大分県 獣医師会会報 大分県 獣医師会会報 大分県 獣医師会会報

大分県獣医師会会報
二〇一二・十二 第二十三号
アサギマダラ
大 分 県 獣 医 師 会
大分県
獣医師会会報
第
23 号 2012.12
OITA VETERINARY MEDICAL ASSOCIATION
会報第23号目次
会長あいさつ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
《各表彰状受賞》
第 61 回九州地区獣医師大会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
獣医師の誓い―95 年宣言・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
日本獣医師会・獣医師会活動指針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
《特別寄稿》
骨折の治療から発案した新しい再生医療
佐賀大学大学院工学系研究科 先端融合専攻医工学 教授・九州大学生医研 非常勤講師 中 山 功 一・・・・・・・・・・・・・・ 7
《特別講演》平成23年度(第53回)全国家畜保健衛生業績発表会 農林水産大臣賞受賞
家畜伝染病防疫対策チームの新設と初動防疫体制の強化
豊後大野家畜保健衛生所 山 田 倫 史・・・・・・・・・・・・・ 11
《業 績》
平成24年度獣医学術九州地区学会学会長賞受賞(小動物獣医学会)
犬の緑内障 61 眼 (46 頭 ) の視覚に関する長期的予後の検討
大分小動物病院 吉 野 信 秀・・・・・・・・・・・・・ 15
平成24年度獣医学術九州地区学会九州地区獣医師会連合会長賞受賞(小動物獣医学会)
犬のレッグ・カルベ・ペルテス病の外科治療において 77 年間の常識を覆す外科手術法の提案
動物整形外科病院 樋 口 雅 仁・・・・・・・・・・・・・ 18
平成24年度獣医学術九州地区学会フロアー賞受賞(産業動物獣医学会)
口蹄疫との類症鑑別を要したウイルス性疾病診断事例
大分家畜保健衛生所 首 藤 洋 三・・・・・・・・・・・・・ 24
平成24年度獣医学術九州地区学会フロアー賞受賞(小動物獣医学会)
気管虚脱における PLLP 装着時の非貫通式縫合法に関する考察
末松どうぶつ病院 末 松 正 弘・・・・・・・・・・・・・ 27
〈産業動物論文〉
本県における高病原性鳥インフルエンザの野外株に対する抗原検出法の比較検討
大分家畜保健衛生所 壁 村 光 恵・・・・・・・・・・・・・ 30
〈小動物論文〉
犬のレッグ・カルベ・ペルテス病にて内科療法が奏効した3症例
動物整形外科病院 樋 口 飛 鳥・・・・・・・・・・・・・ 32
気管虚脱の外科的矯正術後に喉頭麻痺がみられた犬の2例
末松どうぶつ病院 山 城 識 子・・・・・・・・・・・・・ 35
クリプトコッカスによる視神経炎を疑う犬の 1 症例
大分小動物病院 吉 野 信 秀・・・・・・・・・・・・・ 38
〈公衆衛生論文〉
管内の大規模食鳥処理場における高病原性鳥インフルエンザ防疫体制の構築
北部保健所 岡 本 由美子・・・・・・・・・・・・・ 42
牛の肝臓、胆嚢内胆汁からの大腸菌群、志賀毒素産生性大腸菌検出状況
大分県食肉衛生検査所 西 本 清 仁・・・・・・・・・・・・・ 46
《千村ギャラリー》・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49
《第61回九州地区獣医師大会並びに平成24年度獣医学術九州地区学会について》・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57
《資料及びトピックス》
・公益社団法人移行までの経過と今後の活動について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61
・飼養衛生管理基準について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 64
・
「第 10 回全国和牛能力共進会長崎大会」を終えて・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66
・動物愛護管理法の改正について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68
・子猫の譲渡会の開催について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70
・動物愛護支援事業の進捗状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72
・平成 24 年度大分県動物愛護フェスティバルについて・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76
・大分高島におけるウミネコの調査報告(第8報)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79
・超音波肉診断装置を用いた黒毛和種肥育牛の生体肉質判定精度の向上・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84
・ウシの雌雄産み分け技術・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88
・
「市民公開講座」を開催しました!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92
・大分県獣医師会館の改修について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 94
《支部活動報告》
・大分支部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 95
・宇佐 ・ 高田支部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 97
《部会だより》
・産業動物部会だより・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 99
・小動物部会だより・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100
・家畜衛生部会だより・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112
・公衆衛生部会だより・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113
《委員会だより》
「第 62 回九州地区獣医師大会並びに平成 25 年度獣医学術九州地区学会準備委員会」・・・・・・・・・・・・・・117
《会員の声-エッセー》
・苦闘!!ダイエット作戦(BMI 22 &別大マラソンを目指して)
大分家畜保健衛生所 長 岡 健 朗・・・・・・・・・・・・119
・第 5 回 2012 スペイン釣りワールドカップ大会
食肉衛生検査所 金 只 登・・・・・・・・・・・・122
・家づくり
食肉衛生検査所 山 口 勝 寛・・・・・・・・・・・・124
・トルコ共和国新婚旅行記
食品安全・衛生課 宇都宮 公 平・・・・・・・・・・・・127
《病院紹介》
・すえつぐ動物病院(別府市)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・131
・えとう動物病院(別府市)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・133
・ファミリア動物病院(別府市)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・136
《新入会員紹介》
・下 瀬 昭 広(中津支部 ハートフル動物病院)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139
・ 甲 斐 岳 彦(大分県食肉衛生検査所)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139
・山 城 識 子(日田支部 末松どうぶつ病院)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139
・ 甲 斐 雅 裕(大分県食肉衛生検査所)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139
・ 鶏 尾 めぐみ(大分県農業共済組合連合会)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140
・久々宮 弘 子(大分市保健所)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140
・ 穴 井 友加里(大分支部 隼人どうぶつ病院)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140
・中 瀬 真 紀(東部保健所)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140
・森 迫 望(豊後大野家畜保健衛生所)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141
・ 加 藤 洋 平(宇佐家畜保健衛生所)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141
《お知らせ》
・平成 24 年度日本獣医師会獣医学術学会年次大会(大阪市)について・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・143
・第 62 回九州地区獣医師大会並びに
平成 25 年度獣医学術九州地区学会の開催について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・147
・獣医師法第 22 条の届出について・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・149
・大分県獣医師確保特別修学資金募集の案内について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・150
《会務通信》
・事務局日誌・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・151
・編集後記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・154
《広 告》
《大分県獣医師会館周辺見取図》
《表紙写真》―『きつね踊り』
《裏 表 紙》―『アサギマダラ』
会長あいさつ
ご 挨 拶
公益社団法人 大分県獣医師会 会 長 麻 生 哲
一昨年の口蹄疫、昨年の高病原性鳥インフルエンザと畜産業界は度々の禍いをなんと
か乗り越え、10 月長崎県佐世保市で開催された全国和牛能力共進会で宮崎県が9 部門中
5 部門で日本一となり、大分県も2 部門で最優秀賞と、畜産復活のノロシを挙げることが
出来たことは明るい話題です。が、政治は混迷が続き、残念ながら不況も続いております。
そして、ついに総選挙に突入しました。本誌発刊時にはいかなる政権が誕生しているので
しょうか?
幸い悪性の伝染病の発生もなく平穏に来たことは一息ついた1 年の様に思えます。
さて、県獣にとっての慶事は4 月1 日付で公益社団法人格が認可され、新生大分県獣医
師会が誕生したことであります。これも5 年前の佐藤州司常務の時代から準備に取り組
み、工程表に則り、小野譲前常務の献身的な努力と岡常務の八面六臂の働きによるもので
九州では福岡県獣、長崎県獣と同じ日付けで取得できました。公益社団法人化には賛否の
意見がありますが、獣医師会が世間に評価される為には最低限の条件であり多くの市民県
民並びに企業等の支援を受けられ社会的貢献するための追い風になると確信しておりま
す。
次に動物管理法の一部改訂もありました。昨今の財政困窮の中にあって大分県は新規予
算を組み猫の譲渡会をスタートさせました。それに伴う支援事業として、県獣も枠を拡げ
犬、猫の避妊、去勢手術の補助〈飼い主負担一律5000 円〉を決め、殺処分頭数減少に又一
歩大きく前進出来ると思います。開業会員の皆様のご支援、ご協力に厚くお礼申し上げま
す。
更に大分県獣医師会館の一部改修も終え、会員の皆様の利用促進にも努め、一般市民の
皆様の利用もし易くなりました。
また今期中には一部規約改定を行い、一支部、一理事体制を実現したいと考えています。
最後になりましたが、来年は本県が九州大会の当番になります。平成25 年7 月開館予定
の大分駅南口のホルトホールに於いて学会、大会を新企画で取組む予定です。9 月に準備
委員会を立ち上げ、10 月宮崎大会視察でスタートいたしました。皆様の絶大なるご支援御
−1−
協力をお願い申し上げます。
獣医師だからこそ出来る社会貢献、獣医師にしか出来ない社会貢献に邁進しましょう。
本誌編集にご尽力を賜りました編集委員の皆様、ご投稿をいただきました会員の皆様に
厚くお礼を申し上げると共に、来る平成25 年が会員御家族の皆様にとりまして安寧の1
年でありますよう御祈念申し上げ挨拶といたします。
−2−
各表彰状受賞
第61回 九州地区獣医師大会
表 彰 状 受 賞
九州地区獣医師会連合会
会長表彰功労者
友 永 幸 宏
−3−
獣医師の誓い−95年宣言
人類は、地球の環境を保全し、他の生物と調和を図る責任をもっている。
特に獣医師は、動物の健康に責任を有するとともに、人の健康についても
密接に関わる役割を担っており、人と動物が共存できる環境を築く立場に
ある。
獣医師は、
また、人々がうるおいのある豊かな生活を楽しむことができる
よう、広範多岐にわたる専門領域において、社会の要請に積極的に応えて
いく必要がある。
獣医師は、
このような重大な社会的使命を果たすことを誇りとし、自らの
生活をも心豊かにすることができるよう、高い見識と厳正な態度で職務を
遂行しなければならない。
以上の理念のもとに、私たち獣医師は、次のことを誓う。
1 動物の生命を尊重し、その健康と福祉に指導的な役割を果たすとと
もに、人の健康と福祉の増進に努める。
ヒューマン・アニマル・ボンド
2 人と動物の絆を確立するとともに、平和な社会の発展と環境の保全
に努める。
3 良識ある社会人としての人格と教養を一層高めて、専門職としてふ
さわしい言動を心がける。
4 獣医学の最新の知識の吸収と技術の研鑽、普及に励み、関連科学と
の交流を推進する。
5 相互の連携と協調を密にし、国際交流を推進して世界の獣医界の
発展に努める。
(1995年6月27日、社団法人日本獣医師会・第52回通常総会において採択)
−4−
「獣医師の誓い−95年宣言」
について(説明)
この「獣医師の誓い」は、世代や獣医師の職域を越えて、しかも実行性のあるものとして、すべ
ての獣医師に受け入れられるよう、獣医師倫理の総論的、最大公約数的な事項を集約したもので、
基本理念としての前文と5項目からなる各論で構成されております。
この誓いは、新しいセオリーや意見を述べるものではありませんし、また、高邁な精神訓話をし
ようとするものでもありません。当たり前のことを羅列しただけです。この当たり前のことを折に
触れて改めて考え、そして自分自身の認識として、普段の行動の拠りどころとしていただきたいと
願うものです。
また、「95年宣言」という副題は、この誓いを獣医師自らが内に向かって誓うということだけ
でなく、外に向かって、社会に対して宣言することにより、獣医師の責任を一層明確にすると同時
に、これを尊守しなければならないという気持ちが喚起されることを期待して特に付したものであ
ることを強調しておきます。
前文について:
獣医師とは何か、獣医師の役割は、そして獣医師のありようについての議論の集約です。また、
獣医師としての誇りをその職務の遂行と表裏をなすものとして位置付け、さらにプロフェッショナ
ルとして自らを厳しく律するよう求めるとともに、獣医師自身の豊かさの追求にも触れております。
各論について:
前文の理解と前提にたって、より具体的な目標として、次の5項目にわたる事項をとりあげまし
た。獣医師の任務、職域が広範多岐にわたることから、盛るべき内容は多く、その集約、整理、表
現などに苦労いたしましたが、より明快な主張となるよう工夫しました。
1は、獣医師の幅広い任務を象徴的にとりあげたもので、動物の生命に直接関わるだけでなく、
公衆衛生分野あるいはバイオメディカル分野などにおいて人の健康にも密接に関わる専門職として
の社会的な使命をこのような形で常に認識するよう、獣医師の自覚を促すものです。
2は、近年、重要となっている人と動物との関係−ヒューマン・アニマル・ボンドをより良く築
くことについて、獣医師が両者に関わる専門職としてその職責を果たしていくことを通じて、平和
な社会の発展と環境の保全に寄与するよう求めるものです。
3は、獣医師が社会性、広い市民性を身につける必要を述べたもので、獣医師に限らず職業的科
学者、専門家に往々にして見られる内面的な知性の狭隘性、社会性の欠如に対し、より幅広く教養
を身につけるなど、専門分野以外のことに関する自己研鑽についても一層の努力を呼びかけるもの
です。
4は、科学者としての獣医師が、当然のこととして、日進月歩の獣医学術の研鑽に常に努め、あ
わせて医学や生物学などの自然科学さらには社会科学を含む関連科学との交流を積極的に推進する
ことにより、獣医学術のみならず、獣医学術と密接に関連する科学の発展についても貢献するよう
願うものです。
5は、独善的な傾向がみられがちな専門家−獣医師に対して、全体的なまとまりを強く呼びかけ
るとともに、国際的にも獣医師相互が広く交流し、様々な関係情報の交換・伝達を積極的に図って
いくことによって、日本だけでなく、世界の獣医界が発展するよう期待するものです。
いのちみつめる。
いのち育む。
日本獣医師会
社団法人
−5−
−6−
特別寄稿
骨折の治療から発案した新しい再生医療
佐賀大学大学院工学系研究科 先端融合専攻医工学 教授
九州大学生医研 非常勤講師
中 山 功 一
現在の再生医療の研究を大雑把に分類すると、二
感染症を中心にほんの数十年前では考えられな
かったような病気が、医学、薬学の著しい進歩・発
つの研究に分類することができます。
達のおかげで多くの患者さんの命が救われているよ
一つはどこから細胞を持ってくるかという細胞
うな時代になりました。しかし、いまだに内科的な
ソースの研究、もう一つはその細胞をどのようにし
治療法では根治できず、臓器移植が唯一の治療法と
て患者さんに移植するかという移植方法の研究です。
される病気の患者さんが世界中に数多くいます。そ
前者の細胞ソースの研究は、こわれた臓器や組織
の臓器移植も近年、免疫抑制剤の発達のおかげで、
を修復させるための細胞をどこから入手するかとい
臓器移植が先進国では標準的な治療と目されるよう
う研究です。骨や軟骨、脂肪などの組織は成人の骨
になってきました。日本でも臓器移植法が制定され、
髄や皮下脂肪の中に含まれる間葉系幹細胞から容易
本格的な脳死臓器移植が行われるようになって十年
に作ることができており、すでに 10 年ほど前から、
以上経過しました。しかし、まだまだ一般的な医療
骨折や関節軟骨損傷などで臨床応用されています。
というには程遠い現状です。その理由は、待機患者
同じ体の中でも採取が容易であったり、培養・増殖
に対して圧倒的にドナーの数が足りていないという
が簡単な臓器・部位がありますが、逆に成人からは
のが一番の理由のようです。この臓器不足は深刻な
採取・培養が不可能である臓器もあり、肝臓細胞や
問題であり、臓器を求めて海外に出ていく日本の患
心筋細胞などが自分自身の細胞を移植しようとして
者さんも散見されます。しかし、世界でも一番臓器
も不可能と目されていました。そのため受精卵を破
移植が進んでいると目されている米国でも、ドナー
壊して採取する ES 細胞を肝臓や心臓の細胞に変化
の数が徐々に減ってきているそうです(自動車安全
させ、患者さんに移植しようという研究が活発に
性能の向上、特にエアバッグの普及率と相関がある
なっていましたが、生命倫理に抵触するため、また
ようです)
。そのため、臓器を求めて闇の臓器売買
拒絶反応のリスクも残存するため、なかなか臨床応
などが行われているという噂もながれており、実際、
用には進められていませんでした。そのような細胞
日本でも違法な臓器提供で逮捕者が出たという事件
ソースの研究の中に大きなブレイクスルーを作った
は記憶に新しいかと思います。
のが山中先生の iPS 細胞技術です。この技術を使
うことにより、自分自身の細胞をリセットさせ心臓
そういった普及しない臓器移植の様々な問題が浮
や肝臓の細胞が作ることが可能になりました。この
き彫りになってきた 1990 年代後半にボストンの研
iPS 細胞のおかげで、従来動物モデルが無く、なか
究者たちが、ネズミの背中に人間の耳を成長させた
なか研究が進まなかった病気のモデルが、患者さん
という衝撃的なニュースが世界中を駆け巡りました。
から採取した細胞を使うことによって試験管の中で
同じ時期に、世界初のクローン羊のドリーのニュー
再現できるようになり、多くの新しい薬が作られる
スや、ヒト ES 細胞の樹立のニュースと共に、再生
ようになることが期待されています。
医療というのが世界中の研究者にとって夢ではなく
実現できそうだと認識され、ホットなテーマになり
このように細胞ソースの研究が非常に競争の激し
ました。世界中の多くの研究者が、さまざまな細胞
い分野である一方、その作られた細胞をどのように
や薬物や遺伝子、ポリマーなどの生体材料を組み合
して患者さんに投与・移植するかという研究も非常
わせて、他家臓器移植にとってかわるような、人工
に活発に行われています。
的な臓器を作ろうという研究を競い合っています。
もっとも簡単な細胞の移植方法は、ばらばらに
−7−
なった細胞を点滴による全身投与や局所にそのまま
この細胞の塊、私たちはスフェロイドと呼んでい
注入するという方法です。実際、培養・増殖させた
ますが、この1千個から1万個程度の細胞の集合体
患者さん自身の骨髄由来幹細胞を静脈から点滴する
をひとつのユニットとして、スフェロイド同士をな
ことにより、脳梗塞で麻痺した患者さんの麻痺が改
らべてあげると、スフェロイド同士が一晩程度で融
善したり、末期の肝硬変の患者さんの病状が改善し
合するという現象も 1970 年代には知られていま
たりしています。しかし、血液系以外の細胞は、バ
した。
ラバラの状態では長期間生存することができず、実
際、複数の研究でバラバラに体内に投与された細胞
我々はこのスフェロイドの融合に注目し、骨組み
の6割近くはすぐに死んでしまうことが分かったた
となる足場材料を必要とせずに、細胞の塊を積み木
め、移植の効率が悪いと考えられています。さらに
のようにならべるだけで立体的な構造体を作ること
韓国のあるバイオベンチャーが行った治療で高濃度
に成功しました。
の細胞を静注した症例に、移植された細胞が肺塞栓
ただ、単純に培養液の中で細胞の塊を積み上げて
を起し数名の患者さんが死亡した事件も起こってい
も、すぐに形が崩れてきます。
ます。
そこで骨折の治療である、ギブスや内固定という
このため、細胞を立体的に臓器の形に加工し、外
方法にヒントを経て、細胞塊を仮止めするという方
科的な移植によって臓器を再生させようという考え
法を思いつきました。すなわちスフェロイドをたく
が、ヒトの耳をマウスの背中に作った研究を皮切り
さん積み上げて、スフェロイド同士が融合するまで
に世界中の研究者の間で広まってきました。
の間、なんらかの材料で仮固定するという方法です。
融合しきったところで、固定材を外すことによって、
現在、立体的な臓器を作るための黄金律として、
“細胞”
、
“骨組みとなる生体材料”
、
“成長・治癒を
細胞だけで構成される立体的な構造体が作れるよう
になりました。
促進するためのタンパク質や遺伝子”の三つの要素
が重要だと考えられており、世界中の研究者がさま
ただし、このスフェロイドは一個の直径が 0.2
ざまなコンセプトやアイデア、対象臓器によって3
ミリから 0.5 ミリと大変小さく、手作業で積み上
つの要素の組み合わせを試行錯誤しながら日夜研究
げるのは至難の業でした。
に邁進しています。
そのため、ロボットの技術を導入することにより、
そのような臓器再生の研究の中で、我々は細胞だ
けで立体的な臓器を作る方法を開発しました。これ
自動的に細胞を積み上げる装置も合わせて開発しま
した。
は骨折の治療、―バラバラになった骨片を適切な位
現在、この装置を使い、心臓や肝臓、血管、半月板、
置に仮固定し、体の内外の環境を整えてあげるとあ
とは、骨が勝手に架橋し、骨折が治癒する―整形外
関節軟骨など様々な臓器を作ろうとしていろんな大
科ではあたり前の考え方ですが、この考え方を細胞
学の先生方と共同研究を進めています。特に樋口先
に持ち込むことによって、世界中の研究者とは全く
生にご紹介いただいた鹿児島大学農学部獣医学科の
違ったコンセプトによってあたらしい再生医療を確
三角教授とは新幹線開業の恩恵にあずかって、密接
立することができました。
に共同研究をすすめており、近い将来この新しい再
生医療を受けた競走馬がレース復帰できる日が来る
再生医療の研究者には以外と知られていないので
かもしれないと期待しています。
すが、バラバラになっている細胞たちを一か所に集
めて乾燥しないようにしておくと、おおよそ一晩で
細胞たちが集まって一つの塊をつくるという現象が
あります。この現象は高校生の生物の教科書にも
載っている有名な現象で、オリジナルは 1907 年
に発表された海綿の研究にさかのぼります。
−8−
中山 功一(41歳)
佐賀大学大学院工学系研究科 先端融合専攻医工学 教授
九州大学生医研 非常勤講師
平成 9 年 九州大学医学部卒業
九大整形外科入局
福岡日赤病院、九州医療センター、県立宮崎病院、九大病院、等勤務
平成13年 九大整形外科臨床大学院入学
平成18年 九大病院特任助教
平成19年 JST育成研究プロジェクトリーダー
平成20年 佐賀大学工学系大学院先端融合医工学教授
平成20年 九州大学生体防御医学研究所非常勤講師
−9−
特 別 講 演
平成23年度(第53回)全国家畜保健衛生業績発表会 農林水産大臣賞受賞
家畜伝染病防疫対策チームの新設と
初動防疫体制の強化
豊後大野家畜保健衛生所
山
近年国内では、特定家畜伝染病が広域的に
田
倫
史
表-1 大分県の特定家畜伝染病発生に係る防疫対策状況
発生しているなかで、大分県では 2004 年
の高病原性鳥インフルエンザ(以下HPA
I)の発生以降、数々の防疫活動を行うとと
もに、様々なケースを想定し防疫演習を実施
してきた
(表1)。これらの活動を行うなかで、
2011 年の大分市におけるHPAI発生時の
防疫活動を中心として問題点を洗い出し、初
動防疫体制の強化を図ったので紹介する。
2011 年2月2日に大分市内で発生したH
PAIの発生時から初動防疫完了までの経過
図-1 大分市発生時における防疫活動と課題
については、14 時 20 分に当家畜保健衛生
所は農場主より異常家きんの発見通報を受理
し、23 時 50 分に疑似患畜確定を受け防疫
作業を開始した。翌3日、午後 12 時 45 分
に埋却作業が終了し、この間、農場における
と殺から埋却までの作業に県職員をはじめ約
240 人の作業者が従事した。 これらの措置
は、通報から 24 時間以内に完了することが
できたが、大きく以下の4点が課題として浮
き彫りとなった。(図-1)
(1)多くが畜産未経験者である作業従事者
に対し、指示及び説明不足により防疫活動全
体の理解不足と、指揮命令系統の不明瞭により混乱が生じた。
(2)通報から防疫措置開始までが短時間であったため、現地の事前調査が十分に行えず、資材・機材等の
不足が生じたこと、また、作業手順の周知ができなかったことなどから、作業効率が低下した。
(3)作業時間が夜間であったことにより、不十分な作業環境整備による作業者への負担が増加した。
(4)各部所(作業者集合場所・農場・現地本部・県総合本部)間の連絡体制の一部不備により、情報錯そ
うが発生した。
このため、
①家畜保健衛生所以外の職員を含む幅広い分野から人材を確保し、防疫措置を熟知したリーダー
の育成による現地対応力の強化。②初動防疫に係る備蓄態勢の強化と、民間からの資材・機材の調達・配送
方法の整備による迅速な初動防疫作業着手態勢の整備と効率化。③関係機関との情報の収集及び伝達システ
ムの再構築の3つの対策を講じ問題解決を図った。
− 11 −
①人材育成
図-2 家畜伝染病防疫対策チーム(B-SAT)
防疫措置に関する人材育成を行うため、2011 年5月に
家 畜 防 疫 対 策 チ ー ム(Boekitaisaku-Special Assistant
Team:以下B-SAT)を新設した。このチームは、県
防疫対策本部内に配置されることで県下一円に対して機動
力を有する組織とし、家畜保健衛生所や畜産研究部の獣医
師及び畜産普及員の28名で構成されている。また、獣医
師以外の職員を任命することで、多くの職域との連携強化
と技術集積、獣医師の代替性確保も行える体制となってい
る。
このチームの活動内容は、発生時においては、現地本部
が行う農場のと殺処分や消毒等の一連の初動防疫活動を実施するための事前の調査や防疫計画書の作成に対
するサポート及び代行、また、実際のと殺作業等の防疫活動時の各作業班のリーダー及びそのサポート等で
ある。
(図-2)
よって、平時においては、FMD(牛)
・FMD(豚)
・HPAIのワーキンググループをチーム内に設置し、
実践的な演習として、各畜種及び飼養形態での繋留保定方法の実習を定期的に行い、さらに豚や鶏において
はと殺処分の演習を実施した。これらの演習により、日常、
図-3 各グループにおける演習・検討会
特定の畜種しか取り扱わない職員に対しても技術習得が図
られ、と殺作業時の家畜の取り扱い技術が向上した。(図
-3)
また、これらの演習を行う際に、必要な資材についても
検討を行った。図の4の上段は、種鶏農場内にある資材の
鉄パイプとカゴを用いた効率的な運搬とブルーシートを用
いたと殺方法を検討しているところであり、下段は、肥育
農場において頭絡等が装着されていない条件での保定のた
めのロープの長さやロープワークについて検討を行ってい
図-4 各グループにおける演習・検討会
るところである。これらの、検討結果は、と殺作業マニュ
アルとして整備することで、作業効率の向上と作業者の安
全性を確保することができた。
また、と殺処分の模擬演習を繰り返すことで、各農場ご
とに異なる条件での作業性とまん延防止を考慮した動線や
作業方法及び必要人数や資材等の初動防疫作業全体のプラ
ンニングが行えるようになり(図ー5)
、各チーム員が農
場ごとに異なる施設や規模等の防疫作業条件に合わせたと
殺作業の手順の作成や修正、作業従事者への指揮命令系統
が強化された。
図-5 各グループにおける演習・検討会
これらの各種防疫措置の研修を行った人材(B-SA
T職員)を、必要な箇所へ迅速に配置し活動させるため
に、携帯メールを用いた連絡網を構築した。このシステム
は、疑い事例を受理した段階で、県庁からB-SAT職員
に対し一斉メールが送信され、現在地が返信された後、現
地本部の要請に基づき県本部が各B-SAT職員の現在地
と派遣先及び任務内容を考慮して各個人にメールにて出動
− 12 −
要請を行うもので、短時間に効率よく着任できる体制
図-6 備蓄体制等の強化(防疫資材の備蓄)
となっている。
これらの活動内容は、関連部所を対象に報告会を開
催し、情報を共有することで家畜保健衛生所以外の所
属においても防疫活動に対しての理解向上が図られた。
なお、2012 年度の人事異動においても、各地域ごと
に均等にB-SAT職員を任命し活動を継続実施する
とともに、本年度の各研修会では、一般職員及び団体
職員等も自由に参加できる形式として実施している。
②備蓄体制等の強化
本県は、2003 年度に県単独事業として海外伝染病
防疫資材備蓄事業を設け、県中央の大分家畜保健衛生
図 -7 備蓄体制等の強化(各団体との協力体制)
所に防疫資材及び検査資材の備蓄を行っていた。しか
し、国の改正防疫指針に基づく、遺伝子検査による疑
似患畜の決定や原則として病性の判定後 24 時間以内
にと殺を完了するなどの迅速な防疫措置に対応するた
め、2010 年に大分家畜保健衛生所以外の県内3家畜
保健衛生所にも新たに 200 人分の防疫資材をそれぞ
れ備蓄することとした。このことにより発生地への速
やかな搬送と、資材の不足時に交互に補給が行える体
制を構築した。(図-6)
また、防疫活動においては、資材の供給や運搬、土木工事、車両消毒委託業務等に対して各種の企業及び
団体の協力なしでは実施できない。このため、夜間や休祭日においても連絡及び受け入れができるように各
団体と協定を締結するとともに、必要に応じて車両消毒方法等の合同演習を実施している。(図-7)
− 13 −
③連絡体制及び情報網の強化
図 -8 連絡体制及び情報網の強化
2004 年の大分県玖珠郡におけるHPAI発生
時には、各家畜保健衛生所と県庁間での協議や会
議を行うたびに担当者等が現地不在となり、活動
が一時中断するとともに、情報のスムーズな伝達
が図れなかった経験から、2004 年度にTV会議
システムを導入し、2011 年での発生時において
は、家畜保健衛生所以外の関係部署との情報の共
有が不足するなどによる混乱が生じた。このため、
現地の防疫活動の支援を行う各振興局に新たにT
V会議システムを導入して拠点を拡充するととも
に、TV会議で画像診断を実施するための高解像
度対応のTVシステムを新たに増設した。
図 -9 県防疫演習における検証結果
また、同じく 2004 年のHAPI発生時に、制
限区域の設定や区域内対象農家の抽出等に多大な
労力を要した経験から、GISによる防疫マップ
システムを導入していた。このため今回の発生時
では、わずか2時間足らずで制限区域の告示や移
動制限対象農家の選定が実施できたが、家畜伝染
病予防法の改正による農家ごとの埋却地情報(埋
却地選定のための面積及び傾斜等)や消毒ポイン
ト選定機能等を新たに追加し、総合的な家畜総合
防疫マップシステムとして少人数で多数の項目を
机上で事前調査できるシステムを構築した(図-
8)。これらのシステムの整備により迅速な情報
収集と連絡体制の強化が図られた。
これら3つの対策については、2011 年 10 月 27 日に県の実動防疫演習において当日朝まで発生地を特
定しない方法で、県総合本部及び現地対策本部の設置と運営、B-SAT の機動性、動員者の確保と資材の運搬、
リース業協会等との連携の4点について実効性を確認した。その結果、2011 年2月に大分市で発生した事
例と比較して、設定農場や飼養羽数が異なる等の違いはあるものの、防疫作業活動準備の完了までが約3時
間短縮され、各種対策が十分機能することが実証された。(図-9)
今回の講じた対策は、過去の教訓をもとにしたもので、今後に対して万全というわけではない。まずは、
農場ごとに発生防止のためのきめ細かな衛生管理を推進していくとともに、今後もより実践的な演習やその
検証を行い、万一特定家畜伝染病が発生した場合には、迅速かつ的確な初動防疫対応が行えるよう、事前対
応型の防疫体制のさらなる強化に努めていきたい。
− 14 −
業 績
平成24年度 獣医学術九州地区学会学会長賞受賞(小動物獣医学会)
犬の緑内障 61 眼(46 頭)の
視覚に関する長期的予後の検討
大分小動物病院
吉
野
信
秀
陥っている場合が多く、視覚を回復できる症例は少
ない。また、視覚を回復したとしてもそれを長期的
に維持できる症例はさらに少数となる。一方オー
ナーにとって視覚の維持は重大な関心事であるため、
罹患眼の状態による予後の成績を提示することは、
犬の緑内障治療の現実を理解してもらい治療法を選
択するうえで有用な指針になると思われる。そこで
今回、当院に来院した緑内障症例の視覚に関する予
後調査を行い、過去の報告と比較検討した。
【材料と方法】
2009 年 か ら 2012 年 に 当 院 に 来 院 し、Tonopen あるいは TonoVet を用いた眼圧測定により緑
内障と診断した 61 眼(46 頭)に関して回顧的調
査を行った。視覚の評価はメナース反応あるいは
Dazzle 反応が陽性で、かつオーナーが見えている
と認識しているものを視覚ありとした。
【結果】
犬種内訳は、柴犬が最も多く 17 眼 (12 頭 )、次
いで雑種犬 9 眼 (6 頭 )、トイプードル 5 眼 (4 頭 )、
シーズー 4 眼 (3 頭 )、マルチーズ 4 眼 (3 頭 )、そ
の他の 14 犬種で 22 眼 (18 頭 ) であった。雌雄別
【はじめに】
内訳は 46 頭中、雄 9 頭、雌 37 頭で雌に多い傾向
犬の緑内障は来院時にすでに不可逆的な失明に
があった。緑内障の分類別内訳は 61 眼中、続発性
− 15 −
であった。TSCP の適応としたのは 31 眼中 12 眼
(39%) であったので、TSCP を実施した症例にお
いては 9/12 眼 (75%) が 6 か月後に視覚を維持し
ていた。このうち 1 年後に視覚を維持していたの
は 6/9(67%) であった。3 眼は現在視覚はあるが 1
年未満の経過のため除外した。
が 23 眼、原発性が 31 眼、原因不明が 7 眼であっ
た。原因不明の 7 眼は初診時にすでに牛眼を呈し
すべて失明していた。6 か月後に視覚を有していた
症例は 12/61 眼 (20%) であった。そのうち続発
性 が 3/23 眼 (13%)、 原 発 性 が 9/31 眼 (29%) で
あった。視覚維持した続発性の 3 眼中 2 眼が水晶
体前方脱臼による緑内障で、水晶体摘出あるいは整
復の手術を受けた症例であった。1 眼は硝子体圧上
【考察】
昇による浅い前眼房のため隅角閉塞をおこした症例
全緑内障症例のうち、半年後に視覚の維持が可能
で内科的管理により維持可能であった。視覚維持し
な症例は 2 割という数字は犬の緑内障治療の難し
た原発性の 9 眼はすべて半導体レーザーによる経
さを物語っている。
強膜毛様体光凝固術(以下 TSCP)を受けた症例
特に続発性緑内障において原因がぶどう膜炎や腫
− 16 −
瘍であった場合は、半年後に視覚の維持が可能で
あった症例は 1 例も無かったため、内科治療にか
かるオーナーの負担を考えると早期にシリコン義眼
や眼球摘出などを勧めるのが適切と思われる。
水晶体脱臼に外科手術を行い半年後に視覚を維
持していた症例は 4 眼中 2 眼 (50%) であったため、
手術に際してオーナーの理解が必要と思われた。
原発性緑内障においても半年後の視覚維持率は
29% と決して高くないが、症例を選択して TSCP
を実施した場合は 75% と良好な成績が得られた。
TSCP の最も大規模な報告は 1997 年の Cook に
よるもので、半年後の視覚維持率は 25% であっ
た。その後 2001 年に Hardman は 1 回照射量を
下げて照射時間を延ばすことで視覚維持率 50% の
成績を示した。当院ではさらに 1 回照射量を下げ
た事に加え、照射部位を角膜輪部から二人より 1
~ 3mm 遠い位置に 2 列に行い、1 回目の治療時は
眼球の上半分 ( 背側 180°)、2 回目の治療時には下
半分 ( 腹側 180°) に照射する方法をとった。また
Cook と Hardman は内科的治療からの離脱を目指
したが、当院では炭酸脱水酵素阻害剤やステロイド
剤などの点眼を可能な限り続けている。複数回の治
療が必要になった率は 2 人に比べて高いため、当
院の方法は凝固できる毛様体突起の量が少ないかも
しれず、2 回目のために照射スペースを残す方法は
有用と思われる。
術後の成績には
TSCP の手技だけでなく、個々
の症例の状態や症例選択、術前の内科治療、犬種の
偏りなど多くの要因が絡むため一概に比較すること
はできないが、年を追うごとに緑内障治療が進歩し
ているのが現在の状況である。TSCP 治療による
視覚維持率が半年後で 75%、1 年後で 67% とい
う成績は、オーナーを真に満足させるには至らない
までも治療法を提示する上で十分に理解を得られる
成績と思われる。
− 17 −
平成24年度 獣医学術九州地区学会九州地区獣医師会連合会長賞受賞(小動物獣医学会)
犬のレッグ・カルベ・ペルテス病の外科治療において
77 年間の常識を覆す外科手術法の提案
○樋
動物整形外科病院
樋
メッシュ動物病院
古
海の中道動物病院
杉
北海道大学大学院獣医学研究科
奥
酪農学園大学獣医学群獣医学類伴侶動物医療学分野 泉
動物整形外科病院
1935 年(Tutt により獣医学文献に報告)以降 77 年間と
いう長い期間、獣医療での唯一の外科手術は、大腿骨頭骨頚
切除術(FHO)だけであった。
最近人工関節全置換術(Micro THR)を適応した症例も
発表された。
研究の目的
1.本来の関節が温存できる手術法の検討
2.早期の疼痛解放・機能回復が可能な方法
3.人工骨頭など人工物を使用しない方法
4.手術手技が獲得出来易い複雑でない方法
5.極力短時間で可能な手術方法
レッグカルベペルテス病の症例は年間に何例くらいありま
すか?
