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NGO×企業連携シンポジウム
「一歩先を行く、質の高い連携に向けて」
2014 年 2 月 27 日(木)
14:00~17:00(シンポジウム)
NGO
×
企業
17:10~18:00(名刺交換会)
会場:(株)電通 本社ビル 36 階 M-1,2 会議室
対象:NGO および企業関係者、一般、学生対象
共催
NGO と企業の連携推進ネットワーク(連携ネット)
〔事務局 (特活)国際協力 NGO センター(JANIC)〕
動く→動かす
企画協力
株式会社電通
後援(順不同)
一般社団法人グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク(GC-JN)、
独立行政法人国際協力機構(JICA)、1%(ワンパーセント)クラブ
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1. 開催概要
「NGO×企業連携シンポジウム ~一歩先を行く、質の高い連携実現に向けて~」
① 目的
・質の高い企業と NGO の連携事例の紹介、連携における課題、解決方法の共有
・本ネットワークの活動について多くの方に知っていただく
・マッチング、出会いの場づくり
② 全体概要
開催日時:2014 年 2 月 27 日(木) 14:00~17:00(シンポジウム)、
17:10~18:00(名刺交換会)
場所:株式会社電通 本社会議室(東京都港区東新橋 1-8-1)
共催:特定非営利活動法人 国際協力 NGO センター(JANIC)
NGO と企業の連携推進ネットワーク(以下、連携ネット)、動く→動かす
企画協力:株式会社 電通
後援(順不同):一般社団法人グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク(GC-JN)、
独立行政法人国際協力機構(JICA)、1%(ワンパーセント)クラブ
参加者:109 名(参加者 91 名、登壇者 6 名、事務局・運営メンバー12 名)
参加費:2,000 円/名(NGO と企業の連携推進ネットワークメンバー半額)
プログラム:
Ⅰ はじめに
14:00-14:05
開会挨拶
松崎 稔氏
連携ネット コアメンバーサブリーダー/オリンパ
ス(株)CSR 推進部 CSR シニア スペシャリスト
14:05-14:15
NGO と企業の連携ネットワークの活動紹介
高木 美代子氏
連携ネット コアメンバーリーダー/(公財)ケア・
インターナショナル ジャパン マーケティング
部長
14:15-14:25
MDGs/ポスト MDGs の現状、今後の課題
山田 太雲氏
NGO と企業に求められる役割とは
動く→動かす/(特活)オックスファム・ジャパン
アドボカシー・マネージャー
Ⅱ 基調講演
14:25-14:55
MDGs/ポスト MDGs に向けたユニリーバの取り組み、NGO
伊藤 征慶氏
との連携
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス(株)
ヘッド・オブ・コミュニケーション
―― 休憩(10 分)――
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Ⅲ 事例発表
15:05-15:35
15:35-16:05
(株)ファーストリテイリング×国際環境 NGO グリーンピース
上田 愛子氏
「有害化学物質ゼロを目指す~NGO との新たなリレーシ
(株)ファーストリテイリング CSR 部 CSR ソー
ョンシップ~」
シングチーム リーダー
リー・ジャパン(株)×(特活)ACE×
(特活)ハンガー・フリー・ワールド
白木 朋子氏
(特活)ACE 事務局長
「エシカルなビジネス推進のための企業とNGOの協働
~Born in Uganda Organic Cotton Project~」
Ⅳ パネルディスカッション
16:5-16:45
パネルディスカッション
モデレーター:渡邉 清孝氏
「企業が戦略的 CSR を実施する上での問題点・課題とは」
(特活)ハンガー・フリー・ワールド 事務局長
パネリスト:基調講演者、事例発表者
Ⅴ お知らせ、閉会
16:45-16:55
「NGO と企業の WIN-WIN 成否を分けるのは何か?
