3 一般研究発表 1-22 - 中四国放射線医療技術フォーラム

中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
1.位置決め画像撮影領域外における CT 用自動露出機構制御の基礎的検討
川崎医科大学附属病院
西山 征孝 佐内 弘恭
【目的】
位置決め画像を基に管電流値制御を行う方
式の CT にて、位置決め画像の撮影領域外にお
ける CT 用自動露出機構(CT-AEC)による画
像ノイズと管電流の制御について基礎的な検
討を行った。
【方法】
まず、CT 装置 Aquilion64(東芝)を用いて、
撮影範囲の異なる 3 種類の位置決め画像
(Fig.1)を基に CT-AEC を作動した状態にお
いて、人体ファントム CTU-41(京都科学)の
同一範囲を撮影した。次に、撮影で得た Axial
画像を personal computer に取り込み、DRIP
(フジ RI ファーマ)を用いて、肝臓、縦隔の
画像ノイズの計測を行った(Fig.2)
。
中央放射線部
村 正勝 池長 弘幸
柳元 真一
【結果】
位置決め画像の撮影領域内と外における画
像ノイズの比較を Fig.3 に示す。領域内に肝臓、
縦隔がある Scano A に対して、
領域外の Scano
B(肝臓)では有意な高値を、Scano C(縦隔)
は有意な低値を示した(p<0.001)
。次に、位
(Fig.3)位置決め画像の撮影領域内と外
における画像ノイズの比較
(Fig.1)位置決め画像と撮影範囲
(Fig.4)位置決め画像の撮影領域内と外
における管電流値の比較
置決め画像の撮影領域内と外における管電流
値変化を比較した結果を Fig.4 に示す。Scano
(Fig.2)ROI 設定位置の例
A に比べて、Scano B は、撮影領域外となる
220mm 以上の位置において、一定の低い管電
そして、Scano A を基準(撮影領域内)として、
流値を示した。一方、Scano C は、220mm 以
Scano B の肝臓、Scano C の縦隔(撮影領域外) 下において、一定の高い管電流値を示した。
における画像ノイズについて有意差検定
【結論】
(paired t-test)を行い評価した。また、管電
位置決め画像撮影領域外における CT-AEC
流値は、Virtual Place 雷神 Plus(AZE)にて
の制御は、領域内とは異なり、スライスごとの
管電流値の読み取りを行い、Scano A を基準に、 管電流値は一定になり、画像ノイズに有意な差
Scano B、C における位置決め画像撮影領域外
を生じることが確認された。
の管電流値変化について評価を行った。
62
中四国放射線医療技術第7号
2
一般研究発表
Dual Source CT による仮想単色 X 線画像の基礎的検討
田中千弘
久冨庄平
山口大学医学部附属病院
佐野裕一 楢崎亜希子 山口貴弘 菊地友紀
放射線部
上田克彦
monoenergetic 処理は診断用画像より CNR
【目的】
Dual source CT の Dual energy mode には
が約 1.2 倍高い画像を作成できた.
異なる 2 つの X 線エネルギーで仮想単色 X 線
【考察】
画像を作成する monoenergetic 処理がある.
Catphan ファントムの CNR は密度の異な
我々は,ファントム実験にてこの処理のコント
る同一物質間のものであるため,
ラスト変化を調べ,造影検査における有用性を
monoenergetic 処理で設定エネルギーを変え
検討した.
てもコントラストの変化がほとんどなく,
【方法】
CNR が最大となる設定エネルギーは
CT 装置は Siemens 社の SOMATOM
background の SD が最小となる 70keV とほぼ
Definition CT を用い,
ファントムは直径 14cm
等しくなった.しかし造影剤と水では物質が異
の円柱状容器に水を満たし,希釈ヨード造影剤
なるため,設定エネルギーを変えるとコントラ
を封入したシリンジを配置したものを自作し
ストも変化し,コントラストが大きくなる低エ
た.造影剤濃度は管電圧 120kV 撮影時に
ネルギー側へシフトしたと考える.
60HU,150HU,300HU,600HU になるもの
【結語】
の 4 種類である.密度の違いによる CNR 変化
同一物質間では設定エネルギーによりコン
と比較するため Catphan ファントムと自作フ
トラストはあまり変化しないが,異なる物質間
ァントムを Dual energy mode で撮像し
では最適な設定エネルギーを選択することに
monoenergetic 処理で設定できるエネルギー
より高くなるなど,monoenergetic 処理におけ
範囲 40keV から 190keV まで変化させ画像を
る基本的なコントラスト特性が明らかになっ
得た.仮想単色 X 線画像と通常診断に用いら
た.造影剤に適した設定エネルギーを選択する
れる Composite 画像(120kV 相当)の CNR を測
ことで,従来の診断画像よりも高い CNR を得
定し,比較検討を行った.
ることができることから,造影検査における
【結果】
monoenergetic 処理の有用性が示唆された.
造影剤 と水のコントラストは設定エネルギ
ーが高いほど小さくなったが,Catphan では,
設定を変化させてもコントラストはあまり変
化しなかった.
background の SD はどちらのファントムで
も約 70keV で最低となった.
CNR のピークとなる設定エネルギーは造影
剤濃度に依存せず一定であった.
CNR が最大となる設定エネルギーは自作フ
ァントムで 62keV,Catphan ファントムで
図 1. 相対値で比較した CNR
69keV となった.
63
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
3 鏡視下腱板修復術後の CT 撮影-主に骨孔観察方法について-
済生会山口総合病院
放射線部
大平知之
・閉じた例
背景
近年、 腱板断裂患者に対する治療方法として、
鏡視下腱板修復術(以下 ARCR)はスタンダ
術後
ードな方法として行われてきた。 ARCR は関
1 か月
節鏡視下で縫合糸のついたアンカーを用いて
修復する方法である。 そのアンカーへの強い
ストレスは骨孔の拡大やアンカーの緩みを引
術後
き起こし、再断裂の要因となるものと考える。
6 か月
そこで骨孔が閉じていることを確認する事が
重要となる。
調査対象
目的
小・中断裂症例 1) (アンカー数 1~2 個)
ARCR を施行した症例に対して、X 線 CT 検査
19 例(30 孔)48~88 歳(平均 67.2 歳)
を行い、骨孔の変化を調査した。
腱板修復群 2)
・・・
調査方法
腱板再断裂群 2)
・・・
15 例(23 孔)
4 例(7 孔)
ARCR を施行した症例に対して、術後 1 ヶ月、3
1)Cofield 分類…小断裂(1cm 未満)中断裂(1~3cm)
ヶ月、6 ヶ月、
(12 ヶ月)の 3~4 回、X 線 CT
2)菅谷分類…術後 6 カ月後の MRI にて判断
(mm)
検査を行い、VR 画像、MPR で骨孔の変化を観察
し、CPR の直交断で長径と短径を計測した。
の直交断面で計測をする 。
術後 3 カ月
腱板修復群
骨4
孔
(3
平
均2
)
