九州工業大学学術機関リポジトリ"Kyutacar"

九州工業大学学術機関リポジトリ
Title
Author(s)
Issue Date
URL
細胞―固相界面の制御設計と細胞応答解析への応用に関
する研究
田ノ上, 知里
2010
http://hdl.handle.net/10228/4868
Rights
Kyushu Institute of Technology Academic Repository
平成22年度
博士論文
細胞-固相界面の制御設計と細胞応答解析への応用に関する研究
田ノ上
主指導教官:春山
知里
哲也
教授
国立大学法人 九州工業大学大学院
目次
1
...................................................................................................... 1
1-1.
......................................................................................................... 3
1-2.
............................................................................ 5
1-3.
....................... 7
1-4.
-
.................................................................................. 8
1-5.
.............................................................................. 13
........................................................................................................ 14
2
(NO)
................. 19
2-1.
....................................................................................................... 21
2-2.
.............................................. 23
2-3.
................................................................................................ 27
2-3-1.
........................................... 27
2-3-2. Western blotting
............................................................................ 29
2-3-3.
...………………………………31
2-3-4.
NO
NO
2-3-5. NO
2-4.
NO
2-4-3.
2-5.
NO
……………… 34
....................................................................................... 35
2-4-1. Western blotting
2-4-2.
.......................................... 33
.................................... 35
NO
................. 37
....................................... 39
....................................................................................................... 41
........................................................................................................ 43
3
(Principal component analysis; PCA) .................. 48
3-1.
..................................................................................................... 50
3-2.
(Principal component analysis; PCA) ....... 52
3-3.
................................................................................................ 57
3-4.
............................................................................................ 59
3-4-1.
NO
3-4-2.
3-5.
................................ 59
..................................................... 61
....................................................................................................... 64
........................................................................................................ 65
4
.................................................................................................................. 69
4-1.
....................................................................................................... 71
4-2.
................................................................ 73
4-3.
......................................................................................... 75
4-4.
PEG
77
4-5.
................................................................................................... 78
4-6.
.............................................................................................. 80
4-6-1.
4-6-2.
4-6-3. X
.................................................. 80
-UV
..................................................... 81
(X-ray reflectometer; XRR)
................................... 85
4-6-4.
................................................................ 87
4-6-5.
.............. 88
4-7.
4-7-1. PEG
.............................................................................................. 89
XRR
........................................................................... 89
4-7-2.
.................................................................................................... 92
4-7-3.
................................ 94
4-7-4.
.............. 96
4-8.
....................................................................................................... 98
.…………………………………………..………………………………… 99
5
PCA
5-1.
.................................................... 105
..................................................................................................... 107
5-2. PCA
................................................................. 108
5-3. PCA
................................................ 111
5-4.
..................................................................................................... 107
......................................................................................................... 116
................................................................................................................ 117
................................................................................................................ 123
.................................................................................................. 124
略語;
Ach, acetylcholine; DPSCA, double potential step chronoamperometry; ECM,
extracellular matrix; eNOS, endothelial nitric oxide synthase; GAPDH, glyceraldehyde
3-phosphate dehydrogenase; HTA, High-through-put analysis; HTS, high
throughput screening; HUVEC, human umbilical vein endothelial cell; mAChR,
muscarinic acetylcholine receptor; MAST, poly(maleic anhydride-co-stylene); 2-MPT,
2-methoxy (polyetyleneoxy) propyl trichlorosilane; NO, nitric oxide; PBS, phosphate
buffer solution; PCA, principal component analysis; PCs, principal components; PEG,
polyethyleneglycol;
polyvinylidene
PLL,
difluoride
poly-L-lysine;
membrane;
PSS,
polystylene
SDS-PAGE,
sodium
sulfonate;
PVDF,
dodecyl
sulfate
polyacrylamide gel electrophoresis; UV, ultraviolet; vWF, von Willebrand factor; XRR,
X-ray reflectometer
第1章
1
序論
2
1-1. 緒言
新薬開発は,専門分野の異なった研究者が学術的に協力し合い、実験と解析
そして評価を重ねながら行われる。律速となる段階は、安全性評価、そして新
薬候補が目的に応じた生体に与える正しい効果を評価する段階である。これら
は、新薬開発において重要であり、新薬候補の中から新薬となりうる薬剤を選
択する道のりは非常に険しく、そして膨大な時間と費用が必要となる 1-3。その
ため、より効率的に新薬候補化合物の発見手法として1990年代欧米の製薬企業
から、従来のスクリーニング規模を遙かに越えるHigh through-put screening
(HTS:高速大量スクリーニング)が生まれた4。HTSとは、機械制御により自
動化されたシステムを用いて短期間に大量の化合物を評価して目的に合った生
理活性化合物を見出す方法である 5。HTSは、創薬研究の初期段階で利用され,
重要な基盤技術の一つとして位置付けられている 6-8。本研究室では、HTS可能
な薬剤スクリーニングシステムを目指し、後に述べる細胞バイオセンシングに
関する研究を行っている。
細胞は基本的に増殖することが可能であり、様々な成長因子などの作用によ
って分化することもできる。また環境変化や外部刺激により起こるダメージを
修復する機構も備えており、細胞の内外で様々な情報伝達を行っている。これ
らの理由から細胞は生体の最小単位であると言われている。そのため、細胞を
材料として用いた細胞バイオセンシングは、細胞応答を検出することで、生体
への影響を評価する事ができ、創薬における薬剤スクリーニングや化学物質の
安全性評価などへの応用が期待されている。細胞バイオセンシングの設計に重
要な事は、細胞の生体機能・活性を維持した状態あること、定量的な応答を得
ることが可能であること、詳細な薬剤評価の為の細胞応答の解析を組み合わせ
ることなどが挙げられる。細胞の生体機能・活性状態を維持するためには、細
3
胞とセンサ基板である固相との接着界面の分子層を設計・構築する必要がある。
また詳細な薬剤評価の為の細胞応答解析として、本研究では、主成分分析法
Principal component analysis; PCA)に着目した。PCAは、行列計算に基づき、
同種類のデータを分類する分析方法である。従来PCAは、IRやNMRなど構造分
析の解析手法として注目され、目的化合物の反応メカニズムの予測や、効果の
ある構造をHigh through-putに特定する手法として用いられてきた9-12。そこで
本研究では、PCAにより細胞応答の解析を試みた。従来の細胞応答解析は、こ
れまでイメージングサイクメトリーなどイメージ画像を用いて行うもの多く、
多くの情報を一度に解析することは困難であった。しかしPCA法は、多くの情
報を一度に解析する事が可能である。よってこのPCA法を用いることで、これ
まで解明できなかった応答や、多情報同士の相関度などまでをも解析できると
期待できる。
本論文では、この細胞―固相界面を目的に合わせて設計・構築・制御するこ
とで、細胞接着特性と細胞信号の選択検出を行う分子界面の構築とPCAによる
細胞機能解析そして細胞応答定量化のための細胞数定数化システムの開発検討
を行った。
4
1-2. 細胞バイオセンシング
バイオセンサとは、生体分子の有する優れた分子認識能を利用して化学物質
を識別し、計測するものである。このとき生体器官を使用した応答材料(生体
素子)として用いられるものは、酵素などの生体触媒、免疫反応に関与する抗
原あるいは抗体、レセプター、結合タンパク質などのタンパク質、微生物、お
よび動・植物細胞、動・植物組織などのほとんど全てを網羅する生体材料であ
り、この生体材料を分子トランスデューサとして用いたセンサのことを一般に
酵素センサ、免疫センサおよび細胞バイオセンサと呼ぶ13-16。また、信号変換部
として最も実用化が進んでいるものが、電極を信号変換部として用いる電極型
のバイオセンサである。細胞バイオセンサを用いて行うセンシングを細胞バイ
オセンシングという。Fig. 1 に細胞バイオセンシングの模式図を示す。細胞バ
イオセンシングは、生体モデルとなる細胞に化学物質または物理的刺激の外部
刺激を与えることによって生じる信号を測定する分析方法である。この信号は、
トランスデューサ部を介して光、電気などに変換され、この信号変換が細胞の
応答となる。細胞応答の挙動を測定することにより、生体への影響を評価する
ことが可能である。そのため細胞バイオセンシングは、High through-putな生
体への影響評価、分析法(High-through-put analysis : HTA)として新薬開発、
安全評価や環境評価などの分野で期待できる17-19。細胞バイオセンシングの実現
のためには、外部刺激に応答して細胞発信するさまざまな信号(物質分泌・放
出、あるいは膜電位変化など。以下、細胞応答とする)が測定対象となり、目
的のセンサに応じて、どの細胞信号を選択してHTA系を構築するかが重要とな
る。そして、その測定対象に対応した多様なバイオセンシングの方法開発が必
要となる。本研究では、生体に対する薬剤の影響までも評価できるセンサデバ
イスの開発を目指した。
5
Fig. 1 細胞バイオセンシングの概要図
6
1-3. 薬剤評価に応用可能な細胞バイオセンサデバイスの構築
先にも述べたが、本研究では、生体に対する薬剤の影響までも評価できるセ
ンサデバイスの開発を目指した。細胞バイオセンサデバイスを構築するために
は、特に以下に記載する3つの項目が重要な課題となる。
-
細胞が生きた状態で、細胞の機能を維持している
-
応答定量化や再現性向上のため、細胞数を一定にする
-
細胞応答の解析を組み合わせることでシステム化を行う
細胞を用いる解析において、共通して言えることは、細胞の機能・活性状態を
維持しておくことが重要であるということである。細胞の機能や活性は、細胞
の培養環境状態と接着環境の状態に依存している事が近年の研究でわかってい
る
20-22
。例えば、Ingber 氏らは、細胞の接着領域により、細胞内タンパク質、
DNA の産生量が変化することを肝実質細胞の接着領域を制御することにより
明らかにした
23。更に、同氏らは、細胞が接着している総面積が細胞の生死を
決めているわけではなく、細胞が伸展していることが重要であることも報告し
ている。このように細胞の生死、活性や機能維持には、細胞と接着する基板と
の細胞―固相界面に大きく影響する
23。そこで、本研究では、細胞―固相界面
の化学分子を設計・構築することで、評価目的に合わせた細胞機能を維持する
ことが可能な分子界面設計を行うことを目的とした。そのためには、細胞の接
着メカニズムに基づく設計が必要である。次章では、細胞と固相の接着メカニ
ズムについて述べる
7
1-4. 細胞-固相接着界面
前章でも記述したように本研究では、細胞―固相界面の化学分子を設計・構
築することで、評価目的に合わせた細胞機能を維持することが可能な分子界面
設計を目指した。そのため、本章ではまず細胞の接着メカニズムについて述べ
る。
Fig. 2 に細胞と細胞外マトリックス (ECM) の関係を示す。細胞とその足場
である ECM との接着は、細胞膜表層に存在するインテグリンと ECM に存在す
るインテグリン結合サイトを介して行われる 24, 25。ECM は、糖タンパク質、プ
ロテオグリカン等からなる複合基質であり、その ECM に存在するインテグリン
結合配列を有する分子であるコラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン
などにインテグリンが結合することで細胞が接着できる
25-27。特にフィブロネ
クチンは、細胞の固定化材料として最も用いられるタンパク質である。フィブ
ロネクチンは、細胞接着性がある RGD 配列(Fig. 3)を有する分子量 44 万の糖タ
ンパク質であり、Fig. 4 に示すように 2 本のサブユニットがカルボキシル末端
近くでジスルフィド結合した構造をしている。さらにフィブロネクチンは、ア
ミノ末端からフィブリン、へパリン、フィブロネクチン、バクテリア―コラー
ゲン―フィブロネクチン―インテグリン(細胞接着)―へパリン―フィブリン
と相互作用するドメインが存在し、細胞を接着させる重要なタンパク質である
28-30。また、フィブロネクチンは、細胞の接着、伸展、移動、増殖、分化に深く
関わっており、細胞機能を考える上においても重要である。
細胞膜上でこのフィブロネクチンと結合する受容体が、インテグリンである。
インテグリンは、α鎖とβ鎖を有するヘテロ二量体の細胞膜貫通受容体タンパ
ク質である(現在、16 種類のα鎖と 8 種類のβ鎖が報告されており、α鎖とβ
鎖の組み合わせにより認識するペプチド配列が異なる
8
31, 32。インテグリンが
ECM のインテグリン結合配列を認識すると、Focal Adhesion Kinase (FAK)な
どの細胞内タンパク質のチロシンリン酸化、細胞内部で増殖シグナルに関連す
る Mitogen-Activated Protein Kinase (MAPK)の活性化、細胞生存に関わる
PhosphoInositide 3-Kinase-Akt (PI3K-Akt)経路の活性化、細胞骨格を制御する
Rho ファミリー低分子 G タンパク質の活性化が起こる。このように細胞が足場
である ECM に接着することは細胞の増殖、分化、生存などの細胞周期に関わっ
てくる 22, 33。
9
Fig. 2 細胞接着界面の構造
10
Fig. 3
RGD 配列
11
Fig. 4 フィブロネクチンの分子構造
12
1-5. 本研究の目的と意義
創薬市場において HTA 技術が求められていることを 1-1 に示した。特に細胞
を用いたセンシング技術である細胞バイオセンシングは、HTA な薬剤スクリー
ニングに応用可能な技術であると考え、1-2 では細胞バイオセンシングについて
記述した。本研究では薬剤が生体に与える影響をもスクリーニング可能なセン
サデバイスの構築を目指した。本研究目的であるセンサデバイスを構築するた
めに必要な事項を 1-3 で述べ、その中で最も重要である細胞と固相の接着界面
制御について 1-4 に記載した。
本研究では測定目的に合わせた細胞-固相設計・構築を行い、それに応じた細
胞応答を選択的に得る事が可能であり、かつそこで得られた細胞応答信号を新
規解析手法により解析を行うことで、薬剤の詳細な生体への影響を分析するシ
ステム開発を目的とした。さらに、細胞応答の定量化・再現性向上を目指し、
細胞数を一定化する新規細胞アレイ化プロセスの開発を行い、細胞接着環境に
よる細胞状態の影響を評価することを目的とした。
本章では、実践的な薬剤評価に応用可能な細胞接着型センサデバイスを設計
する意義等について記述した。第 2 章では、細胞-固相接着界面の構築、細胞接
着型センサデバイスを用いた生体機能モデル分子評価、電気化学的薬剤評価に
ついて述べる。第 3 章では、第二章で得た細胞応答を新規解析手法として主成
分分析(PCA)法を用いた解析結果について述べる。さらに第 4 章では、細胞接着
領域制御のための新しいプロセス開発について述べ、第 5 章ではそれを用いた
新規単一細胞の状態評価について述べる。最後に、第 6 章では、以上を総括し、
今後の展望を述べる。
13
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18
3-D
cellular
morphogenesis.
