ソフトウェアネットワーク インテリジェンスの仮想アセント

ホワイトペーパー
ソフトウェアネットワーク
インテリジェンスの仮想アセント
著者
ジム・ホッジス
Heavy Reading、シニアアナリスト
www.heavyreading.com
依頼者
www.windriver.com
2013 年 7 月
はじめに
12 カ月足らず前の IP ネットワーク全体のロードマップには、NFV(Network Functions Virtualization)の概念
も SDN(Software Defined Networking)の概念も登場していませんでした。しかし、今ではそのどちらも
将来的に大きな役割を果たすことが明らかになっています。
NFV は第 4 層から第 7 層、SDN は第 2 層から第 3 層のネットワーク層に深く関連し、低コストで伸縮性の
あるスケーラビリティの提供、ポリシー制御を介したエンドツーエンドのサービスオーケストレーション
の実現、ネットワーク管理コストの削減など、相互に補完しながら共通のメリットを発揮するからです。
促進している点も注目に値します。
どちらのアプローチも、
大部分をネットワーク運営事業者自身が形成し、
通信業界のアナリストコミュニティは、ネットワーク運営事業者が次世代テクノロジを実装する際の速
度や範囲についてとかく批判的ですが、そのネットワーク運営事業者が短期的、長期的なビジネス上およ
び技術上のニーズを満たす革新的なアーキテクチャを生み出していることについては、最高の評価を与
えるべきでしょう。
これには、SDN と NFV のタイミングという問題もあります。具体的には、ソフトウェア中心のモデルを利
用して高度に複雑なネットワークインテリジェンス機能を達成する機能など、クリティカルな機能につ
いての認識です。ほんの少し前までこれは実現できませんでしたが、ウインドリバーやインテルなどのベ
ンダ各社によるマルチコアソリューションが十分に成熟し、この選択肢が商業的に現実的になっています。
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ソフトウェアネットワークインテリジェンス:促進要因
前述のように、ソフトウェアベースのネットワークインテリジェンスが製品設計を大きく変えようとして
います。その大きな要因は、FMO(Future Mode of Operation)のネットワークアーキテクチャモデルが基本
的に以前よりソフトウェア中心になっていることです。たとえば図 1 に示すように、ハードウェアでのネッ
トワークインテリジェンス機能の実行に大きく依存するかわりに、ソフトウェアベースのインテリジェン
スが同じ機能を純粋にソフトウェアのみでサポートすれば、特定のプロセッシングプラットフォームへの
リンクが不要になります。
この機能がなければ、NFV モデルに一致した製品仮想化、共通ポリシー、SDN で提唱されているルーティン
グ制御をサポートする機能は実装できないでしょう。
図 1:従来型と FMO のネットワークアーキテクチャ
この FMO 通信ネットワークアーキテクチャ戦略を促進している重要な理念の 1 つは、従来の通信アーキテ
クチャモデルを利用したまま IP サービスの提供と管理を維持することはできないという認識です。
現在も将来的にも競争力を高めるために、通信事業者はスケーラビリティが高く、アプリケーション収益の
ある、拡張可能な SDN と NFV を利用する新しいモデルを採用する必要があります。
通信業界はこれまで、3G や 4G といった主要なテクノロジの登場にあたっては、マルチコアベンダによる性
能と設計のイノベーションに依存してきました。それを考えると、ソフトウェアベースのネットワークイン
テリジェンスに移行することも、ネットワークインテリジェンスをハードウェアから切り離すことも、どち
らかと言えば些細な出来事に見えるかもしれません。
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しかし、図 2 からわかるように、ハードウェアベースのアプローチと比べるとソフトウェアベースのネット
ワークインテリジェンスは、ネットワークとビジネスに関する主要なメトリックの実質上すべてに改善を
もたらすので、その影響はやはり大きいと考えます。
サービスデリバリに関するこの最後の点は、特に重要です。ネットワーク運営事業者は頻繁に、私たちの見
解と同様、主要な促進要因としてクラウドベースのサービスをサポートし収益化する必要性を強調します。
図 2:ソフトウェアベースとハードウェアのネットワークインテリジェンスの比較
これは、Light Reading による最近のベンチマーク調査でも強く裏付けられています。この調査では、100 社
以上のネットワーク運営事業者を対象とし、今後の製品で仮想化機能の開発を促進する多数の要因につい
て、その重要度をランク付けしてもらいました。
「最も重要(critical)
」と回答した要因のランキングは以下のとおりです。
