平成 17 年度 文部科学省委託 専修学校社会人キャリアアップ教育推進事業 IP 電話調査報告書 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を 育成する教育プログラム開発」プロジェクト 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト はじめに インターネットを利用した電話、いわゆる IP 電話が通信費の低価格化で急速に普及してい る。この IP 電話の技術は、アナログ電話技術とは全く違った取り組みが必要なだけではな く、ルーティングやトラフィック制御などのインターネット技術の知識習得も必須である。 本委員会ではこれからのユビキタス社会では核となる IP 電話技術者を育成する実践的カリ キュラム開発を行なった。開発するにあたりニーズ調査や実態調査(視察)を行い、企業 が求める IP 電話技術者像および技術内容を調査した。また、主要なメーカーの製品や利用 されている技術などの調査も行ないより企業が求める人材育成に貢献できる内容となって いる。 これから IP 電話技術者育成をお考えの学校や社会人でキャリアアップをお考えの方に是非、 本プログラムを役立てていただきたい。 このプログラムを作成するにあたり、NEC ブロードバンドソリューションセンター品川様、 シスコシステムズ株式会社 福岡オフィス様、ノーテルネットワークス株式会社様を視察し 参考とさせていただいた。ご協力をいただいたことに心より感謝したい。 最後に、本プログラムの作成にかかわった各委員の皆様、アドバイスをいただいた各企業 の皆様に謝意を表する。 平成 18 年 3 月 IP 電話技術者育成委員会 IP 電話調査報告書 iii 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 平成 17 年度 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」の プロジェクト委員 委員長 徳重 稔 麻生情報ビジネス専門学校 熊谷 智明 麻生教育サービス 真鍋 卓照 穴吹コンピュータカレッジ 佐藤 進 アイビーテクノカレッジ 岩田 儀一 日本電子専門学校 池戸 博行 名古屋工学院専門学校 川北 修 シスコシステムズ株式会社 柳原 通 シスコシステムズ株式会社 重松 義昭 NEC パーソナルプロダクツ株式会社 木村 孝雄 株式会社沖電気カスタマアドテック 村山 公一 株式会社日立エイチ・ビー・エム 浦山 昌志 株式会社 IP イノベーションズ 隆 株式会社 IP イノベーションズ 大竹口 IP 電話調査報告書 iv 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 目次 はじめに ..............................................................................................................................iii 第1章 視察の目的と概要................................................................................................1-1 1 目的と概要..................................................................................................................1-2 第2章 NEC ブロードバンドソリューションセンター視察............................................2-1 2 NEC ブロードバンドソリューションセンター視察 ...................................................2-2 2.1 視察日時 ..............................................................................................................2-2 2.2 視察先..................................................................................................................2-2 2.3 視察概要 ..............................................................................................................2-4 2.4 視察内容 ..............................................................................................................2-5 第3章 OKI 情報通信融合ソリューションフェア 2005 視察 ..........................................3-1 3 OKI 情報通信融合ソリューションフェア 2005 視察..................................................3-2 3.1 視察日時 ..............................................................................................................3-2 3.2 視察先..................................................................................................................3-2 3.3 視察概要 ..............................................................................................................3-3 3.4 視察内容 ..............................................................................................................3-5 第4章 シスコシステムズ福岡オフィス視察 ...................................................................4-1 4 シスコシステムズ福岡オフィス視察 ..........................................................................4-2 4.1 視察日時 ..............................................................................................................4-2 4.2 視察先..................................................................................................................4-2 4.3 視察概要 ..............................................................................................................4-3 4.4 視察内容 ..............................................................................................................4-4 第5章 ノーテルネットワークス株式会社視察 ...............................................................5-1 5 ノーテルネットワークス株式会社視察.......................................................................5-2 5.1 視察日時 ..............................................................................................................5-2 5.2 視察先..................................................................................................................5-2 5.3 視察概要 ..............................................................................................................5-4 5.4 視察内容 ..............................................................................................................5-5 5.5 おわりに ............................................................................................................5-27 第 6 章.IP 電話システムプロトコル ................................................................................6-1 6 IP 電話システムプロトコル .......................................................................................6-2 6.1 H.323 プロトコル .................................................................................................6-2 6.2 SIP プロトコル .....................................................................................................6-7 第 7 章.VoIP プロトコルを実装した機器 ........................................................................7-1 7 IP VoIP プロトコルを実装した機器 ...........................................................................7-2 IP 電話調査報告書 v 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 7.1 IP 電話機 ...........................................................................................................7-3 7.2 サーバ ................................................................................................................7-6 7.3 各種機能 ............................................................................................................7-7 第 8 章.IP 電話技術者に求められるスキル .....................................................................8-1 8 IP 電話技術者に求められるスキル.............................................................................8-2 8.1 前提スキル .........................................................................................................8-2 8.2 コア技術スキル ...................................................................................................8-4 8.3 IP 電話周辺技術スキル ......................................................................................8-5 IP 電話調査報告書 vi 第1章 視察の目的と概要 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 1 目的と概要 IP 電話が、新しいコミュニケーション手段となりつつある。それに伴い、IP 電話機器の市 場規模もエンタープライズを中心に年々拡大している。しかし、一方でそれを担う技術者 が不足しているのが現状である。 IP 電話技術者育成委員会では、社会人、専修学校の学生が IP 電話を支える技術者として活 躍するために必要な技術知識、業界知識などを得ることができる研修コースを開発する。 また、技術に偏重することなく業界知識や製品知識、オフィスでの利用状況など幅広い視 野を持ってもらうために、製品や企業での利用状況などの調査を実施した。 本調査書では、国内外の IP 電話メーカを視察したレポートと、国内外メーカの主力 IP 電 話機器の製品情報や技術情報をまとめた製品調査レポート、また IP 電話技術者に必要なス キルをまとめたものから構成される。 調査結果から言えることのひとつに、IP 電話メーカをはじめとするベンダーは、IP 電話ネ ットワーク製品単体を販売するのではなく、IP 電話ソリューションを提唱している。IP 電 話ネットワーク化でコストダウンを図るのではなく、IP 電話を含めた IP コミュニケーショ ンネットワークを作ることで、ランニングコストの削減を目指しつつ、オフィス環境の効 率化を実現することを目指している。ホワイトカラーの生産性向上が叫ばれて久しいが、IP コミュニケーションを通じてそれを実現しようとする意図が製品やソリューション技術か らうかがえる。 IP 電話技術者育成委員会では、社会人キャリアアップのために有効なカリキュラムおよび 教材を開発するために、様々な調査を行ってきたが、視察報告とは別に以下の内容に分類 して、調査内容を報告する。 1.IP 電話システムプロトコル 2.VoIP プロトコルを実装した機器 3.IP 電話技術者に求められるスキル 「IP 電話システムプロトコル」では、IP 電話に使用されているプロトコル、つまり通信手 順や規約についての調査結果を報告する。 「VoIP プロトコルを実装した機器」では、前述し たプロトコルを実装する機器について、また、 「IP 電話技術者に求められるスキル」では、 カリキュラムの前提や到達点を明確にするために、委員会にて討議した結果の想定スキル をまとめたものである。 