火山灰の拡散モデルの一例

火山灰の拡散モデルの一例(1)
日
An
Example
of
Volcanic
Ash
Dispersal
Kazutaka
by
Computer
浦
一
喬
Simulation(1)
HIURA
Abstract
The
traveling
diameter{rom
of
volcanic
vQlcano
Firstly,the
into
emption
asL
wind
cloud
was
simulated
of
uniform
model
was
How
for
particles
with
eddies.
presented.
Relying
Iess
on
than
this
about1000microns
model
and
the
in
formulas
givenbySein・(1969)・them・ti・n・fv・1canicerupti・nc!・udwhichisc・ntr。Iledbyintial
vel・city・thermalbu・yancyandwindve1・city,wassimulαtedf・rawiderange・fvari。usphysical
parameters.
Secondary,based
chimney
and
on
stacks,whose
the
time
eruption
required
c互oud
an
experience
formula
for
undeτthe
was
depos孟tion
actions
formula
given
of
of
by
a
of
the
behavior
Takahashi
single
gravity,wind
et
particle
and
tLe
of
smoke
plume
aL(1978),the
of
rising
volcanic
eruption
ash
em三tted
deposition
which
cloud,was
fall
from
distance
out
the
estimated.
Insuc虹acasethattherisingvel・city・ferupti・nc互Quddecreased・rtheinitialupward
momentumn
is
is
comparable
1。
small
to
in
the
scale,it
behavior
of
was
con五rmed
smoke
plume
in
this
from
paper
chimney
that
the
dispersa豆of
vo正canic
ash
stacks.
はじめに
火山噴火に伴う降灰は,歴史上の記録を見ても,最近の噴火においても明らかなように,広範囲に,し
かも長期閲にわたって人間生活に被害を及ぽしている。
日本のように火山の近くにまで立入って生活している場合には顕著に降灰の影響を受ける。
1977年〜78年にかけて噴火した有珠山の場合,短期間であったとはいえ爆発的噴火による降灰のため麓の
温泉町は機能を停止した。1955年以降,20年来活動を続ける桜島は,大噴火こそ起していないが物理的に
も化学的にも降灰による被害一家屋の腐蝕,火山弾による交通事故,水質の酸性化による作物の枯死等一
を周辺地域に長期間与えている。地上ばかりでなく,54年12月の鹿児島上空における全日空機の火山灰遭
遇事故のように,火山灰は拡散方向によっては飛行中の航空機にも被害をおよぼし大事故につながる危険
性を有する。この研究は,火山噴火に伴う火山灰の拡散現象と降灰地域を予測して災害の防止と軽減に役
立てようとするものである。
火山噴火時の噴煙の上昇と成長過程は複雑な乱流構造を示す。噴火による上昇は,噴出物と火山ガスの
intial
upward
momentumn,および噴出物と取り込まれた空気から成る混合体のtkermal
一39一
buoyancyに
研究紀要(1980)
よって決定される(Settle:1978)。しかし火口上のある高さで噴出物の初期運動量に依存した上昇速度が
小さくなった後も噴煙は混合体の辮力で支配され,その上部は対雛のthermalplumeとして挙動す
る(Wilson;1960)・上昇速度が大気の風速程度に低下した後の噴煙の運動,弱い爆発による高度数1。。m
程度の噴煙の運動は工場煙突から排出される排煙の動き1こ対比される.industrialh。tgasplum,の運動
礪する関係式を火山噴火時の噴煙の運動1こ適用したこれまでの研究は,主として噴煙から放出される熱
エネルギーの推測を目的としたものが多し・・例えば,Settle(1978),Briggs(1971),Lucas(1967),
Wilson(1971)・鋤(1978)等の研究がある。筆都,火鹸火による火山灰の拡散現象を,工場煙突
からの排煙の運動闘比し・こ細こ関する関係式の適用を試みた.最雛火山噴火時に捌る噴煙の運動
をモデル化し,清野(1969)の解析方法にもとづいて,風の影響による噴煙の運動をシミエレーション
し・ついで・風と動の影響を受けて落下する単一火山粒子の挙動1こついて,高橋他(1978)によって作
られた,排煙の運動に関する経験式を適用して数値実験を行った。本稿では,これらの結果を報告する。
易一
ア
∩必
護
(,
一
嬬嫡塗
コヘヘ
陛
『
・癖曾
ト
5
・撰籔豊.