第2章
細胞接着型センサデバイスの構築と一
酸化窒素(NO)測定
19
20
2-1. 緒言
細胞は生体機能発現の最小単位であり、環境変化や外部刺激により起こるダ
メージの修復を行う機構1-4や受容体結合による細胞内のイオン調整機能5, 6など
様々な機能を備えており、細胞の内外で様々な情報伝達を行っている。そのた
め細胞は、様々な外部ストレスに応じた化学的・物理的応答を示す7, 8。微弱な
細胞応答を検出できれば、化学物質の安全性評価や医薬品開発における候補物
質のスクリーニングへ応用することができる。そこで本研究室では、細胞とセ
ンサ系とを融合し、化学物質や物理要因が細胞・組織へ与える影響を測定する
ことが可能なセンサデバイスの開発を目指した。このコンセプトに基づいた技
術として細胞バイオセンシングに着目した。
細胞バイオセンシングは、生体モデルの細胞に化学物質または物理的刺激を
与えることによって生じる変化を測定することにより生体への影響を評価する
新しい分析法である。本研究室では NO の産生挙動に着目した。生体内での NO
は血管内皮細胞、神経細胞など様々な細胞種で産生し、血管弛緩因子、神経情
報伝達分子として働き、血圧調整や神経伝達など多様な生理作用に関与してい
る 9-13。そのため NO をターゲットとする細胞バイオセンシングは様々な細胞バ
イオアッセイに用いられている
14-16。本研究では血管で産生放出し、血管弛緩
因子として働いている NO に着目し、細胞バイオセンサデバイスには生体モデ
ルとして正常ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を用いた細胞接着型センサ
デバイスを構築した。しかし生体血管モデルとして構築した細胞接着型センサ
デバイスが、生体本来の機能を維持し、生体組織モデル化センサデバイスとし
て機能できるかを評価する必要がある。そのため刺激受容や NO 産生に関わる
タンパク質を評価マーカーとして、通常培養の細胞と細胞接着型センサデバイ
ス上で培養した細胞とで各マーカータンパク質の発現を比較し、細胞接着型セ
21
ンサデバイスの生体組織モデル評価を行うことを目的とした。本章では本研究
室で設計・構築した細胞バイオセンシングデバイスの構造と生体組織構造モデ
ルとしての機能評価について記す。
22
2-2. 細胞接着型センサデバイスの設計と構築
組織は、細胞が接着し合うことで構造を形成し、細胞間の物理的および分子
的な結合によって、細胞一個とは異なる機能を発現している
17, 18。また哺乳類
細胞は、細胞同士だけでなく、固相に接着した状態でなければ増殖および生存
できないという特性を有する。この接着は細胞表面にあるタンパク質と、細胞
外にあるタンパク質(ECM)との相互作用などによるが、これは単に接着する
だけでなく、細胞機能発現および維持に必要な様々な役割を担っている。この
ように複雑な高次化機能を有する哺乳類の培養細胞や培養組織を用いたバイオ
アッセイの構築においては、生体本来の機能が維持されていなければならない。
本研究室では HUVEC を用いた細胞バイオセンシングを行うにあたって、細胞
接着機能を有するセンサ材料を開発し、生体本来の機能を維持したまま細胞と
センサを一体化した細胞接着型センサデバイスの設計を行ってきた。
本研究室で構築した細胞接着型センサデバイスの模型図を Fig. 5 に示す。
本研究では血管内皮で産生放出する NO に着目した。そのため、ヒト臍帯静脈
血管内皮細胞(HUVEC)を生体モデル細胞として選定した。生体内での NO は、
血管内皮細胞内で産生した後、血管内皮細胞の接着側に位置する平滑筋細胞と
結合する。この結合により、血管弛緩を誘導する。Fig. 5 で表わすように、本セ
ンシングデバイスは、センサと細胞を一体化させているため、放出した NO の
放出挙動を下側から、つまり細胞接着側から測定することが可能である。その
ため本デバイスは、血管生体モデルを模倣した生体モデル型細胞バイオセンシ
ングデバイスである。
このデバイスは、細胞と電極界面の設計が重要となる。ここではその細胞-固
相界面設計について述べる。始めに電極上にセンシングマトリックス相を形成
した(Fig. 6)。センシングマトリックス相は、Fig. 6 にも示すように、poly-L
23
lysine と poly-(4-stylene sulfonate) の静 電的 作 用 によ り 合成 し た polyion
complex を用いて形成した。この polyion complex は、膜内に多数の孔を有する
19-21。この孔は、poly-L
lysine と poly-(4-stylene sulfonate)の混合比によりサイ
ズを変えることが可能である。よって polyion complex は、孔サイズよりも大き
な分子は通過させないという分子ふるい効果を有する。さらに、センサデバイ
スに細胞接着機能を付与するため、本研究では、センシングマトリックス相上
に細胞接着相を形成させた(Fig. 7)。細胞接着相は、Fig. 7 に示すように、細胞
接着性マトリックス高分子としてスチレンーマレイン共重合高分子を用いた。
この高分子は、構造の末端に細胞接着配列である RGD 配列を有する。またこの
高分子は、両親媒性の構造を有し、センサ膜上に被覆する際、疎水側である RGD
配列が上向きに配列するよう設計してある 22。
よって本細胞接着型センサデバイスは、電極上で直接細胞を培養する機能を有
し、それにより平滑筋細胞に作用する NO を連続的にモニタリングすることが
可能である。そのため細胞接着型センサデバイスは high through-put な薬剤ス
クリーニングツールとして有用であると考えられる。
しかし、この細胞接着型センサデバイス上で培養した HUVEC が生体内と同
様の状態を保っているかが問題となる。
24
Fig. 5 細胞接着型センサデバイスの模式図
25
Fig. 6 polyion complex を有したセンシングマトリックス相
Fig. 7 細胞接着マトリックス相の構造
26
2-3. 実験方法
2-3-1. センサ分子界面上の生体組織モデル評価
細胞は、培地中に含まれる細胞接着タンパク質がフラスコ上に吸着し、そこ
へ細胞膜表面上に存在するインテグリンが結合することで接着する。一方、細
胞接着型センサデバイス上の細胞は、電極表面上の Mast-peptide 側鎖にある細
胞接着配列 RGD 配列に細胞膜上のインテグリンが結合し、電極上に固定化され
ている。このように、細胞接着型センサデバイス上に存在する細胞は、通常細
胞と接着している状態が異なる。そこで本研究では、通常培養した細胞と細胞
接着型センサデバイス上で培養した細胞が、NO の産生放出に関わる機能に相違
が生じるか評価することを目的とした。
NO 産生放出機能への影響を評価するため、センサデバイス上で培養した細胞
の NO 産生に関与する機能タンパク質の発現を Western Blotting 法により確認
した。NO は、様々な機構から産生放出されることが知られているが、その機構
の詳細が明確になっている機構は少ない。そこで本研究では、産生機構が明ら
かとなっているアセチルコリンを介した NO 産生プロトコールに着目した。ア
セチルコリンは、細胞膜上のアセチルコリン受容体と結合することで、細胞内
のイノシトール 3 リン酸 (IP3) 量を増幅させる。IP3 は、小胞体膜上にある IP3
レセプターと結合し、小胞体内から細胞内にカルシウムイオン(Ca2+)を放出さ
せる。Ca2+はカルシウム結合タンパク質であるカルモジュリン(CaM)と結合し
複合体を形成する (Ca2+/CaM)。NO は、この複合体が血管内皮型 NO 合成酵
素
(eNOS)を活性化させ、 L-シトルリンを L-アルギニンに変換させるときに
放出される 11, 13。
本研究では、NO 産生機能に関わるタンパク質として、NO 合成酵素(eNOS)
23, 24、ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR。サブタイプ、m1,m3,m5)
27
を選択した 13。次に細胞活性の指標タンパク質として、von Willebrand factor
(vWF)、β-Actin、GAPDH を選択した。von Willebrand factor (vWF)は血管内
皮細胞内で産生するマーカータンパク質である。よって vWF は、血管内皮マー
カーとして選択した。β-Actin および GAPDH は、全ての真核細胞内に内在する
タンパク質である。評価マーカーを定量する指標であるハウスキーピングタン
パク質は、β-Actin および GAPDH を選択した 25, 26。
28
2-3-2. Western Blotting 法
Western Blotting 法は高感度にタンパク質の発現確認を行える方法である。
動物細胞発現系ではほとんどの場合、導入蛋白質の発現が全体の 1%以下である
ため、CBB 染色でなく、Western Blotting で検出するのが一般的である。これ
は電気泳動によってゲル中に分離した蛋白質をニトロセルロース、PVDF など
のメンブレンに転写した後、目的とする蛋白質を抗体反応によって検出する方
法である 23, 27。
まずは HUVEC の培養条件について述べる。HUVEC の通常培養は 6 穴シャ
ーレ上で行った。細胞接着型センサデバイスは、通常用いられる培養器、シャ
ーレなどと比較すると大変小さい。そのため、細胞接着型センサデバイス上で
培養した HUVEC の評価は 6 穴シャーレに細胞接着高分子、Mast-Fib1 を被覆
した細胞接着型センサデバイスモデルを構築し、その上で培養した HUVEC を
用いて行った。
それぞれの条件で培養した HUVEC は、PBS で洗浄後、細胞溶解緩衝液であ
る RIPA buffer (PIERCE)を 85 µl/穴加え、溶解した。その後、HUVEC を溶解
した RIPA buffer を 5 倍濃縮し、RIPA solution とした。
Western blotting を行うため、RIPA solution 中のタンパク質は 12.5%ポリア
クリルアミドゲルを用いて SDS-PAGE 電気泳動により分離した。その後、メタ
ノール処理したポリフッ化ビニリデン(PVDF)メンブレン、泳動ゲルをセミド
ライブロッティング装置に設置し、15V、100mA で 2 時間通電した。通電後、
タンパク質が転写された PVDF メンブレンを SuperBlock Blocking Buffer
(PIERCE)に 1 時間浸してブロッキングを行った。Tween-PBS で洗浄後、抗体
反応を行った。
一次抗体反応は、1/200 倍に希釈した評価目的タンパク質の一次抗体溶液に
29
PVDF メンブレンを 1 時間浸し行った。洗浄後、発光分子であるペルオキシダ
ーゼ(HRP)を有した構造の二次抗体を用いた。反応終了後、各タンパク質の発現
は、HRP による発光測定で確認した。
30
2-3-3. ダブルパルスポテンシャルステップ法
本研究ではダブルパルスポテンシャルステップ法を用いて電気化学的 NO 測
定を行った。ダブルパルスポテンシャルステップ法は Fig. 8 に示すようにパル
ス電位を 2 段階印加する方法である。
