省エネ法改正の詳細検討状況

省エネ法改正の詳細検討状況
2009年3月
経済産業省 資源エネルギー庁
省エネルギー・新エネルギー部
省エネルギー対策課
目 次
1.現行における省エネ法の概要
2.省エネ法改正の詳細検討状況
2.
1
1.現行における省エネ法の概要
2
1.省エネ法とは
省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)は、石油危機を
契機として昭和54年(1979年)に、
① 内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料
資源の有効な利用の確保に資するため
② 工場、輸送、建築物及び機械器具についてのエネルギーの使用の
合理化を総合的に進めるために必要な措置等を講ずる
を目的に制定。
3
2.省エネ法の規制対象
①工場・事業場
工場を設置して事業を行う者
事業場(病院、ホテル、学校など)を設置して事業を行う者
② 輸
送
輸送事業者;貨物・旅客の輸送を業として行う者
荷主;自らの貨物を輸送事業者に輸送させる者
③住宅・建築物
建築時;住宅・建築物の建築主
既築物の増改築・大規模改修時;住宅・建築物の所有者・管理者
④機械器具
エネルギーを消費する機械器具の製造事業者・輸入事業者
4
3.対象となるエネルギー
燃 料
①原油及び揮発油(ガソリン)、重油、その他石油製品
②可燃性天然ガス
③石炭及びコークス、その他石炭製品
④燃焼その他の用途に供するもの
熱
上記に示す燃料を熱源とする熱(蒸気、温水、冷水など)
電 気
上記に示す燃料を起源とする電気
廃棄物からの回収エネルギー、風力・太陽光などの自然エネルギーは対象外。
5
4.エネルギー管理の業務フローと省エネ法に基づく義務
一般的なエネルギー管理の流れ
省エネ法に基づく義務
管理組織の整備
使用実態の把握
日常管理
エネルギー使用状況届出書
・判断基準に基づく管理の実践
・管理標準及び管理目標の設定
P DCAサイクル
消費実績把握及び原単位の管理
改善の検討と実行
年間実績把握と
中長期計画
・年間実績把握、原単位分析
・中長期的な計画の策定
エネルギー管理者(員)の
選任、届出
P DCAサイクル
定期報告書の提出
中長期計画書の提出※
※第1種エネルギー管理指定工場のみ
計画の実行
6
5.省エネ法による工場・事業場対策
省エネルギー法に基づき、対象となる工場・事業場に対し、エネルギー使用状況の定期報
告と省エネ目標達成のための中長期計画の作成・提出、エネルギー管理者の選任等を義
務付けることにより、計画的・自主的なエネルギー管理を徹底。
エネルギー使用量が多い工場・事業場
エネルギー使用量が中規模の工場・事業場
(第一種エネルギー管理指定工場)
(第二種エネルギー管理指定工場)
・エネルギー使用量(原油換算):1500kl/年以上∼3000kl/年未満
・エネルギー使用量(原油換算):3000kl/年以上
○工場
○事業場
措置事項
措置事項
・エネルギー管理者の選任
・エネルギー管理員の選任
(エネルギー管理士の資格
○工場・事業場
措置事項
・エネルギー管理員の選任
(エネルギー管理員講習の受講が必要)
が必要)
・定期報告の作成・提出
・定期報告の作成・提出
・中長期計画の作成、提出(作成に当たっ
・中長期計画の作成・提出
てエネルギー管理士の参画が必要)
・定期報告の作成・提出
工場
事業場
デパート
学校
オフィスビル
ホテル
7
6.省エネ法による工場・事業場に係る措置
省エネルギー法に基づき、対象となる工場・事業場に対し、エネルギー管理者の選任等
を義務付けることにより、計画的・自主的なエネルギー管理を徹底。
第一種エネルギー管理指定工場
第二種
エ ネルギー管理指定工場
指定なし
年間エネルギー使用量:3,000kℓ以上(原油換算kℓ)
1,500kℓ以上∼3,000kℓ未満
1,500kℓ未満
第一種特定事業者
第一種指定事業者
事業者の区分
製造業等5業種
業種
事業者の義務
