富士通テン技報

Dec. 2011 Vol.29 No.1 通巻 第57号 ISSN 0289-3789
富士通テン技報
富士通テン技報
2011−57
Vol.29 No.1
57号
Vol.29
No.1 December 2011
富士通テン技報
Dec. 2011 Vol.29 No.1
巻頭言
使いこなす技術 …………………………………………………………………………… 1
上 田 孝 一
一般論文
'11モデル国内市販AVNの開発(新規機能の搭載)…………………………………… 3
井 上 智 輝
前 田 昌 宣
斉 藤 具 紀
中 野 雅 彦
松 本 武 生
新興国市場向けローコストエアバッグECU開発 ……………………………………… 11
遠 藤 淳 一
東 智 代
土 師 慶 之
前 野 義 彦
マルチメディア製品向けソフトウェア開発環境の構築 ……………………………… 17
増 田 泰 昌
鈴 木 昌 三
坂 部 由 典
野 口 哲 宏
技術ノート
環境にやさしい部分コーティング技術の開発
~コーティング液の使用量低減~ ……………………………………………………… 23
後 藤 大 輔
新 穂 貴 史
成 井 譲 司
大 槻 高 幹
設計支援システム ………………………………………………………………………… 27
上 村 正 継
PhilipTENORIO
特 許 紹 介 …………………………………………………………………………… 31
製 品 紹 介 …………………………………………………………………………… 39
FUJITSU TEN TECHNICAL REPORT
Dec. 2011 Vol.29 No.1
PREFACE
"Full-Utilization" Skill ..................................................................................... 1
Koichi UEDA
PAPERS
Development of AVN for 2011 Model for Japanese Market (Equipped with
New Functions) ............................................................................................... 3
Tomoki INOUE
Masanobu MAEDA
Tomoki SAITO
Masahiko NAKANO
Takeo MATSUMOTO
Development of Low-Cost Airbag-ECU for Emerging Markets .................... 11
Junichi ENDO
Tomoyo AZUMA
Yoshiyuki HAJI
Yoshihiko MAENO
Establishment of Software Development Environment for Multimedia Products ... 17
Yasumasa MASUDA
Shozo SUZUKI
Yoshinori SAKABE
Tetsuhiro NOGUCHI
NOTE
Development of Environmentally-Friendly Technology by Spot Coating
- Reduction of amount of coating liquid - .................................................... 23
Daisuke GOTO
Takashi NIIHO
Joji NARUI
Takamiki OHTSUKI
Development Support Systems..................................................................... 27
Masatsugu KAMIMURA
Philip TENORIO
INTRODUCTION OF PATENTS ..................................................................... 31
INTRODUCTION OF PRODUCTS .................................................................. 39
巻 頭 言
使いこなす技術
"Full-Utilization" Skill
専務取締役
上田 孝一
Koichi UEDA
2011年3月に発生した東日本大震災は自動車産業を支える部品サ
プライヤーの製造工場に大打撃を与え、特に日系自動車メーカでは
上期生産台数を激減せざるを得ない状況となった。そのリカバリも
完了して増産体制に入ろうという10月、今度はタイで大洪水が発生
し、幅広い部品の製造・組立工場を一時閉鎖に追い込んでいる。執
筆中の現時点において、製造拠点の移管や代替部品への切り替えな
ど作る側も使う側も様々な対策を講じているが、その影響は東日本
大震災より広範囲に亘ると見られている。
リスク管理の一環としてBCM(Business Continuity Management)
が叫ばれ始めて久しいが、今回の災害を経験してその重要性を再認
識された方も多いことと思う。私が思い出すのは10年も前のかつICT
業界の話ではあるが、Second Sourceの存在しない最先端テクノロジ
は使わないというSun Microsystems(2010年ORACLEに吸収)のポ
リシーである。業界の雄IBMでは他人の追従を許さない最先端テク
ノロジを開拓して優位性を維持する戦略を採っていたし、業界では
それを真似るものが多かった時代である。Sunのポリシーを初めて耳
にした時には理解に苦しんだが、半導体事業を保有していたIBMと
保有していなかったSun Microsystemsの違いであり、自己の強みを
どこに置くかという点から考えればどちらも正しかったのだと思
う。振り返って当社はどうであろうか。大半は代替可能な汎用素材
を使っているが、一部には独自開発のカスタムLSIやSecond Source
の無い専用部品も採用している。設計的には難しくなるものの汎用
素材を使いこなす技術に磨きをかけ、専用品の採用は当社の強みの
源泉となるものに限定すべきであろう。
これはハードウェアに限定した話ではなく、ソフトウェアにも当
てはまるものである。昨今、機能を実現する主体はハードウェアか
らソフトウェアに移ったこともあり、開発量は日々増大するばかり
である。このような状況から、特に進化の激しい領域では自分自身
1
での設計は強みが発揮できる極一部に限定し、大半は他社・他人の
開発したものを活用するのが常道になっている。これはより安く、
より早く、より高い価値を顧客に提供していくための必然のアプロ
ーチである。他社・他人の開発物を活用することには研究的な色彩
が薄いので興味を持てないという人もいるかとは思うが、世の中で
の先端技術の動向を見極め、それらを半歩先んじて使いこなしてい
くというインテグレーション能力も重要であり、立派な技術である
と考える。CI(Car Infotainment)系商品の領域にはスマートフォン
やタブレットに代表されるICTの技術・製品が凄まじい勢いで参入し
始めているが、それらと戦うのではなく、それらを率先して活用し
ながら、車載機も含めたシステムとして使い易いものに仕立てるこ
とが当社の為すべきことであり、かつ、当社の価値でもある。
このように述べてくると要素技術は不要なのかとの誤解を生じる
恐れがある。他の追従を許さぬ尖った技術は価値即ち利益の根源で
あり、それを追求するのが王道なのは明らかである。しかしながら、
商品の高機能化は今後も留まることは無く、自己の尖った技術に他
社・他人の開発物を組み合わせなければ商品として成立しないのも
事実である。その実現にあたっては、感度の高いアンテナによる先
端動向把握と先を読む洞察能力、ブラックボックスを含む製品の評
価・検証能力に加え、世界で競っていくスピードを身に着ける必要
がある。いずれも難易度が高く、定番の教科書も存在しないと思わ
れるが、当社にとっては競争に勝ち抜くための本質であると認識し、
日々前向きに取り組むことを期待する。
2
'11モデル国内市販AVNの開発(新規機能の搭載)
Development of AVN for 2011 Model for Japanese Market (Equipped with New Functions)
井 上 智 輝 Tomoki INOUE
中 野 雅 彦 Masahiko NAKANO
前 田 昌 宣 Masanobu MAEDA
松 本 武 生 Takeo MATSUMOTO
斉 藤 具 紀 Tomoki SAITO
要 旨
地図データや音楽データなどの記憶媒体がHDDからSDカードへ移行したことによって、カーナビゲーション
の低価格化が進んでいる。また、目的地案内機能や自車位置精度の向上、さらには、地上デジタルTVの内蔵化
やiPod、USBメモリ、SDカード、Bluetoothなどの多彩なメディアへの対応とますます高機能化が進んだことに
より、カーナビゲーションとしては成熟期を迎えつつあり、他社との差別化が困難な状況となってきている。
このような状況のなか、当社では2011年夏市販モデルとして、上記の機能以外にも、ユーザ視点に立った操作
性や視認性の向上を目的とした新たな機能も搭載した。今回は、新機能の中から、それらの機能と特徴につい
て述べる。
Abstract
The price of the car navigation system becomes lower because the storage medium that stores map data and
music data is shifted from HDD to SD card. Also, the car navigation system becomes more sophisticated due to the
improvement of destination guide function and accuracy of vehicle position, the incorporation of digital terrestrial
television and the response to a variety of media including iPod, USB memory, SD card, and Bluetooth, etc.
Therefore, the car navigation system is entering the mature phase of growth, and differentiation from other companies has become difficult. Under such circumstances, in addition to the above functions, FUJITSU TEN equipped
the 2011 summer model for Japanese market with new functions aimed at improving operability and visibility from
the viewpoint of users. This time, we introduce those new functions and features.
3
富士通テン技報 Vol.29No.1
1
音楽信号振幅
音楽信号レベル
1.はじめに
はじめに
国内市販カーナビゲーション市場は、低価格化が進むな
か、車室内を快適にする機能や、安全・安心を提供する機
能・サービスの開発など、厳しい状況のなかで進化を続け
曲B
曲A
ている。
約 13dB
このような状況を踏まえ、当社は車載機の基本性能を向
上させる取り組みを行っており、2011年夏モデルでは、走
行中での視認性向上や利便性向上を重視した機能開発を行
い、走行中の車室内で快適かつ、安全を追求した商品開発
この状態でDAPを車載用ナビ・オーディオに接続する
を行ってきた。
本技報では、2011年ECLIPSEの最上位モデルに搭載し
た当社オリジナルの開発機能である『E-VOLUTION(自
動音量補正機能)』,『業界初
図1 圧縮音楽のレベル差事例
Fig.1 Level Difference between Compressed Music Signals
(1)
の直射日光画質補正機能』
と『バックライト制御』の特長を次章にて紹介する。
と、ユーザは下図2のように曲毎に音量を合わせるため、
ボリューム操作が必要であり、煩雑性の問題が生じる。
この問題を軽減するためには、音楽信号のレベル差を自
動で補正する機能が有効である。
【DAP】
曲A
曲B
曲C
2.自動音量補正機能:E-VOLUTION
2 自動音量補正機能:E-VOLUTION
2.1開発背景
2001年にApple社のiPodが発売され、携帯型デジタル
オーディオプレーヤ(DigitalAudioPlayer、以下DAP)が
ユーザ
ボリューム
オーディオ市場に急速に浸透した。このDAPの登場によ
ボリューム下げる
り、オーディオデータの記録メディアと再生装置の一体化
が進み、メディア自身を入れ替えすることなく、数多くの
曲毎にボリューム操作し
煩わしく、
運転中危険
音楽を格納し持ち歩くことができるようになった。そのた
め、DAPの音楽を車でも聴きたいというニーズも増え、
当社モデルにおいてもiPod、USB-Audioと接続可能として
きた。
通常、DAPに記録されている音楽データは圧縮音楽で
あり、さまざまなエンコーディングソフトウェアから個人
ボリューム上げる
図2 DAP再生時のボリューム操作
Fig.2 User Operation of Volume Adjustment When DAP is Playing
この補正に関連する技術は大別して以下の二つの手法が
で制作した圧縮音楽、音楽配信から購入した圧縮音楽が記
ある。
録されている。
Ⅰ:簡易的な音響コンプレッサ技術の応用
このようにDAPに格納される代表的な音楽は、
①インターネットで購入した圧縮音楽
Ⅱ:心理音響モデルを用いた手法
一つ目の音響コンプレッサ技術を応用すれば、比較的に
②個人娯楽のため作成した圧縮音楽
少ない処理量で済むが、音楽のダイナミックレンジが小さ
が挙げられる。
くなり、本来有している音質や抑揚表現を犠牲にすること
①、②からDAPに格納される圧縮音楽は、図1のような
信号の波形の振幅値が異なり、これがレベルの差となり、
ユーザは音量の差を認識してしまう。
がある。
二つ目の心理音響モデルを用いた手法は、音楽信号の有
する特性を分析し、聴感上の最適な音量バランスを導き、
①は、制作者側の意図により圧縮率の高いエンコードや
補正する。自然な聴感を追求するためには有効な手法だ
音量の正規化処理の有無によって、音量の差が生じる。ま
が、聴感フィルタなどの解析処理量が大きくなり、補正用
た、②のようなCDなど個人娯楽のためリッピングした圧
ICの追加などコストアップにつながる。
縮音楽内でも差が生じ、さらに①と②が混在すると、音量
従って、音量の差を補正するには音質を犠牲にしない「音
差は顕著になる。その差は、レベルにして13dB以上にな
質維持」と処理量を抑えながらの「低コスト」をいかに両
ることもある。
立させ、図3緑円の位置を実現させるかが課題となる。
*(1)当社調べによる
4
'11モデル国内市販AVNの開発(新規機能の搭載)
処理量 :
音質
の大きさ
音質維持・低コスト
<維持>
表 1 補正値の制御方法
Table 1 Control Method of Volume Adjustment Value
事象
対策
音量ふらつき
補正値は一定値を維持
制御イメージ
音色の変化
イコライザ処理はしない
抑揚表現
相対的なレベルを維持
補正値
相対的な
レベル維持
心理音響系
<変化>
音響コンプレッサ系
<低>
<高>
コスト
補正値の変化 補正中に過大な信号が
入力された時のみ下げる
図3 補正技術による音質とコストの関係
Fig.3 Relationship between Sound Quality and Cost of
Automatic Volume Adjustment Technologies
補正値
過大な時のみ
下げる
上記以外の時は、補正
値を保つ
圧縮音楽信号の有するレベル差から起因する音量差に対
前頁Ⅰ,Ⅱの技術は、1曲の再生中に音楽信号のレベルを
し、「音質維持」と「低コスト」の両立を狙うため、AVN
常に補正するため、補正値の変化が音楽信号に適用される
との情報連携から補正を実現させる自動音量補正
(図5の青点線)。この場合、値の変化により、音量のふ
「E-VOLUTION」開発を進めた。11夏モデルは、圧縮音
らつき・音楽の抑揚表現の低下、音色が変わる恐れがあ
楽を記録するメディアiPod、USB-Audio、CD(MP3,
る。そのため、補正値を一定に維持するよう制御し、その
WMA)を対象とした。
際音色を変化させるようなイコライザ処理は行わない。ま
た、ユーザはボリュームを操作する際は、青点線のような
開発内容を次章から述べる。
こまめな操作はしないことを踏まえ、入力された音楽信号
2.2開発内容
レベルが大きいときのみ補正値を下げることとした。その
E-VOLUTIONは、ユーザが操作するボリュームの前段
結果が、図5の赤線である。
に配置され、内部ボリュームとして機能する。内部ボリュー
4のようにユーザボリュームを一定としたとき、図2と同
様の効果が得られることを狙う。
曲B
曲C
音楽
信号
自動補正
内部
ボリューム
E-VOLUTION
ボリューム一定
ユーザ
ボリューム
図4 内部ボリュームとユーザボリュームの関係
Fig.4 Relationship between Internal Volume and User Volume
上記動作と「音質維持」、「低コスト」を図った開発内容
を以下に述べる。
入力音楽信号レベル
曲A
補正値
ムで曲毎に異なるレベル差を予め補正し、その結果、下図
大信号のときは、
補正値を下げる
本機能
Ⅰ,Ⅱ
+
補正値一定
ふらつきなし
抑揚表現維持
補正値一定
ふらつきなし
抑揚表現維持
図5 曲中の補正値の動き
Fig.5 Changing of Volume Adjustment Value in Music
入力された音楽信号が大きいときは補正値は変化する
が、それ以外は補正値を維持することにより、不必要な音
量のふらつきを抑制し、抑揚表現の維持が可能である。
【音質維持の実現】
音量補正の値(以下:補正値)を音楽信号に適用する上
で、音質を維持するために表1の制御を導入した。
補正値は、入力された音楽信号のレベルを計算し、目標
となるレベルの値との差分から算出される。
表1の示す内容について説明する。図5に補正値の動き
をまとめたものを示す。
【低コスト化の実現】
曲毎に異なるレベル差を有する場合、音量の差は選曲の
切替時に知覚されやすい。そこで、曲冒頭に集中したレベ
ル差の補正を行い、切替時の音量差緩和を狙った。
しかし、音響処理用DSPが音楽信号のみで曲冒頭を検知
するためには、無音分析、カウンタ、条件判定の付加など
5
富士通テン技報 Vol.29No.1
音量補正以外の処理が増え、新規のDSPが追加で必要とな
マルチメディア
制御マイコン
る。これを回避するため、音楽信号以外の検知手段として、
DAPの選曲制御を行うAVNのマルチメディア系制御マイ
制御信号
デジタル音楽信号
切替
通知
コンとDSPの連携を図った。制御マイコンを用いて、選曲
操作による切替通知をDSPに行い、曲冒頭の補正を実現し
DSP
た。切替通知から補正値を初期化し、レベルを再計算し、
アナログ音楽信号
DAC
冒頭のレベル差補正を適用する。
表2に切替、曲冒頭時の制御とその後の曲中の動作を
示す。
表 2 曲冒頭時の制御方法
