レポートの書き方

レポートの書き方
大学では、レポートを提出する機会が多くあります。定期試験の代わりにレポートが課せられる授
業もあります。レポート提出によって求められていることは、授業で学んだ知識や情報を記憶するだ
けではなくて、そこで扱われたテーマや問題について、比較的長い時間をかけて自分で調査し、自分
の考えをまとめ、自分のことばで表現することです。
これは、まさに「大学で学ぶ」ということの本質です。したがって、ゼミの授業など知識・情報の
吸収よりも各自の調査・研究・発表が重視される科目では、レポート提出が必須となるのは当然のこ
とです。
レポートには、純粋に事実だけを調査して記述するものから、その調査に基づいて自分の意見を述
べるものまで、さまざまな種類があります。まず、何を書くべきなのか、課題をよく確認し、検討す
ることが大切です。ここでは、事実の調査と自分の意見を書くレポートを想定して、その書き方につ
いて説明します。
1.書き始める前に ― 構想を
書くことはレポートの課題のうちのほんの一部の作業にすぎない。書き始める前には、次のよう
な手順を踏んで、その内容について十分に構想を練る必要がある。
(1) テーマ: 調査研究にかける時間と書く枚数に見合った適切な範囲に限定し、焦点を絞る。たと
えば、「日米の食文化の比較」というテーマであれば、歴史的な背景について述べるのか、それと
も現在の食事情の動向について述べるのかを決める。ただし、課された課題でカバーすべき範囲に
対して、特殊な狭い領域に偏りすぎてもいけない。
(2) 調査: 文献資料を検索し、資料を読み、ノートを作る。または、アンケート調査、聞き取り調
査などを行い、ノートを作る。
(3) 整理: ノートにとった文献資料の情報の整理、または調査結果の整理・分析をする。
(4) アウトライン: 書く内容の順序、それに割り当てる枚数等のアウトラインを作る。
(5) 表題(タイトル): 内容をよく表した簡潔なタイトルを考える。必要に応じて副題をつける。
2.内容と構成
レポートの構成は原則として論文の構成と同じであると考えてよい。(詳しくは、次章の「論文
の書き方」を参照のこと。)構成の概略は次のようになる。
(1) 序論:何を明らかにするのかという、レポートの目的や特定のテーマを取り上げる理由を述べる。
(例:「このレポートの目的は、上述のような観点から∼について明らかにすることである」
と書く。)
(2) 本論:自分の意見を主張する。また、その主張の根拠を詳しく説明する。
(3) 結論:何が明らかになったかを、まとめる。(例:「以上のことから、∼ということが明らか
になった」と書く。)
3.文体
レポートの文章は、主旨が明快に伝わるような書きことばでなければならない。メールや手紙など
の私信とは異なり、公のコミュニケーションであり、それだけの装いが必要だからである。
(1) 敬体(「∼です。」、「∼ます。」調)ではなく、常体(「∼である。」
、
「∼だ。」調)で統一する。
(2) 体言止め(例:「∼についての調査が必要。」
)を用いない。
(3) 主語と述語が正しく、確実に対応している文を書く。(悪文の例:「人間を最大限に魅力的にする
-1-
ことというのは、その人間が常に自分に素直で自然であればいいし、それが本当の幸せに通じるも
のだと思う。」→「人間が最大限に魅力的になるのは、その人間が常に自分に素直で自然である時
だ。そして、そうあることが当人にとって本当の幸せに通じることだと思う。」
)
(4) 一つの文には一つのことを書くつもりで、短めにする。長い文で、複雑な構文だと読みにくい。
(5) 感情的表現(例:「∼が嬉しい」、「∼は悲しい」、
「感動した」)
、主観的表現(例:「好きだ」、「嫌
いだ」)、口語表現(例:「すごく」、「カッコいい」)
、ら抜き表現(例:「見れる」、
「考えれる」)
、流
行語的表現(例:「わたし的には」、「∼って言うか」、
「イケてる」など)は使わない。
(6) 筆者自身を指す語には「われわれ(我々)」を用いる。
(7) 漢字で表記すべき語は漢字で表記する。(逆に、副詞の「しかし」、
「なお」、
「さらに」などを
