安全な英国滞在のために [安全の手引き]

安全な英国滞在のために
[安全の手引き]
平成27年5月
在英国日本国大使館
在エディンバラ日本国総領事館
はじめに
観光・出張等で当地を訪れる邦人も年々増えていますが、短期滞在者のみならず、当地
での生活に慣れている長期滞在者でさえ窃盗、強盗等の犯罪に巻き込まれるケースも少な
くありません。その手口は比較的類型化されており、日頃から注意を怠らずに意識を向け
ていれば、かなり予防できると思われます。
とかく日本人は海外における安全意識が欠如(無防備、無警戒)していると指摘されてい
ます。海外で犯罪等の被害に遭わないためには、皆様一人一人が日頃から防犯意識をもっ
て行動することが何よりも大切です。
本手引きでは、海外に長く在留している方々にとっては当たり前のことかも知れません
が、特に邦人の方々が被害者となり易い犯罪について防犯上の一般的な心構えと対策を紹
介したいと思います。また、在英国日本国大使館及び在エディンバラ日本国総領事館では、
在留邦人の方に役立つと思われる当地の安全情報をホームページでお知らせするととも
に、電子メールでも提供しています。皆様が提出している在留届に記載のあるメールアド
レスを利用していますので、在留届を提出していない方は在留届の提出をお願いします。
1.英国での犯罪発生状況
英国の治安は比較的良好と言われていますが、2014 年1月から 12 月にかけての犯罪統
計によれば、事件として警察等に記録されただけでも英国の犯罪件数は、イングランド及
びウェールズにおいてはおよそ 377 万件、スコットランドでは約 50 万件、北アイルランド
で約 10 万件に上っています。
英国の犯罪件数は日本に比べれば多いので、注意する必要があります。また、当館に届
けられる邦人の被害件数は他のヨーロッパ諸国と比べ高くなっています。
なお、上記犯罪件数はあくまで被害届等から英国警察が認知した数だけであり、未届等
の犯罪も含めると、実際の犯罪総数はその約数倍とも言われていますので、犯罪の被害に
遭わぬよう充分な注意が必要です。
2.一般犯罪に対する対策
(1)スリ・置き引き
パスポートが盗まれたとして、在英国日本国大使館及びエディンバラ日本国総領事館に
届け出があった数だけでも毎年 200 件程度に及んでおり、更に、これに本人の過失による
遺失等を含めるとパスポートの紛失・盗難は毎年 300 件を超えています。これにはパスポ
ートがからまない金銭のみの盗難被害を含んでおらず、邦人がいかに多くの被害にあって
いるかが分かります。
英国はクレジットカードやデビットカード、小切手などでの精算が一般的で、英国人は
通常数十ポンド程度の現金しか携行しないのに対し、日本人旅行者は多額の現金を持ち歩
いていると思われていることなどから、犯罪者の格好のターゲットとなっています。スリ
・置き引きについては、少しの注意を払うだけで予防できるので、次の諸点に注意して下
さい。
● 空港や駅及びロンドン市内では、Piccadilly Circus、 Oxford St.、
Knightsbridge、 Camden Lock、 Victoria 駅周辺等のショッピング街、バッキン
ガム宮殿正門前広場や大英博物館などの観光名所における被害が多発している
ので、人混みでは特に貴重品に注意を払う。
● 現金はできるだけ内ポケットに入れ、しかも分散(大小 2 つのサイフを併せ持つ
など)して身につけるように心掛ける。
● 肩掛け式のハンドバッグやデイパックは身体の正面に位置するようにして持ち
歩く
(デパート、地下鉄の中でも同じ)。
● 空港、駅等で座っているとき、ホテルでのチェックイン・チェックアウト時、デ
パート、土産品店での買い物、或いは観光先での写真撮影の際(撮影中に貴重品
をスリとられる事案が多く発生している。)も、常に荷物を視界内に置いて、か
つ、身体から離さぬようにする。