IP 電話調査報告書 1-2 第2章 NEC ブロードバンドソリューションセンター視察 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 2 NEC ブロードバンドソリューションセンター視察 NEC ブロードバンドソリューションセンターにおいて IP 技術を使った各種製品ソリュー ションを視察した。本視察を通して、日本電気株式会社様が提供している最先端の技術を 学ぶことができた。 2.1 視察日時 平成 17 年 10 月 5 日 2.2 13:30~15:30 視察先 日本電気株式会社様の「NEC ブロードバンドソリューションセンター」 東京都港区港南 2-16-1 写真 2-1 品川イーストワンタワー7 階 NEC ブロードバンドソリューションセンターの入口前 IP 電話調査報告書 2-2 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 写真 2-2 NEC ブロードバンドソリューションセンターの受付 IP 電話調査報告書 2-3 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 2.3 視察概要 NEC ブロードバンドソリューションセンターは、オフィスとショールームを備えた環境の 中で、ブロードバンド環境と情報システムの連携による IT ネットワーク統合ソリューショ ンを提供している。 写真 2-3 NEC ブロードバンドソリューションセンター事務所 NEC の品川オフィスでは、IP 電話や Web 会議システム、文書管理システムなどを社員が 実際にユーザとして利用している。社員による各システムの実体験に基づき、NEC ブロー ドバンドソリューションセンターでは、各種ソリューションをお客様に提案している。 NEC ブロードバンドソリューションセンターには、会議室・出張先・自宅など社内外のど こにいても、ノートパソコンからオフィスと同じ環境で業務を行うことができる「モバイ ルデスクソリューション」などいくつかのソリューションが展示されている。本視察にお いては、同センターで展示されているソリューションのうちモバイルとセキュリティに焦 点を当てて視察を行った。 IP 電話調査報告書 2-4 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 2.4 視察内容 日本電気株式会社 UNIVERGE 営業部 小西様から NEC ブロードバンドソリューション センターの概要説明が行われた。 NEC の製品が展示されている NEC ブロードバンドソリューションセンターは、ソリュー ションごとにいくつかのブースに分かれている。 写真 2-4 NEC ブロードバンドソリューションセンターの概要説明(UNIVERGE 営業部 小西様) 製品別のソリューションが展示されているブースは 5 つあり、そのうち次の 3 つのブース を今回の視察対象とした。 IP コミュニケーションブース モバイルソリューションブース セキュリティブース IP 電話調査報告書 2-5 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 図 2-1 展示ソリューションの配置 IP 電話関連にブースでは、昨今の IP 電話がどのように利用されているかを紹介している。 モバイルソリューションブースでは、FOMA との連携や無線 LAN との連携によるソリュ ーションを紹介している。 情報共有&CRM ソリューションブースでは、情報共有にて実現しているペーパレスについ て説明を受けた。情報共有によるペーパレスは、実際に NEC ブロードバンドソリューショ ンセンターがあるビルの 6 階、7 階のオフィスで実現されているソリューションであり、1 人 1 つのボックスが与えられていて、デジタル化、ペーパレスを実現している。その他に は、セキュリティに関するブースや PLC ソリューションを展示したコンシューマソリュー ションコーナがある。 2.4.1 IP コミュニケーションブース IP コミュニケーションブースでは、新しいコミュニケーション手段として、次の 5 のソリ ューションを展示されており、そのうち、 「IP テレフォニー」ソリューションと「コミュニ ケーションポータル」ソリューションについてのデモを視察した。 (1) IP テレフォニー パソコンにインストールしたアプリケーションソフトと IP テレフォニーサーバ IP 電話調査報告書 2-6 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト UNIVERGE SV7000 を組み合わせることにより、音声とデータを統合した新しいワーク スタイルを提供するソリューションである。 (2) ユニファイドメッセージング ユニファイドメッセージングは、音声、ファックス、e メールなどの情報をすべて一元 管理し、画面で内容を確認できるシステムである。 (3) コミュニケーションポータブル さまざまなコミュニケーションツールを一元管理するシステムである。 (4) ビジネスポータル 必要な情報をすばやく入手できる企業情報ポータルである。 (5) IP テレフォニー連携ソリューション IP テレフォニーサーバ UNIVERGE SV7000 とノーツクライアントを組み合わせることに より、ノーツの画面から電話を掛けることができる。 IP 電話調査報告書 2-7 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 2.4.1.1 IP テレフォニー IP テレフォニーサーバ UNIVERGE SV7000 とアプリケーションソフトを組み合わせるこ とにより、従来の電話では実現することができないさまざまな機能を使うことができる。IP テレフォニーは、コストの削減のみならず、新しいワークスタイルを利用することで、業 務のムダを省くことを目的としている。これらの機能の一部を次に説明する。 (1) 通常の電話使用 PC 画面上に表示される電話番号アイコンをダイヤルすることにより、内線端末から電話 発信が可能である。また、スタッフの現在の状態が表示されたアイコンから相手をクリ ックすることにより電話発信を行うこともできる。アイコンにはスタッフの在籍/不在な どの状態が表示される。電話発信を受けたら、USB でパソコンに接続されたハンドセッ トを使って通常の電話同様に通話ができる仕組みになっている。ハンドセットでなくて も、無線につながる携帯電話 FOMA を使えば、通話が可能である。 図 2-2 操作画面 電話のかけ方にはいくつかの方法がある。1 つは、PC 画面上の電話のアイコンから掛け る方法である。PC 画面上の電話のアイコンを押すと、受話器が上がった状態となるので、 従来のように番号をまわして電話を掛けることができる。他の方法としては、PC 画面上 の電子電話帳から電話を掛けることもできる。電話を掛ける相手を、あらかじめメンバ ー一覧に登録しておくと、登録リストからクリックするだけで電話を掛けることができ IP 電話調査報告書 2-8 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト る。名前の横には、状態アイコンが表示されており、相手の状態を示す。もしも、アイ コンが緑だと相手は在席といったことを判断することができる。オレンジだと不在を示 し、相手の状態を自動的に判断することができる。 従来の電話であれば、電話を何度掛けてもつながらないといったことがよくあるが、ア イコンを確認してから電話をすることで、何度も電話を掛けるといったムダを省くこと ができる。 (2) ビデオ会議の連絡 スタッフの現在の状態が表示されたアイコンから会議を行うスタッフに対して、ビデオ 会議の連絡が可能である。ビデオ会議機能では、デスクトップ上に共有ウィンドウが表 示され、共有ファイルが表示されるので、そのファイルを見ながら会議ができる。お互 いの映像がデスクトップ上に表示されるので、話ながら相手の表情がわかる。 図 2-3 ビデオ会議のイメージ IP 電話調査報告書 2-9 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 打ち合わせの中で共有したいパワーポイント、エクセルなどの資料を立ち上げると、相 手画面には自分のデスクトップのウィンドウが自動的に表示される。共有ウィンドウで、 互いに共通の資料を確認することができる。また、制御権を入れ替えることにより、相 手側にある資料を自分でも手直しすることが可能となる。 このように相手の顔を見ながら、電話で話しながら、1 つの資料を作り上げていくとい ったことが可能である。 2.4.1.2 コミュニケーションポータル コミュニケーションポータルを使うことにより、通常バラバラに管理されているコミュニ ケーション手段を一元管理することが可能である。 図 2-4 コミュニケーションポータルと提供機能 バラバラに管理していたコミュニケーション手段を一元管理することで、業務のムダが省 けると同時に、シームレスなコミュニケーションを提供でき業務の効率化を実現できる。 IP 電話調査報告書 2-10 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 次の図は、コミュニケーションポータルのイメージを示したものである。コミュニケーシ ョンポータルのインタフェースを使うと、スタッフの位置情報、スケジュール、在籍状況 などを確認することができる。 コミュニケーションポータルを使って、Web 会議がどのように行われるかを説明する。 図 2-5 コミュニケーションポータルから各種情報へのアクセス (1) Web 会議の召集 電話を掛ける感覚で、Web 会議を召集できる。スタッフの現在状況がわかるアイコンか らスタッフの状況を確認しながら Web 会議の連絡をする。アイコンには、社内に設置さ れた無線 LAN アンテナを通して確認されるスタッフの位置状況も表示されるので、その 状態を確認しながら電話をするかどうかを決定する。このアイコンは社内のスケジュー ル表とも連携されている。 Web 会議の通知を受けたスタッフは、ビデオ会議に参加する場合、アイコン上にある参 加を表明するメニューをクリックして会議に参加する。Web 会議への参加は、音声であ れば 32 名、映像は 8 名まで可能である。 相手の顔を見ながら、資料を共有しながら、瞬時に打ち合わせを進めるとができる。通 IP 電話調査報告書 2-11 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 常の会議システムといったものは、予約が必要となるが、このシステムでは単に電話を 掛けるような感覚で、会議を行うことができる。 会議中、第三者を会議に呼び出したいといった場合、召集することができる。もちろん、 会議の召集を受けた者は、非参加を選択することができる。しかし、参加を押すと、コ ミュニケーションドアといった会議システムが起動して、瞬時に相手の顔を見ながら打 ち合わせに参加することが可能となる。 2.4.2 モバイルソリューションブース オフィスと同じ環境での業務を遂行できる次の 3 つのソリューションを提供している。 UNIVERGE "FOMA@"連携ソリューション UNIVERGE モバイル UNIVERGE セキュリティ ここでは、UNIVERGE "FOMA@"連携ソリューションの内容を紹介する。 2.4.2.1 UNIVERGE "FOMA@"連携ソリューション サーバ SV7000 との連携により、Web クライアントから電話機能が利用できるソリューシ ョンである。無線 LAN と FOMA のワイヤレス高速通信機能を使って、モバイル PC から グループウェアや業務に必要なアプリケーション等をどこからでも利用できる。 このソリューションが持っている機能には、次の 7 つの機能がある。 共有アドレス帳からの電話発信機能 受信メールからの電話発信機能 発着信履歴の表示機能 個人アドレス帳からの電話発信機能 発着信履歴からの電話発信機能 音声メール受信機能 音声メール読み上げ機能 IP 電話調査報告書 2-12 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 次にこれらの機能を使ったソリューションを紹介する。 (1) 内線電話番号による発信 グループウェアの機能から電話を掛ける相手(内線)を選びクリックすると、相手の FOMA に接続される。携帯同士の音質は決して通常の電話と比較しても劣るものではな く、音声の遅延も相手を見ながら話をしない限りわからないレベルである。 内線番号にかけて、もし相手が不在で外出中の場合でも外線に自動的に切り替えられて 電話が掛けられる。 (2) “FOMA@"連携ソリューションの特徴 最新の FOMA/無線 LAN デュアル端末の FOMA N900iL を採用し、ワイヤレス内蔵電話 と携帯電話を 1 台で対応できる。また、社外でも会議室でも自分のデスクにいるの同じ ように電話や電子メール、Web などを使用できるモバイルオフィスを実現するソリュー ションである。社内に設置された無線 LAN アンテナを通してスタッフが社内のどこにい るか確認可能である。 FOMA 連携ソリューションの特徴的な機能は、社員Aから社員Bに内線番号で電話を掛 けるが、相手が外出してしまっている状態であっても、自動的に外線に切り替わるとい った仕組みの機能である。 プレゼンスシステムにより、相手が在席中か離席中、会議中、外出中などの状況を事前 に確認することができるので、伝えたい用件を最適な手段で伝達することができる。社 内では複数の人のプレゼンスを同時に確認できるので、すぐに話せる相手に電話すると いったことも可能である。 図 2-6 プレゼンス画面 IP 電話調査報告書 2-13 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 社内の人に電話を掛ける場合、社内から個人の内線番号へダイヤルすれば、相手の場所 を確認せずに、すべてシームレスで電話がつながっていく仕組みである。これにより、 社内 LAN 上にいる社員同士が携帯電話で話してしまうということも抑えることができ る。 2.4.3 セキュリティブース セキュリティブースには、次の 8 つのソリューションが紹介されている。 顔認証ソリューション 端末セキュリティソリューション フィジカルセキュリティ PC 検疫ソリューション ネットワーク記録・解析システム 無線 LAN 運用管理システム 機密データ持ち出し制御 Web システムセキュリティ 上記のソリューションのうち、顔認証ソリューションのデモを視察した。 2.4.3.1 顔認証ソリューション 設定した時間間隔でフェイスモニターが端末使用者の顔の認証を行い、登録者以外の不正 使用を防いでいる。パソコンのログインと同時に顔認証を行うフェイスモニターが起動し、 許可されたユーザかどうかを確認する。ユーザが端末から離れるとフェイスモニターが離 席を自動的に認識し、スクリーンにロックがかかるようになっている。ユーザが席に戻る と、ロック画面は自動的に解除される仕組みになっている。そのため、ID やパスワードの 入力も必要ない。席をはずしたときにロックがかかる時間はユーザが自分で設定できる。 このソリューションには、警告通知機能があり、もし、許可されていないユーザが端末を 使うなど不正利用を検知すると、スクリーンロックがかかってしまう。ロックを解除しよ うと試みると、警告の意味で不正使用者の顔写真がスクリーン上に表示され、指定アドレ IP 電話調査報告書 2-14 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト スに顔画像つきの警告メールが送られる仕組みになっている。 この機能は、10 人まで登録することができる。眼鏡などもある程度変わるものとしてプロ グラムされているため、眼鏡をかけたりはずしたりしても認識が可能である。 基本的に唇の上から、眉の下くらいまでの範囲で認証を行っているため、顔全体、または 半分くらいを覆ってしまうと認証が難しい。ヒゲも多少であれば可能である。 次の図は、認証のプロセスを表したものである。 