13 第 2 章 1次元の運動(1) 2.1 運動方程式の解と初期条件 質量 m の質点が x 軸上を力 F (x, t) を受けて運動する場合を考える。質点の位置を x(t) で表して,運動方程式は d2 x(t) = F (x, t) (2.1) dt2 と書ける。 「運動方程式が書ける」とは,質点が時刻 t に位置 x(t) にあるとき,この質点に はたらく力 F (x, t) がわかっているということである。 m 質点の運動方程式が与えられているとき,ある時刻 t = t0 に質点が位置 x0 = x(t0 ) にあり,速度が v0 = v(t0 ) であるとすると,質点の運動は一意的に決まる。 このことは,時間を微小時間 Δt に分割して,以下のように示すことができる。 まず,時刻 t1 = t0 + Δt における位置 x1 = x(t1 ) と速度 v1 = v(t1 ) は x1 = x0 + Δx, v1 = v0 + Δv と表せる。位置 x1 は微小時間 Δt のあいだ,質点が一定の速度 v0 で運動したと考えてよ いので Δx = v0 Δt より x1 = x0 + v0 Δt (2.2) と表せる。一方,速度 v1 は運動方程式を用いて求められる。運動方程式 (2.1) の左辺にある 加速度は位置の2階時間微分であるが,これを速度の1階微分で表すことができる。また, 加速度は速度の時間変化率,すなわち,時間間隔を Δt → 0 とする極限である。すなわち, t から t + Δt までの微小な時間間隔に対しては m dv(t) = F (x, t) dt より m Δv(t) = F (x, t) Δt (2.3) となる。よって,t から t + Δt までの時間 Δt における速度の変化量 Δv は既知の量で表 すことができ, Δv(t) = F (x, t) Δt m より v1 = v0 + F (x0 , t0 ) Δt m (2.4) と表せることがわかる。これを繰り返して,t = tn = t0 + n Δt における位置と速度は xn = xn−1 + vn−1 Δt, となる。 vn = vn−1 + F (xn−1 , tn−1 ) Δt m (2.5) 第2章 14 2.2 2.2.1 1次元の運動(1) 単振動 単振動 フックの法則に従うバネの一端に物体をつけ,他端を固定して滑らかで水平な台の上に 置く。バネは押し縮めれば伸びようとし,引き伸ばせば縮もうとして物体に力を及ぼす。 バネに沿って x 軸をとり,バネの力がはたらかないと きの物体の位置を原点とし,バネが伸びる向きを正と する。このとき、物体にはたらくバネの力は,原点か らの距離に比例し, x軸 0 F (x) = − k x (k > 0) (2.6) である。k は 力の定数 (バネ定数)と呼ばれる。右辺 の負号は,バネが伸びたとき(x > 0)力は負の向きに はたらき(F < 0),縮んだとき(x < 0)正の向きに はたらく(F > 0)ことを表している(図 2.1)。この力 によって生じる運動を 単振動,あるいは 調和振動 と いい,単振動する体系を 調和振動子 という。 x軸 0 x軸 0 図 2.1: 単振動 運動方程式は,力として (2.6) を代入して d2 x(t) = − ω 2 x(t), dt2 ω= k m (2.7) と書ける。この運動方程式は,両辺に未知の関数 x(t) を含んでいるので,直接積分するこ とは難しい。しかし,sin ω t と cos ω t が運動方程式を満足している。従って,解は両者の 重ね合わせ x(t) = A sin ω t + B cos ω t (2.8) で書けることがわかる。A と B は積分定数である。これを時間について微分して,速度は v(t) = dx(t) = A ω cos ω t − B ω sin ω t dt (2.9) となる。t = 0 における初期条件,x(t = 0) = B = x0 及び v(t = 0) = A ω = v0 を与えると 運動は決まり,物体の位置と速度は x(t) = v0 sin ω t + x0 cos ω t ω v(t) = v0 cos ω t − x0 ω sin ω t (2.10) (2.11) となる。さらに,2つの三角関数を合成して,1つの三角関数で表すことができる。 単振動に関する結果をまとめて 2.2. 単振動 15 ω = x(t) = a sin (ω t + δ) a= v0 ω 2 T = + x0 2 2π ω と書ける(図 2.2)。2つの定数 a と δ は, 初期条件 x0 と v0 を与えると定まること がわかる。 