3
4
10認
0
茂
一盆
(a)Aso
2
1
(b)Asa皿a
6
ミ5
.∫薫
,箏5猷
」
躯
璽︑
灘麟奪
(c)Sakura−zima
(㎞)
Fig。1Ashapeoferuptioncloud
(a)・(b)after
The
Manual
for
Volcanic
Qbservation(1969)
(c)Ashapeobservedon,22th,Novenver,1978
2,
モデルと方法
2−1噴煙の運動のモデル化
水平方向に平均風速(Uω)を持つ一様流の大気中に噴出される噴煙の運動モデルを,観測された型
(Fig,1)にもとづき,Fig,2に示す。火山噴火においては噴煙柱を形成するが,これを球状噴煙の連続
とみなす。直径(Do)の火口より初速度(Vo)で噴出された噴煙が半径(r琶)の球を形成し,球状で成長
しながら速度(Vα)で上昇する。高さ(Eα)に達すると,V。に依存したy、は急激に小さくなる。この
後の噴煙の運動は大気中の風の影響のもとに熱浮力によって高さ(H。)まで上昇しながら水平に移動す
る。この噴煙の運動を,煙突からの排煙の挙動に対比する。この場合Hαの部分に,直径(Pα),高婁
一40一
火山灰の拡散モデルの一例(1)
y
(Ha)のchimneyを仮定する。
この仮想上のchimneyから,初
速度(玲ン)で噴煙が排出され,
,㊦
⊂⇒u.
風速(Uω)の影響のもとに,上
Ux
a
昇速度(Vδ),水平移動速度(U必)
of
ce聴ter
Hb
Vb
で運動すると考える。また初遠度
、撫繍鷺講ゲ「P
のchimneyと仮定する。
locus
eruptioncloud
r
Va
H、
x。→
v。
工
し,いわゆる
ふるい分けられ
冒
H。
葺しl
r旗険
D,
特定の地点に落下沈着する。
一
−Xpd,tpd
2−2条件
計算を進めるにあたり,複雑さ
Fig.2
Rising
and
Hd
一一一一一一一一一一一一一引
traveling model of eruption cloud(1)
(see with Table.1)
をさけるために,次のような条件をおいた。
(1)噴煙内の温度は一様であり,上昇にともなう冷却も一様におこる。
(2〉噴火物の大部分は細粒の火山灰であり,混合大気とともに,噴煙が上昇を止めるまで同一運動をす
る(清野:1969)また上昇中においては,風の影響によるはぎとりはないとする。
(3)上昇停止の条件として,
①
噴煙の温度(T,)が273。K以下になった場合。
②
噴煙と大気の温度差がなくなった場合。
③排煙とみなした噴煙の上昇速度(砺),又は,初速度による上昇速度(砺)が,風速(Uω)よ
り小さくなった場合。
を仮定する。
(4〉火口からの噴出形態は考慮に入れない。
(5)火口または,火口上方で半径(プ乞)の球状噴煙が形成された瞬聞の位置をOmとし,火口線上に近
似する。
2−3
計算手順
初速度(瑞)のもとに噴煙として上昇する部分(Hα)と,排煙の挙動に対比される部分(H西)に分け
て計算を進める。Fig、3に示すHowchartに従い,Fig.2に示すモデルに次の諸式を適用する。
噴煙の運動についての関係式を清野は①式〜⑨式のように与えた。
(A)噴煙の質量
空πプ3ρ=Q乞(1+規)……①
rは噴煙の半径で
r=か2+プ乞……②
3
噴煙の体積告πr3級舞癖。)……③
噴煙の熱量
qT汁Cα
3Tα;(q+q解)T……④
q,qは火山灰と大気の比熱で各々0。25cal/g・OKを与える
一41一
研究紀要(1980)
Table
l
Main
parameter
and
Nomenclature
Parameter
1.
