第Ⅰ章 国際ビジネスの新潮流 [要約] 本章は、アングロサクソン・モデルの現状のスナップシ ョットである。英米経済の特質とともに現在彼らが直面し ている問題も取り上げる。 アングロサクソン系諸国では、情報技術(IT)の発達と 個人の価値観の変化によってさまざまなニュービジネスが 生まれている。ニュービジネスは、バイオやナノテクノロ ジーなどの新技術分野だけで起きているわけではなく、個 人生活の市場化と巨大なバリューチェーンの機能分解とい った形を取って生まれるケースが多い。 これまでの物を所有する経済行動からサービスを利用す る経済行動への移行、巨大企業が抱え込んでいた諸機能の 細分化などが、さまざまなニュービジネスを生み出してい る。それに伴って会社組織経済がネットワーク経済に移行 し、ITの高度利用も普及した。 しかし、われわれが垂涎のごとく崇めてきたアングロサ クソン・モデルは、今や全く新しい問題に直面している。 それは高齢化、環境悪化、金融資本市場の不安定化、IT化 自体がもたらす諸問題などである。2000年春以降の株価下 落がこうした問題への対処の難しさを露呈した。その結果、 これまで問題の元凶として疎んじられてきた国家政府にな んらかの役割を期待しようといった気運も高まっている。 1 ニュービジネスへの期待 3 2 二つのタイプのニュービジネス 8 3 市場経済、組織経済、ネットワーク経済 4 アングロサクソン・モデルの功罪 19 5 競争社会の疲労感と新しいメガトレンド 6 反グローバリゼーションの動き 12 25 28 7 IT時代におけるパワーの構造変化 33 8 バブルとクラッシュの連鎖的発生 38 9 金融業のコングロマリット化と利益相反問題 10 株価暴落で規制再強化への動き 43 41 第Ⅰ章 国際ビジネスの新潮流 3 1 ニュービジネスへの期待 日本経済は1990年代以降、デフレ下のゼロ成長に喘いでおり、日本企業全 体の利益が大幅に向上することは期待しがたい。不良債権問題の解決にも手 間取っている。日経平均株価は、1989年12月末に史上最高値3万8915円87銭 を付けた後、2002年10月10日には底値8197円22銭(ピーク時の21%の水準) を付け、この間に79%下落した。 日本の株価暴落は、1929年のニューヨーク株式市場暴落にしばしば比較さ れるが、暴落後の回復過程を見ると、今や日本の株価は当時のニューヨーク 株価の足取りにさえ出遅れている。日経平均株価がピークを付けた1989年末 から数えて、今やすでに12年の年月が過ぎている。図Ⅰ−1に示すように、 1929年の大暴落から数えて13年後の1942年には、ニューヨーク株価は大底を 入れて徐々に回復し始めたが、今回の日本の場合、いまだに回復の兆しが見 られない。 しかし、日本市場全体は低迷しているが、それでも個別会社のなかには、 利益成長を持続している会社も多い。1990年以前にも存在した約2000社の上 場会社中、最近(2002年 11月末現在)の株価がバブル崩壊前の高値を追い 抜き、躍進を続ける会社が30社近く存在する。 これらの会社には、ソニー、トヨタ、キヤノン、ホンダのように、世界的 に活躍している国際的会社群がある。世界に冠たる日本の電子部品会社、村 田製作所、ヒロセ電機、ロームなどもそうした例として挙げられる。そのほ かにも、既存事業から新事業に転身し成功した会社、例えば半導体製造用機 器のHOYA、同じく半導体関連の日東電工や信越化学工業などの株価は、全 体的な株式市場の低迷にもかかわらず概して堅調であった。また、トイレタ リー(家庭用品)から化粧品、食品まで高い技術を誇る花王、リース会社か ら総合金融会社に発展したオリックスもそうした例である。 1990年以降の12年間には、1600社弱の新興企業が新規に株式を公開してい る。これは2002年初め現在の上場会社総数(3560社)の約40%に相当する。 公開ブームはデフレ下でも継続しており、毎年150〜200社の新興成長企業が 株式市場への上場を果たしている。