2012年11月26日

国際サーカス村通信 VOL.17 N002
編集 NPO 法人国際サーカス村協会
〒376-0303
2012 年 11 月 26 日(月)
文責
西田
敬一
群馬県みどり市東町座間 41-1
Tel0277-70-5010 Fax0277-97-3688 [email protected]
http://www.circus-mura.net
総会の報告
●
去る 11 月 7 日(水)に、平成 23 年度の総会を開催しました。参加者は 15 名、委任状 160 通で、
下記の項目につき承認を得ました。
平成 23 年度事業報告・会計報告
平成 24 年度事業計画
平成 24 年度理事及び監事選任
理事松島克幸氏任期満了につき、新に大野洋子氏就任。他は留任。
●平成 23 年度事業報告
今期は、沢入国際サーカス学校は前期のみの運営となっ
た。学校周辺の放射能値が、国の除染対象である 0.23 マ
イクロシーベルト毎時以上あり、しかも自治体による除染
を待っていたが、その予定がたたないので、後期を休校と
したためである。
休校中、協会としての活動を全面的に休止するのはため
らいがあり、旅公演を企画した。題して“旅する道化師と大
道芸人たち”。メンバーは、サーカス村にいろいろと協力し
ていただいている道化師のふくろこうじ氏に、サーカス学
校卒業生の高村篤、田中健太両君に、西田を加えた4名。
3 月 26 日に、みどり市東町座間のサーカス資料館から出発。最初の公演地は静岡。その後、京
都府、滋賀県、山口県を経て、九州に入り、その後四国へ渡り、延べ日数、67 日間、公演回数は
50 回以上。大道芸、各種フェスティバル、施設訪問、保育園・幼稚園から小中高校、大学など、
さまざまな方のご協力を得て、旅公演を続けた。
移動は、一台のワゴン車。リア・ウィンドウに、“原発はいらない”“沢入国際サーカス学校は放射
能被害で休校中”の張り紙を取りつけた。この旅が、サーカス学校が福島第一原発から 170 キロほ
ど離れているところあるにもかかわらず、放射能の影響で休校にせざる得ないことをアピールする
ためであった。
その結果、あるところでは、放射能の影響について話をすることを求められたし、また、長崎県
のある自治体では、この張り紙をしている車で、保育園などにいかないで欲しいと要望されたりも
した。実害を蒙っているサーカス学校として、脱原発アピールは旅の目的のひとつだが、そこに拘
って保育園などでの公演を中止するまでの必要はあるかを、参加者と相談した上、自治体の車を借
1
りて荷物を積みなおし、現場へ出かけた。最終公演は、東京両国の劇場、シアターχ(カイ)。
この旅は、放射能汚染の事実を伝えることのほか、もうひとつの目的があった。
それは、今後、サーカス学校として、旅公演が可能かどうかを調査することであった。知りえた
ことは、ひとつには、それぞれの地元で受け入れる組織、人がいなければ、路上で突然、ショーを
始めることはかなり難しいこと。その一方で、地元の大道芸アーティストなどがフェスティバルを
立ち上げたり、大道芸ができる場所を確保していること。また各地の保育関係のコミュニティや自
然食、農業で地域おこしをしている人々が公演場所を準備してくれるなど、今後の旅公演の可能性
を見いだすことができた。もちろん、こうした関係を生かしていくには、さまざまな人々、組織と
の関係をより深めていく必要がある。
この半年間、サーカス学校移転も考え、いくつかの場所を見たが、残念ながら、適切な場所を見
つけることはできなかった。たとえ、サーカス学校として不可欠な体育館があったとしても、先生・
生徒の宿舎の確保、あるいは食材の調達などが難しいなどさまざまな問題があり、それら全てをク
リアできる場所を見つけることはできなかった。
●平成 24 年度事業計画
例年より遅れて 10 月 1 日に、半年間の休校の後、9 月 26 日に体育館周りの除染を経て、再開。
但し、生徒数は現在4名なので、今期もまた、経営的には極めて厳しい状況になるものと思われる。
生徒の確保に努めなければならないが、放射能汚染物の除染をしたにもかかわらず、地上 0m で 0.5
マイクロシーベルト毎時を記録する場所が体育館の樋の下などにある以上、そうしたことを明らか
