地球の健康診断書

05/02/08
IPCC第三次評価報告書に基づく
地球の健康診断書
1000
1.健康状態
判 定 ( 病名 : 地球温暖化病 )
〔 優 ・ 良 ・ 可 ・ 不可
図2 今後 100 年間のCO2 濃度予測
〕
970ppm
現在のような
状態が続いた場
合の100年後の
CO2濃度。
900
二酸化炭素濃度 (ppm)
2.検査結果(告知義務)
(1) 二酸化炭素(CO2)濃度値
過去 42 万年間で現在の CO2 濃度を越えたことがなく(※1)、最近では年間
2ppm 以上の割合で急激に増加しつつあり、極めて深刻です。
図1:南極ヴォストーク基地の氷柱試料の分析によれば、過去 42 万年間に地球は
10 万年周期で 4 回の氷期を経験した。大気中二酸化炭素濃度は間氷期には
A1FI
800
A1FIシナリオ
A2
A1B
540∼970ppm
B2
A1T
B1
700
京都議定書が
想定する100年後
の上限濃度。
B1 シナリオ
600
280 ppm、氷期には 180 ppm と周期的に変動した。(※2)
550ppm
図2:IPCC 第三次評価報告書では、6種類の排出シナリオを想定し、百年後の平均
500
気温・海面水位・大気中CO2 濃度予測などを行っている。B1シナリオの最低
約1万年間、CO2濃度は安定し、気候
は奇跡的なバランスを保った。
これにより、人類は急速に繁栄した。
値と A1FIシナリオの最高値を採用して予測の増減巾としている。(※1)
B1シナリオ
400
374ppm(2002年)
300
275
250
225
800
300ppm
700
42 万年以上続いた増減巾(180∼300ppm)
大気中のメタン濃度
600
大気中のCO2濃度
南極上空の気温
400
175
300
42
±0
−4
500
200
+4
180ppm
40万年前
(氷河期)
30万年前
−8
(氷河期)
20万年
(氷河期)
現在の気候との温度差(℃)
325
メタン濃度 (ppb)
二酸化炭素濃度 (ppm)
図 1 大気中の二酸化炭素経年変化と将来予測
10万年前
ネアンデルタール人
ホモ・サピエンス(旧人)
280ppm
(氷河期)
200
現在、1 年間に
2ppm 以上の割
合で急増中。
現在
クロマニヨン人
人類が言葉を持ち始める
-1-
300
現在のCO2濃
度は人類史上
で最高位!
05/02/08
(2) その他の検査結果
■経 済 的 打 撃 : 1950 年から 1990 年間
に環境破壊による経済的損失は 10 倍
■平均気温 : 地球の平均気温は、20 世紀中に 0.4∼0.8℃上昇した。(日本は
に達した。今後も急激に増加の恐れが
約 1.0℃上昇した。(※3)
ある。(※4)
■北半球の海氷 : この数十年、晩夏か
1950 年代の年間 40 億 US ドルか
ら初秋の期間、北極の海氷の厚さは
ら 1990 年代には年間 400 億 US ドル
約 40%減少した。(※4)(右図共)
へと増加し、今後も急激に増加する恐
■海面水位 : 20 世紀中に 10∼20 ㎝
上昇した。(日本の国土は、過去 70
年間に 120km2 消失した。(※5))
れがある。(※4)(右図共)
■末期症状 : 海氷や永久凍土の融解な
どの変化が北極・南極周辺に閉じ込め
3.予測される今後の症状
られていた温室効果ガスを放出し、結
■高 熱 化 : 地球の平均気温は 1990∼2100 年間に 1.4℃∼5.8℃上昇する。
果的に温暖化を加速する悪循環のきっ
かけになる恐れがある。(※4)
(日本の中央部付近では 2.5℃∼6.5℃上昇する。)(※3)
(現在の温暖化傾向は、日本が 4∼6km/年間 の速度で南に移動している状態
図 3 海洋の熱塩循環
海洋の熱塩循環(図3)
に同じ。)(※6)
A
は、地球全体の気候を安
温暖化の影響は、気温の上昇が2∼3℃を超えると悪影響が強くなり、
B
5.8℃近くまで上昇すると破滅的な影響をもたらすこともある。(※7)
定化させる働きをしていた。
現在、グリーンランド付近
洪水、干ばつ、森林火災、台風の増加。農業や水産業への被害による食料
B
難。マラリアやデング熱など熱帯性感染症の増大。(※4)
の氷床の融解によって海
水の塩分濃度が低下し、
■海面水位の上昇 : 平均海面水位は 1990∼2100 年間に 9∼88cm 上昇する。
海洋の循環機能が低下し
65cm の海面上昇によって、日本の砂浜の 82%
引用:※19
:表層水
が消滅する。
沿岸の侵食、高潮のリスク増大、土地や財産の
:深層水
A: 沈降場所