Table 2 Control Method at Beginning of Music
事象
制御イメージ
対策
曲冒頭検知 マイコンから切替通
切替
通知
知をDSPへ実施
初期化
切 替 通 知 受 信 後、
補正値、現在のゲイ
ンを初期化、再計算
X-OVER
Position
SFC
Loudness
Harmonizer
PEQ
図7 圧縮音楽信号ブロックダイヤ
Fig.7 Block Diagram of Compressed Music
上図のE-VOLUTION内処理ブロックを図8に示す。主
に5ブロックで構成される。
DSP
【補正値と現在のゲイン】
初期化
開始
曲中動作
DSP
E-VOLUTION
再計算
冒頭判定後の処理 信号大のときのみ補正値
変化
【E-VOLUTION】
デジタル
音楽信号
①信号レベ
ル計算
⑤音量補正
(ゲイン)
②補正値
計算
③補正値
適用判定
※図5の動作
④切替通知
図6に曲切替時の補正値動作例を示す。曲Aで補正され
た値が切替通知によって初期化される。その後、曲Bの冒
頭の信号レベルを元に補正値の再計算を行い、補正を継続
する。
図中①~⑤にかかる補正フローチャートを図9に示す。
マルチメディア系制御マイコン
①の信号レベル計算には、時間平均から算出しているが、
る。③の補正値適用判定が、音量のふらつき・抑揚表現を
担い、④以下が曲冒頭時の初期化を実現する部分である。
初期値
補正値
時間平均区間の長い値、短い値を計算し、②に入力してい
切替通知
①信号レベルの計算
Lv = 時間平均レベル
入力音楽信号レベル
補正値初期化
②補正値の計算
補正値 = 目標値−Lv
曲A
曲B
図6 曲冒頭時の補正値の動き
Fig.6 Changing of Volume Adjustment Value at Beginning of Music
このAVNと連携した切替通知により、新たなDSPを追
加することなく曲冒頭の検知処理が実現でき、切替時に知
覚されやすい音量差を緩和できた。
2.3システム構成
本製品の圧縮音楽信号の制御から音楽信号出力するまで
のブロックダイヤを図7に示す。
6
図8 E-VOLUTIONブロックダイヤ
Fig.8 Block Diagram of E-VOLUTION
③補正値
適用判定
補正値 >
現在のゲイン
N
Y
補正値の更新なし
補正値の更新
④切替通知
Y
N
補正値、
ゲイン初期化
⑤音量補正
図9 E-VOLUTIONフローチャート
Fig.9 Flowchart of E-VOLUTION
'11モデル国内市販AVNの開発(新規機能の搭載)
本機能の補正結果を図10に示す。補正前の曲A、B間に
あった音楽信号の振幅が補正されており、信号のレベル差
±5の11段階表示
を軽減できている。
曲A
曲B
図12 ナビ画面上の段階表示
Fig.12 Adjustment Value Displayed on Navigation Screen
以上よりE-VOLUTIONは、iPod、USB-Audio、CD内に
格納された圧縮音楽のレベル差を緩和し、ユーザ側のボ
リューム操作を軽減するとともに「音質維持」
「低コスト」
補正後
な補正を実現させた。
3
曲切替
3.直射日光補正
直射日光補正
3.1開発背景
図10 E-VOLUTIONの補正結果
Fig.10 Volume Adjustment Result of E-VOLUTION
車載ディスプレイを実車に設置する際、どうしてもディ
スプレイに太陽光が直接当たる状況がある。ディスプレイ
に太陽光が当たった場合、太陽光の表面反射がディスプレ
2.4まとめ
イ発光(透過光)よりも強いため、映像の鮮やかさが低下
E-VOLUTIONの製品画面を図11に示すが、画面には、
し全体的に白っぽく見えてしまう。この時、特に暗い色(低
機能ON・OFF、それに付随するパラメータとしてVOL
階調・低彩度)の区別がつかなくなり、視認性が劣化して
LEVEL、PATTERNを設けている。
しまう(図13)。
このような車載環境の特有な問題に対して、株式会社富
士通研究所と共同で、視認性向上の開発に取り組んだ。
【原画】
図11 E-VOLUTIONの設定画面
Fig.11 Setting Screen of E-VOLUTION
それぞれのパラメータは、表3に示すようにユーザの好
【直射日光が当たった時】
図13 原画と直射日光時のディスプレイ表示
Fig.13 Original Image and Image in Direct Sunlight
みで補正効果を変更できる。
表 3 VOL LEVEL, PATTERN 設定
Table 3 Settings of VOL LEVEL and PATTERN
VOL LEVEL
LOW
PATTERN
小
1
小
では、主に以下の二つの処理を行う。
Hi
中
大
②直射日光の照度に応じた補正強度調整
3
質劣化度合いに応じて、原画の階調感・彩度を再現した表
大
を用い、ディスプレイ直近に設置する。直射日光補正処理
2
曲 中の 音 量 変
化に合わせた
これらの課題を解決する方法として、直射日光補正処理
Mid
揃えたい音量を
設定
3.2機能概要
音量変化
設定
①階調感・彩度を向上させる画質補正
これら処理方法により、太陽光によるディスプレイの画
示が可能となる。太陽光の照度の検知には照度センサ
(2)
は、①画質補正部と②補正強度調整部から構成される。処
理ブロック図を図14に示す。
また、E-VOLUTIONのON時には、画面上に補正値の段
階分けした値を常に表示させることで、視覚でも補正動作
を確認することができるよう配慮した(図12)。
*(2)光の量を検知するセンサ
7
富士通テン技報 Vol.29No.1
に、似通った色を区別しやすくする技術である。失われ
直射日光補正
た鮮やかさを彩度補正により補完することが可能となる。
①画質補正部
映像
信号
局所
補正
階調
補正
ブレン
ド処理
彩度
補正
映像
信号
②補正強度調整部:実車環境では、さまざまな要因(季節・
時間・車両)によりディスプレイに当たる太陽光の照射
量が常に変化し、画質劣化度合いも変動する。そこで、
照度に応じて原画像と補正画像のブレンドをする比率を
変更し、画質劣化に対する補正強度を調整することで、
②補正強度調整部
原画の階調感・彩度を再現する。さまざまな照度に応じ
ブレンド
率算出
ADC
て最適な補正をするためには、このブレンド比率のバラ
ンスが重要となる。照度に応じたブレンド比率は図16
のような2次曲線としている。
照度
センサ
図14 直射日光補正の処理ブロック図
Fig.14 Block Diagram of Processing of Image Correction for Display in Direct Sunlight
この処理を行うことにより、建物の影などの時は本来の
原画像を表示し、ディスプレイに太陽光が当たる時は補正
画像を表示することで、太陽光による画質劣化度合いに応
じた最適な映像補正が可能となる。また、太陽光の急激な
照射量の変化に対応するため、補正量を緩和する処理も内
蔵している。
低
補正なし
明部
↓
黒
前 後
補正前後
↑
↓
黒
補正前 補正後
濃
原画の
出力比率
補正画の
出力比率
↑
レベル
階調
補正
レベル
局所
補正
白
レベル
白
暗部
↑
ブレンド率
100%
補正あり
高
照度
彩度
補正 ↓
淡
補正前 補正後
図15 直射日光補正の画像処理概要
Fig.15 Outline of Image Processing of Image Correction for Display in Direct Sunlight
それぞれの処理は下記の通りである。
0%
建物影・曇り
⇒原画を
1 0 0%出力
晴れ
快晴
照度
⇒原画と補正画を ⇒補正画を
ブレンド出力
1 0 0%出力
図16 照度に応じたブレンド処理
Fig.16 Blending Process Based on Illuminance
①画質補正部:太陽光によるディスプレイの画質劣化を、
局所補正・階調補正・彩度補正の各技術を組合せて、コ
ントラストおよび彩度の向上を実現する技術である(図
15)。
◦局所補正:入力画像を解析し、画像の部位ごとに階調を
3.3製品搭載化に向けての検討
直射日光補正処理を製品搭載化するために、照度センサ
の装着位置検討と画質補正および補正強度のパラメータの
調整が必須となる。
拡大して見やすくする技術である。例えば、明るい領域
照度センサの装着位置検討:フロントガラス・サイドガラ
は暗いレベルへ階調を拡大し、暗い領域は明るいレベル
スから入射する太陽光に対して、ドライバー乗車位置から
へ階調を拡大する。どのような明るさの領域も明暗差を
のナビ操作時に、影となりにくいディスプレイの左下に照
拡大できるので、太陽光が当たっても濃淡のわかりやす
度センサを装着することが最適と判断した。ここで、照度
い表示が可能となる。DVD・DTV映像などの自然画の
センサはスイッチ基板に実装されるが、製品状態ではディ
濃淡を明瞭にするほか、地図画では道路などを周囲から
スプレイ奥部に設置されるため、照度センサに入射光が達
区別しやすく表示する、といった効果がある。
するまでに照度の減衰が大きくなってしまう。このままで
◦階調補正:太陽光がディスプレイに当たると、特に暗い
は、実際にディスプレイに当たる太陽光の照度を照度セン
領域の濃淡が反射光に埋もれてしまい、著しく階調がつ
サで正確に検出できず、正確な画質補正ができなくなる。
ぶれて見える。階調補正はその解消を目的として、暗い
そこで、受光窓の印刷面素材の透過率検討・導光板
領域の階調を、つぶれが比較的生じにくい明るい階調へ
形状検討・照度センサ感度調整を行うことで、入射光の照
と移すものである。
◦彩度補正:色の薄まりを抑制して鮮やかにするととも
8
(3)
*(3)導光板:光を反射・拡散させ集光させる部品
の
'11モデル国内市販AVNの開発(新規機能の搭載)
度の減衰がなくなり、デザインを損ねることなくかつ照度
LEDバックライト
センサの性能を最大限発揮することが可能となった(図
(4.3W)
17)。
0%
20%
液晶駆動部 その他
(1.7W)
40%
60%
(0.9W)
80%
100%
⇒バックライト部で62%の電力消費
照度
センサ 導光板
図18 11市販ディスプレイ部の電力内訳(平均消費電力)
Fig.18 Breakdown of Power Consumption of 2011 Aftermarket
Display Part (Average Power Consumption)
受光窓
印刷面
4.2機能概要
従来はどのような映像でも、ディスプレイのLEDバッ
図17 製品状態での照度センサの取り付け
Fig.17 Installation of Illuminance Sensor in Product State
クライトを一律に発光していた。本技術では、主に以下の
補正パラメータ検討:画質補正パラメータの検討では、
①映像を解析しバックライト発光量を制御(発光量調整)
太陽光による画質劣化の大きい人物の髪や建物の影の階
②発光量に従い画像データを補正(画質補正)
2点を行い、画質劣化することなく省電力化を実現した。
調感・夕日などの自然画および地図画において、画質劣
また、バックライト発光量を低減することによって、黒
化の分析(階調・彩度)を行った。その太陽光特有の画
などの暗部の輝度レベルを下げ、コントラスト比を向上さ
質劣化を補い、見やすさを向上させた画質補正パラメー
せた。バックライト制御の制御概要を図19に示す。
タを作成し、目視において原画と直射日光時の補正画像
の調整を行った。
補正強度調整部のパラメータ検討では、実車走行シー
実際の
見え方
ンにおいて“太陽光の入射角”や“走行状況(天気・建
無駄な
組み
電力あり。
合わせ 全体的に
白っぽい。
物の影など)と照度センサの検出値の関係”、“応答速度
の分析”を行い、ブレンド比率と補正タイミングの調整
を行った。特に実車走行時、ディスプレイに“太陽光が
当たる⇔影になる”を頻繁に繰り返すことが想定される
ため、急激な照度の変化に対しても、すぐさま追従して
直射日光補正処理の開発により、太陽光による画質劣化
バック
ライト
発光量
映像により
発光量を調整
発光量一律
無駄な電力あり
省電力化
図19 バックライト制御概要
Fig.19 Outline of Backlight Control
おいては、太陽光によりディスプレイが鏡面のように完全
反射してしまうため、補正できない状況が存在する。今後、
討し、さらなる画質改善に努めて行く。
明るく補正
補正なし
を大幅に改善できた。ただし、ディスプレイを見る角度に
このような課題解決のため、最適なディスプレイ構成を検
省電力化。
組み
黒が締り
合わせ コントラスト比
UP!
映像
データ
の補正
画質補正を行うようにした。
3.4まとめ
制御ON
制御OFF
を繰り返し確認することで、最適な画質補正パラメータ
バックライト制御は、映像シーン毎に映像解析を行い発
光量を調整する処理と、映像データを補正する処理からな
る。処理ブロック図を図20に示す。
4
4.バックライト制御
バックライト制御
4.1開発背景
映像
信号
バックライト制御
②画質補正
昨今の環境意識の高まりから、車載用AV機器において
も省電力化が求められている。映像を表示するディスプレ
イ部の消費電流においては、全体の3分の2をLEDバック
ライトが占めており、画質劣化なくバックライトの省電力
化を狙って、株式会社富士通研究所と共同でアルゴリズム
開発を行った(図18)。
映像
信号
明るさ
補正
①発光量調整部
ヒスト
グラム
生成
ヒスト
グラム
分析
LED
発光量
決定
発光量
図20 バックライト制御部の処理ブロック図
Fig.20 Block Diagram of Processing in Backlight Control Part
9
富士通テン技報 Vol.29No.1
①発光量調整部:発光量を下げれば、省電力化効果は高ま
結果として、LEDバックライト部分において従来モデ
るが、明るい色を表示できなくなり、明部の「つぶれ」
ルより最大54%・平均24%(IEC62087に基づいた測定方
などの画質劣化が生じる。本技術では、まず、入力映像
法による)の省電力化と最大コントラスト比を2倍以上に
のヒストグラムを解析し、「つぶれ」などの画質劣化が
向上することができた。
生じやすい階調レベルを特定する。次に、この解析結果
を用いて、画質劣化を生じさせずに低減可能な発光量を
4.4まとめ
定める。基本的には、明るい階調レベルにグラデーショ
バックライト制御の開発により、省電力化とコントラ
ンなどの劣化しやすい部位があれば発光量を多くし、な
スト比を向上することができた。ただし、車載用AV機器
ければ発光量を抑える。
の消費電力は依然として大きく、今後はさらなる省電力
②画質補正部:バックライトの発光量を抑えて暗くなった
化を目指して最適なシステム構成の検討を行い、快適で
分を、映像のレベル値を補正することによって補い、原
環境にやさしい車社会の実現に向けた技術開発に取り組
画同等の表示を可能とする。つまり、バックライト発光
んでいく。
は、映像に応じて常に変化させるが、発光量と画像補正
量を連動させることで、原画同等の安定した表示を実現
する。
なお、厳密には、バックライト(LED)と、映像を表
示する液晶の反応速度は異なる(液晶のほうがゆっくり反
5
5.おわりに
おわりに
以上、2011年モデルのAVNの機能の一部について述べ
たが、お客様視点を考慮した機能の改善を実現できた。
応する)。そのため、映像のシーンが切り替わる瞬間、バッ
今後も、豊かなカーライフの実現に向けて、お客様に喜
クライト発光と映像の間に不整合が生じ、バックライトの
んで頂ける機能を搭載し、低価格の製品の開発に取り組ん
変化が一瞬点滅したような「ちらつき」に見える場合があ
でいきたい。
る。本技術では、見た目のちらつき感を推測した上で、バッ
クライト変化量を抑制することで、ちらつきの発生を防止
E-VOLUTION、ECLIPSE、AVN、ケータイリンクは、
する。
富士通テン株式会社の商標または登録商標です。
4.3製品搭載化に向けての検討
または登録商標です。
その他、記載した製品名などの固有名詞は、各社の商標
画質劣化なくかつ最大限の省電力化可能な制御パラメー
タの調整が必要となる。制御パラメータの調整では、ディ
スプレイの基本特性の定量評価と目視による官能評価を行
うことより、最適なパラメータを算出した。定量評価では、
最大輝度・色温度・階調特性・彩度補正の性能を評価し、
官能評価では、DTV画やDVD画において暗いシーンでの
肌色の不自然さがないかなどの画質評価を行った。
筆者紹介
井上 智輝
(いのうえ ともき)
1997年入社。以来、AVNの開
発業務に従事。現在、CI技術
本部技術統括部第三技術部
チームリーダ。
松本 武生
(まつもと たけお)
2005年入社。以来、デジタル
LSI開発に従事。現在、ITS技
術本部共通技術統括部開発一
部に在籍。
10
中野 雅彦
(なかの まさひこ)
1998年入社。以来、LSIの開発・
設計を経てAVNの商品企画に
従事。現在、製品統括本部第
一製品統括部アフターマー
ケット推進部に在籍。
斉藤 具紀
(さいとう ともき)
2004年入社。以来、AVNのディ
スプレイ開発業務に従事。現
在、CI技術本部技術統括部第
三技術部に在籍。
前田 昌宣
(まえだ まさのぶ)
2002年入社。以来、車載用音
響システム、DSPアルゴリズ
ムの開発に従事。現在、CI技
術本部音響技術部に在籍。
新興国市場向けローコストエアバッグECU開発
Development of Low-Cost Airbag-ECU for Emerging Markets
遠 藤 淳 一 Junichi ENDO
土 師 慶 之 Yoshiyuki HAJI
東 智 代 Tomoyo AZUMA
前 野 義 彦 Yoshihiko MAENO
要 旨
エアバッグシステムの市場トレンドは、BRICsをはじめ新興国で標準装備化が進み、大幅に拡大傾向にある。
また、新興国では車両販売価格が従来から大幅に低下しており、それに伴い車載部品へのローコスト化の要求
も厳しくなってきている。但し、エアバッグシステムは自動車の安全に直接かかわるシステムであることから、
信頼性の要求レベルが非常に厳しく、従来と同様の高信頼性を維持しつつ、ローコスト化を実現させることが
大きな課題である。
その一方で既に標準化されている先進国では、自動車の安全性に対する意識の高まりからさらなる多様化、
高機能化の動きも加速している状況にある。
当社では、この2つの大きな市場トレンドに対応すべく、エアバッグECUの開発を進めているが、本稿では新
興国をターゲットとしたローコストECU開発への取り組みについて紹介する。
Abstract
Airbag-system markets are now greatly expanding because more vehicles are being equipped with airbag systems
as standard in emerging countries such as BRICs. However, in accordance with large decline in vehicle selling prices in those areas, low-cost devices for vehicles are being highly demanded. Highly-reliable airbag systems are also
demanded because they directly influence vehicle safety. Therefore, our major task is to develop a low-cost highlyreliable airbag that is as reliable as the conventional systems.