・骨形成を観るには骨孔に対し 2~5mm 深部
術後 1 カ月
5
術後 6 カ月
1
0
(mm)
1か月
3か月
4
6カ月
12か月
腱板再断裂群
骨3
孔
(
平2
均
)1
0
1か月
・カラーマッピングを用い長径と短径を計測。
3か月
6カ月
12か月
結果
・修復群において骨孔は縮小傾向にあるが、
完全に閉じたものはなかった。
・再断裂群において骨孔は有意に縮小し、完
全に閉じているものが 5/7 孔あった。
64
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
4
CT を用いた内臓脂肪の測定法
―内臓脂肪蓄積状態の男女差の検討―
1) 岡山大学医学部 保健学科、2)岡山大学大学院 保健学研究科、3) 岡山大学
病院医療技術部 放射線部門、 4)篠﨑クリニック、5)岡山大福クリニック
高生 純 1)、上者 郁夫 2)、亀井山 弘晃 2)、山口 卓也2)、
三村 誠一 2)、赤木 憲明 3)、篠﨑洋二 4)、宮木 康成 5)
【目的】CT による内臓脂肪面積測定におい
(+d)の位置で最大であったが各断面での差
ては、臍部断面で計測する方法が一般的である。
が少なかった。全ての断面で正常群と肥満群の
しかし、高度肥満者の場合、臍自体が下垂して
間で有意差が認められた。
いることがあり、臍部断面の画像に骨盤部が入
【考察】昨年の検討結果から男性では臍部と修
り、脂肪面積に変動が生じる。そこで、肋骨弓
正位置の断面での内臓脂肪面積に有意差が認
下縁と上前腸骨突起部を結ぶ線の中点を修正
められたに対し、女性では有意差が認められな
位置と定義し、内臓脂肪面積を測定することが
かった。これは、男性と女性では内臓脂肪の蓄
推奨されている。昨年の研究で、臍部と修正位
積状態が異なるのではないかと推察し、本年度
置で内臓脂肪の蓄積状態について男女別に検
の研究では内臓脂肪の蓄積状態を調査するた
討したところ、両部位での内臓脂肪面積の変化
め上腹部から骨盤上部まで等間隔で 7 か所の
は、肥満の有無に関係なく男性の方が大きく変
断面で測定を行った。
化した。これは、男性と女性で内臓脂肪の蓄積
男性では肥満の有無にかかわらず、修正位置
状態が異なるためと考えられるため、今回は上
よりも高い断面(+3d)で最大となり、下方に
腹部から骨盤上部までに 7 か所の測定部位を
行くにしたがって減少していた。そのため臍部
設定し、男女差の検討を行った。
と修正位置の断面での内臓脂肪面積に有意差
【対象および方法】対象は、当研究室関連施設
が認められたと考えられる。
において肥満の精査目的で腹部 CT 検査を行っ
一方、女性の肥満群では臍部と修正位置の中
た 123 人(男性 64 人、女性 59 人)。使用機種
間(+d)の位置で最大で、この断面を頂点と
は GE 社製 Light Speed 16、測定ソフトは Aze
して上下ほぼ対称的に減少する分布を示した。
社製 Virtual Place Liverty (Ver 2.03)を用
このため女性では肥満の有無にかかわらず臍
いた。統計学的検討には Mann-Whitney 検定を
部と修正位置の断面での内臓脂肪面積に有意
用いた。
差が認められなかったと考えられる。
【結果】男性では肥満群、正常群ともに修正位
【結語】内臓脂肪の蓄積状態は男性と女性で
置よりも高い断面(+3d)で最大となり下方
は有意に異なり、最大蓄積部位も異なるため、
に行くにしたがって減少していた。全ての断面
メタボリック症候群診断のための CT による内
で正常群と肥満群の間で有意差が認められた。
臓脂肪面積測定部位は男女で異なる断面にす
一方、女性の肥満群では臍部と修正位置の中間
べきであると考えられる。今後の課題として男
(+d)の位置で最大で、この断面を頂点とし
女の内臓脂肪面積が最大となる断面と臍部断
て上下ほぼ対称的に減少する分布を示した。ま
面で 100cm2 を肥満の基準とした場合のメタボ
た、女性の正常群では臍部と修正位置の中間
リック症候群診断能の比較が必要である。
65
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
5 EGS5 による CT シミュレーション 第一報 線源
医療法人 聖比留会 セントヒル病院 放射線部
船越 猛,渡邉 篤史,菅原 庸介
【目的】
【まとめ】
今回我々は CT 検査における被ばく線量評価に
Horst 等のデータと比較すると低エネルギー
使用するため,モンテカルロ手法である EGS5
成分が多く含まれたが,近似式により求めたス
を用いたコード作成を試み,線源及びCTシミ
ペクトルとは一致した.
ュレーションの妥当性を検討した.
円筒銅フィルタ透過線量は線量計の誤差範囲
【方法】
内であり,エネルギー特性が解ればより精度の
1)EGS5 による診断用 X 線管のシミュレーシ
向上が期待できる.
ョ ン コ ー ド を 作 成 し 文 献 デ ー タ ( Horst
ボウタイフィルタ形状の組込みが今後の課題
Aichinger)と比較した.
である.
2)CT 用に線質硬化フィルタを追加し Tucker
の計算式近似と比較した.
120kV 7°Re/W 1.2mmTi-filter
0.07
3)円筒銅製フィルターの中心に CT 用線量計
Tucker-24
EGS5
Relative intensity
0.06
を配置したCTシミュレーションコードを作
成し実測値と比較した.
【条件】
0.05
0.04
0.03
0.02
0.01
CT:フィリップス・メディカル・システムズ社
0
製 Brilliance 64,線量計:NERO mAx 8000 型 X
0
20
40
60
線出力アナライザ,金属フィルタ:銅板(C1220P
120
120kV Cu cylind. 11.6cm
形状作成:CGVIEW,焦点サイズ:1 ㎜×1 ㎜,
1
0.9
加速電子数:2×109 個( 3.2×10-7mA),光子
Relative dose
検出面:焦点より 6 ㎝,0.8 ㎝×0.8 ㎝,光子
数:9819 個(0.00295 sr)
( 3.32×106 at 1sr)
,
CT コーンビーム 1 mAs の時の線源光子数は
1.73×10
100
図 1
0.1,0.5,1.0,1.5 ㎜),EGS5:Linux PC,体系
11
80
photon energy (keV)
0.8
CT chamber
0.7
EGS(10 keV)
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
個
0.1
0
【結果】
0
0.5
1
1.5
1)Horst 等のデータと比較すると低エネルギ
2
Cu mm
2.5
3
3.5
4
図 2
ー成分が多く含まれた.フィールド内でのスペ
参考資料
クトルの変化は見られなかった.
Horst Aichinger 等:
「診断X線の基礎」笠井
2)線質硬化フィルタを追加したスペクトルは
俊文・加藤博和監訳
Tucker の近似計算値と一致した.(図1)
EGS 研究会:http://rcwww.kek.jp/egsconf/
3)円筒銅フィルター透過線量の相対値に対す
X線スペクトル近似計算式:
る誤差は 0.5 ㎜で-6.5%,線量計のエネルギー
http://www.fujita-hu.ac.jp/~hid-kato/free
特性(30keV~)を考慮すると-5.4%であった.