梅津 弓子氏
~P.コトラー新刊 Good Works!から学ぶ
(株)電通 ソーシャル・ソリューション局
事例とノウハウご紹介~」
16:55-17:00
閉会挨拶
富野 岳士
連携ネット事務局/(特活)国際協力 NGO セン
ター(JANIC)事務局次長
―― アンケート回収など(10 分)――
Ⅵ 名刺交換会
17:10-18:00
名刺交換会
任意参加
③ 議事録
開会挨拶
松崎稔氏(オリンパス㈱CSR 推進部 CSR シニアスペシャリスト/連携ネットコアメンバーサブリーダー)
MDGs(国連ミレニアム開発目標)が広く世の中に浸透する以前は、企業の CSR 活動は、法令順守とフィランソ
ロピーとしての社会貢献が主流であり、利益の社会への還元として NGO へ一方的な寄付行為という形での支援
だった。しかしながら、このようなアプローチでは、MDGs のような国際社会共通の社会的課題の解決に到底及ば
ないことは周知の通りであり、企業と NGO の両者の違いを力に、連携・協働することで課題解決に取り組むという
「質の高い連携」が必要である。現在は資金供給という形での支援は見直され、多くの企業は自らのリソース、“資
金、技術、サービス、社員”を積極的に関与させる形にシフトしてきている。
CSR の立場で仕事をしていると、社会的責任に関するガイドライン ISO26000 や CSR 報告に関する国際的なガ
イドライン GRI G4(Global Reporting Initiative G4)などで問われるコミュニティ開発をどう考えたらよいかなどの疑
問が出てくるが、それに答えるのが本日のシンポジウムのテーマ、「一歩先を行く、質の高い連携実現に向けて」
である。また本日は登壇者をはじめ、この分野の第一線で活躍されている方々が多数参加されているため、発表
の事例をもとに会場からも活発な意見交換を期待する。本シンポジウムは単に学びの場だけではなく、実際に出
会いの場も提供している。後半の名刺交換会にも積極的に参加いただき、連携の第一歩として、出会いの場、対
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話の場としてもぜひ実践していただきたい。
「NGO と企業の連携推進ネットワークの活動紹介」
高木美代子氏
((公財)ケア・インターナショナルジャパン マーケティング部長/連携ネットコアメンバーリーダー)
貧困、人権、環境問題などの地球規模課題の解決には、個別のアクターの取り組みだけでは難しく、一方で企
業の立場で考えると、グローバルな世界での競争力を高めるためには、NGO と企業の連携は非常に重要になっ
ている。時代とともに NGO と企業の連携の在り方も変化する中、近年は地球規模の課題解決という大きな目標を
共有し、お互いの強みを活かし、一方で弱みを補いながら連携する事例が日本国内でも増えてきており、相互に
とって事業を推進していく上での戦略的なパートナーといえる。戦略的なパートナーになるためには、もともとある
組織の違いを乗り越え、力に変えていくための密なコミュニケーション、信頼関係の構築が求められる。本ネットワ
ークは、そうした実現を目指した様々な機会を提供している。
本ネットワークは、本年設立 6 年目を迎え、今年は NGO35 団体、企業 23 社にご参加いただき、アドバイザー
にも適宜アドバイスをいただきながら活動を推進している。本ネットワークの 3 カ年計画では「NGO と企業の連携
の質を高め、量を増やす」ことを目標とし、「①連携事例の共有と創造」、「②連携推進のためのコンサルテーショ
ン」、「③地方の NGO や中小企業の巻き込み」、「④効果的な提言活動(対企業、企業ネットワーク、消費者等)」、
「⑤本ネットワークのブランディング活動」の 5 つの重点分野を設けて活動を行っている。活動の形態は、互選でコ
アメンバーを選び、定期的に会合を行い活動方針の策定や定例会やシンポジウムの企画立案、スケジュール調
整、などを行っている。これまでの活動実績として、定例会、様々な調査、シンポジウムなどを開催している他、主
な成果物として、初期に作成した企業向けの MDGs 理解促進に向けた提案書や連携の推進のプロセスや留意
点などに対応する連携のガイドライン、調査報告書や相談メニューなどを作成している。今年も定例会を 4 回、地
方のシンポジウムも愛媛県で行った。
本ネットワークへの参加について、NGO は JANIC の正会員である、またはそれに準ずることが基本条件であり、
企業は信頼性があることを前提とし、CSR を積極的に推進し MDGs 達成に寄与する、もしくはその意思のあること
が挙げられ、最終的にコアメンバーが判断する。詳細については HP をご覧いただき、ぜひ積極的にご参加いた