● レストラン等で食事をする際には、ハンドバッグ等をイスにかけたり、床に置か
ない、又は、置いたままで席を離れない。また、現金やパスポートを入れたまま
で上着等をコート掛けに掛けない。
● ロンドン市内地下鉄においてスリ被害が多発しており、特に中心部の乗降客の多
い駅(Victoria、 Leicester Square、 Oxford Circus、 Kings Cross、
Piccadilly Circus 等)で多く発生している。なお、スリに関しては、単独犯だ
けでなく、複数人(子供を含めたグループのときがある)による犯行が多く、1 人
が注意を引きつけている間に別の者がスリ取るという手口をとる。したがって、
地下鉄の中では互いの身体等が触れるほどに混み合った車両は避けるように心
掛ける。
● スコットランドでは、特に夏の観光シーズンやクリスマスから年末にかけてエデ
ィンバラ等の市内でスリや置き引きが多発しているので、貴重品の入ったバック
類は体から離さない。
(2)路上強奪・ひったくり等
路上での強盗やいわゆる「ひったくり」は、特に人気のない通りや夜道での被害例が圧倒
的に多く、その手口は駅の出口等の人が多いところから被害者をつけて行き、やがて、人
気のない夜道等に入った時点で駆け寄り、(時には被害者を突き倒す等しながら)強引にバ
ッグを奪って走り去るといった方法で行われています。特に近年日照時間が短くなる冬場
の被害例が目立っており、比較的安全と言われる地域でも発生しています。また、最近は
携帯電話や携帯音楽プレーヤーを狙った犯行も多発しています。
● ハンドバッグ等は常時正面に位置させて手を添えながら持ち歩いたり(肩掛けの
あるものはたすき掛けにする)、あるいは、先にバッグを肩へ掛け、その上から
コートやジャンパー等を着用し、外見上バッグがあまり見えないようにする。
● 夜間外出する際は周囲に注意を払い、人気のないところは歩かず、可能な限りタ
クシーを利用する。
● 夜間、あるいは人通りのない道を歩くときは、肩越しに振り向いてつけてくる者
がいないかを確認し、怪しい者が後方にいる場合は道を反対側へ渡る、あるいは
速やかに人目につく場所に移動する。
● 貴重品や鍵等の盗まれた場合の損害が大きいものに関しては、安全な場所で、鞄
の中から服のポケットなどに移し替えておく。
● 深夜に自家用車等で帰宅した際は、車内で家の鍵を取り出しておき、付近に不審
者がいないことを確認した上で降車し、素早く玄関内に入るようにする。
● パーティーの帰りなどに夜遅く帰宅する時は、高価な指輪、ネックレス、時計等
は事前にはずしてポケットなどに隠しておく。また、このような時には電車、バ
スはできるだけ利用しない。
(3)
偽警察官による詐欺
偽装警察官によるカード等窃取が多発しています。犯行の手口は以下のとおりです。こ
のような犯罪に巻き込まれた場合は、速やかに警察へ通報するとともに、カードの停止措
置を行うようにしてください。
また、エディンバラ市内で発生した偽警察官による詐欺事件については、犯罪の手口は
以下の例と同様ではありますが、犯行グループに日本人らしき者が加わっているとの情報
がありました。エディンバラ市警察によりますと、被害にあった邦人は、おとり役の男性
が話す日本語には外国人が話すような訛りは無かったと述べていたとのことです。
【詐欺警官犯罪例】
旅行者風の人物が突然話しかけてくる。間もなく警察官と称する人物(私服)が現
れ、まず、初めに話しかけてきた人物(旅行者風の人物)に身分証明書やクレジット
カード、財布等の提出を求め、同人物はそれに従う。次に警察官と称する人物は被害
者にも同じ要求をすると共に、クレジットカードの暗証番号を聞いてくる。その後、
被害者が提出したものは返却されるが、カードや現金が抜き取られており、その後カ
ードが不正使用される。
偽警察官に出会した場合には、以下の諸点に注意して行動して下さい。