対象病院 プレビコックスを多く使用する病院 133 病院
(北海道 -鹿児島)
1. 基本、レントゲンを撮らないのでレッグカルペペルテ
スを診断していない。
2. レッグペルテスはプードルに多い。レッグペルテスは
年間3例くらい手術する
(本当はもっといるが、見逃している症例があると思う。)
3. オペをしてしまう事が多い
4. 人工関節で治療している。2.87 ~ 3.80 件 / 病院 / 年
資料提供 MERIAL 佐藤善生 2012 9/1
− 18 −
口
口
賀
山
村
澤
雅
飛
素
伸
正
康
仁
鳥
也
樹
裕
晴
臨床症例1
Poodle
年齢 9ヵ月 体重 2.3kg 性別♂
3ヵ月前より跛行。内服薬投与するも効果がない。
臨床症例2 Italian Greyhound
年齢 10 ヵ月 体重 3.8kg 性別♀
3ヵ月前より跛行。内服薬投与により
5ヵ月間良好に推移。
5ヵ月経過時より内服薬の効果がなくなり
右後肢挙上。
臨 床 症 例 1 Poodle 年 齢 9 ヵ 月 体 重 2.3kg 性 別 ♂
3ヵ月前より跛行。内服薬投与するも効果がない。
伸転位での診断は、難しいが、臨床症状・視診・触診そし
て、X線診断でおこなう。
X線診断では、フロッグレッグポジションにて撮影するこ
とで、容易に診断できる。
フロッグレッグポジションX線写真にて Pistol grip 変形
が観察され、軟骨下骨の透過性亢進が観察される。
骨切りした大腿骨骨頭や骨格標本にて、その部位がよく理
解できる。
通常は、内科療法によく反応する症例が多いが、この症例
は、反応しなかった。
後肢を挙上した姿勢が多い。
− 19 −
大転子の骨切りによって、大腿骨等へアプローチする。関
節包を再縫合するために、綺麗に切開することが重要である。
大腿骨骨頭靱帯を切断し、振動鋸により骨頭を切断した。
切断した骨頭にφ 1.25mm のエリスピンを刺入しておく。
このエリスピンを指標として骨頭を回転する。
第3転子よりφ 1.25mm のエリスピンを2本大腿骨頸部
切断端へ刺入する。
大腿骨頭を約 140°回転させた状態にて、φ 1.25mm の
エリスピンを関節軟骨より貫通するように刺入する。
その後、関節軟骨下の収まるように、φ 1.25mm のエリ
スピンを逆回転する。
術後X線写真にて切断端の十分な密着が確認できる。
股関節が安定するように、大転子は少し尾側へ移動させて、
テンションバンド固定をおこなっている。
術後早期に疼痛がとれ、2週間後には荷重が可能となり、
1ヵ月後には、完全荷重が可能となった。
術後2ヵ月経過時点にて抜釘をおこなった。
− 20 −
3DCT 画像においても、健常部が寛骨臼背側縁と接触し、
壊死部が寛骨臼背側縁と接触するのを回避できていることが
わかる。
術後早期に疼痛がとれ、2週間後には荷重が可能となり、
1ヵ月後には、完全荷重が可能となった。
2ヵ月経過時点にて抜釘をおこなった。
臨床症例2 Italian Greyhound
年齢 10 ヵ月 体重 3.8kg 性別♀
3ヵ月前より跛行。内服薬投与により
5ヵ月間良好に推移。
5ヵ月経過時より内服薬の効果がなくなり
右後肢挙上。
初 診 時 フ ロ ッ グ レ ッ グ ポ ジ シ ョ ン X 線 写 真 に て Pistol
grip 変形が観察され、軟骨下骨の透過性亢進が観察される。
内科療法が効果的であり、5ヶ月間は、疼痛も治まり良好
に推移していた。
− 21 −
5ヵ月経過時点で突然後肢挙上した。
大転子部分の疼痛は、酷く屈伸も嫌う程であった。
症例1と同様のアプローチをおこなった。
軟骨の損傷部は、2カ所存在していた。
古いと思われる壊死部は、硬度が高く、再構築されている
と思われた。
新しい軟骨下骨壊死部は、関節軟骨が浮腫を起こし、亀裂
が存在していた。
約 170°
程回転させて、再固定をおこなった。
エリスピンを刺入する際にピン同士が接触し、先端部分が
破損した。
大転子は、尾側へ移動させてテンションバンド固定をおこ
なった。
術後2ヵ月にて完全に荷重が可能となり、5ヵ月経過時点
にて抜釘をおこなった。
術後9ヵ月経過時でのX線画像にて寛骨臼と大腿骨頭との
適合性は、よかった。
− 22 −
考察
レッグ・カルベ・ペルテス病に対して大腿骨頭回転骨切り
術を実施することにより
1.疼痛の原因となる壊死部が寛骨臼背側縁と接触することが
回避出来た。
2.健常部の大腿骨頭を利用して股関節を温存することにより
荷重が可能となった。
3.早期の疼痛の消失により歩行が可能となった。
4.既存の手技を用いることが出来て術式は簡便で短時間終了
する。
5.関節温存が出来、人工物を一切残さない事が可能となった。
レッグ・カルベ・ペルテス病の外科手術に於いて 77 年間の唯
一の外科手術以外の有効な選択肢となる。
− 23 −
平成24年度 獣医学術九州地区学会フロアー賞受賞(産業動物獣医学会)
口蹄疫との類症鑑別を要した
ウイルス性疾病診断事例
大分家畜保健衛生所
○首藤 洋三、壁村光恵
【はじめに】
1cm 程度の水疱状病変を認めたとの内容で、家畜
口蹄疫(FMD)の 2010 年国内発生以降、本県
保健衛生所(家保)へ通報があった。家保の立入時
でも FMD を疑う通報が増加した。いずれの事例も
は、通報どおり鼻鏡、上唇、舌に病変が確認された
真症か否かの即時判断は容易ではなかったが、独立
が、水疱液が貯留した状態ではなく、FMD の水疱
行政法人 動物衛生研究所(動衛研)への検体ある
病変とは考えられなかったが、完全に否定は出来な
いは画像の送付や、当該家畜および同居家畜の経過
いと判断し、画像および検体を動衛研に送付するこ
観察を行って判断するなどの手段で、早期に対応し
ととした(図 1)。
てきた。今回、その FMD 様症状を呈した事例のう
ち、ウイルス性疾病診断に至った事例について報告
する。
【FMD 疑症通報】
2010 年からの FMD 疑症通報を通報日順に、畜
種、疑症頭数、臨床症状および病変部所見、動衛研
への依頼状況、経過観察後の検査成績や転帰を表に
示した(表 1)
。通報は計 12 例あり、畜主の内訳
は牛で 9 例、豚で 3 例。いずれの症例も FMD 真
症には至らなかったのは言うまでもないが、今回黄
色で示す 3 事例について以下順に報告する。
図1 事例1
表1 FMD疑症通報一覧1
材料は当該牛の病変部上皮 3 カ所 3 検体、病変
部および鼻腔スワブ 5 検体、血清を採取後送付し
た。検査の結果、FMDV 特異遺伝子は検出されず、
FMD は否定されたが、後日の検査で牛丘疹性口炎
ウイルスの特異遺伝子が検出された。以上の成績か
ら「牛丘疹性口炎を疑う」と診断した。
【事例 2】
2011 年 4 月、482 頭を飼養する肉用牛肥育農
場で、24 カ月齢の黒毛和種雌 1 頭が、23 日に体
温 40.6℃、鼻腔内に潰瘍状病変を認めたとの内容
で、治療中の獣医師から家保へ通報があった。家保
【事例 1】
の立入時は、左右の鼻腔内に小豆大の潰瘍状の病
2010 年 5 月、208 頭を飼養する乳用牛肥育農
変が認められ、その他口腔、蹄等に異常は認めら
場で、2 カ月齢のホルスタイン種雄 1 頭が、27 日
れなかった(図 2)。しかしながら病変部所見から、
に軽度下痢、29 日に起立不能となり畜主が往診を
FMD を完全に否定出来ないと判断し、動衛研へ画
依頼。往診時体温 39.0℃で、鼻鏡、上唇、舌下に
像を送付した結果、FMD は否定された。
− 24 −
施した。
図2 事例2
図3 事例3
その後当該牛および同居牛の経過観察を行ってい
たところ、当該牛に水様性の下痢が認められたこと
病性鑑定は当該牛の鼻腔スワブ、血液、ペア血清
から、牛ウイルス性下痢・粘膜病(BVDV-MD)を
を用いて、PCR によるイバラキウイルス(IBAV)、
疑い病性鑑定を実施した。病性鑑定は当該牛の鼻腔
ブルータングウイルス(BTV)、牛ヘルペスウイル
スワブと血液を材料とし、PCR 検査を実施したと
ス 1 型(BHV-1)遺伝子検査を実施し、HmLu-1、
ころ BVDV 特異遺伝子が検出されたことから、鑑
BHK、MDBK 細胞を用いたウイルス分離、IBAV
定殺による病性鑑定解剖を実施した。
No2 株および BHV-1 758 株を用いて中和試験、
病性鑑定解剖は剖検後、主要臓器、第 4 胃、腸
管、鼻鏡を材料として H-E 染色による病理組織学
BTV はゲル内沈降反応によるウイルス抗体検査を
実施した。
的検査を実施し、主要臓器、腸内容、血液を材料と
ウ イ ル ス 学 的 検 査 の 結 果、 鼻 腔 ス ワ ブ か ら
して PCR による BVDV 特異遺伝子検出、牛胎子筋
BHV-1 が分離され、ペア血清で BHV-1 抗体価の
肉細胞を用いたウイルス分離、BVDV1 型 Nose 株
有意上昇が確認された。以上の成績から「IBR」と
と BVDV2 型 KZ-91CP 株を用いた中和試験による
診断した。
ウイルス抗体検査を実施した。組織所見では化膿性
【FMD 疑症通報まとめ】
各事例とも FMD 様症状や病変は認められたが、
壊死性気管支肺炎、軽度の腸炎、鼻腔内潰瘍が観察
された。ウイルス学的検査では、すべての材料から
検査や経過観察を行うことにより、事例 1 の水疱
BVDV1 型特異遺伝子が検出され、肺、肝、脾、腎
状病変は結果的に丘疹、事例 2 は水様性下痢、事
から BVDV 細胞病原性株が分離され、BVDV 中和
例 3 は咽喉頭麻痺など FMD と異なる症状が確認さ
抗体価はともに 2 倍未満であった。以上の成績から、 れ、ウイルス性疾病診断に至った。その他の事例に
おいても FMD と異なる要因が考えられた(表 2)。
「BVD-MD」と診断した。
【事例 3】
表2 疑症通報一覧2
2011 年 11 月、28 頭を飼養する肉用牛繁殖農
場 で、133 カ 月 齢 黒 毛 和 種 雌 1 頭 が、8 日 の 夕
方、流涎を呈するのを所有者が給餌の際に確認。翌
朝も状況変わらず、往診を依頼した。往診時体温
39.8℃、泡沫性の流涎を認めたとの内容で診療獣
医師から家保へ通報があった。家保の立入り時は、
流涎の症状はあるが口腔、鼻部、蹄部、乳房等に病
変は認められず、同居牛にも異常は認められないこ
とから、現段階で FMD は疑われないという判断で、
経過観察措置とした(図 3)
。その後当該牛の飲水
は逆流し、飼料の嚥下も困難となったことからイバ
ラキ病等による咽喉頭麻痺が疑われ、病性鑑定を実
− 25 −
【家畜伝染病予防法改正】
断は極めて困難であった。しかし丁寧に経過観察を
また FMD 疑症報告については、昨年 2011 年に
行うことで、FMD と異なる症状が確認され、真症
法改正が行われ、3 項目の「特定症状」が認められ
か否かの判断はある程度可能になると考えられた。
た場合、農水省への報告が義務化された。1 つめは、
やはり、時間をかけ複数頭への伝染や、当該牛の経
当該家畜に 39 度以上の発熱と流涎等の臨床症状の
時的な観察が最も重要であり、その場合移動自粛に
いずれか、
「かつ」
、口腔内等に水疱等が確認された
よるまん延防止措置も重要となる。しかしながら措
場合(①)
。2 つめは、同一の畜房内において、複
置が長引くと、農家の経済活動や獣医師の診療活動
数の家畜の口腔内等に水疱等がある場合(②)。3
に支障を来すケースもあり、それを優先し、措置を
つめは、同一の畜房内において、半数以上の哺乳畜
怠った結果、病原体拡散という最悪の事態を想定す
が当日及びその前日の 2 日間において死亡するこ
ると、判断は容易ではないという課題も浮き彫りと
と(③)
。この指針に照らし、改めて本県の事例対
なった。今後も法改正により、特定症状を発見した
応を検証した(図 4)。
獣医師又は所有者の届出が義務化され、早期通報
は継続する。しかも再び国内に侵入した FMDV が
2010 年どおりの症状を呈する保証はない。だから
こそ、真症に至らなかった事例についても可能な限
り原因を究明し、生じた課題も含めて今後も報告を
重ね、我々獣医師の FMD 対応への一助としたい。
図4 家畜伝染病予防法の改正
改正後の指針に照らすと、事例 1 は、症状かつ
病変ありで特定症状「①」に該当した。事例 2 も
同様に「①」に該当した。これらは法改正前の事例
だが、農水省に報告・動衛研に送付していた。以上
から、法改正前においても本県の対応は適切であっ
たと考えられた(表 3)。
表3 疑症通報一覧3
【まとめ】
獣医学の観点から 3 事例の通報時、FMD 疑症頭
数はすべて 1 頭で、病変部所見と症状のみでの即
− 26 −
平成24年度 獣医学術九州地区学会フロアー賞受賞(小動物獣医学会)
気管虚脱における PLLP 装着時の
非貫通式縫合法に関する考察
○末
高橋ペットクリニック
高
ケントペットクリニック
福
阿蘇動物病院
小
日本獣医生命科学大学・獣医内科学教室
小
末松どうぶつ病院
山
末松どうぶつ病院
末
末松どうぶつ病院
【はじめに】
気管虚脱は代表的な犬の呼吸器疾患の一つとされ
ており、その病因は不明である。ヨークシャーテリ
ア、ポメラニアン、マルチーズ、チワワ、日本犬種な
どで好発する。治療法としてはステント設置や気管外
プロテーゼ(PLLP)設置があげられる。PLLP 設置の
際、縫合糸を気管粘膜まで貫通させるため、術後発咳、
気管壊死および気管内出血による術中窒息死などが報
告されている。今回、PLLP 設置の際に縫合糸を気管
粘膜まで貫通させず、軟骨および膜性壁に非貫通式で
PLLP を縫合・固定する方法での、術後合併症の発生
について考察したのでその概要を報告する。
− 27 −
松
橋
井
嶋
山
城
松
正
雅
健
宗
秀
識
弘
弘
弘
人
明
一
子
彰
【症例および方法】
症例は PLLP 設置を実施した頚部気管虚脱の犬 27
例とした。体重は 2.2kg から 12kg(平均 4.8kg)、年
齢は 1 歳から 13 歳(平均 7.4 歳)であった。術前に
酸素化した後、麻酔はミダゾラム 0.2mg/kg の前処置
後、プロポフォール 6 mg/kg で導入しイソフルレンに
て維持を行った。人工陽圧換気下において、頚部正中
切開を行い、気管に分岐する血管および神経を保存し
ながら気管周囲組織を慎重に剥離した。気管径にあわ
せ PLLP を設置し、5-0 非吸収糸で非貫通式に 1 周あ
たり 7 糸縫合・固定した。術後、気管縫合部からの空
気漏出、気管内における術後出血、術後発咳、気管壊死、
狭窄部位の改善について調査・考察した。
【成績および考察】
術後合併症について、気管縫合部からの空気漏出は
0 例 /29 例、気管内における術後出血は 2 例 /29 例、
術後発咳 3 例 /29 例、気管壊死 0 例 /27 例であった。
気管内出血は針が粘膜面まで貫通した症例で認められ、
術後発咳は気管気管支軟化症を合併する症例で認めら
れた。また、症例の多くが胸郭入口部まで拡張できて
おり本術式は有効であった。PLLP 設置の際に縫合糸
を気管粘膜まで貫通させず、軟骨および膜性壁を非貫
通式で PLLP を縫合・固定することで気管に付随する
多くの血管の保護が可能であり、縫合糸による発咳が
抑えられたと考えられた。本術式により PLLP 設置に
伴う合併症を予防することが可能であり、気管虚脱に
対する手術法として有用であると考えられた。
− 28 −
− 29 −
産業動物論文
本県における高病原性鳥インフルエンザの
野外株に対する抗原検出法の比較検討
大分家畜保健衛生所
○壁村光恵、首藤洋三
【はじめに】
SP influ)を用い判定。
近年、国内で高病原性鳥インフルエンザ(以下
2.遺伝子検査:A型、H5亜型、H7亜型について
RT-PCRを実施。
HPAI)が多発しており、2010 ~ 2011 年の国内
発生事例は 9 県 24 例にも及んだ(表 1)
。これら
3.ウイルス分離:発育鶏卵尿膜腔内接種を実施、
の発生事例の報告は多数あるが、野外株に対する抗
培養後の尿膜腔液を用い赤血球凝集性(HA)
原検出法について検討した報告はない。
試験、ニューカッスル病ウイルス(NDV)赤
血球凝集抑制反応(HI)試験を実施。
表1
【検査成績】
採材から判定までの時間(所要時間)と検査結果
は下記のとおりであった(表 2)。
1.簡易検査:所要時間0.6時間。8羽11検体が陽
性(気管4検体、クロアカ7検体)。
2.遺伝子検査:所要時間6.5時間。A型は9羽14
検体(気管6検体、クロアカ8検体)が陽性、
H5亜型は9羽13検体(気管6検体、クロアカ7
検体)が陽性、H7亜型はすべて陰性。
3.ウイルス分離:所要時間40時間。HA陽性が
9羽17検体(気管8検体、クロアカ9検体)で
そこで、2011 年 2 月に県内で発生した事例につ
あった。分離ウイルスは、NDV-HI試験です
いて、抗原検出法を比較・検討したので報告する。
べて陰性となりNDVが否定され、(独)動物
2011 年 2 月 に、 飼 養 規 模 約 8,000 羽 の 採 卵
衛生研究所でHPAI・ H5N1亜型と同定された
(CK/Oita/1/2011)。
鶏農場から、産卵率の低下と死亡率の増加が認め
られるとの通報があり、家畜保健衛生所において
表2
HPAI に関する検査を実施した。ウイルス分離の結
果、HPAI ウイルスを疑うウイルスが分離され、
(独)
動物衛生研究所において H5N1 亜型の HPAI ウイ
ルスと同定された(CK/Oita/1/2011)。
この際実施した抗原検出法である、簡易検査、遺
伝子検査、ウイルス分離について採材から判定まで
の迅速性、抗原の検出感度について比較・検討した。
【材料・方法】
材料は、死亡鶏 6 羽、同居鶏 5 羽、計 11 羽か
ら採材した気管スワブ、クロアカスワブ計 22 検体
を用い、方法は下記により実施した。
1.簡易検査:市販キット(Quick Vue ラピッド
また、気管スワブ、クロアカスワブ計 22 検体の
− 30 −
簡易検査、H5 亜型遺伝子検査、ウイルス分離の検
査の順で優れており、ウイルス分離陽性の検体でも、
査結果は、以下の 5 通りに分類された(図 1、表 3)。
簡易検査、遺伝子検査では陰性と判定される検体も
①3つの抗原検出法すべて陽性:10検体
確認された。つまり、簡易検査、遺伝子検査はウイ
②簡易検査陰性、遺伝子検査、ウイルス分離陽性:
ルス分離と比較して、迅速性は優れているものの、
これらの陰性判定のみでは確実な陰性の証明にはな
3検体
③簡易検査、遺伝子検査陰性、ウイルス分離陽性:
らないことが示唆された。
検出感度の差は、簡易検査では、スワブでの陽性
3検体
④3つの抗原検出法すべて陰性:5検体
判定が困難であった検体も、培養後の尿膜腔液では
⑤簡易検査陽性、遺伝子検査陰性、ウイルス分離陽
明瞭な陽性ラインが確認されたことから、ウイルス
量の差であると考察(図 2)。また、遺伝子検査は、
性:1検体
陽性率がウイルス分離とほぼ一致すると思われたが、
ウイルス分離陽性であった 4 検体が遺伝子検査で
は陽性と判定されない結果となった。これは、イン
フルエンザウイルスが変異しやすい性質であるため、
本野外株と今回使用したプライマーのミスマッチが
原因であると推察され、遺伝子解析を実施中である。
図1
表3
図2
【総括】
HPAI は、その伝播力の強さや高致死性から養鶏
産業に甚大な影響を及ぼし、さらに人の死亡事例な
ど公衆衛生の観点からも、国際的に最も重要視され
ている伝染病のひとつだ。そのため、発生時には迅
ウイルス分離で陽性と判定された 17 検体のうち、
速・的確な初動対応による、まん延防止と早期終息
簡易検査では 6 検体、H5 亜型の遺伝子検査では 4
が求められ、その検査も迅速・的確であることが要
検体が陰性と判定された。 これらの判定を実施す
求される。
る際、遺伝子検査、ウイルス分離では、電気泳動像
2011 年に改定された HPAI 防疫指針では迅速性
や、鶏胚の死亡、HA 性など、明瞭な陽性像が確認
が重要視され、遺伝子検査による HPAI 疑似患畜の
されたが、簡易検査では、検体によって陽性ライン
判定が可能となった。しかしながら、ウイルスの性
の濃淡に大きな差があった。しかし、培養前、陽性
質上、今後侵入する野外株が現在のプライマーでは
判定が困難であった検体も、培養後の尿膜腔液では
検出できない可能性があり、今回の結果よりもさら
明瞭な陽性ラインが確認された。
に検出率が低くなることも考えられる。
【まとめ・考察】
このことから、迅速性は劣るが高い検出感度と正
迅速性は、簡易検査、遺伝子検査、ウイルス分離
確性を備えたウイルス分離はやはり必須の検査項目
であり、今後も簡易検査、遺伝子検査およびウイル
の順で優れていた。
検出感度は、ウイルス分離、遺伝子検査、簡易検
ス分離による総合的かつ慎重な判定が重要と考える。
− 31 −
犬のレッグカルベペルテス病にて
内科療法が奏功した 3 症例
動物整形外科病院
○樋口飛鳥、樋口雅仁
れる。原因の特定には至っておらず炎症説、外傷説、
内分泌説、体質などが推測されている。
臨床症状としては跛行、患肢の疼痛、筋肉量の低
下、大腿部・膝・鼠径部にかけて舐める事による脱毛。
レントゲン検査での関節裂隙の狭小化・拡大・不整、
軟骨下骨の骨密度の変化が見られる。
初期病変部は寛骨臼の背側縁と大腿骨頭の上部に
存在するため通常の伸展位でのレントゲン撮影では
確認しづらい。そのためフロッグレッグポジション
での撮影を行い、病変部を尾側に析出することによ
り初期病変を見逃さないようにする。
犬 の レ ッ グ ペ ル テ ス 病 (Legg-Calve-Perthes
disease) は主に発育期の小型犬において発生する
大腿骨頭の非炎症性無菌性壊死 ( 無菌性大腿骨頭壊
死症 ) で、罹患関節の疼痛及び進行性の跛行がみら
獣医界では対症療法による臨床症状の改善は極め
て稀とされ骨頭切除による外科的処置がほぼ唯一の
治療法とされてきた。
しかしながら、安易な骨頭切除による失宜も多く
− 32 −
存在することから、骨頭切除の選択は慎重に行うべ
度、投薬を開始した。
きである。
【症例 1】
ヨークシャーテリア、♂、1 歳齢、4.8kg、トリ
ミングにて左後肢の疼痛。
レントゲン検査にて骨頭の骨密度の変化を認め、
レッグカルベペルテス病と診断。フィロコキシブ
5mg/kgSID にて疼痛管理を開始した。
投薬開始直後より疼痛の緩和、歩行状態の改善が
見られた。
荷重は完全に行い、筋肉量の変化も認められな
かったため一日休薬したが、疼痛が再発したため再
− 33 −
休薬日を設けても疼痛の再発をみないため、投薬
回数を漸減、投薬開始 1 年で完全に離脱を果たした。
現在投薬開始より 4 年経過しているが一般状態、
毛は舐める事により斑に抜け落ちていた。
レントゲン検査にて骨頭の異常を確認しレッグ
カルベペルテス病と診断。フィロコキシブ 10mg/
kgSID で投薬を開始。現在、4 ヵ月経過しているが
歩行状態ともに異常はない。
跛行が治まりつつあることより荷重の状態を確認し
つつ投薬日数を漸減していく予定である。
【症例 2】
トイプードル、♂、1 歳齢、2.3kg、一ヵ月前よ
り跛行、後肢の皮膚を舐めるため他院にて皮膚疾患
【考察】
レッグペルテス病の獣医界においての対症療法
として治療。良化せず精査目的で来院。
視診で患肢の軽度の跛行、触診で股関節圧痛を認
は、従来型と異なる消化器障害などの副作用を呈さ
めた。フロッグレッグポジションでのレントゲン検
ない鎮痛剤の開発も効を奏し長期管理が容易になり
査で患肢の骨頭部に若干の骨密度の低下を確認した
つつある。しかしながら、疼痛管理が不十分な状態
ためレッグカルベペルテス病と診断しフィロコキシ
での安易な骨頭切除が治療法の主流であることも事
ブ 5mg/kgSID の投薬を開始した。
実である。3 症例を通し、早期発見、早期診断、適
切な疼痛管理を行うことにより罹患犬の多くで内科
療法による十分な機能回復が得られると考えられ
た。
投薬開始直後より跛行、疼痛の消失、皮膚を舐め
る行動が減少した。投薬開始 4 ヵ月で被毛の異常
は完治し、荷重状態も良好のため投薬回数を漸減し、
投薬開始 6 ヵ月目に薬からの離脱を果たした。
【症例 3】
トイプードル、♂、8 ヶ月齢、2.2kg、生後六ヶ
月より跛行。
他院にて股関節形成不全を指摘され、精査目的で
来院。同時に皮膚症状でも精査希望。
来院時、患肢は完全挙上。激しい疼痛を訴え、被
− 34 −
気管虚脱の外科的矯正術後に
喉頭麻痺がみられた犬の2例
末松どうぶつ病院
末松どうぶつ病院
阿蘇動物病院
ケントペットクリニック
末松どうぶつ病院
○山
末
小
福
末
城
松
嶋
井
松
識
正
宗
健
弘
子
弘
明
人
彰
るいは、その筋肉を支配する反回喉頭神経に異常が
起こることで発現する。原因としては、多発性筋炎、
特発性喉頭神経変性、頚胸部の外科的手術の合併症
などがあげられる。診断は目視あるいは、内視鏡検
査により、披裂軟骨の動的評価を確認する。治療は
酸素吸入、ステロイド投与、外科的処置があげられ
る。今回、気管虚脱に PLLP を用いて外科的矯正
を実施し、術後、喉頭麻痺が認められた 2 例に遭
遇したので報告する。
【はじめに】
気管虚脱は、呼吸器疾患の中で代表的な疾患のひ
とつであり、一般的に中高齢のトイ種、ミニチュア
種に多くみられる。原因は不明。診断は臨床症状、
発咳テスト、X 線検査および気管内視鏡検査などよ
り、Tangner & Hobson の 4 段階分類で評価され
る。治療は内科的治療、ステント設置や気管外プロ
テーゼ(以下、PLLP)を用いた外科的矯正術が報
告されている。
喉頭麻痺は、披裂軟骨を動かす背側輪状披裂筋あ
− 35 −
【症例1】
PLLP は 10㎜径を使用した。1周あたり膜性壁3
13 歳、避妊雌、体重 3㎏のマルチーズ。食欲、
糸、気管軟骨4糸の計7糸を縫合した。縫合終了後
はリークテストを行い、手術を終了した。
元気の低下と呼吸が苦しそうとのことで来院。
初診時の X 線検査所見より、軽度の心拡大と気
管の軽度挙上、頚部の気管虚脱(Grade Ⅲ)と評
【術後経過】
術後は発咳もなく状態は安定していたが、術後第
3 病日に突然の吸気困難を呈した。すみやかに、気
価した。
管挿管し、その後、抜管時に披裂軟骨の動的評価を
確認したところ運動性が認められず、喉頭麻痺と診
断した。抗生剤とプレドニゾロンを5日間投与後、
呼吸状態は安定し再発は認められなかった。術後 1
年以上経過し一般状態は良好であったが、心不全に
よる突然死のため第 395 病日に自宅にて息を引き
取った。
PLLP を用いた外科的矯正術を実施した。頚部の
腹側正中を切開し、気管の左右に走る迷走神経、反
回神経に注意しながら剥離した。剥離した気管を持
ち上げると扁平化した気管が確認できた。
【症例2】
5 歳、避妊雌、体重 4.8㎏のトイプードルとマル
チーズの雑種犬。頻回の発咳、呼吸が苦しそうとの
ことで来院。
初 診 時 の X 線 検 査 所 見 よ り、 頚 部 の 気 管 虚 脱
(Grade Ⅳ)と評価した。
PLLP を用いた外科的矯正術を実施した。術式は
症例1と同様に行った。PLLP は 12㎜径を使用した。
PLLP を頚部気管から、第1肋骨付近まで装着し、 【術後経過】
5.0 のものフィラメント糸を使用し、縫合固定した。
術後は発咳もなく安定し、術後第 5 病日に退院。
− 36 −
しかし、第 12 病日に突然の吸気困難を呈し来院。
一旦は酸素吸入により、状態は安定したが、吸気困
難が再発した為、喉頭麻痺を疑い内視鏡検査を実施
した。披裂軟骨と喉頭蓋の運動性が確認されず喉頭
麻痺と診断した。第 22 病日に経口的に声帯切除術
を実施した。現在、声帯切除術後 240 日以上経過
するが一般状態は良好である。
【考察】
当病院では気管虚脱の外科的矯正術を実施した
32 例中、喉頭麻痺2例が発現した。そのうち1例
は一過性で、1 例は声帯切除術を実施した。今回の
症例1は術後3日、症例2は術後 12 日で発現した。
気管虚脱の外科的矯正術の際には喉頭麻痺など合併
症に対するインフォームドを十分に行う必要がある。
抜管時に必ず披裂軟骨の動的評価を行い、術後は呼
吸状態、発声の有無など経過を観察し、喉頭麻痺に
対する治療計画も立てておく必要があると考えてい
る。
喉頭の動的評価
− 37 −
クリプトコッカスによる視神経炎を疑う
犬の 1 症例
大分小動物病院
吉
野
信
秀
【はじめに】
イヌの視神経炎は、突然の視覚喪失や散瞳を特徴
とする疾患として知られている。その原因は多岐に
わたり、ウイルス、真菌、原虫などによる感染症、
肉芽腫性髄膜脳炎、リンパ腫などの腫瘍浸潤のほか
免疫介在性も考えられている。確定診断には脳脊髄
液の分析や MRI 検査が必要となるが、オーナーの
同意を得られない事も多いと思われる。そのため原
因を特定できずに特発性の視神経炎と診断されるこ
とが多いのが現状である。今回、眼科検査により視
神経炎と診断し、血液検査によってクリプトコッカ
視神経乳頭の辺縁は不鮮明であった。左眼の視神
スを疑った犬の治療経過を報告する。
【症例】
経乳頭は重度に腫脹して突出し、また眼底出血を
症例はミニチュアダックスフンド、雄(未去勢)、
認めた。CBC および生化学検査には異常を認めな
9 歳令である。前夜から急に物にぶつかるように
かった。超音波検査にて眼窩には異常を認めなかっ
なり視覚が消失したとの主訴で来院した。食欲や
た。特徴的な眼底所見より視神経炎と診断し、追
元気などの全身状態は特に問題ないとの事であっ
加検査として各種抗体、抗原検査、CSF、MRI 検
た。一般身体検査にて BCS 2/5 と軽度の削痩、両
査等を提案したところ、感染症に対する抗体、抗原
眼の散瞳を認めた。メナース反応は両眼ともに陰
検査のみを希望された。感染症の検査はヒストベッ
性、眩目反射は右眼でわずかに陽性、左眼で陰性
ト 社 に 依 頼 し、 後 日 以 下 の 結 果 を 得 た。Canine
であった。対光反射は右眼において直接(+)、間
Distempervirus IgG < 1:20、Neospora canium
接(-)、左眼において直接(-)、間接(+)で
IgG < 1:50、Toxoplasma 抗体スクリーニング陰
あった。神経学的な検査に異常はなく、行動的な
性、Cryptococcus Antigen 陽性 抗原価 1:4。
異常も認めなかった。眼圧は右眼 5mmHg、左眼
【経過】
4mmHg であった。左右眼ともに羞明はなく、前眼
初診日より抗炎症薬としてプレドニゾロン 1mg/
部に異常は認めなかった。眼底検査にて、右眼の
kg BID、トキソプラズマ感染症を考慮してクリン
− 38 −
ダマイシン 15mg/kg BID の内服、タリビット点
眼(4 回 /day)、ステロップ点眼(5 回 /day)を開
始した。1 週間後の再診にて、全身症状の悪化はな
く、物にぶつからなくなったとのオーナーの認識を
得た。身体検査にて右眼のメナース反応および眩目
反射の改善が認められた。眼底検査にて左眼の視神
経乳頭の縮小(回復)を認めたが、タペタム部にお
いて反射亢進を示し、網膜の変性が示唆された。プ
レドニゾロンを 1.5mg/kg に増量し、網膜変性の予
防として抗酸化剤のサプリメント(メニワンアイ)
を追加した。またこの時点でクリプトコッカス抗原
− 39 −
陽性の結果を得たので、イトラコナゾール 5mg/kg
SID の内服を開始した。以後は定期的な眼底検査と
クリプトコッカス抗原価のモニターを行った。両眼
ともに徐々に網膜変性が進行し、第 50 病日より再
び右眼のメナース反応および眩目反射が消失し、以
後改善することはなかった。プレドニゾロンは漸減
しながら第 100 病日で終了し、イトラコナゾール
は継続した。第 130 病日に再び視神経乳頭の浮腫
を認めたためプレドニゾロンを再開するとともにイ
トラコナゾールを 10mg/kg SID に増量した。乳頭
浮腫は 2 週間程度で改善した。第 160 病日にクリ
プトコッカス抗原が陰性を示したため、治療を終了
し、経過観察とした。210 病日現在、臨床症状に
変化はなく、眼底所見は網膜変性および視神経乳頭
の陥凹を示している。
【考察】
本症例は眼底検査によって視神経炎と診断し、血
清の抗原検査によって原因がクリプトコッカスであ
る事を疑い治療した。しかし、健康動物を対象にし
た血清学調査にて不顕性保菌状態の動物が認められ
たとの報告もあり、血清の抗原検査陽性が必ずしも
視神経炎の原因と断定できるものではない。治療経
過によりステロイド反応性であった事から免疫介在
性や肉芽腫性髄膜脳炎の可能性も否定することはで
− 40 −
きない。全身状態は良好であったため脳脊髄液検査
をもう少し強く勧めるべきであったかも知れない。
クリプトコッカス症の治療としては抗真菌薬が第
一選択となる。ステロイドの使用に関しては基本的
には使用しない方がいいと思われるが、ヒトの文献
においては抗真菌薬とともにステロイドを用いて治
療効果をあげている報告も散見される。おそらく多
くの臨床医が感染症の結果が返ってくるまでの対症
療法として使用すると思われる。抗原検査陽性の結
果を受けた後、免疫抑制量を維持するか、抗炎症量
に減量するか迷うところであるが、本症例では網膜
変性の進行を認めたため、逆に増量して経過を観察
した。
最終的に失明は免れなかったが、現在全身状態は
良好に経過している。病変の再発やさらなる進行が
ないか、他の可能性も視野に入れながら定期的に観
察していく予定である。
− 41 −
公衆衛生論文
管内の大規模食鳥処理場における
高病原性鳥インフルエンザ防疫体制の構築
大分県北部保健所