図 2-7 プレゼンス画面 IP 電話調査報告書 2-15 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト IP 電話調査報告書 2-16 第3章 OKI 情報通信融合ソリューションフェア 2005 視察 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 3 OKI 情報通信融合ソリューションフェア 2005 視察 沖電気工業株式会社(以下、沖電気)様主催の OKI 情報通信融合ソリューションフェ ア 2005 において IP 技術を使った沖電気ソリューションを視察した。本視察を通して、沖 電気工業様が提供している IP 電話最先端技術を学ぶことができた。 3.1 視察日時 平成 17 年 10 月 19 日~20 日 IP 電話に該当するセミナーと展示会を見学 3.2 視察先 沖電気工業様主催「OKI 情報通信融合ソリューションフェア 2005」 東京都港区六本木 6-10-1 図 3-1 六本木アカデミーヒルズ 40 OKI 情報通信融合ソリューションフェア 2005 バナー 本視察は、取材のため代表者による視察とした。 IP 電話調査報告書 3-2 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 3.3 視察概要 OKI 情報通信融合ソリューションフェアでは、展示会場と講演セミナー会場の2つに分か れており、展示会場のブースには、業種別ソリューションと共通ソリューションに大きく 大別される。主な業種別ソリューションは以下の通りである。 ・金融機関 ・通信キャリア ・官公庁、公共、防災 ・製造業、流通小売業 ・サービス業 ここでは、各業種にあう製品が展示されている。一方共通ソリューションには、 ・先進オフィス ・セキュリティ ・無線ネットワーク であった。 図 3-2 OKI 情報通信融合ソリューションフェア会場案内図 IP 電話製品は先進オフィスブースの展示のため、今回の調査対象は先進オフィスとした。 IP 電話調査報告書 3-3 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 主な展示製品は以下の通りである。 ・ IP CONVERGENCE SERVER(R) SS9100 ・IPstage シリーズ ・e おと(R)IP フォン/e おと(R)ソフトフォン ・モバイルセントレックスシステム(FOMA(R)/無線 LAN デュアル端末)、構内 PHS ・VoIP 対応無線アクセスポイント ・コンタクトセンターシステム CTstage4i ・映像監視ソリューション VisualCast(R)-SS ・携帯型映像伝送装置 MPEG-4 Encoder RS-M ・ 上記製品のうち主要 IP 電話製品について、説明員より説明を受けた。また、講演セミ ナー会場では、㈱エヌ・ティ・ティ・ドコモと沖電気製品によるモバイルセントレックス に関する講演に参加した。 IP 電話調査報告書 3-4 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 3.4 視察内容 展示ブースでは、以下の沖電気 IP 電話製品について調査。 図 3-3 IP CONVERGENCE SERVER(R) SS9100 沖電気の SIP サーバが、 「IP CONVERGENCE Server SS9100(以下、SS9100)」である。 このサーバによりオフィスに IP テレフォニー(IP 電話)環境が構築できるとともに、 業 務アプリケーションとの連携によりオフィスのコミュニケーションを向上して、業務プロ セスの効率化や情報の共有を実現できる製品。大企業向けに「SS9100」が用意されており、 中堅企業向けには「SS9100 Type M」が用意されている。 IP 電話調査報告書 3-5 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 「SS9100」では、最大 5,000 内線収容できる。また、中堅企業向けの「SS9100 Type M」 も最大 500 内線収容できるため、従来各支店や拠点に設置していた PBX が、企業内 IP ネ ットワークに 1 システム置くことで内線網を構築できるため、機器コストや機器新設・移 設などの管理コストも含めて安価に運用できる。 「SS9100」を使用した IP 電話環境に移行する際、全社一括移行が難しい場合、拠点ごと などの順次移転ができる。その際、 「SIP 対応 VoIP ゲートウェイ」が「SS9100」のクライ アントとして振る舞い、そのバックに既存の PBX を置くことができる。リースや資産の有 効な利用を考えて、必要なときに IP 電話環境に移行できる。 IP 電話調査報告書 3-6 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 「SS9100」には TypeM という中堅企業向け SIP サーバが用意されている。「SS9100」は 大企業をターゲットにして最大 5,000 台の内線電話をサポートできるが、TypeM は、中堅 企業向けのため最大 500 台をサポートする。 企業内に「SS9100」サーバを設置した場合、IP セントレックス方式で 1 台のサーバが、IP ネットワークで接続された全拠点の内線を集中して処理する。内線を掛ける際、 「SS9100」 サーバが内線番号を IP アドレスに変換して通話を確立させる役割を持つのである。 そのため停電や障害などが発生した場合には影響が全社におよび、ビジネスチャンスに多 大な損失を与えるケースも想定される。 このような場合に備えて、処理を代行するサバイバル機能を持つサーバ(サバイバルサー バ)を設置することで、公衆電話網への発着信や拠点内の内線処理も継続して利用できる のである。 IP 電話調査報告書 3-7 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 無線 LAN アクセスポイントを使用することで、 無線環境での IP 電話や PC を使用できる。 「SS9100」では「FOMA/無線 LAN デュアル端末」無線 IP 電話機を利用することで、企 業内モバイルセントレックスの構築が可能。社内では無線 LAN による内線電話機として利 用することで、自席を持たないフリーレイアウトオフィス環境も実現可能である。 また他 の社内拠点に移動した場合でも、同じ内線番号で通話することが可能である。オフィス外 では携帯電話機としても利用できるので、どこにいてもすぐにコミュニケーションが取れ るのである。 IP 電話調査報告書 3-8 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト オフィス外から社内に電話を掛ける際、相手の状況(プレゼンス)を確認して相手が応答 できる状態かどうか見極めてから電話を掛けるなどのアクションが取れるので、仕事の効 率が向上する。 3.4.1 高機能 IP 電話機 沖電気が開発した「e おと」は、従来の電話より広い音声周波数帯域を伝達することで、臨 場感あるコミュニケーションを実現する技術である。 従来の公衆電話網や PBX では、限 られた通信設備を有効に使用するために、伝達できる音声の周波数帯域が、通常の会話が 可能とされる 300~3,400Hz に限定されているが、より広い周波数帯域を使用するために品 質のよい音声伝送ができる。 IP 電話調査報告書 3-9 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト IP 電話調査報告書 3-10 第4章 シスコシステムズ福岡オフィス視察 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 4 シスコシステムズ福岡オフィス視察 インターネット/イントラネットの基盤となるネットワーク関連機器を提供する世界的なベ ンダーであり、インターネットの発展に主導的な役割を果たしてきたシスコシステムズ株 式会社のオフィスのひとつである福岡オフィスを視察した。シスコシステムズ株式会社が IP 電話分野でどのような対応を行っているか、特に技術的な側面に焦点を当てて視察を行 った。PBX 機能と、拠点間のデータ交換を可能にする VPN 機能を提供する Cisco CallManager(シスココールマネージャ)製品を使って、どのような IP 電話機能を提供し ているかも本報告書に記述している。 4.1 視察日時 平成 17 年 12 月 9 日 4.2 13:00~15:00 視察先 シスコシステムズ株式会社 福岡オフィス 〒812-0039 福岡県福岡市博多区冷泉町 5-35 福岡祇園第一生命ビル 12F 図 4-1 シスコシステムズ福岡オフィス(福岡祇園第一生命ビル) IP 電話調査報告書 4-2 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 4.3 視察概要 現在、従来のアナログ電話から IP 電話への流れが進んでいる中、シスコシステムズ株式会 社は Cisco CallManager の使用により、IP 電話の基本となる音声とデータ処理を可能にし ている。シスコシステムズ株式会社では、IP 化により業務効率や生産性の向上をいかに実 現できるかという視点で事業の展開を考えている。 IP テレフォニーの展開において、ネットワークの障害対応は重要な課題である。IP テレフ ォニーの信頼性を高めるために、CallManager を IP コミュニケーションネットワークに導 入して、ネットワーク上での高速で高品質なコミュニケーションの確保を行っている。ネ ットワークの障害を回避するために、クラスタリング構成という複数のコンピュータによ って処理を分散する方法を採用している。また、ネットワークの障害が発生した場合、SRST という機能を使ってルータがその間だけ呼制御する仕組みを利用している。 CallManager と PC 上のソフトウェアの組み合わせにより、いろいろなコミュニケーショ ンの実現を行っている。たとえば、パソコン上のソフトからの会議やスケジュール管理、 そして受付システムなども実現している。 図 4-2 「アナログ音声から IP 音声への流れ」の説明 (シスコシステムズ株式会社 柳原様) IP 電話調査報告書 4-3 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 4.4 視察内容 ここでは、IP テレフォニー(IP 電話)への流れに至る背景とシスコ IP テレフォニー、そし て IP テレフォニーを可能にしているシスコ製品のひとつである Cisco CallManager の概要に ついて記述する。現在、IP テレフォニーが脚光を浴びる中で、シスコシステムズ株式会社 は IP テレフォニーの機能のどこに差別化を図ろうとしているかなども記述している。また、 オフィスの有効利用と作業の効率化ということを考え、シスコシステムズ株式会社がどの ようなオフィススタイルを採用しているかも記述する。 4.4.1 シスコシステムズのオフィス シスコシステムズ株式会社は全国に 10 箇所のオフィスを持っている(図 4-3 参照)。他事 業所拠点同様、福岡オフィスも IP 化されており、書類関連もすべてメールにより回覧、処 理が行われている。停電時の回線確保の観点から、敢えて FAX についてはアナログ回線に 収容を行っている。オフィスが IP 電話だと、引っ越し時の電話の再設定などが不要になり 引っ越し時の手間が省ける利点があるという。 図 4-3 シスコシステムズ株式会社のオフィス IP 電話調査報告書 4-4 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト シスコシステムズ株式会社では、IT 業界で世界的に広まりつつあるオフィススタイルを取 り入れたワークスペースの利用を進めている。オフィススタイルは、いままでの従業員に 割り当てられているワークスペースから仕事内容に合ったオフィスの施設を各スタッフが 自由に選択する方法へと変化している。この種のオフィススタイル利用のコンセプトの背 景には、IT ツールの発達や作業スタイルの多様化、そして、仕事の評価方法が成果主義に 移行してきたことがあげられる。 ワークスペースの有効利用を行うにあたって、丸の内オフィス(以前の本社ビル)や大阪オフ ィス、新宿三井オフィスなどにおける在籍状況などを調査/分析して、オフィスの有効利用 を決定している(図 4-4 参照)。 ワークスタイル分析 2001/4 赤坂オフィス移転 Me eting/No t at des k 28% Co mpute r 32% オフィススペースの利用を最大限に効率化さ せるため、各拠点における座席着席状況を調 査し、結果の分析により、もっとも効率のよい オフィススペースの使用のあり方を考えた。 Pape r work 3% Tele pho ne 3% Not in at all 34% 丸の内 富士ビル 赤坂へ移転 Mee ting /not at des k 3% Mee ting /Not at des k 19% Co mpute r 39% Co mpute r 44% No t in at all 49% Paper work Telepho ne 5% 4% Not in at all 33% 大阪オフィス © 2004, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 図 4-4 Paper work 1% Te le phone 3% 新宿 三井ビル 5 ワークスタイル分析 次にシスコシステムズ株式会社が取り入れているワークスペースのいくつかを紹介する。 (1) 従来のワークスペース 図 4-5 は従来外資系に見られるひとり分の席(キュービクル方式)で、この席にパソコンや 電話機などが割り当てられている。机上にいろいろな書物を並べたり、ちょっと機材を 足元に置いたりできるが、フリーアドレスになると本が置けなかったりするという。 従来のワークスペースの在籍状況と席の使われ方を外部の調査会社が調査/分析を行っ たところ、利用時間の半分以上は席にいないという結果がでたという。ミーティングで IP 電話調査報告書 4-5 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト いなかったり、外出していたりして、自分の席が空いているということである。 キュービクル式 © 2004, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 図 4-5 (2) 4 従来のワークスペース シェアードスペース ワークスペースの在籍状況の調査結果から、通常の業務を行うときに使用するシェアー ドスペースという考え方が採用された(図 4-6 参照)。シェアードスペース利用者には、 1 人 2 段のキャビネットが準備されている(図 4-7 参照)。 シェアードスペースでは、電話機で自分の ID とパスワードを入れて、自分の電話機とし て使用することができる。シスコシステムでは、これをエクステンションモビリティ機 能と呼んでいる。 IP 電話調査報告書 4-6 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト アクティビティセッティング シェアードスペース コラボレーション © 2004, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 図 4-6 シェアードスペース 図 4-7 個人用キャビネット (3) 6 固定スペース 庶務業務を含めた事務やアドミニストレータ業務者用に固定席が配置されている。また、 マネージャーには席固定が与えられている(図 4-8 参照)。 IP 電話調査報告書 4-7 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 図 4-8 (4) 固定スペース クワイエットルーム クワイエットルームは集中して作業をするときに使用する部屋で、1 人分のスペースし かない(図 4-9 参照)。