soft.html
(図2)
66
中四国放射線医療技術第7号
6
一般研究発表
EGS5 を用いたX線CTシミュレーション(第 2 報
渡邉
被曝)
セントヒル病院 放射線部
篤史、船越 猛、菅原 庸介
【目的】
【結語】
現在、MDCT が普及し、CT 検査時の被ばく線量
EGS の絶対線量が 30%低いことがわかった。線
への関心が高まっている。そこで X 線CT検査時
源光子数の精度向上が今後の課題である。実測
の被ばく線量評価に対応できるモンテカルロコー
値に近づくようなボウタイフィルタの組込みが課題
ドの開発を試み、線量評価の可能性を検討した。
である。今回は CTDI での比較を行ったが、将来
【方法】
的には、散乱線の強度分布や、任意の点の吸収
モンテカルロ計算には EGS5 コードを用いた。第 1
線量などの評価に利用したい。線量計やファント
報の線源データを用い、シングルスキャンの CT
ム、有償ソフト等、購入が難しい施設も多いかと思
シミュレーションコードを作成した。頭部用及び体
う。そのような施設でもパソコンさえあればできるの
幹部用 CTDI ファントムを組み込んだシミュレーシ
は大きなメリットである。今後も課題をクリアしてい
ョンを行い、実測データ、CT コンソール表示と比
き、より臨床で使える形にしたい。
較した。EGS のヒストリー数は 2×109 で行った。
頭部
【結果】
80
CTDI の比較を行うと、体幹部用ファントムでは、
70
実測値、コンソール表示値、EGS ともに近い値を
60
50
吸収線量(mGy)
示した。しかし、頭部用ファントムでは EGS が約
30%ほど低い値を示した。次に中心と周辺の各点
における電離長 100mm に換算した吸収線量を比
40
実測
30
EGS
20
10
較した。頭部のグラフを図 1 に、体幹部のグラフを
0
center
図 2 に示す。EGS では体幹部用ファントムの中心
0時
で約 30%低い結果となった。
3時
6時
9時
図1
【考察】
体幹部
ボウタイフィルタの影響が少ない領域において、
25
光子数が低く見積もられていると考えられる。今回
20
吸収線量(mGy)
単位面積当たりの光子数を線束中心部の光子数
に換算したが、この際の計算精度が大きく影響し
ているものと思われる。体幹部の CTDI が一致し
たのはボウタイフィルタの有無によるものと思われ
15
実測
EGS
10
5
る。中心で 30%少ない線量を、ボウタイフィルタを
0
center
組み込んでいない周辺線量が補ったためと考え
られる。
0時
6時
図2
67
3時
9時
中四国放射線医療技術第7号
7
一般研究発表
CTの被曝線量計算(第1報)モンテカルロ計算
浜脇整形外科病院
丸石博文
木原秀喜
【目的】X 線 CT による被曝線量を DLP から実効線量を求める方法では、体型による変化や臓器線
量は求まらない。そこで単純な形状を組み合わせて人体ファントムを作りモンテカルロ法で計算
する方法を検討した。ここでは、撮影部位ごとに体型が変化したときの DLP-実効線量換算係数(以
後
換算係数)kの変化を報告した。
【方法】人体を体幹部(両肺を含む)
、乳房、頭頸部、両四肢の合計 10 個の楕円体で構成した。
肺は密度 0.25 の水、他は全て密度1の水とし、このファントムの各臓器位置に合計 169 点の線量
計算点を配置した。得られた各臓器の平均線量に 2007 年勧告の組織荷重係数をかけて実効線量を
求めた。モンテカルロ法ではX線光子のエネルギーのサンプリングとその飛跡をトレースするだ
けである。X線発生点と散乱点から線量計算点へ届く光子のエネルギーとフルエンスを計算し、
これに水の質量エネルギー吸収係数をかけることでその座標の吸
収線量とした。なお計算には、モンテカルロ法により求めた
CTDIp,CTDIc,CTDIw が、装置付属のこれらのデータと一致するよ
うなX線出力およびボウタイフィルタの形状を用いた。なお今回
の計算に用いたファントムは右の表の3タイプである。
【結果・考察】Mの体型のファントムの胸部では、120kV,1360mAs,
ビーム幅 15mm の撮影条件で 4.7mSv、DLP が 189mGycm このとき換
体型 身長 cm 体重 kg
SS
150
34
M
170
64
LL
180
99
撮影部位 体型
胸部
SS
M
LL
腹部
SS
算係数 0.025 であった。右の表に、撮影部位・体型ごとの換算係
数を示す。下の図は、ビーム中心から±56mm のビーム幅でビーム
幅の中心が体軸に沿って移動したときの換算係数の変化を示した。
それぞれのピークは、足方から男性生殖腺、女性生殖腺と膀胱、
胃と肝臓、肺と乳房、甲状腺
であり、第2と3のピークは
0.06
結腸を含む。いずれの部位も
0.05
体型が小さいほど換算係数
は高い。これは体型が小さい
量が高くなるからである。
今回の計算では、一般に用
いられている換算係数 0.015
mSv/mGy・cm
ほど DLP 当たりの平均臓器線
0.04
SS
56
56
0.03
M
0.02
LL
0.01
では実効線量を過小評価す
ることが示された。
0.00
68
骨盤
M
LL
SS
M
LL
k
0.036
0.025
0.018
0.031
0.020
0.014
0.024
0.016
0.011
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
8 CTの被曝線量計算(第 2 報:線量計算ソフトの開発)
浜脇整形外科病院
【目的】
木原秀喜
丸石博文
射録から得られる照射条件を入力することで
X 線 CT の被曝線量を当院の装置にマッチし
任意の体型や撮影における実効線量と臓器線
た形で計算する方法を考案した。計算には、身
量が計算できた。
長、体重、撮影範囲、ビーム幅、FOV、mAs
また、今後の課題として当院の装置のAEC
値のパラメータを入力することにより臓器線
の対応や小児ファントムの作成など行なって
量および実効線量が得られるようにした。
いきたい。
なお、使用した CT 装置は東芝製 Asteion4(4
列)である。
【方法】
身長 150,160,170,180cm の4種類に、ロー
レル指数(肥満度指数)100,110,130,152,170
の5種類の体重を組み合わせ、合計20体型の
ファントムを作成した。そして、それぞれのフ
ァントムを3種類の FOV でモンテカルロ計算
(第一報)により臓器線量を計算した。
データは、X 線ビームの入射範囲(スキャン
方向)を 16mm とし、これを 16mm づつ体軸
方向に移動して、各位置における 1mAsあた
図1
りの臓器線量を求め、データとした。
データ数は、ファントム数(20)×FOV(3)×
Z 軸分割数(64)×臓器数(15)となる。
任意のパラメータからの計算方法として、身
長方向とローレル指数方向の2次元の内挿を
行い、任意のデータを求めた。
これらのデータを表計算ソフトのエクセル
に読み込み、前記の6種類のパラメータ入力
(図 1)により任意の体型およびスキャン条件
の臓器線量と実効線量が計算できるようにし
た。
(図 2)
【結果・考察】
CT で実効線量を計算するには、市販のソフ
トとして ImPACT を用いる方法や、DLP-実効
線量換算係数を用いる方法があるが、身長や体
図2
重の補正は難しい。
今回の方法ではこれらの補正をし、当院の照
69
中四国放射線医療技術第7号
9
一般研究発表
当院における目的別CT装置の被曝線量と画質の現状調査
香川大学医学部附属病院
放射線部
谷井 喬、松村 宣良、笹川 泰弘、片山 博貴、門田 敏秀
三木 章弘、續木 将人、大久保 正臣、岩﨑 孝信、加藤 耕二
1.2
CT1
ヘリカル 2mm
CT1
コンベ 4mm
CT1
ヘリカル 5mm
PET/CT
ヘリカル 3mm
SPECT/CT ヘリカル 3mm
治療
コンベ
3mm
1
M
0.8
0.6
T
0.4
F
0.2
0
0
2
4
6
fig.1 頭部 MTF
8
10
12
空間周波数(cycles/cm)
低コントラスト分解能の評価では頭部で通常の傾向
とは異なり線量が低いものがよく、高いものが悪い結
果となっており、スライス厚で評価しても厚いものほ
どよいという傾向はなかった。
(fig.2)
コントラスト(%)
【目的】近年、CT は日常診療にかかせないものとなっ
ており、CT 単独での使用のみならず他のモダリティと
フュージョンして使用する頻度が高くなってきた。各
モダリティ間でのCTの使用目的が異なるため、線量
や画質は統一化されていない。そこで今回、当院にお
ける各装置の線量と画質を把握し検討したので報告
する。
【方法】当院で使用している頭部および腹部の撮影条
件にて CT 性能評価用ファントムを撮影し、低コント
ラスト分解能、MTF について評価を行った。装置に表
示される CTDIvol と低コントラスト分解能、MTF につ
いて評価した。
【使用機器】
・CT 性能評価用ファントム
Catphan600 / ファントム・ラボラトリー社
・解析用ソフト
Auto QA Lite / IRIS 社
・被曝線量推定ソフト
ImPACT+SR250/ イギリス放射線防護庁
【結果および考察】
治療CT
CT1
CT1
CT1
PET/CT
SPECT/CT
1
0.8
0.6
コンベ 3mm
ヘリカル 2mm
ヘリカル 5mm
コンベ 4mm
ヘリカル 3mm
ヘリカル 3mm
0.4
0.2
0
