公園前薬局News 2011 年 月号 8 病院を選ぶように薬局も選んで下さい 知っていますか、こんな病気や副作用 胃食道逆流症 咳止めをのんでも止まらない咳、胃腸薬を手放せない胸焼け。 よくある症状、軽くみないで。 夏まっただ中ですが、咳でお困りの方はいらっしゃいませんか。 「夏かぜは長引くのよねぇ」とあきらめ気味の方、咳止めをの んでもよくならない方、特に胸焼けやげっぷなどの症状も合せてみられる方・・・もしかしたら、その咳、胃食道逆流症によるもの かもしれません。 耳鼻咽喉科で発見されることも 薬によって引き起こされることも 鉄腕アトムのテレビコマーシャルでご存知の方もいらっしゃるかも 胃食道逆流症はいろいろな原因によって引き起こされますが、その しれませんが、胃食道逆流症は、最近、増えている疾患の一つ。その 人の体型や体格も大きく関係しています。例えば、肥満の人。お腹周 名前の通り、胃液や胃の内容物が、胃から食道のほうへと逆流してし まうものをいいます。胃酸などの逆流によって、食道に炎症が起こっ りに脂肪がつくと、胃が押し上げられて逆流が起こりやすくなります。 腰が曲がっている人(円背の人)も ている場合などは「逆流性食道炎」と呼ばれることもあります。 前かがみの姿勢になるため、お腹 私たちが食事をしたとき、その食べ物は、食道を通って胃に送られ が圧迫され、胃食道逆流症になり ます。食道と胃のつなぎ目付近には「食道下部括約部」と呼ばれる部分 やすいと考えられます。 があり、食事中は圧をゆるめて食物を胃へ送り、それ以外のときは胃 このほか、お腹に力が入るスポー の内容物が逆戻りしないように、圧をかけて食道を締める働きをして ツ(ウェイトリフティング、ボディ います。だから、食後すぐ逆立ちをしても食べ物は口から出てこない ビルなど)やお仕事(僧侶など)をさ のです。 しかし、何らかの原因でこの圧が弱まったり、胃酸の分泌が増えた れている人、妊娠中の人なども注 意が必要です。 り、お腹に力がかかったりすることで、胃の内容物の食道への逆流が また、薬の中には食道下部括約 起こりやすくなり、さまざまな症状を生じるようになります。 どんさん よくみられる症状としては、胸焼けやげっぷ、呑酸(すっぱいもの 部の圧を弱める作用を有するもの があります。よく知られているのは、降圧薬の一種であるカルシウム がのどや口のほうまで上がってくる)、胃もたれなど。咳や声のかす 拮抗薬や気管支拡張薬のテオフィリンで れ、のどの異常感、耳の痛みなどを生じることもあり、耳鼻咽喉科で すが、心臓の薬やパーキンソン病の薬など 発見されることも少なくありません。人によっては、締めつけられる いろいろな薬がこの作用を持っています ような胸の痛みを感じることもあることから、狭心症や心筋梗塞など から薬剤師に確認してください。 心臓が悪いのではとひそ また、胃食道逆流症の人が、 「胸焼けが かに悩まれる方もあるよ ひどいから」とOTC薬の胃腸鎮痛鎮痙薬を うです。自分ひとりで悩 のんだとき。これらの薬に配合されている まないで、胸の痛みはど ことが多い抗コリン薬(ブチルスコポラミ んな時に起こり、どの程 ン臭化物、スコポラミン臭化水素酸塩水和 度継続するか胸の痛み以 物、ロートエキスなど)には、消化管運動 外に症状があるときには、 を抑え、食道下部括約部をゆるめる働きが その症状などを具体的に あるため、逆効果になってしまうことも考 メモして受診されること えられます。また、咳止めに含まれるコデ が大切です。 インも食道下部括約部をゆるめる働きが 公園前薬局 TEL.042- 646- 4986 [email protected] http://www.sic-info.co.jp/park FAX.042-660-8841 Copyright Ⓒ 2011 SIC-info. Co., Ltd. All rights reserved. ありますから、胃食道逆流症の咳のために、この咳止めをのむ とかえって症状は悪化してしまう可能性があります。 このように、別の病気の治療に用いていた薬が胃食道逆流 症を引き起こしたり、胃食道逆流症の症状をやわらげようとの んだ薬が症状を悪化させたり…ということもあります。 医療機関にかかるときは、お薬手帳を見せるなどして、ど 日常生活でも症状を悪化させない工夫を 胃食道逆流症の治療には、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(オ メプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウム)やH2ブロッ カー(ファモチジン、シメチジン、ラニチジンなど) 、制酸薬が用いられます。 