始めに 30 秒間 0mV を印加し、初期状態とする。NO の酸化電位は 750mV で
ある。750mV のパルス電位のみを印加すると、NO の他に夾雑物質も酸化する。
そのため、Fig. 8 に示すように、まず 700mV(0.5s)の電圧を印加し、夾雑物質を
酸化させる。続いて 750mV(0.25s)電位を印加し、その差異を NO の電流応答値
とすることでより選択的に NO の電流応答値を得た 22, 28。
また定電圧測定のように、同じ電圧を連続的に印加する方法を用いると、時
間経過とともに、夾雑物質が電極表面に拡散してくるため電流応答値が上昇し、
NO の挙動を長時間モニタリングする事が困難である。しかし本研究で用いたダ
ブルパルスポテンシャルステップ法は、パルス電位を一定時間間隔で 2 印加す
るため、上記のように夾雑物質が拡散してきたとしても、NO の電流応答値のみ
を得ることができる。つまり、ダブルパルスポテンシャルステップ法は、長時
間の NO 産生挙動をモニタリングする方法として適している。
以下、電気化学的 NO 測定は、ダブルパルスポテンシャルステップ法により
行った。
31
Fig. 8 ダブルパルスポテンシャルステップ法の概念図
32
2-3-4. 標準 NO 溶液用いた NO センシング評価
電気化学 NO 測定は、三電極系で行った。作用極に金電極、対極に Pt 電極、
参照極に Ag/AgCl 電極を用いた。Ag/AgCl 電極は銀線を洗浄後、希塩酸中でア
ノード分極を行い、塩化銀をコーティングして作製した。対極には、Pt 電極を
用いた。測定装置には HZ-3000 を用い、ダブルパルスポテンシャルステップ法
により測定を行った。
Standard NO solution(STD. NO sol.)は、0.1mM HANKS Buffer 8ml に Ar
ガスを 1h 通気させ、脱酸素を行った。その後 8% NO 含有 Ar ガスを 30min. 通
し、100 µM standard NO solution を調製した 14, 22, 28。標準NO測定は、調整
した 100 µM を 50 nM、200 nM、1000 nM に希釈し、使用した。
33
2-3-5. NO 誘導剤および NO 阻害剤による NO 産生挙動評価
NO 誘導剤としてアセチルコリン(ACh)を選択した。2-5 でも記したが、ア
セチルコリンが血管内皮細胞膜状にあるアセチルコリンレセプター(AChR)と
結合すると、AChR の細胞内側に結合している G タンパク質(Gq)が活性化し、
IP3 が産生する。産生した IP3 は小胞体膜状にある IP3 レセプターに結合し、小
胞体内から細胞内に Ca2+を放出させる。放出した Ca2+は CaM と結合し、eNOS
を活性化させ NO が産生する
11, 13。NO
の産生を阻害する物質は多数存在する
が、本研究では eNOS に拮抗的に結合し、酵素活性を抑制する阻害剤と AChR
に結合している G タンパク質 Gq の活性を抑制する G タンパク質に対する阻害
剤 を 選択 した 。 eNOS の阻 害剤 とし て はジ フ ェニ ルヨ ード ニウ ム塩 化 物
(diphenylene iodonium)を、G タンパク質阻害剤としては Gp アンタゴニストを
選定した。
NO 産生挙動評価は、2-3-4.と同様の条件で電気化学測定を行った。また阻害剤
評価のセンシングは、阻害剤処理した HUVEC を用いた。阻害剤処理は、細胞
接着型センサデバイス上に diphenylene iodonium および Gp アンタゴニストを
添加し、1 時間、37℃、5%CO2 存在下でインキュベートすることで行った。
34
2-4.結果および考察
2-4-1. Western Blotting による生体組織モデル評価
マーカータンパク質発現確認は、Western Blotting 法を用いて発光で確認し
た。Fig. 9 は、通常培養および細胞接着型センサデバイス上で培養した HUVEC
の機能タンパク質の発現確認結果である。血管内皮型一酸化窒素合成酵素
(endothelial nitric oxide synthase; eNOS)、ムスカリン性アセチルコリン受容
体(muscarinic acetylcholine receptor; mAChR m1,m3,m5)の発現は、両方の
培養環境上で培養した細胞から確認できた。つまり、細胞接着型センサデバイ
ス上で培養した HUVEC は、アセチルコリンを介した NO 産生機能を保持した
状態で固定化されていることが明らかとなった。
また vWF、β-Actin、GAPDH も両培養条件下で発現を確認した。β-Actin、
は、細胞死が起こるとき、消失することがわかっている。また GAPDH は、培
養環境の低下により、増殖することが分かっている。細胞接着型センサデバイ
ス上で培養した細胞から得られたこれらのマーカータンパク質の発現量は、通
常培養した細胞から得たそれらの発現量と相違ないことがわかった。よって
HUVEC は、細胞接着型センサデバイス上で細胞死を起こすことなく接着し、
NO 産生機能も維持していることがわかった。以上の結果より、本研究で設計し
た細胞-固相界面は、HUVEC の細胞活性と NO 産生挙動を有した生体モデルデ
バイスであることを示唆した。
35
Fig. 9 NO 産生メカニズムに関与するマーカータンパク質の発現プロファイ
ルの比較
36
2-4-2. 細胞接着型センサデバイスを用いた電気化学的 NO 測定
始めに、本研究で構築した細胞接着型センサデバイスの NO 測定特性を検討
するため、緩衝液に溶解させた標準 NO 溶液を用いて NO の電気化学測定を行
った。NO 測定は、金蒸着基板上に Poly-L-lysine/Poly-styrene sulfonate の
polyion complex 膜を被覆したセンサデバイスを使用して行った。標準 NO 溶液
は、50, 200, 1000nM に調製した標準 NO 溶液を用いて、ダブルパルスポテン
シャルステップ法により行った。結果を Fig. 10 に示す。
Fig. 10 に示すように、NO 濃度 50nM を印加した時、電流応答値に大きな差
異が見られなかった。しかし NO 濃度 200nM の標準溶液を添加した時、電流応
答値は、添加前後で明らかな違いが観察できた。さらに NO 濃度 1000nM の標
準溶液を添加した時は、添加前後で約 0.08mA の応答差が見られた。これらの
結果より、細胞接着型センサデバイスは、NO 濃度に依存した電流応答値を示す
ことが明らかとなり、さらに本デバイスを用いることで nM オーダーの NO が
測定可能であることが明らかになった。このことから、細胞培養型センサデバ
イスは電気化学的手法により NO 測定が可能であり、NO の濃度に依存した電
流応答値を得ることができることから、細胞から放出される微量な NO 放出挙
動をモニタリングすることができると考察した。
37
Fig. 10 細胞接着型センサデバイスを用いた NO 測定評価
38
2-4-3. 細胞接着型センサデバイスによる薬剤評価
Fig. 11 は、細胞接着型センサデバイスを用いて、電気化学的 NO 測定を行っ
た結果である。この測定では、NO 産生阻害剤として mAChR のアンタゴニス
ト で あ る Gp antagonist と eNOS のアンタゴニストである diphenylene
iodonium を用いた。阻害剤を添加していないデバイス(Fig. 11 の no inhibitor)
の場合、電流応答値は、NO 産生誘導剤である ACh を添加後すぐに上昇した。
一方各阻害剤を添加したデバイス(Fig. 11 の 1mM diphenylene iodonium およ
び 1mM Gp antagonist)を用いた場合、電流応答値は、ACh の添加有無に関わ
らず上昇が見られなかった。また、阻害剤を用いた場合、どちらも似た応答挙
動をとっており、阻害剤の強度を比較する事は困難であった。
よって本研究室で構築した細胞接着型センサデバイスは、阻害剤による NO
の阻害効果をみることができ、かつ NO 誘導剤を用いた場合、生体モデルから
産生放出される NO の産生挙動までも連続的にモニタリングすることができた。
この結果より、細胞接着型センサデバイスは生体モデルからの細胞信号変換を
シームレスに行うことができると考察する。これらの結果より、細胞接着型セ
ンサデバイスは HTA な薬剤スクリーニングが可能な NO センシングデバイスで
あり、各種薬剤を用いた実験結果から医薬開発における HTA システムとしての
活用が期待できる。
39
Fig. 11 細胞接着型センサデバイスを用いた細胞応答モニタリング結果
40
2-5. 結言
本章では、細胞が固定可能であり、かつ分子ふるい効果を有するセンサマト
リックス層を有する細胞接着型センサデバイスを構築した。さらに本研究では
構築した細胞接着型センサデバイスの細胞―固相の生体組織モデル評価と細胞
信号の選択測定を目的とした。
本研究では電気化学的手法の中から、ダブルパルスポテンシャルステップ法
という手法を用いて NO の測定を行った。ダブルパルスポテンシャルステップ
法は 2 段階でパルス電位をかける方法で、NO の電流応答値をより選択的に得る
ために用いた。
まず構築したセンサデバイスを用いて、NO を測定することが可能であるか調
べた。NO の電流応答値は NO 濃度に依存した値を示すという結果が得られ、
細胞培養型センサデバイスは電気化学的手法により NO 測定が可能であると考
察した。
実際に細胞接着型センサデバイスで薬剤スクリーニングをするため、NO 誘導
剤、NO 阻害剤の選択を行った。NO 誘導剤として ACh を選択した。また阻害
剤は、eNOS に拮抗的に結合し、eNOS の働きを抑制し、NO 産生を阻害する
diphenylene iodonium とGタンパク質である Gq の活性化を抑制し、IP3 の増
加を防ぎ、NO 産生を阻害する GP アンタゴニストを選択した。はじめにこれら
の添加刺激による電極に対する影響を調べた。それぞれの薬剤をセンシングし
た結果、電流応答値は得られなかった。よってこれらの添加刺激は細胞接着型
センサデバイスに対して影響を与えないということが明らかになった。
実際に、NO 誘導剤、NO 阻害剤による NO センシングを行った。その結果、
ACh のみを添加した時、添加直後に電流応答値が上昇したが、diphenylene
iodonium および Gp アンタゴニストで処理したデバイスに ACh を添加しても
41
電流値は変化しなかった。このことから、ACh は NO 産生を誘導し、diphenylene
iodonium および Gp アンタゴニストは、NO の産生を阻害していることが示さ
れた。
よって本研究室で構築した細胞接着型センサデバイスは、HTA な薬剤スクリ
ーニングが可能である NO センシングデバイスとして期待できる。
42
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47
第 3 章 新細胞応答解析法
(principal component analysis; PCA)
48
49
3-1.