にし、その上でしか入学希望者を受け入れられない。
従って経営的には、卒業生らにイベントなどに積極的に参加してもらう必要があるだろう。それ
と同時に、ショー形式の作品を作り、売りだしていくことも必要であろう。
また今年度の夏休み期間中、旅に出られるような準備をしたい。そのためのショーを作るには、
在校生では無理なので、卒業生が中心となるだろう。それを持って、北への旅をしたい。そのため
には、事前にある程度の公演スケジュールを立てなければならないので、早い時期にその準備に取
りかかりたい。
また、例年行っているナージャ先生のワークショップを、地方で行うことも考えたい。ただ、こ
の場合は、生徒も同伴していかなければならないであろうから、そのための資金確保が欠かせない。
もうひとつ、これだけの放射能被害を蒙った以上、協会としては、つねに脱原発を明確にした活
動をしていこうと考える。サーカスのアーティストを育て、かれらの未来のための活動をしている
以上、彼らの未来に不安、ひょっとすれば具体的な被害を及ぼす可能性のある原発を受けいれるこ
とは決して許されることではない。これは、なにも当協会だけの問題ではない。明日の世界、地球
の将来、人々の生活、自然界の生き物などについて思いを巡らせば、原発が常に排出し、事故があ
れば、あらゆる生き物に決定的なダメージを与える放射能を、その根本から絶つべく活動すること
が、今を生きる私たちに求められている。
今年度は、なんとしてでも、サーカス学校を再建しなければならないが、それも、自分たちを取
り巻く環境を注視し、どのような再建が望ましいかを追求したい。
2
●卒業生、集まる
去る 11 月 6 日(月)
、現在、関西で活躍している上坂直之・晶子夫婦が二人の子供をつれて、サ
ーカス村に。なぜかサーカス学校で猛烈に練習したくなったとの来村だったが、その情報を得た他
の卒業生らも三々五々集まり、なにやら同窓会のような気配になってしまった。北九州市から萩原
崇、平塚から石川麻子、宇都宮から末廣祥久、東京から高橋七奈君ら。それに山形からは小林信之
君。集まった卒業生で、パフォーマーとしての仕事をしていないのは小林君のみ。但し小林君はも
ともとパフォーマー志望でなかったので当然で、いまはなんと山形県最上郡船形町で、総務省が地
方の過疎対策としておこなっている“地域おこし協力隊”の一員となって、地域おこしに取り組んで
いる。その彼がお土産に持ってきたのが、地元のお米のはいったペットボトルとラ・フランス。
このお米の入ったペットボトルがなんともユニーク。なにしろ、西ノ前遺跡から出土し、国宝指
定になっている、“縄文の女神”と呼ばれる土偶の形をしている。しかしその土偶の顔の部分はペッ
トボトルとして造形できなかったのか、顔を印刷した紙を貼ってあるのが、微笑ましくもあり、B
級グルメならぬ、正直 C 級のデザイン処理の気配。但し、新米は確かに美味かったよ、ノブ。協力
隊の任期は 3 年というから、それまでにサーカス学校卒業生の旅公演のアレンジをよろしくね。
とうわけで、彼はしっかり地域おこし隊の隊員の一人として、休暇中にもかかわらず、その仕事
をこなしていた。ページ上の倒立写真は、この同窓会稽古中の一コマ。
それにしても、炊事班の西田は、歳のせいか、正直相当くたびれた。教訓としては、今後はワー
クショップなどの炊事は手抜きすること。メインディシュに後一品、たとえばサラダぐらいにして、
あれこれ作らないこと。
実は、みんなが集まる前、11 月 2 日(金)にサーカス資料館を出発。女性クラウンのおっとち
ゃんに、篤・健太の両君と一緒に京都・胡麻、大阪・高槻公演に出かけていた。行きの途中、リト
ルワールドで“中国国立雑技団
超技”を見、また帰りには、恵那市の奥矢作で、来年合宿するかも
しれない体育館の視察して、戻ってきたのが 5 日というスケジュールであった。そしてみんなが帰
った 9 日(金)には、11 日に岩宿博物館ある場所で“岩宿ムラ収穫まつり”に参加するダンサーの木
野彩子さんが到着するという過密スケジュールだった。
大阪・高槻公演は、この 3 月の“旅する道化師と大道芸人たち”を見た方からの依頼だったが、高槻
だけで公演するには交通費など経費がかかりすぎるので、前回もすっかりお世話になったアグロス