選任
すべき者
提出
すべき書類
遵守
すべき事項
事業者の目標
製造業、鉱業、電気供給業
ガス供給業、熱供給業
左記業種の事務所
左記以外の業種
第二種特定事業者
−
全ての業種
全ての業種
−
例)ホテル、病院、学校など
エネルギー管理者
エネルギー管理員
エネルギー管理員
免状所有者
講習修了者/免状所有者
講習修了者/免状所有者
選任届
定期報告書
中長期計画書
選任届
定期報告書
中長期計画書
選任届
定期報告書
−
判断基準の遵守(管理標準の設定、省エネ措置の実施等)
中長期的に見て年1%以上のエネルギー消費原単位の改善
エネルギーの使用の合理化に係る指導・助言
行政による
チェ ック
エネルギーの使用状況に関する報告徴収・立入検査
工場現地調査(判断基準の遵守状況の調査)
合理化計画指示/公表・命令
勧告
8
7.エネルギー管理指定工場の指定状況
昭和54年の制定後、複数回の制度改正を経て、平成20年3月末現在において、
14,116事業所(熱と電気を合算した使用量が1,500kl/年[原油換算]以上)を指
定。この内、工場が9,375事業所(66%)を占める。
エネルギー管理指定工場数の推移
2006:熱電統合
14,000
1979:省エネ法制
新規
2003:1種拡大
12,000
1999:2種創設
10,000
1 種 へ 格上
新規
1 種 へ 格上
8,000
指定工場数(2008年3月末現在)
新規
6,000
工場
1 種 へ 格上
事業場
計
4,000
第1種
5,719 1,921
7,640
第2種
3,656 2,820
6,476
計
9,375 4,741
14,116
2,000
0
1種・工場
2種・工場
1種・事業場
2種・事業場
※工場:製造業等5業種(製造業、鉱業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業)に属する事業所をいう。
9
8.エネルギー管理者(員)の選任
省エネルギーの実現に向け、生産設備等の維持・管理などエネルギー管理に関する専門的
知識に基づき、事業者への提案や従業員への指示を行うなど、現場における省エネル
ギー推進の中核となる者を選任。
エネルギー管理者の選任要件
○エネルギー管理士免状の交付を受けている者
エネルギー管理者
エ ネルギー使用量
エネルギー管理員の選任要件
○エネルギー管理士免状の交付を受けている者
エネルギー管理員
○エネルギー管理員講習修了者
コ ー クス製造業、電気供給業
ガス供給業、熱供給業
2人
100,000kℓ
100,000kℓ以上
以上
その他の製造業
鉱業
左記業種の事務所
その他の業種
4人
3人
50,000kℓ
50,000kℓ以上
以上
1人
1人
2人
20,000kℓ
20,000kℓ以上
以上
1人
3,000kℓ
3,000kℓ以上
以上
1,500kℓ
1,500kℓ以上
以上
1,500kℓ
1,500kℓ未満
未満
エネルギー管理者
エネルギー管理員
エネルギー管理者
エネルギー管理員
1人
−
10
11
2.省エネ法改正の詳細検討状況
総合資源エネルギー調査会 工場等判断基準小委員会
取りまとめ(案) 概要
(パブリックコメントを踏まえ最終調整中)
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エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律の概要
○地球温暖化対策の一層の推進のためには、大幅にエネルギー消費量が増加している業務・家庭部門における省エネルギー
対策を強化することが必要。
○そのため、省エネ法を改正し、オフィス・コンビニ等や住宅・建築物に係る省エネルギー対策を強化します。
部 門 別 のエネルギー消費の動向
対策1.業務部門等に係る省エネルギー対策の強化
500
1990−2007比較
400
<現行>
運輸部門
一定規模以上の大規模な工場に対し、工場単位のエネル