initial
velocity
Nomenclature
Vo:40,60,80,100,120
[m/s]
Va
2、
initial
radius
eruption
3.
of
ri:30,50,70,100
[m]
of
pyloclastic
Q111x1010,1x1011,
[grm]
Hagments
4。growing
b:0.3,0.4,0.5
meas皿ed from
(一Ha+Hb)
[一ユ
Ux;horizontal
density
temparature
ρa
l
L117x10−3(1000m)[g/cm3]
丁巳;281(1000m)
viscosity
η:0.176×10一
pressure
[。K]
1
[mb]
8.mean
9.
wind
of
alt1tude
velocity
of
volcano
crater
of
deposition
2.0
Kg:index
[g/cn13ユ
of
Til773,873,1073,1273[。K]
ρp:L5,L7,2.0
12.
coe田cient
of
dilution
due
to
for
describing
smoke
dp:1000夢700,500,300
Dc
l50,100
Hd
l
uf:free
[μm]
of
volcano
eruption[m/s]
deposition
of
velocity[一]
of
particle
falling
velocity
Zc:dimensionless
[m]
distance
byEq(9)
[m]
zp:partide rise measured
top of volcano
BlO.13
[m2/m2]
9:980
[cm/s2]
δ:angle
smoke
smoke
behavior
of
smoke[m/s]
describing
emitted
spread
from
de五ned[一]
from
[m]
of
[deg]
volcano
m:mixingratioofatmosphereand
gravlty
eruption
cloud
START
parameter
1M=孟Y−1
tpd,πpd
reculculation
r多
LoOP3
feset
parameter
Loopl
LO叩2
travelmgo蛋
partldes
Va,ρ,ρa,T
Ta,r,m
Vb,Zc,U露,Xc
ρ,ρa,T,Ta
Va:Uw
>Uw
≦Uw
Vb:Uw
tpd,Xpd
output
>Uw
≦u脚
STOP
output
(b)as
(a)aseruptionc匪oud
Fig.3
Flowchant
for
一42一
or
min]
rising
spread
[sec
up:horizontal velocity of particles[m/s]
vp:vertical velocity of particles [m/s]
[m]
O,100,200,500
of
ロ
[m/s]
Ho:1000
or
t:time
[g/cm3]
Uw:3,5,10,15
[m]
Kp:modi五edindexofK8usedin[一]
Place
13.accerelation
velocity
required
deposition
altitude
10.depth
11.
1,7,
Va
Xc:position of eruptlon cloud
[m]
center measured from volcano
particle
density
diameter
top
ofparticles
ρi=1。5,
[m/s]
[m/s]
cloud
tpd:time
6.eruptioncloud
density
temparature
Vo
thermal
xpd:distance of maximum deposo一[m]
tion measured from volcano
[9/cm.s]
Pa:898.7
by
by
Hb:rlsing height from Ha by Vb [m]
Hz:height of eruplion cloud center[m]
5.atmosphere
7.
velocity
velocity
buoyancy
1×1012
coe飯cient
rising
Ha:rising height by V。and
from top of volcano
cloud
volume
l
Vb:rising
150,100
smoke
culculation
p!ume
火山灰の拡散モデルの一例(1)
2740K
km
5
Various(V。,Ti,Qi,b)
VD
272DK2840K
Hz4
l
3
2
l
I
i l I!
輩6ぴKl
i\1
1.5
◎
!