B: 湧昇場所
熱塩循環と呼ばれる海流はA部で沈降し、B部で湧昇し、約 2000 年
かけて一巡していると言われている。
現在の予測では、2100 年までに熱塩循環が完全に止まることは示
されていない。2100 年以降、放射強制力の変化が十分大きく、かつ
十分長期にわたるとなると、熱塩循環はどちらの半球でも完全に停
止し、再び循環が起こることはないと考えられる。(※1)
損失、沿岸自然生態系の減衰、淡水域への塩水の
侵入、観光資源の消失。(※4)
(※8)
-2-
つつある。このような状態
が続くと、1 万年間続いた
「奇跡のバランス」が崩壊
し、気候が激変する恐れ
がある。 (※10)
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4.治療方法
(3) 難病を克服して新しい豊かさへ
2005 年の記録的な豪雨や
(1) 基本方針 :大気中の CO2 濃度を現在のレベルに安定化するには、直ちに排
これは、CO2 排出量を 1950∼60 年以前の状況に戻すことを意味している(※12)が、
大気中のCO 2濃度(ppm)
異常高温は、地球温暖化の危
出を 50∼70% 削減しなければならない。(※11)
機がすでに始まっていることを
感じさせます。今後とも異常気
「持続可能な地球環境」のための必要条件である。
象が激化すると予測されます
(2) 京都議定書的治療方法
が、その対策として洪水、干ば
先進国は第一約束期間(2008∼2012 年)までに温室効果ガスの排出量を 5%
図5 CO2濃度の経年変化と豊かさ
970ppm
現在
900
地球破滅に
800
向かう
700
A1FIシナリオ
古い豊かさ
600
1000
つ、食糧難などの合併症への
550ppm
B1 シナリオ
374ppm
500
(2002)
400
300
持続可能な
新しい豊かさ
200
(日本は 6%)削減する。国民の自主的主体的な環境活動を推進するためには、
治療体制を整備しながら、病気
治療開始から健康回復までの全体的治療計画の開示が重要である。日本の長
の根本的な原因である温室効
期的な削減計画は未決定なので、暫定的に下記及び図4を参考にされたい。
果ガスを大幅に削減する温暖化対策がますます重要になってきました。
くなります。今を生きる私たちには、「新しい豊かさ」に向かって持続可能な社会
を早急に構築することが強く求められています。(下線は※4)
【生 活】
○地産地消
【欧州の長期計画例】
図4 京都議定書と各国の削減状況
⑤米国・中国
②日本
10%
-30%
③ドイツ
①
-40%
現在の 1/3 まで削減
-50%
-60%
-70%
2100年
④
2050
2010
-20%
2000
-10%
年 代
【倫 理 ・ 教 育】
○環境税の導入
◎地域(南北)間格差
の縮小
◎サービス・情報中心
の社会
【各国の CO2 排出状況】
日本の短期目標値 ‒6%(※14)
0%
1990
二酸化炭素排出量の増減
30%
20%
【社 会】
・ドイツ :2050 年までに消費エネル
ギーを半減し、そのうち半分を再
生可能エネルギーでまかなう。
40%
脱くるま社会 3R運動
○省エネ型のライフスタイル
・英 国 :2050 年までに消費エネル
ギーを 60%削減する。
日本②
英国④
京都議定書①
ドイツ③
米国・中国⑤
1000
1100
1200
1300
1400
1500
1600
1700
1800
1900
2000
2100
2200
2300
大気中の温室効果ガスの濃度が低ければ低いほど、地球へのダメージも小さ
「地球温暖化防止京都会議」の開会宣言 (1997.12.8)
「長期的課題」(抜粋)(※13) ・・・IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のバート・
ボリーン名誉議長が述べられましたように、大気中の二酸化炭素濃度を 550ppm 以下
で安定化させるためには、2100 年までに世界中の一人あたりの年間二酸化炭素排出
量を、炭素換算で一トン以下に抑えること、すなわち、先進国においてはおよそ現在の
三分の一にまで削減することが必要です。
100
(1990∼2000 年比)
ド イ ツ
−19.9 %
スエーデン
−5.1 %
イギリス
−1.0 %
フランス
±0.0 %
日 本
+10.6 %
米 国
+16.3 %
中 国
+16.3 %
韓 国
+77.7 %
持続可能な
新しい豊かさ
【技 術 革 新】
生活価値
○環境効率 =
環境への影響
◎物質志向の減少