ギー管理義務
300
20 0
( エ ネル ギー使用量ベース)
100
業務部門
<改正後>
0
産業部門
約9割
産業部門
約1割
50
75
100 %
①事業者単位(企業単位)のエネルギー管理義務を導入。
1.0倍
0
0
改正により増加
25
1.3倍
民生(業務・家庭)部門
200
現行 省 エネ法規制のカバー率
改正
1.1倍
40 0
90 9 1 92 93 94 9 5 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 0 6 07
対策2.住宅・建築物に係る省エネルギー対策の強化
出典:総合エネルギー統計、国民経済計算年報
<現行>
②フランチャイズチェーンについても、一事業者として捉え、
事業者単位の規制と同様の規制を導入。
大規模な住宅・建築物(2000㎡以上)の建築をしようとする者等に
対し、省エネルギーの取組に関する届出を提出する義務等
これらにより製造業を中心とした工場だけでなく、オフィスや
コンビニ等の業務部門における省エネルギー対策を強化。
<改正後>
その他の措置
<改正後>
各企業の省エネルギーの取組については以下の状況を勘案し
て総合的に評価することを規定。
・業種毎の省エネルギーの状況(セクター別ベンチマーク策定)
・複数の事業者が共同して省エネルギーを行う取組
(共同省エネルギー事業)
対策強化が必要
事業者単位の規制体系の導入
60 0
GDP
1.2倍
改正
①大規模な住宅・建築物に係る担保措置の強化(指示、公表に加
えて命令を導入)。
②一定の中小規模(300㎡以上)の住宅・建築物も届出義務等の
対象に追加。
③住宅を建築し販売する事業者に対し、住宅の省エネ性能向上を
促す措置を導入(多数の住宅を建築・販売する者には、勧告、
命令等による担保)。【いわゆる“住宅トップランナー基準”】
④住宅・建築物の省エネルギー性能の表示等を推進。
これらにより家庭・業務部門における省エネルギー対策を強化。
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1.事業者単位及びフランチャイズチェーン単位の裾切り値
設置しているすべての工場・事業場の年間のエネルギー使用量の合計が1,500kl(原油換算)以上である事業者を「特
定事業者」として国が指定します。
フランチャイズチェーン本部(連鎖化事業者)については、設置しているすべての工場・事業場と一定の条件を満たす加盟
店のエネルギー使用量の合計が1,500kl(原油換算)以上である事業者を「特定連鎖化事業者」として国が指定します。
特定事業者、特定連鎖化事業者は事業者単位(加盟店含む。)での中長期計画・定期報告、役員クラスのエネルギー管
理統括者、それを補佐するエネルギー管理企画推進者の選任等が必要となります。
なお、3,000kl以上の工場・事業場については、「第1種エネルギー管理指定工場等」、 1,500kl以上の工場・事業場
については、「第2種エネルギー管理指定工場等」として国が引き続き指定します。
エネルギー管理指定工場等については、エネルギー管理者もしくはエネルギー管理員の選任等が必要となります。
工場
改正前
改正後
工場・ 事業場ごとのエネルギー管理
事業者全体としてのエネルギー管理
事業所
事業所
事業所
営業所
事業所
事業所
1,000k +
3,600kℓ
1,600kℓ
1,000kℓ
500kℓ
≧3,000kℓ
≧1,500kℓ
<1,500kℓ
<1,500kℓ
<1,500kℓ
第一種
エネルギー管理指
定工場として指定
第二種
エネルギー管理指
定工場として指定
対象外
対象外
対象外
600k
営業所
+
100k
50kℓ
1,700kℓ ≧ 1,500kℓ
[エネルギー管理の体制]
エネルギー管理指定工場ごとにエネルギー管理者等の選任
[計画策定・報告]
第1種エネルギー管理指定工場ごとに中長期計画書を提出
エネルギー管理指定工場ごとに定期報告書を提出