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
fig.2 頭部低コントラスト分解能
13
14
15
16
Diameter(mm)
コントラスト(%)
腹部では治療計画用 CT を除き、線量が高くスライス
厚が厚いものが低コントラスト分解能がよい結果と
なり、CT2 が一番よい結果となった。(fig.3)
table.1 頭部撮影条件
1.2
PET/CT ヘリカル 3mm
1
0.8
0.6
0.4
3mm
治療CT
コンベ
CT1
ヘリカル 5mm
IVR/CT
ヘリカル 5mm
CT2
ヘリカル 5mm
0.2
0
2
3
4
5
6
7
8
9
10
fig.3 腹部低コントラスト分解能
11
12
13
14
15
16
Diameter(mm)
IVR/CT は診断用 CT 装置と同様の線量が照射されてお
り、複数回撮影することを考慮すると、今後は画質を
担保した上で線量低減の検討の必要が示唆された。
核医学の CT は他の CT と比較して線量が低い事がわか
った。これは主に吸収補正等に使用されるためである
と考える。MTF は低く、低コントラスト分解能が優れ
ていたため、ノイズを抑えるフィルタが選択されてい
ると考えられる 。
治療計画用 CT は頭部、腹部条件ともに最も CTDIvol
が高くなっている事がわかった。MTF は診断用 CT と同
程度だが、低コントラスト分解能は低い結果となった。
【まとめ】日常使用している撮影条件において、性能
評価用ファントムを用いて線量と画質について調査
した結果、被曝線量および MTF・低コントラスト分解
能の結果も異なっていることが判った。
table.2 腹部撮影条件
※印は ImPACT にて算出した。撮影条件において頭部
CTDIvol では治療 CT が最も高く、腹部 CTDIvol でも治
療 CT が最も高かった。
(table.1,2) MTF は 10%にて
評 価 を 行 っ た。 頭 部 では CT1 の 2mm が 一 番よ く
SPECT/CT、PET/CT が他の CT と比較して、低い結果と
なった。
(fig.1)腹部では PET/CT、治療 CT が 10%で
評価が不可能であった。評価可能なものでは CT1 が一
番よく、IVR/CT が一番低い結果となった。
70
中四国放射線医療技術第7号
10
一般研究発表
CT 透視における従事者への被曝防護-CT 透視の散乱線量の把握-
岡山大学病院 医療技術部放射線部門
○山内 崇嗣,市川 大樹,山口 卓也,大西 治彦
若狭 弘之,小林 久員,西田 直樹,稲村 圭司
60°
目的
東芝製 CT 装置,Radcal 社製チェンバ,京都
30°
科学社製胸部ファントムを用い,室内,従事者
が立つ位置,術者の手指付近の CT 透視使用時
左
頭
の散乱線量分布の測定と把握すること。
足
0°
0°
方法
室内散乱線量について,ガントリ中心の高さ
にて,体軸方向を 0°とし頭側 0~30°,足側
30°
0~60°を 15°毎に測定した。0.8,0.4,0.2,
右
0.1 [μSv/s]の分布図を作成した。
従事者が立つ位置について,足側の右側 45°
(術者位置)
,頭側 0°(看護師位置)の 2 方
図 室内散乱線分布図
60°
向にて,60~120cm を 20cm 毎に測定した。
吸収が考えられる。60°方向が低くなった原
高さは床から 80,115,150cm で行った。
因は,チェンバの一部がガントリに被っており,
手指付近について,体軸方向 5~25cm,左右
そこで吸収されたと考えられる。
方向それぞれ 0~20cm を 5cm 毎に測定した。
従事者の位置について,80cm が低くなった
ファントムに接する位置にて測定を行った。
原因は寝台による吸収が考えられる。術者位置
結果
で 115cm,看護師の位置では 150cm が高くな
室内散乱線量について,図のように左右では
った原因は,高さ方向でも寝台やファントムに
ほぼ等しく,頭側よりも足側が低い分布となっ
よる吸収の影響があることが予想される。
た。15°方向が若干低くなり,60°方向では
手指付近について,スライス面に近い位置で
明らかに低い分布となった。
は中心が高く,離れると中心と辺縁の差が少な
術者の位置について,術者,看護師位置とも
くなった原因は,近い位置ではファントムや寝
80cm が低く,術者位置では 115cm,看護師位
台による吸収の影響が小さい事や距離の逆二
置では 150cm が高かった。
乗則による散乱線の平滑化が考えられる。
手指付近について,左右方向はほぼ等しい分
結語
布が得られた。体軸方向に 5~15cm では中心
今回の測定で,散乱線量分布が把握できた。
の線量が高く,15cm~では中心と辺縁の差が
可能な限りガントリから離れるべきであるが,
少なくなる傾向がみられた。
術者は離れることが困難であるため,使用可能
考察
な防護は行うべきである。特にガントリに近く
室内散乱線量について,頭側よりも足側が低
なる手指の防護も検討すべきである。これらの
く,15°方向が低くなった原因は,主に足側
事を放射線技師が把握,管理して他の従事者へ
に配置された寝台やファントムによる散乱線
伝える事が必要である。
71
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
11 CT透視における従事者への被曝防護~
CT 透視における従事者への被曝防護~CT
透視における従事者への被曝防護~CT透視における被曝低減についての検討~
CT 透視における被曝低減についての検討~
岡山大学病院 医療技術部 放射線部門
○市川大樹、山内崇嗣、山口卓也、大西治彦
若狭弘之、小林久員、西田直樹、稲村圭司
【目的】
線量率[μSv/s]
CT 透視における術者の手指被曝を低減させ
るために、簡易的に行える防護方法について検
討した。
【方法】
撮影スライスを胸部ファントムの気管分岐
部に合わせ、防護方法を変化させ CT 透視を行
い線量率を測定した。測定点はスライス面から
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
エッジ固定
エッジ移動
10
尾側方向に 10~20cm、体軸から左右方向に各
15
距離[cm]
20
図1 ①と②の比較
0~20cm、5cm 毎に測定を行った。防護方法
線量率[μSv/s]
は以下の 6 種類で行った。
①エッジ有りプロテクタをスライス面から
5cm 尾側に固定、②エッジ有りプロテクタを
スライス面から 5cm、10cm、15cm と尾側に
移動、③エッジ無しプロテクタにおいて2と同
様の条件で測定、④エッジ有りプロテクタにエ
ッジ無しプロテクタを重ね、0.50Pb 当量とし
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
エッジ有り
エッジ無し
10
て1と同様の条件で測定、⑤エッジ無しプロテ
クタを腹部に追加し、1と同様の条件で測定、
15
距離[cm]
20
図2 ②と③の比較
⑥エッジ無しプロテクタを寝台側に追加し体
ことが分かり、また、エッジ部をできるだけス
を一周する形にして1と同様に測定した。
ライス面に近づけて使用することで遮蔽効果
【結果】
が高いことも証明できた。①、④、⑤、⑥でほ
6 種類の防護すべてに置いて、左右方向の変
とんど差がなかったため、患者の負担や準備も
化はほとんど無かった。
考慮してエッジ有りプロテクタ一枚で十分で
①と②を比較するとエッジをスライス面に
あるといえる。また、エッジ無しプロテクタで
近い位置で固定させた方がより遮蔽できてい
あっても、エッジ有りには劣るが遮蔽効果はあ
るのが分かる(図1)。②と③を比較するとエ
るため、使用することが望まれる。
ッジによる遮蔽効果が高いのが分かる(図2)
。
【結論】
①、④、⑤、⑥ではほとんど差は無かった。
エッジ有りプロテクタを 5cm で固定させた
また、防護無しの状態と比較すると線量率は①
ときが最も簡易的で高い遮蔽効果が得られ、術
で 7 分の 1 程度、③においても 2 分の 1 以下
者の手指被曝を低減させることが可能である
になった。
ことが分かった。有用性を理解した上で術者に
【考察】
提言することが重要である。
エッジにより後方散乱腺が遮蔽できている
72
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
12 高濃度造影剤(リピオドール)使用時におけるコーンビーム CT の
最適条件の検討
1)
川崎医科大学 附属川崎病院
中央放射線部 2)川崎医療短期大学 放射線技術学科
藤井政明1) 田淵昭彦1)2) 荒尾信一2)
【目的】Angio 装置搭載のコーンビーム CT は
可変し,焦点-アイソセンター間距離を一定に
肝臓 IVR において簡便に 治療効果を判定可
して撮影を行った.撮影条件管電圧:113 KV
能である.しかしながら高濃度造影剤(リピオ
管電流:500 mA 可変条件:フィルター1.8
ドール)の集積はアーチファクトを発生させ評
mm Al,0.2・0.5 mm Cu, FOV 8・12 inch,
価を困難にする場合
SID 110・120 cm
がある.今回、我々は
【結果 2】
普及型装置を用い可
変できるパラメータ
ー《付加フィルター・
FOV・SID》の組み合
わせにより,高濃度造影剤による画質劣化を抑
制するための最適パラメーターを検討した.
