玉田真奈美さん - 東京造形大学

交換留学報告書
玉田真奈美
領域:グラフィックデザイン / タイポグラフィ
留学先:University of the West of England
期間:2014 年 1 月 20 日 - 5 月 22 日(渡航期間:2014 年 1 月 9 日 - 6 月 20 日)
担当教授:Gabriel Solomons, John-Paul Dowling
研究内容:高齢者と社会をつなぐグラフィックデザインの研究
目次
1. 大学の授業概要と日程について
2. 研究について
3. 事前に知っておくと便利なこと
4. まとめ
1. 大学の授業概要と日程について
❶日程
1 月 13 日
Bower Ashton Campus にて留学生の登録
1 月 14 日
イントロダクション
1 月 15 日
グラフィックデザインのイントロダクション(Typography & Print、Image & Narrative、
Moving Image の 3 つからコースの最終決定)
1 月 17 日
留学生のためのブリストル観光ツアー(ミュージアムやデザイン事務所の見学)
1 月 27 日
グラフィックデザインのイントロダクション
1 月 30 日
授業開始(Typography & Print コースでの最初の課題提出)
2 月 10 日
Inter-semester week(外部からデザイナー等をよび、講義やワークショップを行う。学生は自由
↓
に授業、ワークショップを受講できる。この期間は授業なし)
2 月 14 日
4 月 14 日
イースターホリデー
↓
4 月 25 日
5月7日
Typography & Print の授業、すべての課題の最終提出締め切り
5 月 22 日
Typography & Print の授業、フィードバックと成績を受け取る
6月7日
卒業制作展示
↓
6 月 12 日
❷授業概要
授業の種類は、グラフィックデザインの専門科目と、生徒が自由に参加登録できるワークショップ、留学生
のための授業のプロフェッショナルプラクティス、英語の授業がありました。グラフィックの授業で、私は
Typography & Print の授業を選択しました。コースの選択は、イギリス渡航前に事前に UWE の先生へメールで
伝えていましたが、最終決定はグラフィックデザインの先生の説明を聞き、相談をしながら決定しました。
❸授業内容
Typography & Print の授業では、計 4 つの大きな課題と、その他にシルクスクリーンのポスター制作等の課題
がありました。ディスカッションを大切にした授業が印象的でした。また、2 週間に 1 回程度、外部からデザイナー
やアーティスト、印刷所の人等を招き講義が行われました。様々な人との関わりとディスカッションの中で、自分
自身の作品のヒントを探り、制作していく学生達の様子はとても勉強になりました。留学生同士は仲も良く、ディ
スカッションも活発でしたが、イギリスの学生達と作品について活発に話すためには、十分な語学力が必要だと感
じました。
Typography & Print の授業は、基本的に木曜日の 1 日でしたが、その他にも、授業に関係した作品のためのワー
クショップがあり、インデザインやシルクスクリーンの授業を受講しました。
Typ
y
aph
rin
&P
t
ogr
風景
授業
タイポグラファーを
外部から招き、学生
が達 1 人 1 人のラフ
を見ながらアドバイ
スをくれる。プロが
即興で描くカリグラ
フィーを初めて見た
ので感動。
専門科目以外の授業では、ワークショップでライノカットプリント、陶芸、WEB デザイン、シルクスクリーン
の授業を選択しました。UWE のワークショップ授業のシステムは、UWE のインターネットページか校内にある
で Fabrication Center でワークショップを選択登録し授業に参加します。先生からのレクチャーが行われるのは
最初の登録日の 1 度だけで、あとは登録のみ行い自由に自分の制作をすることができます。また造形大学と異な
る点として、専門の先生が工房に毎日いるので、いつでも分からないことを質問することが出来ることができます。
プロフェッショナルプラクティスの授業では、他の留学生とともにグループでプレゼンテーションを行ったり、
履歴書の書き方のアドバイスや大学での生活についてのレポート、自分のホームページ制作等を行いました。この
