PMD(目的手段系統図) (朝日大学・学術博士 江崎道彦の創案による手法)

価値評価から創造する方法
-高齢者の新しいライフスタイルの提案を例として(その2) ―
第11回日本TRIZシンポジウム
知財創造研究分科会
長谷川 公彦、片岡 敏光、永瀬 徳美
鈴木 茂、石原 弘嗣、西井 貞男
2015©知財創造研究分科会
資源の利用可能性の評価基準の見直し
当初は、資源に関する評価基準として資源の利用可能性(利用する際
の難易度)を採用した。
その内容は、利用している資源の存在する場所(システムの中か外か、
システムから近いか遠いか)および既存の資源または既存の資源を派生
させた資源のいずれを使用しているか、によって決めていた。
しかしながら、システムの環境(特殊な制約条件)におけるエネルギー効
率を考えた場合には、本来的には資源の種類とその使い方の二面から考
慮すべき問題である。
そこで、資源の種類と資源の使い方の二面から判断する「資源の活用
度」なる評価項目を資源に関する評価基準を提案する。
資源の活用度=資源の種類+資源の使い方
利用可能性に
対応した基準
2015©知財創造研究分科会
科学的な効果に沿った
自然な使い方の程度
評価項目、基準の改善(改訂版)
改訂箇所
資源の活用度とは、
(1)システムの内外に存在する資源を有効利用しているかといった資源の利用効率と、
(2)既存の資源から新しい資源を派生させた場合には、その派生方法における自然法則の利用の難易度と、
を考慮して採点する。
2015©知財創造研究分科会
プラチナデザイン評価シート(改訂版)
改訂箇所
2015©知財創造研究分科会
改良前と改良後とのシステム系統図の比較
入力
バッテリー
モーター
アーム
大腿部
楽な歩行
出力
改良前
角度センサー
+制御装置
技術システム
バネ(蓄力)
バネ(反発力)
リンク
大腿部
入力
楽な歩行
改良後
出力
人間の脳・神経系
+バネ圧調整
技術システム
2015©知財創造研究分科会
変更箇所
利用資源とその変更内容との関係
【システムの物質資源】
歩行支援器具
・腰フレーム
・・制御コンピュータ
・・バッテリー
・モーターユニット
・・モーター
・・角度センサー
・大腿フレーム
・腰ベルト
・膝ベルト
改良前
【環境の場の資源】
・重力、・地面の反力
・空気の流れ
【機能資源】
・歩行時の股関節の角度を測
定する
・股関節の角度とモーターの回
転角を協調制御する
・モーターが脚の振り出しを補
助する
2015©知財創造研究分科会
排除
統合
変換(置換)
【環境の物質資源】
・地面、・空気、温度、湿度
【システムの場の資源】
・電気エネルギー
・使用者の人力
・・使用者の足を振る力
・・使用者の地面を蹴る力
・・使用者の手を振る力
改良後
特開2013-236741号
特許第3950149号
【空間資源】
・使用者の前方の空間
・使用者の後方の空間
・採用者の左右の空間
【時間資源】
・脚に取付ける前の時間
・脚に取付けている時間
・脚から取外す時間
・器具を使用している時間
・器具を保管している時間
・バッテリーの充電・放電時間
【資金的な資源】
・使用者の負担できる金額
・関係者の負担できる金額
・行政からの補助金
・行政からの助成金
【人的資源】
・使用者
・補助者
・・介護士
・・家族
・近くにいる第三者
【情報資源】
・歩行の目的地
・使用者の足を踏み出そうとす
る意志
【システムの物質資源】
歩行支援器具
・ヒップユニット
・・バネ
・・ダイヤル
・リンク
・腰ベルト
・膝ベルト
【環境の物質資源】
・地面、・空気、温度、湿度
【システムの場の資源】
・機械的エネルギー(バネ)
・使用者の人力
・・使用者の足を振る力
・・使用者の地面を蹴る力
・・使用者の手を振る力
【環境の場の資源】
・重力、・地面の反力
・空気の流れ
【機能資源】
・足を後方へ蹴り出す力をバネ
に蓄える
・バネに蓄えられている力を放
出する
最も似た構成を有する先行技術の確認
