
情報・通信業
不動産業
サービス業
決定係数
90.5%
92.0%
92.8%
84.4%
88.1%
87.6%
86.2%
88.9%
98.1%
93.9%
82.2%
63.6%
73.1%
● 正確なマルチプルの計算ができたら何をするのか?
✓ マルチプルは、将来の株価予想をするのに大変便利です。
EVの将来PL、BS作成機能と併用すると、分析対象企業に対する 株式投資採算のシミュレーション が可能です。
EVシリー
ズによる
将来シナリ
オの設定
自動作成される5年
分のPL、BSからマ
ルチプル計算に必
要なデータを抽出
マルチ
プルと
重み付
けを適
将来各
年の推
定株価
を算出
EVシリーズの投
資採算計算機能を
用いて将来シナリ
オ毎の投資採算
の見通しを分析
✓ 未公開企業の損益・財務数値から、上場した場合の株価総額を推定することができます。
これにより、公開支援 あるいは プライベートエクイティー投資 を客観的な基盤に基づき行うことができるよう
になります。
✓ CPC社では、CPCモデルに基づいて定期的に算出している推定株価をベースに様々な株価指標を生成しています。
マーケティング、取引先開拓をお考えの方には、テーラーメードのサービス を提供します。
★ 本件およびEVシリーズに関するご質問、今後取り上げるテーマに関する
ご要望など承ります。
お気軽にメールを頂ければと思います。
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TEL:03-3524-7220 FAX:03-3524-7221
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お問合せ担当:
法月(のりづき)、佐々木 / [email protected]
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