だきたい。
「MDGs/ポスト MDGs の現状、今後の課題。NGO と企業に求められる役割とは」
山田太雲氏 (動く→動かす/(特活)オックスファム・ジャパン アドボカシーマネージャー)
MDGs や途上国の開発の現状として、2000 年に世界の共通目標として策定された国連ミレニアム開発目標
(MDGs)は、具体的に 8 つの目標が制定されている。5 歳未満児の死亡率の減少や、初等教育の普及など NGO
の現場プロジェクトでは到底なしえない大規模な成果が出ており、各国政府が自分たちの責任において目標達
成に取り組む重要性とその効果がわかる。しかしながら、現状として、達成期限 2015 年までの目標達成は難しい
と言われており、目標の立てられ方から不平等・格差の視点の欠落などの課題も見えてきている。また、途上国の
開発に与える民間企業の影響も非常に高まっている。2010 年の先進国から途上国への ODA 以外の民間資金に
ついては、企業からの直接投資の割合が非常に大きくなっている。そのため、2015 年以降のポスト 2015 アジェン
ダを考える上で、企業の役割抜きには語れない時代といえる。
ビジネスを通じた途上国開発への貢献における企業側のメリットとしては、「人材を含めた資源へのアクセスが
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可能になる」、「有能な志高い従業員を確保できる」、「生産性の向上」、「新たな層への市場機会の拡大」、「会社
全体の社会的承認」などがある。そうした企業に対し、NGO の視点から「ポスト 2015 開発アジェンダ」に向けた提
言としては、経済成長の質や途上国への投資の質、市場における力関係などのバランスに注意していただきたい。
「ポスト 2015 開発アジェンダ」に向けて企業をはじめ様々なアクターがすべきことは、企業側には本体事業のエシ
カル化、利益を得た国で納税をすること、労働・女性・土地の利用の権利を保障することなどが挙げられる。途上
国・先進国政府については、民間投資のリスクや市場の限界を補完し、環境や人権などの公共財を守るための
公共政策や制度を確保することが求められる。NGO には、そうした問題提起をする役割が更に求められると思う。
今後、途上国へ進出を考えている企業の皆様へは、「自社事業と貧困の相互の関係を深く理解する」「事業が
コミュニティに与える負の影響を最小化し、より高い社会基準の実現に投資する」「自社の活動の透明性とアカウ
ンタビリティを確保する」という 3 つの原則をお勧めしたい。
「MDGs/ポスト MDGs に向けたユニリーバの取り組み、NGO との連携」
伊藤 征慶氏(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス㈱ ヘッド・オブ・コミュニケーション)
ユニリーバは、世界 190 カ国でブランドを展開しており、毎日 20 億人以上から選ばれている世界最大級の消費
財メーカーである。その始まりは、約 130 年前にウィリアム・H・リーバ卿が当時とても貴重であった石鹸を誰でも手
に入る価格で提供し、ビジネスを展開したことが原点である。また、当時からビジネスでの収益のコミュニティに対
する還元ということで、地域に学校や病院を作るなど積極的に貢献していた。彼はビジネスを通じて、石鹸のよう
な小さな物でも暮らしや未来を変える大きな力があるということを実感していた。
世界を取り巻く環境が厳しさを増す中、ユニリーバは「よりよい明日を創るために」というビジョンを掲げ、2020 年
に向け、環境負荷を減らし、社会に貢献しながら、ビジネスの規模を 2 倍にすることを目指している。このビジョン
の実現に向けて「すこやかな暮らし」、「環境負荷の削減」、「経済発展」を 3 本柱とした「ユニリーバ・サステナブ
ル・リビング・プラン」を発表し、2020 年までにアクションプランと数値目標とを立てている。また、2012 年には、衛
生や栄養に課題を抱え、安全な飲み水へのアクセスがなく、厳しい状況にある人々の生活の質を向上することを
目指してユニリーバ基金を立ち上げた。5 つのグローバル・パートナーと協働で 5 つのプロジェクトを進めている。
例えば、セーブ・ザ・チルドレンとは EVERY ONE キャンペーンで協働している。5 歳未満の子どもと母親の死亡率
を減らすために、子どもの衛生や栄養、安全な飲み水への提供などを行っている。また、オックスファムとは貧困
撲滅のための活動を行っている。十分な栄養や安全な水を提供し、自分の人生を自分で決められるよう支援して
いる。これまでに 50 万食以上を貧困に生きる人々に供給してきた。