On the other hand in advanced countries where the airbag systems have already been common, the trends
toward more diversification and higher functionality in airbag systems are accelerating in accordance with the
increase of vehicle safety awareness.
We, at Fujitsu Ten, are now developing airbag ECUs so as to deal with these two big market trends. This paper
will introduce our efforts of development of the low-cost ECUs targeting emerging countries.
11
富士通テン技報 Vol.29No.1
1
1.はじめに
はじめに
2
2.エアバッグシステムの概要
エアバッグシステムの概要
国内、欧州では衝突安全技術の向上、シートベルト着用
エアバッグECUは、運転席および助手席の前突多段エ
の定着化とともに運転席、助手席エアバック、シートベル
アバッグ、シートベルトプリテンショナー、サイドエアバッ
トプリテンショナーがほぼすべての車両に標準装備されて
グ、カーテンシールドエアバッグなどの制御を行うもので
いる。その結果、警察庁の調査では、国内の交通事故によ
ある。図3の構成例に示すように車室内前方中央部に配置
る死者は平成4年(1992年)をピークに年々減少方向にあ
されたエアバッグECUおよび車両前方に配置されたフロ
る。(図1)
ントサテライトセンサ、車両側面に配置されたサイドサテ
22,000
100
18,000
死
16,000
80
14,000
者 12,000
60
10,000
数
8,000
40
6,000
死亡者数(人)
4,000
2,000
0
昭23 25
30
35
40
45
50
55
60
平元
20
5
10
発生件数・負傷者数・車両台数
負傷者数(万人)
20,000
ライトセンサにより、前方および側方からの衝撃を検出す
120
0
20 22 年
15
※政府統計の総合窓口より抜粋
図1 交通事故による死者数、負傷者数の推移
Fig.1 Transition of Number of Traffic Fatalities and Injuries
る。これをエアバッグECU内のマイクロコンピュータ(以
下マイコン)で演算し、各車両毎に設定された衝突判定値
を超えた場合は、点火回路をオンする。これによりエアバッ
グの着火装置(以下スクイブ)に電流を流し、ガス発生剤
に着火することで高圧ガスを発生させ、エアバッグを瞬時
に膨らませる。
サイドエアバッグ
カーテンシールドエアバッグ
(D席・P席)
プリテンショナー
(D席・P席)
前突多段
エアバッグ
(D席・P席)
前面衝突判別
エアバッグECU
また、米国では加えて側面衝突、オフセット衝突時の乗
員への加害性に対して他国より厳しい基準での法規が施行
側面衝突判別
されており、多段制御エアバッグ、側突エアバッグ(サイ
フロントサテライト
センサ(電子式)
ドエアバッグ、カーテンシールドエアバッグ)がほぼすべ
ての車両に装備されている。また、2014年以降にはさらに車
サイドサテライト
センサ(電子式)
両横転時(ロールオーバー)の乗員放出防止に対しての法
規も施行予定であり、今後さらなる高機能化が進んでいく。
図3 エアバッグシステムの構成例
Fig.3 Example Configuration of Airbag System
その一方で、中国を含むインド、ブラジルなどの新興国
では、交通事故に対する死亡率が20%を超えている状況が
続いており、エアバッグシステムの普及が急がれている状
況である。(図2)また、普及に向けては、エアバッグシ
ステムのローコスト化が必須な要件になってくる。
死亡率
件数/死亡者人数
3
3.当社のエアバッグECUの開発経緯
当社のエアバッグECUの開発経緯
当社は、エアバッグシステムがオプション設定で需要が
少なく高価であった1993年から、トヨタ自動車殿へエア
バッグECU(運転席エアバッグのみの1ch仕様)の納入を
開始し、現在では国内、欧州、中国、フィリピンの各工場
合わせて年間200万台以上を生産している。
死亡率が
年々増加
また、各国の衝突安全基準(法規)に対応し、図4で示
事故件数
死亡者人数
死亡率
す通りにスクイブch数は年々増加傾向になっていたが、
今回新興国市場をターゲットに絞り、仕様を最適化した
ローコストECUを開発した。
2006年
2007年
2008年
2009年
図2 中国交通事故による死亡率推移
Fig.2 Traffic Fatality Rate in China
2006年に量産化したエアバッグECU(06モデル、前突
ECU)の8chシステムから最大4chのシステム構成とし、
徹底的にスリム化、
ローコスト化を狙った開発となっている。
今後、エアバッグシステムは先進国でのさらなる高機
本稿では、この新興国市場をターゲットに開発したロー
能化ニーズと中国を含む新興国でのローコスト化ニーズが
コストエアバッグECUで取り組んだアイテムの技術につ
二つに明確に分かれてくると予測する。
いて紹介する。
12
新興国市場向けローコストエアバッグECU開発
ジタル)スリム化して、チップサイズを縮小し、コストダ
∼
モデル
前突
モデル
モデル
∼
∼
∼
モデル
∼
、 モデル
∼
(前側突標準)
新興国をターゲットに
仕様を最適化
∼
ウンを図る。
(3)筐体の小型化
ECU内の加速度センサ(Gセンサ)の伝達特性、車両衝
突時の衝撃耐性を維持しつつ小型化、軽量化を実現する。
∼
モデル
モデル
前側突
∼
∼
モデル
∼
、 モデル
∼
(前側突標準)
06モデル
(∼8ch)
Gセンサ
Gセンサ
(メ
(メイン)
イン)
モデル
高機能
(
センサ
内蔵)
新興国向けECU
(∼4ch)
目標
バスIC
(2ch)
CPU
CPU
ASIC
(8ch)
(
図4 当社エアバッグECUの開発経緯
Fig.4 Transition of Airbag ECU Development at FUJITSU TEN
部品点数 ▲30%
アイテム
(1)
60pinコネクタ
21pinコネクタ
コネクタ
基板
小型化 小型化
アイテム
(2)
筐体重量 ▲25%
4.1開発ECUの仕様
スクイブch数
フロントサテライトセンサ
サイドサテライトセンサ
拡張入力
拡張出力
P席インジケータ
LAウォーニングランプ
ASIC
(4ch)
(4ch)
メカSW
(セーフィング)
4.開発のねらい
開発のねらい
仕様
バスIC
(2ch)
部材費 ▲25%
∼
4
Gセンサ Gセンサ
Gセンサ
Gセンサ
ング)
(メ
イン)(セーフィ
(メイン)
(セーフィング)
CPU
開発ECU
(ローコスト)
∼4ch
∼2ch
─
∼1ch
∼1ch
OFF
CAN、直線
従来ECU
(06モデル)
∼8ch
∼2ch
─
∼3ch
∼1ch
ON/OFF
CAN
(mm)
図6 新興国向けローコストECUの開発目標
Fig.6 Development Target of Low-Cost ECU for Emerging Countries
5
5.技術開発内容
技術開発内容
5.1電源スリム化
エアバッグECUにおいて、電源回路は部品点数、実装
センサ
面積で大きなウェイトを占めている回路ブロックとなるた
ASIC
電源
アイテム
(3)
(mm)
め、ECU全体のスリム化を進める上で構成を簡素化する
マイコン
ことが重要な部分になる。2006年に量産化したエアバッグ
ECU(06モデル)の電源回路は、スクイブが8chまで対応
スクイブ
制御
)
(
通信
CAN
フロントセンサ右
可能な電源能力となるよう設計されていた。しかし、スク
フロントセンサ左
イブ4chまでとするローコストECUの場合、06モデルと同
マニュアル
カッ
ト
OFF ンジケータ
OFFイ
センサ
ドアロック
解除出力
ボディ
バス
メーター
図5 開発ECUの回路構成案
Fig.5 Circuit Diagram of ECU under Development
4.2開発目標
じ電源回路構成では電源能力がオーバースペックとなって
しまう。そこで仕様に合わせた最適な電源能力に絞り込
み、電源回路構成を簡素化、部品の小型化を検討すること
とした。(図7)
までをカバー
する容量
昇圧
降圧電源によって
電力損失を緩和
降圧
精度が必要なため
シリーズ
を使用、
電力損失が大きい
マイコン5V
開発ECUの目標は、従来ECU比較で部材費▲25%、部
品点数▲30%、筐体重量▲25%に設定し開発を開始した。
また、目標実現のための重要アイテムは以下の3項目とな
る。(図6)
(1)電源回路のスリム化
新興国市場をターゲットに電源能力を最適化、簡素化
し、部品点数の削減を実現する。
(2)カスタムIC(ASIC)のシュリンク
マイコン 変動を
考慮し、別電源
図7 従来ECU(06モデル)の電源回路構成
Fig.7 Power Circuit of Conventional ECU (06-model)
新プロセス採用、仕様最適化による回路(アナログ、デ
13
富士通テン技報 Vol.29No.1
回路簡素化の取り組みポイントとしては、①降圧電源削
外付T
r追加
除、②バックアップコンデンサの小型化、③5V電源(マ
イコン用、CAN用)の共用化の3点とした。(図8)
②バックアップ
コンデンサの
小型化
1.
2Wを電力分担
①降圧電源削除
昇圧
マイコン5V、
CAN5V
図10 5V電源の電力分担
Fig.10 5V Power Distribution
次に②バックアップコンデンサの小型化について、スク
イブch数の削減、消費電流の低減を踏まえてバックアッ
CANドライバ
B/U切替
③ 電源の
共用化
図8 新興国向けECUの電源回路構成
Fig.8 Power Circuit of ECU for Emerging Countries
まず①の降圧電源削除については、降圧電源によって緩
プ性能を満足させる必要容量を見直すことにより、バック
ア ッ プ コ ン デ ン サ を 従 来ECUの φ18×H25か らφ18×
H16.5に小型化・低背化している。またバックアップコン
デンサを昇圧電源平滑用としても使用することで回路構成
を簡素化している。
最後に③5V電源(マイコン用、CAN用)の共用化につ
いては、CANバスラインのフェール時でもエアバッグ機
能が影響を受けないことを前提に検討した。
和されていた5V電源の電力損失が増加し、ASICに内蔵し
CANバスフェール時の電流引き込みによる5V電源の電
ているTrの温度上昇が大きくなることが懸念される。そ
圧変動に対し、電流制限回路を設定し電圧変動を抑制する
のため、シミュレーションによる熱解析、および実機確認
対策を実施したが、実際には回路の応答遅れにより電流制
によってASICジャンクション温度150℃以下とする構成を
限が機能せず、電圧変動が発生してしまうことが発覚し
検討した。
た。(図11)
検討の結果、車両ワイヤーハーネスの噛み込みなどによ
5V電源の電圧変動はエアバッグECUの衝突判別性能へ
りスクイブが+Bとショートするようなフェール故障時に
直接影響を与えてしまうことから、今回のローコスト
150℃を超えてしまうことがわかった。
ECUでは5V電源の共用化は断念した。
そのため、発生する電力をASIC内蔵Trと外付けTrの2
つで熱分散する構成とした。それにより、ASICの発熱を
電源電圧
ジャンクション温度150℃以下にすることができた。
(図9)
また、外付けTrの電力分散割合を最小限にすることで、
電流の変動影響により
電源電圧が変動
部品サイズ、コストを最小限にしている。(図10)
電流変動が
発生
引き込み電流
μ
図11 5V電源 電圧変動実機確認結果
Fig.11 Verification Result of Voltage Variation of 5V Power Line on ECU
5.2カスタムIC(ASIC)のチップシュリンク
従来ECU(06モデル)に搭載されているASICから約
45%微細化したプロセスルールを採用した開発品に変更し
ている。プロセス技術により、寄生動作抑制や素子間隔の
図9 熱解析シミュレーション結果
Fig.9 Thermal Analysis Simulation Result
14
縮小を実現させ、素子サイズの大幅なシュリンクを実現し
ている。
新興国市場向けローコストエアバッグECU開発
また、合わせてエアバッグECUの仕様最適化にともな
い、IC機能を削減し、チップサイズ低減を観点に徹底的
に素子やロジックゲートを絞り込む検討を実施した。
その結果、ロジックゲートが12,000ゲート(従来比▲43
学を使用して、G伝達性能及び強度に寄与する設計パラ
メータを明確にした。
前
補強リブ高さ、
本数、
幅、
長さ
前
%)、アナログ素子数が3,200素子(従来比▲18%)まで削
つなぎ厚み、
長さ
減し、チップサイズが従来比(面積)▲22%を実現した。
筐体厚み
鋳造可能な厚み
従来品
チップサイズ
面積比
▲22%
前 後
つなぎ厚み、
長さ
開発品
図12 カスタムIC(ASIC)チップサイズ比較
Fig.12 Chip Size Comparison of Custom ICs (ASIC)
後
補強リブ高さ、
本数、
幅、
長さ
車両取り付け部厚み
図14 筐体設計パラメータ
Fig.14 Housing Design Parameters
5.3筐体の小型化
新興国向けECUはスクイブ4chまでとすることで、コネ
機能への寄与率が高いパラメータは、前BKT・後BKT
クタ及び基板を小型化している。しかし、ECUの車両搭
補強リブの長さ、高さ、本数と前BKT・前-後BKTつなぎ
載は、標準化が進んでおり、車両取り付け位置、コネクタ
部の厚み、長さであり、軽量化も考慮した最適設計の因子
の位置を従来ECU(06モデル)と同じにする必要がある。
で筐体設計を実施した。
06モデル
開発品
(案)
応力集中を緩和
BKT 剛性UP
前BKT補強リブ 1本
インパネフロア
インパネフロア
図13 エアバッグECU標準搭載図
Fig.13 Standard Installation Style of Airbag ECU
前BKT補強リブ 2本
+つなぎ部補強
図15 強度解析の例
Fig.15 Example Strength Analysis
上記検討した形状により、金型品を作製し、振動特性(伝
達特性)及び強度が仕様を満足することが確認でき、形状
を図16のように決定した。
図13で示すように標準搭載を満足するためには、BKT
部を長くする必要があり、エアバッグECUにおける筐体の
リブ 本
つなぎ補強
基本機能である『車両衝突Gを基板上Gセンサに確実に伝
達する機能』と『基板を保護する機能』をBKTの剛性低下
により損なう可能性がある。また、機能を満足するために
補強を施すと重量が重くなり、コスト削減が困難になる。
つなぎ補強
従って、ローコストECUでの筐体小型化設計ポイント
は必要最小限の補強(重量増加)で①機能を満足して、
②軽量化を実現することになる。
①機能を満足する設計
補強のない状態から、設計パラメータを抽出し、品質工
リブ 本
余肉を削減
(最適リブ設計)
図16 新興国向けECU筐体の最終形状
Fig.16 Determined ECU Housing Shape for Emerging Countries
15
富士通テン技報 Vol.29No.1
②軽量化の実現
①にて補強のための重量UPを必要最低限に抑えたこと
で、従来ECU(06モデル)から重量を25%削減し、コスト
ダウンを実現させた。また、他社のエアバッグECU筐体
と比較しても重量は同等以下になっており、競争力の高い
筐体設計が実現できたと考える。
削減
重量比
ECU基板写真
筐体写真
図18 ローコストエアバッグECU写真
Fig.18 Low-Cost Airbag ECU
7
06モデル ローコストECU
B社
C社
T社
M社
7.今後の技術開発について
今後の技術開発について
今後の新興国市場では、特に中国を中心に自動車の安全
図17 筐体重量の他社比較
Fig.17 Housing Weight Comparison with Competitors
性に対する意識の高まりにより、今回の前突特化の最大
4chシステムから側突まで対応した最大6~8chシステムの
需要が増加してくると予想される。
6
そのニーズに対応するため、今回開発した小型筐体サイ
6.開発の成果
開発の成果
ズに収まるローコストな前側突対応ECUを開発していく
予定である。
下表に開発完了時での実績を示す。
開発目標
実績
判定
部材費
仕様
▲25%
▲30%
○
部品点数
▲30%
▲31%
○
筐体サイズ
(重量)
▲25%
▲26%
○
8
8.おわりに
おわりに
今回開発したECUは、2010年12月より新興国向け車両用
として当社フィリピン工場にて量産開始され、エアバッグ
徹底的にローコスト化にこだわり、開発を進めてきたこ
とで、開発当初の目標である部材費▲25%、部品点数▲
30%、筐体サイズ▲25%を全てクリアすることができた。
システムの低価格化に大きく貢献することができた。
最後にこの開発に協力いただいた社内外の関係者の皆様
に心より感謝の意を表します。
参考文献:
警察庁交通局「平成22年中の交通死亡事故の特徴及び道路
交通法違反取締り状況について」(2011年1月27日)
筆者紹介
遠藤 淳一
(えんどう じゅんいち)
1991年入社。以来、自動車用電
子機器の製造担当を経て、2002
年よりエアバッグECUハード開
発に従事。現在、AE技術本部車
両技術統括部技術一部に在籍。
前野 義彦
(まえの よしひこ)
1984年入社。以来、自動車用
電子機器の開発に従事。現在、
AE技術本部車両技術統括部技
術一部部長。
16
土師 慶之
(はじ よしゆき)
2002年入社。以来、AE製品(主
にエアバッグECU)の構造設
計 に 従 事。 現 在、ITS技 術 本
部共通技術統括部開発二部に
在籍。
東 智代
(あずま ともよ)
2006年入社。以来、エアバッ
グECUの筐体設計、要素開発
に従事。現在、富士通テンテ
クノロジ株式会社第一エンジ
ニアリング部に在籍。
マルチメディア製品向けソフトウェア開発環境の構築
Establishment of Software Development Environment for Multimedia Products
増 田 泰 昌 Yasumasa MASUDA
坂 部 由 典 Yoshinori SAKABE
鈴 木 昌 三 Shozo SUZUKI
野 口 哲 宏 Tetsuhiro NOGUCHI
要 旨
車載向けマルチメディア製品(カーナビなど)のソフトウェア開発の効率化、品質向上を目的として、パソ
コン(以下、PC)上でのソフトウェア開発環境“SWIFT2”を開発した。SWIFT2では、OSを従来のμITRON
からWindows-Automotiveへの移行を実現した。
SWIFT2の開発により、SWIFT(カーオーディオ向けソフトウェア開発環境)で培ったPC上での開発ノウハ
ウを踏襲でき、かつWindows-Automotiveに備わっている多彩な機能を活用することができた。これにより効
率的なソフトウェア開発を実現することが可能となった。
さらに、PCのみで開発が可能であるというメリットを活かし、グローバル設計(海外オフショア)の推進、
および若年層の早期戦力化にも効果があった。
Abstract
For the purpose of efficient software development and higher quality of in-vehicle multimedia products (such as
car navigation system), FUJITSU TEN has developed “SWIFT2”, a software development environment, that runs
on a personal computer (hereinafter referred to as PC). In SWIFT2, the OS was shifted from μITRON to
Windows-Automotive.