a を単振動の 振幅,ω t + δ を 位相、δ を 位相定数 あるいは 初期位相 という。 ω は時間の逆数の次元を持つ量で 角振動 数 あるいは 角周波数 と呼ばれる。 単振動の位相が 2π 進むと変位 x はもと へもどる。これに要する時間 T を 周期 という。 周期の逆数,すなわち,単位時間に繰り 返される振動の回数 ν を 振動数 あるい は 周波数 という。 2.2.2 k m (2.12) v(t) = a ω cos (ω t + δ) δ = tan−1 ν= (2.13) v0 ω x0 (2.14) 1 ω = T 2π (2.15) x軸 t軸 0 v軸 t軸 0 図 2.2: 単振動の変位と速度 様々な単振動 例1: 図 2.3 に示すように,一様な重力(重力加速度を g と する)のもとで,質量が m 物体をバネでつるす。鉛直上向きに x 軸をとる。物体には重力 −mg がはたらき,バネは自然長より 伸びる。バネからは上向きに力がはたらき,重力とつりあう位置 で物体は静止する。このときのバネの伸び L は mg = kL より 決まる。x 座標の原点として,重力とバネの力がつりあう位置を とると,x = L のときバネは自然長になる。従って,物体の運 動方程式は d2 x m 2 = − mg − k(x − L) (2.16) dt x 0 と書ける。mg = kL より,(2.16) は単振動の運動方程式になる: m d2 x = −kx. dt2 (2.17) 図 2.3: 単振動の例1 第2章 16 例2: 図 2.4 に示すように,水平面と角 θ を成す面 上に物体を置き,斜面に固定された壁と物体をバネ で結ぶ。斜面に沿って上向きに x 軸をとると,x 軸の 負の向きに重力(の斜面方向成分)mg sin θ がはたら き,これとバネからの力がつりあうときに物体は静 止する。このときのバネの伸び L は mg sin θ = kL より決まる。物体が静止する位置を x 軸の原点と すると,例1と同様に,運動方程式は m x 0 θ d2 x = − mg sin θ − k(x − L) = −kx (2.18) dt2 図 2.4: 単振動の例2 と,単振動の運動方程式になる。 例3: 1次元の運動(1) 図 2.5 の上図に示すように,物体の両端にバネをつけ,左側のバネの左端と右側 のバネの右端を壁に固定した場合を考える。左側と右側のバネのバネ定数を k1 と k2 ,自然 長を L1 と L2 とする。物体が静止しているときに,2つのバネは自然長であるとする。す なわち,このとき,物体はどちらのバネからも力を受けていない。物体が静止した位置から x(x > 0)だけ移動したとき,左側のバネは自然長より伸びているので縮もうとし,物体に は左へ引っ張る力がはたらく。これは F1 = −k1 x と表せる。 一方,右側のバネは自然長より縮んでいるの で伸びようとし,物体には左へ押す力がはた らく。これは F2 = −k2 x と表せる。x < 0 の 場合には,それぞれ,x > 0 の場合とは逆向 きの力がはたらくが,F1 と F2 は同じ式で表 せる。よって,物体の運動方程式は m L1 x 0 d2 x = F1 + F2 = − (k1 + k2 ) x (2.19) dt2 で与えられる。これは単振動の運動方程式で ある。 例4: L2 x 0 図 2.5: バネの両端を固定した調和振動子 次に,図 2.5 の下図に示すように,バネを固定した2つの壁の距離を L だけ短く する。2つのバネは自然長より縮むので,伸びようとして物体に力を及ぼす。それぞれのバ ネの縮んだ長さを L1 ,L2 とすると, k1 L1 = k2 L2 , より L1 = k2 L , k1 + k2 L1 + L2 = L L2 = k1 L k1 + k2 である。物体が静止する位置を x 軸の原点とすると,物体が左側のバネから受ける力 F1 と 右側のバネから受ける力 F2 は F1 = − k1 (x − L1 ), F2 = − k2 (x + L2 ) 2.3. 減衰振動 17 と表せる。従って,物体の運動方程式は m d2 x = F1 + F2 = − k1 (x − L1 ) − k2 (x + L2 ) dt2 であるが,k1 L1 = k2 L2 の条件より,運動方程式は単振動の方程式 m d2 x = = − (k1 + k2 ) x dt2 になる。これは,例3の運動方程式と同じである。すなわち,バネの長さが自然長であるか 否かに係わらず,物体の運動は単振動になる。 