国内では、こうしたグローバルな取り組みへの認知・参加を呼びかけるキャンペーンを中心に展開している。
2013 年はセーブ・ザ・チルドレンの EVERYONE キャンペーンを実施した。まず、社内で子どもたちのための募金
を呼びかけた。社外では、リーフレットの制作や配布、ウェブサイトでの広報、Facebook を活用したクリック募金へ
の参加、各種イベントへの出展などを実施した他、中学校での講演などアドボカシー活動にも力を入れている。さ
らに、日本独自のプログラムとして「ユニリーバこども笑顔プロジェクト」 を実施している。東日本大震災の発生直
後から物資支援やクリック募金による緊急支援を行ってきた。2012 年からは、地震や津波の被害を受けた児童公
園の再建、外遊びの機会が限られている福島の子どもたちのためのキャンプなどを実施し、現地のニーズの変化
に合わせた長期的な支援をしている。
よりよいパートナーシップのためには、企業と NGO がお互いの“強み”を生かすことで win-win の関係を構築し、
“社会貢献”から“サステナブルなビジネス”へ展開していくことが求められる。たとえ小さな行動であっても、続ける
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ことで大きな力になると信じ、ぜひここにいる意識の高いメンバーの皆様とも、現在我々が置かれている現状に危
機感を持ち、一緒に取り組んでいければと思う。
「㈱ファーストリテイリング×国際環境 NGO グリーンピース 『有害化学物質ゼロを目指す~NGO との新たなリレ
ーションシップ~』」
上田 愛子氏(㈱ファーストリテイリング CSR 部 CSR ソーシング チームリーダー)
ファーストリテイリングは、ユニクロを中核とするアパレルブランドを運営している。ユニクロは商品企画・生産・物
流・販売までを一貫して行うアパレル製造小売業として事業を展開している。現在は特に海外展開に力を入れて
おり、海外事業での売り上げは全体の 3 割を占めている。2008 年に「FAST RETAILING WAY(FR グループ企業
理念)」として、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」ことを制定した。グループミッションとして、本当に良い
服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供
すること、また独自の企業活動を通じて、人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指している。
本当に良い服を追求するために、R&D センターでファッションに関する最新情報を常にリサーチし、各シーズ
ンのコンセプトを議論し生産企画を進めている。ユニクロは自社生産工場を持っていないため、中国を中心にア
ジアにあるパートナー工場にて服を作っている。生産方針において、少ない取引先と長期的な信頼関係を築く
「パートナーシップ品質」、ユニクロスタッフによる定期的な工場訪問を行うなど問題があった時に遡れる仕組みと
信頼関係を目指した「ビジネスプロセス品質」、ユニクロの品質・安全基準を確保し、モノづくりの労働環境や地球
環境に考慮したモニタリングを行い、トレーニング・現場訪問による取組強化を図った「社会品質」という「三つの
品質」を大切にし、世界最高水準の服づくりに取り組んでいる。
2011 年 6 月に国際環境 NGO グリーンピースからある工場の排水からの危険化学物質排出に関するアプローチ
をいただいたことをきっかけに、グリーンピースとの対話を開始した。グローバル展開を目指す当社の「世界を変
えていく」服づくり・「社会品質」の追求という点で、グリーンピースの方向性と共通点があり、2013 年 1 月に『2020
年 1 月 1 日までに、危険化学物質の排出をゼロにする』宣言を出し、情報の開示方法など詳細について継続的に
危険化学物質排出ゼロに向けた協議を行っている。具体的な取り組みとしては、中国の環境 NGO と協力した主
要素材工場の情報開示や危険化学物質含有検査の実施、代替化学物質の調査・置き換え、環境モニタリングや
化学物質の管理強化を行っている。グリーンピースとの協働の意義は、連携をすることで企業としての取り組みに
客観性や透明性が増し、第三者として企業の取り組みに対するより厳しい目線でご意見をいただくことで、到達
点である「あるべき姿」の追求に繋がると考える。今後の課題としては、排出ゼロに向けた取り組みの方法論や基
準のベクトルを相互で協議し、合わせていくことが求められる。
リー・ジャパン㈱×(特活)ACE×(特活)ハンガー・フリー・ワールド「エシカルなビジネス推進のための企業と
NGO 協働~Born in Uganda Cotton Project~」