宇都宮 公 平
渡 邊 徹
○岡 本 由美子
大 平 英 明 佐 藤 英 治
森 洋 幸
平 野 文 雄
1 はじめに
2004 年(平成 16 年)に本県を含む3県で家きんの高病原性鳥インフルエンザ(以下、
「HPAI」という。)
が発生して以来、冬季には家きんや野鳥で HPAI ウイルスの感染が相次いで確認されている。このような状
況を受け、県では家畜衛生飼料室の主導により養鶏農家で HPAI が発生したことを想定した大規模な防疫訓
練が行われている。
しかし、食鳥処理場で HPAI が発生したことを想定した訓練は全く行われていない。そこで、管内の大規
模食鳥処理場(以下、「M 処理場」という。)において HPAI 対策に取り組んだ。
2 指導及び対策の内容
⑴ 施設・設備の整備に関する指導
HPAI ウイルスの侵入及びまん延を防止するため、出入り車両の洗浄・消毒設備の設置及び野鳥の侵入
防止対策等について指導を行った。
⑵ 対応フローの作成
ア 対応フロー案の作成
平成 23 年 1 月 27 日に宮崎県の食鳥処理場で確認された HPAI 発生例(以下、
「宮崎県の処理場発生例」
という。
)を参考にして、食鳥処理場に HPAI を疑う鶏が搬入されたときの対応フロー案を作成した。
イ 家畜保健衛生所との協議
平成 23 年 11 月 23 日に M 処理場の責任者とともに宇佐家畜保健衛生所へ出向き、患畜のと殺方法
など対応フロー案を検討した。また、死体や汚染物品などの処分方法及び食鳥処理場の早期再開につい
ても協議した。
ウ 感染症担当保健師との協議
対応フロー案に従業員の行動を盛り込むため、当所の感染症担当保健師と協議し、従業員の感染防止
及び HPAI ウイルスのまん延防止の観点から助言を受けた。なお、協議に先立ち、保健師が M 処理場
で従業員の作業状況を視察した。
⑶ 衛生講習会の開催
M 処理場の責任者や従業員に HPAI 対策の重要性を理解してもらうため、講習会を開催した。平成 23
年 12 月 7 日に M 処理場の会議室で従業員 14 名及び生鳥運送業者 1 名を対象に行い、宮崎県の処理場
発生例及び対応フローについて説明した。
− 42 −
⑷ シミュレーションの実施
M 処理場従業員、宇佐家畜保健衛生所及び感染症担当保健師など関係者に参集を呼びかけ、平成 24 年
1 月 16 日に HPAI 発生時を想定した簡易なシミュレーションを実施した。M 処理場の作業現場で従業員
へ説明をしながら、防疫措置が始まる前までの行動を参加者全員で確認した。
表1 M処理場におけるHPAI対策 区 分
ハード面
ソフト面
指導及び対策の内容
①車両洗浄・消毒設備の設置
②野鳥の侵入防止対策
①対応フローの作成
・案の作成
・家畜保健衛生所との協議
・感染症担当保健師との協議
②衛生講習会の開催
③シミュレーションの実施
対応時期
H23.2月
H23.3月
H23.11月
H23.11.23
H24. 1月
H23.12. 7
H24. 1.16
対策の結果 動力噴霧器2台を購入
防鳥ネットの設置 対応フローの完成
従業員等15名が受講
従業員、家保、保健師が参加
3 指導及び対策の結果
⑴ 施設・設備の整備に関する指導
農林水産部家畜衛生飼料室の口蹄疫等侵入防止緊急対策事業を利用して、平成 23 年 2 月に M 処理場
が動力噴霧器2台を購入した。1台は処理場の出入口に設置して車両消毒に用い、もう1台は生鳥が搬入
されるプラットホームに設置してトラックの荷台、生鳥搬入カゴ及びプラットホームの洗浄・消毒に使用
している。
また、平成 23 年 3 月に生鳥が搬入されるプラットホームに防鳥ネットを張った。それまで、カラスや
カモメなどが M 処理場周辺に多数集合しており、時には処理室内に侵入した形跡もあったが、設置後数ヶ
月でほとんど姿を見かけなくなった。
⑵ 対応フローの作成
ア 対応フロー案の作成
宮崎県の処理場発生例では、家畜保健衛生所が実施する確認検査と重複して国立感染症研究所へ確認
検査用検体を送付する必要はないと、厚生労働省から指示されている。また、簡易検査の実施や食鳥処
理の中止までに時間がかかったことなども報告されており、これらを参考にして対応フロー案を作成し
た。
イ 家畜保健衛生所との協議
簡易検査で陽性となり生体検査で保留にした鶏を、確認検査結果が判明する前にと殺・脱羽まで処理
しておくことの可否について検討した。患畜と確定した場合に家畜伝染病予防法に基づき手当金が交付
されるのは原則として生鳥で評価を受けた鶏に限られること、食鳥処理レーンによる放血殺は糞便、血
液及び塵埃などが飛散することから、確認検査結果判明まではと殺しないこととした。
なお、死体や汚染物品などの処分方法については検討を継続することとし、食鳥処理場の再開につい
ては農林水産省動物衛生課との協議が必要なため、結論がでなかった。
ウ 感染症担当保健師との協議
簡易検査陽性となった場合、次のように従業員に行動してもらうこととした。
①手袋、腕抜き及びマスクを用意したゴミ箱に捨てる。
②帽子、ヤッケ及び前掛けを洗浄し、用意した消毒液に浸漬する。
③休憩室へ向かい、踏み込み消毒槽で長靴を消毒して室内で待機する。
④保健師が到着した後、指示に従って防疫作業従事者管理票を記入する。
⑤感染危険レベルに応じて 10 日間の健康観察や予防薬の投与を受ける。
感染危険レベルは「大分県高病原性鳥インフルエンザ健康危機管理対策実施要領」(以下、
「健康危機
管理要領」という。
)に準拠し、生鳥及び内臓を扱った従業員は感染危険レベル「高」に、生鳥や内臓
− 43 −
に触れていない従業員は「中」又は「低」に分類した。
ア、イ及びウの結果、食鳥検査員のみならず処理場従業員にも理解できるような簡潔な対応フローを
作成することができた(表2)。
⑶ 衛生講習会の開催
宮崎県の処理場発生例では食鳥処理場も行政も対応に苦慮したことを伝え、食鳥処理場関係従事者も
発生に備えた準備が必要であることを訴えた。対応フローの説明では、「高病原性鳥インフルエンザ及び
低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」(以下、「新防疫指針」という。)に基づき、
①鶏のと殺中止、②畜産関係車両の出入り禁止、③従業員の待機・消毒、④生鳥搬送車両の特定と消毒の
指示などの措置が必要であることを説明し、実施に必要な資材の準備や緊急連絡先等の把握について指導
を行った。
従業員から、
「食鳥処理場での HPAI 発生防止は異常鶏の搬入を防ぐことが第一であるため、農場での
死亡率を食鳥処理開始までに報告してもらう体制を作りたい。」との意見が出された。この意見について
協議し、生鳥運送会社を通じて死亡率報告の徹底を各農場へ要請することとした。その結果、以前は死亡
率を報告しなかった農家からも報告されるようになってきている。
⑷ シミュレーションの実施
M 処理場が作成した役割分担表に従い、出入口の閉鎖、車両消毒の準備、関係者への連絡など各担当
者の行動が想定どおり実施できるか否かを確認した。必要な物品は揃っていたが消毒薬の所在や希釈倍率
を知らない担当者がいるなど、準備が十分ではないことが判った。また、全員で対応フローを確認したこ
とで他の従業員の動線や行動を周知することができ、有意義であった。
4 今後の課題
⑴ 患畜の死体や汚染物品等の処分方法
M 処理場は敷地が舗装されており、患畜の死体や汚染物品などを埋却する場所がないため、宇佐家畜
保健衛生所では、埋却地が確保できない場合を想定して、国の所有する移動式焼却施設の借用の検討及び
その施設の設置場所の選定等を行っている。しかし、具体的な方針は決定されておらず、今後は市の焼却
施設の利用等についても検討する必要がある。
⑵ 食鳥処理場の再開
食鳥処理場が発生場所になった場合、処理場を中心に移動制限区域が設定されるため、原則として移動
制限が解除されるまで処理場を閉鎖しなければならない。処理場の早期再開については、新防疫指針で移
動制限等の対象外として一定の要件に適合する場合は可能であると規定されている。
今後は、この要件に適合するよう M 処理場を指導するとともに、適合していない場合であってもウイ
ルスに汚染されていないカット室などを部分的に使用できないか検討する必要がある。
⑶ 要領の改正
県が作成した「高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザ防疫対策実施要領」及び健康
危機管理要領には食鳥処理場で発生した際の対応について記述に乏しく、改正が望まれる。
5 考 察
食鳥処理場で HPAI を疑う鶏が発見された場合、確認検査結果が判明するまでは、食鳥処理の事業の規
制及び食鳥検査に関する法律に基づき生鳥の隔離やとさつ禁止などの措置しか執れない。そのため、その
間は食鳥処理場の理解と協力を得ながら食鳥検査員を中心に対応しなければならない。
また、M 処理場は県内の養鶏農家からブロイラーを入荷することが多いため、確認検査で陽性となっ
た場合は出荷元の農場においても同時に防疫作業を実施することになると予想される。したがって、M
処理場の防疫は少人数の動員者で対応しなければならないと考えられる。
さらに、食鳥処理場で HPAI が発生した場合、その防疫措置の進捗度合がその経営にも大きな影響を与
えることになる。
そのような中、ハード面の整備を行うとともに、対応フローを作成してそれに基づくシミュレーション
を実施できたことは、危機管理上とても有意義であった。
今後も M 処理場の協力を得ながら、引き続き前述した課題に取り組んで行きたい。
− 44 −
表2)高病原性鳥インフルエンザ発生時の対応フロー
異常家きんの発見
食鳥検査員へ連絡(食鳥検査員は保健所 及び 家畜保健衛生所へ連絡)
緊急対応
食鳥処理の中止…生体検査保留、他のロットと区別して保管
食鳥処理場の閉鎖…車両出入りの禁止 及び 車両消毒の準備
従業員の移動制限…従業員等の外出禁止
まん延防止措置…出荷情報、搬入車両の特定
簡 易 検 査 の 実 施 簡易検査陰性の場合…食鳥処理の再開
(食鳥処理場で実施)
簡易検査陽性の場合
関係業者へ通報…処理場に出入りする業者へ
食鳥処理場の閉鎖、食鳥処理中止、生鳥・食鳥肉・羽毛等廃棄物の保留・保管
従業員は処理場を清掃後、控え室で待機
(手袋・腕抜き・マスクの廃棄、帽子・ヤッケ・前掛け・長靴の消毒) 陽性時に備えた準備(疫学情報、食鳥処理場情報を家畜保健衛生所へ提供)
確認検査用検体の採取
確 認 検 査 の 実 施 確認検査陰性の場合…関係業者へ連絡、食鳥処理の再開
(大分家保で実施)
確認検査陽性の場合
関係業者へ連絡(国及び県は対策本部を設置し、報道機関へ公表)
防疫作業に従事する職員以外は帰宅(保健所による健康チェック、予防薬投与等)
防疫措置の準備
防疫措置
家畜保健衛生所等:家きんの評価、と殺、死体・汚染物品の処理
食鳥処理場:汚染物品等の処理後に処理場を繰り返し清掃・消毒
移動制限区域 搬出制限区域の設定(高病原性鳥インフルエンザの場合)
食鳥処理場、GPセンター、ふ卵場などは原則として事業の停止
*移動制限区域 処理場を中心に半径1km(農場は半径3km)
*搬出制限区域 処理場で発生した場合、設定なし(農場は半径10km)
消毒ポイントの設置、ウイルスの浸潤状況の確認 ワクチン接種
移動制限区域の解除
食鳥処理場、GPセンター、ふ卵場などの再開
*移動制限区域内の全ての発生農場で防疫措置が完了してから21日後
− 45 −
牛の肝臓、胆嚢内胆汁からの大腸菌群、
志賀毒素産生性大腸菌検出状況
大分県食肉衛生検査所
西
本
清
仁
1 はじめに
平成 23 年4月に、富山県、福井市等3県2市で発生した飲食チェーン店での志賀毒素産生性大腸菌
(STEC)食中毒の発生を受け、平成 23 年 10 月1日から食品衛生法における生食用食肉の規格基準が新た
に設定された。規格基準設定の過程で、厚生労働省(厚労省)の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒・
乳肉水産食品合同部会において、生食用牛レバーについても、食品衛生法に基づく規制も含め、対応につい
て検討の必要がある等の意見が出された。これを受け、牛レバーの STEC の汚染実態調査が、平成 23 年
9月と 11 月に全国 16 カ所の食肉衛生検査所で行われた。平成 23 年9月の調査では、牛レバーの STEC
の保菌状況について、同一牛の糞便、胆嚢内胆汁(胆汁)、肝臓表面及び肝臓内部(肝臓)を対象に、11 月
の調査では、大腸菌群数について胆汁及び肝臓表面を対象に実施され、その結果 1)、9月の調査で、173 検
体中2検体の肝臓から STEC O157(O157)が分離された。この成績を含め生食用牛レバーの取り扱いに
ついて、厚労省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会での審議、食品安全委員会での評
価を経て、平成 24 年7月1日より食品衛生法により牛レバーの生食が禁止された。
前述した厚労省の調査では、同一個体での肝臓との胆汁大腸菌群数の比較が行われていないため肝臓と
胆汁との大腸菌群数の関係が不明であること、また、胆汁については多検体の検査が行われているが、Reinstein ら 2) が O157 の分離を報告している胆嚢組織(胆嚢)について検査が行われていないことから、今
回、以下の2つの調査を実施することとした。調査1として、肝臓及び胆汁を対象に、大腸菌群数の測定と
STEC の検査を行った。調査2として、肝臓、胆汁に加え糞便、胆嚢について STEC の検査を実施したので、
報告する。
2 材料及び方法
調査期間は平成 24 年3月~7月とし、調査1には、と畜検査の結果廃棄となった肥育牛 123 頭の胆汁、
肝臓(左葉)を、調査2には、調査1に用いた 123 頭のうち 29 頭の胆汁、肝臓に加え糞便(直腸便)、胆
嚢を材料とした。 大腸菌群数は、胆汁、肝臓 25g に 225ml の滅菌 PBS(-) を加えストマッキング処理した乳剤 1ml を、
10ml の XM ブロス(ELMEX)に接種し、37℃ 24 時間好気培養後、EMB 寒天培地(栄研)、XM-G 寒天
培地(ニッスイ)に塗抹し、大腸菌群様コロニーの有無を確認した。大腸菌群陽性となった検体について
は、段階希釈し胆汁はペトリフィルム CC プレート(3M)またはペトリフィルム EC プレート(3M)、肝
臓は EC プレート(3M)を用い大腸菌群数の測定を行った。胆汁と肝臓の大腸菌群検出率についてχ 2 検
定で有意差について検定した。STEC は、大腸菌群陽性となった胆汁2ml、肝臓乳剤5ml を 10 倍量のト
リプチケースソイブロス(BBL)に接種し、37℃ 20 ~ 24 時間培養後、培養液からアルカリ熱抽出法によ
り DNA を抽出し、Karch らの報告した PCR 法 3) により Stx 遺伝子の検出を行った。
3 成績
(1)調査1
大腸菌群は、123 検体中 19 検体(15.4%)の胆汁、28 検体(22.8%)の肝臓から検出され、その菌数
は胆汁の 52.6%が 107CFU/ml 以上(図-1)、肝臓の 57.1%が 103CFU/g 以上(図-2)であった。大
腸菌群が胆汁、肝臓ともに検出されたのは 15 検体(12.2%)、ともに検出限界以下であったのは 91 検体
(74%)で、肝臓のみから検出されたのは 13 検体(10.6%)であった(表-1)。肝臓の大腸菌群検出率は、
胆汁から大腸菌群が検出された検体と検出されなかった検体の間で、χ 2 検定による1%の危険率での有意
− 46 −
差が認められた。また、胆汁と肝臓の大腸菌群数は図-3のとおりで、胆汁の菌数が 104CFU/ml 以上の検
体では、すべての肝臓から 103CFU/g 以上、肝臓のみから検出された検体の菌数は、すべて 104CFU/g 以
下であった。
STEC は、大腸菌群陽性となった肝臓、胆汁から検出されなかった。
(2)調査2
糞便では、29 検体すべてから Stx 遺伝子が検出され、19 検体から 19 株の STEC が分離された。分離
された STEC19 株中 O157:H7 が 12 株(Stx 2型、eae 陽性:10 株、Stx 1・ 2型、eae 陽性:2株)、
OUT:HUT が3株(Stx 2型、eae 陰性:2株、Stx 2型、eae 陽性:1 株)、O119:HUT が1株(Stx 2型、
eae 陽性)
、OUT:H2 が1株(Stx 2型、eae 陰性)、OUT:H21 が1株(Stx 2型、eae 陰性)、OUT:H45
が1株(Stx 2型、eae 陽性)であった。これに対し、29 検体の胆嚢、胆汁及び肝臓から STEC は検出さ
れなかった。
4 考察
今回の調査での大腸菌群検出率は胆汁 15.4%、肝臓 22.8%であり、これは厚労省調査の大腸菌検出率(胆
汁 18%、肝臓 26%)とほぼ同じであった。肝臓の大腸菌群検出率は、胆汁から大腸菌群が検出された検体
が、検出されなかった検体よりも有意に高かったことから、肝臓の大腸菌群は胆汁由来である可能性が高い
と思われる。しかし、大腸菌群が肝臓のみから検出された検体が 10.6%存在することから、胆汁由来でな
い大腸菌群が肝臓に存在する可能性が示唆された。糞便から STEC 保菌が確認された 19 頭(うち 12 頭は
O157 保菌)の肝臓、胆汁、胆嚢いずれからも Stx 遺伝子、STEC は検出されず、今回の調査では STEC
保菌と肝臓、胆汁、胆嚢の STEC 検出との関連は認められなかった。この成績は、昨年度の厚労省の調査
における糞便から STEC が検出された 20 頭(うち 11 頭が O157 保菌)の肝臓、胆汁から STEC が検出
されなかったという成績と同様の傾向であった。
今後、直腸便からの STEC 検出ではなく、肝臓、胆嚢と総胆管を介して直結している十二指腸内容物及
びと畜処理工程で肝臓摘出時表面を汚染する可能性がある食道内容物からの STEC 検出を実施し、肝臓、
− 47 −
胆汁の STEC 検出成績と比較することが、STEC による肝臓汚染機序の解明につながるものと思われる。
5 参考文献
1) 厚生労働省ホームページ:薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会資料(平成 23 年 12 月 20
日開催)
2)S.Reinstein et al:Appl.Environ.Microbiol.,73(3),10021-1004(2007)
3)H.Karch,T.Meyer:J.Clin.Microbiol.,27(12),2751-2757(1989)
− 48 −
千村ギャラリー
作者:千村 収一(ちむら しゅういち)
1953年 愛知県岩倉市生まれ
帯広畜産大学獣医科卒業
千村どうぶつ病院 院長
飼っていたアニー(ゴールデンレトリバー、メス、2006年2月亡)と
生まれつき心臓病の病気のあるクリ(シーズ、メス、2009年7月亡)を
描いたカレンダーより掲載しました。
くもの巣
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旭山動物園
流れ星
− 50 −
水の中の恋
花筏、渡れそうかな?
− 51 −
ハルニレの木の下で(春の草)
坂すべり
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富良野の花嫁
入道雲
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彼岸花
金木犀の香り
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落葉のダンス
サンタさんからの贈り物
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第61回九州地区獣医師大会並びに
平成24年度獣医学術九州地区学会について
第 61 回九州地区獣医師大会並びに
平成 24 年度獣医学術九州地区学会 報告
第 61 回九州地区獣医師大会並びに平成 24 年度獣医学術九州地区学会が、平成 24 年 10 月 14 日(日)
に社団法人宮崎県獣医師会の担当により、宮崎市の「シーガイアコンベンションセンター」で開催されまし
た。大会には次年度開催担当である本会からは、準備委員会の委員を含め 29 名の方々が参加されました。
大会では、
「愛と絆で人と動物が共生できる社会環境をつくろう!」のテーマのもと、下記の4議案が提案、
可決され、日本獣医師会を通じて関係省庁へ要請されることになりました。
三学会については、本県から日本産業動物獣医学会 2 題、日本小動物獣医学会 5 題、日本獣医公衆衛生
学会 2 題の計 9 題の発表がありました。小動物獣医学会で学会長賞 1 題、九州地区獣医師会連合会長賞 1 題、
フロアー賞 1 題、産業動物獣医学会でフロアー賞を 1 題が受賞されました。
1.第62回九州地区獣医師大会
第1号議案
産業動物診療獣医師及び勤務獣医師の
人材確保に向けた処遇改善について
近年、獣医師の職域は、食品の安全確保や共通感染症対策をはじめ、畜産の振興、伴侶動物の衛生等の向
上、更には、動物愛護福祉など社会経済の発展、国民生活の安定に重要な役割を担っている。
さらに、獣医師自ら高度専門職としての知識と教養を高め、地域の要請に応える必要がある。また、世界
的に物流のグローバル化に伴い、国内における狂犬病などの「振興・再興感染症」の発生も危惧されるなど、
これらに対する危機管理への対応も求められている。
しかし、現状においては産業動物分野では休日や夜間業務など不規則な勤務対応が余儀なくされることも
多く、獣医学教育6年制に見合った処遇が改善されていないことなどから、就業希望者が少なく、一部の地
域では診療対応に支障を来たしている。
また、地方自治体においては、獣医師の人材確保のため勤務獣医師希望者に対する様々な取組み等を通じ
獣医系大学を訪問するなど人材の確保に取り組んでいるが、希望者が少なく各自治体では苦慮しており、国
や都道府県においても積極的な勤務獣医師確保対策が緊急の課題である。このような現状において、下記事
項について特段の配慮を要請する。
記
1 公務員獣医師の給与改善については、医療職(一)表に準ずる医療職給料表を新設すること。
2 産業動物診療獣医師定着化のために、家畜共済事業における診療点数の適正引上げと制度及び運営を改
善すること。
3 勤務獣医師の職場における管理職ポストへの積極的な登用制度を確立すること。
4 産業動物診療獣医師・勤務獣医師確保支援対策として、獣医学系大学において獣医師の地域就業優先入
学枠の導入を図ること。
− 57 −
第2号議案
ヒトと動物の共通感染症に対する検査及び
防疫の一元化体制構築について
ヒトの感染症の多くは動物との共通感染症であると言われ、生態系の変化や流通の国際化の中、国境の概
念を超え世界中に流行が拡散する時代である。我が国においては数年前に鳥インフルエンザやSARS等の
パンデミックに国民が怯えたにもかかわらず、具体的な防疫体制の見直しや体制の構築等作業は進んでいな
いように思われる。
また、我が国を取り巻くアジア近隣諸国では口蹄疫や狂犬病を始めとする海外悪性感染症の散発がみられ
ており、依然として本国への侵入が危惧されており、国においては侵入防止のために水際検疫による防疫体
制がとられている。しかし、防疫上病原体の国内野生動物への感染の危険性や、家畜衛生・公衆衛生分野の
縦割り行政の弊害による連携不足並びに、狂犬病予防注射接種率の全国的な低下等が懸念され、国内への侵
入不安は払拭できない現状である。
これらはいずれもが、行政側の危機意識の低下を招いており、総合的な防疫システムを早急に整備する必
要がある。
人事交流や情報の共有化等を図ることにより、家畜衛生・公衆衛生分野の連携を強化し、個々の疾病に対
する発生時対応マニュアルの整備、防疫演習等による訓練の実施、検査や防疫に対する相互支援体制等一元
的な防疫体制を構築し、危機管理意識の高揚をはかる必要がある。
記
1 人畜共通感染症に対する検査体制の充実を図ること。
2 家畜衛生・公衆衛生の連携強化と相互防疫支援の一元的防疫体制整備を図ること。
第3号議案
狂犬病予防接種率の向上について
狂犬病発生は、我が国では昭和 31 年が最後で、世界でも例外的な清浄国である。
しかしながら、世界では毎年約5万5千人の命が失われている最も危険かつ重要な疾病の一つである。
現在、海外からの密輸や貨物船による犬(未検疫)が国内に上陸していることや、我が国からの海外渡航
者が海外での犬の咬傷により帰国後に発症し、死亡した事例(3例)が報告されており、また、近隣のアジ
ア諸国において本病が多発していることを考えると憂慮すべき事態である。
このような中、WHOが流行を阻止するためには犬集団の 70%以上の免疫率を提唱しているのもかかわ
らず、全国の狂犬病予防注射の推定実施率は約 40%(全国ペット工業会資料)であり、年々その接種率は
低下傾向にあるといわれている。
狂犬病は、犬へ狂犬病ワクチンを接種することで、人への感染が防止できることから、犬の予防注射の接
種率を上げることが最大の予防対策である。しかし、現状は十分な接種率向上対策が図られているとは言い
難く、地域において確実な登録頭数の把握を行い、接種率及び抗体調査を実施するとともに、国及び地方行
政の連携を強化し普及・啓発に努めることが重要である。
記
1 狂犬病予防法に基づき国及び地方行政(県・市町村)は連携を強化し、予防注射接種率の向上に努める
こと。
− 58 −
2 関係業界に狂犬病予防対策の普及・啓発・広報活動の協力を強く要請すること。
第4号議案
災害時における獣医師の相互防災協力体制の整備について
日本を震撼させた東日本大震災から早一年半、被災獣医師会の救護活動報告から、広域災害の初動では通
信網の遮断により、通常の総合防災訓練は殆ど機能せず、組織的な救護活動が出来ず、個々の救護活動で対
応せざるを得なかった。
このような状況を鑑み、各県、市の防災対策、とくに通信連絡網の確保を再考すると共に、災害発生時に
は緊急支援獣医師派遣等を含め獣医師全体の相互防災協力体制を整えるとともに、平時より定期的な防災訓
練を受ける等、災害発生時に備えることが必要である。
さらに、国においては、震災時の動物行政の一元化で、迅速かつ的確な対策を講じるよう要望する。
記
1 災害時防災マニュアルの整備と防災訓練を行うこと。
2 大震災に対する初動救護対策の再検討を行うこと。
3 国、県、市町村との連携と定期的な情報交換を実施すること。
− 59 −
資料及びトピックス
公益社団法人移行までの経過と
今後の活動について
県獣事務局
岡
正
則
1、公益法人化までの経過
公益社団法人化への「新公益法人制度改革検討委員会」の取り組みについては、前号(会報第 22 号)で
述べたところであるが、平成 24 年 4 月 1 日に社団法人から公益社団法人への移行登記が終了し、「公益社
団法人大分県獣医師会」として新たな一歩を踏み出すことができました。
これを機会に、会員一人一人がこれまで以上に獣医師として果たすべき任務や社会的使命を自覚し、本会
の事業活動に対し会員の皆さん方の一層のご理解、ご協力及びご支援をお願い致します。
本会事務局は、平成 18 年の通常国会において関連3法案(①「一般社団法人及び一般財団法人に関する
法律」
、②「公益社団法人及び公益財団法人の認定に関する法律」並びに③「一般社団及び一般財団法人に
関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する
法律」が成立し、当時の佐藤州司元常務理事は(社)日本獣医師会内に設置された総務・広報委員として、
勉強会や説明会に積極的に参加するとともに、公益社団法人のメリットや本会並びに会員の社会的な地位向
上を図るため、公益社団法人移行への必要性について平成 21 年 3 月の理事会に諮り「新公益法人制度改革
検討委員会」の設置が承認されました。
公益法人化へのクリアすべき認定要件も多く、現状の整理や方向性、その場合のメリット・デメリットの
検討、合意形成、会員への周知と通常総会における承認など、準備期間における佐藤元常務の苦労は並々な
らぬものがあったと推察されます。
平成21年度より小野譲前常務が就任され、本格的な条件整備を行っていただきました。「不特定多数へ
の利益の還元」即ち公益目的事業の明確化については狂犬病予防事業の収支相償への取組み、定款変更案の
作成、諸規程の整備、支部のあり方等、県の法務室との事前協議(相談会)は 6 回にも及びました。
また、会計事務所との契約を結び公益社団法人としての会計処理についても見直しを行うとともに、平成
23 年度通常総会において狂犬病特別会計と一般会計の割合の見直し、会費の見直し、定款変更を行うなど、
公益法人化へ大きく前進した貢献は多大なものでありました。
私が平成 23 年 6 月 1 日に常務理事へ就任してからの2カ月は公益法人関係の書類とにらめっこしながら、
なれない業務に戸惑うばかりで、毎日があっという間に過ぎていきましたが、この間、小野前常務には個人
的な勉強会を開いてもらうなどの多くのアドバイスをいただきました。
公益法人へ残されていました大きな課題としては、支部のあり方、諸規程の整備、特定準備金の取扱、申
請書類の作成等が残されていましたが、県の法務室には就任後5回の相談会やメール等により、細部までの
協議を実施していただき、平成 23 年 11 月 24 日の 11 回目の相談会をもって事前協議が全て整ったので、
年末までに申請書を提出するよう指示がありました。
これを受け、平成 23 年 12 月 12 日平成 23 年度第 2 回理事会及び監事会を開催し、①公益社団法人へ
の移行認定に係る役員(理事・監事)等の承認・承諾、役員等就任に係る確認事項、会長及び常務理事の選
任の議決・承認を頂き、②公益法人移行認定申請書の承認、③諸規程の改正及び新規規程の承認など、移行
認定申請に係る事項の議決・承認をいただき、平成 23 年 12 月 15 日に「移行認定申請書」を提出するこ
とができました。
提出後の形式審査では細かな修正があったものの、12 月 20 日には修正も整い、明けて平成 24 年 1 月
26 日に開催された「大分県公益認定審査会」に諮問され、認定の基準に適合すると認めるとの答申があり、
本会の公益社団法人への移行認定が認められました。
− 61 −
また、
平成 24 年 4 月 1 日に移行登記(設立)すべく、法務局や司法書士事務所へ通いながら提出書類を整え、
無事に 4 月 1 日付けで特例社団法人から公益社団法人への移行登記を終えることができ、「公益社団法人大
分県獣医師会」として新たに出発することができました。
この間、会員の皆さんや麻生会長をはじめ理事・監事の方々、県法務室、県家畜衛生飼料室、貞閑公認会
計士事務所、三宮司法書士事務所等多くの関係者、移行認定事務を担当して頂きました佐藤元常務理事、小
野前常務理事のご指導とご支援に対しまして厚くお礼申し上げます。
2.今後の方向
本会は従前より多くの公益目的事業を展開してきましたが、今回の公益社団法人としての認定を受け、一
層の組織の透明性(デイスクロージャー)、組織の統治能力(ガバナンス)及び法令順守(コンプライアンス)
が必要となり、これらの責任と確保に基づいた社会的貢献が求められております。
今後は、会員各位が本会の実施する事業の公益性への理解を深め、高度専門職としての広い観点から公益
社団法人大分県獣医師会員としての誇りを持ち、公益的事業への積極的な参画と責任を果たすとともに、会
員としての一層の結束と基盤の強化を図ることが必要であります。
このことにより、本会の発展と獣医師の社会的地位の向上や待遇改善の向上等に結びつくものと期待して
おり、引き続き会員の皆さんのご理解、ご協力及びご支援いただきますようお願い致します。
また、公益社団法人化に伴い、広く寄附金を募り公益目的事業を充実したいと考えておりますので、会員
並びに会員外の皆さんのご協力をお願いいたします。
大分県獣医師会へ寄附した場合は税制上の優遇制度があります。
①個人からの寄附(寄附金額-2千円)の額が所得控除されます。
[
(収入額)-(所得控除額)] ×税率=税額
=
(寄附金額-2千円)
(寄附金額は所得金額の 40% 相当額が限度です。)
②法人(民間企業等)からの寄附
法人から支出された寄附金については、所得金額や資本金額から算出される一
定額を限度として、損金算入すること(損金算入の分だけ、課税対象額が減少し
ます)ができます。
公益法人としての事業区分(24年度)
○公益事業1(人と動物が共生する社会環境の健全な発展を目的とする事業)
1.公衆衛生の向上に関する事業(狂犬病予防対策事業)
2.動物愛護・保護活動事業
⑴ 動物愛護支援事業
1 譲渡犬・猫支援事業
①譲渡犬・猫の無料健康診断
②犬・猫の不妊手術への助成
③愛犬・愛猫飼育講習会
2 市民公開講座
⑵ 動物愛護管理推進事業
1 動物愛護推進員等活動支援事業
①動物介在活動事業
②動物管理所譲渡会サポート事業
③動物愛護推進員養成講習会
− 62 −
2 優良な飼い主育成事業
①愛犬しつけ教室
②動物愛護フェステイバル事業
③犬および猫の適正飼養啓発支援事業
④糞放置防止啓発事業
⑶ 鳥獣 110 番救護所設置事業
⑷ ヤマネコ保護支援事業
3.盲導犬支援事業
4.安全な畜産物の生産・供給に関する事業
⑴ 畜産振興事業(自衛防疫・共進会表彰等)
⑵ 要指示医薬品適正使用指導事業
○公益事業2(獣医事及び学術の向上を目的とする事業)
1.獣医学術地区学会事業及び地区大会事業
2.講習会・研修会の開催
3.