この場合、事業者全体で1,500kl以上となる ため、
特定事業者として指定
[エネルギー管理の体制]
役員クラスのエネルギー管理統括者の選任
管理統括者を補佐するエネルギー管理企画推進者の選任
エネルギー管理指定工場等ごとにエネルギー管理者等の選任
[計画策定・報告]
事業者単位の中長期計画・定期報告義務
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2.企業全体でのエネルギー使用量の把握
企業全体でのエネルギー使用量の把握
今回の改正に伴い企業全体でのエネルギー使用量の把握が必要。
エネルギー使用量データの記録
エネルギー使用量は平成21年4月から1年間記録。
フロー図のとおり、企業全体での年間の合計エネルギー使用量(平成21年4月∼2
2年3月まで)を正確に把握し、1,500k 以上であれば「エネルギー使用状況届出書」を
平成22年度に管轄の経済産業局へ届出。
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3.指定の条件となるフランチャイズチェーンの約款の定めについて
フランチャイズチェーン本部については、一定の条件を満たす加盟店を含め、事業者単位の義務が課せられます。
条件としては、その約款において本部が加盟店のエネルギー使用量を把握することができ、加盟店のエネルギー消費設
備の機種等を本部が指定していることとなります。
改正省エネ法の条文上の連鎖化事業者の定義
①定型的な約款による契約に基づき、特定の商標、商号その他の表示を使用させ、商品の販売又は役
務の提供に関する方法を指定し、かつ、継続的に経営に関する指導を行う事業であつて、
②当該約款に、当該事業に加盟する者(以下「加盟者」という。)が設置している工場等におけるエネル
ギーの使用の条件に関する事項であつて経済産業省令で定めるものに係る定めがあるものを行う者
条件案
連鎖化事業者が行う連鎖化事業に加盟する者が設置している当該連鎖化事業に係る工場等(加盟店)
に関し、以下の1及び2の両方の事項を満たしていること。
1.エネルギーの使用の状況に関する報告をさせることができること
2.以下のいずれかを指定していること
① 空気調和設備の構成機種、性能又は設定温度等
② 冷凍又は冷蔵機器の機種、性能又は設定温度等
③ 照明に係る機種、性能又は照度等
④ 加熱及び調理機器の機種、性能又は使用方法等
また、連鎖化事業者が定めた方針又は行動規範、マニュアルを遵守すべき定めが約款に規定されて
いる場合は、それらに1.及び2.条件が規定されている場合についても同様とする。
16
4.エネルギー管理統括者及びエネルギー管理企画推進者に充てるべ
き役職について
今回の省エネ法改正により、特定事業者、特定連鎖化事業者はエネルギー管理統括者、エネルギー管理企画推進者を
選任することが必要になります。
エネルギー管理統括者は事業者のエネルギー管理の統括管理、エネルギー管理企画推進者はその補佐を行うことが職
務となります。
エネルギー管理統括者は「事業の実施を統括管理する者」から、エネルギー管理企画推進者は「エネルギー管理講習修
了者もしくはエネルギー管理士」から選任することが必要になります。
エネルギー管理統括者
【事業者全体としての取組】
○ 経営的視点を踏まえた取組
○ 中長期計画作成のとりまとめ
○ 現場管理に係る企画立案、実
務の実施(マニュアル作成等)
特定事業者
特定事業者の
代表者
新設
補佐
エネルギー管理
統括者
新設
エネルギー管理
企画推進者
条件:法律上「事業の実施を統括管理する者」をもって充てるとさ
れており、事業経営の一環として、事業者全体の鳥瞰的
なエネルギー管理を行い得る者
役割: ①経営的視点を踏まえた取組の推進
②中長期計画のとりまとめ
③現場管理に係る企画立案、実務の実施
エネルギー管理企画推進者
条件:
エネルギー
管理者
エネルギー
管理員
従業員
従業員
第1種指定工場等
第2種指定工場等
役割:
従業員
従業員