2.3 減衰振動 物体を振動させると,普通,しだいに振幅が小さくなって,やがて止まってしまう。振 り子の運動などもこの一例である。このような運動を 減衰振動 という。振動が減衰するの は,振動体に空気の抵抗があったり,バネ自身の内部におこる摩擦や支えの点での摩擦が原 因になっている。ここでは,簡単のため,速度に比例する摩擦力による1次元の減衰振動を 考える。 運動方程式 摩擦力の比例定数を便宜上 2mβ (β > 0)として運動方程式は m d2 x(t) dx(t) = − kx(t) − 2mβ 2 dt dt と書ける。ここで,単振動の場合と同様に ω = (2.20) k/m とおくと,運動方程式は dx(t) d2 x(t) + ω 2 x(t) = 0 + 2β dt2 dt (2.21) と書き直せる。 運動方程式の解 この運動方程式を直接積分することは難しい。そこで,解として x(t) = exp(−λt) (2.22) の形を仮定する。これを (2.21) に代入すると λ2 − 2βλ + ω 2 = 0 (2.23) が得られる。この2次方程式の解は,β と ω の大小関係に応じて, β 2 − ω2 < 0 共役複素数解 β 2 − ω2 > 0 異なる実数解 β 2 − ω2 = 0 重解(実数解) λ = β λ = β± λ = β± ω2 − β 2 i β 2 − ω2 (2.24) 第2章 18 1次元の運動(1) 以下に,それぞれの場合の解を示す。 (1) β 2 − ω 2 < 0 (比較的抵抗が小さい)場合 解は x(t) = e−βt A eiγt + B e−iγt γ= ω2 − β 2 (2.25) と表せる。ここで, ei θ = cos θ + i sin θ (2.26) の関係を用いると,振幅 a と 位相定数 δ を適当にとって,実数解は x(t) = a e−βt sin (γt + δ), と書ける。時間とともに振幅が a e−βt にした がって減少する単振動と解釈することができ る(図 2.6 実線)。ただし,摩擦の効果により 振動数は減少する。 γ= ω2 − β 2 (2.27) x (2) β 2 − ω 2 > 0 (比較的抵抗が大きい)場 合 実数解 x(t) = e−βt A eγt + B e−γt , t γ = β 2 − ω2 (2.28) が得られる。この場合,振動とは言っても, e−βt によって,単振動の周期よりも短い時 間で減衰してしまい,運動は非周期的になる 図 2.6: バネの両端を固定した調和振動子 (図 2.6 点線)。これを過減衰という。 (3) β 2 − ω 2 = 0 の場合 この特別な場合,λ は1つの解(重解 λ = β )しかもたない ので,上に示した2つの場合と異なり,2つの独立な項が現われない。そこで,定数変化法 を用いて一般解を求める。 x(t) = f (t) e−βt (2.29) として,運動方程式 (2.21) に代入し,β = ω を用いると,f (t) に対する微分方程式 d2 f (t) = 0 dt2 (2.30) が得られる。時間について2回積分して,2つの積分定数 A と B を持った x(t) = (A t + B) e−βt (2.31) が一般解である。この振動も e−βt による減衰が優勢であり,非周期的になる。この減衰振 動を特に 臨界減衰 という(図 2.6 一点鎖線)。 2.4. 強制振動 2.4 2.4.1 19 強制振動 抵抗がない場合の強制振動 原点からの距離に比例するバネによる引力を受けて x 軸上を運動する物体に,次の式で 表される振動的な外力 Fext (t) が作用する場合を考える: Fext (t) = F0 cos ωt. 運動方程式 便宜上 f = F0 /m として,運動方程式は(物体の質量 m で割って) d2 x(t) + ω02 x(t) = f cos ωt dt2 と書ける。ここに,k をバネ定数として,ω0 = 運動方程式の解 (2.32) k/m である。 運動方程式 (2.32) の一般解は,(2.32) を満足する特解と,右辺を 0 と おいた方程式の一般解の和で表される。特解は一般に多数あるが,その1つを χ(t) とする。 また,(2.32) の右辺を 0 とした方程式は単振動の運動方程式に等しい。従って,運動方程 式 (2.32) の一般解は x(t) = C1 sin ω0 t + C2 cos ω0 t + χ(t) (2.33) と表せる。 特解として,2つの定数 C と φ を用いて,次の形を仮定する: x(t) = χ(t) = C cos (ωt + φ) これを運動方程式 (2.32) に代入すると C(ω02 − ω 2 ) cos (ωt + φ) = f cos ωt となる。