市販の胃腸薬に配合されている制酸薬(胃酸を中和する成分)には速効性 があり、服用するとスッとすることも多いのですが、作用は一時的ですから、制 んな薬をのんでいるか(のんでいたか)をしっかりと伝えるよう 酸薬が手放せないという方は、胃酸の分泌を抑える薬が必要となります。また、 にしましょう。のんだ薬(OTC薬も含めて)をきちんと書き留め 市販の胃腸薬には抗コリン薬のようにかえって症状を悪化させてしまう成分を含 ておくことも忘れずに。 むものがありますから、市販の薬を購入するときは、薬剤師や登録販売者に現 でも、OTC薬を購入する時に、お薬手帳を持っていくという のは、 なかなか習慣にしづらいかもしれません。そんな時には、 在の症状を具体的に伝え、よく相談した上で薬を選ぶようにしましょう。 最低限、今服用中の薬を把握してもらうために、携帯電話をお 市販の薬を何度かのんでもよくならない場合、かえって症状が悪化した場 合、一旦よくなっても、再び症状を繰り返すような場合などは、薬剤師に相 もちのかたは、携帯でお薬手帳に記載されている薬品名を写真 談するか早めに医療機関で診てもらうようにして下さい。 に撮っておき、それを見せてもよいでしょう。 また、日常生活の中でも、ちょっとしたことに気をつけると、症状がひど くならずに済むこともあります (表1) 。 表 1 生活上のアドバイス ①からだを締め付けない。 腹部を圧迫するコルセットやベルトの使用は避けましょう(使用する場合はゆるめに)。 きつい衣服の着用も控えましょう。 ②前かがみになる姿勢は、できるだけ避ける。 草むしり、お風呂そうじ、雑巾がけ、床にひじをついて新聞を読むなど、前かがみの姿勢は腹部を圧迫します。 ③食事は腹八分目。 お腹いっぱい食べると、逆流しやすくなります。肥満の予防のためにも腹八分目で。 ④脂肪分の多い食事、アルコール、コーヒー、チョコレートなどは控えめに。 胃酸の分泌を促したり、食道下部括約部の圧をゆるめたりすることが知られています。 特にビールは胃の中で炭酸ガスを発生するため、お腹が張ったり、げっぷが出やすくなったりします。 カレーライス、てんぷらなどのように食べた後に調子が悪くなる食事については注意し控めにしましょう。 ⑤香辛料や酸味の強いものは控えめに。 胃酸の分泌を促したり、食道の粘膜に刺激を与えたりして、症状悪化につながります。 ⑥食事のあと、すぐに横にならない。 食後すぐ横になると、逆流を引き起こしやすい。食後 2 ~ 3 時間は横にならないようにしましょう。 特に寝る前 3 時間以内はものを食べないように。 ⑦寝るときは、枕を高くして。 ベッドで寝ている人の場合は、頭のほうを 18cm(電話帳 3 冊分くらい)持ち上げるとよいといわれています。 咳は冬に多いものと思われがちですが、夏の咳も決して少なくはありません。咳が長く続いている場合、胃食道逆流症以外にも、前号でご紹介した COPD、咳ぜんそく、後鼻漏(副鼻腔炎などで、鼻汁が鼻の奥からのどのほうにまわり、その刺激で咳が出る)などの可能性も考えられます。 「夏かぜかも」 「冷房にあたりすぎたのかも」と思わずに、医療機関を受診し、適切な診断・治療を受けるようにしましょう。 サプリメントと医薬品の相互作用 ファリン リナ、青汁とワル クロレラ、スピル ワルファリンは、ビタミンKの働きを阻害することによっ て血液を固まりにくくし、血栓をつくらせないようにする 薬剤です。そのため、ビタミンKを豊富に含むクロレラ やスピルリナ、青汁などを 摂取すると、その作用が弱 まる可能性があります。製 品表示にビタミンKを含む 旨の記載がない場合もあり ますから、注意が必要です。 納豆もビタミンKが多いの で避けることが大切です。 今月のビタミン ビタミン K ビタミンKはK1とK2に2つに大別され、K1は主に緑色の濃い野菜や海藻 類に、K2は納豆やチーズなどの発酵食品に多く含まれています。血液を 正常に固まらせる働きがあり、不足すると、出血しやすくなったり、血が止 まりにくくなったりすることがあります。新生児ではビタミンK欠乏による脳 内出血、消化管出血などがみられることがあるため、予防的にビタミンK の投与が行われます。また、ビタミンKは骨の形成にも関与。医療用医薬品 として骨粗鬆症の治療に用いられることもあります。 ビタミンKを含む料理 「納豆巻き」 海苔巻き以外に ゴマ巻きも 巻きすにラップを敷き、 いりゴマをしきつめ、酢 飯、海苔、酢飯と広げ、 大 葉、 納 豆をおき、 巻 きすごとぐるっと巻いて カットしてできあがり。
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