1. 研究の概要 - 国立歴史民俗博物館

1. 研究の概要
青山宏夫
大学共同利用機関法人人間文化研究機構は、2010(平成 22)年度から 6 カ年計画で「日
本関連在外資料調査研究事業」プロジェクトを推進した。そのなかのカテゴリーA として、
大型共同研究「シーボルト父子関係資料をはじめとする前近代(19 世紀)に日本で収集さ
れた資料についての基本的調査研究」(総括研究代表者
久留島浩〔2010 から 2013 年度
まで〕、日高薫〔2014 から 2015 年度まで〕)が実施された。本報告書『オランダ・ドイ
ツに所在するシーボルト関係地図資料―ライデン・ミュンヘン・ブランデンシュタイン城
を中心に―』は、その大型共同研究を構成するライデン B(地図・絵画など)チーム「オ
ランダ(ライデン大学・ライデン国立民族学博物館等)所在日本コレクションの画像付目
録の作成」
(研究代表者
青山宏夫)のうち、シーボルト関係地図資料を調査対象とした同
チーム(地図班)の研究成果をとりまとめたものである。なお、ライデン国立民族学博物
館が所蔵する「死絵」を主たる調査対象とした死絵班の研究成果については、別に図録と
して刊行する。
ライデン B チーム(地図班)は、オランダにおける日本関連の地図資料として一大資料
群を形成しているシーボルト(Philipp Franz von Siebold)関係の地図資料について、ラ
イデン大学およびライデン国立民族学博物館などを主たる対象にして、原本調査に基づく
資料目録を作成することを目的とした。あわせて、ライデン以外に所在するシーボルト関
係地図資料の調査も実施し、その資料目録を作成することを計画した。
ライデン大学の大学図書館をはじめとして、ライデンに所在するシーボルト関係地図資
料は、これまでにも多くの研究者によって調査され、その一部はすでに写真等により広く
知られている。しかし、1 点 1 点の地図資料について、原本調査に基づく資料学的データ
は必ずしも広く提供されているわけではない。また、ミュンヘン五大陸博物館(旧国立民
族学博物館)や、ブランデンシュタイン城(ドイツ・ヘッセン州シュリュヒテルン)すな
わちシーボルトの末裔であるブランデンシュタイン=ツェッペリン家には、シーボルト関
係地図資料がまとまって所蔵されているものの、これらの原本調査に基づく資料目録の作
成や、これらの地図資料とライデン所在の地図資料との比較検討はほとんど行われていな
い。これらのことは、シーボルト関係地図資料を総体的に把握するためには不可欠の過程
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であり、この点に本研究の意義がある。
ライデンに所在するシーボルト関係の地図資料については、ライデン大学の大学図書館
および東アジア図書館とライデン国立民族学博物館、さらにはそれらの地図資料の一部が
貸出・展示されているシーボルトハウスにおいて、2010(平成 22)年度、2013(平成 25)
年度、2014(平成 26)年度に原本調査を実施した。この調査では、シーボルトが第 1 次
来日時に収集した地図の特定につとめ、とりわけシーボルト著(ホフマン解説)『フィリッ
プ フランツ フォン シーボルト蒐集並ニヘーグ王立博物館所蔵日本書籍及手稿目録』(以
下、シーボルト・ホフマン目録とする)に掲載された地図資料の原本調査を中心に実施し
た。その調査結果を、「シーボルト・ホフマン目録とライデンに所在するシーボルト関係
地図資料一覧」として、本報告書第 2 章に掲載する。
また、ミュンヘン五大陸博物館に所蔵されているシーボルト関係地図資料については
2010(平成 22)年度と 2012(平成 24)年度に、ブランデンシュタイン城に所蔵されてい
るシーボルト関係地図資料については 2010(平成 22)年度に、それぞれ原本調査を実施
して資料目録を作成した。それらの調査結果を、前者については「五大陸博物館所蔵シー
ボルト関係地図資料一覧」として本報告書第 3 章に、後者については「ブランデンシュタ
イン=ツェッペリン家所蔵シーボルト関係地図資料一覧」として本報告書第 4 章に、それ
ぞれ掲載する。
五大陸博物館に所蔵されているシーボルト関係地図資料は、シーボルトが第 2 次来日時
に収集した地図資料を中心とするものであり、第 1 次来日時に収集した地図資料を中心と
するライデン所在のシーボルト関係地図資料群とは、収集の経緯が異なる。また、ブラン
デンシュタイン=ツェッペリン家所蔵のシーボルト関係地図資料は、全 79 点(第 4 章参
照)のほとんどがシーボルト自身の手になるトレース図や草稿・校正図などであり、収集
した完成品を主体とするライデン大学・ライデン国立民族学博物館・五大陸博物館などの
所蔵する地図資料とは、資料的性格がまったく異なる。
これら三者三様のシーボルト関係地図資料の目録が作成されたことで、シーボルト関係
地図資料の総体的な把握が可能となる。また、それらを相互に比較検討することで、たと
えば第 1 次来日時と第 2 次来日時での地図収集の相違を検討できるほか、これまでほとん
ど検討されることのなかったシーボルトによる地図分類法とその変遷やシーボルトによる
地図編纂過程を具体的に明らかにし、さらにはシーボルトの地図観を窺い知る環境が整う
ことになる。
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このほか、五大陸博物館およびブランデンシュタイン=ツェッペリン家所蔵のシーボル