(公社)日本獣医師会が実施する生涯研修事業への協力
4.獣医師会報の発刊
○その他事業として、①会員の互助、福利厚生、②会員の表彰、③会員の慶弔、④獣医療証明書頒布事業等
の相互扶助等活動事業を実施する。 − 63 −
飼養衛生管理基準について
平成 22 年4月に宮崎県で発生した口蹄疫は、我が国の畜産にとってかつてないほど大きな被害をもたら
し、同年 11 月に島根県で発生した高病原性鳥インフルエンザは、その後、大分県をはじめ、宮崎県、鹿児
島県、愛知県、和歌山県、三重県、奈良県、千葉県においても発生が確認され、大きな被害をもたらしまし
たが、家畜伝染病による被害を最小限に止めるためには、「発生の予防」、「早期の発見・通報」及び「迅速・
的確な初動」が重要です。
「発生の予防」のために、農林水産省動物検疫所が空港や海港における輸入検疫の強化を行っているとこ
ろですが、何より畜産農家の方々に日頃から適切に飼養衛生管理をしていただくことが大切です。このため、
飼養衛生管理基準及び特定家畜伝染病防疫指針の見直し等を行い、平成 23 年 10 月 1 日付けで施行されま
した。
飼養衛生管理基準は、これまでは畜種別に分けることなく設定されていましたが、今回から畜種別(牛、馬、
豚、鶏)に分けられ、かつ、飼養衛生管理の基本となる事項について、より具体的に分かりやすく設定する
方向で検討を進めてまいりました。
既に取り組まれている方もかなりおられるかと思いますが、こうした飼養衛生管理を徹底していただくこ
とで、悪性の家畜伝染病の発生予防のみならず、下痢や発熱などの慢性疾病の予防、育成率や増体の向上な
ど、経営面でも大きな効果が得られるかと思います。
飼養衛生管理基準は、畜産農家の皆さんに最低限守っていただくべき事項を取りまとめたものです。改正
された家畜伝染病予防法では、都道府県による「指導・助言→勧告→命令」という手順が規定されており、
基準違反に対して、いきなり罰則が適用されることにはなりませんが、地域の衛生水準向上の観点からも、
畜産農家の皆さんに遵守していただくよう、積極的な取組をお願いいたします。
また、
「発生の予防」は、地域ぐるみでの対応がより効果を上げることになります。是非、家畜保健衛生
所等と連絡を密にし、地域の畜産農家が連携して飼養衛生管理基準の遵守に取り組んでいただきますよう、
お願いいたします。
− 64 −
衛生管理区域とは病原体の侵入を防止するために
衛生管理区域設定のイメージ(鶏)
衛生的な管理が必要となる区域です。
一般的には家畜舎やその周辺の飼料タンク、堆肥
舎などを含みます。
居住区域など他の区域との境界は柵やパイロンと
パイロンバーなどを用いるのがベターですが、それ
以外にロープや消石灰を用いた白線、あるいは植物
のプランターなどを利用することも可能です。
衛生管理区域には、極力必要のないものを立ち入
らせないようにし、やむを得ず立ち入らせる場合は、
動力噴霧器(もしくは写真のような園芸用の簡易ポ
ンプでも可)を用い、車両のタイヤ周りを重点的に
消毒を行ってください。
その後、農場専用の衣服や長靴に着替え、立ち入
り記録簿に記載をしてから立ち入ってもらうように
簡易ポンプを用いた車両消毒
しましょう。この記録簿は農場で一年以上保管する
ことが義務づけられています。
また、家畜の健康観察を行い、万が一家畜が特定
症状を呈していることを発見したときは、速やかに
最寄りの家畜保健衛生所に届け出なければなりませ
ん。
その他に埋却地の準備が義務づけられました。こ
れまで飼養していた農家については準備期間が設け
られますが、平成 23 年 10 月 1 日以降に新しく農
場を開設する場合又は畜舎を増築・拡大する場合は
家伝法第 12 条の6に規定する勧告又は命令の対象
となります。
口蹄疫、鳥インフルエンザなどの家畜伝染病の侵
農場専用衣服及び長靴の装着
入防止のため、新しい飼養衛生管理基準の遵守等に
取り組んでいただきますようお願いします。
− 65 −
「第10回全国和牛能力共進会長崎大会」を終えて
~2部門で農林水産大臣賞受賞~
農林水産研究指導センター畜産研究部
井
上
一
之
和牛の日本一を決める第 10 回全国和牛能力共進会が、「和牛維新! 地域で伸ばそう生産力 築こう豊
かな食文化」をテーマに長崎県ハウステンボス町 (10 月 25 日~ 29 日 ) で開催されました。大会は5年お
きに開催され「和牛のオリンピック」とも呼ばれており、体型や繁殖能力、肉質を競い合います。全国から
9部門に 480 頭が出品され、本県からは 8 月 24 日の県最終選抜会を勝ち抜いた種牛と肉牛が9部門(1
区~9区)に 26 頭が出品しました。
大分県農林水産研究指導センター畜産研究部より出品した第1区 ( 若雄 ) と、玖珠郡和牛育種組合より出
品した第5区 ( 繁殖雌牛:4頭1セット ) で優等賞1席を獲得し、農林水産大臣賞を受賞しました。また、
玖珠郡和牛育種組合より出品した第4区 ( 系統雌牛群:4頭1セット ) で優等賞2席を獲得した他、第3区、
第7区で優等賞4席、第6区で優等賞6席にそれぞれ入賞し9部門中8つの区で優等賞を獲得するなど上位
入賞が相次ぎました。2部門で農林水産大臣賞を受賞したのは昭和45年の第2回鹿児島大会以来の快挙で
あり、全国に「豊後牛」の知名度を挙げるることができ、今後の畜産振興を図るうえで明るい結果となりま
した。
また、同会場で開催された和牛審査競技会高校生の部では、玖珠農業高校1年の若杉将太郞君が優秀賞を
受賞しました。同競技会は各都道府県予選を勝抜いた 40 人の高校生が出場。黒毛和種4頭を審査し優劣の
順位付けを行う競技で、大分県代表の若杉君は最優秀賞は逃がしましたが、5人が選ばれる優秀賞を受賞し
ました。農業の後継者不足と言われているなかで、若い後継者である若杉君が受賞したことは大分県の畜産
にとって明るい材料であり一服の清涼剤となりました。
次回の第 11 回全国和牛能力共進会は、平成29年に宮城県で開催されます。今大会の成績をさらに上回
るため、
「今」から畜産関係者が総力をあげて「勝」準備を進めていく必要があります。
− 66 −
− 67 −
動物愛護管理法の改正について
大分県食品安全・衛生課
小
1.はじめに
林
貴
廣
示等が禁止されます。「法に定める日」は、親等か
平成 24 年9月5日、動物愛護管理法を改正する
らの引き離しの理想的な時期に関する調査研究の実
法律が公布され、1年以内に施行される予定です。
施及びその結果等を踏まえた、社会一般や業界への
動物愛護管理法は昭和 48 年に「動物の保護及び
定着度合いなどを勘案して別に法律で定める日のこ
管理に関する法律」として制定され、その後の改正
とで、現時点では未定ですが、検討は法施行後5年
の中で名称も「動物の愛護及び管理に関する法律」
以内に行うこととされています。
と変わりました。
⑵幼齢動物の健康と安全の確保
今回の改正は3回目ですが、2回目の改正は平成
17 年に行われ、そのときに「政府はこの法律の施
犬猫等の販売業者に対して、幼齢の犬猫の取扱い
行後5年を目処として、新法の施行の状況について
及び販売が困難になった犬猫の取扱いを記載した
の検討を加え、必要があると認めたときは、その結
「犬猫等健康安全計画」の提出が義務づけられ、既
果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」と
存の登録業者は法施行後3月以内に届出する必要が
いう規定が設けられ、今回の改正に至りました。今
あります。
回の改正においても同様の規定を設けているため、
また、犬猫の所有状況について、個体ごとの帳簿
記載と定期的な報告が義務づけられ、犬猫の健康・
約5年後にまた改正されるものと思われます。
今回の改正における主なものは、動物取扱業に関
わるものが多く、その他、多頭飼育の適正化、犬猫
安全を確保するために獣医師等との適切な連携の確
保を図らなければならないとされました。
の引き取り、災害対応、罰則の強化などがあります。
獣医師等との連携の確保
2.犬猫等の繁殖・販売に関しての新設事項
法第22条の3
これまで動物取扱業として登録されている事業者
犬猫等販売業者は、その飼養又は保管をする犬
は「第一種動物取扱業」となり、営利を目的としな
猫等の健康及び安全を確保するため、獣医師等
い飼養施設での一定数以上の動物の飼養や譲渡、展
との適切な連携の確保を図らなければならない。
示を行う場合は、「第二種動物取扱業」として都道
犬猫販売業者に対し、獣医師との連携の確保の
府県への届出義務が課せられました。
また、
「第一種動物取扱業」の中で犬猫の繁殖・
義務づけが明記されました。
販売については「犬猫等販売業者」として多くの新
⑶販売時の現物確認・対面説明の義務づけ
規事項が盛り込まれました。
販売する動物の現在の状況を直接見せる「現物確
⑴幼齢動物の販売日齢について
認」と、対面により書面を用いてその動物の適正な
社会化期を迎える幼齢期の子犬や子猫が、十分に
飼養又は保管のために必要な情報を提供する「対面
親兄弟とふれあう期間を確保する目的で、犬猫を繁
説明」が犬猫等の動物販売業者に義務づけられまし
殖する業者に対して、生後 56 日を経た犬猫でなけ
た。規制される動物は、「犬、猫その他の環境省令
れば、販売や販売のための引き渡し又は展示が禁止
で定める動物」となっており、今後検討の後、省令
されることになりました。
で定められます。
ただし、経過措置として法律の施行から3年間は
生後 45 日、その後、別に「法に定める日」までの
間は生後 49 日を経過しない犬猫について、販売展
3. 第二種動物取扱業の創設
営利性のない動物の取扱いのうち、飼養施設を有
− 68 −
して、一定数以上の動物を飼養する場合は、「第二
もうひとつは動物愛護推進員の活動として、災害
種動物取扱業」として都道府県への届出が義務づけ
時における動物の避難、保護等に対する協力が追加
られました。対象としては、主に譲渡活動等を行う
されました。動物愛護推進員制度は平成 11 年の法
シェルター等を有する愛護団体、公園展示等を想定
改正により設けられ、都道府県知事等から委嘱され
していますが、飼養施設の定義、届出が必要な飼養
た推進員が行政と協力して、地域での適正飼養の啓
数の下限値、遵守基準等については、
今後検討の
発活動等を行う制度です。
後、省令で定められます。
7.虐待の定義と罰則の強化
4.多頭飼育の適正化
虐待の定義は「みだりに給餌又は給水をやめるこ
地方公共団体は、多頭飼育者に対する届出制度を
とにより衰弱させること等」でしたが、今回の改正
条例で定めることができることとなりました。現状
により、「酷使、疾病等の放置、不衛生な状況での
でも条例で動物の飼養・保管について必要な措置を
飼養等」の具体的な事例が法律の中に明記されまし
講ずることができますが、一般の飼い主における犬
た。
猫等の多頭飼育に起因する問題を解決する手段とし
獣医師による通報
て、より積極的に明記されました。
法第41条の2
また、勧告・命令の対象となる多頭飼育によって
生じる生活環境の支障の内容が明確化され、騒音や
獣医師は、その業務を行うに当たり、みだりに
悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生と
殺されたと思われる動物の死体又はみだりに傷
いった内容が追加されました。さらに、悪臭等周辺
つけられ、若しくは虐待を受けたと思われる動
の生活環境が損なわれている場合だけでなく、多頭
物を発見したときは、都道府県知事その他の関
飼育によって、動物が衰弱する等の虐待を受けるお
係機関に通報するよう努めなければならない。
それがある場合にも、都道府県知事はその飼養者に
対して改善の勧告・命令をすることができるように
動物病院の獣医師にも新たな役割が明記されま
なりました。具体的な事例については今後、省令で
した。
規定される予定です。
罰則は次のとおり、強化されました。
5.犬及び猫の引取りについて
○罰則の強化例
都道府県等は犬や猫の引取りを求められた場合、
引き取らなければなりませんが、今回の改正で動物
①愛護動物の殺傷
取扱業者(犬猫等販売業者)から引取りを求められ
1年以下の懲役・100万円以下の罰金
た場合等、終生飼養の趣旨に反する場合には引取り
→2年以下の懲役・200万円以下の罰金
を拒否できるようになりました。
②愛護動物の虐待・遺棄、無許可特定動物飼養
50万円以下の罰金→100万円以下の罰金
また、都道府県等は犬猫の引取りを行った場合、
当該犬猫を可能な限り返還・譲渡に努めることが明
③無登録動物取扱営業
記されました。
30万円以下の罰金→100万円以下の罰金 等
8.今後の予定
6.災害対応について
改正法の施行は公布後1年以内とされています。
東日本大震災により、被災地域の住民だけでなく
ペット等の動物も大きな被害を受けました。こうし
現在、環境省では実際の運用に向けて政省令等の改
た状況を受けて、災害対応について新たに2つの項
正や基準等の設定についての協議が進められており、
目が規定されました。
その動向については環境省のホームページ「動物の
ひとつは災害時における動物の適正な飼養及び保
愛護と適切な管理」http://www.env.go.jp/nature/
管に関する施策を、都道府県が定める「動物愛護推
dobutsu/aigo/ に掲載されますので、詳細はそちら
進計画」において定めることが追加されました。詳
をご覧下さい。
細については国の基本指針において規定される予定
です。
− 69 −
子猫の譲渡会の開催について
大分県食品安全・衛生課
小
1.はじめに
林
貴
廣
そのため、今後は犬・猫の殺処分を減じる対策の
平成 24 年 10 月 23 日、大分県動物管理所にお
焦点を猫に当てる必要があり、平成 24 年度に動物
いて、初めて子猫の譲渡会が開催されました。初め
管理所の敷地内にプレハブの猫用保護スペース(猫
てということで多くの取材陣が訪れましたが、告知
譲渡用施設)を設置し、できる限り生存の機会を与
する期間が短かったためか、参加者、参加子猫の数
える目的で 10 月から子猫の譲渡会を開催すること
が少なく、少し淋しいスタートとなりました。
としました。
今後、月1回のペースで開催する予定ですが、今
回取り組むに至った経緯と、譲渡会の内容について
3.譲渡会の内容
平成 24 年度は月1回(最終の前週火曜日=第3
簡単に紹介します。
火曜又は第4火曜日の午後に開催)のペースで開催
2.開催に至った経緯
する予定です。
大分県動物管理所で開催する子犬の譲渡会(月2
子猫の譲渡会スケジュール
回、第2火曜日、最終火曜日の午後に開催)は平成
6年にスタートしましたが、平成 16 年度からボラ
受 付 12:30 ~
ンティアの協力が始まり、平成 20 年度からは県獣
事前講習会 13:00 ~ 14:00
医師会のメスの避妊手術助成(飼い主負担なし)が
譲 渡 会 14:00 ~ 15:00
なされるなど充実した内容となり、参加する犬より、
譲渡希望者の人数が多く、抽選となる場合もあるな
事前に各保健所で申込みの手続きが必要です。
ど盛況になっています。反面、子猫の譲渡会につい
ては、譲渡用の専用施設がないため、未実施の状況
譲渡会の前に 1 時間の事前講習会を開催します
が、保健所で事前講習会を受けている場合には、事
が続いていました。
犬猫の殺処分頭数の推移を見ると、過去には猫よ
前講習会の受講は不要です。
り犬の殺処分頭数が多かったのですが、平成 18 ~
また、譲渡会の参加者は事前に保健所で申込みを
19 年度を境に頭数が逆転し、犬より猫の殺処分頭
行い、審査を受ける必要があります。保健所で申込
数が多い状況になってきています。(平成 23 年度:
みをせず、直接譲渡会へ参加しても譲渡は受けられ
犬の殺処分頭数 735 頭、猫の殺処分頭数 2,368 頭)
ません。
事前講習会については、譲渡後に適正に飼養して
子猫の譲渡用施設
− 70 −
子猫の譲渡会の風景
もらう観点から子猫の譲渡会を開催することを契機
に大分県の譲渡要領を大幅に改正し、譲渡の要件と
して定めたもので、犬を譲渡する場合にも事前講習
会の受講は要件としています。
4.今後の展開
今回、猫の殺処分頭数を減らすためにできる限り
生存の機会を与える目的で子猫の譲渡会を開催する
こととしましたが、譲渡にも限界があり、対策の肝
要は避妊去勢をすすめ、不幸にして生まれる子猫を
なくすことです。そのため、今回、子猫の譲渡会を
開催するにあたり、県獣医師会が保健所等から譲渡
された猫の避妊・去勢手術の助成を開始することは
大いに意義があります。
また、平成 24 年度には子猫の譲渡会を開始する
だけでなく、動物愛護推進協議会の委員や市町村の
職員等で構成する「ねこ対策協議会」を発足させ、
野良猫に対するアプローチを「地域猫活動」等によ
り解決できないか、検討しているところです。
今後とも、
動物愛護推進のため、事業の推進を図っ
てまいりますので、皆様の一層のご協力をお願いし
ます。
− 71 −
動物愛護支援事業の進捗状況
県獣事務局
岡
正
則
平成 19 年より取り組んできました動物愛護支援事業(譲渡子犬の無料避妊手術、健康診断、愛犬飼育講
習会及び盲導犬への支援)は、会員皆様のご協力により約 5 年を経過し、殺処分頭数の減少や動物愛護意
識の醸成、視覚障害者の社会参加の促進の一助となっています。
子犬の譲渡会は、大分県、獣医師会、動物愛護推進員(ボランティア)の連携、協働による取り組みが
進められており、23 年度及び 24 年度(4 月~ 11 月)には譲渡子犬のない時もありましたが、毎月 2 回
の譲渡会が開催されました。
また、21 年度からは譲渡された子犬を対象に「愛犬しつけ講習会」を実施しており、今年度は平成 24
年 6 月 3 日(日)、大分市田ノ浦ビーチの T ‐ wave で開催しました。多くの参加があり園田千代香先生・
園田敬德先生の熱心な指導と犬の同窓会で大いに盛り上がり有意義な講習会となりました。
また、本年 10 月からは、県の譲渡要領が改正され、従来の子犬に加え、成犬や子ねこ、成ねこを対象と
した「大分県犬及びねこ譲渡要領」が施行されたことにより、本会でも大分県動物管理所や保健所(部)で
譲渡される犬及びねこを対象にするとともに、従来からの盲導犬支援事業並びに新規に身体障害者補助犬(介
助犬)の指定審査に協力できるよう「大分県獣医師会動物愛護支援事業実施要領」を改正したところであり
ます。
譲渡犬及びねこへの支援事業は、県の事業開始にあわせ本年 10 月 1 日から開始しました。今回の支援事
業は、動物愛護委員会が中心となりアンケート調査や数回の協議・検討を重ね、本会の公益事業の一つとし
て実施するものであり、引き続き会員皆様の一層のご協力をお願い致します。各事業の進捗状況並びに改正
された支援事業の概要は次のとおりです。
1.譲渡犬・猫への支援
大分県動物管理所並びに保健所で譲渡された犬・猫について、①無料健康診断、②不妊手術の支援、③飼
育講習会等の技術的な支援を実施している。
⑴ 譲渡会での子犬譲渡状況
平成23年度
譲渡年月日
展示頭数
平成23年 4月12日
内 訳
オス
メス
8
0
8
4月26日
4
1
5月10日
5
5月31日
譲渡頭数
内 訳
残頭数
オス
メス
6
0
6
2
3
4
1
3
0
1
4
5
1
4
0
5
0
5
5
0
5
0
6月14日
6
2
4
3
2
1
3
6月26日
9
7
2
9
7
2
0
7月12日
10
1
9
4
0
4
6
7月26日
9
3
6
9
3
6
0
8月 9日
9
3
6
7
2
5
2
8月30日
3
2
1
3
2
1
0
9月13日
9
4
5
6
2
4
3
− 72 −
備 考
9月27日
6
2
4
5
1
4
1
10月11日
6
3
3
5
3
2
1
10月25日
6
1
5
6
1
5
0
11月8日
4
1
3
4
1
3
0
11月29日
0
0
0
0
0
0
0
12月13日
4
1
3
3
1
3
0
12月25日
7
2
5
7
2
5
0
平成24年1月10日
5
2
3
5
2
3
0
1月31日
12
8
4
12
8
4
0
2月14日
4
0
4
4
0
4
0
2月28日
12
7
5
11
6
5
1
3月13日
6
5
1
6
5
1
0
3月27日
9
5
4
9
5
4
0
158
61
97
139
55
84
19
23年度計
平成24年4月~11月
譲渡年月日
展示頭数
平成24年 4月10日
内 訳
オス
メス
5
1
4
4月24日
5
3
5月 8日
4
5月22日
譲渡頭数
内 訳
残頭数
オス
メス
5
1
4
0
2
5
3
2
0
0
4
4
0
4
0
10
5
5
10
5
5
0
6月12日
0
0
0
0
0
0
0
6月24日
4
2
2
4
2
2
0
7月10日
3
1
2
3
1
2
0
7月31日
0
0
0
0
0
0
0
8月14日
2
0
2
2
0
2
0
8月28日
4
2
2
4
2
2
0
9月11日
6
0
6
6
0
6
0
9月25日
14
6
8
8
3
5
6
10月 9日
10
4
6
5
1
4
5
10月30日
12
8
4
5
4
1
7
11月13日
6
3
3
5
2
3
1
11月27日
5
0
5
4
0
4
1
24年度 11月末計
90
35
55
70
24
46
20
備 考
★譲渡会での子ねこの譲渡実績
譲渡年月日
展示頭数
平成24年10月23日
内 訳
オス
メス
2
1
1
11月20日
4
1
24年度 11月末計
6
2
譲渡頭数
内 訳
残頭数
オス
メス
0
0
0
2
3
4
1
3
0
4
4
1
3
2
− 73 −
備 考
⑵ 平成24年度譲渡犬(猫)の避妊手術実施状況
犬
猫
メス
オス
メス
オス
平成19年度 合計
17頭
―
―
―
平成20年度 合計
105頭
―
―
―
平成21年度 合計
90頭
―
―
―
平成22年度 合計
95頭
―
―
―
平成23年度(4月~6月)
23頭
―
―
―
(7月~9月)
25頭
―
―
―
(10月~12月)
25頭
―
―
―
(1月~3月)
11頭
―
―
―
平成23年度 合計
84頭
―
―
―
平成24年度(4月~6月)
13頭
―
―
―
(7月~9月)
20頭
―
―
―
33頭
―
―
―
平成24年度
(4月~9月)合計
備 考
年度途中より実施、対象はメス子犬
注:オス犬、猫については、平成 24 年 10 月 1 日譲渡分から対象。
⑶ 愛犬(愛猫)飼育講習会開催状況
平成23年度 愛犬飼育講習会
開催月日
参加人数
第1回
4月24日
22
第2回
6月26日
23
第3回
8月28日
27
第4回
10月23日
25
第5回
12月18日
13
第6回
2月26日
26
合 計
備 考
偶数月第4日曜日に開催
136
平成24年度 愛犬・愛猫飼育講習会
開催月日
参 加 人 数
愛犬飼育講習会
愛猫飼育講習会
備 考
第1回
4月22日
20
―
第2回
6月24日
28
―
第3回
8月26日
17
―
偶数月第4日曜日に開催
第4回
10月28日
21
―
猫については12月から開始
第5回
12月23日
第6回
2月24日
合 計
− 74 −
2.盲導犬への支援
大分盲導犬協会に登録されている盲導犬を対象に、永く健康で活躍できるよう狂犬病ワクチンや診療費の
一部を助成し、障害者の社会参加の支援を行っている。
年 度
助成頭数
平成20年度
17頭
平成21年度
19頭
平成22年度
17頭
平成23年度
17頭
平成24年度
17頭
備 考
大分盲導犬協会の登録犬を対象として、予防衛生対
策費を助成。
⑶ 身体障害者補助犬の認定審査への協力(24年度新規)
指定法人(厚生労働大臣が指定した法人)が、身体障害者補助犬(介助犬)の訓練が適正に実施されて
いることを検証・認定するために行う認定審査に、本会会員を派遣し協力する。
譲渡犬同窓会
しつけ講習会
しつけ講習会
愛犬しつけ講習会(譲渡犬対象) 平成24年6月3日(日)
大分市田ノ浦ビーチT-wave
− 75 −
平成 24 年度大分県動物愛護
フェスティバルについて
県獣事務局
岡
正
則
平成 24 年度大分県動物愛護フェスティバルが、平成 24 年 11 月 11 日 ( 日 )、杵築市山香町「大分農業
文化公園・みどりの広場」において、大分県及び(公社)大分県獣医師会の主催で開催されました。
「てるてる坊主」の効果もなく、昨年に続きあいにくの雨模様でしたが、午前 10 時の開会式に続き、大
分盲導犬協会の紹介と盲導犬の体験を皮切りに、多くの愛犬・愛猫飼育者の方々やボランティアグループ、
動物愛護推進員等の参加により盛会でした。
雨の中での開催となり、愛犬しつけ教室は農業公園のエントランスで行われたものの、昼過ぎには雨も上
がり、野外では愛犬と楽しむスポーツ「ディスクドッグ」、災害等で活躍する災害救助犬や警察犬の実演が
行われ、長寿犬・長寿ねこの表彰式、動物ふれあいコーナーや獣医さんになってみようコーナー、スタンプ
ラリーなど多くの行事が行われ、最後に動物○×クイズやお楽しみ抽選会で盛り上がり幕を閉じました。
また、会場ではペットなんでも相談、動物スケッチ、HOME PEANUTUS、あらうンジャーによる動物風船、
APU ボランティアグループ「フルーク」の活動紹介、ペットグッズ、手入れ相談、愛犬・愛猫との写真撮
影会など、関係者によるブースが展示されました。
獣医師会は「愛犬しつけ講習会」、「長寿犬・長寿ねこの表彰」、「ペットなんでも相談」を担当しました。
・愛犬しつけ教室
基本的な犬のしつけについて、玖珠町の園田千代香先生(家庭犬インストラクター)、園田敬德先生より、
飼育犬を用いての丁寧な説明・実演によるしつけ教室が行われ、事前参加登録及び当日参加された 32 頭の
愛犬・飼育者が熱心に受講されました。
屋内での開催で、隣同士でにらめっこする犬もおり、先生の声が聞きにくかったかもしれません。来年は
青空のもとで開催したいです。
・長寿犬・長寿ねこの表彰
表彰資格は、
犬は大型犬が 15 才以上、中・小型犬が 17 才以上、ねこは 20 才以上です。今年度は新たに「超
大型犬の部- 10 才以上」を設けましたが、残念ながら該当犬はいませんでした。また、前年度に表彰され、
今も健在な犬・ねこは特別賞として表彰しました。
会長より、永年深い愛情をもって飼育された飼育者(長寿犬 11 頭-大型犬 2 頭、中・小型犬 9 頭-、
長寿ねこ 5 頭、特別賞の犬 3 頭、ねこ 1 頭)に対し、表彰状と副賞を授与しました。最高齢は犬で 20 才、
ねこで 23 才でした。
晴れの表彰式には、愛犬・愛ねこを同伴されている方が多く、担架(?)にのって参加されていた犬など
さすがに衰えの見える犬・ねこもいましたが、表彰を受けたあと飼い主さん家族と誇らしげに写真に写って
いました。来年も元気な姿で会えることを楽しみにしています。
・ペットなんでも相談
しつけ教室に参加された方々などが相談ブースに来られ、しつけや病気などについての疑問・悩みを先生
に相談されました。今年も体脂肪測定を行った肥満防止のための飼育方法など大好評でした。
大谷先生(中津支部)
、東 貞人先生(宇佐 ・ 高田支部)、園田先生(玖珠支部)の 3 名の先生が相談に
対応されました。
− 76 −
愛犬しつけ講習会
長寿犬・長寿ねこ
表彰式
− 77 −
獣医さんになってみよう
愛犬の体脂肪チェック
コーナー
「盲導犬」の体験
− 78 −
大分市高島におけるウミネコ(Larus crassirostris )の
標識調査報告及び今後の保護に向けて(第8報)
大分バンディングネットワーク代表
中 村 茂
1.はじめに
ウミネコ(Larus crassirostris )は、チドリ目カモメ科に属する海鳥である。分布は、日本を始めとす
る朝鮮半島、ロシア沿海州など極東アジアに限られており、世界的に非常に分布の狭い海鳥である。しかし、
国内での分布は、北海道から九州までと広く、繁殖地は、北海道利尻島、青森県蕪島、和歌山県白崎海岸な
ど、九州では、大分市高島をはじめとして長崎県男女群島、鹿児島県甑島などと、いずれも海岸や島嶼に点
在しており、そのうちのいくつかは、国あるいは県の天然記念物に指定されている(清棲 1965)。
県内の繁殖地である大分市高島は、昭和 28 年に県の天然記念物に指定された県内唯一の集団繁殖地(以
下コロニー)であり、九州最大級のコロニーとなっている。冬季、本種は、周辺海域に散らばって生息して
いるが、1月末から3月に島に回帰した後、4月末から5月にかけて2~3個の卵を産み、雄雌で抱卵を行
う。卵は、3~4週間で孵化し、幼鳥は、8月上旬に島を飛び立つ。
高島において、九州最大級の個体群が維持されていることは、繁殖にとって良好な生息環境が保持されて
いるものと推測され、希少野生動植物保護を謳った文化財的な価値は、高いものと考えられた。従って、県
文化財の持つ価値観を広く県民にアピールし、併せて、こうした良好な自然環境を次世代に継承する気運
を高める下地となることを期して、2005 年から 2010 年と今まで7度の調査を行っており(中村 20052011)
、今回 2012 年は、8回目の調査となった。
2.環境及び方法
調査地は、従来と同様、大分市大字高島 5682 番地(緯度 33°17′N、経度 131°58′E、標高 70m)
の海洋によって隔絶された孤島に設置した(図1)。島の環
境は、平坦な岩礁であり、部分的に植物が茂っていた。調査
日は、6月 23 日で、ウミネコのヒナが巣立ちを迎える時期
に当たり、当日も巣を離れたヒナが岩礁の上を歩き回ってい
る状況であった。また、既に翼羽が生えそろい飛翔を始める
個体も数多く存在した。
ウミネコの調査法としては、以下の3つの調査法を用い、
総合的なデータ収集を目指した。
図1:高島のウミネコ繁殖地
(1)鳥類標識調査法(以下バンディング):本調査法は、
固有のシリアルナンバーを刻印した環境省指定の金属足環
(以下リング)を装着し、国内外での再捕獲をもって渡りの
経路や生息状況などを解明する手法である。今回、1名の標
識調査員(以下バンダー)と1名の調査補助員で、既に離巣
したヒナの手捕りを中心としたバンディングを行ったが(図
2)、これは、島からの飛び立ち以降の再捕獲によって高島
のウミネコの移動状況を調査することを目的としている。ま
た、同時に亜成鳥、成鳥の捕獲も行うため、121mm メッシュ
× 12m 長の霞網1枚の架設も行った。各調査員の役割につ
図2:バンディングのもよう
いては、以下のとおりである。
− 79 −
バンダー:ウミネコを捕獲し、所定の計測を行い、リングを装着して放鳥する。また、調査全体の指揮を行う。
記録係:読み上げられた計測値を記録用紙に記録し、捕獲ウミネコ及び調査風景の撮影を行う。
捕獲したウミネコは、鳥類標識マニュアル(山階鳥類研究所標識調査室 2009)に従って、リング取付
用の特殊ラージプライアーを用いて個体別に8mm 径の9番リングを装着した。日々の成長による計測値
の著変が考えられるため、本調査においてヒナについては、体サイズの計測は、有効でないと判断された。
よって、年齢査定と調査時点での栄養状態が把握できると考えられたため、従来と同様に体重(bw: body
weight)測定のみを行って放鳥した。
また、今回も放鳥後の視認性の向上を目的として、標識足環に着色後拭き取り、刻印内にインク(SOFT99
コーポレーション社;タッチアップ使用)を残すという方法を実施した。
一般的に年齢の表記は、孵化当初から正確な日齢の把握をしていないため、以下のようなアルファベット
表記で記載される。
ヒ ナ(在巣状態)・・・・N
(早生ビナの離巣状態:まだ飛ぶ力がないもの)・・・・P
幼 鳥(生後1年以内のもの)・・・・J
(第1回冬羽)・・・・1W
亜成鳥(幼鳥よりも成長しているが、成鳥には達していないもの)・・・・SA
(第1回夏羽)・・・・1S
*以降、鳥種によって成鳥に達するまで2W、2S・・・の段階がある。
成 鳥(成鳥と区別できないものも含める)・・・・A
不 明・・・・U(性別表記にも不明な場合この記号を用いる)
なお、今回の調査は、県天然記念物の調査であり、調査地設営については、県教育委員会から文化財の現
状変更許可(指令教委文第 698-1 号)、捕獲については、大
分県一円を範囲とした環境省九州環境事務所鳥獣捕獲許可証
第 10-0180 号の交付の下、合法的に調査を行った。
(2)繁殖巣及び死鳥計数
調査員2名を配置し、標識調査地であるフナマ岩礁一帯の
踏査を行って、可能な限り全巣及びヒナの死鳥数の計数を
行った(図3)。これは、経年的に当該調査地における毎年
の繁殖数とヒナの死亡数を把握するという目的がある。
図3:踏査風景
巣 の 計 数 に あ た っ て は( 図 4)、 発 見 し た 巣 の 中 に 約
10cm のマーカーを落とし、後に回収して個数を記録する方
法をとった。本年の調査では紙製の荷札を利用したマーカー
を導入し、誤嚥・回収漏れにより発生しうるリスクの低減に
つとめた。なお、今回も事故を起こすことなく全てのマーカー
の回収に成功している。
また、今回も草等で丸く成形してある皿状構造物を「巣」
として計上した。死鳥数は、鳥体であることが明白なものを
対象とし、摂食等による残滓などは、カウントしていない。
図4:巣、卵、マーカー
(3)概数調査
島から退去する際に、フナマ岩礁で1カ所、島の側面を確認できる距離に停泊して2カ所の写真撮影を行
− 80 −
い、写真判定により、高島全体の本種生息数の概数を調査した。調査時間の関係から、島の周回は不可能で
あったが、長側面、短側面の計数の2倍の数の合計をもっておおよその数の確認につとめた。
3.調査結果と考察
捕獲ウミネコの齢査定及び計測の結果は、表1に示したとおりであり、今回の捕獲は、新規放鳥成鳥2羽(図
5)
、新規放鳥ヒナ 38 個体の合計 40 個体であった。ヒナの年齢は、羽毛の状態と既に離巣している成長
段階から P と判断されたが、性別については、判断基準がなく不明であった。ヒナの平均体重は、338.7g
である。
表1.標識ウミネコの計測値
ring no.