(少欲知足)
○全ての命の尊重
(共 生)
質の
向上
小さく
(環境効率: ISO14001, ファクターX, CASBEE)
◎クリーンで省資源の技術導入
-3-
◎印はB1シナリオの
条件項目を示す。
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5. 「地球の健康診断書」の目的と科学的根拠
(1) 目的
私達が病気を治す時は、まず最初に健康診断を受けて今の体の異常を知る
ことから始めるように、地球温暖化問題も、今の地球の事実を知ることが最も重
要との認識に立ち、作成したものです。また、「IPCC 第三次評価報告書」の末尾
には、「 終わりに,この評価報告書の目指すところでもあるが,研究の進展は
いつも政策決定に資する表現で周知する必要がある。」とも記されています。
(2) 科学的根拠
本診断書の科学的根拠としている 「IPCC 第三次評価報告書∼第一作業部
会報告書気候変化 2001 科学的根拠∼政策決定者向けの要約」は、2001 年 1
月に上海において、各国政府によって承認されたものであり、気候システムに対
する理解の現状を述べるとともに、予測される将来の変化とその不確実性の見
積もりを示したものです。上記報告書の一部(※1 の PDF)を下記に転載する。
(4) 引用文献
※1: IPCC「第三次評価報告書・・・」 気象庁報道発表資料 2001.3.6
※2: 「21 世紀の日本の気候」1.2.1 図「過去 40 万年にわたる南極の平均気温,・・・」
(IPCC 第
三次評価報告書より)」 篇 気象庁 出版 財務省印刷局(平成 14 年 3 月)
ただし、図 1 は元のグラフを横方向に拡張し、注釈を加えている。
※3:「地球温暖化の日本への影響 2001」 環境省報道発表資料 2001.3.6
※4: 「急激に温暖化した 20 世紀、危機はすでに始まっている。」 環境省リーフレット
※5:「地球温暖化の重大影響」 旧環境庁リーフレット 1997
※6:※1、※3 より、2030 年の地球の平均気温 0.6∼1.0℃、日本は 0.8∼1.3℃上昇すると仮定し、
※4 の移動速度で比例配分したもの。
※7:STOP THE 温暖化 2004 環境省リーフレット
※8:環境省パンフレットより引用
※9:KOBELCO NO266 (株)神戸製鋼所 2004.10.12
※10:「人類は 80 年で滅亡する」(西澤潤一・他共著 東洋経済新報社)から抜粋、要約 2000.2
※11:IPCC 第 2 次報告書 1995
※12:「地球環境ビジョン」 通産省 産業審議会地球環境部会報告書 1997.5
※13:「気候変動枠組条約第三回締約国会議における橋本総理開会宣言」 外務省・橋本元総理
の演説 1997.12.8
※14:温室効果ガスの目標値を示す。温室効果ガスは 90∼00 年比で、+8.0%、90∼02 年比で、
7.6%増となっている。京都議定書の削減目標は温室効果ガスで規定している。
※15:査読とは、提出された論文が水準に達しているかどうかを審査すること。通常、二人の匿名
の研究者が審査する。996 人の科学者の内訳は、総括執筆責任者と執筆責任者 計 122 人、
執筆協力者 516 人、査読編集者 21 人、 専門査読者 337 人
発行協賛のお願い
本紙では、地球温暖化の現状をできる限り明確に記述することに努めました。
これは、地球の真実の姿を日本のみならず米国や中国に発信し、地球温暖化防
止の流れをより確かなものにしたいとの願いによるものです。
現在、本紙の発行に協賛して頂ける方を募集しています。お問い合わせは、下
記事務局までよろしくお願い致します。
(3) 調査機関
製作・発行
調査を行なった IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change.気候変動に関
福井市わがまち夢プラン旭地区実行委員会 環境部会
する政府間パネル)は、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって
事務局 :〒910-0858 福井市手寄 2 丁目-1-1 福井市旭公民館内
Tel.Fax : 0776-20-5364 E-mail : [email protected]
設置された機関です。
調査者 : 本報告書のとりまとめと査読には、世界各国から 996 人の科学者
本文の無断複写を禁止します。許諾については上記事務局までお問い合
わせ下さい。
2005 年 2 月 5 日版
(※15)が参加した。
-4-