●見知らぬ人物が近づいてきた場合は、かかわり合わないようにする。
●人気のない場所には絶対に付いて行かない。
●警察官が、クレジットカードの提示を求めたり、暗証番号を聞くことはないので、
不審に感じた場合は、周囲にいる人に助けを求める。
(4)
空き巣及び自動車関連窃盗について
空き巣及び自動車関連窃盗の発生件数は非常に多く、多数の日本人が被害に遭っていま
すので、しっかりとした防犯対策が望まれます。
①
空き巣
空き巣被害に遭わない為に最も重要なことは、留守である兆候(新聞、郵便物がたまっ
ている、家中の電気が消えている等)を見せないこと、また、英国内務省によると空き巣
の 4 分の1は施錠を忘れた窓や玄関から侵入しているとのことですので、たとえ昼間の
短時間の外出でも戸締りをして下さい。なお、英国内務省の調べでは、空き巣の半数以
上が夕方及び夜の時間帯に発生している模様です。
● 通りに面したゲートを閉める。
● 侵入が容易な場所にある窓には鍵をかける。
● はしご等を庭などに放置しない。
● 郵便受けや玄関マット下に玄関扉の鍵を置かない。鍵には名前、住所等を書かな
い。
● 外部から見える場所に貴重品を置かない。
● 長期間の旅行や夜間の外出時は家中を完全に消灯しない (タイマー付き電源ソ
ケット(Plug-in Timer Socket)の使用も良策) 。また、旅行に出かける際は、
留守を察知されないよう、新聞、牛乳等の配達を停止したり、近所の人に駐車場
を使用させる。
● 帰宅時に家の様子がおかしいと感じた場合は、家の中での鉢合わせを避けるた
め、すぐに中に入らず、隣近所や警察に助けを求める。
● 家の玄関の施錠は二重以上にし、ドアチェーン、覗き穴を取り付ける。
● 防犯アラームを設置し、外出時はもとより、在宅中でも必ずセットする。
● 被害に遭った時のために家財の盗難被害を補償する保険(海外旅行保険、家財保
険等)には必ず加入しておく。
● 一度盗難にあった家には、再度空き巣が入る例が多いので特に警戒すると共に家
主と交渉して防犯措置(格子窓、照明、鍵の強化等)の増設を検討する。
● 警 察 署 等 公 的 機 関 が 関 与 し て い る 盗 難 監 視 隣 組 組 織 ( Neighborhood Watch
Schemes)があれば加入するのも良策。
● 旅行に際して空港等までの送迎にミニ・キャブを呼ぶ場合には、Transport for
London からライセンスを受けている業者を利用する。かつ、知人等の信頼できる
人から紹介を受けた実績のある業者であればなお望ましい。
②
自動車関連の窃盗
自動車本体や装備品、車内に置かれた物品等が盗まれるので、いつも注意を欠かさな
いことが必要です。
● 自動車用盗難警報装置(アラーム)を設置する。
● 短時間の駐車でも、必ずドアをロックし、車内に携帯型カーナビゲーションシス
テムや荷物(バッグ、箱、上着等の貴重品が中に入っていると他人に思わせるも
の全て)を放置しておかない。
● 人目に付きにくい場所には駐車しない。
● 夜間の路上駐車はできるだけ避け、やむを得ず駐車する時でも明かりの下に駐車
する。
● 駐車場内であっても、できるだけ係員の目が届く場所に駐車する。
● 盗難をカバーする保険に加入しておく。
● 車検証及び免許証は、コピーを車内に置いておきオリジナルは別途保管する。
● 乗車中はドアをロックし、また、バッグを助手席等に置き、窓を開けたままにし
ない(信号待ちで停車中に車外から窓越しに荷物を奪われることがある)。
(5)強盗(電気メーター確認業者、建築業者、庭師等を装った強盗)について
電気メーター確認業者、建築業者、庭師等を装った強盗事案もあるので注意が必要です。
●
裏口のドアは鍵がかかっているか確認。
●
身分証の提示を求め、訪問者がどういう人か確かめる。
●
面識のない人を家に入れない。
●