kind of band sex age tl(mm) wl(mm) t(mm) ec(mm) tar(mm) bw(g)
9B-17381
newly
u
a
475.0
368.0
164.0
53.6
54.0
400.0
9B-17382
newly
u
p
260.0
9B-17383
newly
u
p
420.0
9B-17384
newly
u
p
340.0
9B-17385
newly
u
p
490.0
9B-17386
newly
u
p
290.0
9B-17387
newly
u
p
310.0
9B-17388
newly
u
p
340.0
9B-17389
newly
u
p
180.0
9B-17390
newly
u
p
390.0
9B-17391
newly
u
p
270.0
9B-17392
newly
u
p
350.0
9B-17393
newly
u
p
290.0
9B-17394
newly
u
p
430.0
9B-17395
newly
u
p
360.0
9B-17396
newly
u
p
270.0
9B-17397
newly
u
p
410.0
9B-17398
newly
u
p
400.0
9B-17399
newly
u
a
450.0
362.0
136.0
49.0
50.9
390.0
9B-17400
newly
u
p
350.0
9B-17401
newly
u
p
240.0
9B-17402
newly
u
p
410.0
9B-17403
newly
u
p
300.0
9B-17404
newly
u
p
380.0
9B-17405
newly
u
p
290.0
9B-17406
newly
u
p
260.0
9B-17407
newly
u
p
340.0
9B-17408
newly
u
p
360.0
9B-17409
newly
u
p
200.0
9B-17410
newly
u
p
430.0
9B-17411
newly
u
p
310.0
9B-17412
newly
u
p
260.0
9B-17413
newly
u
p
400.0
9B-17414
newly
u
p
370.0
9B-17415
newly
u
p
230.0
9B-17416
newly
u
p
430.0
9B-17417
newly
u
p
410.0
9B-17418
newly
u
p
400.0
9B-17419
newly
u
p
340.0
9B-17420
newly
u
p
280.0
ave.(pullus)
338.7
*表中の kind of band の newly は新標識個体を示し、性別の u は不明、年齢の a は成鳥、p はヒナを示す。
− 81 −
今回も写真判定による当該調査地の概数調査を行ったが、島の長側面、短側面及びフナマ岩礁の飛翔、着
地を問わず、本種と考えられる全ての被写体のカウントを行い、5670 羽を数えた。本計数データは過去調
査最大の生息羽数を数えたが、瀬渡し船船長、釣り人に聞き取りをしたところ、むしろ例年よりも少ないよ
うに感じられるとの回答が寄せられた。今回の調査時期は台風の襲来により、例年よりも2週間ほど遅かっ
たが、時期の進行に合わせて島への寄りつきの度合いが変動し、調査時間は例年通りであっても、見かけ上
一時的に午前中の飛来羽数が向上した可能性も考えられるが、6月期毎週の調査は実施しておらず、今後時
期の変動ごとの生息羽数のカウントで寄りつき行動の傾向の一端が垣間見えるものと思われる。また、この
手法は、あくまで写真にとらえられた被写体をカウントしたものであって岩や樹木の陰にいるもの、遠方で
判定不能なもの、ぶれて写ったもの等がもれており、正確な生息数を反映したものではなく、参考値の意味
合いとなる。
巣及びヒナの死鳥計数については、繁殖巣数 64、死鳥数 92 を数え、前回よりも繁殖巣が多く、死鳥が
少ないという結果が示された。しかしながら、調査時間が短時間であり、崩壊・風化の著しいもの、岩礁内
のクラックに深く落ち込んでいる死体等の正確なカウントが難しい。カウントによる結果は、例え概数値で
あっても、経年的におおよその傾向が把握できるため、生息数の大きなレベルでの変動の把握に今後、重大
な意味を持つものと考えられる。
また、今回の調査では再捕獲の個体はなかったが、踏査調査員により、コロニー周辺でリングを装着した
成鳥が数羽飛翔していることが確認された。
今回の調査ではテグスに絡まったウミネコを目撃していな
いが、放置されたテグスは散見された。しかしながら、この
ことが本年のウミネコの無事故を意味するものではなく、今
後とも注意が必要なものと思われる。また、今回も捕食者に
相当するほ乳類の生息は確認できなかった。しかし、本種を
襲う可能性のあるハシブトガラスは 10 羽程カウントしてお
り、従来多くても2~3羽程度の数であったが、今回は最大
飛来羽数となる。一般的にウミネコが卵の状態であれば採食
がしやすく、餌資源の状況によって飛来数を増加させること
図5:捕獲された成鳥
は考えられるが、回避・逃走等で捕食がしにくいと考えられ
る飛翔期間際の雛を餌と想定するならば興味深い傾向と言える。なお、今回、岩礁に降り立ち、索餌をする
ような行動は観察できたが、雛を襲う直接的な行動は観察されなかった。
本調査では従来時期と異なる傾向が示されたが、本種の飛翔期前生態の一傾向を考える上で興味ある結果
となった。
当団体では本年も大分市本神崎において毎年実施されている「うみ亀祭」において 2005 年からの調査
の歩み、調査実績の展示を行い、広く来訪者に保護への呼びかけを行った。来年度以降も調査のまとめを展
示・解説し、啓蒙普及に努めていく所存である。
5.謝辞
今回の調査において、貴重な時間を割いて作業を補助していただいた大分市の磯崎香織氏、佐藤亜美氏、
渡辺了孔氏に深謝する。なお、本調査は、一部大分県獣医師会から調査助成をいただき実施された。関係各
位に対して厚くお礼申し上げる。
6.引用文献
1)清棲幸保 . 1965. 増補改訂版日本鳥類大図鑑Ⅱ , 講談社 , 東京 .
− 82 −
2)中村茂 . 2005-2011. 大分市高島におけるウミネコ(Larus crassirostris )の標識調査報告及び
今後の保護に向けて(第1-7報). 大分県獣医師会報 .
3)山階鳥類研究所 . 2009. 鳥類標識マニュアル(第 11 版), 山階鳥類研究所 , 我孫子
*お願い:本稿中で触れましたが、今年も標識リング刻印に青の着色を施したウミネコを放鳥しました。
県内産の本種の分散状況は、未だ分かっておらず、非繁殖期のデータの収集が急務になっております。そこで、
もし、読者の皆様が観察、死体拾得あるいは、保護個体として診療した本種の中に標識リングの刻印の青い
ものがいましたら、情報提供をお願いする次第です。知りたい情報は、1.読み取れればリングナンバー、2.
分かれば性別・年齢、3.観察・保護地点(重要)、4.観察・診療の状況(100 羽の群れの中で3羽観察・・・
や、カラスに追われ、外傷のため別府で保護。完治したため宇佐で放鳥・・・などといった記録)です。ど
うかご協力をお願いいたします。
連絡先:大分バンディングネットワーク佐賀関ウミネコ調査事務局
〒870-1115 大分市ひばりヶ丘1丁目8-13 中村茂 方
TEL:090-8273-7242
e-mail: [email protected]
− 83 −
超音波肉診断装置を用いた黒毛和種肥育牛の
生体肉質判定精度の向上
大分県農林水産研究指導センター畜産研究部
豊後牛改良チーム 山 岡 達 也
【はじめに】
自体の改良が必要な状況でした。
そこで、新しく改良された診断装置による現在の
利用状況と、動画保存による判定精度の向上、技術
員養成に向けた取り組みを行って来たので報告しま
す。
【超音波診断装置の畜産分野での利用】
畜産分野においては、授精後 35 日前後からの妊
娠鑑定や卵巣から探針を穿刺し、直接卵子を吸引し
て採卵をおこなう OPU において広く利用されてお
り、周波数の高低により解像度に影響がでるため、
適度な高さの周波数で診断装置は設定されています。
【超音波の特性】
超音波は非破壊的に構造物の内面を断面化し、画
像化することができることができ、その特性を利用
して生体のまま牛の肉質を診断する技術は、現在全
国各道府県で実施されており、黒毛和種肥育牛の分
野では、各枝肉共励会で出品牛を選抜する際多く利
用されている。
当研究部では、平成 4 年に開催された全国和牛
能力共進会大分県大会より試験的な利用がはじまり、
平成 14 年に開催された全国和牛能力共進会岐阜県
大会では、大分県が寿恵福号でグランドチャンピオ
ンを受賞したことは、超音波肉質診断による注目を
超音波は真っ直ぐ進む指向性があり、性質の違う
集めることとなった。
しかしながら、当時の診断装置では、肥育期間が
媒体で反射するという特性があり、反射の強弱を輝
長い一般的な肥育牛の肉質診断は難しく、診断装置
度変換して 2 次元的にマッピングして画像を構築
出来ます。
また、液体では、透過性があり、空気では、画像
に反映出来にくく、図はその様子を示しています。
【診断装置】
超音波画像の撮影は、本多電子製造、富士平工業
( 株)販売の HS-2000 を利用しており、プローブは、
2.0MHz を接続し、診断装置にデジタルビデオカメ
ラ(SONY:DCR-VX100)を用いて動画として録
画した後、記録テープをパソコン(SONY VAIO:
VGC-RM52DL9) の 画 像 処 理 ソ フ ト(Windows
Movie Maker)によりデジタル画像として取り込
− 84 −
て画像を見る方には、画像がどのように映像として
み、編集保存しています。
その後、編集したファイルを Windows Media
反映しているのかを理解して貰うことから、そのイ
メージを説明するところから始まります。
Player で動画を再生し肉質の診断を行います。
【超音波画像の特徴】
【超音波画像の測定】
屠殺された牛は、解体工程を経て枝肉という形で
冷却され、脊髄を正中に沿って左右に分離されます。
この枝肉の格付けは、左側の第 6-7 番目の肋骨間
を切開され審査されます。
超音波測定は、生体でもその部位に相当する牛の
左側、肩甲骨背側端を腹側に沿って下方へ移動させ
ながら測定します。測定では、ロース芯部位、皮下
脂肪部位、バラ部位に区分して測定します。はじめ
− 85 −
下図は、超音波画像を脂肪交雑(BMS)順に並
【技術者養成研修】
べた、ロース芯部位 ( 左図)と皮下脂肪部位 ( 右図 )
です。このように、一見画期的な技術のように聞こ
える超音波診断ですが、音の反射によって映し出さ
れた画像をその輝度の強弱によって判定して行かな
ければ成らない地味な作業です。
【脂肪交雑の判定】
普及の段階に入ったこの超音波診断の技術をより
多くの方に理解してもらうための研修会を当研究部
では毎年実施しており、生産者からの要望も高まる
中、農場での撮影を重ねる内に、生産者の中でも判
定できる方も増えてきました。現在では、その先導
役として全農おおいた畜産課の職員が、技術者とし
このように、一見分かりづらい映像ですが、より
多くの画像を撮影し、その牛の枝肉成績と比較する
て各農場で出荷牛の超音波診断を行っています。
【枝ぶり評価】
ことで誰にでも脂肪交雑のある一定の判定は出来る
ことになります。そのポイントとしては、まず良い
ものと悪いものとの画像の区別からはじまり、輝度
が高くより白く筋肉形質 ( 僧帽筋・ロース芯・背半
鋸筋 ) の判別が出来にくいものほど交雑は高くなる
ので、その区別を時間を掛けて習得していきます。
【試験研究の成果】
枝ぶりとは、脂肪交雑の他に筋肉の厚さと大きさ、
皮下脂肪の薄さを意味し、肉がより多くとれる目安
として使われる表現です。推定では、僧帽筋の厚さ、
ロース芯の大きさ、バラの厚さを 5 段階で点数評
価し、脂肪交雑を加味した方が判定精度が上がるこ
とから現在では各枝肉共励会へ出品するための選抜
にこの評価を用いています。
これまで得られた試験研究の成果では、従来行っ
【技術者判定精度の向上】
ていた画像を印刷する静止画による判定では判定者
判定技術者の養成では、画像ファイルの共有によ
の主観性が強くバラツキがあるため、動画による判
り、各枝肉共励会での選畜を繰り返すことで、画像
定を現在行っており、脂肪交雑の格付け結果と超音
判定一致率は、± 1 の範囲で 94.1% とほぼ研究部
波判定における脂肪交雑の精度は、± 2 の範囲で
職員と同じ判定ができるようになり、枝肉格付けと
は 79.9% の一致率を示すまで向上している。
の一致率も± 1 の範囲で 64.7% の精度で判定する
技術の向上が得られました。このことは、判定技術
− 86 −
普及のための大きな一歩となりました。
【養成技術者による成果】
この約 6 年で九州管内系統和牛枝肉共励会をは
じめ、九州あるいは全国的な共励会で、超音波診断
により、選畜した出品牛が優秀な成績をおさめるよ
うになり、これからも肉質診断技術の向上を目指し、
より多くの技術者を養成出来ることで、本県の肉牛
ブランドの推進へとつなげ、肥育経営の一助となる
よう推定精度の向上に努めて行きたいと考えており
ます。
− 87 −
ウシの雌雄産み分け技術
農林水産研究指導センター畜産研究部 藤
田
達
男
「一姫二太郎」という諺があります。
「大辞泉」に
よると、
「子を持つには、最初は育てやすい女の子で、
次は男の子がよいという言い伝え」と書かれていま
す。ヒトの場合は天からの授かりものに対して大ら
かな態度で臨めますが、家畜の分野では生まれてく
る産子の性は、収益性を左右する重大事であるため、
「雌雄産み分け」には高い関心が寄せられてきまし
た。特に、酪農家にとって後継牛(雌牛)確保は、
経営を維持拡大する上で重要な要素であり、これま
でに様々な取り組みがなされてきました。呪いや祈
祷の時代?を経て、人工授精技術が確立されてから
は、精液の電気泳動や密度勾配遠心法による精子分
図1.バイオプシー後の胚
離などが、胚移植技術が確立された後も、胚の染色
楔形の影は金属刃の先端。金属刃の上端に付着した細胞片
を PCR サンプルとし、胚本体は培養または冷凍保存、融解
後、移植
体検査、胚の発育スピードによる分別、免疫学的判
別など様々な方法が考案、試行されました。しかし、
これらの方法は精度や手技上の問題から普及しませ
んでした。
←雄特異的バンド
1980 年代になって、目覚ましい勢いで進化する
←雌雄共通バンド
分子生物学とそれまでに確立していた胚移植技術と
の融合により、ウシの雌雄産み分け技術は、まず胚
の性判別技術によって確立し、実用化しました。人
工授精後7日目の子宮から回収した胚(胚盤胞)の
図2.PCR産物の電気泳動像
一部(栄養膜細胞)を顕微鏡下で切り取り(図1)、
雌雄共通バンドと雄特異的バンドの両方が検出されれば雄、
雌雄共通バンドのみ検出されれば雌と判定
切り取った細胞片から DNA を抽出し、X と Y 染
色体特異的プライマーを用いた PCR 反応によって、
Y 遺伝子特異的配列が検出できれば雄、検出されな
その後、胚の Y 特異的遺伝子の検出方法は PCR
ければ雌と判定する方法で胚の性判別は行われます
反応から LAMP 法に進化し、検出時間が大幅に短
(図2)
。胚の性が確定した後で、希望する性の胚を
縮されるとともに、性判別した胚の凍結保存法につ
移植することにより雌雄産み分けが実現します。乳
いては、プログラムフリーザーを使用する緩慢凍結
用牛の後継牛確保のためには、雌と判定された胚の
法から、胚の損傷ダメージを最小限に止めるため超
みが移植され、
雄胚は廃棄されます。1997 年 11 月、
急速冷却法(ガラス化保存法)等が試行されました。
当時の畜産試験場肉用牛生産技術部はこの雌雄産み
さらに 1990 年代後半から取り組んできた OPU-
分け技術により、性判別子牛の生産に成功しました。
IVF(生体卵子吸引-体外受精)技術と性判別技術
を組み合わせて、2005 年 4 月には高能力乳用牛か
ら作出した OPU-IVF 胚を LAMP 法によって性判
別し、判別結果通りの雌子牛(高泌乳が期待できる
後継牛)の生産に成功しました。
− 88 −
こうして胚の性判別によるウシの雌雄産み分け技
術は確立しましたが、性判別の過程で胚の一部を切
断分離するため、そのダメージで耐凍性が低下し受
胎率が低下すること、特に雌胚のみ必要とする乳用
種においては、生産された胚の半分を占める雄胚が
全く無駄になること、性判別に高度の技術と施設が
必要で高コストであること、肉用種では乳用種ほど
雌雄産み分けのメリットがないこと等の理由により、
図5.X/Y精子と性決定の模式図
哺乳類の染色体は、X が Y より大きく、ウシで
は、X 精子がもつ DNA の量は Y 精子より 3.8 %
多いことが知られています。1980 年代の後半、米
国農務省の Johnson らは、このことを利用して、
細胞膜を透過し DNA に可逆的に結合する蛍光色
素 Hoechst33342 で染色した精子をフローサイト
メーターで一個ずつ流しながら蛍光を測定すること
図3.LAMP法試薬キット
で、X / Y 精子を識別・分取する技術を開発しま
反応産物が濁っておれば雄、透明は雌。
した。図6にその原理を示しました。①試料注入口
から流れてきた個々の精子に、②レーザー光線を当
胚の性判別による雌雄産み分
て 2 方向から蛍光強度を測定し、③コンピューター
け技術は、一部の酪農家で活
で瞬時に X 精子か Y 精子かを解析します。④その
用されたものの大々的な普及
精子が液流の先端に移動したとき液全体に荷電しま
には至りませんでした。
す。⑤荷電液滴が液流から分離した直後に偏向板に
日本では胚の性判別による
よって回収するというものです。
雌雄産み分け技術の高度化が
進展している間に、米国では
精子による雌雄産み分け技術
の研究が進められていました。
図4.LAMP法反応産物
さて、ここで性決定の仕組み
について「釈迦に説法」では
ありますが、図5でおさらいをしておきます。哺乳
類の性は、
X 染色体(以下「X」)と Y 染色体(以下「Y」)
と呼ばれる 2 種類の性染色体によって決定されま
す。雌は X を 2 つ(XX)、雄は X と Y を 1 つずつもっ
ています(XY)。雌が生産する卵子は X しかもた
ないのに対し、雄が生産する精子は X または Y の
2 種類あり、X 精子が受精すれば XX となることか
ら雌の個体となります。逆に、Y 精子が受精すれば、
XY となるので雄になります。つまり、精子が性の
決定を左右することから、X 精子と Y 精子を分け
ることができれば、雌雄産み分けが可能になるので
す。
図6.フローサイトメータによるX.Y精子の選別
− 89 −
2006 年 8 月社団法人家畜改良事業団は、XY 精
産牛に雌選別精液が使用され、結果的に受胎率を下
子選別専用フローサイトメーターを開発した米国企
げる結果となったと考えられました。しかし、全体
業と選別精液生産の商業ライセンス契約を締結し、
的に受胎率が低く、特に経産牛での受胎率が低いた
2007 年 2 月から雌選別精液 Sort90(X 精子の割
め、経産牛での雌選別精液の受胎率向上に向けた技
合が 90%以上)の販売を開始しました。それに続
術開発が生産現場から強く要請されています。
いて北海道ジェネティックスが GH-X の国内販売
を開始、海外からも野沢組や日本家畜貿易を通じて
輸入されるようになり、雌選別精液の種雄牛の選択
幅が大きく広がりました。
さて、本県の酪農経営では、後継牛の確保を県外
からの初妊牛導入に依存する傾向があり、自家育成
率は平成 22 年では 61.3%(畜産振興課資料)で
九州最下位でした。初妊牛の県外導入に要する経費
は、北海道からの導入の場合、輸送費等を含めて 1
図7.本県での乳牛雌選別精液の年齢別受胎率
(※不明の多くは未登録で 2 歳未満と考えられる)
頭あたり約 60 万円であり、自家育成牛に要する経
費約 30 万円より遙かに高額です。さらに導入牛で
は、ヨーネ病等の伝染病の侵入リスクを伴い、また
そこで、畜産研究部は県酪との共同研究で上記課
導入牛が九州の暑熱環境で十分能力を発揮するかど
題の解決に向け「乳牛の雌選別精液を用いた人工授
うかは未知数です。従って、自家育成率を高めるこ
精の受胎率向上に関する研究」に着手しました。研
とが酪農経営の安定に重要であることが再認識され
究の方向として、①雌選別精液に最も適した授精時
るようになりました。これらのことから県では、
「力
期の検討 ②雌選別精液の子宮角深部注入による受
強い酪農経営の確立」のため「雌性判別精液の活用
胎率向上効果の検証 ③経産牛に有効で実用的な発
による保留促進事業」を H23 年度から開始しました。
情誘起プログラムの検討 ④ウシ精漿が持つ子宮環
境調整機能を活用した雌選別精液の受胎率向上効果
表1.本県での乳牛雌選別精液の受胎成績
の検証、を計画しています。①②については、雌選
授精頭数
受胎頭数
不明
受胎率
別精液を使用している県下の酪農家を調査するとと
1,769
428
118
25.9%
もに、③④については当研究部で予備試験を開始し
(平成 23 年度~平成 24 年 9 月 畜産振興課調べ)
ました。
本事業による平成 23 年度~平成 24 年 9 月まで
の雌選別精液の受胎成績を表 1 に示しました。雌
選別精液(輸入精液を含む)を 1,769 頭に人工受
精した結果、428 頭が受胎し(9 月時点で妊否不
明 118 頭)
、受胎率は 25.9%でした。年齢別に受
胎率を調べた結果(図7)
、2 歳未満の受胎率が高
く、加齢と伴に受胎率が低下する傾向がみられまし
た(年齢不明の多くは未登録で 2 歳未満と考えら
れます)
。家畜改良事業団の報告では、Sort90 で
の人工授精試験の受胎率は、未経産牛では 50.3%、
図8.生体卵子吸引-雌選別精液・体外受精技術で
生産された高泌乳牛の後継牛本県第1号
経産牛では 32.6%。経産牛での受胎率が低いため、
未経産牛に授精することを奨めています。本県では、
従来から分娩事故低減のため未経産牛には黒毛和種
さて最後に、OPU-IVF(生体卵子吸引-体外受
の交配が推奨されており、今回の調査結果では、未
精)技術と雌選別精液を組み合わせた乳牛の雌雄産
経産牛への授精が少なかったこと、逆に、能力の判
み分け技術について紹介します。現在、高泌乳牛の
明した経産牛から後継牛を取りたいため、多くの経
効率的な後継牛生産方法として、生産現場から最も
− 90 −
注目されている技術です。OPU-IVF 技術は、従来
の技術をそのまま応用し、体外受精に雌選別精液
を使用します。雌選別精液を使用することにより、
90%の確率で雌胚が生産できるため、通常精液で
は 50% の確率で生産される雄胚の無駄が大幅に削
減できます。冒頭に述べた胚の性判別操作を行わな
いため、胚に分離切断のダメージを与えず、また遺
伝子診断操作等の煩雑さがありません。今年 2012
年 1 月、この技術で本県第 1 号となる雌子牛の生
産に成功しました(図8)
。高泌乳牛の後継牛生産
方法として、酪農家からの期待が高まっています。
しかし、今回の研究の過程で、雌選別精液では従来
の精液を用いた体外受精に比べて分割率、胚発生率
が思わしくない等の様々な課題が明らかになったた
め、今後は、卵子を生体内で一定程度発育した後に
吸引採取する方法、卵子と精子を交配するときの媒
精条件、発生培養液、培養方法について、さらに研
究を進めていく方針です。
ウシの雌雄産み分け技術について、これまでの研
究の方向やトレンド、生産現場での取り組みについ
て、およそ時系列に羅列してみました。生まれてく
る生命の性を支配することは畜産業では長年の夢で
したが、それが現実のものとなり、生産性向上のた
めのひとつのツールとなりました。特に、本稿の後
半に述べた性選別精液では、効率的な種雄牛造成や
肉用牛肥育素牛(去勢牛)生産を目的として、雄選
別精液の製造販売が既に開始されています。性選別
精液の品質はますます向上し、その応用方法はさら
に進化すると考えられます。性選別精液を育種改良、
振興増殖にいかに活用していくか? 畜産技術者の
知恵と工夫が試されています。
− 91 −
「市民公開講座」を開催しました。
大分市獣医師会 幹事
武
石
香
私たち大分市獣医師会は、去る10月8日(月、祝)に大分市コンパルホールにて、大分市民公開講座を開
催したので、ご紹介します。
大分市獣医師会は、これまでに、電話帳への動物病院一覧表の掲載、ホームページによる各動物病院の詳
細情報の発信、また、日曜・祝日の当番医制を行うなど、会員と市民のためのサービス向上に努めてきまし
た。
今回、動物行動学の第一人者でもある内田
(南)佳子先生にお願いし、「なぜ飼い主の想
いをワンコ・ニャンコは理解しないのか?本当
に幸せな生活とは?イヌとネコの真実」という
テーマで、市獣医師会としては初めての市民公
開講座を行いました。
大分市保健所も今回の企画に共催していただ
き、ポスターやチラシ、当日の資料作成等ご協
力いただきました。いろいろな準備の中で一番
大変だったのは、講座を聴講いただける市民の
方々を募集することでした。当初、各会員の動
物病院の受付で募集する方式をとり、100名く
らいは集まるだろうと役員も軽く考えておりま
した。しかしながら、本来の動物病院の仕事とは異なることから、想像以上に募集がうまくいかず、困惑し
たのも事実でした。募集方法に問題があるのでは?ということで、大分合同新聞「ぶんぶん」への広告掲載
やホームページによる情報発信を行い、保健所の方々にもチラシを配って頂き、また、大分県獣医師会の事
務局の方々にもご指導いただきながら、最後は各会員、その家族、スタッフなどが総がかりで頑張っていた
だきました。
公開講座の冒頭には、共催していただいた
保健所より、保健所の獣医師の仕事について、
10分程度の紹介を行っていただきました。い
つも私ども獣医師の仕事をサポートしていただ
くなか、市民の方々にも良いアピールの場と
なったようです。
講座の方は、今までの犬と猫の扱い方を考え
直さなくてはいけないのではないかと思うよう
な新しい知見を分かりやすくユーモアを入れな
がら、約2時間ご講演いただきました。会場内
は大変和やかな雰囲気の中、皆様真剣で、多く
の質疑もあり、講演は無事終了することができ
ました。
募集から会場の設定、受付、後片付けまで会員とそのスタッフで行うという大変さはありましたが、最終
− 92 −
的に講座を聴講していただいた方は130名になりました。
大分市獣医師会のような小さな団体で、獣医療の仕事をしながら市民サービスの為に何かを企画し、実行
することは、困難なことも多いと感じながら、有意義なこともあると感じたイベントとなりました。
− 93 −
大分県獣医師会館の改修について
県獣事務局
岡
正
則
本会は、平成 14 年 11 月1日に現在地に移転し、平成 17 年度に会員の要望により2階の会議室の増築
やトイレ・キッチンの設置並びに1階の倉庫を研修室(実習室)に改修し、多くの会議や講習会等に利用さ
れてきました。
今回の公益法人化により情報開示の方法としての掲示板や看板の書き換えが必要となったこと。また、以
前から駐車場や排水溝の改修、女子トイレの整備等が懸案となっていました。
これらを受け、5月に開催した平成 24 年度第1回理事会において議決後、本年度の総会においてご承認
を頂き、以下のとおり改修等が終了しましたので多くの会員の皆様にご利用いただきますようご来館をお待
ちしております。
○今回実施した会館の修繕、改修等
・駐車場の舗装並びに排水溝の全面改修
・掲示板(会館入口右側)並びに看板(駐車場右側)の新設
・シャワー室を女子トイレに改修(1階)
・看板並びに入口ドアの表示の改修
− 94 −
支部活動報告
大分支部
大分支部幹事 原
一
文
大分支部では、平成 24 年 7 月 15・16 日の日程で、「紫明会」の旅行を行いました。この紫明会は、支
部会計からは完全に独立した年会費と当日会費をもって年一回運営される研修と親睦を目的とした会です。
今年は、山口県の湯田温泉を目的地に出発しました。
15 日朝 8 時、前日まで心配された大雨が嘘のように上がった大分駅前に集合。添乗員さん、ガイドさん
に出迎えられ、貸切バスに乗り込みます。バスが動き出すのも束の間、支部長の挨拶のあと、早々に各座席
にドリンクが配られ、
「乾杯!」となり、一路「湯田温泉」へ向けて出発です。途中トイレ休憩をはさみながら、
正午前に下関「唐戸市場」に到着。市場でビールを片手にお寿司を頬張ったり、河豚のお刺身を頬張ったり
した後での昼食となりました。その後、瑠璃光寺五重塔の見学や常栄寺雪舟庭園の散策を経て湯田温泉着と
なりました。常栄寺では、庭園を通る夏風を感じながら座禅を組まれる会員の方々の姿も見受けられました。
ホテル到着後、ゆったりと温泉につかり、日頃のストレスと旅の疲れを流した後、お楽しみの宴会です。添
乗員さんも交え、和気あいあいの楽しいひと時が過ぎました。地元の地酒に煽られて、そのまま熟睡の会員
も居られましたが、ほとんどの方は、宴会後、ホテル内のカラオケボックスで自慢の喉を披露されたり、湯
田温泉の街の夜風を当たりに繰りだされたりと、それぞれに思い出深い夜は更けていったようでした。
二日目の午前中は、萩市内の散策です。暑い日差しをよけながら、思い思いに萩の商家町の散策をしまし
た。会員の皆さんと入った豪商「菊屋家住宅」は、その
造りや庭園、そして展示されていた調度の数々は圧巻で
した。その後、萩焼の工房の見学と昼食の後、ビール片
手に「蒲鉾」店での試食とお土産の確保をして、帰路へ
つきました。帰路途中、会員皆さんの希望で、一日目に
も立ち寄った「唐戸市場」に立ち寄りました。ここでは
お土産の購入とまたまたビール片手のつまみ食いで海の
幸を満喫して、ようやく帰路へつきました。午後 6 時
過ぎに大分駅前に無事着となり、運転手さん・ガイドさ
ん・添乗員さんと旅の名残りを惜しみつつ解散となりま
− 95 −
した。
私が、支部に入会させて戴いた十数年前のずっと前から、
このような支部の活動はなされており、このような活動を通
して会員同士の親睦が深められていっていることは間違いあ
りません。今後も、このような会員間同士の親睦を深め合え
るような活動が続けられることを願います。
− 96 −
宇佐・高田支部
「迷子札プロジェクト」の取り組み
宇佐・高田支部長
遠
藤
輝
彦
宇佐・高田支部の所属する北部保健所管内では、23 年度捕獲や引き取りを行った犬 255 頭のうち、29
頭が飼い主さんへ戻り、77 頭が新しい飼い主さんへ引き取られたが、149 頭が殺処分された。この多くの
犬には鑑札等がつけられておらず飼い主が不明であった。
当支部では、どうしたら飼い主さんの務めとして最後まで飼ってもらい、少しでも殺処分頭数を減らせる
か、支部会員で協議を重ね、県獣医師会から交付される支部活動費を利用し、迷子札や鑑札、注射済票が入
るホルダーを購入することとし、動物愛護ボランティアグループや行政と連携し、集合注射実施時に狂犬病
注射済みの犬にホルダーを装着する「迷子札プロジェクト」を行うこととした。
集合注射会場では、獣医師会支部、行政(保健所、市)、動物愛護グルー
プ「HOME PEANAUTS」が連携し、行政の受付、獣医師による
問診・注射が行われ、迷子札に犬の名前や電話番号などを記入後、鑑札・
注射済票とともにホルダーに入れ動物愛護グループの方々に犬の首輪に装
着して頂いた。
今年度は 9 日間実施した集合注射会場で、注射頭数 1,710 頭のうち
1,163 頭に迷子札を装着でき、飼い主さんからの評判も良く、迷子になっ
た犬の身元確認が素早くでき、できるだけ早く飼い主さんの元に返すこと
ができるとともに、殺処分頭数の減少につながるものと期待しています。
また、今回の取り組みにより動物愛護ボランティアさんや飼い主さんな
ど多くの方々に、我々獣医師や獣医師会が狂犬病予防注射事業や動物愛護
活動へ果たしている役割を理解していただけたものと思っています。来年
もまた関係者と連携を図りながら引き続き取り組むこととしています。
今回の取り組みについて、動物愛護グループの方からの意見を頂きまし
たので、掲載させていただきます。
迷子札配布について
この度、ホームピーナッツの起案により大分県獣医師会と宇佐市狂犬病予防対策協議会に 1,500
個の迷子ホルダーを購入していただき、狂犬病予防接種会場にて配布させていただきました。(購
入先:地球生物会議「ALIVE」・「迷子の犬を家に帰そう」プロジェクト)宇佐市内、延べ 160 ヶ
所に同行し、約 1,163 件の飼い主に装着方法を説明しながら配布することができました。以下、
報告させていただきます。
◆良かった点
・直接、飼い主に手渡すことができ、犬に鑑札や名札をつけることの重要性を伝えることができた。
・犬が迷子になったら警察や保健所に連絡する必要性や拘置期限があることを伝えることができた。
・期間中に迷子札を着けた犬が飼い主の元へ帰ることができた。
・病院でも今回の迷子札や鑑札を着けた犬の姿を見られるようになった。道路でも迷子札を着けた
− 97 −
犬が飼い主と信号待ちをしている姿が見られた。
・他市民から宇佐市の取り組みへの問い合わせがあり、様々な場面で迷子札の重要性を啓発できた。
・ふだん聞くことのない年配の方と話をする機会も多くあり、山間部での集合予防接種の必要性が
わかった。
・市内の獣医の先生方や市の職員の方と交流ができ、とても有意義だった。
・地域性を再認識でき、たくさんの犬を観察することができたことで、今後の愛護活動に大きな刺
激と課題ができた。充実した毎日だった。
◆反省点・疑問点、今後の課題等
・直接ホルダーに注射済票を入れたものを渡し、可能な場合だけでもその場で装着してもらえたら
良い。(事前にホルダーに注射済票を入れておく必要がある)
・メンバーが一人で対応した時は渡すだけがやっとだった地域もあった。
・山間部では集合注射が必要だと思ったが、集合接種はやはりとても危険な場面も多く、獣医さん
も市の担当の方も大変なご苦労だと感じた。同時に自分の犬をコントロールできていない飼い主
の多さに驚いた。
・老犬への接種のラインが先生方によって違うと思った。病院で接種することが通常となれば、老
犬や病気の犬の配慮はもちろん、飼い主へのアドバイスの時間もとれ、何より犬の興奮への負担
が大きく減るのではないかと思った。また、新たに来年度へ向け、迷子札への装着の啓発は行っ
ていきたい。
・各病院での配布ができれば嬉しい。
・ホルダーも劣化するので、鑑札や注射済票が落ちてしまう可能性もあることを考慮しながら考え
たい。
獣医師会と行政と動物愛護団体の連携で取り組んだ迷子犬防止対策は県内初ということで、4 月
11 日付の大分合同新聞に大きな記事で取り上げていただいていました。
このような取り組みは犬を飼わない人への配慮にもなり、何より殺処分を減らすことに繋がると
思います。
最後になりましたが、この度は私どもの起案を受け入れて下さりありがとうございました。
平成 24 年 11 月 HOME PEANUTS メンバー一同
− 98 −
部会だより
産業動物部会だより
産業動物部会長 立
川
文
雄
近年の異常気象による環境の変化は様々な分野に悪影響をもたらし、我々の臨床現場への影響も避けて通
れません。産業動物部会としては、近年鳥インフルエンザの発生や、隣国では未だ口蹄疫が発性し終息も
しておらず、日本での発生が危惧されるなか、今でも東日本の原発事故による立ち入り制限をされている
20km 圏内での放置された動物たちのことも忘れてはいけないことです。報道もめっきり少なくなり、放置
された和牛だけでも当初の調査で 806 頭とされ自然繁殖し現在では 1000 頭以上に増え、餓えと削痩の状
態にあります。日本獣医師会も専門部会を立ち上げ、皆様からの義援金の活用や国への提言をしており国か
らの救済が急務とされています。
また、獣医療においても変わりつつあり、臨床面では治療より予防に力をいれ医薬品を制限しつつ病気に
罹らない牛と畜産経営、生産される安全な食品をめざしています。現に畜産農場における飼育衛生管理向上