電話で機密性が高い話をするときとか、社内のテストを受ける ときなどで、割り込みが入るのを避けるときなどに使用する。 福岡オフィスには 1 室、大阪オフィスには 5~6 室、赤坂オフィスには各フロアーに 6 室 程度が配置されている。 図 4-9 クワイエットルーム IP 電話調査報告書 4-8 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト (5) タッチダウン タッチダウンは、海外を含めてシスコシステムズのどこのオフィスにでもあるスペース で、他のオフィスの人が立ち寄ったときに自由に LAN に接続して、メールをダウンロー ドするとか一時的に作業をするスペースである。 上述以外に、予約なしに必要に応じて打ち合わせに使用できる「コラボレーションエリア」 や VOD を作成するために使用する「VOD ルーム」などがあり、オフィススペースの有効 利用と効率的な業務を目指した取り組みが行われている。 4.4.2 アナログ音声から IP 化音声への流れ 現在、従来のアナログ電話から IP 電話への流れが進んでいる。IP 電話が徐々に加速してい る背景には、企業が望んでいるコスト削減という側面だけでなく、いくつかの特記すべき 点がある。その背景には、IP 通信を可能にするブロードバンドなどのインフラの整備が行 われ、情報伝達の高速化のための技術的な環境が整いつつあることや、IP 電話が持つ各種 機能の提供などがあると考えられる。ここでは、IP 電話化への流れとシスコシステムズ株 式会社が提供している音声とデータ処理を可能にしている CallManager について、今回の 視察を基にその概要を記述する。 (1) IP テレフォニー化の背景 当初は従来の PBX から IP PBX 等に置き換える過程で、コストが最優先に言われたが、 最近は WAN のマイラインの関係等で、コストが下がっている。考えようによっては、 自営設備を持つよりは、キャリア様のサービスを利用した方が安いということにもなっ ている。シスコシステムズ株式会社では、IP 化により業務効率とか生産性の向上をいか に実現できるかという視点で IP 化に対応している。 IP テレフォニー化への動きの背景には、WAN 環境の劇的な変化、スイッチ自体の高速 化、かつ QoS の機能の充実がある。また、キャリアサービスも SIP(Session Initiation Protocol)の選択サービス等に代表される安価な WAN サービスというようなところが背 景にある。 次の要素は、IP テレフォニー化への動きの背景となるものである。 IP 電話調査報告書 4-9 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト ブロードバンドサービスの登場、 帯域共有型の HUB から高機能/高速イーサネットスイッチへのネットワー ク環境の変化が背景 キャリア IP 電話サービスの登場 格安電話サービス 同一サービス加入者間の通話料無料 ダイヤルイン費用の低価格化 厳しい経済と IT 投資 長引く経済不況 業務効率/生産性の向上 Legacy PBX に対する後ろ向きな投資 高いランニングコスト (2) Legacy PBX の構成要素 次の図は、従来の PBX を機能(ファンクション)からイメージ化したものである。PBX の構成は、PBX という筐体と、その中で呼を制御する部分と、その入出力の制御をする 部分であるスイッチ部分、そしてインタフェース部分で電話機がつながっているライン カードと、トールループと呼ぶ局線側に入る部分から構成されている(図 4-10 Legacy PBXの構成要素 概要 Legacy PBX 自動音声応答装置 ボイスメールシステム 課金データ(SMDR )収容 課金データ(SMDR) etc. 電話機からの電話番号を 元に方路※選択を行う。 ※方路: ※方路:トランク, トランク,ライン アプリケーション 電話網の 接続インターフェース※ 電話機の 接続インターフェース※ IDF / MDF ※E&M/FXO BRI/PRI/TTC2M/Digital 呼制御モジュール ※FXS/BRI/Digital V ライン カード スイッチング トランク カード 加入電話網 ISDN網 ISDN網 内線電話網 電話機のラインと トランクを結ぶ スイッチファブリック IP Communications Solution 図 4-10 © 2003, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. Legacy PBX の構成要素 IP 電話調査報告書 4-10 1 参照)。 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト (3) 従来の PBX の動作 従来の PBX の内線電話の仕組みは、簡単にいうと、2000 番の電話から 3000 番の電話に 掛けるとき、呼制御のモジュールで呼を折り返して内線に掛けるというものである(図 4-11 参照)。 外線発信の場合は、通常外線を示すゼロをつけて発信しているので、呼制御モジュール をいったん経由する際に、最初のゼロを取って NTT 公衆回線につなぐというような動き を、従来の PBX は取っている。 外線からの着信の場合は、トランクカードを経由して呼制御モジュールに入った後、内 部の電話にパスが張られて、通話セッションが確立される仕組みである。 Legacy PBXの動作概要 外線発信 Legacy PBX 発信番号の先頭’ 発信番号の先頭’0’によって、 外線向けトランクを選択 0発信 2000 アプリケーション 電話網に対し、 ‘0’を削除して送信する。 加入電話 0303-55495549-6500 呼制御モジュール 0303-55495549-6500 0-0303-55495549-6500 IDF / MDF 3000 V ライン カード 通話路 スイッチング トランク カード 加入電話網 ISDN網 ISDN網 内線電話網 電話機→加入電話へ発信する。 (外線通話) IP Communications Solution 図 4-11 © 2003, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 2 PBX による内線電話 従来は、電話系システムとデータ系システムは全く別なシステムのため、2 系統必要だ った。現在、IP 電話が実現されたため、統合されたシステム環境となった。実現された 具体的なハードウェア構成は、図のようになる(図 4-12 参照)。電話機は IP 電話だが、 呼制御はシスコではソフトウェアコンポーネントである CallManager を使っている。ス イッチング部分はいままでの L3、L2 スイッチである。VoIP ゲートウェイというルータ 部分が、従来の電話システムのゲートウェイとして外線接続の呼制御機能を持っている。 通話セッション確立動作の方もすでに見たものと同じである。内線通話する場合は、IP 電話からスイッチを経て呼制御を行う CallManager に入り、CallManager でデータベース IP 電話調査報告書 4-11 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト から電話番号と相手の IP phone の IP アドレスを関連付けて特定する。IP アドレスが特定 されると呼がその IP 電話との間で確立される。 シスコIPテレフォニー動作概要 内線通話 発信番号から V 電話番号データベースを 使って” 使って”相手IPアドレス”を 特定する。 Cisco IP Phone Cisco CallManager 電話番号 データベース 00 30 InlinePower対応 InlinePower対応 LANスイッチ LANスイッチ 通話路 2000 3000 内線2000 番→3000 3000番へ発信する。 番へ発信する。 内線2000番→ (内線通話) 図 4-12 加入電話網 ISDN網 ISDN網 内線電話網 Catalyst LANスイッチ LANスイッチ アナログ電話& アナログ電話&TA ATA186 / VG248 IP Communications Solution VoIP対応 VoIP対応 ルータ 加入電話 0303-55495549-6500 InlinePower対応 VoIP対応 VoIP対応 InlinePower対応 LANスイッチ LANスイッチ ルータ 広域イーサ IPIP-VPN Cisco IP Phone © 2003, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 3 シスコ IP テレフォニーの動作概要(内線通話) 拠点間通話というのは別拠点間での内線だが、呼は CallManager の呼制御を経由してリ モートの対応地につながる(図 4-13 参照)。外線発信の場合、最初に付いているゼロを 外して、外部に接続する(図 4-14 参照)。着信の場合、呼は CallManager を通じて、内 部の電話機にパスを張って通話セッションが確立する。電話そのものの機能に関しては、 IP PBX も従来のレガシーPBX も動作的には同じである。 IP 電話調査報告書 4-12 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト シスコIPテレフォニー動作概要 拠点間通話 発信番号から V 電話番号データベースを 使って” 使って”相手IPアドレス”を 特定する。 Cisco IP Phone Cisco CallManager 電話番号 データベース 00 50 InlinePower対応 InlinePower対応 LANスイッチ LANスイッチ VoIP対応 VoIP対応 ルータ 2000 3000 通話路 InlinePower対応 VoIP対応 VoIP対応 InlinePower対応 LANスイッチ LANスイッチ ルータ 中央集中型の呼制御モデル 内線2000 番→IP IP--WANを介した 5000番へ発信する。 番へ発信する。 内線2000番→ WANを介した5000 (拠点間通話) 図 4-13 加入電話網 ISDN網 ISDN網 内線電話網 Catalyst LANスイッチ LANスイッチ アナログ電話& アナログ電話&TA ATA186 / VG248 IP Communications Solution 加入電話 0303-55495549-6500 広域イーサ IPIP-VPN 5000 Cisco IP Phone 4 © 2003, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. シスコ IP テレフォニーの動作概要(拠点間通話) シスコIPテレフォニー動作概要 外線発信 発信番号から V 電話番号データベースを使って ”VoIPゲートウェイのIPアドレス” を特定する。 電話番号 データベース 0 50 信 9-6 0発 -554 InlinePower対応 対応 InlinePower Cisco -03 0LANスイッチ LANスイッチ IP Phone 2000 VoIP対応 VoIP対応 ルータ 通話路 3000 アナログ電話& アナログ電話&TA ATA186 / VG248 図 4-14 加入電話 0303-55495549-6500 加入電話網 ISDN網 ISDN網 内線電話網 Catalyst LANスイッチ LANスイッチ 内線2000 番→外線へ発信する。 内線2000番→外線へ発信する。 (外線発信) IP Communications Solution 電話網に対し、 ‘0’を削除して送信する。 Cisco CallManager InlinePower対応 VoIP対応 VoIP対応 InlinePower対応 LANスイッチ LANスイッチ ルータ 広域イーサ IPIP-VPN Cisco IP Phone © 2003, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 5 シスコ IP テレフォニーの動作概要(外線発信) IP 電話調査報告書 4-13 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト (4) ネットワーク構成 ネットワーク構成は大きく次の 2 つに分けられる。 ディストリビューションモデル(分散型モデル) IP セントレックスモデル(集中型モデル) ディストリビューションモデルでは、一般的に PBX を使って、各サイトに呼制御装置を 配置して分散制御する。一方、IP セントレックスモデルでは、ネットワーク上にひとつ の呼制御装置を配置して、すべてのデバイスを集中的に制御する。 最近は、IP セントレックスという言い方よりは、集中型という方が一般的になってきて いる。分散型は、どちらかというと拠点ごとに PBX を置くようなイメージで分散型と呼 んでいる。集中型は、たとえば、本社に CallManager とか呼制御をする装置を置いて、 各拠点で発生する呼制御の要求も、本社の呼制御装置で制御する集中型のモデルになっ ている。 呼制御装置の管理、保守、設定に関しては、一箇所に集めている方が効率的であるが、 WAN の障害に対しては、一箇所に集中してしまうことで、WAN 経由の拠点へ到達でき ないということになり、集中型は影響が出やすい(図 4-15 参照)。 各呼制御モデルの特徴 IPセントレックス (集中型モデル) 初期導入コスト デバイス設定 管理/監視 保守費用 WAN障害 IP Communications Solution 図 4-15 ○ × 導入機器が”少” 導入機器が”多” ○ ▲ 1局で集中設定 複数局の設定要 ○ ▲ 管理対象を集中化 管理対象が点在 ○ × 保守対象が”少” 保守対象が”多” ▲ ○ 比較的弱い。 サイト単位で動作可 © 2003, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 呼制御モデルの比較 IP 電話調査報告書 4-14 ディストリビューション (分散型モデル) 6 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 図 4-16 は、従来の PBX で構成されている分散型モデルである。それぞれの拠点に PBX が配置されており、送られてきたデータが自分のところのものではないということであ れば、次の PBX に送るというような仕組みである。 この分散型モデルを採用している企業を集中型モデルで置換えて表現すると、図 4-17 の イメージになる。集中拠点となるセンター側の CallManeger に各拠点から呼制御を求め、 通話セッションが確立すると CallManager を経由せずに電話機間で直接通話が行われる。 ディストリビューションモデル (Legacy PBXネットワーク) 中継PBX 中継PBX (地域毎) 支社 電話網 (回線交換網) PBX 中継PBX 中継PBX (地域毎) 中継PBX 中継PBX (地域毎) 中継PBX 中継PBX (地域毎) 本社ビル PBX 工場 PBX IP Communications Solution 図 4-16 PBX 営業所 7 © 2003, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. ディストリビューションモデル IPセントレックスモデル (自営:企業向け) 本社ビル/ センター デスクトップPC CallManager 加入電話網 ISDN網 ISDN網 ソフトフォン ルータ 自営VoIP 網 自営VoIP網 (IP網) IP網) IP電話機 無線 IP電話機 広域イーサネット IPIP-VPN デスクトップ PC 支社 工場 ルータ 無線LAN VoIP ゲートウェイ PBX 加入電話網 ISDN網 網 ISDN 無線 営業所 IP電話機 Solution © 2003, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. IP Communications 図 4-17 ルータ 加入電話網 ISDN網 ISDN網 VoIP-TA 8 IP セントレックスモデ IP 電話調査報告書 4-15 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 4.4.3 CallManager と IP コミュニケーション シスコ IP テレフォニーの動作環境の紹介の中で用いられている CallManager は、音声と 映像が統合されたデータを行う呼処理ソフトウェアコンポーネントである。