不審に感じたら後日出直してもらうように言う。(後日近所の人に確認する。)
また、一軒家などでは、深夜の就寝中に侵入する強盗も発生しているため、次の
ような防犯対策が必要です。
● 防犯アラームは、警察への通報が行われる契約とする。
● 在宅中もアラームをセットしておく。
● 予め家族で退避する部屋を決めておき、部屋の内側から施錠できるように整備
し、いざという時には、その部屋に逃げ込み警察の到着を待つ、又は、携帯電話
で助けを呼ぶ。
(6)薬物関連犯罪
英国において、マリファナ(大麻)、ヘロイン、コカイン、覚醒剤、MDMA(一般に錠剤型を
していて、“エクスタシー”、“E”等とも呼ばれる。)等の薬物犯罪が社会問題化してい
るため、税関や警察が取締を強化しており、違反者は法律に基づき厳罰に処されます。
これまでも、薬物使用で警察当局に逮捕されたり、薬物中毒で精神障害に陥った日本人
の事例もありますので、決して手を出さないでください。また、「麻薬の運び屋」に仕立
てられる危険性もありますので、親切心から他人の荷物を安易に預かったり、搬送を引き
受けたりしないようにしてください。
(7)性犯罪
英国において 2014 年 1 月から 12 月にかけて発生した深刻な性犯罪は、およそ 8 万件で
す。日本の 2014 年の性犯罪認知件数が約 9 千件であることを考えると英国の性犯罪被害件
数は非常に高いと言えます。
性犯罪は、
その犯罪の性質から被害届を出さないケースも相当数あると言われています。
女性の夜間の一人歩きや良く知らない人からの言葉巧みな誘いには特に注意することが必
要です。住宅の広告をおとりにして部屋に連れ込む等の手口も見られます。
● 夜間の外出、深夜の地下鉄・ミニキャブの利用はなるべく避けた方が無難。
● 夜間外出するときには出来るだけ正規に許可されたブラックキャブ等のタクシ
ーを利用する。
● 片言の日本語を使って用事もないのに近寄ってきたり、馴れ馴れしくする人がい
たらおかしいと思うこと。
● 見知らぬ人、初対面の人の誘いには軽々しく乗らず、人気のないところには決し
てついていかない。
● 住宅の下見には複数で行く。
● 住宅の賃貸は不動産屋を通して行う。
● 予期しない訪問者があった場合はドアの覗き穴や窓からどういう人か確かめ、絶
対にドアを開けない。業者を名乗る人にはドア越しにID提示を求める。
● 言葉、地理、習慣に不案内な外国にいることを忘れず、日本にいた時よりも用心
する。
●防犯ブザー(Personal Attack Alarm)などを携帯する。(護身用具の携行は要注
意。(11)参照)
(8)誘拐
当国では過去、邦人に絡む営利誘拐事件は把握されていませんが、海外に居住する邦人
に対するこの種の犯罪の発生が常に懸念されるところです。対象者の行動を予測しやすい
ことから、誘拐事件の大半は通勤、通学途上の自宅もしくは勤務先等の近くで発生し、ま
た、犯人は通常、誘拐を実行する前に被害者の行動パターンなどを十分に下調べ(犯行予
定場所の下見・被害者の監視・情報収集等)した上で実行します。参考までに日常心がけ
ておいた方がよいと思われる注意事項には、次のような点があります。
また、英国では子供だけでの留守番(ホームアローン)自体は法律により禁じられては
いませんが、万一子供だけの留守番中に子供が危害を加えられたり、怪我をしたりした場
合には、幼児虐待などの理由で両親が罪に問われる可能性がありますのでご注意下さい。
● 自宅近辺等で、一見何でもないが、日常とは違う事がないかどうか注意する習慣
をつける。
● 自宅等の周囲における不審人物・不審車両の有無に注意する。
● 追尾する不審車両に気づいたら一旦停車するか、又は徐行して確認する。
● 毎日決まった時間(経路)の出勤、帰宅、外出等は被害者として選定されやすい
ので時々変更する。
● 自宅の電話番号、住所はむやみに他人に知られないよう心がける。
● 子供のみでは通学させない。