新規公開する会社の経営者からのヒヤリ ングによれば、株式公開の目的は、資金調達自体よりも知名度の向上に力点 4 図Ⅰ− 1 日本・米国のバブル崩壊後の株価 (日経平均とニューヨーク・ダウの比較) 1.00 暴落前ピーク時を起点とする指数 0.90 0.80 0.70 日経平均(1989年起点) 0.60 0.50 0.40 0.30 ニューヨーク・ダウ(1929年起点) 0.20 0.10 0.00 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001年 1929 1931 1933 1935 1937 1939 1941 1943 1945年 出所:日経平均は「日本経済新聞」 、ニューヨーク・ダウは「ウォールストリートジャーナル」紙など より著者作成。 注:株価は日米とも年間平均値。日経平均は 1989 年= 1.00、ニューヨーク・ダウは 1929 年= 1.00 と する。2002 年の日経平均は 1 〜 11 月の平均値。 を置いている場合が多い。こうした会社が立ち上げているニュービジネスの 認知度を高めることに、株式公開と上場の主眼が置かれているのである。 成長企業の特徴 堅調な株価を維持する大企業や新興成長企業の例を参考にして、利益成長 を実現する企業戦略とは何かを考えると、いくつかのポイントが浮かび上が る。 第一のポイントは、日本国外での事業展開である。日本国内の経済成長率 がゼロでも、海外諸国は経済成長を続けている。当然ながら、海外の事業機 会には魅力がある。日本企業の場合、これまでは欧米市場での製造業企業の 海外事業展開であったが、今後はアジア市場で収益を上げるサービス企業が 出現するであろう。第二のポイントは、合併や買収によるシェア拡大や収益 力強化である。日本経済全体のパイは一定でも、合併や買収によって収益や 利益を拡大させることはできる。 第Ⅰ章 国際ビジネスの新潮流 5 第三のポイントは、バイオ、ヘルスケア、ナノテクノロジーといった、ま さに新事業領域での業務展開である。不動産業や生活関連サービス業、流通 業のような在来型産業でも、全く新しいビジネスモデルを立ち上げたり、経 営革新によって収益を拡大したりする会社が存在する。 例えば従来の不動産業は、新規物件を販売したり賃貸したりするフローの ビジネスであったが、今や既存物件を管理し精査し、さらには証券化により 流動化するストックのビジネスに生まれ変わっている。昔は家を借りる人は 家を買えない人に多かったが、今では家を買える人あるいは家をすでに持っ ている人も家を借りる。セカンドライフ(転職)で、新しい職場が自宅から 遠く離れているような中高年の場合、また都心のインテリジェント・マンシ ョンに入居を希望するニューリッチ層の場合、買うよりも借りる人が増えて いるからである。 こうした入居者を対象とする賃貸マンションの供給も増える。不動産業者 のなかには、賃貸マンション経営を望む地主を募って賃貸マンションを建設 させ、その業者が賃貸マンション経営の指導や入居者(テナント)との賃貸 契約を取り仕切る、そういったビジネスモデルも生まれている。 ニュービジネスとは、後に詳しく述べるように、①従来家庭内で行われて いた個人生活周りの仕事が、市場で取引されるようになったもの、②これま で大企業が巨大なバリューチェーン(付加価値の創造連鎖)のなかで総合的 かつ内製的に抱え込んでいた業務が機能分解する形で市場に放り出されたも の、この二つのタイプに大別できる。もちろん日本経済全体に占めるニュー ビジネスのウェートはまだきわめて小さいが、こうした新しい革新の芽を育 てていくことなくしては、今後の展望を描くこともできないであろう。 株主資本主義のコーポレート・ガバナンス 実はこうした企業戦略は、米英などアングロサクソン系企業が1980年代以 降追求してきた戦略でもあった。日本との違いは、彼らが激動の時代に素早 く対応し、リストラを断行できる柔軟性を持っていたというだけではない。 