緒言
細胞を用いた解析は、イメージング画像による解析が主流であり、多くの情
報を一度に比較しているものは少ない 1-5。しかし、細胞応答というのは、一つ
の事柄で生じているのではなく、複数の機構が関与しているものである。そこ
で本研究では、大量のデータを統計数値解析する手法、主成分分析(Principal
component analysis; PCA)法に着目した。ここでは細胞解析の必要性について
記す。
細胞を用いた分析は、バイオセンサに関わらず、デバイスの状態、個々の細
胞の状態などの影響で、外部刺激に対応した細胞応答を正確に評価することが
困難である場合がある。Fig. 12 に例を挙げる。細胞を用いた薬剤評価を行った
場合、薬剤を同濃度で添加した直後、全てのサンプルで細胞応答が上昇してお
り、さらに各応答は、Fig. 12(a) に示すように異なる応答を示す場合がある。し
かしこれらの応答は、波形の形状を比較すると、全て一致し、同じ応答挙動を
示していることがわかる。このように単純に波形の形状を比較することで、こ
れまで困難であると考えられていた、細胞応答の定量、再現性の向上、正確な
応答評価が可能である。
そこで本研究では、経時変化などの多量な情報から得られる波形データを解
析する手法である PCA 法を用いることで、第 2 章で得られた薬剤評価を解析し、
さらに詳細な薬剤効果・性能を評価することを目的とした。本章では、PCA 解
析についての詳細と実際に薬剤評価を解析することで得られた結果を元に、こ
れまで分析することが困難であった詳細な薬剤効果の違いまでをも考察した結
果を述べる。
50
Fig. 12 波形による比較の利点
51
3-2. 多変量データと主成分分析(principal component analysis; PCA)
構造の解析や定量的な測定を行う場合、調べたい物質の特性や量を数値で得
ることができる。構造解析を例にとって考えると、調べる物質の分子量、反応
に起因している構造を測定・分析により得る。このように調べたい物質の特性
を表わすものが何であるのかを表わす数値を説明変数と定義する(Table 1)。 そ
してこのように多くの説明変数を持っているデータを多変量データと言う 6。
ある構造からこのような説明変数を得た時、次に考える事は、 この説明変数の
中で、なにか特別な因子があるのではないか、または、類似しているものはな
にであるかなど、サンプル間における相関性である。Fig. 13 にサンプル間の相
関の表わし方について示す。これらの相関は、変数が 2 個である場合、各説明
変数を軸とし、プロットすることで、 2 次元で関係性を表わすことが可能であ
る。よって、サンプル間の類似性は明解となり、一目で関係性を判断する事や
アウトライナーの除去も容易に行うことができる。しかし変数が増加した場合
の相関は、2 変数と同様の方法を用いた場合、多次元での比較が必要であること
から、2 次元のように簡単に関係性を明示することは困難である。 そこで、こ
の多次元を 2 次元に圧縮することで、容易に比較する解析手法、主成分分析
(principal component analysis; PCA)法に着目しました。 この手法は、IR
や NMR を用いた波形による構造分析結果を解析することで、反応にもっとも
関与する反応構造の特定や、目的化合物の反応メカニズムを特定する方法とし
て、近年用いられている 7-10。
PCA は、経済学の分野などが発祥の統計手法であり、複数の変数間の相関(共
分散)を少数の合成変数で説明することが可能である。また PCA は、共分散行
列の固有値問題の解として得ることができる(式(1))。Fig. 14 に上記の概念図
を示す。
52
X  T  P  E ・・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
Xは、サンプルの各説明変数の数値データを表わした行列である。これらを主成
分行列Tとローディング行列Pに分裂させることで得られる11-14。
本研究では細胞から得られたNO応答をPCA解析によってデータ解析を行っ
た。
53
Table 1 多変量データの概念
54
Fig. 13 多変量データの相関比較図
55
Fig. 14 主成分分析の概念図
56
3-3. 実験方法
Table 2 は、2-4-2.および 2-4-3.の結果を PCA 解析するためにセットしたデー
タの概念図である。本研究では、ダブルパルスポテンシャルステップ法で 30 秒
ごとに NO の産生挙動を測定した。そのため、説明変数は、30 秒ごとの測定時
間に対する NO 応答値とした。PCA 解析は、R 言語により統計数値解析プログ
ラミングを組み、行った。
57
Table 2 主成分分析の概念図
58
3-4. 結果と考察
3-4-1. 波形主成分分析による標準 NO センシング解析
Fig. 15 の結果は、第 2 章で測定した標準 NO 溶液を用いた電気化学的 NO セ
ンシング評価 (Fig. 10) を用いて PCA 解析を行った結果である。各測定結果は、
1 点に圧縮し(PC 点)、得られた点を主成分分布(PC1 vs. PC2 の 2 次元分布)に
プロットした。
Fig.15(a)は、第 2 章で得た標準 NO センシングを(b)には、PCA プロット結果
を記した。Fig. 15(b) に示すように、各 PC 点は、NO の濃度に依存して各濃度
の PC 点が点在していることが明示された。特に Fig. 15(a) で大きな応答を示
した標準 NO 濃度 1000nM の場合、PCA プロットでは、50nM, 200nM とは異
なり大きく右側に分かれて点在した。この結果より、高濃度における NO の測
定挙動と低濃度における NO の測定挙動の形状に大きく違いが見られると考察
した。さらに低濃度領域においても、50nM, 200nM で左右に離れて点在するこ
とが明らかとなった。
これらの結果から、細胞接着型センサデバイスを用いた NO 応答測定法と PCA
法を共に用いることで、低濃度領域側までをも応答挙動の違いを明確にするこ
とが可能であるということを示唆した。
59
Fig. 15 標準 NO 溶液を用いた NO センシング結果と PCA 解析結果
60
3-4-2. 主成分分析法による薬剤評価解析
Fig. 16 に第 2 章で測定した細胞接着型センサデバイスを用いた薬剤評価の解
析を行った。阻害剤を添加していないデバイスは、阻害剤を添加したデバイス
の PC 点に比べ、大きく左右に離れた位置に PC 点を示した。この結果から、阻
害薬剤の有無は、PC1 軸に依存している事が分かった。また、阻害剤を添加し
た場合、各 PC 点は、どちらも左側に集合して点在したにも関わらず、各阻害剤
の違いに依存してそれぞれが上下に離れた位置を示した。電気化学的な測定結
果のみでは、これらの阻害効果を見ることができなかったが、PCA 解析を行う
ことで、阻害剤違いにより NO の応答挙動に違いが生じることがわかった。こ
れらの結果より、PCA 解析は、阻害剤の添加の有無を明視することができ、ま
た阻害する箇所、機構の違いをも分析するができるという可能性を示唆してい
る。
さらに Fig. 17 は、標準 NO 溶液を用いた NO センシング結果を PCA 解析し
た結果と上記の薬剤評価を PCA 解析した結果を合わせたグラフである。この 2
つの解析結果を合わせることで、1mM アセチルコリンを添加した場合、細胞は
約 1000nM の NO を放出する可能性があることがわかった。さらに、阻害剤を
用いた場合、Fig. 16 と同様に阻害剤の違いにより、分布が分離しており、かつ
各分布が標準 NO 溶液濃度 50nM, 200nM の分布と重なる事がわかった。特に
受容体に対する阻害を行った場合、細胞は 200nM の NO を放出している事がこ
の結果から明視できた。この結果から、受容体に対する阻害は NO 合成酵素に
対する阻害よりも阻害率が小さいと結果が考察できた。
本研究室で構築した細胞接着型センサデバイスは、PCA 解析と組み合わせる
ことにより、薬剤が生体に与える違いを明確に区別することができる薬剤安全
性分析システムとなりえると考察する。
61
Fig. 16 薬剤評価結果と PCA 解析結果
62
Fig. 17 標準 NO 溶液を用いた NO センシング結果と薬剤評価結果を
合わせた PCA 覚醒結果
63
3-5. 結言
本章では、多変量データの概念とその相関の比較に関する詳細を記述した。
多変量データは、多くの説明変数を保持したサンプルの集合であり、それぞれ
の相関の比較は容易ではない。そのため、主成分分析(PCA)を用いる方法を
述べた。
PCA は、複数の変数間の相関(共分散)を少数の合成変数で説明することが
可能である。従来 PCA 解析は、IR や NMR など構造分析の解析手法として用
いられ、メカニズム探索などに応用されてきた。しかし本手法は、細胞応答解
析への応用されていない。本研究では、細胞のように多くの情報が関わる解析
にこそ PCA 解析が必要であると考え、PCA 解析を行った。
はじめに、標準 NO 溶液を用いた NO センシングの結果を解析した。その結
果、標準 NO 濃度 1000nM の場合、50nM, 200nM とは異なり大きく左右に分
かれて点在した。さらに低濃度領域においても、50nM, 200nM で左右に離れて
点在することが明らかとなった。この結果より、各濃度における NO 応答挙動
の違いを明視することができ、さらに、これまで比較することが困難であった
低濃度領域までをも定量的に比較することができることを示唆した。さらに薬
剤評価の結果を解析することで、阻害剤の有無、阻害箇所の異なる阻害剤が細
胞に与える影響の違いを考察することが可能となった。そして各条件における
NO の定量分析をも可能であることを示唆した
この PCA と本研究で行った細胞接着型センサデバイスで行う薬剤評価を組み
合わせることで、さらに詳細な薬剤に対する細胞応答の違いを明視することが
できるシステムを構築する事が可能である。
64
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67
68
第4章
細胞接着界面制御のための細胞アレイ
作成プロセスおよびシステムの開発
69
70
4-1. 緒言
細胞に応用するバイオマテリアルでは、材料表面と生体物質の相互作用が鍵
であり、細胞との相互作用、つまり細胞の接着の抑制、または促進といった制
御が重要である
1-3。また、再生医療の分野は、様々な細胞に分化できる
ES 細
胞などの分化制御が重要であるが、細胞の接着する足場領域の面積を変えるこ
とにより分化の制御が行えるという報告もされている 4-6。細胞の足場の制御は、
次世代の医療に必要不可欠である。
近年、この細胞の足場を制御し、細胞接着/非接着領域を任意に分けることで
細胞接着領域をパターニング、もしくはアレイ化する技術が研究されている。
この技術は、基板材料の表面の局所的な改質によって細胞接着分子(フィブロ
ネクチン、または細胞接着配列を保有する短鎖ペプチド)の吸着・固定領域を
任意に制御し、細胞の接着領域、つまり細胞の足場を制御する技術である。次