(実開昭62-127964号公報)
開封するために蓋(シール)を開ける際に、プラスチック製の容器の中
に充填された充填物(ミルクなど)が外に飛び出したりこぼれたりしにくく
した容器についての先行技術。
【実用新案登録請求の範囲】
1.摘持片付きフランジ部を有するポリプロピレン系
カップ体において、該摘持片にフ ランジ肉厚より
も薄い切り込みを入れた非打抜き部を有する打抜
き部を連続的に設け蓋材をシールしてなる易開封
性容器。
2.蓋材が成形品であることを特徴とする実用新案
登録請求の範囲第1項記載の易開封性容器。
2015©知財創造研究分科会
先行技術の顕在的不具合を解析する
プラスチックフィルム
で容器本体を成
形する
一方の手で容器
本体を支える
もう一方の手で容
器本体から蓋を引
きはがす
容器本体にミルク
を充てんする
一定量のミルクを
充てんし密封され
たミルク容器
容器本体の一部
に注ぎ口が形成さ
れる
容器本体内のミル
クをコーヒーに注ぐ
容器本体の開口
部に蓋を溶着する
容器本体内の圧
力が外気圧より高
い
外気圧
適量のミルクが入
ったコーヒー
容器本体内の空
気
ミルクに蓋を引く剥
がす大きな力が伝
わる
ミルクが容器本体
から飛び出す
容器本体の容量
に対してミルクの量
が多すぎる
蓋のシールが剥が
しにくい
容器本体からミル
クを押し出す力が
発生する
服や床が汚れる
容器本体の開口
部近くにミルクの表
面が位置する
容器本体の強度
が弱すぎる
容器本体がつぶれ
る
取り出し口が自分
の方を向いている
容器本体を支える
指の力が強すぎる
2015©知財創造研究分科会
評価対象システムの発明ダイヤグラム
容器
開口部を密閉する
ための蓋
容器本体の上端
の開口部
復元力を有する底
湾曲部を内側に変形
した状態で開口部を
蓋で密閉する
外側に湾曲した湾
曲部
容器本体の内部
が減圧状態になる
湾曲部を外側に湾
曲した状態に戻す(
湾曲部の弾性復
元力によって)
蓋を開ける際、外
気が容器内に入り
込む
内部の圧力より高
い圧力の外気
充填物が外に飛
び出したりこぼれた
りしにくくなる
充填物が外に飛び出
したりこぼれたりしにくい
容器が提供できる
2015©知財創造研究分科会
充填物が充填さ
れている容器本体
代替案の発明ダイヤグラム
桶形容器上端面
の円周に沿って同
材料の平らに張り
出したへり
へりに剛性の低い箔材製の
蓋が気密な継ぎ目で円周
的に接合することで桶形容
器内の封入空間を封じる
剛性と弾力性を
有する薄いシート
材製の桶形容器
少量のミル
ク、クリーム等
の容器
円周上の一箇所でへりと蓋
が継ぎ目を越えて水平方向
に突き出しているつまみとな
る突き出し部
突き出し部を利
用して蓋を引きは
がすことによって注
ぎ口ができる
内容物を正確に
希望量だけ出すこ
とも可能
ガイド通路の継ぎ目
を越えて延びている
部分を取り囲むように
形成した継ぎ目より
弱い第2の継ぎ目
へりの突き出し部
と蓋の突き出し部
を接合する
ガイド通路が横
切っている継ぎ目
まで突き出し部を
引きはがす
ガイド通路の端部
に一定面積の注
ぎ口ができる
容器内の空気が膨張して
圧力が平衡する以前に流
出するおそれがあるのはガ
イド進路内に存在するごく
少量の液体だけである
容器の側壁を押
す
注ぎ口が十分小さ
い
気圧が低い所で
蓋を引きはがして
容器を開ける
内容物を細い噴
流として出すことも
一滴ずつ出せる
容器内の液体の粘
度と表面張力および
発生する負圧で容
器内の液体は自然
には流れ出ない
内容物が残っている
容器が転倒しても内
容物は全くあるいは
殆ど流れ出ない
2015©知財創造研究分科会
へりの突き出し部に、封
入空間に連通し継ぎ目
を横切って継ぎ目の外
側境界線より僅かに外
側まで延びるガイド通路
発明の過去(Before)、現在(After)、未来(NEXT)
先行技術
(過去)
原発明
発明
(現在)
新たな発明
(未来)
?
代替案
?
?