授業は留学生のイギリスでの制作活動をサポートするための内容が多く含まれていると感じました。特に、一番最
初に行ったプレゼンテーションでは、お互いの文化の違いについて理解を深め、ひとつの発表を作ることが出来た
のでとても勉強になりました。また、留学生や先生方の前での発表と質疑応答で、度胸をつけることが出来ました。
Wor
ksho
p
授業
風景
と作
品
ライノカットプリント作品
❹制作物
「A thing I've learned in my life so far」
今までの人生のなかで、自分が学んだことを表す言葉を選び、Typography で表現する課題。グラフィックデザ
イナー、Stefan Sagmeister's の作品「A thing I've learned in my life so far」のパロディの課題。今回の課題で
選んだ言葉は Charge to Experience で、経験を積むことから学び、前に進んで行くという意味。モデルは、留学
生の友人に頼み、大学の近くの公園で撮影しました。
「Family monogram」
モノグラムデザインの課題。家族の仲から男女 2 人を選び、頭文字をモノグラムにしました。実際のデザイン作業に
入る前に、家族にインタビューや聞き取りを入念に行い、関連写真を集めて学生同士でディスカッションを行いました。
「Mark, Commemorate, Remember」
「Complex simplicity」
「Everything about one thing」
シルクスクリーンプリントで第一次世
テーマを一つ選び Infographicの
テーマを一つ選び本を制作する
界大戦の記念ポスターを作る課題。
ポスターを作る課題。
課題。
テーマをお茶の文化を選択。
Typography & Print の課題を通して、大学内だけではなく、外へ積極的に出て作品制作に生かしていくことを
大切にしていると感じました。また制作していくプロセスを非常に大切にする授業スタイルでした。
2. 研究について
大学院での研究テーマが、日本の高齢者と社会をつなぐグラフィックデザ
インなので、イギリスにおいても同じ研究テーマで研究を行いました。日本
の、特に東京では、孤独を感じる高齢者が多くいます。実際に孤独死等も
問題になっています。UWE のあるブリストルは、様々なコミュニティセン
ターがあり、積極的な取り組みを行っていることで有名です。今回は Easton
Comunity Center に行き、インタビューを行い、取り組み等について話を伺
いました。
また、ブリストルに来て感じたことは、高齢者達がとてもいきいきしてい
て、自分の人生を楽しんでいるように見えたことです。そのことから、日本
の高齢者へ作品の提案をする際のヒントになると感じ、ブリストルの街で高
齢者にインタビューを行いました。40 名程の高齢者男女とホームレスの男
性 2 名にインタビューを行いました。今回コミュニティセンターや街でのイ
ンタビューに行き、感じたことは、イギリスの高齢者は家族や友人との時間
を大切にしていると同時に、1 人の時間の楽しみ方を知っているということ
です。考え方がポジティブで、毎日に満足しているという高齢者が多くいま
した。インタビューを行った多くの高齢者の共通点は、自然が好きというこ
とです。ブリストルには公園や丘がいくつかあり、高齢者だけではなく、若
い人たちも気軽に自然を楽しんでいます。天気の良い日は、年齢を問わず芝
生に腰掛け、思い思いの時間を過ごしている人達の姿が印象的でした。自然
を楽しむということも、心にゆとりを持つために大切だと感じました。その
一方で、ホームレスの男性 2 人は、目標や希望をもちながらも、人との関わ
りや繋がりを求めていました。また、2 人とも自分の考えていることや信念
を誰かに伝えたいという思いが強いと感じました。
今回の調査では、ブリストルに住む高齢者の生の声を聞くことが出来、作品を制作するためのヒントをつかむこ
とができました。一見ではわからないことも、実際に話すことで分かることが多くあり、とても勉強になりました。
日本でもこのような調査を続けていこうと考えています。
3. 事前に知っておくと便利なこと
❶大学について
事前登録・サインイン
UWE の手続き、渡航後の大学機材の使い方は、少
し複雑だと感じました。UWE のホームページでの登