Due to the development of SWIFT2, we were able to follow the development know-how on the PC that was
accumulated through the SWIFT (software development environment for car audio devices) and utilize the various
functions installed in Windows-Automotive. This became possible to achieve efficient software development.
In addition, by using the advantage that the development is possible only by a PC, SWIFT2 has promoted
global designing (offshore development) and enhanced skills of our younger software engineers.
17
富士通テン技報 Vol.29No.1
1
1.はじめに
はじめに
マイコン内の構成
前回(第51号)は、カーオーディオ向けソフトウェア開
アプリケーション
発環境「SWIFT(Software Integration Framework to
the field)」の構築について紹介した。SWIFTは、カーオー
ディオ向けのソフトウェアPF(プラットフォーム)を対
象にした開発環境であり、OSとしてはμITRONに限定し
たソフトウェア開発環境であった。
今回は、カーマルチメディア製品(カーナビなど)を
対象にしたソフトウェア開発環境「SWIFT2」について
紹介する。「SWIFT2」は対象OSとして、Microsoft社の
Windows-Automotive(Windows-CEの応用製品)を採用
OS(Windows-Automotive)
BSP(Board Support Package)
for ターゲットマイコン
マイコン(ハードウェア)
し、Windows-Automotive上のアプリケーションをPCの
みで開発することを可能にするソフトウェア開発環境で
ある。
「SWIFT2」の開発により、Windows-Automotive上の
アプリケーション開発の効率化、および品質向上を実現す
ると共に、PCのみで開発が可能というメリットを活かし
た付随効果を上げることができたので紹介する。
SWIFT2の構成
アプリケーション
2.Windows-Automotiveへの移行
2
Windows-Automotiveへの移行
Windowsへの移行は、2005年頃から検討を進めてきた
が、リアルタイム性や起動時間の課題、またリソース(メ
モリ容量:ROM・RAM)の制限から本格的な導入には至っ
ていなかった。しかし、携帯電話連携、インターネット接
続など、車載機に搭載される機能は拡大し続け、PCに搭
載されるものと同じ機能がより要求されるようになってき
OS(Windows-Automotive)
BSP(Board Support Package)
for Windows7
マイコンエミュレータ
た。この状況変化に伴い、ソフトウェアの開発工数も増加
の一途を辿り、今後の機能拡大に対応していくためには、
豊富なミドルウェアや洗練されたHMI開発環境を標準搭
載しているWindows-Automotiveへの移行が必須であると
判断し、導入を決定した。
図1 Windows-AutomotiveのPCイメージ
Fig.1 PC Image of Windows-Automotive
しかし、PC上のソフトウェア開発環境の構築に当たっ
ては、Microsoft社製のWindows CE5.0 Platform Builder
3.Windows-Automotiveの搭載手法
3
Windows-Automotiveの搭載手法
Windows-Automotiveを搭載する場合、まず始めに、
による開発環境が充実しており、BSPの移植のみで比較的
短 期 間 で 移 植 作 業 を 実 施 す る こ と が で き た。 こ れ も
Windows-Automotiveの採用メリットである。
BSP(Board Support Package)の開発が必要になる。
BSPは、ターゲットとなるハードウェアに対応したドライ
バソフトウェア、およびOSを実行するためのデバイスの
44.SWIFT2のソフトウェア構成
SWIFT2のソフトウェア構成
初期化処理などを行うソフトウェアである。OSの下層に
SWIFT2のソフトウェア構成は、SWIFTのソフトウェ
BSPを配置することにより、上位となるアプリケーション
ア構成を踏襲している。その大きな特徴は、仮想デバイス
や、OSであるWindows-Automotiveからハードウェア依
の実装である。実機上では、マイコン(microprocessor)
存を排除することを実現している(図1参照)。BSPは、ター
上にターゲットソフトウェアを搭載し、マイコン周辺には
ゲットとなるハードウェアに対応したものであるため、
DSP、チューナ、CD、DVDなどのさまざまなデバイス(ハー
PC上のシミュレーション環境であるSWIFT2を開発する
ド)が搭載され、ソフトウェアはそれらのデバイスを制御
に当たっては、BSPのPCへの移植が第一の課題となった。
しながら動作する。
18
マルチメディア製品向けソフトウェア開発環境の構築
PC上でソフトウェアをエミュレーションさせても、周
①
辺のデバイスが無ければ、ソフトウェアが動作しない。そ
こで、我々はデバイスをシミュレーションさせるためのソ
フトウェアを仮想デバイスとして実装していた。今回
SWIFT2の開発に当たっては、SWIFTで開発した仮想デ
②
バイス資産を100%流用することを可能にした。それによ
り、Windows-AutomotiveのPCへの移植とともに、実機
③
と同じ動作をPC上で実現することができた。
表1に、主要な仮想デバイスを紹介する。
表 1 主要な仮想デバイス
Table 1 Main Virtual Devices
仮想デバイス名
LCDデバイス
TFTデバイス
VFデバイス
CDデバイス
DVDデバイス
DSPデバイス
電源デバイス
スイッチデバイス
タッチデバイス
チューナデバイス
仮想デバイスは、デバイス毎に開発が必要である。デバ
図2 電源変動シミュレーション
Fig.2 Simulation of Power Fluctuation
図2は、電源変動シミュレーションの仮想デバイスの画
面イメージである。①~③には以下の機能がある。
①電源変動が始まるタイミング、および電源が変動してい
る時間を設定する。
②Bu電源の変動するタイミングを視覚的に表示する。
③ACC電源の変動するタイミングを視覚的に表示する。
また、電源変動の精度としては、1ms単位での時間設定
をすることが可能であり、電源変動に対する品質確保に大
きな効果をあげることができた。
イスのバージョンが上がった場合にも新仮想デバイスの変
⑵統合仮想デバイスは、複数の仮想デバイスを動的に切
更対応が必要となる。この仮想デバイスは、SWIFT開発
り替えができる機能を保有する仮想デバイスである。これ
当時(2007年度)から実施しており、現在(2011年度)で
は車載向け製品で頻繁に発生する、派生機種の同時開発を
は、約120種類の仮想デバイスを保有している。2011年度
容易にするために実装した。
中には、約150種類まで拡充させることを計画している。
車載向け製品では、向け先(日本・北米・欧州など)に
よるラインナップ追加、グレード(LO・Mid・Hi)によ
5.SWIFT2の新機能
5
SWIFT2の新機能
SWIFT2では、SWIFTで搭載した機能に加え、車載特
るラインナップ追加などが多く発生する。また、ラインナッ
プ追加により搭載されるデバイスもさまざまになる。例え
ば、北米向けでは、XM(衛星ラジオ)やHD(デジタル
有の以下の機能を追加実装した。
ラジオ)機能があり、欧州向けではRDS(FMデータ放送)
(1)電源変動シミュレーション
がある。また、グレードにより、CD、DVD、USBなどの
(2)統合仮想デバイス
機能の搭載有無が変化する。
これらの仮想デバイスを自由に切り替えることを可能に
⑴電源変動シミュレーションは、車載機独特の機能であ
る。車載機には、車のバッテリに直接つながる電源(Bu
し、共通のソフトウェア開発環境を構築するために、統合
仮想デバイスの開発を行った。
電源)とキーと連動するACC電源の2系統の電源が接続さ
れるが、エンジン始動時、この2つの電源にはさまざまな
変動が発生する。例えば、通常、車載機の電源は12V(ボ
ルト)程度であるがエンジン始動時には数msの間6V ~
9V程度まで電圧が下がる。
この電源変動に対する評価手法としては、従来、実際の
電源を使用して実施することが主流であった。しかし、今
回取り入れた電源変動シミュレーションでは、PC上で電
源変動を再現させることができる。
19
富士通テン技報 Vol.29No.1
図3は、統合仮想デバイスの画面イメージである。これ
らの仮想デバイスは、専用の設定ファイルに登録しておく
ことにより、ラインナップ毎のソフトウェア開発環境を自
動的に構築できるようにしている。
図4は、SWIFT2の画面イメージである。各種のデバッ
グ用モニタや、各仮想デバイスのステータス、またソフト
ウェアの内部状態などを見やすく配置することにより、効
率的なソフトウェア開発環境を実現している。HMIの描
画はもちろん、製品意匠に関してもツール内に取り込むこ
とにより、実機に近い環境が完成したと考えている。
66.Windows向けソフトウェア技術者の活用
Windows向けソフトウェア技術者の活用
Windows-Automotiveへの移行したことによる効果は、
ソフトウェア開発技術者の確保にもつながった。大きく
は、以下の2つの側面がある。
(1)若年層の早期戦力化
(2)グローバルな人材調達
⑴従来の組み込み向けソフトウェアに比べ、Windows
上でのソフトウェア開発は、短期間に習得することが可能
である。Windows-Automotiveへ移行することにより、若
年層の早期戦力化を実現することができた。また、組み込
図3 統合仮想デバイス
Fig.3 Integrated Virtual Device
みソフトウェアは、当社のような電気メーカや特定のソフ
ト ウ ェ ア ハ ウ ス で 開 発 を 行 っ て い た が、WindowsAutomotiveへ移行することにより、オープン環境に慣れ
親しんだ豊富な人材を活用することが可能となった。
図4 「SWIFT2」のイメージ
Fig.4 Image of“SWIFT2”
20
マルチメディア製品向けソフトウェア開発環境の構築
⑵グローバルな人材調達に関しては、SWIFT開発時に
従来の派生機種開発では、母体機種設計者以外が開発を
も触れているが、実機(ハードウェア)を必要としないソ
行おうとした場合、母体機種開発内容の理解不足により品
フトウェア開発環境があるため、PCさえあれば世界中の
質確保が困難であった。そのため、実質的に母体機種設計
どこでもソフトウェアの開発をすることが可能である。当
者(国内のソフトウェア技術者)が派生機種の開発も行っ
社においても、フィリピンや中国を対象にオフショア開発
ており、開発コストの低減が実現できなかった。「ソフト
を推進しているが、SWIFT2の開発により、海外のソフト
工場化」の取り組みでは、この問題を克服するため、派生
ハウスへのソフトウェア開発委託をスムースに実施するこ
機 種 開 発 に 特 化 し た プ ロ セ ス モ デ ル で あ るXDDP
とができ、
オフショア開発に大きく貢献することができた。
(eXtreme Derivative Development Process)の考えを
ベースに、新しい派生機種開発プロセスを構築し、オフショ
7.海外オフショア開発での活用事例
7
海外オフショア開発での活用事例
オフショア開発は、特に派生機種の開発を中心に取り組
ん で お り、 前 回( 第51号 ) 紹 介 し たSWIFTや 今 回 の
SWIFT2は、今ではオフショア開発には欠かせないツール
ア開発を実施していく(図5)。
【XDDPの考え方】
⑴ソフトウェア開発の工程ごとのINPUT・OUTPUTを明
確にし、変更要求の差分情報を可視化する。
⑵開発担当者が理解出来ていない箇所の影響を母体機種全
となっている。
今回は、オフショア開発をさらに効率的に実施していく
体理解者のレビューでカバーする。
ための新たな取り組みを実施しているので、併せて紹介し
たい。それは、「ソフト工場化」の取り組みである。この
図5は、現在の「ソフト工場化」の開発プロセスである。
取り組みは、ソフトウェア開発の在り方を見直し、生産ラ
特徴としては、国内で実施する業務と海外へ委託する業務
インのごとくソフトウェアを効率的に開発する仕組みを構
を明確に分け、海外ではソフトウェア開発業務(実際のソー
築し、ソフトウェア資産の再利用開発を図る、というもの
スコードを作成する業務)に集中できるような仕組みとし
である。
ている。
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ỼἧἉἹỴ᧏ႆ‫ۀ‬ᚠር‫׊‬
図5 ソフト工場化の開発プロセス
Fig.5 Development Process of Software Factory
21
富士通テン技報 Vol.29No.1
2010年度には、この開発プロセスに基づき市販向け製品
のソフトウェア開発で、海外関係会社での開発のトライア
8
8.おわりに
おわりに
ルを行った。このトライアルでは、HMIアプリケーショ
当社のソフトウェア開発環境SWIFTの開発、および活
ン開発に特化して実施し、試行錯誤を繰り返すなかで最終
用方法について前回
(第51号)
に続き2回に分けて紹介した。
車載機におけるソフトウェア開発環境は、年々飛躍的な
的な開発プロセスにまで落とし込むことができた。
2011年度は、本プロセスを海外関係会社での派生機種開
進歩を遂げている。
要因としては、
以下の3点があげられる。
◦ハードウェアの性能アップ
発に本格導入を開始している。
今後のオフショア開発においては、SWIFT2の活用によ
◦メモリ(ROM・RAM)の大容量化
◦汎用OS(およびミドルウェア)の普及
り、以下の2点を期待している。
①母体機種の仕様理解促進に伴う変更設計書のレベル
アップ。
また、本文でも触れているが、車載機に搭載される機能
は、現在ではPCに搭載される機能と変わりがないほどに
②実機が無い状態での結合試験・システム試験の実施。
なってきている。
次のステップとしては、海外の他のソフトウェアハウス
今後は、更なる効率化、品質向上に向けた取り組みを継
への開発委託でも本プロセスを導入し、オフショア開発の
続するのはもちろん、SWIFTのような開発ツールの適用
拡大を目指していきたい。
を開発プロセスへ落とし込みを行い、ツールの適用範囲と
品質とがリンクできるような仕組みを作っていきたい。
記載した製品名などの固有名詞は、各社の商標または登
録商標です。
筆者紹介
増田 泰昌
(ますだ やすまさ)
2004年入社。以来、オーディ
オ製品のソフトウェア開発に
従事。現在、ソフトウェア技
術本部CIソフト統括部第二ソ
フト技術部チームリーダ。
野口 哲宏
(のぐち てつひろ)
1987年入社。以来、オーディ
オ製品のソフトウェア設計に
従事。現在、ソフトウェア技
術本部CIソフト統括部第二ソ
フト技術部部長。
22
坂部 由典
(さかべ よしのり)
1993年入社。以来、オーディ
オ製品のソフトウェア開発に
従事。現在、ソフトウェア技
術本部CIソフト統括部第二ソ
フト技術部に在籍。
鈴木 昌三
(すずき しょうぞう)
1989年入社。以来、オーディ
オ製品のソフトウェア開発に
従事。現在、ソフトウェア技
術本部ソフト工場化推進室に
在籍。
技術ノート
環境にやさしい部分コーティング技術の開発
~コーティング液の使用量低減~
Development of Environmentally-Friendly Technology by Spot Coating
- Reduction of amount of coating liquid -
後 藤 大 輔 Daisuke GOTO
成 井 譲 司 Joji NARUI
新 穂 貴 史 Takashi NIIHO
大 槻 高 幹 Takamiki OHTSUKI
1
1はじめに
はじめに
結露が引き起こす不具合について図3を用いて説明す
る。結露状態を擬似的に再現するために電子チップ部品(以
電子機器製品内部の空気が車室内の空気で温められるこ
下、チップ)の両端に電圧をかけ水滴を落としたものが図
とで発生する結露の影響により電子部品の導通不良などの
3(a)であるが、コーティングを施していない場合、時間の
不具合が発生するため、電子機器製品内部の電子部品に
経過と共にチップ両端の電極をつなぐようにマイグレー
コーティングを施すことが一般に行われている。
ション
(1)
が発生し、導通不良を発生させてしまう(図
コーティングとは、液状の材料をプリント基板上の電子
3(b))。この場合、チップの電極を覆うようにコーティン
部品に塗布し、乾燥させ、皮膜を形成する技術であり、形
グを施す(図4)ことにより、マイグレーションの発生を
成した皮膜で電子部品を覆い、水分や異物などの外乱作用
防ぎ、電気的不具合を防ぐことができる。
から電子部品を守ることができる。
コーティング技術としては、ディップ工法やカーテン工
水滴
マイグレーション
法などが一般的なコーティング技術として知られている