白木 朋子氏((特活)ACE 事務局長)
今回は、ジーンズの企業であるリー・ジャパン、飢餓のない世界を目指す NGO ハンガー・フリー・ワールド、児童
労働がない世界を目指す ACE の取り組みについてお話する。世界で過酷な労働を強いられている子ども達は 1
億 6,800 万人に上り、コットンの生産地域でも子どもたちが労働力として搾取されている現状がある。児童労働と
いうと海外で起きている問題と考えられがちだが、事業がグローバルでなくても生産過程を遡った時にビジネスに
必ず接点が出てくる。これは商品を購入する消費者にも言える。そうした現状にできるだけ加担しない、もしくは改
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善できるビジネスの展開の一つとして、エシカルファッションがある。エシカルとは「道徳的に正しい、倫理的に正
しい」という意味だが、ファッションの視点からは、環境や社会に対する負荷をできるだけ少なくすることであり、そ
れがフェアトレードであったり、オーガニックコットンであったり、伝統工業であったりする。
「Born in Uganda Cotton Project」は、リー・ジャパンがウガンダで生産しているオーガニックコットンを原料とした
ジーンズの売り上げの一部を生産地への貢献として、同じくウガンダにて井戸を作り地域の人々の生活改善を目
指すハンガー・フリー・ワールドの事業に寄付するプロジェクトであった。ACE はこのオーガニックコットンが生産さ
れる過程で、労働搾取がされていないかを第三者の立場からチェックするために参加することになった。ハンガ
ー・フリー・ワールドでも、コットンの生産の裏側にも児童労働があるという認識はあり、このプロジェクトに参加する
条件の一つにサプライチェーンに児童労働がないかチェックを入れることを提案したのも、ACE が参加する一つ
の要因となった。具体的な内容としては、ジーンズの原料である綿の生産地ウガンダで CSR レビューを行った。レ
ビューの際には、人権と労働に関する国際規格である SA8000 の要求項目を参考にした。このレビューが可能で
あった大きな理由としては、環境的な側面に配慮したオーガニックコットンの生産地であったことである。 2010 年
に現地を訪問した結果、児童労働は見つからなかったが、畑での作業の安全面や綿埃がひどい状況の中、マス
クをせず作業をする従業員もおり、労働状況の指導や改善などを指摘した。その後も、「Born in Uganda Cotton
Project」のマネジメントシステム構築のサポートとして CSR 調達基本文章の制定や国内サプライヤーへの合意の
取り付け、国内でのレビューなどを行っている。こうした環境や社会に配慮したモノづくりを行う方々の思いを一緒
に情報発信する取り組みも行っており、今後も続けていきたいと思う。
企業と NGO の質の高い協働において、「ビジョンを共有する」、「リスクを恐れない」、「仲間を増やす」、「続ける、
そして進化する」ことが大切であり、今後は社員や消費者へどう波及させるかが求められる。私たちの取り組みとし
て、国内では 5 月 10 日の「コットンの日」にリー・ジャパンをはじめとした企業と協働でエシカルコットンサミットという
イベントを開催し、アパレル関係者の皆様にこうした活動や現状について知っていただく機会を提供しており、今
後も続けていきたいと思う。
パネルディスカッション : 「企業が戦略的 CSR を実施する上での問題点・課題とは」
モデレーター:渡邉 清孝氏(連携ネットコアメンバー/(特活)ハンガー・フリー・ワールド事務局長)
パネリスト:本日の発表者(伊藤氏、上田氏、白木氏、山田氏)
(渡邊氏)これまで 4 つの具体的な事例を聞き、パネルディスカッションではさらにそこを掘り下げ、前半は、
「MDGs/ポスト 2015 に向けて企業が戦略的 CSR を実施する上での問題点・課題」についてキーワードを伺い、後
半は質疑応答の時間を取りたい。前半の問題点・課題についてのキーワードだが、「限界」が挙げられるかと思う。
本ネットワークでも 6 年間の活動の中で、日々企業の皆さんが様々な課題・限界を抱えており、主に「社員・関係
部署の巻き込み」、「経営者層の理解不足」、「取組の中長期的な戦略を描ききれない」、「実施できても本来の
CSR の意義の薄れ」の 4 つが挙げられるかと思う。なぜこうした課題が起きているのか踏まえ、事前に出した下記
の 2 つの問について各パネリストに伺いたい。
問1.
課題を打破するために企業に必要な要素とは?
問2.
その要素を引き出すために求められる NGO と企業の連携において必要な力とは何か?