【使用装置および使用器具】Angio 装置:
INFX-8000V(東芝)FPD 12*12inch・ワークス
テーション(WS)
:ZIO Station 2・自作ファ
すべての場合において 0.5 mm Cu が,実寸径
ントム:高濃度造影剤(480 mgI/ml)を封入した
に近い値を示した(Fig. 2)
.
直径 8.9 mmφ高さ 39.0 mm の円柱ファント
【考察】計測径と実寸径の違いは,アーチファ
ム
クトや,SID・FOV による幾何学的因子によ
【実験 1】a.水中に
るボケ・歪が含まれると考えられる.1.フィル
ファントム長軸をベッ
ターに 0.5 mm Cu を使用することで実寸値と
ドと垂直,b.長軸を
の差が少なくなった.これは低エネルギー成分
ベッドと平行に固定し撮影を行った(Fig. 1)
.
が吸収され実効エネルギーが上がることによ
ファントム中心がアイソセンターとなるよう
りアーチファクトの影響が抑えられたと考え
固定した.得られた画像より a.WS で MPR 画
られる.2 .
FOV を 8 inch にすることにより,
像を作成しファントム直径を半値幅で測定し
実寸に近い値を示した.これは最少ピクセルサ
実寸との差を比較した.計測は X 線管の軌道
イズが小さくなり,分解能が向上したためであ
に沿って生じるアーチファクト方向,それに直
ると考えられる.3.SID においては一定の傾
交する方向とした.b.同様に高輝度アーチフ
向が見られなかった.これは 10cmの差では
ァクトが発生した AP 方向,低輝度アーチファ
ほとんど影響がないと考えられる.
クトが発生した 4-10 時方向の直径を半値幅で
【まとめ】本結果より,高濃度造影剤使用時に
測定し実寸との差を比較した.
おける最適条件はフィルター: 0.5mm Cu
【結果 1】ファントム長軸をベッドと垂直に置
FOV: 8 inch, SID: 120cmであることが示唆
いた場合,実寸値との差が大きく生じた.
された.しかしながら FOV を小さくすると治
【実験 2】実寸と差が大きかったファントムの
療範囲をカバーできなくなる恐れがあり,使用
置き方に対して,フィルター・FOV・SID を
には十分に注意が必要であると考える.
73
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
13 低線量撮影を目的とした逐次近似法による画像再構成法の基礎的検討
倉敷中央病院 放射線センター
中川 美智子
目的
と FBP を比較した場合は mAs 値の変動にかかわ
近年、被ばく低減に向けた技術の開発が目覚
らず、ほぼ同じ形状を示した.しかし、再構成
しく、当院でも逐次近似法による画像再構成を
FOV200 で比較した場合は、IRIS は FBP と比べ
搭載した CT 装置(シーメンス社製 SOMATOM
て mAs 値が小さくなるにつれ、コントラストが
Definition As)が導入された.今回導入され
つきにくい傾向にあった.
た逐次近似による再構成法 IRIS(Interative
FOV200 500mAs
180
構成法 FBP(Filtered back-projection)の物
160
理特性の違いを理解し、臨床で使用することを
140
CT Value(HU)
Reconstruction in Image Space)と従来の再
目的に基礎的検討を行った.
使用機器
CT 装置:Siemens 社製 SOMATOM Definition AS
120
100
B36
80
I36
60
40
逐次近似を用いた画像再構成法:IRIS
0
5
10
15
Position
方法1
同一条件で撮影したファントムを IRIS と
FBP で画像再構成を行い MTF(ワイヤ法)と NPS
FOV200
180
について比較を行った.
50mAs
線量を 50mAs~500mAs に変化させ、その他の
撮影条件を一定にし、ファントム撮影を行った.
IRIS と FBP で CT 値と SD、
CNR の比較を行った.
CT Value(HU)
160
方法2
140
120
100
B36
80
I36
60
また、ファントム画像の模擬資料上にプロファ
40
イルカーブをひき、IRIS と FBP の比較を行っ
0
5
10
15
Position
ファントム画像の再構成は FOV200 と FOV50
た.
で行い、それらの比較も行った.
考察
結果1
IRIS は FBP と比べて空間分解能はほぼ同程
MTF は FBP と IRIS でほとんど同じ形状とな
度で、SD の改善が認められた.これより、IRIS
った。NPS は IRIS で値が小さくなり、中間周
は線量を下げて撮影した場合でも FBP と比べ
波数で IRIS と FBP の差が大きくなった.
て画質の改善が期待でき、被ばく低減可能であ
結果2
ることが示唆される.
CT 値は IRIS、
FBP ともに変化せず、SD は IRIS
しかし、再構成 FOV が大きく、かつ低線量に
を使用することで改善が認められ、CNR も向上
なるにつれ、コントラストの低下が認められた.
した.IRIS は FBP と比べ、最大 47.6%尐ない
これより、IRIS の効果はピクセルサイズに依
線量で同等の SD が得られた。
存する可能性があると考える.
プロファイルカーブは、
再構成 FOV50 で IRIS
臨床使用にはさらなる検討が必要である.
74
中四国放射線医療技術第7号
14
一般研究発表
連続 CT 画像再構成法の拡張による効果
山口
雄作1),藤本 憲市2),吉永 哲哉2)
1)徳島大学大学院保健科学教育部
2)徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
【背景】
医用 CT 画像の再構成には逆投影法または逐次
法が一般的に用いられているがそれぞれ長所,短
所がある.筆者等は,CT 逆問題を微分方程式系
の初期値問題に帰着させ,解に沿った目標関数値
の単調減少が保証された画像再構成法(連続時間
CT 画像再構成法または連続法と呼ぶ)を提案し
ている.連続法の勾配系は非線形微分方程式で記
述され,電子回路実装により高速演算が可能であ
る.連続法は,雑音や欠損が含まれる非適切な状
況においても,逆投影法に比べて品質の高い再構
成画像が得られる.さらに,計算機メモリ容量の
削減やハードウェア縮小のため系をいくつかのブ
ロックに分割し,部分勾配系を巡回的に切り替え
ながら解軌道を接続させる方法(ブロック連続
法)も提案している.
【目的】
本研究において,連続法を拡張した微分方程式
系の性質を検討する.提案法(拡張連続法と呼
ぶ)は,少数方向の投影に基づく再構成問題の解
法として有効であると考えられ,X 線 CT におい
ては被ばく量の低減に効果があると期待される.
拡張した微分方程式系にみられる平衡点の安定性
を理論的に証明し,数値実験により拡張の効果を
検討する.
【方法】
二重 Kullback-Leibler ダイバージェンスをリ
アプノフ関数に定義し,真値に対応した平衡点が
漸近安定であることを理論的に証明する.また,
濃度が 2 値および多値のディジタル・ファント
ムを対象にした少数方向投影からの再構成実験に
より,収束性や画像の性質を従来の連続法および
逆投影法と比較する.
【結果】
孤立平衡点に関するリアプノフ関数の候補とし
て,二重 Kullback-Libler ダイバージェンスを考
える.平衡点を除くある部分空間内に系の初期値
を与えた場合,解に沿った微分は負値となり,二
重 Kullback-Libler ダイバージェンスはリアプノ
フ関数になることから,目標関数の単調減少性お
よび平衡点の漸近安定性を証明できた.
2 値のファントムを対象とし,解軌道に沿った
リアプノフ関数(目標関数)値変化の数値例を図
1に示す.横軸は時間,縦軸は目標関数値である.
投影方向数を変化させて検討を行った結果,投影
75
方向数によらず,図の時間範囲内において目標関
数値の単調減少が確認できた.
次に,画像再構成の結果を図 2 に示す.再構
成画像および目標関数値より比較を行った結果,
提案法は少数方向投影による2値画像に有効であ
ることがわかった.また,多値画像においても,
従来法と同等以上の品質であることがわかった.