世代のバイオテクノロジー、特に High though-put なドラッグスクリーニング
による創薬の迅速化、単一細胞の機能評価、等様々な方面で応用が可能である
と期待されている技術である。
現在、細胞接着/非接着領域を任意に制御する主な方法は、2 つある。1つは、
フォトリソグラフィー法である 7, 8。この方法は、半導体の製造過程で高精度な
微細加工を行うことができることから大変有効であるが、クリーンルーム、マ
スクアライナーなど大型な機械が必要であり非常にコストがかかること、工程
が複雑であること、加工できる材料が限定されること、などいくつか問題点を
抱えている。もう1つの方法は、ソフトリソグラフィー法である 9-16。この方法
は、様々な材料に任意なパターンを行うことができるが、パターンとなる鋳型
は、フォトリソグラフィー法で作製するため結果的に同じ問題点を抱えている。
そこで、これらの問題を解決するために本研究では、オゾン曝露により材料表
71
面を局所的に改質することで簡便に細胞の足場を制御し、細胞接着/非接着領域
を分ける High though-put な技術を開発した。本研究では、この技術について
検討を行い、得られた結果を本章で報告する。
72
4-2. 細胞アレイ化基板作成の意義
細胞アレイ化基板を作成する技術は、1990 年代に現れた。初期の研究では、
Ingber 氏らが、細胞の接着領域により、細胞のタンパク質(アルブミン)、DNA
の産生量が変化することを肝実質細胞の接着領域を制御することにより明らか
にした。結果、細胞接着領域が小さいほどタンパク質産生量は、増し、また時
間経過に伴う産生量の低下も少なかった。また、同氏らは、幅 10 µm のライン
状に細胞接着領域をパターン化し、血管内皮細胞を培養したところ、細胞増殖、
アポトーシス共に抑制され、細胞ラインの中央に管の形成が認められたと報告
している(因みに 30 µm 以上のラインの場合、管形成は見られなかった)1。
更に、同氏は、細胞が接着している総面積が細胞の生死を決めているわけで
はなく、細胞が伸展していることが重要であることも報告している。一辺が 5
~40 µm のサイズの細胞接着領域を作成した結果、大きな領域では、細胞は生
存したが、小さい領域では、細胞がアポトーシスを起こした。さらに直径 20 µm、
50 µm の領域、および 5 µm の領域を 10 µm の間隔で並べた培養基板を作り、
その基板に細胞を播種した結果、20 µm の領域では細胞はアポトーシスを起こ
し、5 µm の領域では、生存し続けた。一方 5 µm の領域の場合、細胞は領域間
をまたがり広がって接着し、アポトーシスを起こさなかったと報告している。
更に、細胞接着の領域は、細胞の分化機能にも影響する。Christopher 氏らは、
間葉系幹細胞(骨髄中に存在する幹細胞であり、骨や脂肪に分化する)の接着
領域の面積を変えることにより、間葉系幹細胞の分化を制御できたと報告して
いる。接着面積が小さい場合(面積 1.0 mm 2)、細胞は球状になり脂肪細胞に、
接着面積が大きい場合(面積 10.0 mm 2)、細胞は、扁平な形になり骨芽細胞へ
分化したと報告している 2。
更には、細胞の接着する領域と細胞の移動する方向の関係も報告されている。
73
George M. Whitesides 氏らは、細胞の接着領域を涙型や三角形にし、その後非
接着領域を接着領域にすることで細胞接着領域の形と細胞の移動する方向の関
係を評価した。その結果、80 %の細胞が涙型形状の場合、尖った形状とは反対
側に移動することが示され、細胞接着領域の形状と細胞の極性には関係がある
ことが分かった 17。
このように細胞接着の制御により細胞の生死、分化機能、細胞極性の制御が
可能であることが示唆され、細胞機能の解明、更には細胞の機能制御に有効で
あると考えられている。更に、細胞接着領域を制御する技術は、細胞をアレイ
化する細胞アレイ技術、細胞チップ技術、細胞を用いたバイオセンサ、また複
数種の細胞を同一基板上で培養する異種細胞培養、幹細胞の分化制御などの再
生医療、など様々な応用技術が期待されている。従って、細胞接着を制御する
技術の意義は大きい。
74
4-3. 細胞接着領域
第 1 章でも記述したが、細胞とその足場である ECM との接着は、細胞膜表
層に存在するインテグリンと ECM に存在するインテグリン結合サイトを有す
るタンパク質(細胞接着性タンパク質)を介して行われる。そのため、細胞接
着領域を制御する事は、細胞接着性タンパク質が吸着できる領域と吸着できな
い領域を制御することである。そこで細胞接着性タンパク質の吸着のメカニズ
ムについて述べる。
タンパク質の吸着を考える上で、重要な概念がいくつか報告されている。1
つ目に“親水性・疎水性表面”がある。タンパク質は、アミノ酸の重合体であ
るために、分子内に親水部と疎水部がある。疎水性材料表面では、水溶液との
間の大きな界面自由エネルギーを解消するために、界面にタンパク質が吸着す
る。一方、親水性材料表面では、水溶液との間に大きな自由エネルギーがない
ためにタンパク質の吸着は起きないと考えられる。
2 つ目に“電荷を有する表面”がある。Tengvall らは-COO-, -SO3-, -OH,
-OC(O)CF3, -CH3 の 5 種類の自己組織化単分子膜(SAM)を作製し、その SAM
表面へのタンパク質吸着を調べた。その結果、-OH 表面のような電荷を持たな
い表面より-COO-, -SO3-,のような電荷を有する表面へのタンパク量が多いと報
告している 18-20。
3 つ目に“水素結合性表面”がある。電荷を有さない親水性表面には、水素結
合形成時のプロトンのドナーまたはアクセプターになる極性基を有する 2 種類
の表面がある。Whitesides らは、フィブリノーゲンとアミド結合をするアルカ
ンチオールを用いて、プロトンのドナーまたはアクセプターになる極性基の違
いがタンパク質の吸着量にどのように影響するかどうかを実験した。その結果、
表面にプロトンのドナーとなる官能基がある場合より、表面に水素結合のアク
75
セプターとなる官能基がある場合の方が、タンパク質非吸着性があると報告し
ている 21。
4 つ目に“立体斥力が働く表面”がある。代表的な化合物として、水溶性でか
つ高い運動性を有するポリエチレンオキシド(PEO)がある。PEO は、鎖の運動、
そしてその排除体積効果がタンパク質の吸着を抑制する。現在、最もタンパク
質吸着を抑制するために用いられている 18。
5 つ目に“ミクロ不均質性”がある。これは、親水・疎水、結晶・非結晶、表
面の凹凸など不均質な構造を有する材料をブロック共重合、グラフト共重合、
ポリマーブレンドなどの手法で構築し開発されている 22。
以上、述べてきたようにタンパク質の吸着現象は、様々な要因が絡んで引き
起こっており、様々な側面から研究され、吸着の制御の確立が望まれている。
本研究でも、タンパク質の吸着を制御することが重要であり、本研究では“立
体斥力が働く表面”の代表であるポリエチレングリコール(PEG)を基板上に
修飾させ、タンパク質非吸着領域基板を作製した。
76
4-4. 細胞接着タンパク質吸着阻害分子(ポリエチレングリコール;PEG)
ポリエチレングリコール(PEG)は、タンパク質の吸着を抑制することで知
られている
23。本研究においても、細胞接着性タンパク質の吸着を抑制するた
めに用いている。
PEG は、無電荷であるが、水溶性を示し、そしてベンゼン、トルエンなどの
多くの有機溶媒にも可溶であるという特殊な化学的性質を併せ持つ高分子であ
る。PEG は、主鎖の炭素原子上にある非共有電子対によって1モノマーユニッ
ト当たり6つの水分子と結合していることが報告されている。水溶液中では
C-O 結合が trans 配座、C-C 結合が gauche 配座をとり、らせん形になり、単結
合のまわりの回転が容易であるため、極めて柔軟な構造をしている。このため、
分子の熱運動によって極めて高い運動性(フレキシビリティー)を示す。
非イオン性であり水溶性高分子である PEG を材料表面に被覆すると、表面の
親水性は向上するとともに表面電荷もゼロに近づくため静電相互作用による吸
着が低減する。また、自由エネルギーの観点から考察すると、PEG 上にタンパ
ク質が吸着した場合、PEG と水との相互作用が減少してエンタルピーが増加す
るとともに、吸着による立体構造の自由度の減少と浸透圧の低下によりエント
ルピーが減少するため、PEG とタンパク質の吸着状態は熱力学的に不安定な構
造をとることになる。従って、タンパク質の吸着を抑制できるのである。
このような要因から、PEG のタンパク質の非特異吸着抑制能は、群を抜いてお
り、バイオマテリアル分野において頻繁に使用されるのである。
77
4-5. オゾン
オゾンは、強力な酸化力を持つことから、利用範囲が広く、現在水中の有機
物分解から調理場の殺菌まで使われている。オゾンは、酸素に紫外線、放射線
照射そして無声放電などを行い、高いエネルギーを持つ電子と酸素分子の衝突
を起こすことによって発生する。本項では、本研究に関係のある紫外線による
オゾンの発生機構についてのみ言及する。
オゾンが発生する原料となる酸素は、酸素原子の吸収スペクトル中のシュー
マンルンゲ帯中の、連続帯に属する 130~175 nm(紫外線)の光を吸収すると
基底状態の酸素 O(3P)と励起状態の酸素 O(1D)に解離する。そして、発生した励
起状態の酸素 O(1D)が酸素分子と衝突し、再結合するとオゾンが生成する 24。
オゾンは、双性イオン構造(双性イオンとは、1 つの共鳴構造式において、2
つの反対に荷電した元素を持つ中性分子である)で存在し、中心の酸素原子は
形式的に正電荷をもっている。オゾンの末端酸素原子は部分的に負に荷電して
いるが、酸素‐酸素多重結合のため、正に荷電した中心酸素原子の求電子的な
性質を寄与されている。このため、オゾンは、電子密度の高い部分に求電子攻
撃ができる。
またオゾンは求電子的であるため、電子密度の高いπ結合等に求電子攻撃し、
モロゾニド化合物、更にオゾニドと呼ばれる環状構造化合物を経て、有機化合
物の酸化分解を行う。こういった酸化分解作用を持つため様々な工業用途に用
いられる。
更にオゾンは、活性酸素種の原料にもなる。オゾンから活性酸素種を発生さ
せる方法は、様々あるが、本論文では、本研究と関係がある紫外線併用法につ
いて言及する。オゾンは、254 nm の紫外線を吸収すると励起酸素原子と一重項
酸素を生成する。発生した励起状態の酸素原子と水が反応するとヒドロキシラ
78
ジカルが発生する。ヒドロキシラジカルは、活性酸素の 1 種であり、反応速度
はオゾンより高く、従って酸化力も高い
25-28。本研究で用いるオゾン装置は、
無声放電により発生させたオゾンを庫内に充満させ、254 nm の紫外線を用いて
オゾンからヒドロキシラジカルを発生させる。オゾンから自然分解した酸素を
185 nm の波長の紫外線を用いてオゾンに戻し、オゾン装置内のオゾン濃度の低
下を防ぐ構造となっている。本研究ではこれらのオゾン、更にヒドロキシラジ
カルの特性を活かして PEG 修飾基板表面の分子層レベルでのエッチングを行っ
た。
79
4-6.