⑤
皇65・K樽猶986。K
1
・二\7⑮Ki
@
も
喋誤簿K!④雲
諒警i@
0.5
0.4
0.3
TI
40
(2〉
60 ②
(3)
80
773
㊤)873
873
1×101
0.5
1×1(メ
0.4
1x10i
0.4
(4)100
1073
1
×101
@o.3
⑤o.4
(5)120
③1073
⑤1273
◎1073
1
×101
0.3
1×10L
1×10L
0
(6)150
1073
1
×10:
0.3
(7)200
1273
1
×101
/7/
⑥
b
Q』
773
(1)
0.3
4
(5〉
下、、1
0.2
壕β66。K
I・・泣一
蹄\1,,プK@
(4)
⑤
②04
⑤o.3
13/
0.1
Va
噌魎一一幅一Vb
十risingheightinterruptedby
innuence
0,05
F量g.4
35
噴煙の上昇速度%2一ρ霧61ρ乞2r乞6砺2書∫ρ(ρ一ρ∂r叫一⑤
高さZにおける大気の密度と温度
峯蠕二轍監1レ・…⑥
排煙の挙動について高橋et,aL(1978)は⑦式〜⑮式の経験式を与えた。
(B)上昇速度
砺=V。・ρZe−Kg……⑦
水平方向の移動速度
高さの指標
UのニU盟(1一ρZe−K9)……⑧
D
Zc=一……⑨
Po
拶ド煙の拡力§り角度ねnδ篇2姻1+寄)_.⑩
2−Kσ
移動距離准舞{〆畿欝㌧叫一⑪
ε=2tanδ/Do
粒子の速度
吻=砿(1一グαε)……⑫
吻;玲一%∫……⑬
α皿18μ/4P2・ρP,π∫=9/α
一43一
by
of
intial
influence
50100150200V・(m/sl
10
Uw(m/s)
wind
Vaτiation
height
and
of
of
rising
veloc玉ty
wind
研究紀要(1980)
H呂
(km)
9.2
l卜、〜、、
I
3
2
1\↓
i
1
⑥
3
(6)
5
ゆ
→レ
16
3
l
。一●一》
I、\、・
i
0.5
Va
2
(3)一3
!v奇\
l I
l i
0.2
(3〉一5
13)
(6)
Va
i
lu#i
0.王
一一・う
u、
i i
i l
l i
0.05
!
!
!
1
3
1
1
5
Fig,5
10Uw(m/s)
Horizontal
traveling
0.05累
150V。(m!s)
80
distance
of
eruption
0,5
1
2
3
4
5
10
1520
Xc(km)
cloud(〔3)and〔6}:seeFig.4)
粒子の位置毎唖+静一一1)一誘+1){(1+殉)
1+隣]一・⑭
蝋2藷δ){(ア且オ+1)一(鞠+・)一1}一碗……⑮
A−2隅+1)tanδ/D・Xπ一∫19舶+醐β4≠
B=一K9/(Kp十1)
空気の粘度は理科年表(1979)から
・・一・・(鎚)(舞)号
⑨式は,②式より
プ
Ze=一一……⑨
r¢
Vα幸0となった後の噴煙の上昇速度(Vδ)と水平移動距離(X,)を求めるにあたり,⑦式と⑪を次の
ように変形する・吟傾ブ1・)一鰯一σ
&一玲{ラ(1+、激溢㌘㌧現}……⑪
V♂はVα÷0となる1ステップ前の値で,これをVδを求める場合の初速度として与える。
rα
は砺幸0となる前の噴煙の半径を表わし,島
=璃一紘とする。
⑤式は,噴煙が静止する高さ(Vα=0となる高さ)が解として出てこない(清野:1969)。
そこで,2−2の(3)に示した条件を満たしたときの高度を上昇停止高度とする。
3.噴煙の運動
3−1上昇高度と上昇速度
一44一一
火山灰の拡散モデルの一例(1)
dp
μm
1000
700
(c》
(a〉(b)
(d)
Ll澤. 1.3
2.9
1.1
2.訟、2
500
2.2
6.0
7.0
300
15.9
6.2
13.6
15,7
200
13.9
10
1
397
154174丼
55.6
0昼30.5
143(151km)
62.8
100
60
6、1
15.9
50
(356km)
100
200300
500
Xpd(km)
Fig.6Maximum
depositlon
distance
of
partlcles