V (x)
t
図1
目標関数 V(x) の収束性
(投影方向数は,黒い実線:3,赤い実線:6)
ファントム
拡張連続法
連続法
逆投影法
1372.8
2853.3
∞
674.59
690.24
∞
378.39
418.34
∞
328.97
355.69
∞
3方向投影
6方向投影
9方向投影
18方向投影
図2
再構成画像
(画像下の数値は目標関数値を示す)
【まとめ】
拡張連続法の理論的検討を行い,目標関数の単
調減少性および平衡点の漸近安定性を示した.数
値実験の結果,画像濃度が 2 値の場合だけでな
く,濃淡画像においても拡張連続法の有用性が明
らかになった.
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
15 逐次近似法を応用した画像再構成法における最適ブレンド率の推定
貝原 雄也 1) ,山口 裕之 1) ,下土居 一 1),梶岡 雄一 1)
皿田 勝裕 1) ,松村 祐輔 1) ,重田 祐輔 1),藤川 光一 2)
1) JA 広島総合病院 中央放射線科
2) JA 広島総合病院 画像診断部
【結果】
【背景】
同等の SD 値となるように撮影し ASIR
逐次近似法を応用した画像再構成法で再
構成した画像(ASIR 画像)は FBP 法で再構
画像と FBP 画像の NPS を比較すると,
成された画像(FBP 画像)より画像ノイズが
ASIR20%までは両者の曲線は一致したが,
低減されるため撮影線量低減が可能である
ブレンド率が 30%を超えると両者の曲線
が,両者の画像は印象が異なるため,臨床
は乖離し始め,50%以上では異なる曲線と
では ASIR 画像と FBP 画像とを一定の割合
なった.両者の曲線下面積は,ASIR40%ま
でブレンドして使用している.
では有意差は認められなかった(図 1).
【目的】
ASIR 画像と FBP 画像のノイズ成分につ
いて FBP 画像を基準として物理的に比較
評価し,両者間において画像違和感が少な
く線量低減可能な ASIR のブレンド率(最
適ブレンド率)を推定した.
【使用機器】
LightSpeed VCT vision (GE healthcare)
装置付属 QA ファントム,画像解析ソフト
図1
最適ブレンド率の推定
【考察】
【方法】
QA ファントムを 50mA で撮影し,ASIR
FBP 画像の NPS は撮影線量が増加する
ブレンド率を 10%から 100%まで変化させ
にしたがって低周波から高周波まで均一に
て再構成を行った(ASIR 画像).ASIR 画像
低下しているが,ASIR 画像の NPS は低周
の均一性評価部分の SD 値を測定し,FBP
波成分が低下せずに中周波から高周波にか
法において同一の SD 値が得られる 10 通り
けて急激に低下することが,画像違和感の
の線量を算出して,QA ファントムの撮影
原因と考えられる.今回の曲線下面積を用
を行った(FBP 画像).画像解析ソフトを用
いた評価方法では,曲線の交点左右の曲線
いて,ASIR 画像および FBP 画像の NPS
に囲まれた面積が等しくなると両者の差は
曲線を取得した.NPS 曲線の形状の変化が
検出不可能になることが問題点である.
画像違和感として現れると仮定して,定量
【結論】
的に評価するため曲線下の面積を算出し,
画像違和感が無く,且つ最もノイズ低減
有意差検定(unpaired t-test) を行った.
効果が大きい最適ブレンド率は 40%である.
76
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
16.逐次近似法を応用した再構成画像におけるノイズ低減効果の基礎的検討
益田地域医療センター医師会病院 放射線技術科
永戸信吾、道下貴規、寺井真洋、青木早和、山田和幸
[目的]
逐次近似法を応用した画像処理 Intelli IP を用
い、ノイズを低減したファントムの画像特性につ
いて基礎的検討を行った。
〜Intelli IP〜
・分解能の低下を抑制しながらノイズ除去を行う。
・撮影部位ごとにチューニングされたフィルタを
用いて画質を調整する。
・最適化されたプリセットパラメータ(アダプテ
ィブ・フィルタ 2:AF2)は A〜E の 5 段階に分け
④ NPS の変化は?
られ、E が最もノイズ低減された画像となる。
AF2 の度合いに応じてノイズが抑制されていた。
[方法]
NPS からは中間周波数を中心に効果が表れている。
① 水ファントムを撮像し、再構成を AF2 ごとに
行い SD 法・CT 値を比較した。
② ワイヤーファントムを撮像し、MTF を測定し
た。
③ 水ファントムの撮像にて NPS を測定した。
[使用機器]
CT:日立メディコ社製 64 列 MSCT「SCENARIA」
水ファントム:Φ230mm
ワイヤーファントム:自作
[結果]
⑤ 視覚的評価
① SD 値の変化
腹部領域を撮像し、目視により確認できた。
AF2 を変化に伴い SD 値は下がっていった。
[考察]
Nor と E を比べると約 20%の SD 値の改善
(SD15)。
AF2 を変化させると SD 値、NPS は低減する。
Nor と E を比べると約 18%の SD 値の改善
(SD12)。
AF2 の強調度合いを変化させても CT 値、MTF は変
② CT 値の変化は?
化しなかった。
AF2 を変化させた時の CT 値の変化はなし。
視覚的にもノイズ低減処理の効果を確認できた。
均一性の条件(中央値より 2HU 以内)を満たして
[まとめ]
いた。
画像処理でノイズが低減し NPS の改善がみられた。
③ MTF の変化は?
強調処理に伴い被ばく線量の低減が期待できる
AF2 を変化させた時に MTF は変化しなかった。
ため、低線量撮影時や体格の良い被検者の撮影時
などに有効。一方、画像処理の度合いによっては
解像度を低下させ、視覚的な印象が異なることも
あるため注意が必要である。
77
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
17 量子ノイズフィルタを用いた画質補償についての基礎的検討 倉敷中央病院放射線センター
福永 正明 萩原 芳明 中川 美智子 守屋 隆史 山本 浩之 小西 由美
た. NPS は QDF が強いほど低下し,高周波成
【背景・目的】
分領域でより低下した(図 1).
当院の CT 検査では,5mm 厚のルーチン撮
影画像と共に 1mm 厚の Thin-slice 画像を出力
視覚評価の結果においては,認識された最小
し,MPR・3D 作成だけでなく読影診断にも活
径は強い QDF ほど小さくなった.また,正規
用されている.Thin-Slice 画像はノイズ増加を
化順位法の結果(図 2)において,強い QDF
伴うがその対策はされていない.そこでノイズ
を用いると Axial 像では高評価が得られたが,
低減方法の一つである量子ノイズ低減フィル
MPR 像では評価が下がった. Axial 像・MPR
タ(Quantitative Denoise Filter:QDF)について
像共に ORG より QDF を使用した画像の方が
基本特性を評価し,最適化を検討した.
良い評価が得られた.
【方法】
TOSHIBA 社製 Aquilion64 を用いて下記の方
法で検討を行った.
物理評価として,原画像(以下 ORG)及び
QDF(Q-03~Q-10)の全 9 種類の画像におい
て,高コントラストとノイズへの影響について
検討した.高コントラストはビーズ法による
図 1 QDF の違いによる NPS の変化
MTF を測定し評価した.ノイズは Catphan
CTP486 を使用して NPS を測定し評価した.
視覚評価として,自作ファントム(アクリル
(点線内はそれぞれ有意差なしを表す)
製円錐を CT 値差+15HU のゼラチンで覆った
もの)を臨床と同等の SD となるように撮影を
行った.低コントラスト評価のため,円錐の頂
図 2 正規化順位法
点側からスライスを送り円として認識される
【考察】
最小径の大きさを比較した.また,Axial 像・
QDF を用いることで空間分解能を保持した
MPR 像の任意断面をそれぞれ 9 枚並べてモニ
タ表示し,正規化順位法(観察者:診療放射線
ままノイズ成分の抑制が可能となり,
技師 8 名)を用いて評価した.
Thin-Slice 画像の画質改善が得られたが,過度
【結果】
の QDF 設定は MPR 像の劣化を招くことが示
MTF は QDF の違いによる変化を認めなかっ
唆された.