企業経営の規律を資本市場、そのなかでもとりわけ株式市場に委ねることで、 継続的な利益成長を迫られてきたという点も重要である。 英米などアングロサクソン系諸国では、株式会社が市場経済機構の中核を 形成し、国民生活にも圧倒的な影響を及ぼしている。公開会社の株式は、証 6 券取引所もしくは店頭市場に上場され、幅広い層の投資家(株主)によって 売買されている。そして株式市場における株主の行動が、会社経営に規律を 与える。これを株主資本主義のコーポレート・ガバナンスと呼んでいる。90 年代における米英経済の隆盛によって、株主資本主義のコーポレート・ガバ ナンスは、アングロサクソン・モデルにおいて、いわば中心的教義の地位に まで高められた。 もちろん物事はそれほど簡単ではなく、一般株主の会社経営に関する情報 不足や株主の集団行動の困難さ、といった問題がアングロサクソン・モデル でも存在する。しかし、こうした点にはここでは触れず、第Ⅲ章および第Ⅴ 章でコーポレート・ガバナンス問題を論じる時に述べることにする。なお、 ここであえて「株主資本主義」と呼ぶのは、アングロサクソン型資本主義を、 ドイツの銀行資本主義、フランスの国家資本主義、日本の経営者資本主義な どと区別するためである。 表Ⅰ−1は、主要国の非金融企業の株式をどの部門が保有しているかを、資 金循環勘定を使って計算したものである。英米の場合には機関投資家の持ち株 比率が高く、ドイツの場合には銀行の持ち株比率が高い。フランスの場合、国 家政府の持ち株比率は統計上高くないが、高級官僚が天下ったり、政府が黄金 株を保有することによって支配権を持つ場合が多い。そうした意味で、英米の 資本主義を株主(機関投資家株主)資本主義、ドイツのそれを銀行資本主義、 フランスを国家資本主義と呼ぶのである。 それに対して日本の場合には、非金融企業(事業会社)の持ち株比率が高い 表Ⅰ− 1 主要5 ヶ国の株式保有構造 家 (単位:%) 米国 英国 日本 ドイツ フランス 21 計 39 17 20 15 非金融企業 0 4 22 32 35 銀 行 2 2 10 12 10 機関投資家 11 47 39 26 20 府 1 0 3 2 4 外国人 10 37 19 19 19 100 100 100 100 100 政 合 計 出所:各国の資金循環勘定より作成。 注:2001 年末現在。国により統計作成方法に相違があるため、厳密な比較はできない。 第Ⅰ章 国際ビジネスの新潮流 7 ことに特徴がある。これは事業会社の経営者が直接大量の自社株を所有してい ることを意味するものではない。いわゆる持合い構造のもとで互いに他社株を 持ち合っている点に特徴がある。この持合い構造のなかで中核を形成している のが銀行や保険会社などの金融機関であり、そのかぎりではドイツ流の銀行資 本主義ないし金融資本主義といった側面もあるのだが、日本の場合には、非金 融の事業会社の株式を複数の金融機関が集団的に保有しているため、個々の金 融機関の支配権が薄まり、結果的にその事業会社の経営者が、直接大量の自社 株を保有しているわけではないにもかかわらず、支配権を持つに至った。そう いう意味での経営者資本主義である。 日本の場合、古くは資本自由化への対応のための持合いや、メインバンク制 のもとで銀行が情報の非対称性を補完する目的で事業会社の株式を保有し役員 を送り込むといったことが行われたが、1980年代後半には銀行が自己資本を充 実させるために時価発行増資を積極的に行い、その受け皿として持合いを利用 するようになった。したがって、系列関係にある特定の銀行が特定の事業会社 の株式を占有するのではなく、複数の銀行が多数の事業会社の株式をあまねく 保有するようになり、特定の銀行の影響力が薄れてしまった。その結果、いわ ば希薄化された持ち株構造の空白をついて経営者が支配権を確立するようにな ったと考えられる。経営者自身の持ち株比率は、トヨタやキヤノンのように創 業者一族が経営に関与する会社の場合でも非常に低い。 