(伊藤氏)問1に関しては、「トップのコミットメント」をキーワードに選んだ。当社が社会貢献分野で積極的な取り組
みをしているのは、現 CEO のポール・ポールマン氏によるトップダウンのコミットメントがあるからだと思う。また、企
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業ビジョンの中にサステナビリティを盛り込んでいることで、事業の一環として取り組みやすい。また、「社員への
浸透」も重要だ。企業ビジョンやサステナビリティ戦略を動画などを使って全社員に分かりやすく伝えている。毎月
の CEO レターでも必ずサステナビリティに触れている。問2に関しては NGO に「スピーディーな提案力」を求め
る。
(上田氏)問 1 に関しては、「トップのコミットメントとビジョン」が挙げられる。それを引き出すのに求められることは、
NGO にはビジネスを通じて社会課題を解決する施策の提案力が求められるのではないか。ビジネスを続けていく
中で、継続性がある仕組みなどを提案いただけるとよいかと思う。一方企業には、そうしたプロジェクトに対して、
精査する力を社内で仕組化することが必要である。
(山田氏)問 1 では、MDGs やポスト 2015 に関して企業に求められるのは、労働権の確立や環境保護など、すで
に日本国内で企業の本業部分が当たり前に求められてきた社会的責任だが、途上国特有の文脈にどのように対
応するかが求められると思う。問 2 では、企業に対しては、NGO などのご意見番への受容力が求められると思う。
NGO 側に期待することは、アドボカシー力を挙げたい。団体のミッションを本気で達成しようと思ったら、自己完結
のプロジェクトを超えて、自分以外の関係者を変えられるようコミットしていくことが求められると思う。
(白木氏)問1では「ビジネスの延長線上で考える想像力と社内への理解浸透」を挙げた。普段のビジネスと切り
離して考えるのではなく、ユニリーバの取り組みでもあるようにサステナビリティが経営戦略と一体化していることが
課題突破に繋がるかと思う。問 2 で NGO に求められることは、企業の論理を理解する力であると思う。自分たちが
やりたいことを達成するには、どうビジネスにつなげ企業が動きやすく提案できるかが必要である。企業に求めら
れることは、既にあるものをどうつなげ MDGs の達成や社会貢献として NGO と協働するかいう企画力ではないか。
(渡邊氏)企業にとって必要な資質として「トップのコミットメント」があり、それを引き出すための「NGO の提案力」
や「企業の受容力・忍耐力」が必要とあった。NGO の皆さんから見た中で、企業のトップのコミットメントが足りない
理由は何と考えるか?
(山田氏)企業のトップの方が何を基準として評価をされるのか、インセンティブがないと難しいのではないか。企
業の評価基準に短期のリターンを超えた社会・環境的価値への貢献が入るよう、メディアが取り上げる必要がある
し、NGO がもっとアドボカシー的力を持つことが必要だと思う。
(白木氏)企業にとって一番大切なことは利益を上げることであると思うので、ある程度利益に繋がることが保障さ
れないとトップのコミットメントは難しいのではないか。こうしたサステナブルな取り組みで利益が出るためには時間
がかかることへの理解がまだまだ浸透していないのではないか。
(渡邊氏)伊藤氏には、社会貢献をどう社内の評価に直結させるかお話いただきたい。上田氏には、社内でイン
センティブになるような取り組みについて伺いたい。
(伊藤氏)ユニリーバの場合、成長戦略とサステビリティ戦略が統合されている。そのため、ブランドの目標にも個
人目標にも、売上やシェアだけではなく、サステナビリティを入れている。
(上田氏)社内の人事評価に反映することは全社的にはまだできていないが、工場の事前モニタリングで、各人が
業務を回す時にモニタリングを通る仕組みをとっている。事業が始まってからも定期的にモニタリングを行っており、
今後は取締り的なことだけではなく、もっと工場側や生産側にとっても労働時間の短縮と生産効率の向上を同時
に実現するなど、メリットを感じられる仕組みを作っていきたいと思う。
(会場からの質問)NGO への期待として「スピーディーな提案力」や「ビジネスに関連できるような提案力」と伺った
が、残念ながら実際は日々の業務で精一杯であり、新たな企画を考える専門的な分野がない中で行っている現
状がある。そうした NGO の管理費なども含めたコストの部分で、企業側で支援をいただける体制を考えていただく
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ことは可能か。
(伊藤氏)プロジェクトの規模とコストのバランスによるかと思うが、我々のミッションに沿っていれば検討できると思
う。
(上田氏)企業側では、NGO がそうした苦労をされている部分が見えづらい実態もあるかと思うので、必要なコスト