の取り組み認証基準の普及を推進しており、各獣医大学でも 2 ~ 3 年後には教育カリキュラムの中に取り
組まれることが決定しています。社会的に食品衛生上さまざまな事件が発生し食品の安全、安心を消費者が
求めており、我々臨床獣医師も治療だけでなく食品が消費者の口に入るまでの管理を臨床の守備範囲として
いく時代がすぐそこまできています。畜産農家の減少は時間の問題であり、今からでも臨床の守備範囲を広
げていこうではありませんか。やる気があれば部会としてもいくらでも手段はあります。これからが正念場
です。
平成 25 年度は大分県が九州三学会の当番県になります。大分駅南口に新設される会場で開催される運び
となっていますが、産業動物部会の皆様の協力が必要となります。宮崎県での三学会では 130 名程度のス
タッフで取り組まれたとお聞きしています。三学会での学会発表のお願いとスタッフとしてのご協力を宜し
くお願い致します。
− 99 −
小動物部会だより
平成23年度 日本獣医師会 獣医学術学会年次大会(北海道)参加報告
大分小動物病院 吉
野
信
秀
23 年度の全国大会は今年の 2 月 3 日~ 5 日に北海道の札幌コンベンションセンターにて開催されました。
今回は初めて発表者としての参加でした。さすがに冬の北海道は寒く、北海道の人も今年一番の冷え込み
という中での開催でした。前日は九州北海道ジョイントシンポジウムが北大で開催されましたが、その後の
懇親会のダメージが抜けきらないままの出席でした。
私は地区学会長賞受賞講演の部屋で聴講しました。抄録を見ると、表面抗原解析、大脳半球到達法、c-kit
遺伝子変異等、何のこっちゃ?という難しい用語がならび、21 演題中 8 演題が大学人による発表という状
況でした。こんな中で発表してもいいのかなと思いながら周りを見渡すとどちらも有名な先生方ばかりでア
ウェイ感満載でした。会場の雰囲気も学ぼう、というよりは評価しようという感じが漂ってました。こりゃ
アカン、と徐々に緊張が高まってきました。ついに自分の番になり、もう腹を括るしかありません。少し時
間をかけてマイクの位置を調節、お決まりのフレーズ「大分の吉野と申します、よろしくお願いします」で
スタート。
実はこの出だしのフレーズは私にとって重要な意味があります。なぜかは解りませんがスピーカー
を通して自分の声を聴くと不思議と気持ちが落ち着くという事を経験的に知っているからです。ですので最
初の出だしは耳に集中することにしています。あっという間の発表は無事に終了。後は質問に耐えるだけと
いう段階で、有難いことに質問してくれたのは知り合いの北海道の眼科仲間でした ( 決して頼んでたわけで
はありませんが )。意地悪な先生に弱いところを突かれるという事もなく、自信を持って質問に答えること
ができました。終わってしまえばあとはリラックスして聴講できました。
難しい内容で理解できない部分も多かったですが、大学の第一線の先生たちと同じ目線で審査を受ける発
表ができるという今の獣医界の状況は開業医にとってはおもしろい時代なのかもしれません。残念ながら
( と言っては語弊がありますが ) 今回は大学の先生が学術学会賞を受賞しました。肝外性門脈シャント 106
例に関する発表で文句なしの内容でした。評価の基準は、今後の獣医療にどれだけ貢献できるか、という事
のようです。最近、この学術大会の意義を考えたりしますが、獣医療も人の医療と同じく専門化がすすみ、
各種の専門の学会があります。本来ならそこで発表されるべき専門的な内容もこの学会で発表される為、内
容によってはちんぷんかんぷんであったりします。審査基準に、一般開業医の診療にどれだけ貢献できるか
というものを入れてくれると有難いと思います。発表する側の専門家も、同じ内容でも開業医からの目線で
切り口を変えて発表する工夫が必要なのではと考えたりもします。
勉強が終われば後はお楽しみの懇親会です。今更ですが、やはり北海道は美味い。ウニ、イクラ、カニ、
ジンギスカン、ラーメン、食べたかったものは大体 3 日間で堪能しました。私は比較的真面目な方ですので、
学会出席の目的は勉強:遊びが 7:3 くらいですが、これが 5:5、3:7、1:9 の先生もいらっしゃいま
すので奥様方、要注意です。
− 100 −
以下、懇親会、二次会、三次会の報告です。
懇親会は札幌パークホテルにて開催されました。会場
には、入れないほどの大勢の参加者でした。
九州勢で二次会にと思っていたところ、あぶれていた
山形の田口先生ほか循環器の方々と四国・大阪・北海道
の幹事数名が連れて行けと言うので、予想以上に大勢と
なり、会場探しに苦労しました。中島公園にキリンビー
ル園がありましたので、早速、予約して食べ放題飲み放
題のジンギスカンで始まりました。
皆さん“えー!”と言っておりましたが、22:00 過
ぎまで、よく食べ良く飲んで親交を深めることが出来ま
した。
− 101 −
三次会は、
“朱すずめ”です。既に麻布大学同窓会流れの先生方がおられましたが、一緒に飲み会の始ま
りです。
おおいに賑わい・おおいに飲み 2:00 に終了しました。
どのような大会でも、どちらかというと飲み会だらけ
という感じがしますが、獣医師の横の繋がりを作ること
と情報交換には、最適だと思います。
以上、全国大会参加報告でした。
− 102 −
第4回北海道・九州ジョイントシンポジウム 2012
動物整形外科病院 樋
口
雅
仁
第4回 北海道・九州ジョイントシンポジウム
2012 2/2( 木 )16:00 ~ 21:00
北大獣医学部講堂に於いて開催されました。
雪の千歳空港は、氷点下9.7℃
北海道大学構内は雪が沢山積もっていました。開
始時間前より続々と降る雪にまみれた先生方が集
まりました。
講義室は、大変暖かく教育講演3題・軽食付きイ
ブニングセミナーをおこない、その後、症例報告
が8題活発な意見交換が行われました。
懇談会(海味 はちきょう 別亭 おふくろ )に出発する時には、大変な雪でした。雪が降っているだけで、
うきうきした気分になります。特に沖縄の池原先生は、子犬みたいに雪に埋もれていました。
御大の坂本先生・藤永先生も良く飲み・よく食べておられました。
30 人ほどでしたが、九州勢・北海道勢半々でした。
なかでも“つっこ飯”は、うけていました。“ストップ”と言うまで、イクラを載せ続ける“イクラどんぶ
り”!!
− 103 −
〆には、
味噌ラーメンを“ラーメンそら”にて、沖縄池原先生・酪農大山下先生・札幌柄本先生の4人でした。
この2月2日は、九州地方もすごい雪でした。
2:00にホテルへ帰り着けました。
2月3日の12:00から学会幹事会・懇談会が開かれ、明日からの学会が成功するようにと会議でした。
2月4日は、年次大会の開催です。
− 104 −
お昼には、展示業者さんにお疲れ様会ということで、京都の会長・北九州の会長・奈良の中山先生とで、
アサヒビール園にてジンギスカンを振る舞いました。本場のジンギスカンは、本当においしいです。
− 105 −
卒後研修会をおえて…
末松どうぶつ病院 山
城
識
子
今年7月8日に熊本にて卒後研修会が開催され、症例検討会に参加しました。大学を卒業し、初めての発
表でした。発表の 13 分間がいつもより長く感じ、足がガクガク震えました。質疑応答では、いろんな質問
をもらいましたが、頭が真っ白になり自分で何を答えているのか分からない程、緊張していました。発表後、
多数の先生から「お疲れさま」などのお言葉をいただき、ホッとした気持ち半分、反省する気持ち半分…。
今回、症例検討会に参加し、貴重な経験をすることができました。まだまだ、勉強することばかりですが、
1日1日を大切に学んでいきたいと思います。
最後になりましたが、この症例検討会に参加するにあたり、ご指導いただいた院長、副院長に感謝いたし
ます。
− 106 −
平成24年度 九州地区獣医師大会視察報告
わたなべ動物病院 渡
邉
一
仁
今回は、来年度の大分開催に向けての視察を目的として参加しました。小動物部会の開催準備委員として
隼人どうぶつ病院の添田久仁子先生とともに前日より宮崎入りし、学会幹事の先生方を中心とした懇親会(前
夜祭?)の視察からスタートしました。あくまでも視察であったはずなのですが、皆さんから大変手荒い歓
迎を受ける事となりました。
翌日は準備を視察するために早朝より会場入りする予定でしたが前日の視察 ( ? ) が尾を引いてやや遅れ
てしまいました。会場のコンベンションセンターでは既に受付の準備を終えた事務局の岡先生と三重野さん
に笑顔で迎えて頂きました。視察の使命感のもと、昨晩の有様を若干後ろめたく感じながら小動物学会会場へ。
小動物学会第Ⅱ会場では、開始早々スライド画像の乱れがあったものの、すぐに改善され、後は順調に進
行していたように思います。発表の合間に協賛企業の展示を見ながら、顔馴染みの方には特に来年の大分開
催へのご協力をお願いしました。
演題発表、教育講演が終わり、大会が開催されました。今回は大分小動物病院の吉野信秀先生が昨年度に
続き学会長賞、動物整形外科病院の樋口雅仁先生が九獣連会長賞を、末松どうぶつ病院の末松正弘先生がフ
ロアー賞を受賞されました。来年は大分開催ですから更なる大分県獣医師会会員の活躍を期待したいと思い
ます。
懇親会では、様々なアトラクションが用意されており、料理とともに楽しませて頂きました。宮崎牛は絶
品でした。
来年は豊後牛でしょうか。アトラクションは何が良いでしょう? 皆さんのご意見を事務局まで!
会場をあとにして2次会会場へ最後の視察に向かいました。前夜祭も含め宮崎の伊東先生 ( 青葉動物病院
院長 ) に大変お世話になりました。発表、座長、二次会の準備を一人でこなされている姿には敬服しました。
少しでも見習いたいものです。こういう機会は色んな先生のお話を聞けるので大変貴重だと思います。多く
の先生方、特に若い先生方には是非参加して頂きたいと思います。ただし酒量は半端ではないです。吉野先
生が宮崎大学の学生さんや若い先生方と熱心に ( 酔った勢いで? ) 語り合っている姿も印象的でした。
最後に、宮崎県は 2010 年に口蹄疫発生により甚大な被害を被りました。ホテルの入り口には今もまだ
口蹄疫防疫マットが敷かれています。我々獣医師は、過去の経験を学び発展させ、非常事態に備えて常に襟
を正しておかなければなりません。来年の大分での開催が獣医師としての使命と矜持に根ざすものとなるよ
う、また、それを広く一般の皆様へ表明する機会となる事を期待したいと思います。
学会場受付
吉野先生 学会長賞表彰
山根会長(日獣)と麻生会長
後ろはアトラクションのフラダンスの
皆さん
− 107 −
添田先生と宮崎牛
口蹄疫防疫マット
癌に対する最先端治療
隼人どうぶつ病院 添
田
久仁子
光…と聞くと、フレッツ光、新幹線ひかり(ああ、
昭和…)
、ホタルのヒカリ、冬を彩るイルミネーショ
ン…と、おおよそ獣医学とは程遠い世界に思いが馳
せていくが、光線力学療法を思い描いた貴方は見識
が高い(ちなみにうちの 20 代の看護士に尋ねると
阿部寛と言った)
。光線力学療法(Photo Dynamic
Therapy:PDT)は、外科切除と違い機能障害を起
こすこともなく、放射線治療のように億単位(何年か
かるの返済に…)の設備を準備することもなく、化学
療法の副作用を出すこともない、夢のような治療法で
ある。思い起こせば新卒の頃、膀胱の移行上皮癌で血
尿頻尿に苦しむコロ(タロだったか?)のために鳥取
大学出身の先輩が「岡本先生に相談してみる」といい、
その治療法を知った。外科医が研究するメスを使わな
い局所療法。
それから十数年、一度話を伺いたいと思っ
ていたところに W 邉先生からの講演会の打診である。
そりゃ聞くしかないでしょ。
今回は温熱療法と PDT を組み合わせ、局所化学療
法も併用した光線温熱化学療法(PHCT)
、自家ガン
ワクチン療法、局所免疫増強療法、エタノール注入療法、悪性黒色腫に対するルペオール療法と多岐に亘る
講演内容をご準備いただいた。培養細胞やマウスを用いた基礎研究から実際の症例への適応まで話が進んで
いくと「これは効きそうだ」(←失礼)との気持ちになる。遺伝子の展開図(all gene expression)がスラ
イドに出たときは鳥肌が立ちそうだったけど。
私たちは「癌だ…」
と診断したのち、外科、
放射線(ああ、何割の
飼い主が遠方まで行っ
てくれるのか)、化学
療法、キノコ抽出物…
あらゆる手を駆使し、
治療に挑もうとはする
が、距離の問題、価格
の問題はいかんせん解決しがたく、苦しむワンコ・ニャンコを挟んで、悲しむオーナーから「先生、もう、
他に手はないんですか??」となることも珍しくない。残された時間をできるだけ傍で過ごしたい、そう思
う飼い主は多い。岡本先生が提示された治療法は、動物の放射線治療設備のない大分県において、一筋の光
明(ん?5筋?)となり得ただろう。
お食事の際、話題になったのだが、岡本先生は日田 まるはらの「鮎魚醤」が気になっておられたらしい。
ああ、知っていたなら準備をしたのに、まったくもって手筈が悪かった。大分の隠れた土産モノとして、な
かなか評判の鮎魚醤。まだ、試されてない方、ぜひ、一度お試しください。115ml、800 円、ふるさと大
分の百貨店・ト○ハでも購入できます。
− 108 −
「平成24年動物看護師セミナー」
⑴平成23年度 第2回動物看護師セミナー(平成24年1月12日)
わたなべ動物病院 動物看護師
染
野
敬
子
看護士の技術向上の為、各病院の先生方による「看護士セミナー」が行われました。
まず、初めに樋口先生の「整形」から。手術した犬が翌日には元気に走り回っている動画を見せてもらい
ました。今までは術後は安静が当たり前だと思っていたので、とても驚きました。
次に「手洗いの仕方」でしたが、今までは、手術の助手に入る機会が少なく正確な手洗いの仕方を知りま
せんでした。いつ助手に入るかわからないので、とても為になる講習でした。
次に光本先生の「消毒と滅菌」です。ウイルス、細菌の名前は知っていても、詳しい事を理解していませ
んでした。院内感染を防ぐ事は勿論ですが、人獣共通の感染症を外部に出さない様にする為、自分自身を守
る為、消毒はとても大切だと思いました。その為には、菌をよく理解し、消毒液を正確に作り使用しなけれ
ばいけません。感染を未然に防ぐ為、怠ってはいけない事だと考えさせられる講習内容でした。
次に渡邉先生の「看護士の役割」です。その一つに獣医師と飼い主の間に入って二つを繋ぐ言わば架け橋
的な存在にならなければならないというものがあります。獣医師が説明した事を飼い主に理解してもらう為
まず自分が理解して解りやすく伝えなければいけません。飼い主によっては話し方・接し方を変えなければ
いけない場合もあります。ある意味、動物と接するより難しいです。
ペットロスについては、親身になって慎重に話を聞く様に心掛けていますが、飼い主によってはどんなに
親身になっても伝わらない事もあります。これはペットがまだ生きていた時の接し方に問題があったのかも
しれません。亡くなってから気をつけるのではなく、最初から、親身になって話を聞き、飼い主の信頼を得
ておかなければなりません。
そして、看護ですが、ここでは観察力が大事になります。言葉を話さない分私達がよく観察し症状を見過
ごして悪化させない様に気をつけなければなりません。
改めて看護士の役割の大切さを認識させられた講習でした。
− 109 −
⑵平成23年度 第3回動物看護師セミナー(平成24年3月29日)
隼人どうぶつ病院 動物看護師
寺
島
信
乃
今回の動物看護師セミナーでは、大分小動物病院の吉野先生の「眼科の看護」、隼人どうぶつ病院の添田
先生の「シャンプー療法」でした。
添田先生の講演では、まず皮膚の構造についてヒトと動物の皮膚の比較を交えながら、動物の皮膚はデリ
ケートであるという事を踏まえた上で、シャンプーの種類や方法を学びました。保湿成分の濃度が高いもの
は逆に乾燥を引き起こしてしまう場合もあるので、注意が必要という事、皮膚がベタベタしている動物はシャ
ンプー後の乾燥に注意して、保湿剤をプラスしてあげる等の事が学べました。皮膚の状態に合わせたシャン
プーを選んで、
オーナーに正しいシャンプーの使用方法や、シャンプーをするときの注意点(お湯の温度、シャ
ンプー前によく体を濡らす、すすぎをしっかり行う、ドライヤーを近付けすぎない、乾燥させすぎない)を
しっかり指導してあげる事の大切さを改めて学ぶ事ができました。
吉野先生の講演では、まず眼の構造について、イヌ、ネコ、ヒトの眼の構造の違いと見え方についての違
いについて学びました。基本的にイヌは正視だが、近視や遠視の犬種もいるという事、これは初めて知りま
した。本題である眼の看護では、点眼液の種類と正しい点眼の方法について、そしてオーナーへの点眼の指
導についてが主な内容でした。中でも、オーナーへの点眼の指導は最も重要なポイントで勉強になりました。
確かに、眼の再診で来院されたオーナーの方から「上手く点眼できない」「1日4回もさせない」「軟膏だけ
は嫌がってさせていない」などの声を聞くことがあります。その為にも、初診の時点で、もしできない場合
はご来院して下さいね。など一言付け加えるといいなと思いました。
シャンプーも点眼も少なからずオーナーに負担がかかります。ですから、オーナーが正しく使用できて、
よりよい治療効果が得られるものだと思います。その為にも、動物看護師が正しい方法を丁寧に説明できる
技術が求められると感じました。
⑶平成24年度 第1回動物看護師セミナー(平成24年8月5日)
大分小動物病院 動物看護師
坂
平成
本
祐
子
24 年 8 月 5 日に麻生先生「臨床検査」
、末松先生「呼吸器疾患の看護学」「心臓病の看護学」の講
義が行われました。
麻生先生の講義では今までなんとなくやっていた検査の基礎が学びなおせ、知らずに検査していた事柄も
あり、反省も沢山あり勉強になりました。問題が順にまわってきてドキドキしましたが必死に集中して聞く
ことができました。顕微鏡も実物が用意されており改めて基礎の大切さを学べました。
末松先生の講義では、動画やCGがたくさんありわかりやすく楽しく学べました。本の絵と文字だけでは
全く頭に入らない私にとって、動画で見ることができ良い経験になりました。呼吸器、心臓病は少し苦手で
したが今回の講義で興味がわいてきたので勉強していきたいです。
今後動物看護師もレベルアップし統一のレベルを持てるよう、勉強していかなくてはいけないと実感しま
した。
動物看護師のために教えて下さった両先生、企画して下さった獣医師会の先生方に深く感謝いたします。
− 110 −
⑷平成24年度 第2回動物看護師セミナー(平成24年10月21日)
永野どうぶつ病院 動物看護師
永
野
直
美
今回で、3 回目の参加になります。以前は、夜間という事でスタッフだけの参加でした。今年度から休日
を使っての講習会を開いていただき、他の動物病院の先生方や看護師さんとの交流をする中で、実際の現場
に実践できるものが得られればと思い、参加させてもらっています。
今回のセミナーでは、「腫瘍と付き合う方法」「感染症および看護面で注意しないといけない事」を講義し
て頂きました。自分の病院でも、外科的な治療、化学療法、それぞれ治療としている中で、気を付けてしな
いといけない事や検討しないといけないものがありました。そして、飼い主さんへの心ケア。治療する上で
は不可欠です。
このような機会を開いてくれる中で、病院としての在り方、看護師としての役割が自分たちの中で常に成
長していけたらと思います。獣医学的知識というのは難しいものではありますが、知識を学び、自分の知識
として習得し、分かりやすい言葉で飼い主さんに説明できればと思います。
獣医師の先生方には、忙しい中、講習会を開いて頂いてありがとうございました。
− 111 −
家畜衛生部会だより
部会長 大分家畜保健衛生所長 伊
藤
雅
之
家畜衛生部会は県庁 ・ 家畜保健衛生所 ・ 農林水産研究センター畜産研究部(旧畜産試験場)の職員含め現
在 69 名で構成され、家畜衛生、畜産行政、試験研究に従事しております。
家畜衛生部会の職員には家畜改良を担当する職員もおり、県内産畜産物の高付加価値化のため育種改良に
努めております。特に今年 10 月には5年に1度各道府県が和牛改良の成果を競う第 10 回全国和牛能力共
進会が長崎県で開催されました。大分県からは全出品区(全9区)に 26 頭が出品され、第1区(若雄の区)
及び第5区(繁殖雌牛群)で主席である農林水産大臣賞を獲得し、その他の出品区でも優秀な成績を残すと
ともに、出品対策賞(団体賞)は宮崎・鹿児島に次ぐ第3位を受賞しました。
家畜衛生関係では、国内において口蹄疫(FMD)や高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)等の重大な
家畜伝染病の発生をみることもなく推移しております。このような折、昨年度からではありますが、FMD
やHPAI等の重大な家畜伝染病の発生に備え、発生時の初動防疫を迅速かつ的確に行うため、家保職員
と振興局畜産担当職員からなる家畜伝染病防疫対策チーム(Boeki taisaku - Special Assistant Team「通
称 B-SAT」
)が結成され、平時から初動防疫のプランニングや殺処分の方法など検討を重ねる一方、各
家畜保健衛生所に防疫作業に必要な資材の備蓄を行うなど、万が一の備えを強化しているところであります。
今年2月には家畜衛生部会主催による家畜衛生研修会と銘打ち、FMDとHPAIの発生県であった宮崎県
から実際に防疫作業に従事した宮崎家畜保健衛生所高牟礼陽一氏を講師に迎え、発生の状況・防疫作業・終
息から経営再開までの講演を家畜衛生部会員だけでなく関係機関の多くの方の参加により行い、危機管理に
努めております。
今年度4月に大分家畜保健衛生所と宇佐家畜保健衛生所の管轄が変更になりました。昭和 40 年に機構再
編広域家畜保健衛生所として発足して以来 46 年ぶりの大きな管轄変更となりました。国東市、杵築市、日
出町、姫島村が大分家畜保健衛生所から宇佐家畜保健衛生所の管轄へと変更になりました。豊後大野家畜保
健衛生所・玖珠家畜保健衛生所に変更はありません。これは家畜伝染病が発生した場合、家畜保健衛生所が
迅速に対応するために管轄の変更を行ったもので、これも危機管理の一端であります。
家畜衛生部会に属する会員は、食の安全の確保と畜産経営の基盤強化を目的に家畜衛生、家畜改良、畜産
環境保全、獣医事、動物薬事、畜産行政等多岐にわたる分野に従事しております。今後ともより専門性を磨
き、畜産を通じ組織で県民の生活をサポートしてまいります。(文責:大分県家畜衛生職員協議会事務局)
− 112 −
公衆衛生部会だより
大分県公衆衛生獣医師インターンシップ事業について
1 はじめに
の職員が業務説明や研修、実習を担当することに
現在、県内の公衆衛生獣医師は、県庁、保健所、
なっています。
衛生環境研究センター、食肉衛生検査所の県職員
46 人と、大分市の職員 10 人の計 56 人となって
3 実施状況
事業開始以降、平成22年度に1名、平成23年
います。
今年度は、県3人、市1人の計4人を貴重な新人
度に2名、平成24年度(10月現在)1名 計4
として迎えることができました。将来の大分県を支
名の受入れを行いました。平成22年度に受入れを
える貴重な人材として育成に力を入れているところ
した甲斐雅裕さんは、平成24年度大分県にめでた
です。
く採用され、現在、大分県食肉衛生検査所(以下、
しかしながら、公衆衛生獣医師の不足は未だ大き
な問題であり、大分県では、大学訪問の実施、奨学
食検)で活躍をしています。(文末に甲斐さんの感
想を掲載していますのでご覧ください。)
前述のとおり、研修は4機関で5日間実施してい
金制度の創設等々の取り組みを行い採用確保に努力
ますが、今回は、平成23年3月に実施した食検で
しています。
一方、公衆衛生独自の取り組みとして、
「リクルー
の研修状況についてご紹介します。
ト情報の発信」と「大分県公衆衛生獣医師インター
食検では、第3日目 ( 3月28日 ) と第4日目(3
ンシップ事業(以下、インターンシップ事業)」も
月29日)の研修を行いました。研修カリキュラム
積極的に行っています。
とその概要は、以下のとおりです。
「リクルート情報の発信」につきましては、昨年度
の会報でご紹介させていただきましたので、本年度
【食検での研修カリキュラムの概要】
は、インターンシップ事業についてご紹介させてい
3月28日
ただきます。
①所長あいさつとオリエンテーション
②食肉衛生検査の概説
2 インターシップ事業の概要
と畜場法についての解説や食肉処理場での処理の
流れ、と畜検査員による検査の概要の説明。
インターンシップ事業は、
「インターンシップを
とおして、学生が公衆衛生行政への理解を深め、専
③病理組織検査実習
門的な行政職としての職業意識の向上を図る」こと
病理検査室で、基礎的な病理組織検査やクリオス
を目的に、平成22年度から開始しました。実施に
タットや免疫染色を利用した診断についての学習。
当たっては、受入れ方法等の手続きを実施要領に定
めています。
申 し 込 み は、 食 品 安 全・ 衛 生 課【Tel:097506-3052(生活衛生班)
】が窓口となっており、
実施要領と申込用紙は大分県ホームページ(http://
www.pref.oita.jp/soshiki/13201/) で 入 手 が 可
能です。
研修期間は5日間で、県庁、保健所、食肉衛生検
査所、衛生環境研究センターの4機関で実習するプ
ログラムとなっています。研修カリキュラムは、公
衆衛生行政全般にわたる内容となっており、各機関
病理組織検査実習
− 113 −
④BSE検査実習
BSE 検査について、検体採取、検査室内の抽出・
検出工程、判定をサンプル検体(陰性確認済)を
使用しながらの実習。
生体検査実習
サンプル(陰性確認済)を使用したBSE検査実習
⑤と畜検査データ処理実習
と畜検査の検査記録データの現場での入力方法や
検査終了後に行うデータ処理の状況や生産者への
と畜検査データのフィードバックについての学習。
枝肉検査実習
④微生物検査実習
敗血症や豚丹毒の検査方法や残留抗菌性物質の簡
易検査、RT-PCR等最新の機器を利用した微
生物検査の実習。
⑤理化学検査実習
尿毒症や黄疸の検査方法についての実習。
⑥と畜場衛生監視業務
と畜検査データ処理実習
食肉処理施設の衛生監視体制や、監視の方法、監
視結果に基づく指導状況の学習。
3月29日
① と畜検査実習
⑦意見交換会
生体検査実習
今後のインターンシップをより充実したものにす
現場でのと畜 ・ 解体処理工程を理解してもらうと
るために、研修生に研修全体の感想を聞くと共に
共に、と畜検査員による生体検査 ・ 頭部検査 ・ 内
職員との意見交換を実施。
臓検査 ・ 記録処理 ・ 枝肉検査の状況を見学。
4 受講者の感想
②病畜検査実習
病畜として搬入された牛 ・ 豚について、検査の方
枝肉検査実習
インターンシップ受講者には、その都度報告を頂
法や診断方法、検査結果に基づく措置についての
いています。その中の感想や意見で主なものをご紹
学習。
介させていただきます。
【主な感想等】
③BSE検査実習
牛の BSE 検査用の検体採取の方法や特定部位の
管理等についての学習。
・BSE検査の他、様々な精密検査について学べた。
精密検査を体験させていただけるのはすごく良
− 114 −
し、学生に対する情報発信を進めていくことが重要
かったと思う。
・食肉検査には、獣医が必要であり、その獣医師職
であると考えます。
な お、 大 分 県 食 肉 衛 生 検 査 所 ホ ー ム ペ ー ジ
員が不足しているのがよくわかった。
・実際のと畜場をみるのは、初めての経験で、過酷
(http://www.pref.oita.jp/soshiki/13201/) に も
な現場と思いました。でも、獣医師や従業員の
インターンシップ事業の状況を掲載していますので、
方々のおかげで普段何気なく食べている食肉が安
是非ご覧ください。(文責:大分県公衆衛生獣医師
全・安心なのだと理解でき、感謝したいと思った。
協議会事務局)
5 おわりに
公衆衛生獣医師の仕事については、理解しにくい
部分も多く、学生の感想でもわかるように、実際に
業務を経験することにより把握できることは学生に
とって非常にメリットがあると思います。一方、受
け入れる側としても、学生の目を通した感想や意見
を直接聞く貴重な機会であり、今後の採用活動の重
要なヒントをもらえる場であると思います。
大分県でのインターンシップ事業は、全国でも先
進的な取り組みであり、内容も充実していると思い
ますが、今後もインターンシップ事業を継続・発展
研修当時の甲斐雅裕君
大分県公衆衛生獣医師インターンシップを受けての感想
-実際に採用されてから思うこと-
平成24年11月
食肉衛生検査所 技師 甲 斐 雅 裕
インターンシップを通して実際にさまざまな現場を見ることができたことで、大学の授業の中ではほ
とんど知ることができなかった公衆衛生分野の職務内容についての概要を理解することが出来ました。
自分の興味のある分野を目で見て体験するということは自分が仕事を選んでいく時の選択肢を広げるこ
とにつながるので貴重な機会であると感じました。
実際に採用されてからも、インターンシップの時のイメージがあるので仕事に入り込み易いというメ
リットがあるかと思いました。それと同時に、当然ですがインターンシップで体験できたことは実際の
職務のうちの一部にすぎないということも感じました。
− 115 −
委員会だより
第62回九州地区獣医師大会並びに
平成25年度獣医学術九州地区学会準備委員会
「第 61 回九州地区獣医師大会並びに平成 24 年度獣医学術九州地区学会」は、宮崎県獣医師会が主催し、
九州各県・市獣医師会の共催のもと、平成 24 年 10 月 14 日(日)宮崎市の「シーガイアコンベンション
センター」で開催された。たいへん立派な施設で参加者も多く盛況であった。大会並びに学会の概要は、
「業
績」及び「報告」で記載したとおりです。
平成 25 年度には、「第 53 回九州地区獣医師大会並びに平成 16 年度九州地区三学会」が、平成 16 年
10 月 2 日~ 3 日の 2 日間にわたり別府市「ビーコンプラザ」で開催されて以来、9 年ぶりに「第 62 回九
州地区獣医師大会並びに平成 25 年度獣医学術九州地区学会」として、大分県獣医師会の担当で開催するこ
ととなっております。
9 年ぶりに担当し開催するに当たり、当時の関係者も段々と少なくなりましたが、成功裡に終了できるよ
う準備を進めているところです。
「準備委員会」設置については、4 月 27 日開催された三役会議で了解いただき、5 月 7 日の平成 24 年
度第 1 回理事会・監事会並びに支部長会において議決を頂きました。
この間、何よりも開催期日と会場の確保が優先することから仮の開催期日を平成 25 年 10 月 13 日(日)
とし、会場については大分市が建設中の「ホルトホール大分」が平成 25 年 7 月にオープンすることから、
9 月の受付開始を待たずに 4 月早々に会場使用計画書を大分市に提出しました。
また、各部会から準備委員会委員の推薦をいただき、9 月 27 日に第 1 回準備委員会(16 名)を開催し、
平成 25 年度の開催計画案の検討を行うとともに、今年度開催される宮崎大会の視察研修を行い、来年度開
催案作成の参考とすることとしました。
また、学会発表の充実を図るため開催期日を 10 月 12 日(土)午後から 13 日(日)の 2 日間とするこ
ととなり、9 月 28 日大分市にホルトホール等の会場の申請を行い、会場を確保致しました。
また、各委員は 10 月 14 日(日)に宮崎市で開催された大会並びに学会をつぶさに研修し、来年度開催
の参考にするため写真及び施設・運営等に関する課題等のレポートを提出して頂いた。
10 月 24 日(水)に開催した第 2 回目の準備委員会では、宮崎県の大会の報告に基づき、日程案の作成
や施設 ・ 運営に関する協議検討を行ったところであり、本年度内に日程等詳細に計画を作成し、来年度の実
行委員会に引き継ぎたいと考えています。
本県で開催する大会・学会は 9 年ぶりであり、多くの会員の皆様の発表とご協力、ご参加をいただけま
すようお願い致します。
開催場所並びに日程(案)の詳細は、本誌「お知らせ」の 147 ページに詳しく掲載しています。
− 117 −
「第62回九州地区獣医師大会・平成25年度獣医学術九州地区学会」準備委員会
役職名
1
委員長
2
副委員長
3
学会区分
氏 名
所 属
備 考
麻
生
哲
宇佐・高田支部
会 長
産業動物
立
川
文
雄
大分支部
副会長
〃
小動物
樋
口
雅
仁
日田支部
副会長・幹事
4
〃
産業動物
伊
藤
雅
之
家畜衛生
副会長
5
〃
公衆衛生
森
竹
一
廣
公衆衛生
副会長
6
委 員
産業動物
野々下
雅
彦
家畜衛生
幹 事
7
〃
〃
堀
浩
司
〃
8
〃
〃
芦
刈
美
穂
〃
9
〃
〃
高
橋
元
治
北海部支部
10
〃
小動物
渡
邉
一
仁
大分支部
11
〃
〃
添
田
健
作
(添
田
久仁子)
12
〃
公衆衛生
阿
部
義
昭
公衆衛生
13
〃
〃
小
林
貴
廣
〃
14
〃
〃
末
永
宏
〃
15
事務局
岡
正
則
大分第三支部
16
〃
三重野
典
子
− 118 −
大分支部
幹 事
会員の声 ― エッセー ―
苦闘!!ダイエット作戦(BMI22&別大マラソンを目指して)
大分家畜保健衛生所 長
岡
健
朗
それは偶然のことだった。その日は、10 号線沿線にあるクルマのディーラーまで車の点検に行くことに
していた。その日は別大マラソンがあることを知っていて、それを避けようと家を早めに出ていたのだった。
それにもかかわらず亀川のあたりでお巡りさんに停められ、今からマラソンが来るので迂回するように言わ
れた。別大マラソンのスタート地点が大分市営陸上競技場ではなく、うみたまごに変わっていたので、私が
思っていた時間よりだいぶ早くやって来たのだった。「迂回しろと言われても目的地が 10 号線沿線だ」と
いうと、
「それでは、マラソンが通り過ぎるまで待て」とのことだった。仕方がないので通り過ぎるマラソ
ンの列を眺めながら待つことにしたが、来るは来るは、ぞろぞろとあまり早くない人たちが通り過ぎていっ
た。これを見てたら、これなら自分でも出られるかも知れない、よし、出てみようと突然スイッチが入って
しまった。
昔は別大マラソンと言えばエリートレースで、2 時間 40 分以内の記録がないと出場できないレースだっ
た。2 時間 40 分というタイムは 3 時間さえ切ったことがない私には夢のまた夢だった。それが近年の市民
マラソンブームの影響かエントリー資格が緩和され、今では他のレースで 3 時間 30 分以内で走った記録
があればエントリーできるようになった。とはいえ、50 歳を過ぎた私には 4 時間切るのがいっぱいいっぱ
いである。どうやったら 30 分近くも短縮してこの制限をクリアできるだろうかと考えた。今更ハードなト
レーニングを課しても故障するのが関の山である。そこで体重を減らして軽い体で走り抜こうという作戦を
取ることとした。市民ランナーの間では体重を 1kg 落とすとフルマラソンのタイムは 3 分縮むと言われて
いる。前回(平成 24 年 3 月 11 日)のタイムが 3 時間 54 分だったので、あと 24 分の短縮には 8kg の減
量が必要な計算になる。その時の体重が 73kg であったので、目標値は 73-8=65kg としたいところではあ
る。しかし、そのために不健康な体を作っても仕方がないので、取りあえず理想体重と言われる BMI(Body
Mass Index: 体重(kg)/(身長(m)の 2 乗)が 22 となる体重、つまり身長 1.74m の私では、22 × 1.74
× 1.74=66.6kg を目指すこととした。
こうして始めた私の「BMI22& 別大マラソン」への挑戦、これを書いている 10 月中旬では道半ばなの
ではありますが、これまでもいろいろやってきたこともダイエットに関心のある方に参考になることもある
のではと思ってここに書いてみることとしました。
体重を減らすと言っても落としたいのは脂肪だけです。筋肉まで落としたら意味がありません。脂肪を落
とすためには摂取するエネルギー量<消費するエネルギーにすることが必要です。まずエネルギー消費を増