この CallManager を IP コミュニケーションネットワークに導入することにより、従来の PBX よりも高い機能を提供すると共に、IP テレフォニーの信頼性を高めるという。ここでは、 CallManager を使った IP テレフォニーの信頼性と提供される機能に焦点を絞って視察内 容を紹介する。 シスコ IP テレフォニーの信頼性 (1) IP テレフォニーを展開する上で、ネットワークの障害対応は重要な課題であり、ネット ワーク上で高速、高品質のコミュニケーションを確保するための必要条件である。その 意味では、IP テレフォニーの中心的な役割を担っている CallManager は重要な位置を占 めることになる。 CallManager が本社に 1 台しか置かれていない場合、それがダウンしてしまうと、その CallManager が行っている呼制御は当然機能しなくなる。このようなシステム障害を回避 するために、CallManager はいくつかの方法により信頼性を確保している。そのひとつが クラスタリング構成である(図 4-18 参照)。 IPセントレックスモデル (クラスタリング over WAN) 本社ビル/ センター CallManager CallManagerは分散しているが、 論理的には一つの呼制御サーバである。 デスクトップPC 加入電話網 ISDN網 ISDN網 ソフトフォン 自営VoIP 網 自営VoIP網 (IP網) IP網) ルータ IP電話機 データセンター 無線 IP電話機 広域イーサネット IPIP-VPN デスクトップ PC 支社 工場 ルータ 無線LAN VoIP ゲートウェイ PBX 加入電話網 ISDN網 網 ISDN 無線 営業所 IP電話機 Solution © 2003, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. IP Communications 図 4-18 ルータ 加入電話網 ISDN網 ISDN網 VoIP-TA 9 クラスタリング クラスタリング構成とは、複数のコンピュータによって処理を負荷分散する方法である。 IP 電話調査報告書 4-16 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト CallManager のクラスタリング構成により、つまり CallManager の冗長化により、運用系 サーバに障害が発生した場合、予備サーバが通話中の呼を処理して、通話を継続するこ とができる方法を取っている。たとえば、新宿と赤坂に CallManager を分散させて、そ の同期を取り、どちらかが落ちた場合どちらかのサーバへ迂回するというような仕組み を取っている。つまり、集中型モデルでいちばん問題になるのが WAN の障害部分であ るが、サーバの冗長性を取ることで障害を回避する。 また、CallManager がダウンしたとき、一時的な回避として SRST という機能を使ってル ータがその間だけ呼制御する仕組みがある(図 4-19 参照)。つまり、集中型モデルでい ちばん問題になるのが WAN の障害部分であるが、サーバの冗長性を取ることで障害を 回避する。また、ネットワーク自体も IP で構成されていることから、従来の OSPF など のルーティングプロトコルを経路制御の仕組みとして使用するが可能である。 Survivable Remote Site Telephony機能 (SRST機能) WAN障害時、ルータが CallManagerの呼処理を代替する機能 の呼処理を代替する機能 WAN障害時、ルータがCallManager 定常時 加入電話網 IP Phoneは、 Phoneは、 CallManagerに対して CallManagerに対して Keepaliveを行っている。 Keepaliveを行っている。 Keepalive Si IP Network SRSTルータ WAN障害時 WAN障害時 ①CallManagerの生存確認 CallManagerの生存確認 が出来ない事を 検知すると、 ②IP Phoneは PhoneはSRSTルータ SRSTルータ に自身を登録する。 加入電話網 ① Dead検出 Si IP Network SRST Registration ② IP Communications Solution 図 4-19 © 2003, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 10 SRST 機能 SRST 機能は CallManager と組み合わせることで、高い可用性を提供する。LAN の障害 については、スイッチによる従来の LAN 技術の冗長性が取れる。たとえば、HSRB や VRRP は標準的なゲートウェイ冗長化の仕組みで、IP 電話環境でも使うことができる。 VoIP という言葉が出始めたときには、ルータとかスイッチの機器の QoS(Quality Of Service)という品質確保の技術はそれほど充実していなかったようである。極端なトラ フィックとしてデータがバックグラウンドに流れると、ゆらぎが大きくなったり、パケ ットが落ちたりということもあったが、音声を最優先するというような仕組みがほぼす IP 電話調査報告書 4-17 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト べての機器に実装されるようになり、現在では、十分な QoS 機能を持っているスイッチ であれば、音声の品質を確保することができるという。これは、レガシー系の PBX と比 べたときの弱点のひとつであったが、QoS の技術進歩によりかなり改善されている。IP 電話であっても、通常の電話と遜色がなくなっている。「VoIP 製品が出た当時は、試し 聞きをしたいとか、実際の音質はどうなんですか、というご質問を多数いただきました が、ここ最近、企業向け VoIP システムではそう言ったお問い合わせはなくなってきまし た。ちょうど、現在のインターネット電話が当時のレベルなのかも知れません」と述べ ている。 (2) IP コミュニケーションの機能 CallManager と PC 上のソフトウェアの組み合わせにより、いろいろな機能を利用するこ とができる。IP テレフォニーの導入により提供している機能のいくつかを見てみる。 ラインナップには電話機をパソコン上のソフトウェアで実現した、 「IP Communicator」と いう製品もあり、主にプログラマーや設計エンジニアに適しているという。連携するパ ソコン上のソフトウェアで会議のスケジュール管理や、受付システムなども簡単に実現 するアプリケーションも販売されている。これらはユーザのデータと連携して、相手名 をクリックすることで電話を掛けることができる。 また、シスコの IP 電話には電話会議機能が最初から搭載されており、複数台の電話会議 が可能である。10 拠点、20 拠点になると、専用サーバを分ける必要がある。 TV会議システム IPテレビ会議 -役員室向けの大型2画面TV会議エンドポイントから、 持ち運びができるAll in One型の小型エンドポイントま で多彩なラインアップ -大型2画面エンドポイントでは、片方の画面にプレゼン ターを表示して、もう一方の画面にPCのプレゼンテー ションを表示可能 -小型All in One型はAironetとの組み合わせで、 Wileless環境であればどこでも自由にTV会議の実施 が可能 -使いやすさを追求した管理ソフト及び会議予約ソフトを 搭載。 --DES, AES暗号サポートによる堅牢なセキュリティ機 能をサポート -CallManager 4.0と連携して、電話感覚でテレビ会議 の実施が可能 (TANDBERG550, TANDBERG1000) © 2004, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 図 4-20 電話会議システム IP 電話調査報告書 4-18 1 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト PC 上のインタフェースを使って、緊急でどこかのサーバがダウンしているという緊急の 連絡等に使うことも可能である。 IPページングシステム IP一斉放送 • CallManager / Cisco IPPhoneを利用した館内放送シ ステム • 各工程終了時に制御システム からの指令で次の工程に移動 することを自動的に放送 • 呼び出しや緊急通話は優先順 位を付けて現在放送中の放送 を遮って放送可能 • 全館一斉方法だけではなく、 特定の部署、フロアなどに限 定した放送も可能 概念図 IPページングシステム 802.11b ・全体放送 IP-Phone 用特番 IPページングサーバ ・エリア放送 特番 CTIポート IP-Phone に発呼 スピーカ 制御 IPリレースイッチ 放送 CTI CallManager 接続 音声変換機 アンプ • WANで接続していれば、遠隔 地の事業所への放送も可能 © 2004, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 図 4-21 2 ページングシステム PC 上のソフトキーを使って、オンデマンド通話録音や録音データの E メール転送などが 可能である(図 4-22 参照)。 NICE VoIP Recording 通話録音 通常の音声録音機能に加えて、IP-Phone のソフトキーを使用して以下の操作も可能。 • オン・デマンド通話録音 (ROD) –基本ROD (ボタンを押したときから録音) –次のコールを録音 –其のコールを最初から全部録音(保管) –其のコールを最初から全部消去 • 録音データのEメール転送 • IP-Phoneブラウザからの録音記録の検索 • リアルタイムモニター (スーパバイザがオペレータと顧客の会話をモ ニター) © 2004, Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 図 4-22 3 音声録音機能 IP 電話調査報告書 4-19 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト これから外出しなければならないというとき、電話のメッセージをそのまま別の担当者 に転送することができる。メールの転送と同じで、元のボイスメールの上に自分のメッ セージをかぶせて送る仕組みである。これにより、お客さんが結構感情的になられてい るとか、センシティブなことをおっしゃっているときに、怒られているその雰囲気をス タッフに直接転送することができるというメリットがあるという。オリジナルのボイス メッセージに「お客さんが非常に怒られています。こんな状態です。ちょっと対応願い ます」というメッセージを付けて転送することができる仕組みである。このような音声 録音機能を使って、メモ書きの文化をやめることで、お客さんへのレスポンスをよくし、 かつ効率を高めて無駄をなくことを狙っているようである。 また、受信したファックスをそのままメールの添付として送ったり、上述のボイスメー ルをそのままメールの添付として送ることもできる。メールを受け取った人はメールの 添付を再生する。つまり、ファックスやボイスメール、電話をユニファイドで統一して、 それぞれ融合させている。 4.4.4 (1) IP 電話接続デモ PC 上のソフトフォンを使った接続デモ。 福岡オフィス内にある「VT Advantage」という IP 電話と映像システムを統合した製品の デモを行った。この製品は、従来の専用のテレビ会議システムとは異なり、電話と映像 を共に Call Manager が呼制御を行っており、電話並みに簡単に TV 会議を行うことが可 能である。従来のテレビ会議と異なり電話と映像を共に呼制御している。IP 電話 A から IP 電話 B を呼び出す手順は、電話機の文字盤を押して普通に電話を掛けるのと同じ方法 である。これにより、簡単にテレビ会議環境が設定できる(図 4-23 図 4-23 IP 電話調査報告書 IP 電話接続デモ 4-20 参照)。 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 福岡オフィスと赤坂本社の受付にある IP 電話との接続デモに関しても、手順は社内間の IP 電話の接続と同じである。距離が遠くなっても接続のための手順は同じということで ある。赤坂の受付の様子が PC 画面に映し出されたが、デモの都合上、音声のテストま ではできなかった。LAN 内での接続とは異なり、WAN を経由する場合は多少なり、回 線帯域の影響を受けるようだ。 IP 電話の設定ができていれば、電話番号を入力するだけで簡単にテレビ会議環境が設定 できるので、今後 IP 電話の普及は映像といったいとなって普及する予感がする。 IP 電話調査報告書 4-21 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト IP 電話調査報告書 4-22 第5章 ノーテルネットワークス株式会社視察 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 5 ノーテルネットワークス株式会社視察 110 年の歴史と実績を持つネットワークスを支えるカナダの企業であるノーテルネットワ ークスを視察した。ノーテルネットワークス株式会社の視察を通して、同社が提供してい る VoIP 製品とマルチメディアソリューションの一部を見ることができた。また、ノーテル ネットワークス株式会社が目指すユビキタス社会像と IP 電話との関係を垣間見ることがで きた。 5.1 視察日時 平成 18 年 2 月 3 日(金) 13:00~15:30 5.2 視察先 ノーテルネットワークス株式会社 〒141-8411 東京都品川区大崎 1 丁目 11 番 2 号 ゲートシティ大崎イーストタワー9 階 写真 5-1 ノーテルネットワークス株式会社の受付 IP 電話調査報告書 5-2 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 写真 5-2 視察参加者とノーテルネットワークス株式会社様のスタッフ IP 電話調査報告書 5-3 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 5.3 視察概要 過去 20 年間で通信業界は劇的に変化を遂げ、現在もその変化の速度は止まることを知らな い。世界のいろいろな企業が直接的または間接的に、この通信業界を支えている。その中 で、ノーテルは、世界で非常に多くのお客様に使われている PBX を提供しているネットワ ーク会社である。 ノーテルは効果的なコミュニケーションを達成するメカニズムやそれを支えるためのネッ トワークを提供することを中心課題にしている。それを実現するための各種コミュニケー ションサーバが提供されており、我々の業務の効率化に貢献している。現在、徐々に注目 を集めている VoIP 技術も企業のコスト面だけでなく、効率面において今後重要な位置を占 めると思われる。 IP 網での IP 電話を使用することにより、音声などの通話品質が低下することがあるが、そ れをノーテルの製品である Multimedia Communication Server(マルチメディアコミュニ ケーションサーバ)を使って通話品質低下の回避を試みている。 ユーザの生産性向上とユーザに優しい製品ということで、留守番電話や電子メール、FAX など複数のメディアを単一のインタフェース(「シングルインタフェースでマルチコミュニ ケーション」 )を使用してコミュニケーションを行う方法を採用している。