その他工場等
その他工場等
【現場での取組】
エネルギー管理講習修了者 又は
エネルギー管理士の資格を有している者
エネルギー管理統括者の職務を実務面から支えること
エネルギー管理者及びエネルギー管理員
条件:
役割:
現行省エネ法どおり。
現行法に引き続き、エネルギー管理指定工場等の現場
におけるエネルギー管理を実施し、エネルギー管理統17
括者及びエネルギー管理企画推進者と連携しつつ、経
営判断に基づく組織的な取組を実施することにより、事
業者全体として効率的かつ効果的な省エネルギー対
策を図ること
17
5.判断基準改正の基本的考え方
省エネ法では、事業者の省エネの適切かつ有効な実施を図るために、事業者の判断の基準となるべき事項を国が定めるこ
ととなっています。
今回の法改正により、専ら事務所その他これに類する用途に供する工場等における事項と、それ以外の工場等における事
項を分けて基準を定めることにしました。
また、法律が工場単位から事業者単位に改正されたことに伴い、事業者全体としてエネルギー消費原単位を中長期的にみ
て年平均原単位1%改善することを努力目標として記載しました。
また、事業者が設置している工場・事業場を俯瞰して、適切な省エネを行う際に取り組む内容について、前段に定めました。
事業者は、この判断の基準に基づき、省エネを行っていただくことになります。
■現行の判断基準の構成
■改正後の判断基準の構成(案)
Ⅰ エネルギーの使用の合理化の基準
Ⅰ エネルギーの使用の合理化の基準
前段:事業者が設置している工場・事業場を俯瞰して取り組む内容
一
二
三
四
五
燃料の燃焼の合理化
加熱及び冷却並びに伝熱の合理化
廃熱の回収利用
熱の動力等への変換の合理化
放射、伝導、抵抗等によるエネルギーの
損失の防止
六 電気の動力、熱等への変換の合理化
改正
1.工場等であって専ら事務所その他これに類する用途に供するものに関す
る事項
(1)空気調和設備、換気設備
(2)ボイラー設備、給湯設備
(3)照明設備、昇降機設備及び動力設備
等
2.工場等(1に該当するものを除く)に関する事項
(1)燃料の燃焼の合理化
(2)加熱及び冷却並びに伝熱の合理化
(3)廃熱の回収利用
等
Ⅱ エネルギーの使用の合理化の目標及び計画
的に取り組むべき措置
努力目標:原単位年平均1%以上低減
Ⅱ エネルギーの使用の合理化の目標及び計画的に取り組むべき措置
1.エネルギー消費設備等に関する事項
1.エネルギー消費設備等に関する事項
①専ら事務所に関するものと②その他の工場等に関するものとに分ける
2.その他エネルギーの使用の合理化に関する
事項
2.その他エネルギーの使用の合理化に関する事項
努力目標:事業者全体で原単位年平均1%以上低減
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6.定期報告書改正の基本的考え方
特定事業者、特定連鎖化事業者は毎年度、エネルギーの使用の状況について報告をすることが必要
となります。(事業者が設置している工場等全体の情報を報告することが必要となります。)
エネルギー管理指定工場等の情報は、現場でのエネルギー管理が引き続き重要であるため、これま
で同様に事業者の定期報告の内訳として報告することが必要となります。
指定されていない工場等については、報告事項を簡素化しております。
エネルギー使用量15kL/年未満であり、総エネルギー使用量の1%未満の工場等については、国に最
初にエネルギー使用量を報告する際(使用状況届出書)に用いた値と同じ値をその年度のエネルギー
使用量として報告することができます。
改正後における定期報告書の主な記載内容
■特定事業者又は特定連鎖化事業者の内容
○名称・所在地等
○エネルギー使用量及び販売した副生エネルギー等の量(全工場・事業場の合計量)
○全体又は事業分類ごとのエネルギ−消費原単位等
○過去5年度間のエネルギー消費原単位の変化状況
○過去5年度間のエネルギー消費原単位が年平均1%以上改善できなかった場合の理由等
