Q5 プレスやロウイングで腕ばかりが疲れてしまうのは?

Q5 プレスやロウイングで腕ばかりが疲れてしまうのは?
Q ベンチプレスやベントオーバーロウイングなどを行うとき、腕ばかりを使っているようで、どうしても大胸筋や広背筋といった胸や背中の筋肉を使えている感じがしま
せん。何か良い方法はないでしょうか?A体幹の大きな筋肉は意識して使いにくい大胸筋や広背筋のような体幹にある大きな筋肉は、運動神経、感覚神経の数が少ないため
、細かい動作制御が得意ではありません(Goodgold,1977 など)。細かい制御が得意な手先の筋肉のように、意識的に使うのが難しい筋肉です。たとえば、上腕二頭筋に
力を入れることは簡単で“力こぶ”を作ることは誰でもできますが、大胸筋に力を入れて胸をピクピクさせたり(気持ち悪がられますが)、広背筋に力を入れ
て背中を広げることは簡単ではないでしょう。そのためご質問にあるように、「腕の力ばかりで動作してしまって大胸筋や広背筋を使えていない」ということがよく起こ
ります。プレス(押す)やロウイング(引く)種目のような複数の関節が動作するコンパウンド(複合)種目では、意識しやすい腕の筋肉ばかりを使ってしまうため、標
的としたい大胸筋や広背筋を十分に動員させるのが特に難しくなるようです。解決のためのポイントはいくつかありますが、ここでは、この問題を解決するおすすめのト
レーニング方法を一つ紹介しましょう。アイソレート種目で胸・背中を使う感覚を掴む筋肉には、一度大きな力発揮をさせるとその後しばらく力発揮を行いやすくなる「
筋力発揮の短期学習効果」があるとされています(中村,2005)。一度大きな力を出しておくと、その後その筋肉の力が出しやすくなるのです(“活性化”と表
現できます)。これは運動神経司令の促通や、筋肉の運動司令に対する感受性が高まるためではないかと考えられています。大胸筋・広背筋を十分に使ってプレス、ロウ
イングを行う方法として、この「筋力発揮の短期学習効果」を利用した次のような方法が考えられます。まず大胸筋・広背筋の動員が容易な「肩関節周りの動作だけ(単
関節動作)で行うアイソレート(単独)種目」を先に行います。そしてアイソレート種目で大胸筋・広背筋に大きな力発揮をさせて「筋力発揮を行いやすい状態(活性化
)」にしてからプレスやロウイングなどのコンパウンド種目を行う、という方法です。たとえば大胸筋を主に使った肩関節動作のみを行うフライを最初に行い、コンパウ
ンド種目のベンチプレスなどをその後に行います。また背中の種目の例としては、広背筋を主に使った肩関節動作のみを行うストレートアームプルダウンを先に行い、続
いてベントオーバーロウイングなどのコンパウンド種目を行います(図1)。
負荷は大きめ、ボリュームは小さめ このアイソレート種目→コンパウンド種目(アイソレートtoコンパウンド)というトレーニング種目の並べ方は、プレイグゾ
ースト法(事前疲労法:pre=事前の、exhaust=疲労困憊させる/「予備疲労法」ともいう)で行う順番としてよく知られています。プレイグゾースト法とは、標的とす
る筋肉を“事前”にアイソレート種目で十分に“疲労困憊”させておいて、次に行うコンパウンド種目でさらにその筋肉を集中的に追い込むことを
狙いとした方法です。通常、プレイグゾースト法では、事前に標的の筋肉を“疲労困憊(exhaust)”させることが目的ですので、最初のアイソレート種目をオ
ールアウトまで行います。一方、ここで紹介する方法では、事前に標的の筋肉を高負荷で“稼働”させて“活性化”することを目的としています。
ですから、必ずしも最初のアイソレート種目で標的の筋肉をオールアウトさせる必要はありません。標的の筋肉を活性化させるために大きな負荷は必要ですが、メイン種
目としてコンパウンド種目を十分に行うために、アイソレート種目では「疲労が残り過ぎないように」ボリュームは抑えて行うとよいでしょう。たとえば、最初のアイソ
レート種目は、85∼90%1RMで3∼5回を1∼2セットくらいといった比較的「高負荷・低容量」(高負荷なのでケガに注意)で行うのがよいと思います。この方法はプ
レイグゾースト法の一つと言えますが、必ずしも事前に標的の筋肉を疲労困憊(exhaust)させる必要はありません。事前に標的の筋肉を大きな負荷で稼働させて活性化さ
せる方法ですので、ここでは「プレアクティベート法(pre=事前、activate=稼働する、活性化する)」と呼ぶことにします(※)。※一般的に行われるプレイグゾース
ト法にも「事前に標的の筋肉に疲労を与える:意義1」だけでなく、「事前に標的の筋肉を高負荷で稼働させて活性化させる:意義2」という要素があります。ここでは
より意義2をフォーカスした方法をプレアクティベート法と名づけて紹介しています。
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単関節動作だけがアイソレート種目ではない
ここでは大胸筋、広背筋のアイソレート種目の例として単関節動作で行うフライ、ストレートアームプルダウンを紹介しましたが、複合的な関節動作を行
う種目でも「力発揮の面では」アイソレート種目(単関節力発揮)となる種目もあります。「前腕を垂直にして」肘と負荷ベクトルとの垂直距離を0にして
行う方法では肘関節回りの負荷がほぼ0になります。大胸筋の種目としては前腕を垂直に立てたダンベルプレス、広背筋の種目では前腕を垂直に立てたワン
ハンドロウイングを、事前に行うアイソレート種目として採用してもよいでしょう。これらの方法では、肘から先はぶら下がっているだけ(ロウイング)、
もしくはバランスを保って立っているだけ(プレス)の動きになります。肘の屈曲・伸展の力はほとんど使いません(バランスをとるためには使われる)。
関節動作は複合的ですが、力発揮としては大胸筋、広背筋単独のアイソレート種目になるのです。
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