胡麻郷の橋本氏に相談し、なんと 11 月 4 日に 2 箇所掛けもち公演を決行したのであった。
3
←高村篤君の背中より撮影。たくさんのお客
さん(胡麻の収穫まつり)
↓ダンサー木野彩子君の鹿踊り(右)とアビ
マノーラのハンドトゥハンド(左)
(岩宿ムラ
収穫まつり)
●沢入国際サーカス学校
冬の発表会のお知らせ
今回は 4 名の新入生は未だ作品ができていないので、卒業生中心の発表会を予定しています。
石川麻子、末廣祥久、高橋七奈、鶴貞浩、目黒有沙等が出演予定。
12 月 21 日(金)14 時 リハーサル
■日程
見学可
12 月 22 日(土)14 時 発表会
■入場料無料 カンパ大歓迎
■場所
沢入国際サーカス学校体育館
●サンディの被害を受けたニューヨークのサーカス学校に寄付をお願いします
以前、沢入国際サーカス学校に訪れたことがあり、10 年以上ポッ
プサーカスで空中ブランコを行っていたサーカスアーティスト、ジ
ーノ・ファルファンは、アメリカに帰国後、ニューヨークで空中芸
サ
ー
カ
ス
ウ
ェ
ア
ハ
ウ
ス
中心のサーカス学校『CIRCUS WAREHOUSE 』を始めました。
サ
ー
カ
ス
ウ
ェ
ア
ハ
ウ
ス
『CIRCUS WAREHOUSE』は、プロを目指す人への専門的なトレ
ーニングと、プロでない人にも開放している練習の場です。
そんな彼の学校が先日、米北東部を襲った大型ハリケーン「サン
4
↑水浸しになった学校内を片づけて
いる様子
ディ」により、水浸しになってしまうという被害を受けたそうです。「空中芸用具の破片が飛んで
ガレージのドアを直撃し、学校内に水が入ってきて、水位は最高で約 90cm になり、一時は大変緊
張しました。幸いなことに、生徒たちは全員無事で、空中ブランコの装置なども損害を受けず、掃
除もだいぶ進みましたが、ブランコ、マット類などのサーカス用品や音響システム、そしてパソコ
ン、プリンター、電話機など事務所全体を失いました。また、一部練習スペースは改修が必要な状
態です」とのこと(寄付のページより一部抜粋、翻訳)で、現在寄付を募っていますので、こちら
でも紹介させていただきます。もしよろしければ、サーカス学校の回復のため、ご寄付をいただけ
れば幸いです。
①インターネット(クレジット決済)
「CIRCUS WAREHOUSE」トップページ(http://circuswarehouse.com/)の右側にある
gofundme と書かれた赤いボタンをクリック→ DONATE! と書かれた赤いボタンをクリ
ック→寄付金額、名前、メールアドレス、住所などを入力し、クレジットカード情報を入力
方法
したら終了です。
②国際サーカス村協会に振込
郵便振替用紙にてサーカス村協会にご送金下さい。私たちが責任を持って、CIRCUS
WAREHOUSE にお送りします。空欄に「サーカスウェアハウス寄付」などお書き下さい。
■口座番号 00180-8-106528
■加入者名 国際サーカス村協会
●サーカス学校一年生 ― 沢入国際サーカス学校より
サーカス学校が 10 月 1 日に新入生 4 名を迎えて再開してから、約 1 カ月が経ちました。新入生
たちはこの 1 カ月で何を学んだか、今どんなことを感じているのか。4 名に心情をつづってもらい
ました。
いしぐろ だ い ち
■石黒大智
入学して約 1 ヶ月が経ちました。山奥にある学校なので、練習に集中できる環境
です。午前中の授業では、倒立やアクロバットの技がなかなか出来ず、ナージャ先
生にビシバシ指導されています。僕はまだ力が足りず、身体をうまく動かせないこ
とが多く、身体のあちこち痛くて大変です。普段は、先輩も後輩もいなく新入生 4
人だけですが、卒業生の方が来てくれることがあり、その時は一緒に練習したり、
教えていただいたりする機会があります。とてもいい刺激になります。
まだまだ出来ることが少なく、出来ないことが沢山あるので、少しずつ出来るよ
うにしていきたいと思います。
き た か ず ひろ
■喜多和裕
体験入学の時は筋肉痛でしたが、最近は筋肉痛を感じる事が少なくなってきて、
体の成長を感じつつもアクロバット、倒立はなかなか出来ません。自分はジャグリ
ングをスポーツ感覚でやっていましたが、ジャグリングは運動神経がなくても出来