などを率直に言っていただくとよいかと思う。そこで、お互い理解が得られれば支援もできるのではないか。
(渡邊氏)企業と NGO の連携ガイドラインでもその点について掲載しているため、ぜひ参考にしていただき、NGO
側には企業へ提案いただきたい。
(会場からの質問)ユニクロではメリットを出す付加価値の商品開発や服のリサイクルなどを行っていらっしゃるが、
現在社内では、そうしたメリットを生み出すような取り組みにおいて、NGO の協働は議論されているか。
(上田氏)当社は UNHCR と服のリサイクル活動などを行っているが、そういった既存の取り組みをいかに発展して
いくかといくところも重要と感じている。
(渡邊氏)今回、パネリストのみなさんに貴重なお話を伺った。企業の求められる資質として、かつてないリーダー
シップやガバナンスが必要であり、そうした要素を引き出すための取り組みが今後の連携において重要になって
くるかと思う。後半にも名刺交換のお時間を持っているため、ぜひ様々な情報交換をしていただきたい。
「NGO と企業の WIN-WIN 成否を分けるのは何か?~P.コトラー新刊 Good Works!から学ぶ事例とノウハウご
紹介~」
梅津 弓子氏(㈱電通 ソーシャル・ソリューション局)
今回は、NGO と企業の連携のための参考図書をご紹介し、そこから得られる示唆の一部を簡単にご説明したい。
P.コトラーの新刊である「Good Works!」(邦訳は 2014 年夏出版予定)は、「『企業の利益』と『社会の利益』を同
時に生み出すための“デリケートなバランス”に挑戦するプロフェッショナルのための手引書」として、欧米企業の
様々なソーシャル施策における連携事例を紹介している。その中で、ベストプラクティスから学ぶ連携の留意点が
数多く指摘されているが、本日はその中でも特に注目すべきだと思われる点をピックアップした。多少乱暴だが要
約すると「①社内横断型チームで企画する」、「②NPO にも企画プロセスに参加してもらう」、「③コミュニケーション
計画を立案する」という3点である。①に関しては、社会貢献と他の施策(マーケティング・経営等)を統合することで、
予算を出し合い規模を拡大し、さらに相乗効果を上げることが可能となるということ。②に関しては、従来は、企業
による施策立案の最後の段階で寄付先となる NGO を探すというスタイルが比較的多い傾向にあったが、そうでは
なく、事前に企業とNGO がお互いの目的や情報を共有した上で企画することにより、より立体的で双方にとって
意味ある施策にすることができる、ということ。③に関して、コミュニケーションは、「win-win の構造に消費者を招き
入れること」と捉え、コミュニケーションの要素を予めしっかり組みこむことが重要だということ。通常のマーケティン
グ・コミュニケーション同様、必要に応じて調査などを含めた丁寧なプランニングや批判を受けない綿密な施策設
計、リスク対応の準備が重要である。これを踏まえて企業と NGO がともに積極的に発信していくことが必要である。
日本でも NGO×企業連携の第 2 フェーズに向け、ぜひ参考にしていただきたい。また、当社でも勉強会メニュー
や日本市場向けのプランニングメソッドなども開発している。
閉会挨拶
富野 岳士氏((特活)国際協力 NGO センター(JANIC) 事務局次長/連携ネット事務局)
NGO と企業の連携推進ネットワークの 1 年間の活動の集大成として、毎年東京にてこの時期、このようなシンポ
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ジウムを開催しているが、これまではどちらかというと企業が NGO に寄付をし、それを基に NGO が草の根の活動
をするという「フィランソロピー型」の連携事例が多かった。しかし、ここ最近は、本日のテーマでも取り上げた“一
歩先を行く質の高い連携”のように、企業と NGO が同じ目標に向かいそれぞれの強みを活かして連携している事
例が増えてきた。日本の場合、まだまだフィランソロピー型の連携が中心ではあるが、今後は、企業と NGO が一
歩先を行く質の高い連携を進めていくことが持続可能な社会の実現、ひいては MDGs の達成に繋がっていくと考
えられる。実際、企業と NGO が連携するには難しい部分もあるが、本日キーワードでも出ていたように、「目的を
共有すること」を忘れずに、「互いの違いを力に貧困のない世界を創ること」が重要である。ただし、違いを力に変
えていくためには、提案力やいろいろな人の巻き込みなど、様々な工夫が必要になる。NGO と企業の連携推進
ネットワークとして、そのような一歩先を行く質の高い連携が実現できるよう、今後もサポートを行っていきたい。本
日はお忙しい中、長時間にわたりご参加いただき誠にありがとうございました。
以上
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