跳11撫}Uw・3m/・1誰::豊,鴇:,撒
+5.7:tpd(tine
required
for
初速度(70)による上昇高度(紘)
deposition
Table2
と速度変化(%),熱浮力による上昇高
度(Hむ)と速度変化(yδ)を風速(Uω),
とU
との交点が,上昇を停止する(横
風の影響下に入る)高さを示す。
砺二
60m/sの場合を例に上げると,Vαによ
る上昇高度は180mである。Vδによる
上昇高度は,Uω=10m/sの場合210m,
distance
deposition
of
required
30
291min
91min
270km 300km
70km
10−12
time
60
100
260
and
partiご1es
240
300
初期温度(箔),噴煙の質量(Q乞)との
関係においてFig.4に示す。Vα,砺
particles:minute)
Deposition
for
訳P
of
124min
4
70km
300km USU①
2.6km
2.1km
2.5
Aso②
4km
1
Sakura・Zima
130min
0.75
70km
U盟=3m/sの場合650mを示す。上昇
①Magono
et
aL(1978)
dp:mlcrons
停止時の温度はいずれの場合も高いが,
②Taneda
et
aL(1958)
Hz:km
Usu①
Voが小さいと噴煙自身の重さによって高くは上らない(清野談)。
次に清野(1969)の提唱するr成長に関する定数(b)」の影響力をみる。▽
,丁乞共に小さい場合は上
昇形態に大きな違いは認められない。例えば(2〉一a,b。Voが120m/s以上の場合,η,みにより%
と瓦αに大きな違いが生じる。TF1073。Kでゐ=α3の場合(⑤一@),Eαは1000m付近を示し,
ゐ=0・4の場合(⑤一◎),1000m付近(%÷30m/s)で噴煙は勢いをもりかえした後,%を減じながら
ゆるやかに上昇する。丁乞=1273。Kでゐ=0.3の場合(⑤一⑤),1000m付近で停止しかけた(▽〆5m/s)
噴煙は急激に勢いをもりかえして1■〆45m/sとなったのち,砺を減じながら上昇する。Uω=10m/sの
場合(%<U、,の場合)この噴煙は成長・上昇せずに風の影響を受けて水平に移動する。上昇の途中で勢
一45一
研究紀要(1980)
Hz
⇒u.
①
Vb
h
l
X。
一臥、
UX
l\\
②
Va
I
\
i v \、
!
1
u・
\、
・、
、
一一一一一
Uw
(a〉mutual
一一一一「
Xc
V。
relatlonships
Va,Vb,Ux,Xc
Fig.7
③
and
Rising
and
of
〔b)a
locus
of
eruption
cloud
Hz
traveling
model
of
eruption
cloud(II)
いをもりかえすような現象は実際の噴火においてもしばしば認められる。1980年1月11日の桜島の噴火に
おいてもこれに類似した現象が観察された。噴火後5㎞程水平に移動した噴煙の一部がrコブ」のように
盛り上る現象を認めた。
3−2水平移動
上昇速度(%,Vδ)の低下にともない,横風の影響を受けて水平方向に移動する噴煙の状態をFig.5
に示す。7。=80m/sと150m/s,U初=3m/sの5m/s場合について例示する。
この図は砺がUωに近づくとXeが大きくなり▽δで上昇しながら水平方向に流される状態を示す。
Vo=80m/sの場合(実線(3))は,V・を下から上にたどり(Vαは低下していく),yδとなる高さ
(300m付近)で,70に依存したVαは0となり,横風によって移動する。V灰破線)を上方に追跡し,
風速を示す一点破線との交点(U、,;5m/sの場合,H,=500m)が砺とVわによる上昇高度を表わす。
つぎに,この高度を水平方向に追跡し,実線(3)一5との交点の位置が噴煙の水平移動距離を示す。
Uω=
3m/sの場合,70=150m/sの場合も同様な方法で追跡する。
3−3
沈着距離
特定高度より落下する火由灰粒子の最大濃度沈着地点(働α)と,沈着までに要する時間(言廻)を
Fig・6に示す。沈着地点の標高(亙α)は一様でO