るものなんだなぁとつくづく思い、自分の運動神経のなさにガッカリしました。
5
自分が 1 ヶ月で何を感じたか。体の使い方で技の見映えが変わる事です。例えばジャグリングで
足の下から投げる時、足の角度を少し変えたりするだけで体の線が綺麗に見えたりします。そうい
った所を意識しながら、老若男女に受けるパフォーマンスを作っていきたいです。
さいとうしょう ご
■斉藤 聖 吾
サーカス学校に入学して1ヶ月が過ぎ、少しずつですが生活や授業に慣れて
きました。日が経つにつれ、先生の丁寧な指導を受けても技術が思うように進
歩せず、次のステップに進む事が難しくなっていきました。「自分はパフォー
マーに向いてないのか?」という自分の問いかけに、「毎日いつも通り練習し
ていれば大丈夫」と言い聞かせて1日を過ごす日々。
今思えばこの時は1日の授業を作業のようにしてしまい、練習を軽く見てい
たのかもしれません。11 月の初めの頃にサーカス学校の OB の方々が来て下さ
いました。その時に技術面で勉強になるのはもちろんですが、その時におっし
ゃっていた言葉が印象的でした。
「在学中は危機感を持ってやっていた」
。その
言葉を聞いた時、思えば毎日練習をしてはいるものの、入学前にジャグリング等を練習していた趣
味の延長で、危機感を身近に感じていなかったのだと気づかされました。
まずは心を入れ替え、目の前の練習を今以上にしっかり取り組み、危機感、緊張感を持って、良
いパフォーマーになるために努力していきたいと思います。
しのみや はる な
■篠宮陽菜
みなさんは自分がどんな身体をしているかについて、どれだけ知
っているでしょうか。もしかしたらこの会報を読んでいる方の中に
は、身体機能について精通している方が多いかもしれませんが、少
なくとも私自身は、今まで自分の身体について全く興味がありませ
んでした。考えてみればこれまでの人生で身体を使うということを
してきたことがなかったので、当たり前なのかもしれません。
私は 10 月に入学してすぐに腰を痛めました。幼い頃から極度の
反り腰だったのですが、実は以前から「治さないと絶対に腰を痛める」と言われていたのです。し
かし、それまで腰痛に悩まされたことは一度もなかった為にさして気にすることはありませんでし
た。今考えれば、スポーツなど何かやっていればもっと早くに発症していたと思います。その経験
がなかった為に今まで放置することになってしまったのです。
私のように成人してからスポーツを始める場合、このような自分の身体の特徴をしっかりと把握
する必要があります。入学してから練習を重ねる中で、身体は自分のこれまでの生き方を体現して
いるということを強く感じました。
例えば、練習の中で、私は左右の腕の筋力が大きく違うことに気づきました。思い起こせば、私
は昔から美術をやっていて、利き手である右手の指先から腕にかけて異常に酷使し、一方、反対の
手から腕にかけては全く使うことがありませんでした。そこまで筋力に影響がないと思われるかも
しれませんが、キャンバスに手がつかないように常に手を浮かせているために、実は利き腕に関し
てはそれなりの筋力が必要なのです。
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また、私は肩が前に出てしまっているのですが、昔から床に向かって身体を丸めて描くことが多
かったことや、常に机に向かっていたことなど、考えてみれば肩を常に前に出している動作しかし
ていなかったように思います。利き腕以外の身体の部位を動かすことをしていなかったことが原因
で、特に下半身の筋肉が収縮してしまったのです。
幼い子どもと違い、私のような者の場合、このように自分の身体的特徴を把握し、それを踏まえ
た上でどのように練習していくのが自分にとって一番良い方法なのかを常に考えることが求めら
れます。入学してからの1ヶ月程でその必要性を強く感じました。
私は自分の身体と向き合うことが求められました。しかし、これは何の分野であろうと変わらな
いのではないでしょうか。ある程度大人になってから何か新しいことを始める人にとって、まず実
情に目を向けること、そしてその上で最良の対策と選択をすることができるかどうか、それがとて
も重要なのだと思います。
●北米、サーカス学校を周る旅