実験方法
4-6-1. タンパク質非吸着ガラス基板の作成
細胞非接着領域は、細胞接着タンパク質吸着を抑制する分子である PEG をガ
ラス基板表面へ修飾することによって作製した。PEG 修飾は、8M 水酸化ナト
リウム水溶液により親水化処理したガラス基板を用いた。10% 2-メトキシ(ポ
リエチレネオキシ)プロピルトリクロロシラン(2-MPT)/トルエン溶液を 2 枚の
ガラス基板で挟み、85℃条件下で 2.5 時間反応させることにより PEG 修飾基板
(細胞非接着基板)を調整した。
80
4-6-2. オゾン-UV 有機分子層エッチング
本研究で開発したオゾン-UV 有機分子層エッチングは、タンパク質非吸着ガ
ラス基板に任意のステンレスシートマスクを密着させた基板を静置し、オゾン
曝露を行う方法である(Fig. 18)。タンパク質非吸着ガラス基板である PEG 修
飾ガラス基板にステンレスマスクを密着させる。このとき、ガラスとステンレ
スマスクの間に水を挟み、密着力を向上させた。この基板をオゾン雰囲気下に
静置することで、Fig. 18 にも示すようにマスク孔の部分の PEG のみオゾンと
反応し、変性する。つまり、マスクデザインに依存して PEG が直接変性するた
め、有機分子層レベルで PEG 相をエッチングする。曝露終了後、細胞接着性タ
ンパク質であるフィブロネクチンをエッチング部位に吸着させ、細胞を接着さ
せる。以上のプロセスが本研究で開発したオゾン-UV 有機分子層エッチングプ
ロセスである。
Fig. 19 は、使用したステンレスマスクのパターンデザイン図を示す。ステン
レスマスクは、多様なサイズの孔が任意の間隔で並んだパターンを保持してい
る。孔のサイズは、Fig. 19 上部から HUVEC 細胞 1 個分から 4 個分に調整した。
さらに孔同士の間隔も、HUVEC 細胞 1 個分から 5 個分に調整した。このステ
ンレスマスクを用いることで、細胞接着の領域、そして細胞同士の間隔も任意
に制御する事が可能である。
オゾンは、プラズマ放電式オゾン発生装置(UV-オゾン処理装置、コトヒラ工
業株式会社)で発生させ、曝露庫内に充填させた。タンパク質非吸着ガラス基
板は、オゾンを充填させた庫内に静置した。オゾン曝露反応時は、UV 光(154 nm
/ 285 nm)を 9 分間照射させた。
細胞接着領域は、オゾン-UV によりエッチングされた領域に細胞接着性タン
パク質であるフィブロネクチンを吸着させ、形成する。オゾン-UV 曝露したガ
81
ラス基板は、0.01% フィブロネクチン/PBS 溶液中に浸漬し、37℃、5%CO2 雰
囲気下のインキュベータ内に静置する。細胞アレイ化ガラス基板は、任意の位
置にフィブロネクチンを吸着させたガラス基板上に 10 cells/cm2 HUVEC を播
種し、37℃、5%CO2 雰囲気下インキュベータ内で 1 時間接着させ、その後、PBS
で洗浄することにより得る。
82
Fig. 18 オゾン-UV 有機分子層エッチングのプロセス
83
Fig. 19 オゾン-UV 有機分子層エッチングのプロセス
84
4-6-3. X 線反射率法(X-ray Reflectometer; XRR)測定
PEG に対するオゾン、ヒドロキシルラジカルの影響を調べるため、基板表面
解析手法として X 線反射率法(X-ray Reflectometer; XRR)を用いて膜厚測定を
行った。XRR は、X 線を試料表面に極浅い角度で入射させ、その入射角対鏡面
方向に反射した X 線強度プロファイルを測定する手法である(Fig. 20)。薄膜に X
線を極浅い角度で入射させると、薄膜の表面と薄膜/基板界面および各界面で反
射した X 線が互いに干渉する。反射してくる干渉した X 線(プロファイル)は、
その物質の膜厚、密度、界面のラフネスに応じて、特有の振動構造を示す。Fig.
18 のグラフに示すように、このプロファイルを解析することで薄膜の膜厚、密
度、ラフネスを評価することが可能である 29, 30。
XRR 測定に用いる基板は、指標としてスライドガラス基板、PEG 修飾基板、
そして PEG 修飾基板にオゾン-UV 処理を行った基板の 3 種類を選択した。XRR
測定は、斜入射 X 線分析装置(PANalytical 製 X 線回折装置)を用いた。X 線
出力は、45 kV・40 mA とし、CuKα1 線を利用した。
85
Fig. 20 XRR の概念図
86
4-6-4. フィブロネクチン免疫染色
本研究では、フィブロネクチンの吸着領域を確認するため、免疫染色法を用
いた。免疫染色は、抗原抗体反応を利用して目的のタンパク質を染色する技術
である。
4-6-2 に記載したようにオゾン-UV 有機分子層エッチング法を用いて作成し
たアレイ化ガラス基板は、0.01 mg/ml フィブロネクチン溶液(GIBCO 溶媒
PBS(-)溶液)に浸し、1 時間静かに攪拌した。1 時間後、2 ml の PBS(-)溶液を入
れ、10 分間攪拌し、洗浄した。各穴に Super Block Blocking Buffer – Blotting
in PBS (Thermo scientific)を 2 ml 入れ、1 時間攪拌した。その後、再び PBS(-)
溶液を 2 ml 入れ 10 分間攪拌し、洗浄し、この作業を三回行った。1次抗体で
ある Rabbit anti Fibronectin (MP Biomedicals. Inc.)を各穴に 4 μl 入れ、1 時間
攪拌した。再び PBS(-) 溶液を 2 ml 入れ 10 分間攪拌し、洗浄し、この作業を三
回行った。二次抗体である Goat anti rabbit IgG (MP Biomedicals. Inc.)を各穴
に 4 μl 入れ 40 分間攪拌した。再び PBS (-)溶液を 2 ml 入れ 10 分間攪拌し、
洗浄し、この作業を三回行った。最後に PBS (-)を各穴に 2 ml 入れ、蛍光顕微
鏡(Nikon)で観察した。この時、フィルターは B 励起フィルター(490/515 nm)
を使用した。
87
4-6-5. 細胞内エステラーゼ活性および核染色による細胞活性評価
エステラーゼは、エステル結合を切断する酵素として知られており、主に生
細胞を評価する指標として使用される。本研究においても、生細胞の存在を確
認するためにエステラーゼ活性を測定した。測定には、Calcein-AM(同仁化学
研究所(株))を用いた。Calcein-AM 自体は、蛍光を示さないが、細胞内のエ
ステラーゼによってエステル結合を切断され(加水分解)、膜不透過性で、強い
黄緑色を発する Calcein になる。この Calcein の発光を指標にエステラーゼ活性
を見ることができる。
核染色は、細胞の核を染色する方法である。一般的に DAPI や Hoechst など
の試薬が使われる。これらの試薬は細胞核内に存在する DNA の AT 配列に優先
的に結合し、特定の波長を照射すると蛍光を発することが知られている。本研
究では、Hoechst を使用し細胞の核を染色した。次にカルセインとヘキストに
よる 2 重染色の方法について述べる。
細胞培養した細胞接着制御基板を 2 ml の HEPES で洗浄し、再び HEPES を
2 ml 入 れ 、 0.5 µg/ml の Hoechst33342
(Trihydrochloride, trihydrate
(Invitrogen))と 0.2% Calcein‐AM を入れた。30 分後、2 ml の HEPES で洗
浄し、新しい HEPES を 2 ml いれた。次に蛍光顕微鏡をエステラーゼ活性を観
察する場合 B 励起フィルターを、核を観察する場合 UV 励起フィルターに設定
し観察した。
88
4-7.結果と考察
4-7-1. PEG 層の XRR 解析
XRR により PEG 修飾基板の薄膜の膜厚、密度を解析した結果を Fig. 19 に
示す。測定対象を下記に記す。
①:PEG 修飾基板
②:オゾン曝露した PEG 修飾基板
③コントロール:PEG 未修飾ガラス基板
Incident angle0.3℃の時、③コントロール:PEG 未修飾ガラス基板の反射率
曲線は、①および②の反射率曲線は異なる。つまり、③と①,②とでは基板界
面の密度が異なる事を示唆している。そのため、①および②の反射率曲線は形
成された膜の構造を反映していると考えられる。また①と②を比べると、Fig.