○ベンチマーク指標の状況等(該当する事業者のみ)
○判断の基準の遵守状況
○エネルギー管理指定工場等の一覧
○エネルギー管理指定工場等に指定されておらず、新たにエネルギー使用量が1,500kl以上となる
工場等の一覧
■内訳としてエネルギー管理指定工場等の内容
※現行法における定期報告書の内容とほぼ同様の情報を記載
19
7.テナントビルにおけるエネルギー管理の在り方について
テナントビルにおけるテナント専用部分は、オーナー側のみ、又はテナント側のみの努力だけでは省エネルギーにつながらな
い場合が多く、より一層省エネルギーを進めることを目的に、オーナー・テナント双方から状況の報告を求めることとします。
現行の運用
テナント専用部のうち、テナント側にエネ
ルギー管理権原がある設備の使用量は
テナント側に報告義務
オーナーには、上記以外の部分につい
て報告義務
※エネルギー管理権原・・・設備の設置・更新権限を有
し、エネルギー使用量を実測値として把握できること
<報告対象のイメージ>
ビル全体
オーナーは現行と同じ範囲の報告が必
要です。
テナントはエネルギー管理権原が存在
しないテナント専用部のエネルギーも
含めて報告が必要になります。
オーナーは、テナントに対し、テナント
専用部のエネルギー使用量について
可能な範囲で情報提供することが必要
になります。(判断の基準にも規定)
テナントは、実測値を報告することが困
難な場合、推計値で報告してもよいこと
とします(参考参照)。
テナントの設備
照明
WH
WH イ
AC
空調
エ ネルギー
㋺
コンセント
テナントB
AC
HP
WH
WH ①
テナン トに管理権原がある
設備
照明
空調
エ ネルギー
㋥
オーナーの設備
PAC
①
運用変更
改正後の運用
テナントA
WH
WH ハ
②
コンセント
パソコン
WH
WH ②
冷蔵庫
α 電力会 社等
WH、ガスメ ータ
WH:電力量計
HP:ヒートポンプ
AC:空調機
PAC:持込型空調機
(補足1)PAC、パソコン、冷蔵庫はテナントが持ち込んだ設備
(補足2)照明はオーナー所有の設備
(補足3) はビル全体のエネルギー使用量(オーナーのみ把握)
現行の運用
オーナーは「 −①−②」を報告
テナントAは「①」を報告
テナントBは「②」を報告
改正後の運用
オーナーは「 −①−②」を報告(現行どおり)
テナントAは「㋑+①+㋺」を報告(㋑㋺はオーナーからテナントに情報提供)
テナントBは「㋩+②+㋥」を報告(㋩㋥はオーナーからテナントに情報提供)
20
8.セクター別ベンチマークについて
今回の法改正により、特定の業種(セクター)ごとに、事業者の省エネ状況を比較できる指標(ベンチマーク指標)を設定し、
非常に進んでいる事業者を評価するとともに遅れている事業者に更なる努力を促す「セクター別ベンチマーク」を導入するこ
とになりました。
まずは、主要なセクター(エネルギー多消費産業等)ごとに、ベンチマーク指標を設定するとともに、中長期的に目指すべき
水準を設定しました。
対象となる事業者は、今後、①「判断基準」(基準部分)の遵守状況、②エネルギー消費原単位の改善状況、③ベンチマー
ク指標の状況の3つを国が総合的に評価することになります。
−意義
○省エネルギーの努力の結果の相対評価が可視化されることにより、事業者の努力を促進
○新たな評価指標を追加することにより、省エネ法の公平性を確保
○国際的な検討の場におけるアピール(ベンチマーク手法の実証)
−省エネ法上の位置づけ
経済産業大臣が定める「判断基準」の中に「セクター」、「ベンチマーク指標」、「中長期的に目指すべき水準」を規定し、定
期報告書において、報告を求める
<今回ベンチマークを設定することになる主要セクターの内容>
ⅰ)ベンチマーク指標
○高炉による鉄鋼業・・・・粗鋼当たりのエネルギー使用量
○電炉による普通鋼製造業・・・・上工程の原単位(粗鋼当たりのエネルギー使用量)と下工程の原単位(圧延量あたりのエネルギー使用量)の和