78
中四国放射線医療技術第7号
一般研究発表
18 当院における検診マンモグラフィのソフトウエアコピー診断環境構築
益田市医師会立益田地域医療センター医師会病院 放射線技術科
山田和幸 青木早和 永戸信吾
デジタルマンモグラフィのソフトコピー診
所をこの暗室とした。
次に「DICOM storage service class の変更」
断をおこなう上で、5M ピクセル以上の高輝
度高精細モニタを用い、読影に必要なツール
について、CR 導入時に一般撮影とマンモグラ
を網羅するマンモグラフィ用ビュアソフトウ
フィ両方に対応できるようにした名残で、マン
エアが必須である。既設の PACS や DICOM
モグラフィの DICOM のモダリティタグを
ビュアで対応できない場合はデジタルマンモ
「CR」としていたが、今回フィルムレスも考慮
グラフィ専用読影ワークステーション(以下
するにあたり、画像検索を容易にするため
MMG-WS)導入でソフトコピー診断が可能
「MG」へ変更した。 過去画像では昨年マンモ
となる。
グラフィを CR 化してから平成 23 年 1 月の
当院では平成 23 年 1 月の PACS 更新時に
PACS 更 新 ま で の 期 間 で マ ン モ グ ラ フ ィ を
検診マンモグラフィのソフトコピー診断実現
「CR」として保存していたことから、該当画像
を目的に MMG-WG を導入し、同年 7 月より
を PACS から削除し、マンモグラフィ専用 CR
ソフトコピー診断へ移行した。今回読影効率
画像処理装置から「MG」で再送した。
を考慮した PACS サーバおよび MMG-WS の
「検査画像転送方法」については、MMG-WS
から Q/R で画像を取得するのではなく、モダリ
設定について検討をおこなった。
ティから PACS サーバが画像を受け取った時点
接続概略 (放射線検査関係)
CR
VELOCITY U
CR
FCR5000plus
で MMG-WS へ過去画像も含めた自動画像送信
PACS server
CR console
WeVIEW
×3
MMG
CR console
NAS
RAID
8TB
AWS-c
server
printer
report server
Natural Report
MDCT
DRYPIX7000
×2
SCENARIA
MR
Intera Achieva
1.5T pulsar
CR storage server
SPINE2
WS console
DR(FPD)
VersiFlex
軽減を図った。
Viewer (3M×1)
NV-1000
上記を実施した結果として、まずソフトコピ
保健予防センター
MMG-WS
(5M×2)+17inch
X TREK MAMMO
LUCID
ー診断の恩恵を得ることができた。具体的には
放射線技術科
VINCENT
×2
3DWS server
フィルムの出し入れ等作業が無くなったことに
IP-VPN
VINCENT
DSA
Integris V5000
をおこなうことで、操作者である読影医の負担
放射線科外来
CR
PROFECT CS
Viewer (3M×2)
NV-1000
+
report console
RIS
console
×8
PMC
PMI
AOC
DXA
DTX-200
RIS
RIS server
MWM server
gateway server
backup server
よる読影効率の向上、フィルム管理の負担軽減、
Viewer (3M×2)
NV-1000
+
report console
読影操作性向上(マウス操作のみで読影可能)
放射線科医師自宅
オーダリングシステム
電子カルテシステム
で読影医にも好評であった。
ソフトコピー診断移行前の問題点として
また新たな作業として MMG-WS のメンテナ
「膨大な画像管理」「読影室の使用停止」「複
ンスが加わった。具体的には画像保存領域の確
雑なフィルム管理」があり、これらをソフト
保(定期的な画像削除)とモニタ精度管理であ
コピー診断移行で解決できると考えた。
る。
健診施設では現在も紙カルテを使用しており、
今回検診マンモグラフィのソフトコピー診
断環境構築にあたり、次の項目を検討した。
結果返送は所見用紙でおこなっているが、今後
●MMG-WS 設置場所
は診療との連携を考慮しオンラインでの結果返
●DICOM storage service class の変更
送を検討したい。
●検査画像転送方法
【参考文献】
まず「MMG-WS の設置場所」について、
○「デジタルマンモグラフィ品質管理マニュア
デジタルマンモグラフィ品質管理マニュアル
ル」NPO 法人マンモグラフィ検診精度管理中央
では「直接光がモニタ画面に反射しないこと」
委員会編集
とある。 条件を満たす場所として放射線技術
○「DICOM 入門」Herman Oosterwijk 著
科内で使用しなくなった暗室が候補に挙がっ
本画像医療システム工業会監訳
た。 周囲光を遮ることができ、部屋の明るさ
○「DICOM の世界」日本画像医療システム工
を調整しやすいことから、MMG-WS 設置場
業会 website
79
医学書院
日
篠原出版新社
http://www.jira-net.or.jp/dicom/
中四国放射線医療技術第7号
NovationDR におけるマンモグラフィ撮影条件の検討 徳島大学病院 診療支援部診療放射線技術部門 櫻川 加奈子,山田 健二,天野 雅史,多田 章久 【背景】 的とした場合は,現在使用しているターゲッ
当院ではこれまでマンモグラフィ撮影につ
ト/フィルタの組み合わせで,より低い管電圧
いてオートの撮影条件が適切であるかの検討
を使用すればよいことが確認できた.しかし,
を行ったことがない. PMMA ファントム厚が厚くなると AGD の増加に
【目的】 比べて皮膚表面入射線量の増加が大きくなる
当院のマンモグラフィ装置のオート撮影条
傾向を示したために被写体厚が厚い場合は注
件が適切であるかの検討を行う.また,オー
意が必要である.最大で約 10%の増加が確認
ト撮影を基準としてセミオート撮影にて,よ
できた.また,W/Rh の組み合わせでは CNR は
り適切な撮影条件を検討する. 低くなるが,皮膚表面入射線量と AGD が同等
程度であることも確認出来た.これより今後
【方法】
検討は平均乳腺線量(AGD)とコントラスト
撮影装置側で画像コントラストを上げる画像
ノイズ比(CNR)とを用いて行った.これらの
処理が可能となれば,AGD や皮膚表面入射線
算出はデジタルマンモグラフィ品質管理マニ
量の点から見ても W/Rh の組み合わせは最適
ュアルに準じて行った.PMMA ファントム厚を
となる可能性がある. 【まとめ】
2cm から 6cm まで 1cm 刻みで変え,オート撮
影とセミオート撮影との結果を比較し検討を
現在当院で使用しているオート撮影条件は
行った.セミオート撮影では,管電圧を 26kV
AGD,CNR の点から考えると適切であった.ま
から 34kV まで 2kV ごとに変化させて,AGD と
た,オート撮影条件からセミオートに撮影条
CNR を算出した. 件を変更することによって,より高い CNR を
得ることが可能であった. 【結果・考察】
PMMA ファントム厚が 2cm の結果を Fig.1 に
1.2
14
れた. AGD が品質管理マニュアル推奨の 2mGy
以下であることや CNR が高いことから適切な
CNR
示す.オート撮影では Mo/Mo で 25kV が選択さ
AGD [mGy]
19
一般研究発表
0.6
撮影条件であった.しかし,Mo/Mo の 26kV を
Mo/Mo
Mo/Rh
W/Rh
24
26
28
30
管電圧 [kV]
かった.このとき,皮膚表面入射線量も少な
Mo/Mo
Mo/Rh
W/Rh
0
0
使用することで AGD,CNR 共に良くなる事がわ
7
32
34
24
26
28
30
32
管電圧 [kV]
くなっていたために,Mo/Mo の 26kV が最適な
Fig.1 PMMA ファントム厚 2mm での AGD と CNR
条件であると考えた. オートで選択された条件を赤で最適と考えられる
条件と黄で示している. 同様に,他の PMMA ファントム厚でも検討を
行った結果,全てのファントム厚において AGD
が 2mGy を超えていなかったため現在使用し
ているオート撮影は適切であると分かった.
AGD が 2mGy を超えない範囲で CNR の向上を目
80
34
中四国放射線医療技術第7号
20
一般研究発表
装置の出力変動が視覚評価に与える影響
島根大学医学部附属病院 放射線部 1) 県立広島大学 大学院 総合学術研究科 2)
小玉紗弥香 1) 石井美枝 1) 永見晶子 1) 吉田彰 2) 小松明夫 1)
【目的】MMG における日常の品質管理におい
10 枚を,2 回ずつ読影した.視覚評価は
て,撮影条件に変化はないが,視覚評価が異な
Phantom 内のアルミニウムと炭酸カルシウ
ることがある.この要因として,以前行った
ムの模擬石灰化信号 1 つずつに対して行い,信
HVL 測定の時の照射線量の変動(0.5%)の大き
号がはっきりと見える:1 点,ぼんやりと見え
さにあると考え,それによる視覚評価への影響
る:0.5 点,見えない:0 点とし,3 人の合計
を検討した.
