『家の光』 家の光』を漫画から読み解く ~90 年代後期から 00 年代初頭の連載漫画を通して~ 年代初頭の連載漫画を通して~ 比較農史学分野 三戸翔 ・序論 ・はじめに 1998~2001 年の間、家の光では二作のストーリー漫画が連載された。この「木漏れ日 のなかで」と「緑の風青い空」を読んで、家の光の主なテーマである「農業」 「家庭」 「仕 事」といったものがどのように表現されているか、読み解いてみることにした。 私がこの二作品の漫画に着目した理由は、家の光の漫画では珍しい人物に焦点をあて た作品(風刺画や一話完結のコラムなど、トピックに着目したものが多い)であること、 また「木漏れ日のなかで」の作家は男性であり「緑の風青い空」の作家は女性であるこ とから、作家性の違い・性差に注目できると思ったからである。 読み解いていくにあたって、漫画独特の表現に特に着目しながら考察を展開したので、 実際のコマとともに紹介する。 ・概要 両作品の概要を簡単に紹介する 「木漏れ日のなかで」……卒業をひかえた女子大生、キリコが、景気低迷による就職へ の不安の中で将来を模索していく。農業を志す青年、一平との縮まらない距離をもどか しく感じながらも、教師の職に就く。その後は同僚の先生も交えた三角関係を展開しつ つ、教師として日々奮闘する姿が描かれる。知り合いや両親の結婚・離婚といったテー マも扱われ、就職から結婚までの困難を乗り越えていく様子が描かれる。 特に着目したいテーマは「若者」「結婚・離婚観」 「緑の風青い空」……都会で雑誌のライターとして働く女性、奈々子が、田舎への取材 をきっかけに自身の生き方を見つめ直す。結婚とともに仕事をやめるよう促す恋人、敦 と母親に反対し、田舎で市役所員として働き始めながら、田舎で出会った青年、剛との 新たな恋とともに成長していく様子が描かれる。 特に着目したいテーマは「結婚」「女性の仕事」 ・本論 次のページから、実際に掲載された漫画のコマとともに解説と考察を載せていく。 (2~14頁 -1- 略) ・結論(実習を終えて 結論(実習を終えて) 実習を終えて) 戦前では広く国民への広報の役割を持っていた『家の光』だが、今回読んだ漫画を通 して、近年では主に読者を婦人層に設定しているように感じた。 「木漏れ日のなかで」と 「緑の風青い空」の二作品からは、 「結婚・離婚」 「女性にとっての仕事」 「田舎での生活」 など、女性が興味をひきそうなテーマが多様に描かれていることが発見できた。 「緑の風青い空」で成長前と成長後の姿をビジュアルの点でわかりやすく区別して描 いていたのは、漫画という絵を媒体とした手段を有効に活用できていたように思う。 またバブル崩壊期の不景気の中、苦しいながらもどうやって自分らしく生きていくか という議題に一つの道を示しているように思えた。両作品とも、大きな冒険をして高み を目指していくよりは、小さくても自分なりの幸せの形を見つけてそれに安堵感を覚え るという志向が見られるように感じた。 二つの作品を扱うことで作家性による絵の特徴も際立ち、また登場人物の年代が違う ためより多くのことに気づけたと感じる。家の光を独自の視点から読むことができたよ い一年になった。 -15-
© Copyright 2024 Paperzz