前回に続いて今回ももぼれなかったルート シャモニ針峰 一つの山の壁を下から上に登るのではなく言わば縦走です ですがクライミングのアップダウン天空の散歩道でしょうか 前回紹介のドリュボナッティ岩稜は、どんなにトレーニングを重ねても今の私には遠い存在になったの が自覚できますが、ここならまだギリギリ行けるような気がします 長く山をやっていると、気持ち・タイミング・時間・技量 全てそろっていて登れてないルートが 幾つもあります ここもその一つで、パートナーの S があまり乗り気でなかったのと、できればソロでと思ってい たのがその原因のようです ロジェールキャンプ場の数名がこのルートに出かけました、誘ってくれたはずですが断っています 不思議です・・・・ 友人たちはルート途中悪天の為クーロアール(急峻な雪渓)を下降中 沼野君(実名ですな)落石に当たって負傷 病院送りになります 10 日あまりの治療後キャンプに帰ってきた彼はポワ~~ンとした顔で うわ言の様に「フランス人のナースさん」と繰り返していました 死なない程度に落石に当たる方法を一生懸命考えたやつがたくさん出ました 私もその一人です この沼野救助と病院治療にかかった費用は ほぼ 0 円です 現在を調べていませんが、当時は街中に普通にある山岳警備隊(この呼び方で良いのか?) のオフィスで 1 枚の簡単な書類にパスポートに列記されている事を書き日本円で 1000 円を払うと フランス山岳会の会員になれました この特典たるや 普段の日は山岳警備隊のヘリが巡回しているだけですが、悪天の翌日などは警察と陸軍のヘリ が加わり、クライミングのルートを見に着ます、そうしてルートをクライミング中のやつに 例の親指を立てて OK かどうかを聞きます いいですね 日本だと山やってる順列はヤクザと同列ぐらいに低かったのですが、ここではちゃんと地位 を与えられて評価されています、シャモニの町を歩いていても皆の視線が暖かだった 深夜の上野駅上越線ホーム、谷川岳に行く為列車を待っている我々を、さげすむように通り過 ぎる酔っ払いの赤く濁った視線とは大違い ちょっと長くなるが書きましょうか? この親指に遭遇します 我々がキャンプしていたロジェールキャンプ場にはいろんな人が集まりました、期間も目的もバラバ ラです、自転車やろうもいました、彼はマターホルンに自転車と共に登りたいと皆を困らせまし たが、私の説教で折れて自転車をキャンプ場に残しマッターホルンにアタックします、ガイドは貧乏くじを 引いた私、ガイドの苦労は想像以下で彼の自転車でヨーロッパを回って来た体力と前向きな思考 と適応性そうして驚くほどのクライミングの飲み込みの良さ・・・ 楽しい山でした 親指は彼ではなく別の変人 ある日、長髪を後ろでたばねた ヒッピー風のやつがキャンプ場にテントを設営します 一人で 彼 翌日からキャンプ場にいるやつに声をかけ始めます 変 「俺いきなりクライミングがしたくなった」 変 「1 年間、鷹取山(神奈川県追浜の街中にあるにある砂岩の岩場)で練習した」 変 「すごく登れるようになったから どこか行こう」 あのね・・こんなんで行くやつあほや もちろん誰も彼と行きません あたりまえです ある日の午後天気が良くて皆クライミングに出た後キャンプ場に残っていた私に彼が話しかけます パートナーの S は帰国、私は仕事をやめて来ていたので金が無くなるまで OK 航空券は例のごとく 1 年オープン 変 「いこ 練習したし ダイジョウブ」 本当にその時の気持ちが判りませんが、行ってやろうかと思ったのです・・・・ 彼は私の返事に嬉々としてルート図をだします、シャモニ針峰の側壁だったと思うが ルートは長いルートでなく 1 日で終わる物でピッチ数で 8 ピッチ(300m)ほどだがその当時の新しい 登り方で作られたルートでフランスグレードの 6 が並んでいた、最も困難なグレードが 6c この時私は 6bまで登れる様になっていたが 6cは未知の世界 岩場に取り付き交互にトップを代わりながらクライム、いよいよ最難関の 6cのピッチ 変が「俺に行かせろ」と ルートの出だしは、右から剥がれそうな巨大なフレークを逆手で持って左斜めに這い上がり頭上の オーバーハングを越すか、もう一つは左のクライム不能に見えるジェードルを直上してオーバーハングを越え るか 私は左と思ったが 変は迷わず右、これは落ちるなと身構えた途端に大墜落、怪我は無し もうここまでだと思いました、登り方が強引過ぎるのです、一人で練習してきた為か登り ながらセットして行くランニングビレイも雑でこれ以上ビレイ(確保・落ちた相手をロープで止める事) することを難しいと感じました、変さすがに墜落して意気消沈しているが さてどうきり 出して下山に向かわすかと思っていた時に我々の頭上から強烈な叫び声と異様な音 「あ やったな」と思いました、どうするか?救助するにもこの 6cのピッチを越えなけばな らないし、それが出来ても言葉の問題がある・・・・・20 分ぐらいだったでしょうか バルバルバルとヘリの音、ちょっと信じられない速さです、ルートからシャモニの町が見えますが 町の警備隊からこのクライムを見ていたのか?と思うぐらい ヘリはまず我々に近づき側面のスライドドアを開けてサングラスが顔を出し サン親指を立ててフランス語で「bでじゅいljf」て言いますもちろん「OK?」と聞いてます K やりたかった親指を上に向けて「ボンジュール シルブプレ」て言いますこれしか知りません やったー たたき やりたかったのできたーと感動の K にヘルはローターを指差しその後自分のヘルメットを サン 「kghvgせ4えうぉ;klkj」と言います、フランス語ですが完全に理解できます そうです サンは 「さんぱつしたのか?」と言った 違いますよ サンは「ローターの風で落石がある 頭を守れ」と言ったのです その後も凄かった、垂直の壁ですからヘリは着陸など出来ません ヘリからロープで降りたサンが自分の体を振り子のように振って遭難者に飛びつき クライミングのロープから遭難者を切り離して二人でヘリにぶら下がったまま町に向かいました ほんとに アッと言う間 K 「帰ろうね」と変に問い掛け 変 「うん」 その後私の所にキャンプ場の面々が変のことを聞きに来ました しばらく後いつの間にか変の姿がキャンプ場から消えていました
© Copyright 2024 Paperzz