我らが沢入国際サーカス学校が、いまだ不安定な状況下におかれてはいますが、
新しい生徒を迎えて再開したことですし、ここらで世界のサーカス学校を見に行
こうと思い、飛んでまいりました。今回の旅のテーマは、
『北米のサーカス学校』。
訪れたのは三か所。ひとつは、シルクドソレイユを生んだフランス系カナダの地、ケベック州の
ケベックシティとモントリオール。そして、ブロードウェイミュージカルのネオン輝くエンターテ
イメントの聖地、ニューヨークシティ。
ケベックシティにある「ケベックサーカス学校」には、現在、沢入国際サーカス学校を卒業した
目黒有沙さんが通っています。こちらの学校から始まり、
「国立モントリオールサーカス学校」
(中
は見せてもらえませんでした)
、
「ベルダンサーカス学校」
(いずれもケベックシティ、カナダ)、そ
して「CIRCUS WAREHOUSE」
(ニューヨーク)の 4 校を、10 月 20 日(土)~26 日(金)に訪
れました。
7
◆出発前
サーカス学校訪問の準備を進めながら、ケベコワ(ケベックに住むフランス語を話す人たち)の
ショーやパフォーマンスを観てみたいと思い、ケベック州をグーグルマップで見ていると、あちこ
ちに劇場がある模様。ガイドブックを開くと「大道芸人が集うストリート」なる場所も記されてい
たりして、いろいろ観られそうです。高まる期待を胸に、滞在中に観られるホットなパフォーマン
スはないか、ケベックシティ在住の目黒さんに聞いてみると、返信が届きました。なんと、ケベッ
クシティでもモントリオールでも、9 月のはじめでパフォーマンス関係はすべて終わってしまって
いる。気温もだいぶ低くなっているので、街頭で大道芸をやる物好きなんていないとのこと…。冬
が長く、毎年 4 月ごろまで雪が残るケベックシティ。毎年 5 月~夏の時期は世界中から様々なパフ
ォーマンスが集まる大規模なフェスティバルや、シルクドソレイユの新作を行っているらしいので
すが、冬はさっぱりだそうで。
みなさん、ケベックシティにパフォーマンスを観に行くのでしたら、夏ですよ、夏。
◆10 月 22 日(土)
成田空港からワシントンを経由して、モントリオール・ピエール・エリオット・トルドー空港着。
ここでケベックシティまでの長距離バス「オルレアン・エクスプレス」に乗り、午後 7 時、ケベッ
クシティ着。迎えに来てくれた目黒さんと、久々の再会。元気そうな彼女の笑顔にほっとします。
彼女は、同じ学校の生徒でスイス人の女の子ふたりと、学校の近くでルームシェアをして暮らし
ています。家に案内してもらってしばらくすると、沢入国際サーカス学校に半年間通っていたフラ
ンス人のイネスちゃんが来てくれました。彼女のお母さんはミュージシャン。以前、シルクドソレ
イユ『ドラリオン』に出演しており、日本公演の際お母さんとともに来日した彼女は、巡業中に日
本語を覚え、フランスに帰った後、沢入国際サーカス学校入学のためにひとりで日本にやってきた
という、行動力と愛嬌のある女の子です。現在、ケベックサーカス学校の 2 年生です。この夜は 3
人でおしゃべりに花を咲かせました。
◆10 月 24 日(月)<ケベックサーカス学校見学>
①9:00~10:30:音楽
今日は目黒さんについていって、一年生の授業を一日見学させてもらいました。まず 1 時間目の
授業は午前 9 時から、この日は『音楽』の講義です。ケベックサーカス学校ではサーカス技のトレ
ーニングのほかにダンスや即興演劇、メイク、そしてリギング(装置・装具の取り付け方など)、
「サ
ーカスで働くには」などの授業があり、それらはすべてフランス語で行われているそうです。
授業、といっても、日本の大学などで行われているスタイルの講義とは
少し違います。教室には机もイスもありません。先生も生徒も地べたに
あぐら。しばらくすると、ある生徒が寝転がり始めました。各々自由(に
見えたのですが、彼らの中では彼らなりに制限をかけていたのかも)な
格好で講義を受けていて、私の感覚からいうとそれはときどきだらしな
くもあった(先生が生徒の姿勢に対して注意することはありませんでし
た)のですが、生徒たちは皆先生の目をみて、先生も生徒たちひとりひ
8
とりの目を見て、先生の話すことに生徒たちはすぐに反応して、それに対して先生もまた返して、
