平成22年3月3日 核医学検査室責任者殿 RI 検査室責任者殿 放射性

平成22年3月3日
核医学検査室責任者殿
RI 検査室責任者殿
放射性医薬品購入責任者殿
社団法人日本アイソトープ協会
富士フイルムRIファーマ株式会社
日本メジフィジックス株式会社
原子炉トラブルによるテクネチウム製品の供給状況について
(ご報告)
拝啓 平素より核医学検査・アイソトープ(RI)検査に使用する放射性医薬品の購入、
取り扱いにつきまして、格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。また、昨年5月から
長期にわたりテクネチウム製品の供給が十分にできず、患者様の検査予約の制限や検査日
程の変更等、診療に際して多大なるご不便をおかけしておりますこと、改めて深くお詫び
申しあげます。
Mo-99 原料の最大の生産炉であるカナダ原子力公社(AECL)の原子炉(NRU 炉)が昨年
5月に生じたトラブルのため稼働停止したことに端を発して世界的に放射性医薬品の原料
不足が続いておりますが、平成 21 年 8 月 20 日付けの文書にてその当時の状況をご報告い
たしました。その後、オランダ HFR 炉を主力とするヨーロッパと南アフリカ(SAFARI-1 炉)
からは順調に原料を入手することができ、また限られた Mo-99 原料の有効利用(例えば出
荷直前での Tc-99mの抽出)などの努力により、この3月までは十分ではないものの比較
的安定した供給状況を維持して参りました。原料の入荷数量が少しでも多めのときには、
数量制限をしながらも、ジェネレータを供給することもできました。しかしながらカナダ
NRU 炉の復帰が当初の予定より遅れていること、オランダ HFR 炉が長期の修理のために今
年2月に稼働停止したことなどから、4月にはこの半年間と比べて Mo-99 原料の入手が再
び厳しくなると予想されます。現在分かっております関連の原子炉あるいは Mo-99 原料の
生産体制の状況と4月以降当分の間のテクネチウム製品供給予測についてご説明申し上げ
ます。ご理解、ご協力をお願い申し上げると共に、患者様、施設内でのご説明にお役立て
いただけましたら幸甚です。
<カナダ NRU 炉>
カナダ NRU 炉は昨年 5 月 14 日に稼働停止以降、重水漏えいの原因となった原子炉容器の
腐食等を修繕するための調査・準備が進められ、昨年 12 月から実際の修理が開始されまし
た。その当時は今年3月までには復帰する予定としておりましたが、腐食箇所の溶接作業
に思ったより時間を要し、修理を完了して復帰するのは4月末になると AECL は最新の発表
で報じております。これまでの事例からは NRU 炉が復帰すれば比較的早急に Mo-99 原料製
造がおこなわれますので、5月には Nordion 社からの入手が可能になるものと期待してお
ります。NRU 炉が復帰し、従来通りの数量が Nordion 社から入手できれば、ほぼ通常通り
の供給が可能となります。
<オランダ HFR 炉>
オランダ HFR 炉は 2 月 19 日から稼働を停止しております。昨年5月にカナダ NRU 炉の緊
急停止に対応して HFR 炉は本格的な稼働を再開したのですが、その時点で適切な時期に長
期間停止して修理をすることが条件とされておりました。今回の停止は今年8月までの約
半年の予定ですが、修理箇所,方法等は確定しておりますので、8月には予定通り復帰す
るものと考えられております。
ヨーロッパでの Mo-99 原料製造は HFR 炉が主力となっておりますが、ベルギーBR-2 炉、
フランス OSIRIS 炉とも連携をとっております。これらの原子炉は通常時に比べて最大限の
増産体制を敷いており、HFR 炉が停止してもヨーロッパからの調達量がゼロになるという
わけではございません。
<南アフリカ SAFARI-1 炉>
南アフリカの SAFARI-1 炉はカナダ NRU 炉停止以来、これまでも増産を実施しており、今
後更に増産を進める計画です。今後も順調に入手できるものと考えております。
以上が現在 Mo-99 原料を製造している世界の主要原子炉ですが、日本の原料入手に関係
するその他の原子炉の状況についてご説明いたします。
<ポーランド MARIA 炉>
ポーランド MARIA 炉で濃縮ウランターゲットの核分裂法による製造が進められておりま
す。ポーランドでは大量の Mo-99 を精製する施設がないため、オランダの Covidien 社が
MARIA 炉と契約を結んで、照射済みターゲットを Covidien 社の精製施設に輸送して Mo-99
原料を製造する計画です。Covidien 社は前述のヨーロッパの原子炉で照射したターゲット
を Mo-99 原料に精製して日本にも輸出している会社です。すでに試行は行われ、早ければ
4月に本格的製造が行われるものと期待しております。
<オーストラリア OPAL 炉>
オーストラリアは昨年 7 月に OPAL 炉で Mo 原料を製造可能になったと報じた後、輸出で
きるまでの生産量増加を進めてきました。Mo-99 原料精製の工程における技術的あるいは
技術者確保等の問題で当初の予定より遅れております。現時点では不安定ながらも、10Ci
程度の数量が日本に輸出されております。最新の情報では、ようやく準備も整い、4月か
らは徐々に製造量を増加して、6月頃には安定した生産体制を目指していると聞いており
ます。当分の間はカナダ、ヨーロッパ、南アフリカ程の生産能力は見込めませんが、たと
え少量であってもできる限り早く安定的に供給してもらえるように交渉を続けております。
この他、インドネシアの RSG-GAS 炉でも増産計画が進められております。こちらも現在
のところは少量かつ不定期な状況ですが、可能な限りの入手に努めております。
Mo 原料の製造、入手状況を説明させていただきました。カナダ NRU 炉が復旧するまでに
はもうしばらく時間がかかること、オランダ HFR 炉も長期修理のために停止していること
から、4月以降はこれまで以上に原料入荷量が不安定になり、テクネチウム製品供給を十
分に行えなくなることが予想されます。しかしながらご説明いたしましたように従来の主
要原子炉間のバックアップ体制の強化や他の原子炉からの入手もある程度見込めますので、
カナダ NRU 炉の停止直後の南アフリカからの調達だけで賄っておりました昨年6月のよう
な状況には陥らないものと考えております。
長期にわたって大変なご迷惑やご不便をおかけいたしておりますが、引き続き限られた
テクネチウム製品の有効利用、代替品のご使用等、ご協力をお願い申し上げます。
具体的なテクネチウム製品の供給状況につきましては判明次第、これまで通り、逐次「緊
急連絡」、アイソトープ協会ホームページなどにてご連絡申し上げます。また、製品の供給
状況に大きな変化や動向などがございましたら、別途このような形でもお知らせいたしま
す。
敬具