が、広範囲に一括してコーティングを行うため、コーティ
ング液の無駄や、コーティング禁止領域への対応、さらに、
高額な設備投資が課題となっている。本稿ではコーティン
グ液の使用量を大幅に削減することで材料を節約し、か
つ、皮膜を形成したい場所にピンポイントで形成すること
ができるコーティング技術について紹介する。
2
2.コーティングの必要性
コーティングの必要性
(a)
(b)
図3 マイグレーション現象
Fig.3 Migration phenomenon
コーティング液
近年の車載用電子機器製品を例に挙げると、車載用前面
パネル(図1)では、異型化、大型化のニーズが増えている。
このため形状が複雑化し、スリット部分が増え、隙間から
外気が内部へ侵入する(図2)。この外気の影響によって、
パネル背面のプリント基板(パネル基板)上で結露が発生
し、不具合の原因となる。
部品電極
図4 コーティング模式図
Fig.4 Typical coating pattern
このとき、チップ電極の一部でも露出(コーティング液
が付着していない)していると、結露が発生し、マイグレー
ションが発生するため、コーティング液が確実にチップ全
体を覆えていることが必要である。また、コーティング液
を乾燥させた後の膜厚が薄いと、マイグレーションが膜を
破って発生する可能性があるため、一定の膜厚以上を確保
することも必要である。
図1 車載用前面パネル
Fig.1 Front panel for in-vehicle
product
図2 パネル内部の外気の流れ
Fig.2 Outer air coming inside
panel
*(1)配線や電極として使用した金属が絶縁物の上を移動する
こと。
23
富士通テン技報 Vol.29 No.1
3.当社のコーティング技術の現状と課題
3 当社のコーティング技術の現状と課題
たチップにコーティングを塗布する場合、高精度な塗布が
必要となる。
車載用電子機器は、搭載される環境により結露対策を行
わなければならず、当社製品についてもコーティングは必
要不可欠な技術である。工法としてはカーテン工法(図
5(a))、ディップ工法(図5(b))などがあるが、現状、以下
4
4.コーティング塗布技術の開発
コーティング塗布技術の開発
まず、これらの課題を解決できるコーティング工法の選
の課題がある。
定を行った。工法の選定条件は必要な塗布面積に対して最
(1)コーティング液使用量の低減
小限のコーティング液を塗布できることである。液体の塗
現状のコーティング工法では、プリント基板全体をコー
布技術としては、他の用途で実績のあるニードルノズルを
ティングするため、実際にコーティングが必要な場所以外
用いた工法がある。そこで、開発効率の向上もねらいに、
にもコーティング液を塗布していることになる。つまり
この塗布技術を使ってコーティング液を塗布する工法の開
コーティング液を無駄に使っていることになる。
発を進めることにした。図7はコーティング工法の種類と
基板
ノズル
塗布量、塗布面積を示したものである。
コネクタ(塗布禁止部品)
以下にニードル工法による塗布効率向上について開発過
程を踏まえ紹介する。
広い
ディップ
カーテン
コーティング塗布範囲
(b)
ディップ工法
塗布面積
(a)
カーテン工法
図5 工法の種類
Fig.5 Types of coating method
ニードル
ノズル
して、塗布効率を用い確認を行った。塗布効率とは図6に
示すように、必要な量と実際の塗布量の比である。
塗布効率
(%)
=①必要量(mg)/②実際の塗布量
(mg)
少ない
塗布量
多い
図7 コーティング工法の種類
Fig.7 Types of coating method
4.1 ニードルノズル工法の開発目標設定
基板
1
2
手
狭い
無駄に使っているコーティング液を定量的に表す指標と
コネクタ
(塗布禁止部品)
はけノズル
(1)塗布量の目標設定
ニードルを用いて、チップ1点1点を全体にコーティング
液で覆う場合、チップ1点当たりの塗布量を、理論上、図
8の計算式で求めることができる。
図6 塗布効率の考え方
Fig.6 Concept of coating efficiency
現在の工法の塗布効率を求めると、カーテン工法では
7%、ディップ工法では5%となり、90%以上のコーティン
グ液が不要な部分に塗布されていることになる。塗布効率
を高め、コーティング液使用量を低減する工法の開発が一
つ目の課題である。
(2)コーティング範囲の精度向上
図8 塗布量算出
Fig.8 Coating amount calculation
上記計算式(V)からチップの体積を差し引いたものが
チップ1点当たりの塗布量となるが、ニードルノズル工法
もう一つの課題は、コーティング液を規定の範囲に高精
を用いれば、塗布効率50%以上を達成することが理論上可
度に塗布できるコーティング技術の開発である。前述した
能となる。ただし、マイグレーションの発生を防止するた
前面パネルの場合、パネル基板にはコネクタやスイッチが
めに必要な膜厚も確保する必要があるため、塗布効率50%
あるため、コーティングが必要な箇所と禁止される領域が
以上、かつ、規定の膜厚を確保できる最小塗布量を開発目
点在している。そのため、塗布禁止領域の近くに配置され
標として設定した。
24
環境にやさしい部分コーティング技術の開発 ~コーティング液の使用量低減~
(2)コーティング液の拡がり幅の目標設定
と図11のように目標とする範囲以上にコーティング液が
規定範囲内にコーティング液を正確に塗布するために
は、液の拡がりを抑制することも重要な要素となる。液の
拡がってしまう。塗布効率を上げるためには、まず、液の
拡がりを最小にする方法の検討が必要となった。
拡がりに対する目標値は、当社内で規定するコーティング
禁止領域から最も厳しい条件にある部品までの距離以下と
なるよう目標設定を行った。(図9)
液拡がり幅
塗布禁止領域
図11 1点塗布
Fig.11 One-point coating
塗布面積
そこで、一回の吐出量を少なくし、2点、3点、4点と多
点塗布しながら、液拡がりの状態を確認した(図12)。
図9 液拡がり幅の目標
Fig.9 Target width of liquid diffusion
塗布の点数を多くすることで、液拡がりは縮小できるこ
とは確認できたが、同時に生産性も悪くなるため、塗布方
4.2 ニードルノズルの設定
法としては、2点塗布を上限として、液の拡がりを抑制で
まず、1点あたりの吐出量について吐出圧との関係を把
きる方策の検討を進めた。
握し、使用するニードルノズルを決めた。
さらに、塗布形状を安定させるため、ノズルに表面処理
を施したニードルノズルを使用することにした。処理を行
わない場合、コーティング液が、ニードルノズル表面に付
着し、付着した液にコーティング液が引き寄せられ、精度
よく塗布ができなかった(図10(a))。そこで、特殊な表面
図12 多点塗布
Fig.12 Multi-point coating
処理を行うことにより、図10(b)に示すように吐出した液
が、ニードルノズル表面に付着しなくなり、塗布径のばら
つきを小さくすることができた。
通常、2点塗布を行うと、塗布されたコーティング液の
流れる力ベクトルは、図13に示すように、液が接触する
通常ノズル
SUS
1点目
液が付着
4点目
・・・・
面では、お互いの力ベクトルが反発するが、液が接触して
いない面では、表面張力によって同心円方向に液は拡が
る。よって、単に2点塗布を用いるだけでは、液拡がりを
抑制することはできない。
Cpk1.11
(a) 通常ノズルを用いた場合
表面処理ノズル
1点目
4点目
1点目
2点目 塗布液
表面張力
・・・・
Cpk2.02
液拡がり
力ベクトル
(b) 表面処理ノズルを用いた場合
図10 ノズルを用いた塗布状態
Fig.10 Coating through nozzle
4.3 塗布方法の検討
ニードルノズルによる塗布は、理論上、図8のような塗
布エリアとなるが、実際に必要な塗布量を一度に塗布する
一体後
液拡がり
(一体前と同じ)
図13 2点塗布による液拡がり
Fig.13 Liquid diffusion by multi-point coating
25
富士通テン技報 Vol.29 No.1
しかし、図14のように液拡がりを抑制するため、2点目
の液に外力を加えることで、コーティング液の拡がり方向
5
5.ニードルノズル工法開発による効果
ニードルノズル工法開発による効果
を抑制できることがわかり、試行を重ねた結果、これまで
今回、我々が開発したニードルノズル工法を用いた場
2.0mm以上あった拡がり幅を1.5mm以下に抑えることに成
合、塗布効率を56%まで高めることができ、ディップ工法
功した。この方法により、2点目の液が外方向に流れ拡が
のコーティング液使用量と比較して、11分の1以下に低減
ることなく、チップ全体を覆うことができ、かつ、液拡が
することができた。また、液拡がりは、1.5mmに抑制する
りを抑制することができた。
ことができ、コーティングを行いたい場所に高い精度で塗
1点目
布することが可能となった。更に、今回開発したコーティ
2点目
ング設備は、他用途で使用する汎用設備の改造で対応でき
るシンプルな構造であるため、従来工法に使用するコー
ティング専用設備と比較し大幅な投資コストの低減を図る
ことができた(図16)。
図14 液拡がり抑制方法イメージ図
Fig.14 Image of method for controlling liquid diffusion
4.4 塗布量管理幅の決定
図15は塗布量と液拡がりの分布を示すが、チップの電
極露出がない領域を調べ、かつ、塗布量を最小にするため
に、工程内のばらつきを含めて、管理幅を決定した。
2点塗布の結果
液拡がり(mm)
液拡がり
2
1.8
1.5
電極露出範囲
2.5
MAX
MAX
AVERAGE
AVERAGE
MIN
MIN
図16 コーティング塗布装置
Fig.16 Coating apparatus
6
1
6.おわりに
おわりに
当社の量産場面において、ニードルノズル工法はコー
ティング禁止領域の厳しい部品への精度の高いコーティン
0.5
0
塗布量の
塗布量
5
10
管理幅 7.5
塗布量
塗布量(mg)
図15 塗布量管理幅
Fig.15 Coating amount control range
グ塗布技術として量産投入され、成果をあげているが、生
12.5
産性の面ではまだ課題が残っている。ニードルノズル工法
を広く普及させるためには、塗布のスピードの向上を主と
した生産性の向上が不可欠であり、今後も更なる改善を進
める必要がある。
筆者紹介
後藤 大輔
(ごとう だいすけ)
2007年入社。以来、材料技術、
実装技術の開発に従事。現在、
生産企画本部生産技術統括部
生産技術開発部に在籍。
大槻 高幹
(おおつき たかみき)
1988年入社。以来、オーディ
オ、マルチメディア製品の生
産技術開発に従事。現在、生
産企画本部生産技術統括部生
産技術開発部部長。
26
成井 譲司
(なるい じょうじ)
1985年入社。以来、実装技術・
材料開発を経て、生産技術の
企画・開発に従事。現在、生
産企画本部生産技術統括部生
産技術開発部チームリーダ。
新穂 貴史
(にいほ たかし)
1986年入社。以来、オーディ
オ、マルチメディア製品の生
産準備、技術開発に従事。現
在、生産企画本部生産技術統
括部生産技術管理部部長。
技術ノート
設計支援システム
Development Support Systems
上 村 正 継 Masatsugu KAMIMURA
Philip TENORIO フィリップ テノリオ
1
が確認する設計検証工程で活用するものである。
1はじめに
はじめに
設計場面では、オーディオの測定、解析、検証に多くの
Fujitsu Ten Solutions Philippines, Inc.(以下、FTSP)
時間がかかるのはもちろんのこと、設計者自身が試作機と
は、1999年にFujitsu Ten Corporation of the Philippines
測定器を手動で設定しながら、特性測定をしていく必要が
の「ソフトウェアビジネスプロジェクト部門」から分離さ
ある。APESはこれらすべての設定と測定を自動化する。
れ、富士通テングループにおいて最初のオフショアにおけ
最初に必要最小限の設定をした後は、測定をシステムに任
る設計会社として設立された。オーディオ機器のソフト
せ、結果の解析や他の設計など付加価値の高い業務に工数
ウェア開発を担当するCar Infotainment Department(以
を振り向けることができる。
下、CID)では、設立当初より本社向けの開発支援ツール
APESは、GPIB(General Purpose Interface Bus)で制
を開発してきており、最初の数年間は、シミュレータやファ
御される測定器(オーディオアナライザ、シグナルジェネ
イル生成ツールなど、比較的簡単なツールを開発してい
レータ)、製品との通信ボックス、それを制御するパソコ
た。その後、要求項目の多様化に伴い、開発プロセスをサ
ンで構成される。図2.1にAPESのシステム構成を示す。
ポートするソフトウェアや問題点を管理するツールなど、
開発領域を拡大してきた。
図1.1にCIDで 開 発 す る こ と が で き る ツ ー ル ソ リ ュ ー
ションマップを示す。
【ソリューションマップ】
業務管理・改善
Defect DB
CMツール
RCT
GM-LAN Sim
ソリューション提案型
自主開発型
FAST
工程移管型
EART
Global-A Felix
iCompare
APES
Report (Excel File)
開発支援
従来型
FTL
④提供
ユーザ
ユーザ
ツール
ツール
開発部隊
開発部隊
⑤導入
FTSP
ユーザ
ユーザ
FTL
FTL
②発注
③納品
業務課題
ヒアリング
(情報収集)
サテライトオフィス
サテライトオフィス
(ブリッジSE)
(ブリッジSE)
検討
依頼
ツール
ツール
開発部隊
開発部隊
ソリューション提案⇒受託型
①依頼
ツール
ツール
開発部隊
開発部隊
FTSP
FTSP
ユーザ
ユーザ
ツール
提案
自主開発⇒社外展開型
FTL
FTL
FTSP
FTSP
ユーザ
ユーザ
ユーザ
ユーザ
図2.1 APESのシステム構成
Fig.2.1 APES system configuration
ツール+運用
トータルで提案
ツール
ツール
開発部隊
開発部隊
連携
図1.1 ツールソリューションマップ
Fig.1.1 Tool Solution map
2.2 iCompare
オーディオのハードウェア設計を担当するHardware
FTSPにハードウェアとソフトウェアの双方の設計者が
Design Department(以下、HDD)の機構設計セクショ
いるメリットを生かし、2008年より社内共同プロジェクト
ン(Mechanical Design Section)で受託しているオーディ
を開始、オーディオ製品開発をサポートするツール「オー
オの前面パネル設計においては、変更前の図面との比較を
ディオ自動評価ツールAutomatic Product Evaluation
行い変更点が設計意図と合致しているかを検証し、結果を
System(以下、APES)」、「図面比較ツールiCompare(以
設計委託元に報告する必要がある。これを目視で行ってい
下、iCompare)」を開発した。
た以前の設計では、品質レベルや設計の進め方が、設計者
本稿では、APESとiCompareの基本技術、コンセプトを
述べ、今後の拡張計画を紹介する。
やレビュアのスキルや過去の経験に大きく依存してしまっ
ていた。
iCompareは、変更前後の比較部分を自動化するととも
2
2.APES、iCompareとは
APES、iCompareとは
2.1 APES
に比較速度を高め、比較結果を実施者に依存することなく
正確に求めることを目的として開発した。
本ツールでは、新旧の図面に対して、画像をピクセル単
APESはオーディオの電気的特性を自動的に測定するシ
位で比較し、変更点を検出する。また、比較結果はフォー
ステムで、製品が仕様通りの設計となっているかを設計者
マットを整え、社内図面の形式で出力することができる。
27
富士通テン技報 Vol.29 No.1
3
3.2 iCompareの主要機能
3.機能
機能
iCompareは二つの画像を比較し、その違いを結果とし
3.1 APESの主要機能
て出力する。基本GUI画面を図3.3に示す。変更前の画像
APESは、⑴評価対象となる試作機の設定、⑵自動測定
と結果のカーブデータ生成の二つの主要機能を有する。
は左に、変更後の画像は中央に、そして、比較結果として
相違点が右画面に赤く表示される。
図2.1に示したように、APESは、測定器(オーディオ
ユーザである設計者は、比較結果を見て設計変更が正し
アナライザ、シグナルジェネレータ)と測定対象のカーオー
く行われているかどうかを判断する。比較結果にタグ付け
ディオを制御し自動測定を行う。
して図面生成ができるため、レビュー結果をそのまま図面
カーオーディオは車内LANプロトコルを用いて通信
として活用することも可能となる(図3.4)
ボックス経由で接続され、専用コマンドにて制御される。
測定器制御にはGPIBプロトコルを用いる。図3.1に各測定
機器の設定画面を示す。
変更前の画像
オーディオ
アナライザの設定
変更後の画像
ラジオH/Uの設定
比較結果
図3.3 iCompare基本GUI画面
Fig.3.3 iCompare main GUI screen
通信ボックス
の設定
タグ情報
入力領域
図3.1 測定機器の設定画面
Fig.3.1 Setting screens of instruments