笑いが起きて…。どんな会話をしていたのかはわかりませんが、先生と生徒の間に、自然で良好な
関係が築けているように感じました。
さて、ケベックサーカス学校の建物は、元教会。広くて大きく、天井が高い!柱や壁に彫刻がほ
どこしてあったり、あちこちに小さな部屋があったり、ベンチが置いてあったりと、良い塩梅に教
会の面影が残っています。冒険心をくすぐる楽しい建物です。
ケベックサーカス学校の先生は、非常勤講師も入れると 30 人余り。生徒は約 80 人。発表会は毎
年 12 月と 6 月の年 2 回。特に 6 月の方は規模が大きいので、機会があればぜひ観に来て、とイネ
スちゃん。また、週に 3 回、トレーナー兼整体師が来てくれて、ケガをみてくれたり、リハビリの
指導をしてくれたりするそうです。無料。
↑(写真左)メインのトレーニング場。天井には空中芸各種、フライングトラピーズの設備も。部屋はほかにも、
メイントレーニング場がよく見渡せるガラス張りの事務室、地下のトレーニング場、ダンススタジオ、タンブリ
ング床のアクロバット部屋、トレーニングジム、更衣室、食堂などがある。
(右)地下のトレーニング場。奥では
子どもたちがワークショップ中。そこらへんにあるモノで思いっきり遊んでいる。ここにも、トラピーズやシフ
ォン、リングなどが吊ってあり、トランポリン、チャイニーズポール、肋木なども揃っている。写真に入りきれ
ていないが右側にもスペースは続いており、地下だけで 5~7 クラスのワークショップが同時に行われていた。
大勢の子どもたちが参加しており、脇では保護者が見守っていた。
以下、この日の時間割を書き出します。
②10:30~12:00:
ダンスの授業はほかに、クラシックバレエが必修。その他フラメン
コンテンポラリーダンス
コやスウィングダンスなどのワークショップがあるそうです。
③12:00~13:00:昼休み
④13:00~14:30:第一専攻
目黒さんの第一専攻はコントーション。先生 1 名対生徒 2 名で行っ
ていました。イネスちゃんはハンドスタンド(倒立)。
⑤14:30~15:30:第二専攻
目黒さんはハンドトゥハンド。イネスちゃんはイカリアンゲーム。
色々な演目をやってみることができるのがよいですね。
⑥15:40~16:10:筋トレ
この時間帯から、プレパレーション・プログラムといって、中・高
校生の子たちなど準備生たちがやってきて、同じ空間で練習を始め
ました。
9
⑦16:10~17:40:
(ただしこの日は、発表の場が近いため、各自作品作りをする時間
授業「サーカスで働くには」 に。点呼をとった後解散)発表会へ向けて、自分の作品づくりのた
めの時間なのですが、必ずしも学校で練習しなくてもよいのです。
例えば、帰宅して自宅でインターネットの動画サイトを見て技の研
究をするもよし。こういう自由さがまた新鮮でした。
ケベックサーカス学校を訪問して私が感じたのは、主に 2 点です。
■身体との付き合い方を考えさせる
練習中、先生は生徒に無理をさせません。生徒が痛いと言ったら負荷をかけている手を止めるし、
適度に休憩を入れて休ませます。根性論で「とにかくやれ!ケガをしても休むな!」という態度は
見られませんでした。怒号も聞こえず、むしろ穏やかな雰囲気で練習は進められていました(ちな
みにモンゴルでは、
「つまさきと膝を伸ばしなさいって言ってるでしょ!」
「泣くんじゃない!」
「お
ならしないで!」と、常に騒がしいものでした)。文化の違いでしょうか。
そもそも、サーカスにケガはつきものです。しかし、一度ケガをすると完治までに数カ月かかっ
てしまったり、その後慢性化したりと、そのたびに練習をストップしなければならず、技を習得す
るうえで効率が悪いです。根性論で練習を行うと、ケガをする確率は上がるでしょう。そして、学
生のうちは「効率が悪い」で済むかもしれませんが、将来プロのアーティストとして生きていくと
きには「食べていけるかどうか」「生きるか死ぬか」という問題に直結していきます。
自己管理ができてこそ、プロ。がむしゃらに技を練習するだけでなく、自分の身体を内部まで知
り、どうケアしていくか、ケガを予防するために日ごろからどうすればよいかについて生徒に考え
させることを、先生たちは大切にしているように感じられました。