この式が任意の時刻 t について成り立つのは, C(ω02 − ω 2 ) = f, φ=0 のときである。よって,運動方程式の一般解 (2.33) は x(t) = C1 sin ω0 t + C2 cos ω0 t + ω02 f cos ωt − ω2 (2.34) と表せる。 振動していない物体に t = 0 から振動的外力が作用して振動が始まった状況を考えてみ る。始めのうちは振動の振幅は小さいはずである。しかし,一般解 (2.34) は,ω → ω0 の とき,第3項が発散してしまう。つまり,(2.34) は解ではないように見える。この問題は, 第2項の係数 C2 を C2 = C2 − f ω02 − ω 2 第2章 20 1次元の運動(1) と取ることによって回避できる。すなわち,解は x(t) = C1 sin ω0 t + C2 cos ω0 t + ω02 f ( cos ωt − cos ω0 t ) − ω2 (2.35) と書き換えられる。この解は,ω → ω0 のとき −→ x(t) C1 sin ω0 t + C2 cos ω0 t + f t sin ω0 t 2ω0 となり,外力が加えられ始めてからの時間に比例して振幅が増加していく強制振動が表され る。つまり,(2.34) はこのような場合も含む一般的な解になっているのである。 2.4.2 抵抗がある場合の強制振動 バネの力と振動的な外力 Fext (t) のほかに,速度に比例する抵抗がはたらく場合を考え る。運動方程式は(物体の質量 m で割って)次の式で与えられる: dx(t) d2 x(t) + ω02 x(t) = f cos ωt. + 2β 2 dt dt (2.36) 運動方程式の右辺を 0 とした方程式は減衰振動の運動方程式 (2.21) に等しい。従って,一 般解は,特解の1つを χ(t) として,次の形に書ける: x(t) = A1 e−λ1 t + A2 e−λ2 t + χ(t). (2.37) 2つの定数 A1 と A2 が初期条件によって定まる定数であり,特解は,下に見るように,初 期条件に依存する定数を含まない。 特解: 振動がどのように始まっても,時間が十分に経過した後では,解 (2.37) の第1項 と第2項は 0 になってしまい,特解 χ(t) だけが残る。このとき,物体の振動は振動的な外 力と同じ角振動数 ω をもつはずである。そこで, x(t) = χ(t) = C cos (ωt + φ) を仮定する。運動方程式 (2.36) に代入すると, − C(ω 2 − ω02 ) cos (ωt + φ) − 2βCω sin (ωt + φ) = f cos ωt となり,この式が任意の時刻に成り立つことより,定数 C と φ が f C = , (ω 2 − ω02 )2 + 4β 2 ω 2 tan φ = 2βω − ω02 (2.38) ω2 と定まる。C は次の値をとる: ω = ωr = ω02 − 2β 2 のとき 最大値 Cmax = f 2β ω02 − β 2 . 2.4. 強制振動 21 この現象を 共振 または 共鳴 とよぶ。 定数 C を ω の関数として 図 2.7 に示す。 曲線は,下から順に, β = ω0 (点線) β = 0.2 ω0 (一点鎖線) β = 0.1 ω0 (破線) β = 0.05 ω0 (実線) である。 摩擦が大きいときは共振が明瞭ではない が,小さくなるに従って共振が顕著になっ て C は狭い幅で大きくなり,C の最大値 も大きくなる。β = 0 の極限が,摩擦が ない場合の強制振動に対応する。 C ω 図 2.7: 共振:特解の振幅 複素数を用いて解く方法 運動方程式 (2.36) は複素数 z = x + i y を用いて解くことができる。運動方程式を dz(t) d2 z(t) + ω02 z(t) = f eiωt + 2β dt2 dt (2.39) と書き換えると, dx(t) dy(t) dz(t) = +i dt dt dt 及び eiωt = cos ωt + i sin ωt より,(2.39) の実部が運動方程式 (2.36) になっていることがわかる。すなわち,方程式 (2.39) の解の実部が運動方程式 (2.36) の解である。 C を複素定数として z = C eiωt とおいて,運動方程式 (2.39) に代入し,定数 C を定めると C = f (ω 2 − ω02 ) 2f βω −i 2 = Cr + i Ci 2 2 2 2 2 (ω − ω0 ) + 4β ω (ω − ω02 )2 + 4β 2 ω 2 となる。