タグ付けさ
れた変更点
カ ー ブ デ ー タ は、AM、FM、Loudness、Treble、
Bass、Balance、Faderおよび、Volumeがリアルタイムに
測定できる。AMカーブについてはSmall Signal-to-Noise
図3.4 比較結果の図面出力設定画面
Fig.3.4 Setting screen for drawing output of comparison result
(S-S/N)、Large Signal-to-Noise(L-S/N)とCarrier-toNoise(C/N)の3種類の測定情報を提供する。また、FMカー
ブではAMと同じ3種類に加えて、チャネルセパレーショ
4
4.キーテクノロジ
キーテクノロジ
4.1 APESによる測定手順の実現
ンの測定情報を提供する。
図3.2にツールで測定結果の表示例を示す。
前章で述べたように、APESは車載ラジオ特性評価を自
動化する。安定した結果を得るため、本社設計者からノウ
ハウとして伝授された測定機器設定法や測定手順をプログ
ラムに落とし込み、効果的な測定を実現している。
接続された外部機器(信号発生器、オーディオアナライ
AMカーブ
ザ、ステレオモジュレータ)の制御にはAgilent IOライブ
ラリを使用する。Agilent IO ライブラリとは、外部の通
信機器を制御するためのオープンソースライブラリで、
Bassカーブ
Loudnessカーブ
GPIBを含むさまざまな機器とのインターフェースを共通
的に扱うことができる。
外部機器との接続確立後、APESはGPIBインターフェー
スを通して制御コマンドを機器に送信する。APESが送信
図3.2 測定結果表示例
Fig.3.2 Sample measurement curves
28
したコマンドの応答は各測定機器の表示の変化で確認する
ことができる。図4.1に信号発生器の周波数変更シーケン
設計支援システム
ス、図4.2に信号発生器の設定値を読みだすシーケンスの
比較のための選択された部分
例を示す。
右クリックメニュー
図4.1 信号発生器の周波数変更シーケンス
Fig.4.1 Changing signal generator frequency
図4.4 傾き補正
Fig.4.4 Rotation angle correction
角度補正は次の手順で行われる。
Step1.指示された領域の画像データの読み込み
Step2.領域の座標の特定(図4.5)
Step3.回転角度の取得
Step4.回転後の画像領域の確保(図4.6)
図4.2 信号発生器の設定値読み出しシーケンス
Fig.4.2 Sequence for reading signal generator settings
4.2 画像の傾き補正
Step5.回転後の4辺座標への変換(図4.6)
Step6.座標回転機能による画像変換.(図4.7)
座標1
(x1, y1)
座標2
(x2, y2)
座標3
(x3, y3)
座標4
(x4, y4)
通常の全画面の画像比較機能のほかに、iCompareは指
定された範囲のみを比較する機能を持っている。この機能
は、次の3つの状況に対して有効である。⑴図面の特定範
囲のみの変更点抽出、⑵図面のすべてまたは一部が回転し
ている場合、⑶図面の一部の位置が移動している場合。図
4.3に図面の一部を比較した結果の一例を示す(青枠で囲
まれた部分が比較対象)。
図4.5 元の画像と座標
Fig.4.5 Original image and coordinates
回転後の画像範囲
元の画像範囲
回転後の画像用の
一時的な画像範囲
座標 1 (x1, y1)
図4.3 選択領域に対する回転画像の比較例
Fig.4.3 Sample comparison regarding rotated image in selected area
iCompareで画像の一部を比較する場合は、比較の前に
座標 2 (x2, y2)
座標 3 (x3, y3)
傾き補正を実行することができる。ユーザは比較する領域
を選択したあと、傾き補正メニューを呼び出し、補正する
角度を指定する(図4.4)。
座標 4 (x4, y4)
図4.6 回転後の新しい座標
Fig.4.6 New coordinates after rotation
29
富士通テン技報 Vol.29 No.1
6
6.今後の取り組み
今後の取り組み
APESやiCompareは 継 続 的 に 機 能 拡 張 と 性 能 改 善 を
行っている。
APESは、オーディオ設計評価の全自動化を目指して、
PROBE(PROduct Bug Evaluator)と名づけた後継シス
図4.7 回転後の画像
Fig.4.7 Rotated image
テムの開発に着手した。今後現れてくるさまざまなオー
ディオ機能への拡張にスムーズに対応するため、GPIBな
どの通信機能と個別の測定機能を分離するとともに、各機
5
能のプラグイン化を取り入れる計画である。また、測定器
5.効果
効果
以外の外部機器の制御も含めた構成でプロトタイプを製作
今回のツールを導入することにより業務の大幅な効率化
中である。
に寄与できた。また、知識やノウハウの形式化がはかられ
iCompareについては、現在の基本機能に加えて、さま
た。その結果、HDDでの設計業務において、より付加価
ざまな画像フォーマットへの対応、拡大縮小への対応、比
値の高い業務へのシフトを図ることができた。
較余裕度の自動調整機能の開発を計画中である。
APESでは、電気設計におけるラジオ評価に関わる工数
が10%以下に削減でき、iCompareでは、機構設計におけ
FTSPでは、最新の技術を取り入れながら、設計者をサ
ポートするツールを継続的に開発していく。
る図面レビュー工程において、設計者は標準的な図面の変
更点を漏れなく検出できるようになった上に、業務時間の
半減も達成した。
筆者紹介
上村 正継
(かみむら まさつぐ)
1986年入社。以来、
オーディオ・ミリ波レー
ダのデジタル信号処理アルゴリズム、
カー
ナビゲーション・カーオーディオソフトウェ
アの開発に従事。2007年11月からFTSP
のCIDのデパートメントマネージャ。
30
Philip S. Tenorio
(フィリップ)
1998年FTCP入 社。1999年FT
SP移籍。以来、カーオーディ
オ開発支援ツールのソフト
ウ ェ ア 開 発 に 従 事。 現 在、
CIDのセクションマネージャ。
当社特許の紹介
当社特許の紹介
発明の名称:車両用ナビゲーション装置
特許第3848647号
発明者:市村 淳、山本 真二
本発明は1993年に出願されたナビゲーション装置に関するものであり、高速道路を走行しているときに提供される経路
の略図表示をスクロール可能としたことを特徴としている。
従来のナビゲーション装置では、道路地図上に検出した自車位置を表示していた。しかし、運転者にとって一本道の高
速道路において自車位置周辺の詳細な地図表示はあまり必要とされず、むしろより遠方にある高速道路上のランプ、イン
ターチェンジ、パーキングエリアなどの存在に関心があることが多い。
本発明は、高速道路を走行しているときには、高速道路上のランプ、インターチェンジ、パーキングエリアの名称を走
行経路順に一列に並べた略図表示を行う。そして、通常は、自車位置の進行に応じてこの略図表示をスクロールさせる。
また、この略図表示において使用者の操作があった際には、さらに表示をスクロールさせ経路下流のより先の情報を見る
ことができるようにしたものである。
図1は本発明の表示画面の一例を示した図である。道路地図データ及びGPSなどから検出された現在位置によって車両
が高速道路を走行していると判断される場合には、高速道路上のランプ、インターチェンジ、パーキングエリアの名称を
経路順に一列に並べた視認しやすい略図表示が行われる。
このとき自車の現在位置Aは画面中に固定表示され、自車の進行に伴い、文字表示されているランプ、インターチェ
ンジ、パーキングエリアなどの施設の名称が移動しスクロール表示される。これによって使用者は最寄りの高速道路上
の施設を把握し、今後の運転にそなえることができる。
しかし、この画面中において、略図表示される個数は限られており、自車付近の情報しか提供されない。使用者がよ
り先に存在する高速道路を降りる出口の名前を知りたいと思っていても自車位置が出口に近づくまで表示されない。
そこで本発明では、これから進む経路下流に向け名称表示を、使用者がスクロール表示可能とした操作手段をさらに
設けたことを特徴としている。
これにより略図表示は、通常時は自車位置の進行に従い、また、より先の情報を見たいときは使用者自らスクロール
操作することによって、気になるポイントを事前にチェックすることができる。
以上により本発明によれば、自車位置に従って順次更新される情報を見ることができ、また使用者の操作によって事
前により先の情報を見ることもできるので、高速道路における必要な情報を容易に把握でき、安全運転に寄与すること
が可能となる。
図 1 本発明におけるナビゲーション装置の表示例
31
富士通テン技報 Vol.29 No.1
特許登録紹介
2010年10月1日~2011年9月30日の間に登録公報が発行された当社特許を以下に紹介する。
特許:234件
登録番号
4560522
4560429
4560241
4558059
出願名称
受信装置および受信方法
音質調整装置および音質調整方法
内燃機関のノッキング判定装置
ドライブレコーダ
4557805
放送受信装置
4557764
4557594
デジタルデータ受信機
情報再生処理システム及びそのプログラム
4564860
4564724
AVMシステムおよび基地局制御器
デジタル放送受信機
4563552
4562685
基板の検査装置
デジタルデータ受信機
4562684
デジタルデータ受信機
4562641
4562606
4562568
4562560
4562548
4562520
4562267
4566102
4566017
コンピュータシステム、動作状態判定プログラムおよび
動作状態判定方法
受信装置及び受信方法
異常検出プログラムおよび異常検出方法
デジタルデータ受信機
デジタルデータ受信機
デジタルデータ受信機
ナビゲーションシステム
始動制御装置
始動制御装置
4565991
車両の内装板を振動板としたスピーカ装置及び内装板
4570974
始動制御装置および始動制御方法
4570944
4570634
4570220
4570181
4575655
4574638
4574568
4573858
キーレスエントリ装置
ディジタル放送受信機
セキュリティシステム
車載用データ受信装置
デジタル放送受信装置
ディジタル放送受信装置及びディジタル放送受信方法
デジタルテレビ放送受信機及びデジタルテレビ放送受
信機における情報管理方法
ダイバーシティ受信装置
4573842
4573380
4579429
シミュレーション装置
ディジタル放送受信装置
車載用電子機器
32
発明者
橋本 順次 柑本 賢一
松村 忠顕
西村 淳也
前田 宗則 殿川 富士夫
岡田 勝利
中嶋 靖夫 浅見 秀夫
柴田 大介 立間 数也
田中 寿夫 高山 一男
加藤 茂樹 三木 好州
島村 薫 佐藤 泰雄
村松 芳夫 大平 竜弘
筒井 浩一
橋本 順次 高山 一男
前畑 実 澤田 純一
中北 尚夫 金田 喜隆
珍田 武志 田辺 睦雄
田中 寿夫 須佐美 博丈
森 園恵 高山 一男
合原 秀法
珍田 武志 田辺 睦雄
田中 寿夫 須佐美 博丈
森 園恵 高山 一男
合原 秀法
山下 清貴 石岡 之也
岡本 二朗
神谷 昌宏
山下 清貴 加藤 丈治
田中 寿夫 高山 一男
橋本 順次 村上 昌彦
中嶋 靖夫
栗岡 伸行 前田 宗則
松原 学
鶴田 典男 阪本 武志
小野 誉生
中島 裕一 大谷 清司
西川 彰 日高 昇
外山 耕一 藤川 直樹
小野 誉生 鶴田 典男
西 雅史
酒井 直樹
佐々木 満
田中 真一
佐々木 満
佐々木 満
西澤 秀志
中嶋 靖夫 浅見 秀夫
柴田 大介 立間 数也
三田 勝史 伊藤 修朗
柴田 伝幸 早川 敬一郎
高山 一男 吉本 卓己
合原 秀法
飯野 賢吾
西澤 秀志
中田 憲司 横山 克治
井爪 友治
共願社
富士通株式会社
富士通株式会社
富士通株式会社
トヨタ紡織株式会社
株式会社豊田中央研
究所
株式会社ニフコ
当社特許の紹介
登録番号
4579323
4578984
4578858
出願名称
可変動弁機構の制御装置
キーレスエントリシステム
通知管理装置および通知管理方法
4578795
車両制御装置、車両制御方法および車両制御プログ
ラム
4578535
ドライブレコーダシステム及びドライブレコーダ
4578420
4578392
バッテリ上り防止装置
無線通信接続装置
4578297
4578289
4578202
デジタルデータ受信機
機械制御装置、保守制御システム、及び、保守制御方法
車両用の内装板を振動板としたスピーカ装置及び車
両用の内装板
4583212
4582720
4588311
デジタルデータ受信機
通信処理装置
運転支援装置
4587975
4587936
4587618
4592280
バッテリ情報管理システム、車両用電子制御装置及び
車両用電子制御装置のプログラム修正方法
エンジン制御装置及びエンジン制御方法
車両用盗難防止装置
データ記憶装置
4597069
表示装置および車載用表示装置
4603899
4603640
4601524
通信エラー検知機能付のゲートウェイ装置及び通信シ
ステム
遠隔制御装置および遠隔制御用受信装置
エアバッグ装置
4601410
スピーカ装置
4601289
4600948
4607282
4606214
4606062
4612128
4612007
4610536
4610363
UWBセンサ
車載用音響再生装置
ディスク装置および判別制御装置
デジタルデータ受信機
デジタル放送受信機および放送受信方法
端子板および端子板固定構造
ナビゲーション装置
固定具、
コード固定構造、
および車載機器
電子部品の実装方法、電子機器、及び電子部品の位
置決め突起形成装置
4610302
4610301
4610300
4610175
4614750
4621724
記録再生装置
記録再生装置
車両用制御装置および車両用制御方法
情報記録再生装置
レギュレータ
放送受信装置
4621231
4620020
電源保護装置及び電子制御装置
再生装置
発明者
不破 直秀 岸本 雅司
酒井 直樹
春本 哲 大和 俊孝
竹内 博 前野 義彦
崎山 和広
春本 哲 大和 俊孝
竹内 博 前野 義彦
宮本 直敏 崎山 和広
前田 宗則 殿川 富士夫
岡田 勝利
山口 一陽
長田 祐 濱田 勲
半仁田 徳満 横田 隆一
田上 清人 蓑川 攻
田中 寿夫 高山 一男
岩永 岳人 内橋 浩二
西川 彰 大谷 清司
日高 昇 中島 裕一
外山 耕一
田中 寿夫 田辺 睦雄
笹 隆司 阪口 真行
春本 哲 大和 俊孝
竹内 博 前野 義彦
崎山 和広
山口 一陽 田口 博文
山下 真史 高冨 伸一郎
田口 博文 岩川 和将
田中 真一
岸田 正幸 浅沼 久輝
品川 登起雄
植田 芳和 嘉本 光宏
藤本 博之 橋本 義之
余川 琢
三吉 拓郎
松原 学 吉村 実
小牧 弘之 井上 健一
谷 泰司 近藤 努
西川 彰 大谷 清司
日高 昇 中島 裕一
廣森 正樹
志田 満昭
松涛 寛
田中 寿夫 高山 一男
合原 秀法
山口 洋一
垣内 邦夫 宮野 和彦
森村 準
成井 譲司 石井 嗣久
佐伯 高章 渡辺 聡治
前川 浩史 武藤 朋宏
小寺 洋之 名越 俊満
小寺 洋之 名越 俊満
松浦 章 吉村 実
中江 悟
室田 和明
内田 美紀 川辺 武司
遠藤 伸二 関 良則
松本 敏浩 佃 浩司
小寺 洋之 名越 俊満
共願社
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
株式会社東芝
株式会社村田製作所
トヨタ紡織株式会社
トヨタ自動車株式会社
富士通株式会社
シャープ株式会社
33
富士通テン技報 Vol.29 No.1
登録番号
4619941
出願名称
信号パターン作成装置
4619757
4619560
4619278
4618868
4628847
情報提供サーバ及び情報端末装置
ナビゲーション装置
車両用スマートエントリシステム及び車両用照明装置
ディジタル放送受信機及びセグメント数検出装置
コンテンツ提供システムおよび車載端末装置
4628014
4627973
4627142
4627097
信号遷移判別装置
スピーカ装置
衝突予防制御装置
セキュリティ機能を有する電子機器
4633820
4633760
4633345
4633109
4633072
4632825
4632674
内燃機関の制御装置
デジタル放送受信装置
音響データ記録方法
遠隔始動制御装置
レーダ走査機構の設計支援装置
デジタルデータ受信機
板体直接駆動振動装置
4632669
4636735
4636723
ミリ波ユニットの構造及びミリ波ユニットを備えたレーダ装置
キーレスエントリ装置
ナビゲーション装置
4644230
4643396
4641851
4641601
4641290
4641207
4640838
4648371
4648010
4647478
パルス信号処理装置、
パルス信号処理方法、及び、車
両の電子制御装置
車載用電子機器
走行地点案内装置および走行地点案内方法
画像処理装置および画像処理システム
運転情報記録装置
電動パワーステアリング制御装置および方法
車両制御装置
共同配車システム
交通機関案内装置および方法
入出力制御装置
4646947
番組表表示装置
4646946
番組表表示装置
4652876
4652620
ドライバ切換方法およびドライバ切換装置
車両動態管理装置
4652308