21 中に矢印で示した領域に反復の差異が認められる。この領域がオゾン曝露の
影響を反映すると推察される。オゾン曝露により PEG がすべて除去された場
合、②の反射率曲線は PEG 未修飾ガラス基板の曲線に近づくはずである。し
かし、①と②が類似しているため、PEG 構造の一部が残存している可能性が高
いと考えられる。この結果から、本研究では PEG に対するオゾン-UV エッチ
ング効果を Fig. 22 に示すようなプロセスで起こると予測した。
PEG の c-c 結合部位にヒドロキシルラジカルが反応し、エテニル基(c=c)を産
生する。オゾンは、エテニル基と結合することで、エテニル基を分解するとい
うことが知られている。そのため、固相にトリクロロ基を固定させたまま、上
部が分離したのではないかと考察した。
89
Fig. 21
XRR 解析を用いた細胞接着界面に対するオゾン効果評価
装置名:PANalytical 製 X 線回折装置
電圧・電流:45 kV・40 mA
X線波長
:Cu Kα1線
入射分光器:X線集光ミラー+Ge220x2結晶
90
Fig. 22 予測した PEG に対するオゾン-UV 有機分子層エッチングの効果
91
4-7-2. フィブロネクチンの免疫染色による細胞接着性タンパク質吸着エリアの
制御評価
Fig. 23 にフィブロネクチンの免疫染色法による細胞接着領域の評価結果を示
す。図中の左部にマスクの写真を記す。フィブロネクチンは、ステンレスマス
クと同様、円状の領域に吸着し、その領域以外の吸着がみられない。どの領域
においても同じ結果が得られた。この結果から、本法により、ステンレスシー
トマスクのパターン通りにフィブロネクチンの吸着を制御することができたこ
とが明らかとなった。従って、任意の位置をオゾン曝露することによって PEG
が酸化され変性・分解したことが分かった。
92
Fig. 23 フィブロネクチンの免疫染色結果
93
4-7-3. 付着性哺乳類細胞を用いた細胞接着領域の評価
Fig. 24 に接着領域を制御した HUVEC 細胞を示す。4-7-2.と同様、細胞もス
テンレスマスクの孔の箇所のみに接着した。また細胞は、孔のサイズそして孔
同士の間隔もマスクデザインに依存して接着した。以上の結果から、オゾン-UV
は、ステンレスマスクの孔部分のみの PEG を変性させ、さらにその箇所のみに
細胞が接着したことが明らかとなった。本法は、ステンレスマスクとオゾン-UV
を用いることで、直接 PEG 相を変性させ、容易に細胞接着領域の制御が可能で
あることを示唆した。本法を用いることで、付着性動物細胞であるならば、ど
のような細胞においてもアレイ化が可能であると考察した。
94
Fig. 24 オゾン-UV 有機層エッチング法による細胞接着領域制御基板
95
4-7-4. 細胞内エステラーゼ活性および核染色による細胞活性評価
Fig. 25 に接着領域を制御された各細胞種のエステラーゼ活性と核染色の様子
を示す。4-6-5.でも記したように、エステラーゼは、エステル結合を切断する酵素と
して知られており、主に生細胞を評価する指標として使用される。細胞死を起こした場
合、エステラーゼ量が著しく減少する。また細胞核も細胞死を引き起こした場合、肥大
する事が知られている。
本法でアレイ化された HUVEC 細胞は、Calcein による緑の蛍光を示した。
これにより、アレイ化された HUVEC は、エステラーゼ活性を保持したまま、
接着領域を制御されていることが明らかになった。また、核も肥大することな
く、見地では全ての細胞核が同じ大きさを保っている事が明らかとなった。従
って、本手法は、生細胞の接着領域を制御することができ、かつその細胞活性
も維持した状態で接着領域を制御できることが示唆された。
96
Fig. 25 エステラーゼ活性と核染色結果
97
4-8. 結言
本章では、オゾン-UV により有機分子層を分子レベルで直接エッチングする
ことにより、細胞接着性タンパク質の吸着を防ぐ PEG を修飾した基板の任意の
位置を構造変性させ、細胞接着領域を作成した。また、フィブロネクチンの吸
着評価、および付着性哺乳類細胞(HUVEC 細胞)を用いた細胞接着制御領域
の評価を行った。
細胞接着領域は、作成した PEG 修飾基板に任意のパターンを加工したステンレ
スシートマスクをのせ、オゾン曝露することにより、オゾン、またはオゾンと
水と 254 nm の紫外線から発生するヒドロキシラジカルが、PEG を酸化・分解
することで、細胞接着領域(タンパク質吸着領域)を作製した。更に、上記の
方法を用いて、細胞接着/非接着領域が制御可能であるかを評価するため、細胞
接着性タンパク質であるフィブロネクチンを塗布し、免疫染色法で評価した。
その結果、フィブロネクチンは、任意のパターン通りに吸着していることが明
らかとなった。次に、HUVEC 細胞を用いて評価した。その結果、HUVEC 細
胞は、全ての任意のパターン通りに接着していることが明らかとなった。更に
接着領域を制御された細胞のエステラーゼ活性を調べた。その結果、細胞は、
エステラーゼ活性を保持したまま接着制御され、生きたまま接着を制御されて
いることが明らかとなった。また、細胞接着領域の面積と接着細胞数の相関を
調べた結果、接着細胞数は、細胞接着面積が小さくなると減少することが分か
った。また、各面積当たりの接着細胞数は、差異は少なく、再現性が高く、誤
差の総平均が 10%となった。従って、接着細胞数を定数化できることが示唆さ
れ、細胞を用いた分析基板やバイオセンサに応用できる可能性が示唆された。
98
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103
104
第 5 章 PCA を応用した単一細胞状態解析
105
106
5-1. 緒言
第 4 章では、細胞-固相界面を制御することにより、接着領域を制御するオゾ
ン-UV 有機分子層エッチング法について報告した。本法は、任意のステンレス
マスクを用いることで接着する細胞数を制御する事も可能である。そこで本研
究では、本法を用いて細胞 1 個(単一細胞)で行う細胞状態評価を行った。細
胞は、1-4.項でも述べたように接着状態、培養環境などに依存して細胞内のタン
パク質発現量、細胞応答機能、細胞内組織の大きさなどが異なる。本研究では、
細胞個体そのものが上記に記すような個々の機能、タンパク質量を保持した状
態を細胞状態と定義づけた。
単一細胞で行う評価は、従来分化のメカニズム特定や細胞組織工学に応用さ
れている
1-5。例えば、Petr
氏らは、ウイルスによる細胞への害を定量化するシ
ステムを単一細胞で行っている 6。彼らは、ウイルスを接着細胞に播種すること
により、細胞同士の接触の変化、核の肥大度合い、細胞周期の変化を測定して
いる。その結果を元に得られるイメージ画像のプログラミング解析を行うこと
で、活性が減少度合い、細胞死を起こしている細胞等を簡単に識別することに
成功している 6。彼らは、このシステムを応用することで、ウイルスによる汚染
度合いを High through-put にスクリーニングできると考察している。このように
単一細胞で行う評価は、細胞工学分野において非常に高い需要がある。そこで
本研究では、同じ細胞培養環境下にある細胞の状態を比較することで、センサ
に応用する際の細胞応答安定化を細胞状態から検討する事を目的とした。本章
では、第 4 章で報告したオゾン-UV 有機分子層エッチング法を用いることで、
単一アレイ化させた細胞の状態評価を PCA により解析を行った結果を報告する。
107
5-2. PCA 解析の為のデータ作成
第 3 章では、主成分分析 (PCA)について述べたが、ここで再度説明を加える。
Fig. 26 にも表わしたように多変量の説明変数を含むデータは、PCA を行うこと
で、主成分行列とローディング行列に分解する。主成分行列から得られるグラ
フ(主成分グラフ)は、第 3 章でも用いたように各サンプル間の相関を主成分
点(PC 点)によって比較するものである。しかし主成分グラフのみでは、サンプ
ル間の相関は明示されるものの、各サンプルの分散が何に起因しているのかま
ではわからない。そこで次に用いるのが、ローディング行列である。ローディ
ング行列は、主成分グラフの各軸(PC1 軸、PC2 軸)に影響を与えている説明
変数の影響度合いを比較するグラフである。本章では、単一細胞の状態を評価
するため、このローディンググラフを共に用いることにより、培養環境が細胞
に及ぼす影響の要因の特定も試みた。
本研究では、オゾン-UV 有機分子層エッチング法を用いて、同じ培養環境状
態を意図的に作成した。モデル細胞には、これまで本研究で用いてきた HUVEC
を使用した。HUVEC は、培養環境を統一した接着領域を有した基板上に接着
した。接着領域は、240 µm2(約 HUVEC 細胞 2 つ分のサイズ)、 440 µm2(約
HUVEC 細胞 4 つ分のサイズ)に制御した。基板上に接着した単一の HUVEC
には、4-6-5. と同様の方法でエステラーゼ活性染色と核染色を行った。
細胞状態評価の指標として、細胞活性度、核の面積、実際に接着した領域の
面積、制御した接着領域の面積、隣り合う細胞の数を選定した(Table 3)。細胞
活性は、calcein-AM によりエステラーゼ活性量を指標とした。細胞核は、細胞
死を起こす時、肥大するということが報告されている。そのため、核面積を細
胞死の指標とした。これらの測定マーカーと接着した細胞接着領域面積、周り
に接着した細胞数を PCA により同時解析を行った。
108
Fig. 26 主成分分析の概念図
109
Table 3 PCA 解析を行うための説明変数の設定
110
5-3. PCA を応用した単一細胞状態解析結果
Fig. 27 (a) は、240 µm2 (HUVEC 細胞 2 つ分のサイズ)、480 µm2(HUVEC
細胞 4 つ分のサイズ)に制御された領域に接着した単一細胞を用いて PCA 解析
を行った時の主成分グラフである。各サンプルの主成分点 (PC 点)は、大きく 3
つの領域に分布しており、かつ、制御された接着領域のサイズ、周りに接着し
ている細胞数に依存せず分布していることがわかった。この結果より、HUVEC
細胞は、制御された同じ培養環境下に存在し、周りの細胞環境が同じであって
も細胞の状態が異なると考察した。さらに主成分グラフの依存要因を解析する
ため、ローディング行列による解析を行った(Fig. 27 (b))。5-2.でも記したが、
ローディング行列は、主成分グラフの各軸(PC1 軸、PC2 軸)に影響を与えて
いる説明変数の影響度合いを比較するグラフである。
ローディング解析の結果、PC1 軸方面に影響を及ぼしている要因は、核の面
積と細胞が実際に接着した面積であることが確認できた。また核の面積と細胞
活性は、PC2 軸方面に 1:2 の割合で影響を及ぼしていることがわかった。つま
り、主成分グラフで得られた 3 つの分布は、どちらの方向に対しても核の面積
が大きく関わっている事が明らかとなった。これらの結果から、細胞接着環境
が同じ細胞であっても細胞の状態が異なる原因は、核の面積にあることが PCA
解析により示唆された。
細胞の状態は、これまで細胞の接着領域の面積に大きく依存していると考え
られてきた。しかし今回の実験では、複数の要因を共に解析し、比較すること
で、接着面積のみに影響するのではなく、核の大きさに依存するという新しい
見解が得られた。このようにバイオインフォマテックスの技術を応用すること
で、実験だけでは考察する事が困難な事も、簡単に比較し、検討する事ができ
るということを示唆した。今後、PCA は、新しい解析手法として応用が期待で
111
きると考えている。
112
(a)
(b)
Fig. 27 PCA 法を用いた細胞 status 解析結果
(a) 主成分プロット、(b) ローディングプロット
113
5-4. 結言
本章では、PCA 解析を応用した新しい単一細胞の評価方法を提案した。単一
細胞で行う評価は、再生医療へ応用するための分化メカニズムの特定や、薬剤
評価、細胞工学のための組織評価などに応用されている。本研究では、第 3 章
で用いた多変量データ解析である主成分分析(PCA)を用いて細胞状態評価を行
った。細胞評価の指標として、制御した接着領域の面積、実際に接着した領域
の面積、エステラーゼ活性による細胞活性、細胞死の指標となる核の面積、周
りに接着している細胞数を選定した。
主成分グラフの結果より、HUVEC は、細胞環境を制御されているにもかか
わらず、3 つの領域に分散することが分かった。しかしこの分散は、制御した細
胞接着領域の面積や周りに接着している細胞数に依存していないことが分かっ
た。近年、細胞は、近くに存在する細胞とシグナルを介したコミュニケーショ
ン(cell-cell communication)を行うことが知られている。そのため、当初の狙い
では細胞の状態は、周りに接着している細胞数に依存して分布するのではない
かと考えた。しかし PCA 解析では、細胞数に依存していないということが分か
った。さらに分布の要因を調べるために、本研究ではローディング行列により
解析を行った。その結果、PC1 、PC2 軸共に大きく関係している要因は、核の
大きさであるということが分かった。これらの結果より、細胞は、同じ接着環
境、または同じ培養環境であっても核の大きさがそれぞれ微妙に異なることか
ら状態を変化させていると考察できた。また、細胞は生命の最小単位であると
言われている。細胞の状態が単一レベルで異なるということは、細胞が個々に
性格を保持していると考える。つまり、細胞の性格は、核の大きさによって分
類分けされると考察する。
本章では新しい細胞状態の評価法として PCA 法を用いた方法を提案した。今
114
後、バイオインフォメティクスの分野を従来の研究と組み合わせることで、さ
らなる細胞工学の発展に期待できると考察している。