• クラウドベースのアプリケーション配信(58%)
• クラウド対応のポリシー制御(42%)
• アプリケーションハードウェアとソフトウェアの分離(39%)
• クラウドアプリケーションの利用の強化(33%)
• ポートフォリオの整理統合(21%)
この重要度の変化で、最初の対応は「どこから始めるか」ということです。通信ネットワークのインテリジェ
ンスを考える場合、この質問には、
「クラウドサービスをサポートするために、ソフトウェアベースのネット
ワークインテリジェンス機能のうち何が必要か」という判断も伴います。
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この優先順位はもちろん事業者ごとに異なりますが、大きな機能として指摘されることが多いのはポリ
シー制御と DPI の 2 つです。これは驚くことではありません。図 3 に示されているように、この 2 つの機能は
各種のフロータイプ、プロトコル構成、およびアプリケーションの識別と優先付けをサポートする基盤とな
る、必須の機能そのものだからです。
図 3:DPI とポリシー制御の利用
また、SDN がサービスチェーンという概念を導入していることにも注意が必要です。サービスチェーンは、
パーソナライズされた分析データ(AAA や HSS など)のレイヤを追加することによってこれらの機能を拡
張して、従来の静的な共通ネットワークルーティング方式ではなく、加入者サービスの要件に基づいてパ
ケットフローのルーティングを変更できます。
このサービスチェーン方式を利用すると、事業者はウイルススキャンやパーソナルファイアウォール、コン
テンツフィルタリングサービスといった付加価値サービスを、カスタマイズしてエンドユーザに提供する
ことも可能になります。これは、将来的なサービスの提供方法を根本的に変える可能性を秘めているだけで
なく、コンテンツ検査やパターン照合機能といった新しいソフトウェアネットワークインテリジェンスの
導入にも必然的につながります。
一般に業界が考えなければならない次の質問は、
「仮想化の先頭を切るのはどの製品か」ということです。要
件は事業者ごとに異なるかもしれませんが、次世代のファイアウォール、DPI ノード、SBC、ポリシーコント
ローラ、セキュリティゲートウェイなど多くのアプライアンスのユースケースに、サービスチェーンは広く
直接的な影響を及ぼすと考えられます。
その大きな要因の 1 つを、図 4 に示しています。サービスチェーンにおけるアプリケーションは、従来のよう
な効率の低い静的ルーティング方式ではなくネットワークと加入者のサービス要件に基づいて選択的に、
DPI やファイアウォールなどの仮想化リソースを利用できるということです。
しかも、共通する仮想ソフトウェアベースのネットワークインテリジェンス機能を通じて DPI やファイア
ウォールといった機能を組み合わせれば、SDN サービスチェーンを利用するメリットはさらに広がる可能
性があります。
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図 4:SDN とサービスチェーン
しかし、仮想化は前述したノードに限定されるものではなく、モバイルパケットやボイスコア、さらには
RAN までどんなところでも利用が可能なものです。したがって、ソフトウェアベースのネットワークインテ
リジェンスはネットワーク機器プロバイダ製品のあらゆる市場セグメントに通用すると考えます。これは、
Light Reading のベンチマーク調査とも一致しています。ネットワーク機器プロバイダの 62%が、ネット
ワークインテリジェンス機能の共通スイートを現在すでに使用している(27%)
、または 12 ∼ 18 カ月以内
に導入予定である(35%)と回答しているからです。
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ソフトウェアネットワークインテリジェンスの
実装に対する課題
前述のように、ソフトウェアベースのネットワークインテリジェンスは通信アーキテクチャの FMO モデ
ルに不可欠です。しかし、そのメリットは明らかなものの、対処しなければならない実装上の大きな課題
が数多く残っています。皮肉なことに、FMO ネットワークが直面している課題も、従来型のモデルに長い
間影響してきた課題とあまり変わりません。レイテンシを最小化し、キャリアグレードのメトリックを達
成することです。
レイテンシの影響:新しい IP サービスの導入は、ソフトウェアネットワークインテリジェンスのレイテン
シに関するパフォーマンス要件に直接影響します。これは主として、新しいパターン照合やアプリケー
ション仮想化、ルーティングが CPU に負担をかけることが原因です。同様に、ハイパーバイザとの通信も
全体的な処理上のレイテンシを増やす可能性があります。
キャリアグレードの仮想化:同じように、マルチコアプロセッサとソフトウェアベースのネットワークイ
ンテリジェンスというイノベーションは、仮想化環境において製品開発者、加入者、規制当局が等しく期