それはモントリオールの学校でも、ニューヨークの CIRCUS WAREHOUSE でも同様で、解剖
学やスポーツコンディショニングの授業を取り入れたりして、長く、健康にサーカス・アーティス
トとして働けることを考えているようでした。
■小さい頃からサーカス芸術と触れ合う
ケベックサーカス学校は中学・高校を卒業した学生以外に、小学校に上がる前くらいの年齢の子
どもたち向けに、毎日各 3 時間のワークショップを開いています。見ていると、3、4 歳くらいの
子たちのクラスでは、トレーニング場にある様々なサーカス用具に触れて、遊びながら学ぶという
雰囲気でした。たくさんのお友達と身体を動かして、どの子も楽しそうでした。また、子どもたち
はワークショップに参加するだけでなく、学生たちの練習風景を見学できます。学生たちはふだん
の練習のほか、自分たちの作品を通すこともありますし、先生や練習生の中には、シルクドソレイ
ユ出演経験もある、プロのアーティストも少なくありません。そして、学校では年に 2 回発表会シ
ョーがあり、お兄さん、お姉さんたちのライヴショーが間近で観られます。
こういった環境が生活の一部として幼少期からあることを、想像できるでしょうか。バランスボ
ールをバウンドさせて、マットの上を走りまわってキャーキャー遊んでいるだけの子どもたちは、
そのうち自然と、自分たちが練習を繰り返すことでどういうことができるようになるのか、身体は
どんな動きをできるのか、習得した技を使って何をするのか、ひいては信頼とは何か、協調性とは
10
何か…など、考え、理解していくように感じます。口で誰かに説明されなくとも、目標は、ヒント
はすぐ目の前にあるのですから。この土壌の豊かさには、思わず感嘆してしまいました。(長屋あ
ゆみ)<次号に続く>
◆ケベックサーカス学校(École de cirque de Québec)
所在地:750, 2e avenue Québec (Québec) G1L 3B7
公式サイト:http://www.ecoledecirque.com/en
★木下大サーカス
●沖縄公演
公演期間 2012 年 12 月 1 日(土)~2013 年 2 月 3 日(日)
●休演日;木曜日と 12/31(月)、1/9(水)
。但し、1/3(木)は開演
●会場;豊崎タウン特設会場(沖縄県豊見城市)
●電話;沖縄公演事務局 098-866-0900 (11 月 27 日まで)
★ポップサーカス
●宮崎公演
●休演日;木曜日
公演期間 2012 年 11 月 3 日(土)~2012 年 12 月 9 日(日)
●会場;イオンモール宮崎大テント会場
●電話;宮崎公演事務局 0985-61-7711
★シルク・エロワーズ “iD”(アイディー)
シルク・エロワーズ(Cirque Eloize) とは、1993 年に元シルク・ドゥ・ソレイユのアーティストの一人であったジャノ
ー・ペインショー氏によって創設されたエンターテインメント集団。"iD"は、サーカスの真骨頂であるアクロバットと、
ダンスとが完全なる融合を果たすことで、全く新しい形のショーを生み出している 。
インフォメーションデスク
●東京公演Ⅰ
ホームページ
2013 年 2 月 15 日(金)~16 日(土)
●会場;五反田ゆうぽうとホール
●福岡公演
℡0570-03-8008
http://www.fujitv.co.jp/events/id/index.html
●東京公演Ⅰ
●全 2 公演
2013 年 3 月 6 日(水)~22 日(金)
●会場;TOKYO DOME CITY HALL
2013 年 2 月 22 日(金)~2 月 24 日(日)
●名古屋公演
●全 24 公演
2013 年 2 月 27 日(水)~3 月 3 日(日)
●会場;福岡サンパレスホール
●会場;愛知芸術文化センター 愛知県芸術劇場 大ホール
●全 6 公演
●全 8 公演
●大阪公演
2013 年 3 月 27 日(水)~3 月 31 日(日)
※公演日程や休演日などは電話で確認していただくか、公
●会場;オリックス劇場(旧・大阪厚生年金会館)
式サイトをご覧ください。
●全 8 公演
★リトルワールド “中国国立雑技団~超技~”
中国最高峰と名高い「中国雑技団」より 12 名の精鋭がリトルワールドにやってきました!