115
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116
結論
117
118
創薬市場においてHigh through-putなセンシング技術が求められている。特
に 細 胞 を 用 い た セ ン シ ン グ 技 術 で あ る 細 胞 バ イ オ セ ン シ ン グ は 、 High
through-putな薬剤スクリーニングに応用可能な技術として期待されている。本
研究では薬剤が生体に与える影響をもスクリーニング可能なセンサデバイスの
構築を目指した。本研究目的であるセンサデバイスを構築するためには、細胞
が生きた状態で、細胞の機能を維持している事、応答定量化や再現性向上のた
め、細胞数を一定にする事、細胞応答の解析を組み合わせることでシステム化
を行うことが重要であると考えた。特に細胞の機能維持や細胞数を一定にする
ためには、細胞とセンサ基板である固相の接着界面を目的に合わせて設計・構
築する必要がある。そこで本研究では測定目的に合わせた細胞-固相設計・構築
を行い、それに応じた細胞応答を選択的に得る事が可能であり、かつそこで得
られた細胞応答信号を新規解析手法により解析を行うことで、薬剤の詳細な生
体への影響を分析するシステム開発を目的とした。
第 2 章では、細胞が固定可能であり、かつ分子ふるい効果を有するセンサマ
トリックス層を有する細胞接着型センサデバイスを構築した。
設計・構築した細胞-固相界面の生体組織モデル評価を行った。生体組織モデ
ル評価は、通常培養した HUVEC とデバイス上で培養した HUVEC から評価マ
ーカータンパク質の発現プロファイルを確認することで行った。評価マーカー
には、アセチルコリン (Ach)を介した NO 産生に関与するタンパク質を選定し
た。その結果、全マーカータンパク質の発現プロファイルは、通常培養および
デバイス上で培養した HUVEC から確認できた。この結果から、構築した細胞固相接着界面は、NO 産生機能を維持したまま HUVEC を固定できる界面であ
ることがわかった。
また本研究では、ダブルパルスポテンシャルステップ法を用いて NO の測定
119
を行った。NO 誘導剤として Ach を選択した。また阻害剤は、eNOS の働きを
抑制し、NO 産生を阻害する diphenylene iodonium と受容体の働きを抑制し
NO 産生を阻害する GP アンタゴニストを選択した。
Ach のみを添加した時、添加直後に電流応答値が上昇したが、diphenylene
iodonium および Gp アンタゴニストで処理したデバイスに Ach を添加しても
電流値は変化しなかった。この結果から、Ach は、NO 産生を誘導し、diphenylene
iodonium および Gp アンタゴニストが NO の産生を阻害していることが示され
た。つまり本研究で設計・構築した細胞接着型センサデバイスは、生体内での
NO 産生挙動をモニタリングすることが可能であることが示唆された。
また第 3 章では、上記の細胞接着型センサデバイスで得られた細胞応答を主
成分分析法 (PCA 法)により、解析を行った。
はじめに、標準 NO 溶液を用いた NO センシングの結果を解析した。その結
果、標準 NO 濃度 1000 nM の場合、50 nM, 200 nM とは異なり大きく左右に分
かれて点在した。さらに低濃度領域においても、50 nM, 200 nM で左右に離れ
て点在することが明らかとなった。この結果より、各濃度における NO 応答挙
動の違いを明視することができ、さらに、これまで比較することが困難であっ
た低濃度領域までをも定量的に比較することができることを示唆した。さらに
薬剤評価の結果を解析することで、阻害剤の有無、阻害箇所の異なる阻害剤が
細胞に与える影響の違いを考察することが可能となった。そして各条件におけ
る NO の定量分析をも可能であることを示唆した
このPCAと本研究で行った細胞接着型センサデバイスで行う薬剤評価を組み
合わせることで、さらに詳細な薬剤に対する細胞応答の違いを明視することが
できるシステムを構築する事が可能である。
第 4 章では、オゾン-UV により有機分子層を分子レベルで直接エッチングす
120
ることにより、細胞接着性タンパク質の吸着を防ぐ PEG を修飾した基板の任意
の位置を構造変性させ、細胞接着領域を作成した。
細胞接着領域は、作成した PEG 修飾基板に任意のパターンを加工したステンレ
スシートマスクをのせ、オゾン曝露することにより、オゾン、またはオゾンと
水と 254 nm の紫外線から発生するヒドロキシラジカルが、PEG を酸化・分解
することで、細胞接着領域(タンパク質吸着領域)を作製した。この方法を用
いた結果、HUVEC 細胞は、全ての任意のパターン通りに接着していることが
明らかとなった。更に接着領域を制御された細胞のエステラーゼ活性を調べた。
その結果、細胞は、エステラーゼ活性を保持したまま接着制御され、生きたま
ま接着を制御されていることが明らかとなった。また、細胞接着領域の面積と
接着細胞数の相関を調べた結果、接着細胞数は、細胞接着面積が小さくなると
減少することが分かった。本方法は、細胞を用いた分析基板やバイオセンサに
応用できる可能性が示唆された。
最後に第 5 章では、PCA 解析を応用した新しい単一細胞の評価方法を提案し
た。本研究では、第 3 章で用いた多変量データ解析である主成分分析(PCA)を用
いて細胞状態評価を行った。細胞評価の指標として、制御した接着領域の面積、
実際に接着した領域の面積、エステラーゼ活性による細胞活性、細胞死の指標
となる核の面積、周りに接着している細胞数を選定した。
主成分グラフの結果より、HUVEC は、細胞環境を制御されているにもかか
わらず、3 つの領域に分散することが分かった。しかしこの分散は、制御した細
胞接着領域の面積や周りに接着している細胞数に依存していないことが分かっ
た。さらにローディング行列による解析を行った結果、PC1 、PC2 軸共に大き
く関係している要因は、核の大きさであるということが分かった。これらの結
果より、細胞は、同じ接着環境、または同じ培養環境であっても核の大きさが
121
それぞれ微妙に異なることから状態を変化させていると考察できた。
本研究では、創薬分野における High through-put な評価技術の開発を目指し
た。従来行われてきたセンサのみならず、新しい解析を取り入れ、システム化
することで、それは可能であると考える。細胞-固相界面は、今後様々な評価シ
ステムに合った設計・構築・制御が行われると考えられる。しかし全てにおい
て重要な事は、固相上に固定化あるいは接着する細胞が生体機能を維持してい
ることである。この技術を確立し、さらに解析を組み合わせたシステムを構築
することで、市場でも容易に用いられるツールとなるだろうと考える。
122
謝辞
本論文は、九州工業大学大学院
生命体工学研究科
教授
春山哲也先生の御
指導の下に作成したものであり、多大なる御指導、御意見を賜りましたことに
心より深く感謝いたします。
本論文をまとめるにあたり、九州工業大学大学院
西野憲和先生、教授
材料研究機構
尾川博昭先生、准教授
生命体工学研究科
教授
加藤珠樹先生、ならびに物質・
谷口彰良先生に多大な御指導、そして適切なる御意見、御助言
を賜りましたことに対して厚く御礼申し上げます。
細胞応答解析を行うにあたり多大な御助言をいただきました英国クランフィ
ールド大学 Conrad Bessant 先生、Michael Cauchi 先生に深く感謝いたします。そ
して、英国滞在時に不慣れな異国での生活を大きく支えて下さいました Michael
Cauchi 先生と研究室の皆様に深く感謝を致します。
細胞アレイを行うにあたり、オゾン-UV 装置の開発に御協力、御意見をいた
だきました荏原実業株式会社
中田英夫氏に深く感謝いたします。また、開発
に関して多大な御助力をいただきました関係者の皆様に深く感謝いたします。
最後に、数多くの御助言を頂きました池野慎也先生、また淺川雅氏、右田聖
氏、坂元博昭氏の先輩方に深く感謝いたします。また岩永敦氏をはじめ春山研
究室の皆様、日々の実験を共にした立石彰人氏、八坂康介氏、森和隆氏に深く
感謝いたします。特に立石彰人氏、中道桃佳氏には、研究室での生活のみなら
ず、私の大学院生活全体において多大なる御助力をいただきました。深く感謝
いたします。ありがとうございました。そして、様々な機会に多大なるご協力
いただきました生物環境機能講座の皆様方に深く感謝致します。
最後になりますが、長きにわたる学生生活を常に私のそばで支え、共に悩ん
でくれた家族に感謝の意を表し、これをもって謝辞とさせていただきます。
平成二三年
田ノ上知里
123
研究業績一覧
原著論文
[1] Chisato Tanoue, Hitoshi Asakawa, Michael Cauchi, Conrad Bessant,
Shinya Ikeno and Tetsuya Haruyama, Tissular model/sensor seamless
system for qualified analysis and its characterization,
Biochemical
Engineering Journal, 52, 110-115(2010)
[2] Chisato Tanoue, Kousuke Yasaka, Hideo Nakata, Shinya Ikeno and
Tetsuya Haruyama, Ozone-enhanced area-selective etching process on
preparation of ordered adhere area for mammalian cell culture, in
preparation
[3] Akito Tateishi, Michael Cauchi, Chisato Tanoue, Satoshi Migita, Shinya
Ikeno, Kari Keinänen, Conrad Bessant, and Tetsuya Haruyama, Discerning
data analysis methods to clarify agonistic/antagonistic actions on the ion flux
assay of ligand-gated ionotoropic glutamate receptor on engineered
post-synapse model cells, in submit
参考論文
[1] 田ノ上知里, 淺川雅, Michael Cauchi, Conrad Bessant, 持立克己, 池野慎
也, 春山哲也, 細胞センシングシステムの生体モデルとしての評価と PCA によ
るセンサ応答解析, Chemical Sensors, 25, 43-45(2009)
国内特許
[1] 基板の試料接着領域または非接着領域の作成方法、春山哲也、田ノ上知里、
荏原実業株式会社(特願 2009-201765)2009.9.1 出願
124
国内会議
[1] 田ノ上知里、 淺川雅、Michael Cauchi、Conrad Bessant、持立克己、池野
慎也、春山哲也、 細胞センシングシステムの生体モデルとしての評価と PCA
によるセンサ応答解析、第 48 回化学センサ研究討論発表会、東京農工大学、2009
年9月
[2] 田ノ上知里、淺川雅、持立克身、池野慎也、春山哲也、細胞接着機能を有す
るセンサマトリックスの開発とその評価、日本化学会第 88 回春季年会、立教大
学、2008 年 3 月
[3] 田ノ上知里、八坂康介、中田英夫、春山哲也、UV-オゾンによる有機層エッ
チングを利用した細胞接着領域の作成、第 4 回バイオ関連化学シンポジウム、
大阪大学、2010 年 9 月
国際会議
[1] Chisato Tanoue, Hitoshi Asakawa, Katsumi Mochitate, and Tetsuya
Haruyama, Designed cell-adhesive sensor matrix for cellular NO sensing, 1 st
JKBT, 2008.5.23 (Kyushu Institute of Technology)
[2] Chisato Tanoue, Hitoshi Asakawa, Katsumi Mochitate, Shinya Ikeno, and
Tetsuya Haruyama, Seamless cellular NO monitoring using designed
cell-adhesive sensor matrix, 214th PRIME, 2008.10.12-17 (Hilton Hawaiian
village Honolulu)
[3] Chisato Tanoue, Hitoshi Asakawa, Michael Cauchi, Conrad Bessant,
Shinya Ikeno and Tetsuya Haruyama, Blood vessel tissular model on
seamless NO sensor for qualified analysis, 2 nd JKBT, 2009.11.13 (Kyushu
Institute of Technology)
[4] Chisato Tanoue, Kazutaka Mori, Hideo Nakata and Tetsuya Haruyama,
125
Preparation of designed cell adhesion area on solid substrate by etching
organic
layer
with
ozone-UV,
ICBS2011,
International Congress Center)
126
2011.3.15-18
(Tsukuba