○電炉による特殊鋼製造業・・・・上工程の原単位(粗鋼当たりのエネルギー使用量)と下工程の原単位(出荷量あたりのエネルギー使用量)の和
○電力供給業・・・・定格出力における発電端熱効率を設計効率により標準化した値及び火力発電熱効率
○セメント製造業・・・・原料工程、焼成工程、仕上工程、出荷工程それぞれの工程における生産量当たりのエネルギー使用量の和
ⅱ)目指すべき高い水準
○国内事業者の分布から、その上層となる事業者が満たす水準
ⅲ)その他
○事業者の分布の平均値や標準偏差について国が公表
○特に進んでいる事業者・事業所についても事業者と相談の上、公表
21
9.共同省エネルギー事業について
今回の法改正により、事業者が自主的に行う共同省エネルギー事業について、国はその取組を促進するよう、法律
の施行にあたり適切な配慮をすることとなりました。
共同省エネルギー事業とは
「①他の者のエネルギーの使用の合理化の促進に寄与し、②我が国全体のエネルギーの使用の合
理化に資する事業」と法律上定義。
共同省エネルギー事業に対する配慮
共同省エネルギー事業を実施した事業者は、 定期報告書に、共同省エネルギー事業の取組状況について自主的
に書類の添付できることとします。
共同省エネルギー事業の取組状況にかかる書類に基づき、国は事業者の取組について勘案・評価します。
定量化が可能な場合は、中立的な第三者の認証を受けた場合に限り、共同省エネルギー量について報告可能とし
ます。
当該事業が実施された場合
当該事業が実施されなかった
共同省エネルギー量
= 場合のエネルギー使用量
ー
のエネルギー使用量
事業者が共同省エネルギー量を報告した際、当該事業者が自らの省エネルギー努力を十分に行っているにもかか
わらず、エネルギー消費原単位が年平均1%以上低減できていなかったとしても、報告する年度においてエネル
ギー消費原単位を年平均1%以上低減する際に必要となるエネルギー削減量見合い以上の共同省エネルギー量
を報告する場合は、そのような状況を国として勘案・評価します。
国内クレジット制度の方法論の活用
国内クレジット制度で認証を受けた事業について、中立的な第三者の認証を受けた共同省エネルギー事業として簡
易に報告できるようにします。
22
10.その他
中長期計画書改正の基本的考え方
事業者単位への変更に伴い、事業者が設置している工場等全体の計画を記入することが必要とな
ります。
これまで第一種エネルギー管理指定工場ごとに提出を行っていた計画内容については、引き続き
最新の状況を記載することが必要です。
燃料の発熱量、他人から供給された熱・電気の換算係数の見直しについて
燃料の発熱量は、総合エネルギー統計2005年度からの適用値を採用し、所要の改訂をします。
他人から供給された熱・電気の一次エネルギー換算係数については、改訂しません。(前回の法改
正時(平成17年、2005年)において新たに設定されており、経時的連続性を考慮するため。)
産業部門における地縁的一体性を持った複数事業者の取扱いについて
工場の敷地内に、他の事業者の工場が設置されている場合において、一定の条件を満たす場合、
事業者が他の事業者の工場における省エネ法上の義務を負うことができることとします。
シミュレーションツールを用いた分析手法について
業務部門の事業者が可能な省エネルギー対策を行った場合、どの程度事業場の原単位を低減でき
るかをシミュレーションし、分析することで、自らの省エネルギー対策の状況を客観的に把握し、さら
なる対策を検討することができることから、省エネルギーセンターにおいて、業務部門のシミュレー
ションツールの一例を開発します。
23
(参考)テナントのエネルギー使用量の推計手法について
テナントの空調エネルギーを算出する手法
推計手法については、あくまで事業者がその状況に応じ、最も適切かつ合理的な手法を選択すること
が求められます。以下に推薦手法を示します。
テナントの空調エネルギーを算出する場合には、以下3つの手法が考えられます。