●公演期間 2012 年 9 月 15 日(土)~12 月 26 日(水)
●会場;野外民族博物館リトルワールド(愛知県犬山市)野外ホール
★Mercedes-Benz presents ルノア
●休演日;毎週火曜日
●電話;リトルワールド 0568-62-5611
ダークシルク
わずか 1m 先の舞台で、世界最高レベルのアクロバットや驚愕のシルクが繰り広げられる…。
●公演期間 2012 年 10 月 26 日(金)~12 月 26 日(水)※開演時間などは公式サイトでご確認ください。
●休演日;毎週月曜日、12 月 20 日(木)
●お問い合わせ:サンライズプロモーション東京
●会場;東京・品川プリンスホテル
℡0570-00-3337
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●公式サイト
クラブ eX
http://www.le-noir.net/
★ルオー財団特別企画展「ジョルジュ・ルオー
アイ・ラブ・サーカス」展
ジョルジュ・ルオーの絵画作品の中で、サーカスのテーマは全体の 3 分の 1 を占めています。美術史全体においても、一
人の画業の中でサーカスがこれほど大きな割合で取り扱われたことはないでしょう。
■日時:2012 年 10 月 6 日(土)~12 月 16 日(日)10:00-18:00
★映画
■会場:パナソニック汐留ミュージアム
シルク・ドゥ・ソレイユ 3D『彼方からの物語』
℡03-5777-8600
http://www.cirque-3d.jp/
TOHO シネマズ有楽町座ほか全国ロードショー!驚きと感動の 3D 新体験。
■日時:2012 年 11 月 9 日(金)より
※映画館、上演スケジュールなどは公式サイトをご覧ください。
★クラウンメイクを学ぼう!
サーカスクラウンのメイクを一度基礎から学んでみませんか?知っているようで知らなかったサ
ーカスクラウンメイクの意味や知識を学びながら、実際にメイクをしていただき、各自に合ったフ
ェイス探しの手掛かりがつかめるよう丁寧に指導していきます。ベースを学べる絶好の機会です。
■講師
チーズ(クラウンピンキー)
■会場
台東区生涯学習センター
■日時:2012 年 11 月 28 日(水)13:30~16:30
■費用
3,250 円(当日貸出メイク用品代込)
★ダメじゃん小出ソロライブ
■お問合「カビリア」[email protected]
負け犬の遠吠え
事前にご予約ください。
vol.27
時事問題や身近にある素朴な疑問などをテーマにトークやコントを中心にした師走の一刀冗談ライブ
■日時:2012 年 12 月 7 日(金)19:30、8 日(土)14:00/18:00
■チケット予約:℡080-3306-4695
■会場:東中野 space&cafe ポレポレ坐
Fax03-3765-3663
★浅草パフォーマンスプレイスライブ in コシダカシアター
沢入国際サーカス学校出身メンバーを中心に、凄腕アーティストを集めました。■日時:2012 年 12 月 12 日(水)19:30
■会場:昭和歌謡コシダカシアター(浅草)
■ご予約:件名「12
月コシダカ予約」として①お名前②人数を記載し、
[email protected] ま で 、 メ ー ル を お 送 り く だ さ い 。
★ダメじゃん小出×VJ コミックカット
サンデー臨界 vol.2
テレビじゃ絶対見られない!劇場型報道ライブ
■会場:関内ホール
小ホール
★メガバブルショー
好評につき第二弾!!
■チケット予約:MOT
■日時:2012 年 12 月 18 日(火)19:00
コミュニケーション
℡050-7100-0167
Fax042-633-0334
※大阪・名古屋公演は、チャリティー公演として行われます。
20 数年バブル(しゃぼん玉)ファンタジーを追求し続けたファン・ヤンの秘術の集大成。幻想的なレーザーと照明、そし
てサラウンドサウンドを織り交ぜた夢のスペクタクルショーです。
●大阪公演
■日時:2013 年 1 月 12 日(土)14:00/18:00
■チケット: A 席 6,000 円
●東京公演
●愛知公演
B 席 4,500 円(全席指定) ■お問い合わせ:社団法人大阪聴力障害者協会 ℡06-6761-1394
■日時:2013 年 1 月 17 日(木)14:00/18:30
■チケット:S 席 6,000 円
■会場:メルパルクホール東京
A 席 4,500 円(全席指定)■お問い合わせ:㈱テレビランド℡03-5809-1082
■日時:2013 年 1 月 19 日(土)14:00/18:00
■チケット:S 席 6,000 円
■会場:大阪国際会議場(グランキューブ大阪)
■会場:名古屋市民会館(ビレッジホール)
A 席 4,500 円(全席指定)
■お問い合わせ:アイ・ラブ・チャリティー
メガバブルショー実行委員会
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℡052-221-8545