● 子供のみでは外で遊ばせない、また、買い物にもやらない。
● 駐車する際、子供だけを車内に置かない(児童虐待にもなり得る)。
● ドアをノックされたときは、必ず覗き穴等で相手を確認してからドアを開ける。
●
防犯ブザー(Personal Attack Alarm)などを携帯する。(護身用具の携行は要
注意(11)参照)
(9)交通機関での犯罪被害
鉄道、地下鉄、バス等の公共交通機関は概ね安全ですが、深夜の利用、また、人が
少ない車両に乗車することは避けた方が無難です。
ロンドンの正規タクシー(ブラックキャブ)の運転手になるには、厳しい審査(犯
罪歴の有無等)や試験が必要であり、正規タクシーは安全と言えます。また、ミニ
キャブについては、必ず、Transport for London からライセンスを受けている業者
を利用してください。ライセンスを受けていない業者を利用した場合には、交通事
故時の補償などに問題があるといわれており、トラブルが発生する可能性がありま
す。
(10)子の居所の移動が犯罪となる場合
英国法「Child Abduction Act 1984」では、親権を持つ片方の親を含む「子と関連す
る者(a person connected with a child)」が、他に親権を持つ者の同意なしに16歳未満
の子を英国外に連れ出した場合は犯罪(子の奪取:Child Abduction)となると規定し
ています。たとえ両親が離婚したとしても、英国では、共同親権となっているため、
双方の親が親権を有しています。したがって、一方の親が,もう一方の親の許可を得
ずに子供を連れ出すと、「子の奪取」が成立する可能性があります(裁判所が子を国
外に連れ出すことについて許可している場合はこの限りではありません)。
「子の奪取」で有罪とされた場合は、7年以下の禁固刑、または、罰金刑に処され
ます。例えば、英国に住んでいる日本人親が他方の親の同意を得ないで子を日本に一
方的に連れて帰ると、たとえ実の親であっても犯罪に該当することとなり、英国に再
渡航した際に犯罪被疑者として逮捕される場合があります。
(11)その他
①
英国は武器の携行には規制が設けられており、催涙スプレー、スタンガン、特殊
警棒、メリケンサック、ナイフ等の無許可携帯は全て違法です。知らずに護身用具と
して携行し、空港などで逮捕された邦人の事例もあるので注意して下さい。
②
自動現金引き出し機で現金を引き出している最中に背後から声を掛けられ、振り
向いた隙にカードを機械から抜き取られ、被害者がカードを盗まれたことに気付かな
い(機械の故障と思い込んでいる)うちに他所の引き出し機へ移動して多額の現金を
引き出すという手口に遭うこともあります。利用時には周辺に不審な人がいないか注
意をし、更に暗証番号を入力する際には、周囲や背後を確認して他人に暗証番号を知
られないようにして下さい。
③
バッキンガム宮殿前などには、観光客をターゲットとするインチキ写真屋、物売
り、スリが出没していますので、注意して下さい。
④
親族、友人等と電話がつながらない、連絡が取れない、行方が不明であるとして、
何らかの事件や事故等に巻き込まれているのではないかと案じた本邦又は当地関係者
よりしばしば大使館・総領事館に安否照会があります。幸い、ほとんどのケースが転
居、旅行中などで連絡がつかないことが原因であり、本人の安全が確認されています
が、親族、友人等に無用な心配をかけない為にも、転居先や旅行先、連絡先等を必ず
連絡し、普段から所在を明らかにしておくよう心がけて下さい。
また、英国に 3 ヶ月以上滞在する場合には、大使館・総領事館へ在留届を提出して下
さい。インターネットによる電子届出もできますので、www.ezairyu.mofa.go.jp/より
提出して下さい。
⑤
インターネットで探した不動産物件を契約し、契約金を払った直後に大家等と連
