パートタイム労働者の社会保険と雇用保険の手続き

パートタイム労働者の社会保険と雇用保険の手続きについて
本年の 4 月よりパートタイム労働法
た, 雇用保険の手続きについて本誌2008年 3 月 1 日号
の改正がありましたが, それに伴いパー
から 3 回にわたり 「特集・雇用保険入門 Q&A 」 があ
トタイム労働者の社会保険・雇用保険
りましたが, パートタイム労働者に絞ってもう一度整
の手続きに何か変更がありますか。 ま
理していただけると助かります。
●ポイント
パートタイム労働法の改正によ
り, 社会保険・雇用保険の各種手続
きについては特に変更はない。 社会
保険・雇用保険への加入 (資格取
得) については, それぞれに基準が
あり, 片方の保険だけにしか加入で
きない場合もあるので, 注意が必要
である。
1.
パートタイム労働法改正との関係
本年 4 月からパートタイム労働法が改正になり,
「労働条件の文書交付・説明義務」 や 「均衡のとれ
②労働日数: 1 カ月の所定労働日数が一般社員のお
おむね 4 分の 3 以上である場合
具体例で検証しますと,
①の労働時間は, 一般社員の 1 日の労働時間が 8
時間・ 1 週 5 日勤務 (月曜日から金曜日) の場合,
パートタイム労働者の 1 日の労働時間が 6 時間以上
であれば 1 週 5 日勤務で週30時間以上に, あるいは
週 4 日の勤務の場合なら 1 日の労働時間が7.5時間
以上なら週30時間以上となり, 該当することになり
ます。
②の労働日数は, 一般社員の 1 カ月の労働日数が
24日とした場合, パートタイム労働者の勤務日数が
18日以上であれば該当することになります。
た待遇の確保の促進」 などを行わなければならなく
なお, これら 4 分の 3 以上の判断基準はあくまで
なりました (詳細については, 本誌2008年 3 月15日
も目安の 1 つであり, これに該当しない人であって
号, 4 月 1 日号の 「特集・改正パート労働法への対
も, 就労形態や職務内容などの個々の具体的事例に
応 Q&A」 参照)。
即して, 常用的使用関係にあると認められれば, 被
しかし, 人の入退社などの社会保険・雇用保険の
各種手続き業務にあたっては特に法改正の影響はな
く, 従来どおりのままとなります。
2.
パートタイム労働者の社会保険手続き
パートタイム労働者が健康保険・厚生年金保険の
保険者として取り扱われます (昭55.6.6取扱基準)。
3.
パートタイム労働者の雇用保険手続き
雇用保険の被保険者となるか否かについては, 雇
用保険の適用事業に雇用され, 次に掲げる者以外は
原則として被保険者となります (雇用保険法 4 条 1
被保険者となるか否かについては, 実態的・常用的
項, 6 条)。
使用関係にあるか否かにより総合的に勘案して判断
<被保険者にならない者>
されます。
①65歳になった日以後に, 新たに雇用される者 (高
その判断の基準として同じ事業所で同様の業務に
従事する一般社員との労働時間・労働日数との関係
があり, 具体的には次のとおりです。
<判断基準>
年齢継続被保険者, 短期雇用特例被保険者, 日雇
労働被保険者は除く)
② 1 週間の所定労働時間が同一の適用事業所に雇用
される通常の労働者の 1 週間の所定労働時間と比
次の①および②のいずれにも該当する場合には,
べ短く, かつ30時間未満であるもので, 次の(1)
原則として被保険者として扱います。
(2)のいずれかに該当する者 (日雇労働被保険者
①労働時間: 1 日または 1 週間の労働時間が一般社
は除く)
員のおおむね 4 分の 3 以上である場合
60
労務事情
2008.4.15 №1140
(1) 季節的に雇用される者
(2) 短期の雇用 (同一の事業主に引き続き雇用され
る期間が 1 年未満の者) に就くことを常態とする
者
③日々雇用される者, 30日以内の契約で働く者 (日
雇労働被保険者は除く)
④ 4 カ月以内の期間を予定して行われる季節的事業
に雇用される者
⑤船員保険法の被保険者
⑥国, 都道府県, 市町村などの事業に雇用される者
のうち, 離職した場合に雇用保険法の水準を超え
る給付を受けられると認められる者
上記のように一般社員であろうがパートタイム労
働者であろうが, 適用事業所で雇用されていれば原
表1
一般社員の 1 週間の労働時間が40時間の場合
パートタイム労働者
の 1 週間の労働時間
1 年以上引き続き雇用の見込み
あ
り
な
し
40時間
(フルタイムパート)
被保険者となる
被保険者となる
30時間以上
40時間未満
被保険者となる
被保険者と
ならない
20時間以上
30時間未満
被保険者となる
被保険者と
ならない
20時間未満
被保険者と
ならない
被保険者と
ならない
(注) 表中網掛けの部分は 1 年以上の雇用の見込みがありません
が, 一般社員と 1 週間の労働時間が同じ40時間なので被保険
者となります。
則被保険者となります。
しかし, 実態としてパートタイム労働者の場合,
表2
一般社員の 1 週間の労働時間が35時間の場合
臨時内職的にしか勤務しない場合もあり, 自らの労
働により賃金を得て生計を立てている労働者が失業
した場合に生活保障をするという雇用保険の制度の
主旨を考えると, 被保険者として取り扱うことが必
ずしも適当でない者が含まれます。
そこで, 雇用保険行政では, 1 週間の所定労働時
間が, 同一の適用事業所に雇用される労働者 (一般
社員) の 1 週間の労働時間よりも短く, かつ40時間
パートタイム労働者
の 1 週間の労働時間
しました (行政手引20368)。
① 1 週間の労働時間が20時間以上であること
② 1 年以上引き続き雇用されることが見込まれるこ
あ
り
な
し
35時間
(フルタイムパート)
被保険者となる
被保険者となる
30時間以上
35時間未満
被保険者となる
被保険者と
ならない
20時間以上
30時間未満
被保険者となる
被保険者と
ならない
20時間未満
被保険者と
ならない
被保険者と
ならない
未満である短時間就労者で, 次のいずれにも該当す
る場合に雇用保険の被保険者として取り扱うことに
1 年以上引き続き雇用の見込み
(注) 表中網掛けの部分は 1 年以上の雇用の見込みがありません
が, 一般社員と 1 週間の労働時間が同じ35時間なので被保険
者となります。
と
③その者の労働時間, 賃金, その他の労働条件が就
が, 上記で触れたように要件に該当するのであれば
業規則, 雇用契約書, 雇入通知書等に明確に定め
加入しなければなりませんし, 本人が希望すると否
られていること
とにかかわらず加入しなければなりません。 また,
ここでのポイントは, 一般社員の 1 週間の労働時
加入についても, 社会保険・雇用保険の両保険に加
間よりも短いということです。
具体例で検証しますと,
①一般社員の 1 週間の労働時間が 40 時間の場合
(表 1 )
②一般社員の 1 週間の労働時間が 35 時間の場合
(表 2 )
入, あるいはいずれか一方の保険だけに加入する場
合もありますので注意が必要です。
さらに, 4 月のこの時期は 1 年のうちで入退社の
手続き量が 1 番多く, 行政も大変混雑しますので早
めの対応を心がけましょう。
(㈲人事・労務
チーフコンサルタント
根本大作)
パートタイム労働者だから社会保険や雇用保険に
加入しなくてもよいと思っている人が多いのです
労務事情
2008.4.15 №1140
61