2015©知財創造研究分科会
現在の技術の潜在的不具合を予測する
容器
充填物が充填さ
れている容器本体
開口部を密閉する
ための蓋
容器本体の上端
の開口部
復元力を有する底
手やテーブルが汚
れる
容器本体内の圧
力が外気圧より高
くなる
湾曲部を内側に変形
した状態で開口部を
蓋で密閉する
外側に湾曲した湾
曲部
充填物(ミルク)が
外に飛び出したり
こぼれたりする
容器本体内の圧
力を高める
容器本体の内部
が減圧状態になる
湾曲部を外側に湾
曲した状態に戻す(
湾曲部の弾性復
元力によって)
他方の手で蓋を
開ける
支える手が底の湾
曲部を内側に押し
てしまう
支える手が容器本
体の側面を凹ませ
る
充填物(ミルク)を
飲み物に注ぐ
一方の手で容器
を支える
充填物(ミルク)の
入った飲み物
2015©知財創造研究分科会
問題の捉え方:容器を支える力の強弱
【構成】
上端に開口部を有しその中に充填物が充填される容器本体と容
器本体の開口部を密封するための蓋とを備えた容器であって、容
器本体の底は復元力を有し外側に湾曲した湾曲部を含み、湾曲
部を内側に変形した状態で容器本体の開口部が蓋で密封され、
湾曲部の復元力によってその内部が減圧状態にされた容器(特
公平3-43152号公報を参照)。
【問題点】
開封するためにシール(蓋)を開けば、その中の充填物が外に飛
び出してこぼれてしまうことがある。
引き起こす、強化する
ミルク容器から蓋を
剥がしてミルクを取
り出す
ミルク容器を指で
強く支える
ミルクで手やテーブ
ルを汚さない
ミルク容器を指で
強く支えない
美味しいミルク入り
コーヒーを気分よく
味わう
妨害する、阻止する
2015©知財創造研究分科会
解決に使える資源を見つけ出す(新たな発明)
資源とは、システムの中またはシステムの周りに存在するもので、
その潜在能力の極限までまだ使われていないもの(否定的なものも含む)
大分類
小分類
内容物
ミルクの重さ、重力、
ミルクの粘性、ミルクの温度
容器、容器の形状、摘み片
容器の壁面、容器の底面、
容器の開口部、開口部フランジ
容器内の空間、容器内の空気
容器内の圧力
容器の濡れ性
蓋、蓋の印刷、接着剤
ミルクの取り出し口
接着力
容器から蓋を引きはがす力
容器を支える指
蓋を開ける指
容器を支える力
開口時の指の力
環境
コーヒーカップ、カップの開口部
テーブル、床
外気圧、気温、重力、
テーブル・床の濡れ性
副産物
取り出し口から飛び出すミルク
取り出し口から垂れるミルク
ミルクが飛び出す力
重力
収納容器
上位システム
2015©知財創造研究分科会
場(エネルギー、力)
ミルク
システムの内部
システムの周り
物質
評価項目の対応した発想の観点を使った結果
【着眼点、発想起点】
1.ターゲットカテゴリーの強化?変更?代替?
「ミルク容器」
2.X(期待感)の強化?改善?代替?
「取り扱いに気を使わない(手やテーブルが汚れることを気にしない)でよくなる。」
3.Y(実現力)の強化?改善?代替?
「既に販売されている。」
4.Z(資源活用度)の強化?改善?代替?
「下位システム(底面部の構造)の変更とミルク充填時の製造工程(上位システム)の変更が必
要になる。」→上位システムである製造工程を変えずに改善できることを考える。
5.もっといいものへの具体的アイデア?
ワンポイント「底面に指をかけられない工夫があると目的機能が確実に実現できる。」
→底面に指をかけても大丈夫な手段を考える。
6.活用の場の変更?、新たな場の導入?
「容器内の圧力≦外気圧」を実現する他の作用を考える。
【新規提案、改善・改良の資源調達】
1.新規の提案、改善・改良にあたって、資源はどこから調達すると、より合理的と考えているか?
→システム内の資源だけを利用した手段を考える。
2.既存の資源を変更処理の後で使用できる「派生資源」が活用できないか?
2015©知財創造研究分科会
新たな発明(NEXT)の発明ダイヤグラム
容器
充填物が充填さ
れている容器本体
開口部を密封する
ための蓋
容器本体の上端
の開口部
切り取り線で容器
本体と仕切られた
つまみ部
ミルク(液滴)が飛
び出せない
容器本体と蓋との
間に小さな隙間が
できる
容器の中の圧力の
高い空気が外に出
て、外気と容器内部
の圧力が同じになる
ゆっくりとつば部か
ら蓋を引きはがす
ことで、容器内の
ミルクを取り出す
容器内のミルクなど
が外に飛び出した
りこぼれたりしない
2015©知財創造研究分科会
開口部のつまみ
部側に平面形状
が略三角形の注
ぎ口を形成する
略三角形の注ぎ口
の頂点部が切り取り
線を僅かに越える位
置になっている
容器本体のつば
部からつまみ部を
切り離される
容器を開封するた
めにノッチ部分を折
る