絡が全く取れなくなるという事案が発生しています。契約先が不動産業者であれば、
インターネットで不動産業者のホームページを確認する、また、契約先が個人であれ
ば、不動産物件を実際に確認した上で、契約先の人物が所有者であるかの証明書等を
確認の上、支払いをするなど、細心の注意を払って下さい。
⑥
エディンバラ総領事館に、人通りの少ない場所での嫌がらせ(横断歩道で待って
いる間に野次られ背中を押される、通りすがりに頬を叩かれる等)に関する相談が寄
せられています。前もって通学、通勤路周辺の情報を入手し、近道を選ばず、人通り
の多い通りを歩く、バスやタクシーを利用するなど工夫が必要です。
①
ロンドン警視庁は、犯罪から身を守るための注意事項等をホームページで紹介し
ておりますので、是非ご一読下さい。また、お住まいや職場、学校などがある地域の
犯罪発生状況が確認できる「クライムマップ」も掲載されているので、併せてご利用
下さい。
● Crime Prevention Home Page
http://content.met.police.uk/Site/crimeprevention
● Crime map
http://maps.met.police.uk/
3.
緊急事態への対策
テロ、大規模事故、自然災害などの緊急事態は、いつ、どこで、どのような形で起こる
か予想がつかないことから、日頃から緊急事態に備えた心構えをご家族、職場で話し合い、
必要な準備を進めておくことが重要です。
これまでに、英国内において日本人及び日本企業等を直接のターゲットとしたテロ事件
は確認されていませんが、2005年にはロンドンで死者52人を出す連続爆弾テロが発
生しました。その後もイスラム過激派による国際テロの脅威は引き続き存在しており、
2014年8月29日(現地時間)、メイ英国内務大臣は、具体的なテロ攻撃の情報はな
いとしつつも、英国内のテロ脅威度を「相当(Substantial)」(5段階中3番目)から「深
刻(Severe)」(上から2番目)に引き上げたと発表しました。同大臣は、今回の脅威度
の引き上げは、シリア及びイラクのテロ組織が、欧米に対する攻撃を計画しているという
情勢を受けて行われたものであるとして、市民に注意を促すとともに、警察に対する情報
提供等協力を求めました。また、同大臣はこうした計画のうちの幾つかには、英国を始め
とする欧州諸国からシリアやイラクに渡航した外国人戦闘員が関与する可能性が高いと述
べています。また、北アイルランドでは、宗教的対立や英国からの分離をめぐる対立によ
り長年北アイルランド紛争が続いてきましたが、近年、平和プロセスが進み、自治政府も
再開されました。しかし、一部の過激派によるテロ活動の可能性は排除されません。20
15年4月現在、北アイルランド関連テロの脅威度は、北アイルランドにおいては「深刻
(severe)」(上から2番目、テロが発生する可能性が極めて高い(highly likely))とさ
れていますが、テロの対象は主に軍や治安機関に限られています。日頃から新聞やテレビ
等を通じ、関連情報に関心を払うとともに、公共交通機関を含めて公共の場所では不審な
人物や荷物に安易に近づかないなどの注意が必要です。
また、テロ事件等の発生現場に遭遇したり、巻き込まれて被害に遭うなどの不測の事態
もあり得ますので、日頃より当館ホームページの「安全情報」や各種安全対策マニュアル
(www.uk.emb-japan.go.jp/jp/ryoji/27_02_02_chui.html)等を十分活用するとともに、
家族、職場、日本の留守宅等と常に連絡がとれるよう心掛けてください。
(1)日頃の準備と心構え
①
連絡体制の整備
●家族内、企業内での緊急時の連絡方法等を日頃から決めておき、確認する。また、
日頃から所在や行き先を家族や同僚に知らせる。
●緊急時には、携帯電話や固定電話が不通になる可能性があるので、予め代替連絡手
段を考えておく。