待するキャリアグレードの SLA メトリックを管理するうえで必須です。
仮想化されたキャリアグレードのソリューションを作成できる機能が、ネットワーク機器プロバイダと
ネットワーク運営事業者から挙げられる問題点の上位にくることが多いのは当然のことです。これは、
Light Reading のベンチマークでも確かめられており、ネットワーク機器プロバイダすべての回答者のう
ち 55%がこれを最上位の課題と位置付けています。また Light Reading が最近実施したウェビナーでも同
様です。回答者のうち 62%が、ソフトウェアベースのネットワークインテリジェンスモデルを新しい製品
設計に導入する際にはキャリアグレードのメトリックの達成が最大の課題であると答えました。
市場への影響をふまえて、ソフトウェア開発者は今こうした課題に対処する新しい製品の第 1 波を市場に
送 り 出 し て い る と こ ろ で す。そ の 最 近 の 例 が、ウ イ ン ド リ バ ー の Linux ベ ー ス の Open Virtualization
Profile(OVP)です。これは超低レイテンシ(5 マイクロ秒未満)で仮想化アプリケーションを実行できる
製品です(付録 A を参照)。
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結論
過去 9 カ月から 12 カ月の間に NFV と SDN が登場したことで、ネットワーク運営事業者は再び重要な分か
れ道に立たされることになりました。そして、未来へと続く道をたどるには、顧客に影響するだけでなく
ネットワーク機器プロバイダやエコシステムパートナーとの関係にも影響する重要なサービスおよび
ネットワーク戦略について、決定を下す必要があります。
しかし、今その道は明らかになってきました。事業者は多くの点で、SDN および NFV の業界ワーキンググ
ループに参加することで、自らがとる道を決定しているからです。そして、そうした事業者がソフトウェ
アベースのネットワークインテリジェンスの力を全面的に活用できることは間違いありません。なぜな
ら、第 1 に、これまでに述べてきたように、これは低コストで柔軟性の高いサービスデリバリモデルだか
らであり、第 2 に、SDN と NFV が目指すソフトウェア中心のビジョンに一致しているからです。
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付録 A:
Wind River Network Virtualization Profileのアーキテクチャ
この付録では、ウインドリバーの Open Virtualiza-tion Profile Architecture(OVP)の概要をまとめました。
図 5 に示すように、ウインドリバーの OVP は適応型ソフトウェアベースの仮想化レイヤに基づいて実装
されています。このアプローチではオープンソースのインタフェースを採用しているため、設計者はハー
ドウェアに依存しないアプリケーションを作成できます。また、このアプリケーションは Yocto Project
などのオープンソース指向のプロジェクトで定義されているテンプレートやテストツールを使用して実
装できます。
パフォーマンスを重視したこのオープンソース指向により、OVP は可能な限り低レイテンシプロファイ
ル、高可用性、99.999%の稼働時間、最適化された仮想スイッチングといった要望の高い機能を数多くサ
ポートしています。
図 5:Wind River Open Virtualization Profile のアーキテクチャ
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付録 B:著者について
ジム・ホッジス
Heavy Reading、シニアアナリスト
ジム・ホッジスは、電気通信業界に20年以上従事し、マーケティングとテクノロジの両方に経験があります。
Heavy Reading における主な研究分野は、ソフトスイッチ、IMS とアプリケーションサーバアーキテク
チャ、シグナリングプロトコル、NFV、加入者データ管理、アプリケーション配信、およびマネージドサー
ビスです。
Heavy Reading 入社以前は 9 年間ノーテルネットワークス社に勤務。同社では VoIP とアプリケーション
サーバの市場動向を追跡し、退社直前にはシニアマーケティングマネージャーを務めています。ノーテル
ネットワークス社時代にはそのほか、メディアゲートウェイネットワークのアーキテクチャの定義と、無
線インテリジェントネットワーク(WIN)標準の開発に携わっていました。他業種では、ベル・カナダ社で
INとSS7のプランニング、採番管理、規制に基づく相互接続モデルの定義などを担当した経験があります。
ホッジスはオタワ在住。連絡は [email protected] まで。
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