やす方法に関しては、私が信じているのは有酸素運動と筋トレだけです。有酸素運動とはランニング、サイ
クリング、水泳、エアロビクスと言った全身運動により文字通り脂肪を燃焼する運動です。燃焼なので当然
酸素が必要だし、脂肪が燃焼されたら二酸化炭素が排出されます。脂肪が燃焼されればガス交換のために
ハァハァと息が上がるし、それが過度になれば苦しくもなります。だから、私は、次に挙げる筋トレで基礎
代謝を上げる方法は別とすれば、
(呼吸が促進され苦しくならずに)楽に脂肪が減るなんて謳っているダイ
エット法は、みんなうさんくさいと思っています。さて、有酸素運動でどのくらい脂肪が燃焼され、ダイ
エット効果があるかですけど、これは理論値と経験値がぴったり合っており、間違いないものだと思ってい
ます。まず、栄養学的には脂肪 1g には 9kcal のエネルギーが含まれています。ただ、体脂肪には 20% 程
度の水が含まれているため、体脂肪 1g に含まれているエネルギー量は 7kcal と言うことになります。つま
り、体重 1kg を純粋に有酸素運動だけで減らそうとすると 7000kcal のエネルギーを消費しないといけな
いことになります。一方、有酸素運動でどのくらいのエネルギーが消費されるかというと、ランニングで
は体重 1kg あたり 1km で 1kcal が消費されるとされています。体重約 70kg の私なら 1km 走ると 70kcal
が消費される計算になるので、体重を 1kg 減らそうとすると 100km 走れば良いことになります。実際、走っ
− 119 −
た後すぐに体重を量ると体重は 2kg も 3kg も落ちていますが、これは汗とかが出たための一時的なもので、
次の日になるとほぼ元に戻っています。そして、月間走行距離と体重を計算してみるとだいたい 100km 走
ると 1kg くらい減っているので、1kcal/km/kg と言うのはほぼ当たっていると思います。有酸素運動によ
るダイエット、これを効率的と見るか否かは見る人によって違うでしょうが、これだけで目標達成しようと
するのはちょっとキツそうな気がします。
次に筋トレを行って基礎代謝を上げることで脂肪を燃焼させる方法があります。短期間にハァハァと脂肪
を燃焼させなくても、四六時中ずっと、ちょっとずついつもより多くの脂肪を燃焼させようという作戦です。
一般的に基礎代謝量(全く活動をしなくても生命の維持に必要とされるエネルギー量)は体重× 24kcal と
言われています。だから体重が 70kg の人ならその基礎代謝量は 1680kcal になります。これに筋トレを行っ
て筋肉量を 1kg 増やすと基礎代謝が 30kcal 増えると言われています。1kg の筋肉と言われてもピンと来な
いと思いますけど、標準的な男性の全身筋肉量は体重の 1/3 程度なので、体重 70kg の人なら 20kg 強です。
それを 1kg 増やすと言うことは約 5% マッチョになる必要があると言うことになります。筋トレで筋肉量
を増やすと言っても、止めると元に戻ってしまうので、ずっと続けなければなりません。5% マッチョになっ
て身体が静かに消費してくれる 30kcal というエネルギー量、走っても 500m 弱のエネルギーだし、有酸素
運動とどっちが楽かと比べてみると ???? ってな感じでもあります。しかし、基礎代謝量アップという目
的以前に、中高年になると、目的のスポーツだけではそのスポーツに必要な筋肉は維持できなくなることを
実感している私としては、週 1 ~ 2 回程度の筋トレの恩恵は絶大なのでオススメです。
これまでエネルギー消費量を増やす方法について書いてきましたが、それだけではなかなか体重をコント
ロールするのは難しいので、どうしてもエネルギー摂取量を減らす必要が出てきます。簡単なところから行
けば、無駄なエネルギーを取らないことです。無駄なエネルギーとはスポーツドリンク(結構カロリーが高
いので炭酸水かお茶にする)やスナック菓子です。完全に止めるのは無理でもなるべく減らすようにします。
難しいのは日常の食事の内容です。せっかく体重を落としても筋肉量まで落としてはパワー・ウェイト・レ
シオ(若い方は知らない言葉かも知れませんね)は変わらないので、筋肉は維持できるけど脂肪を減らすよ
うな食事が必要となってきます。タンパク質は筋肉の原料にもなるけど、摂りすぎたらエネルギーにもなり
ます。タンパク質の摂取量については諸説いろいろあって誰が言っていることが正しいのかよく分かりませ
ん。元資生堂選手の松田千枝さんなんかはその著書でタンパク質摂取の重要性を強調していて、朝食からス
テーキを食べる様な食事を勧めています。タンパク質の原料はアミノ酸であり、特に必須アミノ酸は体内で
合成できないので、それがないと新しいタンパク質は合成できません。ただ、古いタンパク質が壊されたと
き出てくるそのパーツであるアミノ酸はリサイクルされているので(正確にはリサイクルされているのは
古いタンパク質だけでなく、新しく合成されたタンパク質もその 70% 程度は立体構造に不備があったりで、
すぐにリサイクルに回されるそうです)筋肉量を維持するだけであればそれほど多くのタンパク質は摂取し
なくても良いような気もします。1 日に必要なタンパク質の量は、軽い運動をしている人では体重 1kg あ
たり 0.8g、筋トレやランニングくらいなら 1 ~ 1.2g、アスリート並のハードなトレーニングをするなら
2g なんて数値も見たことがあります。どの程度が適量なのかはよく分かりませんが、所詮アマチュア・ラ
ンナーが仕事の片手間に走る程度であれば、そんなにたくさん摂る必要はないように思えます。私は、肉を
大量に食べるとどうしても脂肪もたくさん食べてしまうような気がするので、なるべく豆類や小魚を食べる
ようにしています。特にちりめんじゃこみたいな小魚は身体全体を食べるので栄養素の取りっぱぐれがなく
て良いように思えます(人間も魚も遺伝子レベルで見るとだいたい同じなのでそのパーツもだいたい同じだ
ろうという乱暴な理論ですけど)
。ホリスティック医療で有名な帯津良一先生もなるべく丸のまま食べるの
がエントロピーを高めるので良いと言っておられるので、きっと良いのでしょう。エントロピーの理論はよ
く分かりませんけど。
さて、いくら何が身体によいとか、何が悪いとか分かっていてもやはり食べたいものは食べたくなるもの
です。だから、それを完全にコントロールすることは難しいと思います。しかし、無駄なものを食べないた
めには、意識を常に持っておくことは大切です。そのために絶大に威力を発揮してくれているのは TANITA
のインナースキャナーという名前もちょっとハイテクな感じの体重計です。この機械は体重や体脂肪率等の
− 120 −
測定をしてくれるだけではなくグラフまで書いてくれます。私はこれで毎日、朝起きた時に体重を測ってい
ますが、同じような生活をしていてもなぜか日ごとの体重のブレは結構あります。そこで 1 週間毎の平均
値を見ます。1 週間毎に見れば、ちょっと羽目を外しちゃった日がその週の中にあっても他の日にカバーす
れば良いので、メリハリがある食生活ができます。そして、毎日体重を測って一喜一憂していれば、自然に
今食べようとしているもののカロリー数が気になってきます。1 袋 500kcal のポテトチップス、このカロリー
を燃やそうとすると 7km ちょっと走らないと行けないなぁなどと思っていると、自然と無駄なものが摂れ
なくなってきます。
エネルギー消費を増やす方法、エネルギー摂取量を減らす方法、いろいろ書いてきましたが、現実にはそ
んなに楽ではありません。よく「楽してやせる・・・」的なダイエット法がブームになっては消え去ってい
きます。ちょっとしたエクササイズによってむくみが消えたり宿便が排泄されて一時的に体重が減ることは
あるかも知れませんが、そんなことでやすやすと脂肪が燃えることはないと思います。一時低インシュリン
ダイエットというのがありました。血糖を脂肪に変えるインシュリンをなるべく分泌させないような食べ方
をすれば脂肪は増えないという考え方のようです。しかし、血糖値が上がるとなぜインシュリンが分泌され、
脂肪を合成するかというと、水溶性の糖分は体液の組成に影響を与え、様々な障害を起こすので、脂肪とい
う不溶性の物質に変換して、さらに脂肪細胞の中にしまっておく必要があるからです。こんなダイエット法
は自ら好んで糖尿病になろうとしているようなものだと思います。実際、インシュリンの分泌の盛んな欧
米人と、そうでもない日本人とを比較すると、前者は肥満が多く、後者は糖尿病が多いそうです。
「楽でな
いダイエット法」なんて本を書いても誰も買わないので、「楽してやせる…」的なダイエット法が次から次
に出てくるのでしょうが、そんなに都合の良いものはそうそうないと思われます。アスリートの標語に NO
PAIN NO GAIN (苦痛なくして得られるものなし)と言うのがあります。ダイエットの世界は NO PAIN NO LOSS(苦痛なくしては減らない)というのが現実ではないでしょうか ?
とは言っても所詮趣味のスポーツ、耐えられない苦痛には耐えたくないし、食べたいものはやっぱり食べ
たい。私は、走る予定にしている時にどうしても走りたくない時は、取りあえず走りに行ってみます。それ
でもやっぱり走りたくない時は、あっさりとあきらめます。なにかつまらないものを食べたくなったら先ほ
ども書いたように、そのカロリーを消費するにはどのくらいは知らなければならないか計算してみます。そ
れでもやっぱり食べたい時は、気にせずに食べます。でも、一度悩んでから食べると良心の呵責みたいなも
のが残るので、次には我慢しようという気分になり歯止めがかかります。
マラソンというのはストイックなスポーツの代表みたいな感じがします。トップアスリートには当然それ
が要求されるのでしょうけど、私は、夢は追いかけたいけど、あまりきついのはご免です。中庸の路線で、
まあ何とか苦闘しています。
− 121 −
第5回 2012 スペイン釣りワールドカップ大会
食肉衛生検査所 金
只
登
ワールドカップ大会の開催地はスペインのマルベーリャ
(Marbella)
世界の釣人の祭典で3~4年に一度開催される釣りワールド
カップ大会は、世界スポーツ釣り連合(World Sports Fishing
Federation)が主催するもので、今回はスペインのマルベーリャ
で開催された。本大会の目的は、世界各国間の釣り文化の交流を
通じて、釣りの技法と技量及び釣り文化の向上を進めて、釣りを
世界的なスポーツとして定着させ、世界の平和に貢献することで
ある。今大会の参加国は日本を含む 51 カ国(種目:船釣り)で
ワールドカップのポスター
あり、2012 年 10 月 26 日~ 10 月 30 日の日程で行われた。
2012 年 10 月 25 日の早朝、私は喉の痛みと幾度となく襲ってくる咳き込みに苛立ちながらも福岡国際
空港で搭乗手続きを済ませ、成田空港行きの機内へと乗り込んだ。成田空港に着くや国際線待合室で世界大
会の日本関係者らと合流。出国審査も無事に終えフランスのシャルルドゴール空港(パリ)に向け飛び立っ
た。同空港でマラガ空港行きの便に乗り替えれば目的地のマルベーリャに着くことになっている。私は体調
面で不安を感じていたが、時間の経過とともに地中海での釣りへの強い思いがこれらを払拭していた。
シード権争奪戦(日本予選)で世界大会への切符を手中にする
2011 年 11 月 14 日に国内の釣具メーカーが抱えるフィールドテスターらクロ釣りのトップトーナメン
ターに君臨する名手達がズラリと長崎県平戸市のあじか磯釣りセンターに集結し、世界大会への切符のか
かった磯釣り部門のシード権争奪戦が五島列島は中五島の佐尾鼻一帯の
磯を舞台にトーナメント方式により開催された。この予選で上位 3 名
には同大会へのシード権が与えられる仕組みになっており、私は激戦を
勝ち抜いて 3 位に入賞することができた。
磯釣り部門における日本のシード権保持者はエキジビションとして参加
世界スポーツ釣り連合の大会役員による現地視察の結果、幾多の事由
により磯釣り部門の競技は今回、行われないこととなったが、日本のシー
ホテルサンクリストバル
ド権保持者はエキジビションとし
て参加することが同理事会で決定
された。
海辺からみたマルベーリャの景観
各国の入場行進
開幕式
港での私のスナップ写真
釣りを楽しむ親子
− 122 −
釣り文化の異なる地で日本のフカセ釣りを紹介
スペイン語と英語の堪能な通訳者
をそれぞれ1名ずつ付け、現在の日
本国内における磯釣り(上物釣り)
の主流をなすフカセ釣りについて、
日本のシード権保持者が、主に船釣
り部門の参加選手らを対象にホテル
内の一室で 90 分程、プレゼンテー
プレゼンテーション
ションを行いました。
プレゼンテーション
トーナメントの実戦を披露
マルベーリャの地中海沿岸にある波戸磯で、私
を含む 3 名のトーナメンターが審判員の指示の
もと、試合形式による実戦を観戦者に披露しまし
た。観戦者らは私達の竿さばきや手返し、掛けた
魚の取り込むスピードなどに感心?したのか、魚
を掛けるごとに大きな拍手を頂きました。
トーナメント実戦
トーナメント実戦
地中海の磯で釣ったのは日本の黒鯛(チヌ)に似た魚
試合が終わり、各自、審判員のも
とに持ち寄った体長 20cm ~ 35cm
大の魚の大半は、日本でいう黒鯛(チ
ヌ)に似た魚でありました。
大会を終えて
私は釣りを続けて半世紀。クロ釣
りトーナメントの世界に埋もれて
釣ったのは黒鯛(チヌ)に似た魚
船釣り種目の授賞式
ジブラルタルの山頂から海峡や
遠くアフリカ大陸を望む
セーヌ川クルーズで撮影した
風景の一コマ
20 年近くなります。還暦を今年の
4月に迎えましたが、まだまだ足
腰の強さは健在です。クロの釣り
場となる沖の荒磯は一般に足場が
悪く、足腰が弱まると危険を伴う
ことからすれば、もうしばらくは
現役トーナメンターを続けられそ
うです。私の目標はさらに卓越し
た技法や技量を磨き、世界の頂点
を目指すことでありますが、これからの日本釣界を背負いかつ日本の釣り文化を継承する釣人の育成にも力
を注いでいかねばと考えています。
ホテルの一室でプレゼンテーションを行ったとき、女性の通訳者と共に私らのもとにやって来た英国の若
い選手から「私の国には(日本のような)磯釣り競技はない。是非ともこの競技を自国で普及させたい。趣
味として個人のみで行う釣りを競技として成立させるにはどうすれば良いのか教えて頂きたい」との質問を
受けた。これに対し「ルール(競技規定)作りに着手しなさい」というアドバイスを若者に告げました。
今大会を振り返り、私は趣味である釣りという分野で日本を代表し世界への掛け橋的な役割を演じたこと
を誇りに思っています。
最後に、私を支えてくれている多くの方々に感謝の意を申し上げます。
− 123 −
家づくり
食肉衛生検査所 山
口
勝
寬
私が日出町に家を建ててもうすぐ 1 年になります。
土地探しから建築業者選び、建築中、建築後、入居後
の生活についていろいろあったことを書いてみます。
今後家を建てる人の参考になるかもしれません。
【土地探し】
私は、平成 21 年 4 月に大分県に戻ってきて県職員
になりました。その年の 7 月頃、新生活にも慣れて
きて余裕が出てきたので家でも建てるか。と妻と話し
ていました。お互い大学時代を北海道の十勝で過ごし
たこともあってか、広いところで牛が飼いたいとか馬
が飼いたいとか勝手なことを話していました。とりあ
えず、不動産情報誌を買ってきて広い土地で手の届きそうな値段の所をかたっぱしから電話してみます。と
いってもそんな所は 2 件しかありませんでした。
現地見学、1 件目。景色はいいが値段もいい。木も生えてなく平らでアパートを建てるにはよさそうでし
たがあまり面白くなさそうなのでパス。2 件目は廃屋があり、道路よりも低い土地ではあるが、値段も手ご
ろで木を切れば景色も良くなるかもしれない。土地の半分は斜面で大きな木が生えているが半分は平らで木
も生えていない。牛馬は無理があるかもしれないが山羊、羊ぐらいなら飼えそう。面白そうなのですぐに気
に入りました。
すぐにお気に入りの土地は見つかりましたが、転職 1 年目のぺーぺーにお金を貸してくれる金融機関は
ありませんでした。そうこうしている間に 2 人目の子供が生まれて忙しくしていると、すぐに 2 年目にな
り借金ができるようになりました。そこで、不動産屋に土地を買いたいと電話してみると売主であるお爺さ
んの体調が悪く入退院を繰り返しているので、しばらくは売れないとの返事。しょうがないので他の土地を
探しつつ、住宅展示場めぐりをするはめに。他の土地はなかなか見つからず家を建てること自体が面倒くさ
くなってきた頃、
突然不動産屋から「お爺さんが退院しているみたいなので、いそいで契約してしまいましょ
う。
」との電話。大丈夫か?と思いつつ、数日の間にあっけなく土地が決まりました。探し始めてから 1 年
以上経った平成 22 年 9 月でした。後日聞いた話によると売主のお爺さんも大変お世話になった不動産屋さ
んもその数ヵ月後に病気で亡くなったそうです。ぎりぎりのタイミングで契約できたようです。
【土地の開拓】
買った土地は、古い家の解体、木の伐採、土地の造成の順で行う必要がありました。家の解体と土地の造
成は近所の土建屋さんに頼み、木の伐採は林業を営んでいる伯父さんに頼みました。樹齢 40 年~ 80 年ぐ
らいの樫、杉、桧など 20 本ぐらい伐る必要がありました。家の解体の前に竈とトイレのお祓いを近所のお
寺に頼みました。家の解体はいつの間にか終わっていましたが、木の伐採には立ち会って手伝いました。大
木を伐る現場は初めてで、木が倒れる時の地響きのすごい迫力にビビりまくりでした。土地の造成はダンプ
100 台分ぐらい山から土を持ってきたようです。平成 23 年 1 月になっていました。同時進行で畑づくり
と建築業者選びのためのモデルハウスや完成見学会めぐりに毎週末大忙しでした。
【建築業者選びと設計】
大手ハウスメーカーや工務店あわせて 10 軒ぐらい回ったあたりでだんだんとこだわりが出てきました。
− 124 −
自然乾燥した無垢の国産材を多く使っていることと土壁であることにまずこだわりました。このこだわりを
聞いてくれるのは小さな工務店だけで、たまたま新聞の広告で見つけた素晴らしい木材を扱う工務店に決め
ました。
平成 23 年 3 月には工務店側に契約したいと伝えましたが、小さな工務店なので今の現場が終わらないと
できないと言われました。そして、震災の影響で建築資材が品薄で、今の現場の完成がいつになるか分から
ないとのことでした。畑を耕しながら待っていました。6 月に突然電話があり、来月には始められそうなの
で、近いうちに契約しましょうとのことです。設計図も作ってないのに急だな。とか、夏場の工事は木材に
狂いが出そうだし、工事のおっちゃんが暑くて手抜きしそうでいやだな。とか、思いましたが、断るといつ
になるか分からないので、さっさと契約して、設計図を作ってしまうことにしました。設計は工務店がいつ
も使っている建築士にお願いし、建築確認申請に必要な最低限の図面は作ってもらいましたが、細かい所は
現場で棟梁に言ってとのことでした。監理もなしです。設計料が格安だったので文句は言えませんでした。
【着工から竣工】
7 月初旬地鎮祭の後、地盤改良、基礎工事と進んだところで最初のクレームをコンクリートの打ち方にう
るさい私の父がつけました。詳しいことはよく分かりませんでしたがなんとなく手直しをした後、7 月末に
は棟上げできました。高い所の桁や梁の上を軽々と動き回る大工さんたちはすごいなあと思いました。8 月
中旬は土壁の下地となる竹小舞を左官屋さんが編んで
いました。きれいに編まれた竹小舞は土で覆ってしま
うのがもったいないなあと思いました。8 月下旬には
土壁塗りの荒塗りが完了しました。その後、細かい注
文を棟梁にいろいろお願いしました。キッチン周りは
造り付けで棟梁作です。風呂は石を張って左官屋さん
作です。内側の壁は土佐漆喰で仕上げました。土佐漆
喰は塗るのが難しいらしくかなり苦戦していました。
家の周りに伐った木も生えている木も大量にあるので、
エネルギーとして活用しようと、薪ストーブと薪ボイ
ラーを設置しました。ストーブの煙突は屋根から抜き
たかったのでストーブ屋さんにお願いしました。専門
家じゃないと雨仕舞いが難しいのと火災が心配なのとで工務店とは別に発注しました。なんだかんだやって
いると完成は 11 月になっていました。
予算がオーバーしてしまったので自分でできる登記は自分でしようと、建物表題登記と所有権保存登記は
自分でしました。保存登記は必要事項を記入するだけなので誰でもできると思いますが、表題登記は図面を
作らなければならないので少し苦労しました。しかし、基となる図面は建築確認申請のものが使えるので、
それを拡大や縮小して縮尺を決められたものに合わせてパソコンに取り込んで、ワードに貼りつけて線をな
ぞったらなんとか形になりました。
それと、みみっちい話ついでにもう一つ、プロパンガスはガス屋に料金表を出してもらうと(かなり出し
渋るところもありますが)ガス屋によってかなり値段が違います。平均的な値段は九州経済産業局のHPで
確認できます。
【引っ越した後の生活】
11 月下旬にようやく引っ越しできました。土地を探し始めてから 2 年 4 か月かかりましたがそれなりに
満足しています。今思えば楽しい家づくりでした。
入居後は寒い日が続いたので、薪割に追われる毎日でした。冬場は森の木の伐採もしなければなりません。
春、暖かくなってくると畑が忙しくなります。春先に次の冬に使う薪の準備ができればいちばんいいのです
が暖かいとなかなかやる気が起こりません。最近寒くなってきたので、またあわてて割っています。
− 125 −
今年 8 月には山羊を 1 頭飼いはじめました。アル
パインが 4 分の 1 混じった日本ザーネンの雌の子山
羊です。日本ザーネンは秋に発情がくる季節繁殖らし
いので来年の秋には種付けを試みたいと思っています。
昼間は繋牧で庭の草を食べてさせていますが、最近食
べる草が無くなってきたので購入も検討中です。山羊
は草よりも木の葉の方が好きなようで、たまに有毒植
物も食べてしまいます。この前、シキミの枯葉を食べ
てしまい次の日には大量の嘔吐を認め、沈鬱状態に
なってしまいました。平日でしたので妻からの一報で
した。仕事を早めに切り上げて、輸液をしようかと考
えていた頃、顔色がよくなってきたとのメールがあっ
たのでそのまま様子をみてもらうことに。夕方、私が帰宅した時には回復していました。それまで有毒植物
は本能的に食べないと思っていたので、牛には有毒とされる植物を食べていても山羊には平気なのだろうと
勝手に解釈していましたが、今はかなり注意しています。再来年の春には搾乳できるようにすくすくと育っ
てほしいものです。
まだまだ、忙しい日々が続きそうです。
− 126 −
トルコ共和国新婚旅行記
食品安全・衛生課 宇都宮
公
平
突然であるが、平成 24 年9月に二度目の結婚をした。人生の転機は全く予告もなく訪れるもので、仲良
く暮らしていた私たち三人家族は離ればなれになり、私はひとりぼっちになった。
早速、話しが脇道にそれてしまった。今回は、私の離婚騒動記ではなかった。
話しを続けると、ひとりぼっちになった私は寂しさに負けて、いや、真の愛に出会って、幸運にも二度目
の結婚をすることができた。
新婚旅行はトルコに行ってきた。今、世界遺産を巡る旅が流行っているというので、真似してみた。嫁は
南国に行きたかったらしいが、
「あんたがどうしてもトルコと言ったから、しかたなく譲った。」と言っている。
トルコ1日目
嫁は「機内で 12 時間もどうやって過ごす?」と、出発前からしきりに言っていたが、私は「昼寝をした
り機内食を食べたりしていたら着くんじゃないの。」とのんきな返事をしていた。いざ飛行機に乗ると少し
退屈だったが、映画やテトリスに熱中したり、尿道結石の乗客が苦しみ出して乗り合わせた医者が集められ、
その顛末を気にしているうちに、意外とあっけなくイスタンブールに着いた。
嫁はと言うと結構早くから眠り始め、眠っているかと思うといつの間にか目
覚めて、急に話しかけてきて私をびっくりさせた。
空港に着いて、まず、トイレに行った。早速、困った。便器の位置が高く
て、つま先立ちにならないと用を足せない。私は 168cm しかないので、め
いっぱいつま先立ちになり、よろよろしながらやっとトイレを済ませた。こ
れでは先が思いやられる。
トルコ2日目
目覚めて、大きい方の用を足すためトイレに行った。ウォシュレットの位
置に何か水が出てくるような管が付いている。ウォシュレットは日本の大発
明と聞いたことがあるが、すてきなホテルだけあってさすがだな、と感心し
た。済んだのでおしりを洗おうと思ってはみたがウォシュレットのスイッチ
がない。後ろを向くと元栓らしきコックがあるので、2・3回ひねってみた。反応
がない。もう少しひねってみると、遅れて勢いよくおしりに水が飛んできた。斜め
上方に向いたウォシュレットらしき管から蛇口と同じように水が出てきたのだ。さ
すがのウォシュレットもトルコはまだ征服していないようである。
バスで移動し、昼はフェリー乗り場の近くのレストランで焼いたサバを食べた。
出航まで付近を散策すると、耳にタグを付けた犬が道のあちこちに寝ころんでいた。
耳のタグは狂犬病予防注射済の印ではないだろうか。
ダーダネルス海峡を渡る船内で、ワンボックスのバンにポインターを7~8頭詰
め込んだおじさん達に遇った。今から鳥猟に行くのだという。高校生の時に飼って
いた犬に少し似ている犬がいたので、写真を撮らせてもらった。
トロイに着いて大きな木馬を見た。木馬だけではなく、広大な遺跡も見て、触れ
て、よじ登った。私は幼い頃、奈良県に住んでおり、家族で法隆寺に行ったことが
ある。ちょうど修復中で、立入禁止のロープが張られていたらしい。その場所で父
と母は、
「この子達の親は誰だ!」と怒鳴る宮大工の声を聞き、そっちを向いて驚
いた。私と兄が捕まえられて泣いているではないか。追いかけっこをしているうち
に土足で法隆寺に上がり込んだそうである。今でも母は「あんた達がひどく怒られ
た。
」と言うが、正しくは「あんた達を野放しにした私が、ひどく怒られた。」であ
− 127 −
る。よけいなことを話したが、つまるところ、トルコは寛容な国だと言うこ
とだ。夫婦で世界遺産によじ登っても注意一つされなかった。
トロイ見学が終わって、ツアー一行がお土産物屋を覗いている時に、とて
も大きな犬が現れた。カンガール・ドッグだと思う。観光客を気にもとめず
悠然と歩く姿に惚れ惚れした。
トルコ3日目
朝のまだひんやりするうちに、ベルガマの遺跡を観光した。アスクレピオ
ンと言う医学の礎を築いた人が住んでいたらしい。世界遺産ではないが、歴
史的に価値のある遺跡であると現地ガイドが説明していた。なるほど、大理
石の太くて長い柱には、細かな彫刻が施されている。しかし、悲しいかな数
匹の野良犬のすみかであるらしく、立派な遺跡に雄犬がマーキングをして
廻っている。
昼食後、エフェソスの遺跡に行った。ギリシャ、ローマ時代の広大な遺跡で、多くが大理石でできており、
細工もとても細かい。今でも発掘と修復が進められており、もっと立派になる可能性があるが、ちょっと修
復技術に問題が……。いや、今こうして遺跡を見られるだけで幸せである。
ここは、よけいな口出しは止めておこう。
明日の予定であったが、変更してパムッカレの石灰棚を観光した。夕日が
沈むにつれて、真っ白い石灰棚が徐々に朱色に変わって行った。その石灰棚
を裸足で歩きながら、「水虫でもこのアルカリなら一発で治るんじゃない。」
などと嫁とくだらない話しをした。
トルコ4日目 440km バスで走り、コンヤ市内のメブラーナ霊廟を観光した。イスラム教に、くるくる旋回しながらお
祈りする一派があったそうで、メブラーナ霊廟はその聖地だそうだ。
言い忘れていたが、途中で立ち寄るドライブインなどのトイレは有料である。たいがい1トルコリラ(約
50 円)とられる。また、ドライブインには、お土産コーナーと喫茶コーナーがあり、喫茶コーナーではザ
クロやオレンジをその場で搾ってジュースにしてくれる。「そんなの飲んだらお腹が痛くなる。」と嫁が言っ
て飲ませてもらえなかったが、チャイは二人で飲んだ。甘くておいしかった。
さらに 230km バスで走り、トルコ石の宝石店に行った。トルコ石と言えば真っ青の丸い物を想像するが、
本当に価値があるのはアンティーク調のものだそうで、透き通った深い緑色をしており、複雑な模様がある。
宝石を見るのは意外と楽しい。アンティーク調のトルコ石は輸出しないと聞き欲しくなったが、なぜかクレ
ジットカードが使えなかったので、諦めた。
トルコ5日目
カッパドキア地方で、ギョレメ野外博物館や地下都市カイマルクを観光した。いずれもイスラム教徒から
の迫害を逃れるためにキリスト教徒が隠れ住んだ場所らしい。ギョレメ野外
博物館では、キリストや聖人達を描いた壁画を見て廻った。残念ながら多く
の人物画の顔が削りとられている。それは異教徒の仕業ではなく、なんと近
年の子供達のいたずらのせいらしい。学校で「今日は何人削ったぜ!」と自
慢するために、競ってコインなどで削ったのだと言う。
野外博物館の入り口では「のびるアイス、のびるアイス、のびーるアイス」
と日本語で言いながら、トルコアイスを売っていた。
カッパドキア地方は奇岩があることでも有名である。私たちもキノコの形
をした岩の写真を撮った。
夕方はトルコ絨毯の製造販売元へ行った。社長は日本語が上手で、おもし
ろおかしく自社の絨毯のすばらしさを説明し、売り込んだ。とても高価なの
で最初から購入する気はなかったが、記念に一番手触りの良い絨毯に寝ころ
− 128 −
んで写真を撮った。
夕食後はベリーダンスショーを見に行った。行程表には「ベリーダンス」と書かれていたが、実際はいろ
んな地方の民族舞踊で、農作業の動作を取り入れた豊作を祝う舞踊や結婚式の様子を再現した舞踊などが演
じられた。演目の合間に、現地ガイドが服を脱ぎながら踊り出したので驚いたが、とても上手だった。
トルコ6日目
カイセリ空港から空路でイスタンブールに戻り、ブルーモスクとアヤソフィアを見学した。ブルーモスク
は今もちゃんとモスクとして使われており、観光客と礼拝に来た人でごった
返している。短パンやノースリーブで来た人は、入り口で、イスラムの教え
にしたがって肌を隠すように係員から指示される。服を用意していない人に
はスカーフが配られて、体に巻いて入場しなければならない。中は、礼拝に
来た人しか入れない場所と観光客も入れるところが区画されており、人の臭
いなのか、香の臭いなのか、変な臭いがした。
アヤソフィアとブルーモスクはすぐ近くにある。アヤソフィアはギリシャ正教の大聖堂であったが、オス
マントルコに征服されてイスラム教のモスクに改修されたそうだ。現在は、漆喰で隠されていたキリストの
モザイク画も見ることができる。大きくて金色の絵はものすごい存在感であ
る。
代表的な2つのモスクを見た後は、グランド・バザールに行った。宝飾品
店が多く、ショーウィンドウに金の装飾品がまぶしいほどに飾られていた。
バザールでショッピングをした後、ボスポラス海峡のサンセットクルーズ
に行った。計算どおり、クルーズ中に夕日がイスタンブールの街に沈んでい
き、モスクがとても美しく映し出された。
トルコ最終日
日本では一般に「地下宮殿」と言われている地下貯水池に行った。地下の暗闇が最小限の照明で照らされ
ており、幻想的であった。
次にトプカプ宮殿に行った。大きなエメラルドが埋め込まれた宝剣や70カラットのダイヤなど数々の宝
物を見てため息が出たが、これは価値のある宝物を持ち出した後の余り物だそうだ。
この後、シーフードの昼食を食べ、イスタンブールから空路、成田へ向かった。旅行中は、まだトルコに
いたいと思っていたが、日本に到着すると不思議と安心し、自宅に戻ると「やっぱり家が一番」と感じてし
まう。
日本に帰り、数日すると、隣のシリアがトルコを誤爆したとニュースで流れた。皆が「数日ずれていたら、
大変だったね。
」と言ってくれた。シリアだけではない。今も世界各地で紛争が起きている。世界遺産が破
壊された国もあると聞き、残念でならない。
一週間もしないうちに、嫁が「次どこに行っちゃう。」と言いだした。いろいろと候補地が挙がるが、と
りあえず安全なところを選んでほしいと願っている。
− 129 −
病院紹介
すえつぐ動物病院
院長 末
次
由
和
別府市松原町1-8 0977-25-5556
すえつぐ動物病院は別府市松原町に位置し、1982 年の開業以来 30 周年を迎えることが出来ました。こ
の間地域に密着し飼い主さんのニーズに答えることができる動物医療の場をめざしてまいりました。しかし
より高度な動物医療を提供するため新館建設を計画し、建築構造は鉄骨3階建て病院面積約 250 坪で、外
観のテーマはモダンで地域のランドマーク的存在感のあるデザインになるよう鏡面光沢のあるカーテン
ウォールを採用しました。
過去3回の改築を経験しましたが、設備の配置や動線がうまくいかないこともあり今回は旧病院をそのま
ま残し隣接地に新館を立ち上げました。新病院の概略は、1階に待合室・5つの診察室・処置室・ICU 室・
エコー室・レントゲン室・CT 室(16 列マルチスライス)・検査室等があります。
2階には2つの診察室(1室は眼科用)と処置室・手術準備室(内視鏡室も兼用)があり、今まで手狭だっ
た手術室は手術設備2台で同時にできるよう広くとりました。また手術室エリアのみ専門業者に依頼し37
インチモニターで電子カルテやレントゲン・エコー・CT 等の画像を表示でき利便性を高めました。また手
術の様子もモニター表示できるので手術での立会を希望する飼い主さんに手術室に入らず見てもらえるので
− 131 −
好評です。また2階には犬用入院室・猫用入院室・大型犬用入院室(5室)・ナースステーションを配置し
ています。
3階は約 25 名収容できるセミナールームとスタッフ用の部屋・シャワールーム・洗濯室などがあり、3
階屋外に入院用ランがあり散歩できるようにしています。各階の連絡は 15 名用エレベーターを設置し大型
犬などのストレッチャーがスムーズに移動できるよう配慮しました。以前より電子カルテを採用してカルテ
レスにしていましたが今回さらに強化して画像や検査を一括管理しフィルムレスにして省力化に努めました。
まだまだ理想の動物病院にはおよびませんが一層飼い主さんの期待にこたえられるようスタッフ一同、心
新たにまい進していく所存です。お近くにお寄りの際にはぜひお立ち寄りください。今後ともよろしくお願
い致します。
− 132 −
えとう動物病院
院長 江
藤
毅
別府市のえとう動物病院です。
平成9年7月 10 日に開業し、今年で 15 年目を迎えました。
犬、猫、うさぎの他に、フェレットや小鳥などを診療しています。
別府観光の父と言われる「油屋熊八」がうたった『山は富士。海は瀬戸内。湯は別府』の言葉通り、瀬戸
内別府湾の海の幸をふんだんに使った美味しい料理を食べさせてくれる老舗料理店が多いですし、それに疲
れた身体を癒してくれる別府温泉は地元の宝物ですね。
この慣れ親しんだ自然豊かな地元で仕事が出来ることを幸せに感じております。
開業当初は、私獣医師1名、助手(妻)1名のアットホームな病院でした。
徐々にスタッフも増え、今では獣医師3名、看護師5名、受付3名、総務(妻)の総勢 12 名となり随分
賑やかになりました。
スタッフの平均年齢が若くなり、日々の会話の中でも「自分もついに『オヤジ』なのか…」と痛感するこ
とも多くなりましたが、若手スタッフやその数が増えれば、色々な知恵やアイディアが出てきて、かねてよ
り実施したいと考えていたパピーパーティを平成21年から実現させることができました。
初めて犬を飼う飼い主さんにとって心強い存在になり、よいアドバイスができるようにとスタッフも積極
的に講習会に参加し準備をしてきましたので…その甲斐あってか毎回好評をいただいております。
パピーパーティの様子
待合室や診察室に掲示している手作りのポスターはスタッフのアイディア満載で、診療待ちの患者さんに
も楽しんでいただけているのではないかと思います。
待合室
待合室の掲示板
− 133 −
診察室の掲示板
改築後
15年前(この頃は痩せてましたね…)
現在
(入口横に小さなオアシスがあります)
病院建物は平成 18 年に大規模な増改築を行い、思い切って以前の雰囲気とは全く違った外観に挑戦(?)