トヨタ自動車の株主構成を有価証券報告書でさかのぼって見ると、1955年に は金融機関全体の持ち株比率が23%、個人その他の持ち株比率が62%で、筆頭 株主は大和銀行(持ち株比率8%)であった。それが1970年には、金融機関全 体で54%、個人その他が22%となり、1980年にはそれぞれ61%、14%となり、筆 頭株主は三井銀行(同5%)となった。そして1990年には、それぞれ64%、 10%となって、三和、太陽神戸三井、東海の3行が揃って筆頭株主(各5%) となった。ちなみに2000年には、金融機関60%、個人その他7%となって、持 合いが峠を越えたことをうかがわせる。 英米において1990年代を通じて進行した株式市場の活況は、ベンチャー企 業による新機軸も促進した。冷戦後の世界経済において平和の配当を享受し たのは、こうしたベンチャー企業を含むアングロサクソン系企業であった。 これらアングロサクソン系企業の経営を律しているのがまさに株主利益重視 の考え方(株主資本主義)であるが、株主資本主義と言っても、主たるプレ イヤーは株主(資本家)と経営者(マネジャー)だけではなく、特にベンチ 8 ャー企業の場合には、起業家(アントレプレヌール)が大きな役割を果たす。 起業家がニュービジネスの主役でもある。 株主のなかでは、年金基金や保険会社などの大手機関投資家、ヘッジファ ンドなどの投資ファンド、仲介業者である投資銀行などが実権を握っている。 従来の米国では、銀行持ち株会社法によって、銀行(預金取扱い銀行=預金 銀行)による事業会社の株式保有が禁止されていたが、こうした規制が米国 のコーポレート・ガバナンスにおいて年金基金などの機関投資家株主の役割 を高める理由となった。機関投資家や投資銀行は、グローバルな資本市場で 勢力を強め、規制緩和の世界的潮流のもとで、株主価値重視の市場ルールを グローバルなデファクトスタンダード(事実上の標準)として打ち立てたの である。 日本では90年代のデフレ過程で、銀行や証券会社、機関投資家などが敗走 を強いられたが、英米では、投資銀行などの金融サービス業者や各種ファン ドの躍進が目覚ましい。それは、彼らが資本市場の主役だからである。第Ⅶ 章で再論するが、こうした金融サービス業者自身がニュービジネスの担い手 ともなった。 2 二つのタイプのニュービジネス 資本市場で注目を集める新興成長企業には、当然のことながら、従来存在 しなかったようなニュービジネスを手掛ける会社が多い。そうしたニュービ ジネスをあえて分類すると、次の二つのタイプに分けられる。 第一のタイプは、従来家庭内で個人生活の一部として行われていた仕事が 市場で取引されるようになり、ニュービジネスとして独立の専門会社によっ て運営されるケースである。これは、家事など生活周りの仕事の事業化でも ある。 第二のタイプは、従来、総合メーカーや大手企業の傘下で内製化されてい た業務やスタッフ業務が分解されて、市場取引に委ねられ、独立の専門会社 によって運営されるようになったケースである。ニュービジネスはいつの時 代にも存在するが、現代のニュービジネスは、この二つのタイプとも最新の 情報技術(IT)が加味されている点に特徴がある。 第Ⅰ章 国際ビジネスの新潮流 9 個人生活の市場化 第一のタイプ(個人生活の市場化)の典型が外食産業である。考えてみる と、パンを焼くとか洋服を作るといった仕事は、100年くらい前までは家庭 内で行われていた。おにぎりがコンビニで売られ始めたのは、ほんの20年く らい前からであろう。米国においてさえ、ピザが店頭で売られるようになっ たのは、第二次大戦後のことではなかろうか。 外食は、女性の労働市場への参加によって加速した。そもそも専業主婦と いうのは、重化学工業時代に起きた特異な現象であって、重工業化する以前 の時代には、主婦は貴重な労働力資源であった。農作業を思い起こしてみれ ば、主婦労働の貴重さはよくわかる。またサービス産業の場合も、製造業や 重化学工業に比べればはるかに女性の労働を必要としている。 