新しい入居者の家賃を古くから入居している人の家賃より安くした場合は

新しい入居者の家賃を古くから入居している人の家賃より安くした場合は、
古い人の家賃も同等に下げなくてはいけないのでしょうか?
入居者同士の会話により抗議される人がいます。
お尋ねの件ですが、結論から申し上げますと、古くからの入居者の家賃を下げる必要はあ
りません。
もともと、集合住宅における各部屋の入居者と家主との間の賃貸借契約は各部屋毎の
個別の契約です。それ故、賃貸条件は各部屋毎に個別に設定することができます。
例えば、新築の賃貸マンションにて一斉に新規募集する場合であって、各部屋の広さが全
く同一であっても、上階は階下よりも賃料は高めに設定されるでしょうし、同一フロアであっ
ても角部屋とそうでない部屋とでは賃料の設定が異なる場合もあります。また、各部屋の広
さが区々であれば、広い部屋は狭い部屋よりも賃料が高くなります。
このように、同一の集合住宅であるという理由だけで賃料を同一にしなければならない
理由は無いのです。
要は、契約というのは、契約当事者の合意によって成り立つものですから、同じようなもの
を賃貸する場合であっても、当事者が異なる合意をすれば必然的に契約の内容は異なった
ものとすることができるのです。
次に、一旦契約が成立すれば、その契約期間中は余程のことが無い限り、契約当事者は
成立した合意内容に拘束されることになります。新規募集で隣の部屋の賃料が引下げられ
ても、一旦契約を締結している以上、少なくとも契約期間中は契約どおりの賃料支払義務
があると言えるのです。
他方、契約更新の場合にはどうなるでしょうか。賃料額というのは、賃貸借契約の内容の
一部ですから、賃料の値上げや値下げを当事者の一方だけが決めることはできず、合意が
不可欠となります。すなわち、古くからの入居者から契約更新時に部屋の賃料の値下げを求
められても、家主が了解しない限りは、賃料は契約更新前と同一となります。
以上から、新しい入居者の家賃を古くから入居している人の家賃より低くした場合でも、
古い人の家賃を同等に下げる必要はありません。逆に、新しい入居者の家賃が古くから入居
している人の家賃より高くなっても、古い人の家賃を同等に引き上げることもできませんか
ら、これで公平は保たれていると言えます。
但し、新規に入居者を募集する際に、あまりに大幅に家賃を引下げてしまうと、古い人が家
家賃の値下げを調停等の手続を使って求めてこられた場合、裁判所において、その値下げの
請求が一部認められる可能性はありますので注意を要します。
詳しくは、弁護士にお尋ね下さい。
弁護士 牧野 聡