mとする。火山灰の落下開始高度(H〜)を,2120m,
1840m(V・=120m/sの場合の上昇高),3990m(7・=200m/sの場合はこれ以上上昇するが,この高度
から落下すると仮定)とする。風速(U,σ)は,3m/s,5m/s,15m/sの場合を想定する。この条件のも
とに,4〆1000,700,500,300,200,100,60μmの各粒子について∬P¢と渉掬を求めた。4P≧300
μmの場合は,哲廻,勘¢共に小さく算出された。
噴火開始後の火山灰粒子毎の沈着距離と所有時間を観測したデータは少いが1977年有珠の噴火に伴って
札幌で観測されたデータにもとづく研究(孫野他:1978)がある。これをTable2に示す。観測日の札
幌での気象状況は雨で,風速は15〜20m/sであったとされている。
1978年11月22日桜島赤水(火口より水平距離4km)で採取した火山灰粒子は,200μm以下が50%,125
μmが31%を占めていた。この時の噴煙の高度は火口上1000mに達していた。
以上のことから,気象状況,高度等を考慮して,計算によって得た結果は,実際の現象に比較して極端
に異なるものではないと判断される。
一46一
火山灰の拡散モデルの一例(1)
4.おわりに
上昇速度が熱浮力に依存する状態になった噴煙の挙動と火山灰の拡散に,排煙拡散の式が適用できるこ
とを示した。しかし,smoke
plumeの関係式は,横風の影響を大きく見積っていて上昇高度が小さく,
水平移動距離,移動速度共に大きく算出される(Wilson二1977)。噴煙はsmoke
大きく横風を受けても,smoke
pleumeよりも密度が
plumeほど急激に上昇速度を減じることはない(Settle:1978)。火山灰
粒子の拡散距離と時間については,大きな粒子(4p>300μm)は,小さく,小さな粒子(4p≦100μm)
は多小大きく算出された。このことは噴煙と同じ拡散速度を用いたことによる。
火山灰粒子は,その飛行過程では噴煙の速度と異った拡散速度を受けながら落下し,粒子径によって経
路は異なる。それゆえ,火山灰の拡散速度は,風速,粒子の大きさ,噴煙の速度等の関数であると考えら
れる。排煙拡散の式を発展させるためには,これらのことがらを考慮する必要がある。
本稿に示したシミューションの結果と,実際の火山噴火の観測結果から噴煙の上昇と移動についてのモ
デルはFig,7に示すように想定される。
Vo,Vδ
は,上昇速度が主として熱浮力に依存する場合の噴煙の上昇速度を示す。噴煙の初速度(瑞)
が小さい場合は,上昇速度(7α)はVδ
にほぼ一致し熱浮力で上昇する。砺くU・・ならば水平移動速度
(U置)はUωに等しくなり,噴煙の軌跡は(b)の③となる。Vα>Ul・ならば(b)の①の軌跡を示す。7。,
Uω共に大きい場合は,高さ(h)でVKU4・になると砺はU
に等しくなり噴煙の移動経路は(b)
の②を示す。
謝
辞
本論を作成するにあたり,目本大学文理学部応用地学科教室の堀福太郎教授,堀内清司教授,三宅輝海教授には,日
頃の御指導に対して深く感謝する次第である。また,Abstract・図表に目を通していただいた遠藤邦彦助教授,田場穣
助教授からは有益な助言をいただいた。さらに,文献を提供して下さった気象研究所の沢田可洋氏,日本大学文理学部
化学科助手の工藤隆雄氏には深く感謝する次第である。
引用
文献
1.B,R Morton,S三r Geoffrey Taylor,F.R.S.and J.S.Turner(1956)l Turburent gravitational
convectlon from maimtained and instantaneous sources,Proc・Roy.Soc.,Land.Ser.a.,234,A.1−23、
2。G・P・L.Walker,L,Wilson,E.L.G.Bowel1(1971):Explosire
of
Fall
of
Volcanic
Eruptions−1.The
Rate
Pyroclasts.Geophys.」.R.astr.Soc、,22,377−378.
