美しいサンゴ礁を取り戻すために

美しいサンゴ礁を取り戻すために
サンゴ礁保全プロジェクト in セーシェル共和国
世界中で危機に瀕しているサンゴ礁の保全をめざし、
2005年度にスタートした「サンゴ礁保全プロジェクト」は、現在、
沖縄・ミッドウェイ・セーシェル共和国の世界3 地域で進められています。
そして、セーシェル共和国のキュリーズ島では、8月14日から 28日まで
15日間にわたり、世界各国から集まったボランティアも加わって、
フィールド調査を中心とした研究活動が行われました。
国際色豊かなプロジェクトチームが、ひとつの同じ目的に向かって
行った研究活動の詳細を誌上でレポートします。
Photographs by
URUMA Takezawa
PR
フ リカ 大 陸 東 海 岸 か ら 沖 合 約
1,600km のインド洋に浮かぶセー
シェル共和国(以下、セーシェル)
。
115の島々からなり、諸島周辺を取り
囲むコバルトブルーの海や、どこまでも続く白い
産・学・民 のうちの民にあたるボランティアは、
イングランド、ポーランド、マダガスカルの 3カ国から参加。
砂浜などに魅せられ、欧米などから多くの観光客
が訪れるこの地で、沖縄、ミッドウェイと同様に、
サンゴ礁保全プロジェクトが進められています。
守るための対処の方法を探ることが重要な目的
そして、8月14日から28日までの15日間にわたり、
なのです」と語ります。続けてスミス博士は、
「今
セーシェルの中心であるマヘ島から北東約60km
回の研究活動には、セーシェル海洋技術研究セ
の場所に位置するキュリーズ島キュリーズ国立
ンター・海洋公園管理局(SCMRT-MPA)のス
海洋公園において、研究活動が行われました。
タッフが2 名参加しています。彼らはプロジェク
セーシェルでの研究活動の目的について、リー
ダーである英国エセックス大学サンゴ礁研究ユ
ニットのデヴィッド・スミス博士は「今後 100 年
の間に、エルニーニョ現象のような急激な気候変
トの中心となり実際のデータ収集や海洋公園内
研究者やボランティアなどで構成される
総勢 11名のスタッフは、ダイビングチーム・2 チームと
シュノーケルチーム・1 チームに別れ、
午前と午後にそれぞれ 1 回ずつ、
サンプリングや水中生物の調査などを実施。
動によるサンゴの危機は必ず起こります。気候変
動が引き起こす急激な海水温上昇からサンゴを
キュリーズ島周辺に生息する水中生物の生態を調査する
ダイビングチームのボランティア。
での複雑なバックアップ活動を支援しています。
本研究活動で得られたデータや分析結果をセー
ジウムにおいて、急激に白化する現象(TYPE1)
シェル共和国政府にフィードバックし、同国の貴
と、ゆっくりと白化していく現象(TYPE2)があ
重な経済・観光資源であるサンゴ礁の保全に役
ることが発表されました。セーシェルでも、この2
立ててもらうことも大きな目的です」と力を込め
つのタイプの白化現象がスミス博士の研究チー
ます。
ムによって確認されており、さらにTYPE1のサン
ゴの再生能力が早いことや、TYPE2のサンゴは
3年間の研究活動によって2つの事実が
ゆっくりと再生していくことが、一連に研究活動
によって確認されつつあります。
セーシェルでの研究活動は2006年にスタート。
3年以上にわたるセーシェルや沖縄、
ミッドウェ
2006年のデスローチェス環礁での調査によって、
イでの研究活動によって得られた成果が、サンゴ
礁湖など透明度が低いエリアでは敏感なサンゴ
白化現象のメカニズムを解明する上での重要な
も白化を逃れて生き残っていることが確認できま
基盤となることは間違いないようです。
した。続いて、2007年に行ったシルエット島での
調査では、透明度の高い環礁でサンゴの死滅率
が高いことも判明。
今回の活動にボランティアとしてイングランドか
ら参加したアリソン・レスリーさんは、
「私は中学校
そして3 年間の活動を通じて、最終的に2つの
新しい事実を導き出すことができました。
これまでサンゴの種類に関わらずその耐性は
で科学を教えているのですが、帰国したら、このプ
ロジェクトで出会った魚やサンゴを紹介する資料を
作ります。
そして、
この資料を生徒たちに見せながら、
魚やサンゴをはじめとする、水中生物を守ることの
同じだと言われてきましたが、気候変動に強いサ
大切さを伝えていきたいと思います」と真剣な眼差
ンゴと弱いサンゴが存在することが判明しました。
しで語ります。サンゴ礁保全の輪は、今後も世界
また、サンゴの白化現象にも、様々な症状がある
中で広がっていきます。
ことが判明しました。
U n d e r s t a n d i n g o f c o ra l h e a l t h
そして、今年、開催された国際サンゴ礁シンポ
キュリーズ島周辺のサンゴは 1998 年のエルニーニョ現象により、白化などの大きなダメージを受けたが、
さらに 2004 年に発生したスマトラ沖地震による津波によって、実に 90% 以上のサンゴが壊滅的な被害を受けた。
www.mitsubishicorp.com/jp/coral
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