また、シングル インタフェースとして新たなインタフェースをインストールすることなしに、パソコンに 既にインストールされているメールツールなどをシングルインタフェースとして使うこと ができる。 ノーテルの VoIP 技術への取り組みは豊かなそして人間的なコミュニケーションの追及であ るが、その先には「いつでもどこでもオフィスと同じようにコミュニケーションができる 環境の提供」があるように思える。 IP 電話調査報告書 5-4 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 5.4 視察内容 ここでは、ノーテルの会社の経緯を簡単に説明し、同社が取り組んでいるマルチメディア ソリューションについて紹介する。また、IP 電話の接続デモの概要も紹介する。IP 電話は、 ノーテルがグローバルで展開しているコミュニケーションの拡大という点で大きな比重を 占めるビジネスである。 5.4.1 ネットワークソリューションを提供するノーテル ノーテルは、カナダで設立された企業である。同社の創立から 2006 年現在でちょうど 110 年の歴史を経たことになる。日本では、いまから 20 年ぐらい前に初めて NTT 様に局用の 交換機を外資系として採用された企業である。 写真 5-3 会社の概要の説明 (ノーテルネットワークス株式会社 本間様) ノーテルは、もともとは局用の交換機やキャリア向けの音声のソリューション、エンター プライズ向けの PBX など音声のソリューションを提供する会社であった。その後、光伝送 装置やエンタープライズのデータ製品をトータルで提供するベンダーに変遷した。 ノーテルのソリューションはいろいろな企業で幅広く利用されている。以下にどのような 分野で利用されているかを紹介する。 米経済誌「FORTUNE 500」上位 500 社の中の 90%以上がノーテルのソリュ IP 電話調査報告書 5-5 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト ーションを何らかの形で使用している。 ボンベイ、シドニー、ブエノスアイレスなど世界至る所の証券取引所でネッ トワーク機器を利用している。 アメリカのトップ 100 と言われる銀行の 80%がネットワークの機器を使って いる。 ノースウエストやアメリカンエアワールドなどワールドワイドでトップ 20 と 言われる航空会社の 100%にネットワーク機器が導入されている。 航空宇宙、自動車、製薬、IT など、世界のトップ 100 と言われている製造業 の 93%にノーテルのソリューションが採用されている。 アメリカの国防総省やイギリスの国防総省の通信ネットワークにネットワー クソリューションが採用されている。 教育圏関係でも、アメリカのトップ 10 と言われる大学では 100%採用してい る。 トリノのオリンピックの音声に関わるソリューションはすべてノーテルのシ ステムで構築されている。 Why Nortel Enterprise? >110年の歴史と実績、キャリア製品で培われた信頼性 >充実した製品ポートフォリオ フルラインアップでトータルソリューションを 90%のFutune500企業 経済 ニューヨーク、上海など世界中の証券取引所 米国トップ100銀行の80% ワールドワイドでのトップ20の航空会社の100% 航空宇宙、自動車、製薬、IT産業等 世界のトップ100製造業の93% 政府・自治体 米国国防総省、英国国防省通信ネットワーク サン・ノゼ市役所テラビットクラスターネットワーク 教育 500,000人の学生が通う米国トップ10の大学の100% イベント 2005年スペースシャトル飛行 2006年トリノ冬季オリンピック 全世界で一億以上のエンタープライズユーザーと ミッションクリティカルなネットワークを支えるノーテル 2 図 5-1 ノーテル製品のユーザ 2005 年の第三四半期の売り上げが 26 億ドル(約 3,000 億円)で、2004 年度のノーテルの 売り上げは 1 兆円ぐらいだという。売り上げの半分は、携帯事業であり、残りの 1/2(全体 IP 電話調査報告書 5-6 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト の 1/4)が、エンタープライズと呼ばれる市場を占めているという。 PBX や内線電話などいろいろなものを含くんだボイス系やオフィスの通信設備の世界シェ アは、日経の調査によると 20%の世界シェアで、世界ナンバーワンという位置にいる。ま た、現在注目を浴びてきた IP 電話に関しては、ライン数で昨年 2005 年の第三四半期で世 界シェアナンバーツーという位置にいる。 日本国内の学校系では、筑波大学や佐賀大学などがノーテルのソリューションを採用して いるということである。 5.4.2 ノーテルのビジョン ノーテルは、3 つのビジネスの柱をグローバルレベルで展開している。 (1) エンハンスド・ヒューマン・エクスペリエンス 世界の半分以上の人は何らかの形で電話を使っているが、実は半分ぐらいの人はまだ電 話をほとんど使えていないというのが実情のようである。ノーテルのソリューションを 展開することによって、そういった電話コミュニケーションなどを含めて人間的な経験 とか行動を広げていく。 (2) イグナイト・グローバル・コマース 上述の FORTUNE 500 のような企業をはじめとして、世界中の金融機関とか証券取引所 に対して、いわゆるビジネスのコアとなるようなネットワークを提供する。 (3) セキュリティ 現在セキュリティが注目を浴びている。昔は、1 カ所にファイアウォールのようなもの を入れておけばよかったが、今はいろいろなところでセキュリティを掛けないと実際に は情報を守れない。情報防衛ということで、セキュリティソリューションをマーケット に提供していく。 5.4.3 マルチメディアソリューション 生産拠点の海外移設や規制緩和/競争のグローバル化そして経済状況の変動という背景の下 で技術革新が進み、VoIP(ボイス・オブ・アイピー)がここに来て注目され始めている。 もともと、IP 技術は数十年前から存在していて、二十数年ぐらい前に富士ゼロックスがイ IP 電話調査報告書 5-7 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト ーサネットを日本に持ち込んだのが最初である。当然、IP を活用することで、インターネ ットショッピング等の新しいビジネスモデルが出てきたり、最近話題をまいているライブ ドアのような新興勢力が出てくる。既存の勢力と新興勢力の競争がどんどん激しくなって きている中で、ノーテルは、従業員の生産性が向上するツールや信頼の置ける技術をいか に提供できるかということを、サプライヤーであるノーテルの使命であると考えている。 写真 5-4 マルチメディアソリューションの説明 (ノーテルネットワークス株式会社 5.4.3.1 坂内様) IP/VoIP の特徴とメリット今、VoIP(ボイスオーバーアイピー)技術に求められ ているのは、企業における人件費や製品のコストがどのように抑えられるか、またはどの ようにグローバル展開が可能かなどである。VoIP には、次のいくつかの特徴とメリットが ある。 (1) 高速・広帯域 ネットワーク製品としては今ギガビットインターネットの時代へ移りつつある。ノーテ ル製品である ERS 8600 とか 5500 シリーズといったものは、順次、今までの 1100 のイン タフェースからギガビットのモジュールが使えるようになるという。同時に、今までの ものをどのように使っていくかというテクノロジーも出てくるという。 (2) コストパフォーマンス IP 電話調査報告書 5-8 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 今までの時分割多重 G.711/64k で通信していたものから、G729/8k、もしくは G729AB と いったようなものに変わると、64k 使用していた領域が少なくて済むので、64k の領域を より有効に活用できるようになる。そのため、今まではデータと音声というのは別々の インフラを使っていたが、それが全部いっしょになって使えるようになる。 (3) 幅広いメディアに対応可能 電話は音声をつなぐだけではなくて、メールが送れたり、インターネットができるとい うような、幅広いメディアに対応していく。昔の時分割多重でもそういうことができな いことはないが、より高精度なものを求めたり、いろいろなアプリケーションを使うと なると、IP の方がメリットがある。これは、IP のプロトコル自体に柔軟性があるためで ある。 (4) 世界での標準化 IP は、世界でどんどん標準化が進められている。IEEE 802.1x のセキュリティから、それ から最近ではヒップの RFC の 32xx、33xx といったような、世界レベルでの標準化が進 むことによって、日本から世界へつなぐのがもっと簡単になるという。このため、世界 のエンジニアと日本のエンジニアが対等に話をする必要性がどんどん出てくる。 (5) 将来性 eジャパンや総務省のテレワーク推進事業、新しいビジネスモデルがどんどん出てくる。 つまり、IP なくしては、電話の交換事業も進めていくことができない。1985 年ごろに NTT に局用の交換機を最初に納めたときは、300 万端子だった NTT のインフラが IP 化 され始めている。 「ファイバ・トゥ・ザ・ホーム」というような、ただ単に線を張ってい るのではなくて、光ファイバで家庭でも 2 メガという帯域を確保することが可能になる。 世の中はどんどん IP 化に進んで行く。 これは、IP がゴールではない。この先新しいプロトコルができて、その活用性が広がる ということになれば、そっちの方へ将来は移っていくという。ただ、5 年とか 10 年とい うスパンで見ると、IP の適用分野がどんどん増えてくるだろうと考えられる。 5.4.3.2 NortelのIPシステムポートフォリオ Meridian(メリディアン)シリーズという PBX は、日本では知名度は低いが、世界では非 IP 電話調査報告書 5-9 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 常に多くのお客様に使われている PBX だという。 PBX も IP の波を吸収していかなければならない。デジタル PBX に IP のラインカード、 それから IP の電話機を接続することで、内線間の IP または PBX 間、拠点間を IP トラン クで結ぶことができるようになった。マーケットとしては、もっと IP の機能や特質を生か さなければならないので、Communication Server 1000(コミュニケーションサーバ 1000) という製品を 2000 年に発表している(図 5-2 参照)。 Communication Server 1000 は、いわゆる純粋な IP PBX としての資質を持ったもので、 機能はすべてメリディアンから吸収していて、現在、500 数十の機能がある。これは、世界 のどの国でも同じ機能が使える。ただ、日本は日本のインタフェース、または日本の機能、 それからアメリカはアメリカのインタフェース、またはアメリカの機能というのがある。 たとえば、日本で数年前から始まっている電話機に発信者の名前が出るナンバーディスプ レイというのがあるが、これは、日本では v24 のモデム信号で処理しているが、アメリカ では DTNF で行っている。そういうプロトコルの違いとか使い方の違いは国々によって違 うが、一応ハードウェアのアーキテクチャ、ソフトウェアのアーキテクチャ、それからソ フトウェアの機能としてはすべての国に同じものを提供できる。 NortelのIPシステム ポートフォリオ Multimedia Multimedia Communication Server 5100 Voice Over IP Mobile Contact Center IP PBX Communication Server 1000 Digital PBX/IP Enable Meridian 1 IPの導入も容易に行える PBXのグローバルモデル Option 11C Chassis Option 11C Cabinet Option 61C & Option 81C Nortel Confidential Information 5 図 5-2 IP システム IP の特質をもっと生かそうということと、これからのユーザのオフィス環境を考えて、も っとマルチメディアに対応するということで、2003 年から Multimedia Communication 5100(マルチメディアコミュニケーションサーバ 5100)という製品をリリースしている。 IP 電話調査報告書 5-10 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト Digital PBX(デジタル PBX)と IP PBX が音声機能に重点を置いているのとは対照的に、 Multimedia Communication 5100(MCS 5100)は音声の機能は非常にベーシックな一方、 ユーザにマルチメディアのアプリケーションを提供するという考えで作られている。 MCS 5100 とコミュニケーションサーバ 1000、またはメリディアンを組み合わせることに よって、500 以上の音声機能と多くのマルチメディアの機能をいっしょに使うことができる。 ノーテルの製品を活用するときに、2 つの製品を組み合わせると非常に使い勝手がよくなる というような仕組みでデザインしているという。 写真 5-5 ノーテルの製品の説明 図 5-3 は Meridian、Communication Server 1000、Multimedia Communication 5100 製 品の回線数を表示したものである。Meridian も Communication Server 1000 も、それぞ れ 1 万 5,000 回線、1 万 6,000 回線と PBX としては、非常に大きな収容能力を持っている。 ノーテルでは、内線何ポートとか、外線何ポート、または局線何ポートというようなくく りはしていない。たとえば、Communication Server 1000E は、1 万 5,000 回線と記述され ているが、局線は 1 本だけで、内線が 1 万 4,999 欲しいというような要望にも理論的には 答えられるようになっている(図 5-3 参照)。 IP 電話調査報告書 5-11 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト NortelのIPシステム ポートフォリオ M 00 51 CS Large System 60,000回線 CPU二重化(オプション) Medium System 6,000回線 CPU二重化(オプション) Micro System 250回線 1000E 15,000回線 1000S s rie 1000M-Multi Group e S 0 1000M-Single Group 00 1 CS 1000M-Cabinet 1 n ia id ies r e M S er CPU二重化(標準搭載) 1,000回線 16,000回線 CPU二重化(標準搭載) 2,000回線 CPU二重化(標準搭載) 700回線 1000M-Chassis 700回線 Option 81C 16,000回線 CPU二重化(標準搭載) Option 61C 2,000回線 CPU二重化(標準搭載) Option 11C Cabinet 800回線 Option 11C Chassis 700回線 Nortel Confidential Information 8 図 5-3 5.4.3.3 IP`システムの回線数 IP Phones 図 5-4 に見られる IP Phone 2007 は固定の IP 電話で、カラーのタッチスクリーンを採用し ている。WAN Handset 2210、2211 というモデルは、802.11b に対応している無線 LAN 電話機である。また、パソコンから電話の発信などができる IP のマルチメディア対応ソフ トフォンである Multimedia PC Client(マルチメディア PC クライアント)も提供されて いる。 