●緊急連絡先を携帯電話のメモリー機能に頼ると、携帯電話の電池が切れた場合に利
用できなくなるため、メモにして常時携帯する。
●企業や団体は、独自の連絡網を作成しておく。
②
携行品及び非常用物資の準備
●英国においては、緊急事態が発生しても物資が不足する事態は基本的に想定されな
いが、買い物が一時的に困難になったり、一定期間自宅待機を余儀なくされる可能性
もあるので、食料、飲料水、乾電池などは、日頃からある程度買いそろえておく。(具
体的なリストは下記(3)を参照)
(2)緊急時の行動
①
基本的心構え
パニックにならずに平静を保ち、流言飛語に惑わされたり、群集心理に巻き込まれな
い。
②
情報の把握
大使館や総領事館からの情報発出手段は、ホームページや電子メールに限られている
ため、各自が現地報道やJSTV(日本語放送)、インターネットなど幅広い情報収
集を心掛ける。
③
大使館や総領事館への通報
本人、家族又は同僚等の生命、身体、財産に危害が及んだ場合、又は、及ぶ恐れがあ
るときは、すぐにその状況を大使館及び総領事館に通報する。
(3)緊急時に備えてのチェックリスト
□
パスポート、身分証明書
有効期限を確認する。パスポートは、有効期限が1年未満になると更新可能です。
□
現金、クレジットカード、有価証券等
□
自動車の整備
*常時整備をし、ガソリンは常に十分に入れておく
*車内に懐中電灯、地図、ティッシュペーパー等を常備する。
*自動車を持っていない人は、近くに住む自動車を持っている人と日頃から連携を
取り、必要なときに同乗できるよう相談しておく。
□
携行品の準備
*衣類や着替え
*履き物
*洗面道具
□
非常用食料
*自宅待機に備え、米、ミネラルウォーター、長期間保存の利く食料品などの食料
を備蓄し、自宅から他の場所へ移動(避難)する際は、その中からインスタント
食品、缶詰類、飲料水(水筒)等を携行する。
□
医薬品(常用薬や最低限の救急薬品)
□
ラジオ(電池使用のもの)
□
その他
懐中電灯、ライター、ろうそく,ナイフ・フォーク、缶切り、栓抜き、紙又はプラ
スティックの食器、簡単な炊事道具、固形燃料等
4.緊急連絡先
「999」
イギリス国内では、警察・救急車・火事の際の緊急の電話番号は、いずれの場合でも「9
99」(ナイン・ナイン・ナイン)です。
999をかけると(公衆電話からでもかけられコインは不要)交換台が出ます。警察な
ら“Police, Please”、救急車なら“Ambulance, Please”、火事なら“Fire Service,
Please”と言えば、それぞれの部署に繋いでくれるので、住所、氏名、電話番号、状態
等尋ねられたことを落ち着いてゆっくり話して下さい。
5.交通情報
(1)英国運輸省の統計によると、2013 年中の交通事故による死傷者は約 18 万 4 千人で、
うち死亡者は約 1,700 人です。
英国は日本と同じく車は左側通行ですが、一般的な法定速度は 30 マイル(約 48 キロ)
から 70 マイル(約 112 キロ)と、日本より高速での走行が認められており、ラウンド・ア
バウトや横断歩行者用ビーコン等の日本と異なるシステムもあります。また、必ずしも歩
行者優先という考えはなく、道路の通行や横断等には十分な注意が必要です。
なお、英国の交通法規である『THE HIGHWAY CODE』はインターネットから閲覧できます
し(https://www.gov.uk/browse/driving/highway-code)、書店や郵便局などで購入でき
ます。
(2)ロンドン市内中心部は「混雑課金(Congestion Charging)」エリアに指定されてお
り、平日の午前7時から午後6時までの間に同エリアで自動車を運転する場合、1日につ
き 11.50 ポ ン ド ( 2015 年 5 月 現 在 、 以 下 同 じ ) を 事 前 又 は 当 日 に オ ン ラ イ ン