エラー検出システム及びエラー検出方法
4652086
4651317
4660365
4660127
レーダ装置
楽曲選択装置
ループアンテナ及びループアンテナの車両への設置方法
放送チャンネル検出装置および受信機
34
発明者
岸本 由加 久井 茂幸
細川 健司 萩谷 孝
宮崎 和美 岸 茂樹
笠松 勝徳 澤田 純一
森田 秀樹 太田 充
宮野 健 三野 修
濱田 勲 長田 祐
和田 陽介 宇佐見 一郎
大野 宏 古田 誠一
竃門 伸介
樋口 崇
西川 彰 日高 昇
石尾 雅人
原田 実 渡部 浩行
神野 勝
出村 隆行 塩谷 賢治
佐々木 満
林田 巧 前畑 実
松原 学 吉村 実
小原 崇嗣
田中 寿夫 高山 一男
中島 裕一 大谷 清司
西川 彰 日高 昇
矢木 秀和
佐々木 義弘 吉村 実
小寺 洋之 塚本 修一
佐古 和也
今田 昭吾
中野 雅彦 中村 文武
上村 正継
山田 正博
阪口 真行 木村 聡行
岡井 正太
山口 一陽
岩井 章
尾崎 士郎
横山 正穂 藤本 博之
橋本 義之 嘉本 光宏
余川 琢 植田 芳和
佐々木 満 前畑 実
中嶋 靖夫 西澤 秀志
神谷 昌宏 中村 英樹
北川 昌彦
佐々木 満 前畑 実
中嶋 靖夫 西澤 秀志
神谷 昌宏 中村 英樹
北川 昌彦
小山 輝芳
宮下 幸寛 森田 智子
水野 正孝
野海 薫 西橋 奨
嘉藤 智幸 石川 幸男
梅崎 康之 得可主 秀孝
小出 薫生 藤沢 行雄
嶋内 宏明
本田 加奈子
松下 直人
荻野 和滋 梅澤 義男
合原 秀法
共願社
トヨタ自動車株式会社
アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
株式会社デンソー
パナソニック株式会社
トヨタ自動車株式会社
富 士 通 セミコンダク
ター株式会社
ルネサスエレクトロニク
ス株式会社
当社特許の紹介
登録番号
4657705
4657229
4663689
4669859
車両制御装置
出願名称
4667445
シミュレーション装置
シミュレーション装置及び方法
模擬レゾルバ、モータシミュレータ、及び、モータシミュ
レーション方法
デジタル放送受信装置
4667055
無線受信機におけるDCオフセット補正装置及び方法
4666396
4666393
4673872
画像表示装置
タイミングクロック生成装置、
データ処理装置及びタイミ
ングクロック生成方法
インタフェース回路
4673593
4673468
板金部材の固定構造および固定方法
ディスク装置
4672781
内燃機関の制御装置
4672500
アンテナ入力装置
4671846
ハンズフリー装置
4671796
4671535
マイクロコンピュータのタイマ調整機構
通信型ナビシステム、
ナビセンタ及びナビ端末
4671209
4675859
4680294
4680219
移動局管理システム
運行管理装置、運行管理プログラム、及び運行管理方法
物体検出装置および物体検出方法
無線受信装置
4679558
ドライブレコーダ
4678945
4684917
スキャン式レーダの静止物検知方法
電子制御装置
4684876
4684851
レーダー装置及びレーダー装置の対象物検出方法
始動制御装置
4684272
ドライブレコーダ
4684112
4689708
三角波生成回路
省燃費運転診断装置、原動機の制御装置及び省燃
費運転診断方法
4695638
故障パターン推定方法、
故障パターン推定装置及びプ
ログラム
4693462
ダイバシティ受信装置および方法
4698632
4698087
ゲートウェイ装置、
及びその制御方法
レーダの水平方向軸ずれ発生検出装置、軸ずれ量決
定装置、
および軸ずれ補正装置
前原
石尾
織田
赤松
久井
久井
発明者
弘明 萩原
雅人 池添
善康
計樹 魚住
茂幸
茂幸 吉野
川辺
内田
土橋
米田
中野
大石
橋本
小笹
武司 遠藤 伸二
美紀
剛貴 杉江 哲
公久 冨士原 純
雅夫 横尾 郁
泰之
順次 河野 貴
隆幸 吉本 卓己
正俊
朗
共願社
晴長
将博
泉本 亮 小松 和弘
西田 祐輔
冨士井 俊彦 若林 祐幸
藤井 健 山本 晋
藤田 稔 日高 昇
井手 宏二 錦織 貴志
柴山 正史 小田 雄介
河合 健史 大田 雄一郎
長尾 孝司 高山 一男
長田 祐 濱田 勲
半仁田 徳満 横田 隆一
田上 清人 蓑川 攻
今田 昭吾 阿江 裕理子
小寺 洋之 塚本 修一
佐古 和也
栗岡 伸行 前田 宗則
中島 一成
恒川 潤 岸田 正幸
高橋 佳彦 喜多 靖
筒井 浩一 河合 健史
前田 宗則 殿川 富士夫
家後 麻里子 上谷 哲也
小野 大作
福嶋 孝章 松本 洋介
三木 朗
品川 登起雄 柴田 真一
小池 昌樹 井上 仁志
西 雅史 鶴田 典男
阪本 武志 小野 誉生
本島 雅浩 殿川 富士夫
森本 竜一
関口 泰弘 廣森 正樹
春本 哲 清 幸栄
竹内 彰次郎 三浦 直樹
中村 正樹 杉浦 博昭
山谷 義夫 野々村 純一
田内 庸貴
野海 薫 志水 裕規
村井 義隆 安藤 博哉
中島 達芳
谷口 功 中川 清隆
高山 一男
小宮 基樹
浅沼 久輝 岸田 正幸
シャープ株式会社
富士通株式会社
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
株式会社村田製作所
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
アイシン・エィ
・ダブリュ
株式会社
株式会社デンソー
トヨタ自動車株式会社
35
富士通テン技報 Vol.29 No.1
登録番号
4698048
4698036
4704929
4704188
出願名称
FM−CWレーダの路上静止物検知方法
FM−CWレーダ装置
受信システム、
及び受信方法
エキサイタの磁気回路構造
4703896
4703886
4703439
走行支援装置
ナビゲーション装置
エコラン制御装置及びエコラン制御方法
4703413
蒸発燃料処理装置の異常検出装置
4703404
表示装置
4703271
4703147
4703057
4708889
エンジン自動停止始動制御装置及び制御方法
デジタルデータ受信機
盗難防止装置
ナビゲーション装置
4708755
4708400
放熱材の規制構造
ダイバシティ受信装置、
ダイバシティ受信方法およびデ
ジタルテレビジョン受信装置
4708088
4707411
4714616
障害復旧方法およびマイクロコンピュータ
車両用電子制御装置
車載機
4714508
4713304
車両室内における音声再生制御装置
データ管理装置
4712599
4711661
スピーカ装置
変速制御装置、
クラッチ制御装置及び車両制御装置
4711502
4719776
俯瞰図作成方法、
及びナビゲーションシステム
充電ケーブル、
充電制御装置、
及び車両充電システム
4719721
比較回路、
出力駆動装置、
及び、
電子制御装置
4719129
排気ガス浄化システムの故障診断装置
4717019
車載用オーディオ装置
4716844
4723912
4723703
移動体通信装置
シャーシの嵌合構造
車両の運転支援装置
4723273
4721838
ねじりコイルばね、
ディスプレイ駆動装置および携帯電
話機
車載用表示装置及び方法
4721665
4729539
遠隔始動装置
無線受信装置
36
発明者
小野 大作
岸田 正幸
永海 正明
柴田 清誠 柳田 宗計
中島 裕一
吉備 誠
中江 悟
石尾 雅人 山口 一陽
高冨 伸一郎 竹本 真司
大垣 耕一
田口 実 亀井 教郎
大井 康広
渡邉 信治 安田 克弘
宮澤 英児 鍜治本 晋明
柑本 賢一 濱谷 潔
山口 一陽
村上 昌彦 橋本 順次
佐々木 義弘 吉村 実
前田 昌宣 中石 信一
本島 顕 今度 晋
松田 晃 下中 和久
渡部 卓也 米本 宜司
珍田 武志 高山 一男
合原 秀法 西脇 弘尚
吉本 卓己
城田 康弘 山口 一陽
南田 将哉
野村 優 圓尾 光弘
川下 光也 田中 利幸
中石 信一 城戸 敏弘
野村 優 余川 琢
植田 芳和 岡田 修
大原 健嗣 圓尾 光弘
川下 光也
浜田 一彦
石尾 雅人 小池 久人
吉田 光男 尾崎 広明
中川 栄治
嘉本 光宏
福井 誠志 石井 健一
釜賀 隆市 唐見 昌宏
小松 和弘 木戸 啓介
泉本 亮
岩﨑 靖志 澤田 裕
大井 康広 大塚 郁
塩谷 賢治
臼杵 慶子 松村 和征
中村 元裕 加藤 清英
石橋 登 西山 恵介
奥出 和宏
横山 勲 多田 展久
清水 俊宏 崎山 和広
佐古 和也
松本 伸介
桑野 晃臣 中田
前川 克行 水野
松原 学 吉村
高橋 佳彦 喜多
南 義明 筒井
河合 健史
憲司
嘉久
実
靖
浩一
共願社
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
株式会社デンソー
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
アイシン・エィ
・ダブリュ
株式会社
トヨタ自動車株式会社
当社特許の紹介
登録番号
4729521
無線アンテナシステム
4728904
4727636
運転情報記録装置
車両の充電制御装置および車両
4727249
リペア用具、
及び電子部品のリペア装置
4726939
制御システム、制御装置、及びケーブル接続状態判定
方法
デジタルデータ処理装置および音響再生装置
4726088
4734444
4732371
4740758
4740736
4740449
4740104
4739796
出願名称
エコラン制御装置及び制御方法
周辺監視装置及び周辺監視方法
ディスク状記録媒体の挿排機構、
ディスク装置および
ディスクオートチェンジャ
ディスクチェンジャ
車載用レーダの上下軸ずれ検出装置
データ処理装置、
データ処理システム、
及び周辺装置
4739153
情報記録装置、車載端末装置および車載端末通信シ
ステム
音楽データ再生装置
車両用リアガラスに形成されるデフォッガの熱線パター
ン構造および車両用リアガラス
車両用通知装置
4738852
4738778
4738461
4738059
運転支援装置及び運転支援システム
画像処理装置、
運転支援装置および運転支援システム
波形編集用プログラム
パルスレーダ装置
4738051
パルスレーダ装置
4738036
4746576
4745933
4744922
無指向性アンテナ
車両用リアガラスに形成されるデフォッガの熱線パター
ン構造および車両用リアガラス
表示装置
電子機器
4744470
4744416
4744272
4744221
4751875
4749281
ヒストグラム作成装置及び方法
スピーカ装置
盗難防止システム及び遠隔エンジン始動装置
制振支持装置及びスピーカ装置
電子装置、
電子システム及び音声出力制御方法
電子制御装置及びエンジンの制御方法
4749259
4749219
4755928
受信装置
ループアンテナ、
ループアンテナの車両への取付方法、
及びループアンテナを備える車両のリヤガラス
音声発生装置
4754883
車両報知システム及び車載報知装置
4739598
4739258
高橋
筒井
阪口
石井
唐見
前川
佐伯
武藤
岩永
発明者
佳彦 喜多
浩一 河合
真行 塚本
健一 釜賀
昌宏 福井
浩史 石井
高章 渡辺
朋宏 成井
岳人 内田
坂口
徳原
山口
阪田
小川
畑田
古石
浅沼
川下
松岡
笠松
精 角 哲寛
秀明 鈴木 陽一
一陽
克己 上田 伸晃
宏一 山中 康誉
健一 藤本 文彦
朋久
久輝 岸田 正幸
光也 野村 優
亮介 中野 雅彦
勝徳 前畑 実
渡辺
土居
高山
山本
橋本
丸谷
本田
神山
本田
浜田
本田
洞井
荻野
土居
高山
小寺
江口
清水
上林
小脇
清家
浜田
滝本
宮垣
薮内
植垣
井倉
宮野
荻野
鶴田
柴田
柳田
藤川
田内
森田
前田
健
亮吉 飯島 浩
一男 近石 幸一
徹夫 阪田 克己
欣和 佐野 裕明
誠慶 新穂 浩成
加奈子 島 伸和
尚也
加奈子 森谷 正義
和亮 関 哲生
加奈子 八塚 弘之
義和 関 哲生
和滋 梅澤 義男
亮吉 飯島 浩
一男 近石 幸一
洋之
高史 大谷 昌聡
幸雄
輝彦
宏 由井 啓之
康
一彦 平本 光浩
竜彦 神足 浩
大輔 小野 和樹
豊 秋津 匡恒
明久 正田 勝博
圭一 林 賢治
健
和滋 梅澤 義男
勝浩 藤原 章洋
清誠 大谷 清司
宗計 中島 裕一
直樹 外山 耕一
庸貴 浅田 博重
真 金子 純也
昌宣 本島 顕
靖
健史
昭
隆市
誠志
嗣久
聡治
譲司
岳大
共願社
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
株式会社デンソー
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社
株式会社村元工作所
日本板硝子株式会社
富士通株式会社
富士通株式会社
ダイハツ工業株式会
社
トヨタ紡織株式会社
株式会社デンソー
トヨタ自動車株式会社
37
富士通テン技報 Vol.29 No.1
登録番号
4754853
出願名称
発明者
尾崎 義隆 和田 陽介
難波 明正 新穂 浩成
坂川 悟
吉本 卓己
石尾 雅人 山口 一陽
森 直人
4763666
4762721
4762591
4769694
4769528
表示装置
車両制御用プログラム及び車両用電子制御装置
エコランシステム、
エコラン制御装置、及びナビゲーショ
ン装置
画像認識装置、画像認識方法、車両制御装置および
車両制御方法
運転情報記録装置
操作制御装置
車両用通信システム
電圧出力回路,
集積回路,
および電子機器
駐車支援装置
4768541
運転情報記録装置
4767668
4766926
4766912
4774463
4774360
4771724
4783770
4781320
車載情報機器およびコンピュータ実行可能なプログラム
電子制御装置および電子制御機器のデータ保存方法
光ディスク装置及び光ディスク識別方法
エコ運転支援装置
復号器、
復号器を含む電子機器
レーダ装置
車載機
定電圧回路、
電子機器、
電子制御機器
4781059
表示装置及び出力制御装置
4780957
統合アンテナ
4753703
4753623
4753604
4757808
38
音量制御装置
岡本
藤岡
前田
田中
山田
室田
野守
山田
前田
小野
槇本
松本
松涛
元永
垣田
松井
中野
小松
泉本
余川
橋本
植田
加藤
荻野
佳子 阪田
稔 山下
宗則 澤田
省吾
修嗣
和明
寛典 佐古
正博
宗則 松原
紘平
由希 松岡
茂 大垣
寛
豊 齊藤
直士 池田
貞憲
雅彦
和弘 西田
亮
琢 藤本
義之 嘉本
芳和 斉藤
貴士
和滋 梅澤
共願社
株式会社デンソー
トヨタ自動車株式会社
アイシン・エィ
・ダブリュ
株式会社
パナソニック株式会社
克己
浩嗣
純一
和也
茂樹
亮介
耕一
幹
修久
祐輔
博之
光宏
具紀
義男
トヨタ自動車株式会社
製品紹介
製品紹介
ハイスペックメモリーナビ
HDDナビに負けない大容量・SD 16GBモデルが新たに加わりました。
地図データの差分更新ができる「マップオンデマンド」に対応、しかも3年間利用可能。
Bluetooth®内蔵やディスプレイの直射日光補正機能、渋滞考慮探索やボリュームレベルの自動調整機能も搭載、あなたのドライブに「安心」
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(AVメインユニット・デジタルTV/GPS一体型フィルムアンテナ付属)
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・マップオンデマンドは、G-BOOKでおなじみの、カーナビゲーション用地図更新サービスです。
・G-BOOKはトヨタ自動車株式会社が開発し、トヨタメディアサービス株式会社が運営するテレマティクスサービスです。
・全国の高速道路、有料道路、主要国道、道路、施設情報が更新対象となります。
・施設情報のうち、更新対象となるのは、立体ランドマーク相当の著名な施設に限られます。
(コンビニやガソリンスタンドなどの一般施設は対象となりません)
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システム
(AVメインユニット・デジタルTV/GPS一体型フィルムアンテナ付属)
オープン価格
39
富士通テン技報 Vol.29 No.1
編集後記
自動車産業は21世紀に入り、新興国の台頭から市場の
この1年で携帯電話は「ガラケー」から「スマホ」ヘと、
構造が大きく変わりました。市場の中心が先進国から新興
当社のビジネスにも影響する大きな変化がありました。ハー
国にシフト、今後のガソリン車からEVへの世代交代により
ドからソフトへ、商品の価値が変わり、これから私達が開
製品構造も根本から変わろうとしています。
発する商品も、ソフトウェアの開発が非常に重要になって
新しい技術や新しいビジネスモデルを武器に異業種企業
きます。
が自動車産業へ参入する動きも活発化してきており、グロー
また、安全・安心といった車載機器だからこそ重要なキー
バル企業型ビジネスモデルの優位性が急速に高まってきて
ワードもあります。これまでも、安心・安全を提供できる
います。新興国では、エアバッグなど、安全に関わる製品
商品を市場に投入してきました。
の標準装備化が進み、高い信頼性とローコスト化要求が
クルマを取り巻く環境は劇的な変化が起こっています。
厳しくなっています。他社優位性を確保するべく、先をみ
クルマの中で、私達がお客様に提供できる価値、嬉しさは
た技術開発と良品廉価な製品の企画・開発を継続していく
何なのか、今後の商品開発の中でも大切な課題であり、ス
ことが我々の使命だと考えます。
ピードを上げて商品を出していくのが私達の役割です。
(J.H記)
(S.N記)
表紙説明
『AVN-Z01』
2011年7月に発売。