ここに,Cr と Ci は実定数で,複素定数 C の実部と虚部である。従って, z = C eiωt = (Cr + i Ci ) ( cos ωt + i sin ωt) の両辺の実部が等しいことより x = Cr cos ωt − Ci sin ωt が得られる。これは,運動方程式 (2.36) の特解に一致することは容易に確かめられる。 第2章 22 2.5 1次元の運動(1) 連成振動 図 2.8 に示すように,質量が m の3つの物体が互いにバネでつながれ,また,両端の2 つのバネは壁に固定されている。左から順に,バネ定数を k1 ,k2 ,k3 ,k4 とする。また, 物体が静止しているとき4つのバネは自然長であり,物体には力を及ぼしていないとする。 このときの3つの物体の位置を,それぞれ,3つの物体の変位 x1 ,x2 ,x3 の基準となる原 点とする。 x1 x2 x3 図 2.8: 連成振動(自由度が3の場合) 3つの物体の変位が x1 ,x2 ,x3 であるとき,4つのバネの自然長からの伸びは x1 , x2 − x1 , x3 − x2 , − x3 であるので,3つの物体の運動方程式は d2 x1 = − k1 x1 − k2 (x1 − x2 ) dt2 d2 x2 = − k2 (x2 − x1 ) − k3 (x2 − x3 ) m dt2 d2 x3 = − k3 (x3 − x2 ) − k4 x3 m dt2 と書ける。ここで,次の形の解を仮定する: m xi = ai cos (ωt + φ), (2.40) ( i = 1, 2, 3 ) これを運動方程式に代入し,共通の cos (ωt + φ) を除いて, − mω 2 a1 = − (k1 + k2 ) a1 − mω 2 a2 = + k2 a2 + k2 a1 − (k2 + k3 ) a2 − mω 2 a3 = + k3 a3 (2.41) + k3 a2 − (k3 + k4 ) a3 が得られる。この方程式は行列 M とベクトル A を用いて M A = ω2A と表すことができ,ここに, ⎛ ⎜ M = ⎜ ⎝ k1 + k2 − k2 0 − k2 k2 + k3 − k3 0 − k3 k3 + k4 (2.42) ⎞ ⎟ ⎟, ⎠ ⎛ ⎜ a1 ⎞ ⎟ ⎟ A = ⎜ ⎝ a2 ⎠ a3 (2.43) 2.5. 連成振動 23 である。すなわち,(2.41) は行列 M の固有値問題に帰着される。(2.43) の行列 M は,ω として3つの解(固有値)をもち,それぞれの固有値に固有ベクトル A が存在する。一般 に,N 個の物体が N +1 個のバネで結ばれている場合には,N × N の行列 M の固有値問 題に帰着される。 簡単な例として,N 個の等しい物体(質量 m)が N +1 個の等しいバネ(バネ定数 k ) で結ばれている場合を考える。便宜上,両端の壁に固定された物体を仮想すると,物体の運 動方程式は m d2 xn = −k (− xn−1 + 2xn − xn+1 ) dt2 ( n = 1, 2, · · · N ) (2.44) と表せる。xn = an cos(ωt + φ) を仮定して運動方程式に代入すると ω 2 an = k (− an−1 + 2an − an+1 ) m ( n = 1, 2, · · · N ) (2.45) が得られ,さらに,an = sin(pn + θ) を仮定して代入すると ω 2 sin(pn + θ) = k − sin p(n − 1) + θ + 2 sin pn − +θ − sin p(n + 1) + θ m が得られる。この式を,三角関数の公式を用いて変形すると, ω = 2 p k sin m 2 が (2.45) の解となることがわかる。ここで,便宜上導入した両端の物体が動かないという 条件 a0 = aN +1 = 0 から, p = π N +1 ( = 1, 2, · · · N ) が許される。これらは振動の基準モードと呼ばれ,N 個の基準モードが存在する。 番目の 基準モードは xn (t) = sin と表され,ここに, nπ cos (ω t + φ) N +1 (2.46) ω = 2 π k sin m 2(N + 1) (2.47) である。(2.46) の第1因子は n(位置)に係わる部分で振幅を表し,第2因子が時間ととも に振動する。
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