録は 2 つあり、一つは留学決定前のエントリーのため
の登録と、留学決定後の My UWE というページへのサインインがありました。留
学前に My UWE に証明写真をアップロードしておく必要があり、アップロードせ
ずに行くと、学生カードの発行が遅れます。
大学での印刷
印刷は大学にある Print Center を活用しました。Print Center には、プリントを行っ
てくれる先生が常駐しています。Fabrication Center で、学生カードにクレジットカー
ドでお金をチャージしてもらい、Print Center でプリント後に学生カードから支払い
ます。少し面倒くさいですが、自分の好きな紙も持ち込め、大判も印刷できるので、
慣れればとても便利だと思います。ブックレットプリントも行ってくれます。
バスカード
UWE のバスカードは、大学が斡旋している Accomodation(寮)に入ればもら
えます。WESEX というバス会社で、ブリストル内に多く通ってるバスです。この
カードがあれば、自由にバスを利用することが出来ます。
パソコンの利用
パソコンを大学で使いたい場合は EPI Center というスペースでパソコンを使用
することが出来ました。授業が入っている場合もあるので、EPI Center の外の壁
に貼ってあるタイムスケジュールを確認しながら教室を利用しました。
❷ Accomodation について
チェックイン
私が Accomodation にチェックインした日が土日だったため、施設の窓口の人が
フロントに常駐しておらず、連絡がとるまでとても苦労しました。ドアもオートロッ
クのために中に入れず、中から学生が出てくるまで外で待たなくてはなりませんで
した。その後、緊急連絡先へ電話をかけ、管理人の方に会うことができましたが、
Accomodation には平日に入るよう予約するべきだと感じました。
❸あると便利だと感じたもの
IC レコーダー
授業中、先生の話している内容が聞き取れないこと
が多々あり、課題の説明やデザインに関する大切な話
は、すべてレコーダーに録音して後から聞き直しまし
た。私の場合、インタビューも行ったので、レコーダー
はとても役に立ちました。日本から小型のレコーダー
を持って行きました。
3. まとめ
イギリス、ブリストルでの半年間の留学は本当にあっという間でした。最初の 2 週間は、言葉や生活スタイル
に悪戦苦闘しましたが、留学生の友人が増えるとともに、不安も少なくなり、毎日を楽しむことができました。留
学生同士はとても仲がよく、作品についてお互いに意見を言い合ったり、制作を手伝ったり、様々な面で自分自身
の支えになりました。イースター等の長期の休みには、台湾、香港、オーストリア、スペイン、マレーシア、オラ
ンダの留学生とロンドン、スコットランド、フランス、デンマークに行き、夜になるとお互いの国の料理を一緒に
つくり色々な話しをしました。専攻は映画やイラストレーション等様々でしたが、そのことが自分の視野を広げて
くれました。自分自身の研究の一貫である高齢者へのインタビューでは、台湾からきた留学生の友人が撮影等を協
力してくれました。一人で行うよりも、より充実した内容のインタビュー調査にすることができました。今回の留
学で友人の支えや協力の大きさを、より強く感じました。
大学の授業はすべてが刺激的で私にとってとても新鮮でした。先生の話すグラフィックデザインについての話は、
日本の視点とは少し異なり、その違いも面白いと感じました。英語で分からない点が多くあり、もっと英語を理解
できれば、更に話を深く理解することが出来たと思いました。その点がとても悔しいです。
ブリストルは、毎週のように何らかのアートや音楽等の
イベントがあり、飽きることのない街でした。自然や公園
も歩いてすぐの距離にあり、暮らしやすいと感じました。
また人種も様々で、個人主義の国であることも暮らしやす
いと感じる、ひとつの要素だと思います。町中にある壁に
描かれたアートも、デザインや芸術を勉強する学生にとっ
て、非常に良い環境だと感じました。
イギリスでの生活は、毎日少しづつ自分の狭い視野が広
がっていくようで、本当に楽しく充実したものになりまし
た。そして、多くの人に支えられて、今の自分があること
を実感しました。今回の留学を支えてくださったすべての
人に感謝申し上げます。ありがとうございました。