「然し」、「尚」、「更に」と漢字表記にすると古めかしい印象を与える。)
(8) ? や !の記号は使わない。
4.形式と表記 (「原稿用紙の使い方」の項を参照のこと)
(1) 各段落の最初は、1文字分(原稿用紙では1マス)スペースを空ける。(字下げ)
(2) 句読点、カッコなどは1文字(全角)とし、原稿用紙では1マスを使う。
(3) 2文字以上のアルファベットや2桁以上の数字は1文字分のスペースに2文字入れる。(ワープロ
では「半角」にする。英語の単語間のスペースも「半角」にする。)
(4) 英単語が行末に収まらないときは、音節で区切ってハイフンをつけ、次行に続ける。
(5) 各行の最初を 。 ・ 、 , 」などの句読点や ) 」 』などの閉じるカッコで始めない。(禁則)
これらは前行の末尾につける。原稿用紙では、マス目の外につけるか、または末尾の1マスに文
字とともに入れる。(ワープロの場合には、たいていは入力時に自動的にこの処理をする機能が
ついている。)
(6) 引用する場合は、その著者名を本文中で明示し、注をつける。
(7) 日本語の書名は『 』でくくり、英語の書名には下線をつける。(ワープロではイタリック体にす
る。)
(8) 3行以下の短い引用の場合は、文中に入れ引用部分を「 」でくくる。英語を引用する場合は、
“ ”
でくくる。
(9) 4行以上の長い引用の場合は、前後を1行ずつ空け、左端2文字分の字下げをする。
5.原稿用紙の使い方
現在はたいていの場合、レポートは手書きでもワープロ作成でもよいとされているが、上級学年で
は、ワープロ作成に限られたり、パソコンのメールで担当者のアドレス宛に送るように指示されるこ
ともある。原稿用紙を使って手書きのレポートを作成する機会は減少の傾向にある。しかし、パソコ
ンやワープロで作成される文書の原則も、実は原稿用紙を使って書く場合の基本的なルールに則って
いる。したがって、パソコンを使って物を書く人も、原稿用紙の使い方を知っておかなければならな
い。なお、手書きの場合は万年筆、ボールペンを使用する。
ここでは、上記4の表記の仕方を 400 字詰め横書き原稿用紙(1行 20 字)の例で示す。
(1) 段落の字下げ、(2) 句読点、カッコ1文字
現
在
は
た
い
て
い
の
場
合
、
レ
ポ
―
ト
は
手
書
き
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―
プ
ロ
作
成
で
も
よ
い
と
さ
れ
て
い
る
。
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か
し
、
上
級
学
年
に
な
る
と
、
必
ず
ワ
―
プ
ロ
(
ま
た
は
パ
ソ
コ
ン
)
で
作
成
す
る
よ
う
に
指
示
さ
れ
る
-2-
(3) 半角アルファベット、数字
Sh
ak
es
pe
ar
e
の
生
年
月
日
は
15
64
年
4
月
23
日
と
さ
れ
て
い
る
が
、
こ
れ
は
彼
の
生
地
St
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tf
or
d-
up-
“ ou
r
my
ri
ad
m in
d-
の
心
を 持
つ シ
ェ
(4) 行末の英単語、(7) 英語の引用
詩
人
の
コ
―
ル
リ
ッ
ジ
は
、
ed
S
ha
ke
sp
ea
re
”
(
わ
が
百
万
(5) 禁則処理 (句読点等は末尾の1マスに文字とともに入れてもよい)
彼
の
こ
の
よ
う
な
特
徴
を
指
し
て
言
っ
た
の
で
あ
る
。
興
味
深
い
こ
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に
は
、
『
ロ
ミ
オ
と
ジ
ュ
リ
エ
ッ
ト
』
(6)-(9) 引用例
(6)
∼
(8)
夏
目
漱
石
は
、
「
二 年
の
留
学
中
只
一 度
倫
敦
塔
を
見
物
し
た
事
が
あ
る 。
」
と
『
倫
敦
塔 』
の
冒
頭
に
書
い
て
い
る
。
(
漱 石
1
)
.