図 5-7 は、世界で初めてインタフェースでギガビットをサポートした IP 電話だという。IP 電話にギガがいるのか、いらないのかという話はあると思うが、事務所の机から出ている LAN ケーブルを電話機に差し込むと、電話機から PC へ接続することができる。つまり、 電話で分岐する形になる。パソコンに接続してパソコンを使うには、電話機のインタフェ ースがどんどん高速になる必要があるということで、ギガビットの電話機を対応させたと いうことである。 IP 電話調査報告書 5-12 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト New IP Phones IP Phone 2007 • 固定IP電話機の最上位機種 • カラー/タッチスクリーン搭載 • Power Over Ethernet IEEE 802.3af対応 • 1つのEthernet Portで電話機とPCを接続 Voice Over IP Mobile Contact Center WLAN Handset 2210/2211 • 802.11b対応の無線LAN電話機 • IP Phone 2004と同等の機能 • 128bit WEP搭載 • フル充電で通話4時間/待機70時間 Multimedia PC Client • マルチメメディア対応ソフトフォン • プレゼンス機能で相手に最適な通信を • ビデオ会議 / インスタントメッセージ • フルGUI による簡単な操作 Nortel Confidential Information 9 図 5-4 写真 5-6 ノーテルの IP Phone Nortel IP Phone 1140E IP 電話調査報告書 5-13 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 5.4.3.4 拠点間のQoSトランジッション イントラネットもしくは IP 網を使って拠点間を結ぶ場合、問題となるのはイントラネット の QoS をどのように確保するかである(図 5-5 参照)。つまり、音声品質やユーザのデータ 通信やメールなどのサービスをどうやって保っていくかということになる。 本社と支社という拠点間をイントラネットで結ぶような場合には、当然そのネットワーク のトラフィックによって音声品質は変化する(図 5-6 参照)。普通の電話網で考えると、朝 9 時、それから午後 1 時、そして夕方の 4 時から 5 時は、トラフックが非常に高くなる時間 帯である。また、特殊なイベントがある場合、それから夏休み前の飛行機とか電車の予約 開始日といったところは、ネットワークトラフィックが高くなる。トラフィックが高くな ると、イントラネットを通じて IP でつないでいる場合には、音声品質は低下する。これは、 現在のテクノロジーを考えるとある程度仕方ないという。 つまり、今まで電話というのは必ず 1 対 1 でつないでいた。電話交換手がコードをガチャ ガチャと手動でつないでいた。しかし、IP 網では図 5-5 に見られるように雲の中を音声が 突き抜けていくような状況が VoIP なので、外部の影響を非常に受けやすい。 ノーテルの本社と支社はイントラネットで結ばれているという。ただ、公衆網をいかに活 用するかということに着目して、拠点間を接続する IP 網の QoS を Remote Gateway(リ モートゲートウェイ)により常時監視する。QoS が下がり始めた、または下がりそうだと いうときに、拠点間の通話を公衆網の方へ切り替える。通常はイントラネットで、ユーザ が内線番号だけで接続できる。公衆網だとゼロ発信が普通だが、そのゼロ発信にかかわる 番号変換をシステムがすべて行う。よって、内線番号を回しただけでイントラネットへつ なげないと、公衆網へ切り替えようとして、公衆網の番号はこうだというのを自動的に翻 訳して接続する。この方法をノーテルでは、「QoS トランジッション」と呼んでいる。 IP 電話調査報告書 5-14 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト Virtual Office/Network 支社 本社 支社 イントラネット 公衆網 インターネット SOHO お客様 Nortel Confidential Information 11 図 5-5 バーチャルネットワーク IP 網というのがその品質において変動するということは、ある意味致し方のないところで ある。IP 網は基本的に高品質サービスを保証しないメカニズムであるが、お客様と通話を するのに、より高品質の音声を提供しようというのがこの Remote Gateway 製品の特徴だ という。 QoS Transition 本社 イントラネット・広域イーサネットのQoS変動は 音声品質に大きく影響 支社 A ノーテルのシステムは、 イントラネット • 拠点間のQoS状況を常時監視 • 各拠点でのシステム運用状況の把握 • 各拠点の音声品質を常時把握 公衆網 必要に応じて公衆網への自動迂回 により高品質な音声通話を確保 本社 ‐ 支社A 接続ルーチン 音声品質 ① イントラネット • 番号変換 : ユーザーダイアル番号 • ルート番号 : 0 • レベル設定 : 2 • 圧縮率 : G.729A ② 公衆網(キャリア1) • 番号変換 : 035740付加 • ルート番号 : 2 12 図 5-6 時間 Nortel Confidential Information QoS トランジッション IP 電話調査報告書 5-15 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト ノーテルでは、Remote Gateway 1000 を使って、2 つの方法で QoS トランジッションを提 供している。Remote Gateway 1000B では、次に発信するほうを公衆網へつなぎ替える方 法と、現在つながっている通話を切ることなく、またお客様になるべく感じさせないよう にして公衆網へ切り替えてしまおうという 2 つの方法を取っている。当然、公衆網からイ ントラネット、またはイントラネットから公衆網へ切り替わるので、全く気がつかないと いうことは多分ないが、通話が切れて話ができなくなるというようなことはない。この手 法は、ノーテルが今まで電話システム技術にずっと携わってきた成果であるといえる。 IP により今までの PBX よりもインテリジェントになった部分がある。今までは PBX に電 話機が一つひとつぶら下がっていて、直接ケーブルがつながっていた。それが、IP 網にな ることで、実はつながっているようでつながっていない。宙に浮いているような状態にな っている。PBX は拠点間をまたいで片方しかいらず、また、IP の電話だけネットワークで 延ばせばいいというようなことが当然考えられる。しかし、このネットワークが落ちてし まったときはどうするのかということがある。ネットワークが落ちるというのは、プロバ イダで落ちてしまう場合と、企業のネットワークが落ちてしまう場合と、2 通り考えられる。 もともと、デジタル PBX のときには、一つひとつの回路と一つひとつの電話機が結びつい ていた。しかし、それが IP 網ではない。考え方を変えると、それぞれで使っている電話機 を相手側で運用できないのかという考えが出てくる。たとえば、天災のようなもので、シ ステムが大きなダメージを受けて障害を起こした場合、そのシステムに接続されていた電 話機をネットワーク越しに反対側のシステムに接続しようという試みである(図 5-7 参照)。 それによって、障害を受けたシステム側電話の処理の中断をなるべく短くして、オペレー ションを継続するという方法である。これをジオグラフィカル・リダンダンシー、つまり 地理的に離れたところでの冗長構成という意味の機能を提供できる。今までのデジタル PBX だと、もう 1 つ PBX を置いておいて、ケーブルで切り替えようという発想から、もう 少しインテリジェントにしたということである。 IP 電話調査報告書 5-16 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 災害に強いVoIPコミュニケーションを目指して 各地に設置されたCommunication Server 1000システムのステータスを 把握し、万が一の場合、IP電話機の制御をバックアップシステムが継続 する機能 〈ジオグラフィカル・リダンダンシー機能〉 S1 : Sub(Backup) S2 : Main(Home) S1 : Main(Backup) S2 : Sub(Home) 通常運用時 障害・災害時 14 図 5-7 5.4.3.5 Nortel Confidential Information 災害に強い VoIP コミュニケーション ユニファイドメッセージング パソコンにインストールされているメールソフトを使用して、複数のメディアを統合させ る方法がユニファイドメッセージングである。複数のメディアを 1 つのツールで処理する ことによりユーザの生産性を向上させている(図 5-8 参照)。 メールのソフトにボイスメールの機能とファックスの受信の機能を持たせている。1 つの電 子メールのクライアント(マルチメディアオフィスクライアント)を立ち上げれば、すべ てチェックできるというのがユニファイドメッセージングである(図 5-10 参照)。つまり、 今まで電話の確認やファックスの確認を別々に行っていたものを 1 つのメールソフトで行 えるということである。たとえば、メールソフトの画面にファックスのマーク、電話のマ ーク、メールのマークが表示されて、何が誰からいつ来ているかがわかり、プライオリテ ィは何かというようなことがすべてわかるようになっている。ファックスも、いちいちフ ァックスマシンのところへ行かないで、メールソフト上のファックスアイコンをダブルク リックすると内容を確認することができる。 IP 電話調査報告書 5-17 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 複数のメディアを如何に使い分けるか ボイスメール 複数のメディアを単一のツール で受信・再生・処理を可能にする ことでユーザーの生産性を向上 •迅速 •確実 電子メール ユニファイドメッセージング •文書で残る •返信可能 FAX •文書で残る •手軽 Nortel Confidential Information 16 図 5-8 複数のメディアの統合 ノーテルのユニファイドメッセージングは、次のチャートに見られるようなソフトウェア に対応しているという(図 5-9 参照)。メールのサーバはいま使っているもので、それと LAN につないでユニファイド・メッセージングのサービスを受けられると宣伝している。 多くの選択肢と顧客ニーズのマッチ Nortel Confidential Information 17 図 5-9 ユニファイドメッセージングを利用できるソフトウェア 音声認識機能と融合することにより、より高度なサービスの提供を受けることができる。 IP 電話調査報告書 5-18 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト たとえば、一つひとつのコマンドを覚えなくても「再生」と言えば、メッセージが再生で きる。「次のメッセージ」と言えば、次の留守番電話やボイスメッセージを再生することが できる。 マルチメディアオフィスクライアント Microsoft Outlook CallPilot ボイスメール ファックス リモート通知 音声認識コマンド MCS 5100 音声通話 ビデオ通話 インスタントメッセージ コールマネジメント 参加型会議通話 コラボレーション Nortel Confidential Information 39 図 5-10 5.4.3.6 電子メール スケジュール管理 コンタクトマネジメント マルチメディアオフィスクライアント Nortel Symposiumとコンタクトセンター コンタクトセンターは 1885 年の通信自由化の後、1990 年代に掛けて日本で普及したビジ ネスである。もともとアメリカでは、テレビで「こんな商品がありますよ、ここに電話し てください」というテレビショッピングがはじめであるという。 当初は、どれだけお客様へつなぐ時間を短くしていくかというテクノロジーで始まった。 ここでは旅行会社を例に説明する。東日本の担当、西日本の担当、北米担当、ヨーロッパ、 アジアという担当者がいて、複数のお客様から東日本の旅行に対する問い合わせが来た場 合、1 人目はつなげるけれども、2 人目はつなげない。アジアも、1 人目はつなげるけれど も、2 人目はつなげない。ただし、全部で 5 つしか着信がなくて、5 人オペレーターがいる のに 2 人遊んでいるというような状況が出てきてしまう。これは、もちろんシステムの組 み方によるが、理論的にはすでに述べたようなことになる。ただし、今の世の中はそれを 1 歩前進させて、スキルベースドルーチンというような形になっている。それぞれのオペレ ーターが得意な分野、得意ではないけれどもできる分野にそれぞれプライオリティを付け て、東日本の人は東日本だけではなくて、少しならヨーロッパもできるとか、逆に、北米 担当の人は、ちょっとなら東日本ぐらいならできるというようなことで、オペレーターに IP 電話調査報告書 5-19 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト プライオリティ付けをしている。たとえば、2 番目に入ってきたお客様を待ち状態にさせる のではなくて、とりあえずオペレーターにつながないと、お客様は電話を切って違う旅行 会社に電話をしてしまう。いかに速く、ある程度の製品の知識やお客様に対する対応がで きるオペレーターにつなぐかが課題になる。そうすると、プライオリティを 1 番から付け て、できるかできないかわからないようなオペレーターにつなぐのではなくて、なるべく スキルや技術、知識を持ったオペレーターにつなごうというのが、このスキルベースドル ーチンである(図 5-11 参照)。 しかし、問題になってくるのは、オペレーターの負荷がどんどん高くなることである。 SYMPOSIUM – 予測待ち時間案内 CTIと顧客満足度向上 前回担当だったのは 鈴木さん。 彼女のIDは、3001 始めてなので、 誰でもOK 鈴木 • オペレータをご指定なさる場合は、 1をダイヤルして下さい。 • オペレータをご指定されない場合は、 そのままお待ち下さい オペレータのID番号をダイヤルする事でオペレータを指定する 場合にも、その特定のオペレータとスキルセットの両方でキューイング Nortel Confidential Information 21 図 5-11 顧客満足度の向上 もともとがオペレーターの負荷を減らしましょうというようなことだったので、いかに全 部のオペレーターをまんべんなく回すかということが必要になってきた。まんべんなく回 すためには、今大阪のオペレーターは誰が空いているか、福岡のオペレーターは誰が通話 中かということなど、それぞれのオペレータの状況を瞬時に判断しなければならない(図 5-12 参照)。空いているオペレーターに対して、東京に入ってきた呼をお客様の要求に合わ せてつないでいく。これがもともとネットワークコールセンター(今はバーチャルコンタ クトセンターという)を運営する理由だった。 ここへ来て、ニューヨークの同時多発テロ事件やここ数年各地で起きている天災、災害か らビジネスのオペレーションを継続させるビジネス・コンティニュイティという観点から、 バーチャルコンタクトセンター技術をお使いになるお客様がどんどん増えているという。 IP 電話調査報告書 5-20 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト Symposium Call Center Networkingによる リアルタイム・バーチャルコンタクトセンター WAN HOST SCCS HOST M-1 福岡センター 大阪センター E-LAN C-LAN NCC SCCS 東京センター M-1 42 図 5-12 SCCS M-1 HOST Nortel Confidential Information バーチャルコンタクトセンター コンタクトセンターのもう 1 つの製品に「セルフサービス」というのがある。