3・石原和弘・江頭庸夫(1979)1火山灰の降下堆積状態に対する上層風の影響.第16回自然災害科学総会シンポジウ
ム講演集,619−620
4,勝井義雄・大沢晃助・新井田清信・鈴木健夫・近堂祐弘(1979):樽前山1978年5月の噴火,火山,2集,24,2,
31−40
5,勝井義雄・大場与志男・大沼晃助・新井田清信・鈴木健夫・近堂祐弘(1978):有珠山1977−1978年活動の火山地
質学的研究r有珠山噴火と環境変動」,北大,3−12
6.火山観測指針(1968):気象庁
7、鍵山恒臣(1978):火山からの噴気による熱エネルギーとH20放出量一Plume
23,
3,
riseからの推定一,火山2集,
183−197
8.L・Wi11son(1972):Explosive
Volcanic
Eruptions−II.The
Atmospheric
Traiectorles
of
Pyroclasts,
Geophys,J.R,astr.Soc.,30,381−392.
9.L.Wilson(1976):Explosive
Volcanic
Eruptions−III.Plinian
astr.Soc.・45,543−556・
一47一
Emption
Columns,Geophys.J.R.
研究紀要(1980)
10.Lucas,D.H.(1967):Application
and
evaluation
of
results
of
Tilbury
Plume
rise
and
dispersion
experiment.Atmos.Environ.,1,421,424,
11.Friedman,J.D.,G.Heiken,D.Randerson and D.S.Mckay(1976):Observations of eruption
clouds from Sakura−zima Volcano,Kyushu,Japan,from Shylab4.J.VolcanoL Geotherm.Res.,1,
305−329.
12,水上武(1940):浅間火山最近の爆発により噴出せる火山弾の分布と爆発のエネルギーに就いて。火山,第1集,
4,
2,
141−1550
13.水上武(1942):火山物理学の二,三の問題.日本数物学会誌。16,1,6−32。
14.孫野長治・高橋庸哉(1978):火山灰粒子の降下とWashout効果について。「有珠山噴火と環境変動」.北大,
53−640
15.Peter.V.Hobbs,Lawrence
Measuments
and
F.Radke(1977):Eruption
of
the
St.Augustine
Volcano:Airbone
Observations.Science,195,871−873.
16.P.G。So任man(1979):On
the
stability
of
laminor
How
of
a
dusty
gas,J.Fruid、Mecha,13,120−
128。
17.Richard
V。Fisher(1964):Maximum
Size,Median
Diameter,and
Sorting
of
Tephra,Jur.of.
Geophy.Res.,69,341−355.
18.佐久間修三(1957):
乱れとしてみた火山の煙
,火山2集,1,1,1−8。
19。清野政明(1969):火山爆発時の噴煙の運動について〔11,火山2集,14,3,111−126・
20.鈴木健夫・勝井義雄・中村忠寿(1963)1樽前降下軽石堆積物Ta−b層の粒度組成.火山2集,18,2,47−63。
21,高橋洋志・老田克幸・柳井弘(1978):煙突から排出された粉塵の沈着距離化工論集,4,5,465−472。
22.種子田定勝・松本征夫・宮地貞憲・宮地六美(1958):阿蘇火山1958年6月 大爆発概報 .火山2集,3,2,
136−1460
23,理科年表(1679):物理化学部,p.29。
一48一