してみました。 開業したての頃、一番の悩みだったのは駐車場のことでした。
正面入り口の前に自家用車を含め、計4台しか停められず近所の月極めの駐車場を確保するのに苦労しま
した。目が行き届かないため近隣の方へ迷惑をかけたり、迷惑駐車もあったりと「近場で専用駐車場が欲し
い!」と常に考えておりました。
その願いがかなったのは改築を行った翌々年。ご縁があり現在の専用駐車場を作ることができました!
東屋を建てベンチを置き、芝生のスペースを少し設け外待合の役割も果たしています。
(飼い主さん曰く)この場所を楽しみに病院に来てくれるワンちゃんも多いようなので、糞のお掃除は大
変なのですが、作ってよかったと本当に思っています。(時々、公園と間違えて昼寝をしている人もいます
が…笑)
今後もますます患者さんに喜んで
いただけるよう、設備だけじゃなく
我々の技術も向上させていきたいで
す。
東屋の下で患者さん同士の交流も見られます。
真剣です
手術
− 134 −
一休み・・・
えとう動物病院
〒874-0929 別府市南的ヶ浜1-27
Tel 0977-21-1414 Fax 0977-21-1415
〈診療時間〉
月~金曜日
9:00~12:00 17:00~20:00
土曜日・祝日
9:00~12:00 14:00~16:00
日曜日
10:00~13:00
ホームページ:http://www.eto-ah.com/ e-mail:[email protected]
受付
キッズスペース
− 135 −
駐車場の花壇
ファミリア動物病院
院長 中
野
聖
子
当病院は、平成8年3月22日に、主人の出身地という縁でここ、別府市中須賀に開院しました。獣医師
は、私と今年県を早期退職した主人の2名、トリミングや雑用をこなすスタッフ 1 名(実は私の姉。本人
達の意思に反して時々双子にも間違われることも…)で細々と正に家内経営でやっております。
病院外観
院長(右)、スタッフ
待合室には主人の趣味で水槽が2つ設置してあり、1つは海水のサンゴ水槽、1つは水草水槽でエビを飼っ
ています。サンゴは皆さん珍しげに覗き込みますが時々気持ち悪いと言われることもあります。設置した本
人は綺麗と思っているらしいのですが…。玄関横で日当たりがよいためか、一部のサンゴは増えて水槽を占
拠するため時々里子にもらわれていったりします。
サンゴ水槽
水草・エビ水槽
病院周辺は、住宅地ではないのですが、近くに別府大学があるため、学生が野良の子猫を保護して連れて
きたり、亀川地区も近いせいか、昔からの住人の方や、温泉地別府という土地柄でしょうか、関西方面から
移住のシニアな世代が、やはりシニアな世代の犬猫を連れてきたりという割合が、多いように感じます。
スタッフ(病院飼いの犬2頭、猫1頭を含め)の平均年齢が高いせいか、診察が終わった後の、いわゆる
世間話の時間のとり方は、他動物病院には無い物だと思っております。(そういう時間がふんだんにある病
院です)
「あそこの整体院がよい」だとか、「今度出来た、あそこのうどん屋さんは、おいしかった」などの
情報交換。
「ここのパンおいしいから食べて。
」や、「土が付いたままだけど」と自分で作った野菜等等の差
し入れも度々。私の家族構成も把握していて、息子にバレンタインのチョコレ-トをわざわざ、持って来て
− 136 −
下さったりということも。飼い主さんの家族事情や、持
病についても何故か相談されることもあったり…。あく
まで、
病院内だけでのおつきあいだからなのか、おばちゃ
ん獣医師やスタッフには、軽口をたたいて行き易いので
しょうね、きっと。もちろん動物に関しての相談も、あ
ります。中でも長年一緒に暮らしてきた動物の介護につ
いての相談を受ける時、どう看取ってあげるか、どんな
ふうに送ってあげるかは、特に考えさせられます。若い
世代の家族の考え方もあれば、高齢の飼い主さんの気持
ちもあります。いろんな思いに少しでも、寄り添えたら
と、電話でも、薬を取りに来院したときにも、自分の経
・・・・。
験や、他からお聞きして参考になった事などを、しっかり時間をかけてお話しをするように心がけています。
お母さんと娘さんでいらしていたのが、お孫さんも一緒に来院するようになったり、いつもお父さんがい
らしていたのに、亡くなられて、他のご家族がいらっしゃるようになったり、子犬だったり、子猫だったり
した子達が、天寿を全うした後、新たな家族を連れて、また病院に通っていただけるようになったり。そん
なことで、仕事を始めてから時間が随分経つことを改めて気がつきます。獣医師としても、ヒトとしてもま
だまだ未熟です。飼い主さんや動物達に、日々勉強させていただいてる毎日です。
− 137 −
新入会員紹介
ハートフル動物病院
シモ
セ
下 瀬
アキ
昭
ヒロ
広
はじめまして。山口大学を卒業して、中津市のハートフル動物病院に勤務し
ています。
まだまだ力不足ですが、一人の獣医師として病院、地域に貢献できるように
頑張りたいと思います。
中津は大好きな唐揚げが有名な地なので、唐揚げ屋さん巡りも積極的に行
なっていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
大分県食肉衛生検査所
カ
イ
タケ
ヒコ
甲 斐 岳 彦
昨年 4 月に臨時職員として大分県食肉衛生検査所に勤務。9 月に正規採用さ
れ、現在に至るまで同所で働いています。常に冷静に、頭を柔らかくして業務
に取り組めるよう、日々精進しています。佐伯の魚介類、日田の鰻が気に入っ
てます。よろしくお願いします。
末松どうぶつ病院
ヤマ
シロ
山 城
サト
識
コ
子
日本獣医生命科学大学を卒業し、春から末松どうぶつ病院に勤務しておりま
す。毎日が新鮮で、勉強することばかりですが、1歩ずつ成長できるように頑
張ります!1日1日を大切にして学んでいきたいと思っています。今後ともよ
ろしくお願い致します。
大分県食肉衛生検査所
カ
イ
マサ
ヒロ
甲 斐 雅 裕
こんにちは。私は3月に宮崎大学農学部獣医学科を卒業し、4月から地元で
ある大分に県職員として戻ってまいりました。現在勤務しております食肉衛生
検査所では、大学で学んだことが実際の仕事の中で体験でき、とても充実した
日々を過ごせております。まだまだわからないことが多いのですが、早く一人
前になれるようにがんばります。よろしくお願い致します。
− 139 −
大分県農業共済組合連合会
ケイ
オ
鶏 尾 めぐみ
今年の4月から大分県農業共済組合連合会で勤務することになり、鹿児島か
ら引っ越してきました。
獣医学的なことも大分県についてもまだまだ分からないことが多く、牛を診
ている先生方や、やさしい農家の方々に助けられている毎日です。
大分の畜産に貢献できるようがんばっていきたいと思いますので、よろしく
お願いいたします。
大分市保健所
ク グ ミヤ
久々宮
ヒロ
弘
コ
子
今月から市職員として大分市保健所衛生課・動物愛護担当班に勤務すること
になりました。
慣れない仕事に悪戦苦闘中です。日々精進していきたいと思います。
何卒よろしくお願いいたします。
隼人どうぶつ病院
アナ
穴
イ
井
ユ カ
リ
友加里
今年の3月に山口大学農学部獣医学科を卒業し、4月から隼人どうぶつ病院にて
勤務しております。
将来どの方向に進もうか悩んだ時期もありましたが、やはり子どもの頃からの夢
であった「どうぶつのお医者さん」として働かせていただき、とても楽しい毎日を
過ごしています。わからないことが非常に多く、また失敗をして落ち込むことも多々
ありますが日々勉強し、早く皆様から信頼される獣医さんになりたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
東部保健所
ナカ
中
セ
瀬
マ
真
キ
紀
今年3月に日本大学獣医学部を卒業し、4月から県職員として東部保健所に
勤務しています。まだまだわからない事が多く、対応に戸惑うことばかりです
が、日々勉強し一人前になれるよう頑張ります。よろしくお願いいたします。
− 140 −
豊後大野家畜保健衛生所
モリ
サコ
森 迫
ノゾミ
望
今年4月に麻布大学を卒業し、豊後大野家畜保健衛生所に勤務しています。私の
家ではかつて祖父母が酪農を営んでいたため、私は幼い頃から祖父母にくっついて
牛舎や畑で遊んで育ってきました。家族そろって動物が好きで、羊や七面鳥、鶏、
合鴨などを飼育していたこともあります。大学では産業動物分野に力を入れて勉強
し、将来は地元大分県の畜産に貢献したいと考え、県職の家畜保健衛生所を希望し
ました。家保の仕事は想像以上に幅広く、分からないことや失敗することもありま
すが、周りの先輩や農家さん達にとても助けられながら、教わる毎日です。大分の
畜産を支えていくために、積極的に前向きに頑張りたいと思います。
宇佐家畜保健衛生所
カ
トウ
加 藤
ヨウ
洋
ヘイ
平
昨年 4 月に獣医師資格を取得しました加藤洋平と申します。昨年は数ヶ月ほど別
府の〈すえつぐ動物病院〉で小動物臨床を体験・勉強させて頂き、今年の 4 月から
は県職員として宇佐家畜保健衛生所に勤務しています。
趣味は神社仏閣巡りと御朱印集め。連休には古社寺などに脚を伸ばしています。
全国の一ノ宮に参拝する事が目標です。
獣医師歴一年半程で、まだ駆け出しの若輩者ですが、どうぞよろしくお願いします。
− 141 −
お知らせ
平成24年度日本獣医師会獣医学術学会
年次大会
(大阪市)
について
− 143 −
− 144 −
− 145 −
− 146 −
第62回九州地区獣医師大会並びに
平成25年度獣医学術九州地区学会の開催について
平成25年10月12日(土)~13日(日)に開催する予定で準備をしています。
会員の皆様方の参加とご協力をお願いいたします。
第62回九州地区獣医師大会・獣医学術九州地区学会日程(案)
平成25年度日本産業動物獣医学会(九州地区)
平成25年度日 本 小 動 物 獣 医 学 会(九州地区)
平成25年度日本獣医公衆衛生学会(九州地区)
時 間
行 事
会 場
備 考
学 会
12日(土)
14:40~15:00
学会幹事会
産業動物獣医学会
小動物獣医学会
獣医公衆衛生学会
「ホルトホール大分」
404会議室
405会議室
406会議室
12日(土)
15:15~18:00
13日(日)
9:30~14:45
学会
産業動物獣医学会 Ⅰ
〃 Ⅱ
小動物獣医学会 Ⅰ
〃 Ⅱ
獣医公衆衛生学会 Ⅰ
「ホルトホール大分」
大会議室
(3階)
201・202会議室
ランチョンセミナー
小ホール
(1階)
12:00~13:00
大ホール
(大ホールを除く)
401教室(府内学園4階)
13日(日)
14:45~15:45
教育講演(3会場)
13日(日)
14:45~15:45
(学会終了後)
大会議室
大ホール
401教室
(府内学園)
学会審査委員会
産業動物獣医学会
小動物獣医学会
獣医公衆衛生学会
「ホルトホール大分」
404会議室
405会議室
406会議室
大会運営委員会
13日(日)
16:00~18:00
獣医師大会
開会
物故者に対する黙とう
獣医師の誓い-95年宣言
大会委員長挨拶
日本獣医師会長挨拶
功労者表彰
来賓祝辞
農林水産省・厚生労働省・環境省
大分県知事
大分市長
地元国会議員代表
大分県議会議長
祝電披露
学会長・九獣連会長賞等表彰
議長選出
第61回大会経過報告
議案上程 大会宣言
閉会
「ホルトホール大分」
小ホール 13日(日)
18:45~20:30
大会・学会関係者招待懇親会
大会委員長挨拶
歓迎挨拶
「レンブラントホテル大分」
会
大
13日(日)
9:30~10:30
第1楽屋
懇親会
− 147 −
(産業動物学会)
(小動物学会)
(公衆衛生学会)
●会場案内図
至
明野
国道10号線
●ローソン
至 別府
JR日豊本線
JR大分駅
明日香
美容文化
●専門学校
●
ローソン
国道
レンブラント
ホテル大分
号線
210
上野ヶ丘
中学校
●
ホルトホール ●エブリワン
大分
●
大道
小学校
マルショク
東大道店●
府内学園
●
セブンイレブン
●県立聾学校
●
楊志館高校
永冨脳神経
外科病院
●
至 大分IC
− 148 −
交通のご案内
ホルトホール大分・府内学園
大分駅より 徒 歩 約2分
大分ICより
車
約7分
レンブラントホテル大分
大分駅より 徒 歩 約8分
タクシー 約5分
大分ICより
車
約5分
獣医師法第22条の届出について
− 149 −
大分県獣医師確保特別修学資金募集の案内について
大分県獣医師確保特別修学資金
募集のご案内
本県は、卒業後大分県内の指定機関・家畜診療施設で獣医師として勤務することを
志望している獣医学生に対し、修学資金を貸与します。
特に、将来大分県職員獣医師として勤務する方を、絶賛募集中です。
希望は常時受付中。興味のある方がいらっしゃる場合は、ぜひお知らせください。
)
(詳細は
☆貸 与 額 10万円/月 (給付は公益社団法人大分県畜産協会が行います)
☆募集人数 A型修学資金(国事業)、B型修学資金(県事業):若干名
(平成24年度はA型3名、B型3名を募集しました)
☆返還免除要件
A型修学資金:大分県内で産業動物獣医師として家畜診療業務を行うか、
大分県職員獣医師(家畜保健衛生所等)として勤務すること
B型修学資金:大分県職員獣医師として勤務すること
・修学資金貸与期間の1.5倍に相当する期間従事すると、返還は免除されます。
・出身県は問いません。
・原則4∼6年生からの給付を予定
(他学年からの給付も可能。一度お問い合わせください)
・申し込み年度の4月分から給付します。
☆返還措置
修学資金については、規定などに基づく返還措置(全額一括返還)が発生する場合が
あります。
(1)修学資金の貸与が取り消されたとき(別に条件を定めています)
(2)大学卒業後2年以内に獣医師免許を取得し、大分県内に就職することができな
かったとき。
(3)獣医師免許取得後、免除要件の職場に獣医師としての業務に従事した期間が修学
資金貸与期間の1.5倍の期間に満たなかったとき。
なお、返還時は、加算金(年10.95%)を付加する場合があります。
申し込み方法などの問い合わせ先
大分県農林水産部家畜衛生飼料室
TEL
:097−506−3684 FAX:097−506−1762
:
− 150 −
会務通信
事 務 局 日 誌
(平成23年12月11日~平成24年12月10日)
月 日
場 所
12月12日
大分市
12月13日
会 議 名
出席者
第2回理事会・監事会
会長他
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
12月15日
〃
公益法人移行認定申請書 提出
〃
〃
小動物部会症例検討会
12月18日
〃
愛犬飼育講習会
委員長
12月25日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
12月26日
〃
獣医療体制整備推進協議会
会長
1 月10日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
1 月12日
〃
第2回動物看護師講習会
1 月19日
〃
小動物部会症例検討会
1 月24日
〃
防災計画に関する説明会
会長・常務
1 月25日
〃
アライグマ防除対策講習会
常務
1 月26日
〃
平成23年度高度獣医療技術講習会
会長他
〃
〃
大分県公益認定審査会 認可
1 月27日
別府市
岩屋たけし・新春の集い
会長
1 月31日
大分市
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
2月3日
札幌市
平成23年度日本獣医師会学会年次大会
会長
2 月11日
大分市
市民公開講座「愛犬と幸せに暮らすためのしつけ」
会長他
2 月14日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
〃
〃
第4回動物愛護委員会
委員長他
~5日
2 月16日
2 月19日
佐世保市 九獣連会長・事務局長会議
大分市
平成23年度狂犬病関係講習会
会長・常務
会長・委員長
2 月20日
〃
大分県畜産協会理事会
会長
2 月21日
〃
第2回狂犬病対策委員会
委員長他
2 月23日
〃
小動物部会症例検討会
2 月25日
〃
第2回産業動物講習会
部会長
2 月26日
〃
愛犬飼育講習会
委員長他
2 月28日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
〃
〃
大分県動物愛護推進協議会
会長
3月4日
〃
平成23年度動物愛護推進員活動報告会・研修会
会長他
3月6日
〃
大分県畜産協会総会
会長
3 月13日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
3 月22日
〃
第3回理事会
会長他
〃
〃
第4回支部長、事務担当者会議
3 月25日
〃
小動物講習会
部会長
3 月26日
〃
第5回動物愛護委員会
委員長他
〃
〃
平成23年政治連盟収支報告書提出
3 月27日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
3 月29日
〃
第3回動物看護師講習会
− 151 −
常務
月 日
場 所
会 議 名
出席者
4月1日
大分市
公益社団法人大分県獣医師会 移行登記
4 月10日
長崎市
平成24年度九獣連総会
会長・常務
4 月12日
大分市
小動物部会役員会
部会長
4 月16日
〃
4 月17日
東京都
平成24年日本獣医師会理事会
会長
4 月19日
大分市
大分第三支部総会
会長
〃
〃
平成24年度小動物部会総会
部会長
4 月21日
〃
大分支部総会・懇親会
会長
4 月22日
〃
愛犬飼育講習会
動物愛護委員長他
4 月23日
〃
防疫対策会議
4 月24日
宮崎市
平成24年度九州地区学会幹事会
学会幹事・常務
4 月26日
大分市
平成23年度決算監査
監事
〃
〃
第1回三役会議
会長他
5月7日
〃
第1回理事会・支部長会議
会長他
5月8日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
自民党大分県連年次大会
5 月22日
〃
平成24年度産業動物部会総会
部会長
5 月24日
〃
小動物部会臨時総会
部会長
5 月29日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
〃
東京都
平成24年日本獣医師会理事会
会長
5 月31日
大分市
平成24年度通常総会・政治連盟総会
会長他
6月1日
〃
平成24年度公獣協総会・懇親会
会長
6月3日
〃
平成24年度愛犬しつけ講習会(譲渡犬対象)
会長・委員長
6月7日
宮崎市
九州各県・市獣医師会会長、事務局長、事務職員会議
会長他
6 月19日
大分市
第1回動物愛護委員会
委員長他
〃
〃
おおいた肉用牛振興協議会監査会
会長
6 月24日
〃
愛犬飼育講習会
委員長他
〃
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
6 月26日
〃
産業動物部会役員会
6 月28日
東京都
〃
〃
7 月10日
大分市
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
7 月13日
東京都
全国獣医師会事務事業推進会議
常務他
7 月18日
大分市
おおいた肉用牛振興協議会委員会
会長
7 月30日
〃
大分県動物愛護推進協議会
会長
日本獣医師会理事会・第69回日本獣医師会総会
会長・常務
平成24年日本獣医師政治連盟総会
〃
〃
第1回ねこ対策協議会
会長
7 月31日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
8月2日
宮崎市
九州各県・市獣医師会会長、事務局長会議
狂犬病予防及び動物愛護関係合同会議
第1回産業動物部会講習会
会長・常務
8月3日
大分市
8月5日
〃
第1回動物看護師講習会
8 月14日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
8 月24日
玖珠町
畜産共進会大分県予選会
常務
8 月26日
大分市
愛犬飼育講習会
委員長他
8 月28日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
− 152 −
部会長他
月 日
場 所
会 議 名
出席者
8 月29日
大分市
譲渡犬譲渡猫支援事業説明会
9月2日
〃
譲渡犬譲渡猫支援事業説明会
9 月11日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
9 月25日
〃
子犬の譲渡会・動物慰霊祭(動物管理所)
常務
9 月27日
〃
平成25年度九州地区獣医師大会等準備委員会
〃
〃
第1回会報編集委員会
委員長他
〃
〃
第2回動物愛護委員会
委員長他
10月 3 日
〃
第2回ねこ対策協議会
会長
10月 4 日
杵築市
平成24年度大分県特定家畜伝染病防疫演習
常務
10月 5 日
東京都
平成24年度全国獣医師会会長会議
会長・常務
10月 6 日
〃
2012動物感謝デー
会長・常務
10月 9 日
大分市
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
10月14日
宮崎市
第61回九州地区獣医師大会・九州地区学会
会長他
10月18日
大分市
生乳の安全・安心の確保のための大分県協議会
常務
10月19日
〃
不妊手術助成事業 記者発表
会長・常務
10月21日
〃
第2回動物看護師講習会
10月23日
〃
子ねこの譲渡会(動物管理所)
10月24日
〃
第2回平成25年度九州地区獣医師大会等準備委員会
〃
〃
第2回会報編集委員会
委員長
10月28日
〃
愛犬飼育講習会
動物愛護委員長他
10月30日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
11月11日
杵築市
平成24年度動物愛護フェスティバル
会長他
11月13日
大分市
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
11月16日
〃
平成24年度動物愛護推進員委嘱式・研修会
会長
11月20日
〃
子ねこの譲渡会(動物管理所)
常務
常務
11月21日
〃
平成24年度業績発表会
常務
11月22日
別府市
岩屋たけし選対会議
会長
11月24日
大分市
合同選対会議(大分1、2区)
会長
11月27日
〃
子犬の譲渡会(動物管理所)
常務
12月 5 日
〃
第3回会報編集委員会
委員長他
− 153 −
編
集
後
記
2011 年もそうでしたが、2012 年もいろいろ大変なことが起こっていました。
日本経済が2008 年のリーマンショック以来回復していないことも問題ですが、世界では、大きな出来事が
沢山起こっています。ロシア大統領選挙でウラジミール・プーチンが、フランス大統領にオランド、アメリカ
合衆国大統領にバラク・オバマ。中国では、習近平氏が総書記と軍の統帥権を握る党中央軍事委員会主席に選
出された。
世界も大きく変化するであろうが、日本は、総選挙後にどのように変化するのであろうか。
こういう時代であるからこそ、技術力で成り立つ日本においては、もう一度よく考えるべきであろう。
日本人25 年ぶりに、京都大学の山中伸弥教授がiPS 細胞開発でノーベル生理学・医学賞を受賞されました。
日本人として大変喜ばしいことです。今後の展開に大いに期待出来ます。
そして、今回の会報の特別講演には、佐賀大学大学院工学系研究科 先端融合専攻医工学教授・九州大学生
医研 非常勤講師の中山功一先生に再生医療について投稿頂きました。今後大変期待される技術だと思いま
す。1月に福岡にて開催されます麻酔外科学会においてもご講演をお願い致しております。是非、皆さん参加
して再生医療について勉強致しましょう。
名古屋の千村先生の心休まる絵画を今年もお願い致しましたし、湯布院の朝田芽さんのギャグも冴えてい
ます。
大分県獣医師会も公益法人となり、今まで以上に社会貢献しなければいけません。我々は、獣医師という技
術屋である。
こういう時にこそいずれ社会に貢献できるであろう技術を磨くべきである。
日本中で景気が悪い悪いと言いつつも、全然そういうことに関係なく、業績を伸ばしているところも沢山あ
る。
今年は、
充電期間と考えて技術力を上げる為に切磋琢磨してゆきましょう。
委員長 樋 口 雅 仁
− 154 −
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大分県獣医師会館周辺見取図
住所: 大分市西新地1丁目2番29号
電話: 097-555-9527
FAX: 097-555-9528
交通: バス(大分バス本社前)
大洲運動公園行き
(約10分)
西新地入口下車 徒歩2分
至別府
大分県庁
大分市役所
大分
駅
滝尾橋
舞鶴橋
新川交差点
中島交差点
弁天大橋
別府湾
大分川
舞鶴小学校
至明野
創価学会
大分平和会館
水路
市営プール
セブンイレブン
バス停
ナカマビル
市営
陸上
競技場
市民の森
旧ホーバー
乗り場
大分県獣医師会館
帯刀自動車整備工場
新大分球場
至鶴崎方面
■表紙の写真
キツネ踊り
姫島の盆踊りは、鎌倉時代の念仏踊りから発展したものといわれ、毎年8月14、15日に伝統踊り(キツ
ネ踊り、アヤ踊り、銭太鼓、猿丸太夫)が披露されます。
写真の「キツネ踊り」は、以前は大人の踊りでしたが、昭和20年代に大人から子どもの踊りとなり、北
浦地区の子どもたちによって踊られるようになりました。
可愛らしいキツネの化粧とユーモラスなしぐさで人気を集めています。
■裏表紙の写真
アサギマダラ
アサギマダラは、渡りをする優雅な蝶で、年2回姫島に飛来します。
〈5 月 中 旬 頃〉 姫島のみつけ海岸に自生するスナビキソウの蜜を求めて、5月上旬から6月上旬に南の
地から飛来し、休息した後、涼しい北の地に向かって飛び立ちます。
〈10月中旬頃〉 北の地で世代交代した蝶が10月中旬頃、金地区に自生するフジバカマの花の蜜を求め
て飛来し、休息した後、暖かい南の地に向かって飛び立ちます。
《姫島》大分県東国東郡姫島村
瀬戸内海西端の離島で、国東半島の伊美港より北へ 6㎞の地点にある。東西 7㎞、南北 4㎞の東西に長い島。
水産資源に富む地形で、島周辺は魚の宝庫となっています。奇厳断崖の海岸線など風光明媚で瀬戸内海国立
公園の一環をなしています。
大分県獣医師会会報 第23号
平成24年12月22日発行
発 行 所: 公益社団法人 大分県獣医師会
〒870-0901 大分市西新地1丁目2番29号
TEL(097)555-9527・FAX(097)555-9528
発 行 者:
会
編 集 者:
委 員
印 刷 所:
い
麻
生 長 樋
口
雅
づ み 印 刷
長
哲
仁
㈱