いわゆる「カジノ解禁 推進法案」

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」
(いわゆる「カジノ解禁
推進法案」)に反対する会長声明
第1 趣旨
本会は,「特定複合観光施設区域の整備に関する法律案」(いわゆる「カジノ
解禁推進法案」,以下「本法案」という。)に強く反対する。
第2 理由
1 本法案の概要
本法案は,カジノを含んだ特定複合観光施設区域の整備の推進が,観光
及び地域経済の振興に寄与し,財政の改善に資するとして,国にその整備促
進を義務付けるものである。
国際観光産業振興議員連盟は,本法案を,本年の通常国会において再提出
する方針を明らかにしている。
2 本法案の問題点
(1)賭博行為は違法であることが大原則であること
カジノは,刑法で禁じられている「賭博」である。「賭博」を禁止する
趣旨は,「賭博行為が、勤労その他の正当な原因によらず、単なる偶然の
事情により財物を獲得しようと他人と相争うものであり、国民の射幸心
を助長し、勤労の美風を害するばかりでなく、副次的な犯罪を誘発し、
さらに国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあることから、社
会の風俗を害する行為として処罰する」
(第186回国会内閣委員会政府
参考人答弁)というものである。
カジノを解禁することは,まさに国民の射幸心を助長し,勤労の美風を
害する危険性があり,刑事罰をもって「賭博」を禁止してきた刑法の立
法趣旨に反するものである。
(2)ギャンブル依存症の拡大・多重債務者の増加
既に日本においては競輪・パチンコなどのギャンブルが存在していると
ころである。2008年の厚生労働省による病的賭博(ギャンブル依存
症)の調査によれば,我が国の成人男性の9.6%,成人女性の1.6%
が病的賭博とされ,世界各国と比べてその発症率は極めて高い。いった
ん発症したギャンブル依存症への対策は非常に困難であり,ギャンブル
依存症の患者を新たに発生させない取組こそが重要といえる。
一方,カジノは利益を上げるために多数の賭博客を得ようとするのは
当然であり,カジノ解禁によってギャンブル依存症の患者が増加するこ
とは避けられない。
また,多重債務問題の要因の一つとしても,ギャンブルがあげられる。
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総量規制や金利規制を定めた貸金業法改正などの対策の結果,多重債務
者数も減少し,改善されてきたところである。しかし,カジノが解禁さ
れれば,多重債務問題が悪化し,自殺者や破産者の増加が大いに危惧さ
れる。
(3)青少年への悪影響
本法案に基づく統合型リゾートでは,レクリエーション施設など家族で
出かける先に賭博場が存在することになる。家族の娯楽の中で,賭博場
の存在に馴染んでいくこととなるため,青少年らが賭博に対する抵抗感
を喪失したまま成長することになりかねず,その悪影響は計り知れない。
(4)暴力団・マネーロンダリング対策上の問題
カジノ解禁により,暴力団に新たな資金源確保の機会を与え,また,カ
ジノがマネーロンダリングに利用されることが容易に想定される。
(5)カジノによる経済効果への疑問
本法案は,カジノ設置により,大きな経済効果があることを前提とし
ているが,米国有数のカジノ地区であるアトランティックシティで,巨
大カジノが相次いで閉鎖される事態が起こったこと,我が国でも,競輪・
競馬場の閉鎖が相次いでいることから鑑みても,そもそも統合型リゾー
ト自体においても経済的利益が得られるのか未知数である。
また,仮に,経済的利益が得られるとしても,カジノの適正な維持にか
かる各種コストや,上述の弊害に対する予防及び対処に必要なコストの
増加を考えれば,これを上回る経済効果があるか疑問である。
(6)カジノ解禁による弊害除去の困難さ
一旦,カジノが解禁されれば,射幸心をあおり,できる限り多くの賭博
をさせようとするカジノの性質からして,上記の弊害を除去することは困
難である。
3 結語
以上のとおり,本法案が成立すれば,そもそも経済効果に疑問がある上に,
刑事罰をもって賭博を禁止してきた立法趣旨が損なわれ,ギャンブル依存
症・多重債務者の増加や青少年への悪影響など様々な弊害をもたらすことが
大いに懸念される。
よって,当会は,本法案に強く反対するものである。
2015年(平成27年)5月1日
大分県弁護士会
会長 西 畑 修 司
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