家事労働や個人生活の市場化は、外食産業の繁栄だけにとどまらない。介 護、教育、健康増進、レジャーといった活動が、ますます市場で取引される ようになっている。これらは、今やれっきとしたニュービジネスである。 こうしたニュービジネスは、いずれも物を売るだけではなく、サービスや 体験も売る点に特徴がある。ドラッグストアは単に薬品を売るだけではなく、 健康相談のコンサルタントとして顧客と一生のお付き合いをする。また海外 旅行やテーマパークは、昔の老人や子供が味わえなかった体験を売る事業だ し、ショッピング・モールもさまざまな体験を提供する私設マーケットであ る。消費者からすれば、モールで物を買うのはいわば余興の部類に属すので あって、旅行もショッピングも、目的はそこでゆったりとした時間を過ごす ことにある(Rifkin[2000])。 遊びに関して言えば、現代人はインターネットを通して配信されるゲーム や音楽を楽しむようになっている。パソコン上でスポーツや探検の擬似体験 ができる。サッカーであれば、ロナウド、ベッカム、カーンが同じチームで 一緒になってプレーする、現実では味わえないドリームチームを編成して楽 しむ。これは、いわゆるバーチャルリアリティ(虚構現実)の世界であり、 消費者にとってはヒーローとしての自分史作り(体験)の一環とも言える。 バリューチェーンの機能分解 ニュービジネスの第二のタイプは、従来大手企業内で総合的に行われてい た業務が、アウトソーシングといった形で外部企業によって代行されるよう 10 になったケースである。 エヴァンス = ウースター [2000] は、そうした例として自動車ディーラーや 新聞(一般紙)の機能分解を挙げている。それによると、ディーラーも新聞 もいわば総合デパートのようなものであって、単に車やニュース記事を売る だけではなく、多種の付随的サービスや情報をパッケージ化して売っている。 そこには、巨大な付加価値創造の連鎖(バリューチェーン)が存在する。 車の場合であれば、値引き競争が激しいため車自体の販売による利益は、 ディーラーにとっては少ないであろう。そこでディーラーは、定期点検や修 理、ローンや故障保険の斡旋、オプションの販売、下取りなどで利益を上げ る。ユーザー(車を購入する消費者)にとってみると、本来は、車種やオプ ションが豊富な巨大ディーラーでじっくりと選択したうえで車を買い、ロー ンや保険は別途専門の金融機関で組み、点検修理は近在の専門工場に任せれ ば、近所の中小ディーラーで一括購入するよりも安上がりかもしれない。し かし利便性を考えると、近在の中小ディーラーでいっさいをパッケージとし て買い入れることが多い。デパートと同様、車のディーラーはワンストッ プ・ショッピングの典型でもある。 新聞社の場合であれば、広告収入が購読料と並ぶ大きな収入源となってい る。一般紙には、政治・経済・社会関連のニュースだけではなく、スポー ツ・芸能・芸術・訃報・社説・小説・漫画などさまざまなコラムが満載され ている。いわば最大公約数的な内容にすることによって購読者数を増やし、 その購読者数の多さによって広告を勧誘するのである。広告収入が増えれば、 新聞価格(購読料)を低めに据え置くことも可能である。 新聞制作には、記事作成・編集・印刷・運送・販売といった長大な製造販 売工程が連なっている(バリューチェーンの存在) 。住宅地の新聞販売店は フランチャイズ経営の典型例であり、新聞社から見れば営業のアウトソース (外部委託)である。そもそも記事の作成自体が、評論家や大学教授にアウ トソースされる。 自動車ディーラーも新聞も、巨大なバリューチェーンの塊を形成している わけだが、最近、ITの発達によってこうしたバリューチェーンが分解し始め た。そして、バリューチェーンの塊を構成する個々のパーツが独立の専門会 社として分離し、会社内部取引から市場取引に委ねられつつある。
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