点で評価した.
【使用機器】MMG 撮影装置:alpha RT
【結果】照射線量の変動は Semi Auto Mode
INSTRUMENTAL 社製,線量計:Radcal
で 2.33%,Manual Mode で 0.61%となった.
ACCU-DOSE 2186,検出器:10×5-6M,
Phantom:CIRS 社製 Mammography
Research Set Model 012A BR50/50 2256・
2273-A-4
【実験方法】撮影条件は,管電圧:30kV,
Target/Filter:Mo/Mo,照射条件:Semi Auto
Mode と Manual Mode(32mAs) の 2 種類を使
Fig.2 照射線量と視覚評価
それぞれの条件で照射線量と視覚評価の関係
を Fig.2 に示す.この 2 者の関係はスピアマン
の順位相関係数を用いた検定の結果,Semi
Auto Mode では有意差があり,2.33%の照射
Fig.1 幾何学的配置図
線量の変動は視覚評価に影響していることが
用した.Fig.1 に幾何学的配置図を示す.照射
判明した.
線量のモニタリングを行い,それぞれ 30 回の
【結語】Semi Auto mode は,Manual mode
データ収集を行った.観察条件を一定にするた
に比べて照射線量の変動が大きかった.視覚評
め,Film 濃度を Phantom 部分で D = 1.5±
価の Score は,照射線量に比例し変化した.照
0.05 となるように調整し,評価用 Film を作成
射線量の変動が大きいと視覚評価に影響があ
した.
った.今後,照射線量の変動が視覚評価にどの
【視覚評価】視覚評価は検診マンモグラフィ認
ように影響するか許容範囲を含め検討してい
定技師 3 名により行った.各照射条件で Film
く必要がある.
81
中四国放射線医療技術第7号
21
一般研究発表
品質管理におけるマンモ用 IP の焼付け・残像の影響
倉敷成人病センター放射線技術科 1),県立広島大学大学院総合学術研究科 2)
鳥取大学医学部附属病院放射線部 3),島根大学医学部附属病院放射線部 4)
森脇淳美 1) 石井里枝 3) 石井美枝 4)
吉田彰 2) 藤元志保 1) 松田絢子 1) 荒尾圭子 1)
【背景・目的】精中委では ACR 推奨ファン
トムを用いて MMG の QC をアクリル円板
と周囲の濃度差(以後,ΔD)は 0.4 以上で
あることを推奨している.当院では,QC に
用いる IP は臨床にも使用しており,使用開
始から約 6 年(約 14,
000 曝射)経過し,最
近ΔD が 0.4 未満とな
ることを経験した.そ
の原因の検討中に焼
付け像(Fig.1)に気が
付いた.今回我々は,この現象がΔD に及ぼ
す影響について過去画像を用いて検討した.
【使用機器・実験方法】
MMG 装置:Mermaid,
の測定点
が Fig.2
に示すよ
うに焼付
けの辺縁
部(白線)
に相当す
るためで
ある.b が最も焼付いており,c が最も焼付
けが少なかった.Fig.4 に曝射回数とΔD の
関係を示す.使用回数の増加に伴い,ΔD が
変化し,そ
の値は位置
によって異
なる変化を
した.最も
焼付いてい
る b から a
を引いた場
合のΔD は,曝射回数の増加に伴い小さくな
り,最も焼付けが少ない c から a を引いた場
合のΔD は,徐々に大きくなった.よって,
位置によるΔD の違いは焼付けの差が原因
と考えられる.d‐a と e‐a の値を採用する
かでΔD に違いが生じる.e‐a の値をとる
と,この IP は約 7000 回程度の曝射回数で
管理指標を下回り始めることが判明した.
【結語】IP は常に乳房が撮影投影されている
IP:REGIUS CASETTE PLATE RP-5PM,
ファントム:RMI156 型,ステップファント
ム.画像データの解析に imageJ を使用した.
ΔD の変化を見るために,アクリル円板と周囲
のデジタル値を測定し,デジタル値を濃度に変
換するために,RMI156 ファントムの両側に配
置したステップファントム像の 1~10 段のデ
ジタル値と濃度を測定(Fig.2)し,デジタル
値‐濃度曲線を作成した.
部分以外では,著明な焼付け現象が認められた.
この焼付け現象は,マンモグラフィの精度管
理を行っている施設での QC に影響を及ぼ
す.アクリル円板およびその周囲での焼付け
【結果】Fig.3 に曝射回数とデジタル値の関
係を示す.a~e すべての測定点で,曝射回
数の増加とともにデジタル値が上がった.グ
ラフの勾配が大きい順に並べると b>e≒d
≒a>c となった.この理由は,デジタル値
効果が,ΔD に影響することが判明した.
【謝辞】本実験に数々の貴重なご意見を賜り
ました眞田泰三氏に心より感謝申し上げま
す.
82
中四国放射線医療技術第7号
22
一般研究発表
マンモトーム生検時の Pre fire 画像における針先とターゲット
の位置の検討
香川大学医学部附属病院
放射線部
松本
希
⑤画像ビューワ上で、①~③で撮影した画像よ
[ 目的 ]
り、基準位置からピアス前とピアス後の針先の
通常、マンモトーム生検ではターゲットの
位置に針を挿入し、ピアスをする前に位置確認
X軸方向の距離をそれぞれ計測した。
のステレオ撮影(Pre fire 画像)を行い穿刺
⑥画像ビューワにて計測した「基準位置~ピア
位置が良ければピアスを行う。その後再びステ
ス前の針先の距離」と、「基準位置~ピアス後
レオ撮影を行い、開口部にターゲットがあるか
の針先の距離」を今回作成した計算ソフトに入
最終位置確認後、組織を吸引していく。しかし、
力し、ピアスによる進行距離を求め、装置上で
当院ではピアス後のステレオ撮影を行わない
求めたそれと比較した。
ため、Pre fire 画像だけでピアス後のプロー
⑦模擬ファントムを用い検査時と同様にシミ
ブ先端部(以下:針先)とターゲットの位置関
ュレーションを行った。
係を推測し検査を進めている。そこで、画像ビ
[
ューワにて Pre fire 画像の針先とターゲット
結果 ]
①装置で求めたZ座標と計算ソフト上のZ
の距離関係を求めるために Excel シートを利
座標の平均値
用して計算ソフトを作成し、そのズレを認識し
・装置上でのZ座標:18.4±0.85mm
た上でピアス後の開口部とターゲットの位置
・計算ソフト上のZ座標:18.6±0.83mm
を推測できるよう検討する。
②模擬ファントムでの計算上シミュレーショ
[
実験方法 ]
ン
装置の SID や回転中心の距離の関係性から
・ピアス前の針先とターゲットの距離:2.0mm
作成した計算ソフトが有用であるか以下の方
・ピアス後の針先とターゲットの距離:19.5mm
法で検討を行った。
・実際ピアスで進んだ距離:18.6mm
①プローブを照射野の中央にセットし針先の
[
高さを変化させ左右ステレオ撮影を行った。
考察 ]
ピアスによって先端が進む距離は 19.3mm な
ピアス前の針先:Z=20,30,40,50,60mm
ので、結果①より 0.7~0.9mm の誤差があるこ
②ピアス後、①と同様にして左右ステレオ撮影
とが分かった。標準偏差は 0.85mm であり、0.7
を行った。
~0.9mm の誤差範囲内であることが分かった。
③回転中心からのズレの影響を確認するため
また、装置上で求めたZ座標と、計算上のZ座
Y 軸は固定とし、X 軸を左右それぞれ 10mm 移動
標の差は 0.2mm であったが、ターゲット選択時
させ、①②と同様にして撮影した。
の再現性も考慮し、装置での値と今回作成した
④装置上でピアス前とピアス後の針先のZ座
計算ソフトはほぼ相違がないことが考えられ
標を測定し、その差を求めた。
る。
83