ト関係地図資料に関する研究成果は、2016(平成 28)年 7 月から国立歴史民俗博物館で
開催する予定の国際企画展示「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」で公表する計画で
ある(東京、長崎、名古屋、大阪でも巡回開催の予定)。また、五大陸博物館所蔵のシー
ボルト関係地図資料については、画像付き目録として日本語と英語により Web 上で公開
する。
最後に、ライデン大学の大学図書館ならびに東アジア図書館、ライデン国立民族学博物
館、シーボルトハウス、ミュンヘン五大陸博物館、コンスタンティン=フォン=ブランデ
ンシュタイン=ツェッペリン氏には、貴重な資料を調査する機会を与えていただいたこと
に感謝します。とくに、ライデン国立民族学博物館のマティ=フォラー氏ならびにシーボ
ルトハウスの邦子=フォラー氏には、ライデンにおける調査全般にわたって格別のご協力
を賜ったことを記して謝意を表します。
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〔研究組織:ライデン B(地図・絵画など)チーム全体〕(*印は、地図班)
研究統括・歴史地理学〈地図〉*
青山宏夫(国立歴史民俗博物館
教授)
鳴海邦匡(甲南大学
歴史地理学〈地図〉*
准教授)
原田博二(長崎純心大学
齋藤
講師)
努(国立歴史民俗博物館
山田慎也(国立歴史民俗博物館
日本近世史学〈絵画〉
教授)
資料材料学〈貨幣〉
准教授)
日本民俗学〈死絵〉
三河雅弘(國學院大學
非常勤講師)
歴史地理学〈地図〉*
加藤征治(早稲田大学
非常勤講師)
日本近世史学〈死絵〉
[協力者]
勝田 徹(国立歴史民俗博物館
技師専門員)
写真撮影担当
〔研究経費:ライデン B(地図・絵画など)チーム全体〕
総
額
6,225 千円(6 カ年)
平成 22 年度
389 千円
平成 23 年度
59 千円
平成 24 年度
376 千円
平成 25 年度
2,159 千円
平成 26 年度
1,542 千円
平成 27 年度
1,700 千円
〔研究成果の公開:ライデン B チーム(地図班)〕(予定を含む)
[口頭発表]
〇2011 年 12 月 3 日
青山宏夫「シーボルトと地図資料―ブランデンシュタイン家所蔵資料をめぐっ
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て―」長崎純心大学比較文化研究所・国立歴史民俗博物館主催《科研成果共同報告会『幻の「シー
ボルト博物館」を追って』》
〇2013 年 5 月 19 日
青山宏夫「シーボルトの地図編纂とブランデンシュタイン家所蔵資料」第 56
回歴史地理学会大会(発表要旨は、『歴史地理学』266 号、46-47 頁)
〇2014 年 2 月 12 日
青山宏夫「シーボルトの地図編纂とブランデンシュタイン家所蔵資料」人間
文化研究機構・ルール大学ボーフム共催《シーボルトが紹介したかった日本―欧米における日本
関連コレクションを使った日本研究・日本展示を進めるために―》(『同予稿集』、10 頁)
〇2016 年 2 月 27 日
三河雅弘・青山宏夫「ライデンとミュンヘンのシーボルト関係地図資料」第
242 回歴史地理学会例会
[出
版]
〇国立歴史民俗博物館『風景の記録―写真資料を考える―』、国立歴史民俗博物館、2011 年 11 月、
155 頁(青山宏夫の編集・執筆、三河雅弘の編集協力・執筆)
〇青山宏夫「F.ベアトの江戸パノラマ写真はいつ撮影されたのか」国立歴史民俗博物館『風景の記
録―写真資料を考える―』、国立歴史民俗博物館、2011 年 11 月、19-25 頁
〇青山宏夫「シーボルトの地図編纂とブランデンシュタイン家所蔵資料/Siebold’s Map Editing
Activities and Materials in the von Brandenstein-Zeppelin Family Archives」人間文化研究
機構・国立歴史民俗博物館編『シーボルトが紹介したかった日本/Siebold’s Vison of Japan: As
Seen in Japan-related Collections in the West』人間文化研究機構、2015 年 3 月,口絵+117131 頁/pp.299-313
〇青山宏夫「ドイツにおける日本研究と日本」国立歴史民俗博物館『ドイツと日本をつなぐもの―
日独修好 150 年の歴史―』、国立歴史民俗博物館、2015 年 7 月、101-104 頁
[展
示]
〇国立歴史民俗博物館企画展示「風景の記録―写真資料を考える―」、2011 年 11 月 8 日から 2012
年 1 月 15 日まで
〇国立歴史民俗博物館企画展示「ドイツと日本をつなぐもの―日独修好 150 年の歴史―」2015 年 7
月 7 日から 9 月 6 日まで(長崎、鳴門、横浜でも巡回開催)
〇国立歴史民俗博物館国際企画展示「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」2016 年 7 月から 9 月
まで(予定)(東京、長崎、名古屋、大阪でも巡回開催の予定)
[Web による資料公開]
〇五大陸博物館所蔵のシーボルト関係地図資料の画像付き目録(日本語および英語)、2016 年 3 月
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