大容量・SD16GBモデル。
“世界初”車載用ディスプレイの直射日光補正機能を備えたLSI「Vivid View
ProcessorTM3」や自動音声補正機能「E-VOLUTION」の搭載など、やさしいインター
フェースでクルマを使いやすくすることにもこだわったナビ。
編 集 委 員
委 員 瀬戸山 郁 代
新 穂 貴 史
高 橋 晋
橋 本 順 次
永 元 覚
大 和 俊 孝
木 谷 哲 也
加 藤 茂 樹
横 山 義 彦
宮 本 直 敏
幹 事 中 村 隆 一
事 務 局 平 塚 陽 子
通巻第57号
2011年12月発行
委 員 長 八 木 潔
丸 山 美 徳
富士通テン技報 Dec.2011Vol.29No.1
発 行 所 富士通テン株式会社
〒652-8510 神戸市兵庫区御所通1-2-28
http://www.fujitsu-ten.co.jp/
編集発行人 八 木 潔
印 刷 所 菱三印刷株式会社
〒652-0803 神戸市兵庫区大開通2-2-11
©富士通テン株式会社 2011[不許複製]
本誌の内容についてのお問い合わせは下記富士通テン
技報編集委員会事務局(製品)事統・技術管理部内)へご
照会下さい。
〒652-8510 神戸市兵庫区御所通1-2-28
電話代表 (078)671-5081
E-mail:[email protected]
記載した製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
40
富士通テングループ 事業所一覧表(2011 年 12 月 1 日現在)
富士通テン㈱
本社(事務所・工場)
中 津 川 工 場
中津川テクノセンター
宇 都 宮 事 務 所
東 京 営 業 所
東京クリエイティブスクエア
ト ヨ タ 事 業 所
札幌FSセンター
仙台FSセンター
東京FSセンター
名古屋FSセンター
神戸FSセンター
広島FSセンター
福岡FSセンター
豊田物流センター
神戸物流センター
㈱栃木富士通テン
富士通テンテクノセプタ㈱
富士通テン東日本㈱
本 社
北 海 道 支 店
東
北
支
店
北 関 東 支 店
神 奈 川 支 店
千 葉 営 業 所
富士通テン中部㈱
本 社
北
陸
支
店
静
岡
支
店
富士通テン西日本㈱
本 社
中
国
支
店
四
国
支
店
九
州
支
店
富士通テンアクティ㈱
本 社
小 山 事 業 所
中 津 川 事 業 所
富士通テンリサーチ㈱
富士通テンスタッフ㈱
本 社
小 山 事 業 所
中 津 川 事 業 所
富士通テンテクノロジ㈱
富士通テンサービス㈱
本 社
小 山 事 業 所
〒652-8510
〒508-0101
〒509-9132
〒321-0953
〒160-0023
〒140-0013
〒471-0024
〒003-0809
〒983-0852
〒160-0023
〒450-0003
〒663-8241
〒734-0044
〒815-0031
〒470-1216
〒652-0845
〒329-0203
〒651-2241
神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
岐阜県中津川市苗木2110番地
岐阜県中津川市茄子川1683番地の1963
栃木県宇都宮市東宿郷3丁目1番1号(中央宇都宮ビル5F)
東京都新宿区西新宿8丁目14番24号(西新宿KFビル2F)
東京都品川区南大井6丁目26番3号(大森ベルポートD館9F)
豊田市元城町1丁目11(富士通テン豊田ビル)
札幌市白石区菊水9条2丁目2番38号
仙台市宮城野区榴岡3丁目4番18号(タカノボル第22ビル5F)
東京都新宿区西新宿8丁目14番24号(西新宿KFビル2F)
名古屋市中村区名駅南3丁目11番10号
西宮市津門大塚町7番35号
広島市南区西霞町2番25号
福岡市南区清水4丁目4番34号
豊田市和会町東山11
神戸市兵庫区築地町6番24号
栃木県小山市大字西黒田91番地
神戸市西区室谷1丁目6番地4号
電 話
(078)
671-5081
(0573)
66-5121
(0573)
68-7002
(028)
651-3925
(03)
5330-6244
(03)
5764-2288
(0565)
32-2501
(011)
837-5660
(022)
292-7122
(03)
5330-6418
(052)
581-8628
(0798)
36-7483
(082)
250-5766
(092)
511-3263
(0565)
21-8801
(078)
682-9331
(0285)
45-1326
(078)
996-0200
〒160-0023
〒003-0809
〒983-0852
〒338-0004
〒224-0032
〒260-0034
東京都新宿区西新宿8丁目14番24号(西新宿KFビル2F)
札幌市白石区菊水9条2丁目2番38号
仙台市宮城野区榴岡3丁目4番18号(タカノボル第22ビル5F)
埼玉県さいたま市中央区本町西4丁目18番1号
横浜市都筑区茅ヶ崎中央24番4号(第6セキビル8F)
千葉市中央区汐見丘町10番1号
(03)
5330-6244
(011)
821-2221
(022)
256-2291
(048)
859-2210
(045)
944-1971
(043)
241-0121
〒450-0003
〒921-8001
〒424-0886
名古屋市中村区名駅南3丁目11番10号
金沢市高畠3丁目5
静岡市清水区草薙2丁目23番23号(セピアコート1F)
(052)
581-8621
(076)
292-1685
(054)
349-5666
〒663-8241
〒734-0044
〒760-0034
〒815-0031
西宮市津門大塚町7番35号
広島市南区西霞町2番25号
高松市今里町1丁目28番13号
福岡市南区清水4丁目4番34号
(0798)
36-7481
(082)
255-2422
(087)
863-7020
(092)
511-3210
〒652-8510
〒329-0203
〒508-0101
〒652-8510
神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
栃木県小山市大字西黒田91番地
岐阜県中津川市苗木2110番地
神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
(078)
671-5081
(0285)
45-0245
(0573)
66-5121
(078)
671-5081
〒652-8510
〒329-0203
〒508-0101
〒652-8510
神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
栃木県小山市大字西黒田91番地
岐阜県中津川市苗木2110番地
神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
(078)
682-2257
(0285)
41-1230
(0573)
66-5197
(078)
682-0420
〒652-8510
〒329-0203
神戸市兵庫区御所通1丁目2番28号
栃木県小山市大字西黒田91番地
(078)
682-2266
(0285)
41-1260
富士通テン㈱
北京事務所 (Beijing Office) ………………………… 郵編 100020 北京市朝陽区景華南街5号遠洋光華中心C座10階 1006A室
(Room 1006A, 10F, Tower C, Sino-Ocean Land Guanghua Center, No.5 Jinghua
South Road, Chaoyang District, Beijing, China PC100020)
FUJITSU TEN CORP.OF AMERICA (FTCA)
Michigan Operations (MIO) ………………… 47800 Halyard Dr.Plymouth, Michigan 48170, U.S.A.
Los Angeles Operations (LAO) ……………… 19600 South Vermont Avenue, Torrance, California 90502, U.S.A.
Texas Distribution Center (TDC) …………… 5801 South Ware Rd, Suite 200 McAllen, TX, 78503-7799 USA
TEN TECHNOSEPTA USA, INC. (TTUI) ………… 5801 South Ware Rd, Suite 200 McAllen, TX, 78503-7799 USA
FUJITSU TEN de MEXICO, S.A.de C.V. (FTdM) … Av. Industrial Del Norte, Manzana 8, Lote 2, Parque Industrial Del Norte, Reynosa, Tamaulipas C.P.88730 Mexico
FUJITSU TEN ESPAÑA, S.A.(FTESA) …………… Pol. Ind. Guadalhorce, C/Cesar Vallejo, 16, 29004 Malaga, Spain
FUJITSU TEN (THAILAND) COMPANY LIMITED (FTTL)
Bangkok Head Office (BKO) ………………… 88 Dr. Gerhard Link Building. 5th Floor, Krungthepkreetha Rd., Huamark , Bangkapi , Bangkok 10240, Thailand
Rayong Factory (RAF) ………………………… 253 Moo 11, Rojana Industrial Park, Bankhai-Banbung Rd., T. Nongbua, A. Bankhai, Rayong 21120, Thailand
India Bangalore Branch (IBB) ……………… 301 Embassy Square, 148 Infantry Road, Bangalore, 560 001, India
天津富士通天電子有限公司………………………… 郵編 300457 天津経済技術開発区黄海二街5号
(TIANJIN FUJITSU TEN ELECTRONICS CO.,LTD.) (No.5 Huanghai Second Avenue TEDA, Tianjin, China 300457)
富士通天電子(無錫)有限公司 (FTEW) ………… 郵編 214028 江蘇省無錫市国家高新技術産業開発区新華路19号
(No.19, Xinhua Road, Wuxi National Hi-Tech Industrial Development Zone, Jiangsu, China 214028)
(FUJITSU TEN ELECTRONICS (WUXI) LTD.)
天津日技精密電子有限公司………………………… 天津経済技術開発区南海路156号 津濱科技園通廠27号
(TIANJIN RIJI PRECISION ELECTRONIC CO.LTD.) (Factory No.27, JinBin High-tech Industrial Park, No.156 Nanhai Road, TEDA, Tian jin, China)
FUJITSU TEN CORPORATION OF THE PHILIPPINES (FTCP) … 100 South Science Avenue, Laguna Technopark, Sta. Rosa City, Laguna, Philippines
FUJITSU TEN CANADA INC. (FTCI) …………… 1149 Bellamy Road North, Unit 1, Scarborough, Ontario, M1H 1H7, Canada
FUJITSU TEN DO BRASIL LTDA. (FTBL) ……… Avenida Paulista, 37, 5 andar sala 02 CEP 01311-902 Sao Paulo SP Brasil
ECLIPSE TD (UK) LIMITED (ETUK) ……………… LOE House, 159 Broadhurst Gardens, London NW6 3AU, UK
FUJITSU TEN (EUROPE)GmbH (FTEG)
Düsseldorf Office (DUO) ……………………… Mündelheimer Weg 39, 40472 Düsseldorf, Germany
(Duesseldorf Office)
(Muendelheimer Weg 39, 40472 Duesseldorf, GERMANY)
Technical Center Nürnberg (TCN) …………… Südwestpark 23, 90449 Nürnberg, Germany
(Technical Center Nuremberg)
(Suedwestpark 23, 90449 Nuremberg, GERMANY)
Brussels Office (BRO) ………………………… Leuvensesteenweg 555/B.6, B-1930 Zaventem, Belgium
(Leuvensesteenweg 555/B.6, 1930 Zaventem, BELGIUM)
FUJITSU TEN KOREA LIMITED (FTKL) ………… Susong Tower Building 16th floor, 83-1 Susong-Dong,Jongno-gu, Seoul, Korea
富士通天国際貿易(天津)有限公司 (FTTT) …… 郵編 300074 天津市河西区囲堤道125号天信大厦1805
(Room 1805, Tianxin Building, No.125 Weidi road, Hexi district, Tianjin, China PC300074)
(FUJITSU TEN TRADING (TIANJIN) LTD.)
上海分公司…………………………………………… 郵編 200040 上海市静安区南京西路1468号 中欣大厦2606室
(SHANGHAI BRANCH)
(Room 2606, United Plaza, No.1468 NanJing West road, Jingan District, Shanghai, China PC200040)
広州分公司…………………………………………… 郵編 510620 広東省広州市天河区天河路230, 232号 万菱国際中心3801, 3802室
(GUANGZHOU BRANCH)
(Room 3801-3802, Onelink Center, No.230 & 232 Tianhe road, Tianhe District, Guangzhou, China PC510620)
北京分公司…………………………………………… 郵編 100020 北京市朝陽区景華南街5号遠洋光華中心C座10階1006B室
(BEIJING BRANCH) ……………………………… (Room 1006B, 10F, Tower C, Sino-Ocean Land Guanghua Center, No.5 Jinghua
South Road, Chaoyang District, Beijing, China PC100020)
顧客支援センター(中国)………………………… 郵編 300308 天津市空港経済区航空路53号 西九道標準場房 B座一層
(Customer Support Center(China))
(B1F No.9 West Road Standard Industrial Plant, No.53 Aviation Road, Airport
Economic Zone, Tianjin, China PC300308)
FUJITSU TEN (AUSTRALIA) PTY. LTD.(FTAL) … 89 Cook Street Port Melbourne, Victoria 3207, Australia
FUJITSU TEN (SINGAPORE) PTE. LTD.(FTSL) … 20 Science Park Road #02-01/03, TeleTech Park, Singapore Science ParkⅡ, Singapore 117674
富士通天研究開発(天津)有限公司 (FTRT) …… 郵編 300457 天津経済技術開発区黄海路280号
(FUJITSU TEN RESEARCH & DEVELOPMENT (TIANJIN) LTD.) (No.280, Huang Hai road, TEDA, Tianjin, China 300457)
FUJITSU TEN SOLUTIONS PHILIPPINES, INC. (FTSP) … 25th Floor, Hanston Square, 17 San Miguel Avenue, Ortigas Center, Pasig City, Metro Manila, Philippines 1605
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1-(734)414-6620
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1-(956)686-8601
52-(899)921-8700
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富士通テン技報
57号
Vol.29
No.1 December 2011