.
.
詩
人
コ
―
ル
リ
ッ
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、
“
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mi
nd
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S
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”
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ra
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1
29
)
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彼
を
呼
ん
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.
.
.
(9)
そ
の
理
由
に
つ
い
て
漱
石 は
、
次
の
よ
う
に 述
べ
て
い
る
。
其
後
再
び
行
か
う
と
思 つ
た
日
も
あ
る
が 止
め
に
し
た
。
人
か
ら
誘
は れ
た
事
も
あ
る
が 断
つ
た
。
一
度
で
得
た
記
憶 を
二
返
目
に
打
壊 は
す
の
は
惜
い
、
三
た
び
目 に
拭
ひ
去
る
の
は 尤
も
残
念
だ
、
「
塔
」
の
見 物
も
一
度
に
限
る と
思
ふ
。
(
漱
石
1
)
こ
と
か
ら
分
か
る
の
は 、
彼
が
第
一
印
象 を
大
こ
の
-3-
ar-
6.提出する前に ― 読み返す
レポートを提出する前には、必ずそれを読み返して必要な修正、訂正をすることが重要である。以
下は、そのためのチェック項目である。それぞれの項目についての詳しい注意は、この章の関連の箇
所を参照すること。
■ レポート提出前のチェック項目
* 参考文献の丸写しやそれを要約しただけのレポートは、評価の対象とはならず、採点もされない。
* 誤字、脱字、変換ミスなどの表記の誤りを正すことは、チェック以前の社会常識である。
I 内容と構成のチェック項目
1.テーマは適切であるか。(課題に沿っているか、範囲は大きすぎず、細かすぎないか。)
2.テーマについて十分に調査したかどうか。(参考文献が一つだけでは不可。)
3.調査した上でそのテーマについて十分に考察したか。また、自分の考えや意見が書かれているか。
4.序論・本論・結論という構成が意識されているか。
5.一つの段落には一つのトピックについて書かれているか。
6.各段落はスムーズに連結されているか。(各段落の最後は、次の段落のトピックにスムーズに
つながるように書くこと。)
7.論旨は一貫していて、矛盾はないか。(始めに主張していたことを、後で否定しているようなこ
とはないか。)
8.参考文献で読んだ他人の意見と自分自身の考えや意見とを明確に区別して書いているか。
II 形式と文体のチェック項目
1.文体は常体(「∼である。∼だ。」調)に統一されているか。
2. 体言止めを用いていないか。
3. 主語と述語が確実に対応しているか。
4. 一文が長すぎないか、複雑な構文になっていないか。
5. 感情的表現、主観的表現、口語表現、ら抜き表現、流行語表現がないか。
6. 筆者を指す語には「われわれ(我々)
」が用いられているか。
7. 漢字で表記すべき語をひらがなにしていないか。
8. 各段落は最初に1文字分字下げがされているか。(以下の各項目については、「原稿用紙の使い
方」の項を参照のこと)
9. 禁則処理(各行の最初を句読点などで始めないための処理)がされているか。
10.漢字、ひらがな、数字、アルファベット等について、全角・半角の原則に従っているか。
11.引用の場合には、引用の表記ルールに従っているか。
12.行末に収まらない英単語は音節でハイフンをつけて次行に送っているか。
チェックを済ませ、必要な訂正をしたら、各ページにページ番号をつけ、レポートに表紙をつけて
ステープルで左上端を綴じる。表紙には、タイトルの他、科目名、担当教員名、提出者の学籍番号、
氏名等、必要事項を記載する。(『履修要覧』およびこの章の「レポート表紙見本」を参照のこと。)
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