(http://congestioncharging.tfl.gov.uk/b/pb/provideVRM.faces)、電話、指定された
商店やガソリンスタンド等で支払う必要があります。支払いが遅れた場合、翌日(又は翌
課金日)中は14ポンド、14日以内は65ポンド、28日以内は130ポンドで、それ
を過ぎると195ポンドと支払額が増加します。また、主要道路にはバスレーン(赤色の
車線)が設置されており、指定時間内(一般に平日のラッシュアワー時ですが、場所によ
り規制が異なります)にこの車線を一般車で走行すると130ポンドの罰金が課されます
ので注意してください。
(3)運転中の携帯電話の使用は禁じられています。ボイスメールに切り替えておく、ま
たどうしても通話する必要がある場合は道路脇に停車してから使用するようにして下さ
い。
(4)ロンドン市の地下鉄は、日本と違って乗越し精算は認められず、乗越しが見つかる
と罰金を取られるので注意が必要です。
(5)エディンバラ市内の主要道路にはバス・タクシー・自転車用の専用レーン
「Green Way(緑色の車線)」が設置されています。この車線では一般車の運転は禁止(但
し、時間帯によっては走行可能な場所もあるので標識をよく確認すること)されています
ので注意してください。
6.安全対策セミナー
2015年3月17日(火)に当館において、イギリスに本社を置くコントロール・
リスクス社の講師(東京支社の日本人と本社からの英国人)による、当地日系団体や企業
関係者を対象にした安全対策セミナーを開催しました。同セミナーにおける講演で、皆様
の安全対策に資する情報について以下のとおりお知らせしますので、参考にして下さい。
○安全対策におけるポイント
1.以下のような基本的な対策が事件に巻き込まれるリスクの「確率」を下げる。
(1)目立つ服装や行動を避ける。女性は素肌を過度に露出させない。
(2)不用意な外出・移動はしない。
(3)単独行動は避ける。
(4)関係者間(家族等)のみで翌日の行動予定の情報を共有する。
(5)通勤・外出ルートなど、第3者に予測可能な習慣的な行動を回避する。
2.「当たり前」のことをどこまで突き詰めてできるか。
3.「平時」に出来ることが、対策の9割
○一般犯罪
→
日頃からの備えや心構えが重要
1.軽犯罪は、警察に届出がされないものも多く、数字(統計)に表れないので注意。
2.犯罪手口の動画(YouTube 等)などを活用して、日頃からソフトターゲットになり
がちな家族への啓発も重要
3.自宅の安全対策における留意点
(1)引越後には、施錠の交換(前の住人が使用していた鍵を交換)を確認する。
(2)携帯電話等を寝室に常に準備し、就寝時には寝室に内側から施錠。不審な物音が
しても寝室の扉は開けない。
(3)既存のホームセキュリティーシステムを就寝時でも使用する。
(4)予期しない訪問者や業者を名乗る者を簡単に家の中に(玄関口のポーチであって
も)入れない。
○テロ関連
1.軍、警察、政府機関が主なテロの標的となっており、この他にも狙われやすい(ソフ
トターゲット)公共施設、ショッピングセンター等が潜在的な標的となる可能性があ
るので、留まる時間は出来るだけ短時間にする。
2.対IS連合諸国の大使館やそれらの諸国の関連施設へは出来るだけ近寄らない。また、
やむを得ず立ち入る場合には、必要最小限に止める。
3.英国における脅威
(1)警察や情報機関を含む政府内の対テロ組織が、積極的にテロリストの捜査・摘発
を行っているが、英国出身者によるテロ(ホームグロウン・テロやローンウルフ
型テロ)には注意を要する。
(2)英国の在留邦人等が直接的なISによるテロの標的となる可能性は低いが、英国
内のソフトターゲットに対するテロ攻撃などに巻き込まれることが最大の脅威。
(3)北アイルランドに関連した過激派によるテロの脅威は、同地域に限定されている。
(了)