可能な限り、BEMS等を用いて計量を行い、正確な値を用いることが望ましいのですが、計量器
がついていない場合については、手法2及び3を用いることとなります。
手法1
計量する手法
(計量手法)
手法2
手法3
ビル全体のエネルギー使用量
からテナント情報を考慮して案
分する手法(案分手法)
手法2の詳細
手法2−1:テナントの活動情報を考慮して案分
手法2−2:テナントの面積を用いて案分
可能な限り正確な値を求めるためには、手法2−
1を用いることが望ましいと考えられます。
手法2−1の手法については、省エネルギーセン
ターにおいてツールの一例を開発し、3月までに公
表する予定です。
テナントやビルの情報を考慮し
て推計する手法
(テナント推計手法)
手法3の詳細
・手法3−1:手法2−1で用いた省エネルギーセンターの
ツールの活用
・手法3−2:類似の業態のテナントの原単位を用いて算出
手法3−1における省エネセンターのツールでは、テナントの電気の使
用量からテナントのエネルギー使用量を推計できるようにする予定であ
り、ビル全体のエネルギー使用量がわからない場合においても推計で
きるようにする予定です。これを用いていただくのも一案です。
手法3−2については、同様の業態の事業を行うテナントの原単位を把
握している場合に、その値を用いて推計するといった手法です。例え
ば、同一事業者内において同様の事業を行っている場合は、そのテナ
ントの原単位を用いることも一案となります。
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(参考)主な手続きのスケジュール
経済産業局に使用状況届出書を届け出ると経済産業局から指定を受け、特定事業者(又は特定連鎖
化事業者)となります。特定事業者(又は特定連鎖化事業者)は下図に示すとおり、エネルギー管理統
括者の選任、エネルギー企画推進者の選任、定期報告書・中長期計画書の提出が必要となります。
4月
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すべての事業者が平成21年度に実施すべきことは
第1に 事業者が設置するすべての工場や事業場において、定期的(日、週、月、年)
にエネルギーの使用量を計測して下さい。
対象期間:平成21年4月1日∼平成22年3月31日
★省エネ法でのエネルギーとは、
○燃料 (原油、揮発油、重油、その他石油製品、可燃性天然ガス、石炭、コークス、
その他石炭製品、燃焼その他の用途に供するもの)
○熱
(化石燃料を熱源とする熱(蒸気、温水、冷水等)
○電気 (化石燃料由来の電気)
注意! エネルギー使用の極めて小さな工場や事業場(少人数の営業所、ビル等)におい
ても平成21年度のエネルギー使用量を計測・把握する必要があります。
第2に 計測した数値を記録し、保管をして下さい。
第3に 平成21年度の1年間の全工場・事業場のエネルギーの総使用量を原油換算表*
を使って原油換算し、一定量(1,500kl )以上であるかを確認します。
一定量
以上
平成22年○月末日までに「エネルギー使用状況届出書」を本社所在地を所管している
経済産業局に提出して下さい。
平成21年2月現在、提出期限は未定。
* (原油換算用の簡易ツールURL)http://www.eccj.or.jp/law06/xls/07_01.xls
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お問い合わせ先
改正省エネ法に関する情報は以下のホームページでも掲載しております。
〔資源エネルギー庁省エネ法改正の概要 URL〕
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/080801/080801.htm
改正省エネ法に関するご質問は、以下連絡先までお問い合わせください。
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