いわゆる、 「会 員番号をダイヤルしてください」のようなシステムが、お客様のアクションに応じてオペ レーターにつないだり、応答したりというものである。たとえば、お客様が電話を掛けて きて、「住所変更したい」というようなときに、システムが「あなたの暗証番号をダイヤル してください」と伝える。ここまでは、通常あるシステム対応のパターンである。しかし、 そこから本人であるかどうかの確認を声紋認証という技術を使って、入力された音声とデ ータベースに登録されている音声と照合して、本人かどうかを確認して、もし本人確認が できれば、住所変更をさせたり、振り込みをさせたり、引き落としをさせたり、ポイント の引き換えをさせたりする処理を許可する(図 5-13 参照)。 つまり、今まではオペレーターが確認しなければならなかったことや、窓口に行かなけれ ばできなかったようなことが電話機やインターネットでできるようになるという。そうす ると、今までウェブでやっていたオペレーションやウェブで提供していた機能というもの を電話でも提供できないか、または逆に、電話で提供していた機能をウェブで提供できな いかということになってくる。 IP 電話調査報告書 5-21 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 声紋認識技術 正確、かつすばやく、簡単な本人確認 「○○ポイント サー ビスです。」 住所変更をしたいのですが ポイント数の確認 支店検索 住所変更 ポイントの引き換え Nuance Caller Authentication 暗証番号を入力 してください。 プッシュボタンを使うことでプライバシーを強化 その他個人情報を聞くことなく、 23秒で声紋認証 Nortel Confidential Information 24 図 5-13 本人確認のため、 1から10まで 数えてください。 声紋認識技術の利用 図 5-14 は、VoIP に関わるウェブと電話網に関する図である。この図の上側のウェブは IP であるが、下側の電話網に関わるところは、まだアナログ部分がほとんどである。しかし、 下側も IP だったら、両方は当然つながりやすくなる。いろいろなソースのデータベースを 共通化しておけば、変わるのはお客様のインタフェースのところだけということになる。 これにより、住所変更をしたいという言葉にシステムが応答して、声紋技術による住所変 更が行える。つまり、システムを入れることによって人件費を削減したり、または今まで 入力に関わっていたオペレーターを他の仕事へ移すことができることになる。今後、どん どんこのような省力化の方向へ進んでいくという。 IP 電話調査報告書 5-22 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト ウェブによるサービスとの連携による サービスメニューの強化を容易に Webアプリケーション サーバー Web利用者 HTML/HTTP Webと音声 アプリケーション J2EE Runtime VXML/CCXML アプリケーション VXML & CCXML HTTP エンタープライズ アプリケーション セルフサービス 利用者 MPSセルフサービスソリューション 電話網 SIP/H.323 図 5-14 (CRM/ERP) VXML/ VXML/CCXML メディアサーバー さまざまなスピーチ機能の実行と 動画・音声ストリーミングなど多彩な マルチメディア機能の実装 25 コアデータベース データベース Nortel Confidential Information ウェブとの連携によるサービス向上 IP 電話調査報告書 5-23 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 5.4.3.7 IP電話接続デモ カメラ付きの 2 台の PC を使って、IP 電話の接続デモが行われた。それぞれのパソコンに は、オフィスで使っているコミュニケーションのシステムがインストールされている。そ れぞれの画面の内容が後ろのスクリーンに映し出され、それぞれの PC の状態が周りの人に 見えるような環境にしてデモが行われた(写真 5-9 参照)。 写真 5-7 PC 画面の状態 PC 上の「マルチメディア PC クライアント」には、従業員がいまどういうステータスでい るのかが表示されている。たとえば、画面の左下のリストにいる従業員は、実際にシステ ムにログインしいて、電話ができる状態になっている(写真 5-8 参照)。塚越様(今回のデ モ担当者)は、接続はしているが今は席を外しているので、いま席に行ってもいないとい うことがわかる。名前の前に道路標識の進入禁止のマークが付いている人は、もう会社を 出て家に帰っていることを示しているとのことである。このように、従業員の状況がリア ルタイムでわかる。MCS(Multimedia Communication Server)だとこのように、いま誰 に電話をすればいいのか、もしくは今誰がどういう状況にいるのかというようなことがパ ソコンの画面上で視覚的にわかるようになっている。 IP 電話調査報告書 5-24 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 写真 5-8 従業員のステータス PC に付属しているモニターによって、相手の様子が PC に映し出される(写真 5-8 参照)。 ここまでだったら、普通のパソコンの電話と変わらない。しかし、先方からファイルが送 られ、MCS の機能を会議モードに設定して、送られたドキュメントを共有してミーティン グを進めるということができる。 営業は出張しているとき、ラップトップからサーバにアクセスすることによってオフィス にいるのと同じようにメールなどの確認をすることができる。また、いま、誰がいるから このことについては誰に問い合わせしようとか、もし通話中であれば、メールを送ってお こうということもできる。電話番号を覚えていたり、携帯電話の電話帳を見ることによっ て電話を掛けるということをしなくてもパソコンの通常の使い方と同じようにできるとい うのが、このマルチメディアの特色といえそうである。 マルチメディアの環境を提供することによって、ただ単に電話を掛けるということではな く、パソコンの機能を有効に活用して、誰でも使えるようなシステムを提供している。 IP 電話調査報告書 5-25 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 写真 5-9 IP 電話接続デモ IP 電話調査報告書 5-26 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 5.5 おわりに ノーテルが目指しているのは、単に VoIP やマルチメディアではなく、将来のユビキタスコ ミュニケーション社会の構築である。そこでは、オフィスと同じようにコミュニケーショ ンができる環境が提供され、従業員が効果的そして効率的に仕事ができる。 ユビキタスコミュニケーション オフィスと同じ様にコミュニケーションが出来ることが ユビキタスの理想 Nortel Confidential Information 33 図 5-15 どこでもいつでも環境 ノーテルはアメリカでは、大学とか各種学校に対するいわゆる教育プログラムの提供を行 っているという。日本でもノーテルの製品をより広めるために、教育プログラムを検討す る可能性があるという。今後、日本でもノーテルアカデミーなるものが展開される日は近 いのだろうか。 IP 電話調査報告書 5-27 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト IP 電話調査報告書 5-28 第6章 IP 電話システムプロトコル 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 6 IP 電話システムプロトコル IP 電話で使用されるプロトコルにはさまざまなものがある。TCP/IP のように、音声情報を 運ぶ際にベースとして使用されるものから、G.729(テキストにて解説)のように音声デー タの圧縮に関するものまで多数のプロトコルが関連して IP 電話システムを作り上げている。 本編の IP 電話システムプロトコルでは、視察や調査を通じてメーカでよく使用されている 呼制御プロトコルについて取り上げた。この呼制御の部分は、IP 電話間で働く重要なプロ トコルであることと、電話を掛ける際に最初に働くプロトコルで、IP 電話の基本プロトコ ルである。 また、IP 電話技術者を育成するための教材作成が本プログラムの目的であるが、この 2 つ のプロトコルの内容を学習することで、現場での機器設定やトラブル時の対応においても 役立つ知識であると考えられる。 6.1 H.323 プロトコル H.323 は、もともと IP ネットワーク網でビデオや音声などマルチメディア情報をやりとり するための規格である。VoIP プロトコルとして初めて国際標準化された規格として多数の 機器に実装されたため、マルチベンダ間でも H.323 に準拠したデバイスであれば接続が可 能といわれている。 H.323 の標準化は、1996 年 11 月に H.323v1(バージョン 1)が発表され、その後の改良や 拡張を経て、2003 年 7 月には H.323v5(バージョン 5)が標準化されているが、VoIP デバ イスの多くは H.323v2(バージョン 2)が実装されている。 H.323 と同じような規格として、ISDN 上でマルチメディア情報をやりとりするための H.320、アナログ回線網でマルチメディア情報をやりとりするための H.324 がある。また、 最近では H.323 に代わって、SIP(Session Initiation Protocol)が使用されることも多く なってきている。 H.323 に代わって SIP プロトコルを実装している製品などの説明時に聞かれたことは、 H.323 は、接続のシーケンス(接続手順のこと)がやや煩雑で、もともとマルチメディア カンファレンスなどの複数拠点での会話を実現するなど、さまざまな実現目的を持つプロ トコルであるので、手順がやや煩雑になるとのことである。SIP は、VoIP の接続シーケン スがシンプルなため実装なども比較すると簡単なこともあり、広く使われつつある傾向と のことである。 IP電話技術調査報告書 6-2 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト H.323 では、機器が実現する機能を代表する用語があり、それを理解していないと、H.323 そのものを理解することができないとのことである、 ・H.323 端末(ターミナル) ・H.323 ゲートウェイ ・H.323 ゲートキーパ ・H.323MCU(Multipoint Control Unit: 多地点通信制御装置) (1) H.323 端末(ターミナル) H.323 端末は、シグナリングプロトコルとして H.323 を実装している IP 電話や 会議通話用のカンファレンス・デバイスのこと。H.323 端末は VoIP 環境と人間とのイン タフェースになるので、システムの中で必須の機器となる。 実際には、この H.323 ターミナルで、我々人間のアナログ音声がデジタル音声に変換さ れるとのことである。この機器によって、音声波の波の高さを数値に置き換えてデジタ ル化して、かつ圧縮などしてデジタル信号にして IP ネットワークを通じて送られるとの ことである。したがって、この機器も TCP/IP ネットワークの一員であるとのことである。 最近では、無線化された IP 電話機も登場している。 (2) H.323 ゲートウェイ H.323 ゲートウェイは、シグナリングプロトコルとして H.323 を実装し、既存の電話網 や PBX を H.323 システムへ接続するための VoIP ゲートウェイである。H.323 端末と異な りこのゲートウェイというのは、名前の通りゲートウェイでアナログ音声をデジタル信 号に変換する装置とのことである。H.323 端末との違いは、H.323 端末が電話機能という 人間とのインタフェースを持つが、ゲートウェイは、電話機能は持っておらず、従来か らあるアナログ電話機などを接続して、アナログ音声をこの機器でデジタル化するとの ことである。そのため、H.323 の VoIP 環境では、アナログ音声機器が無い場合、このゲ ートウェイも使用する必要は無いとのことである。 IP電話技術調査報告書 6-3 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト (3) H.323 ゲートキーパ H.323 ゲートキーパは、H.323 端末からの電話番号から IP アドレスへの変換要求への 応答や、H.323 端末の使用帯域を制御するなど、H.323 端末等へいくつかの機能を提供す る。H.323 の主な機能は、以下の通りである。 ・帯域幅制御 音声通話を行うたびに、IP ネットワークの帯域(音声データが流れる回線の中の占 有幅)が使われてゆくが、通話数が増えると回線の帯域を消費しつくしてしまう恐 れがある。そのような状態になると、音声品質に影響することもあり、最悪の場合 は通話ができなくなってしまうとのことである。そのため、一定の通話数で帯域を 消費した場合、それ以上の通話ができないようにしたり、場合によっては外線(NTT の公衆回線のこと)への切り替えを行ったりする機能をいう。 ・アドレス変換 IP 電話であっても電話を掛けるときは、電話番号をプッシュするが、それが TCP/IP 環境においてどの IP アドレスと交信すればよいのか、電話番号を IP アドレスとし ての宛先に変換する必要があるのである。電話番号を IP アドレスに変換する機能を いうようだ。 ・ゾーン制御 1 台のゲートキーパが管理する範囲を、ゾーンと呼ぶ。通常の IP 電話を主体とした VoIP 環境では、複数のゾーンで構成されることが多い。 IP電話技術調査報告書 6-4 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト まとめると、ゲートキーパというのは、電話帳のような役目を果たしている。そこを参照 すれば、どこへ電話を掛ければ(どこ IP 装置と通信するのか)よいのかわかる仕組みにな っている。 (4) H.323 MCU(Multipoint Control Unit: 多地点通信制御装置) H.323MCU は、音声やビデオ会議など、H.323 端末が多地点通信(3 つ以上で行う通信) を行うための機能を提供するものである。もともと、H.323 プロトコルは、このような 音声やビデオ会議を実現するためのプロトコルで、その応用として IP 電話通信が実現さ れているようである。あらかじめ、目指すソリューションが、マルチメディア通信であ るメーカは、このプロトコルを採用しているようであるが、実際の通信手順などが煩雑 なため、IP 電話に特化するなら、後述する SIP が標準的に使われているようである。 以下に、H.323 セットアップシーケンス(呼制御手順)を示す。 IP電話技術調査報告書 6-5 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 図のように通話を実現するために多くの手順を踏むことになるようである。もちろん、実 用上の問題があるわけではなく、マルチメディアカンファレンスなどさまざまな形態を意 識した手順であるためである。 IP電話技術調査報告書 6-6 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 6.2 SIP プロトコル SIP(Session Initiation Protocol)は、IETF RFC 3261 で規定されている、音声や映像と いったマルチメディアの「セッション」を、端末などのノード間で確立する目的のプロト コルである。IETF とは、Internet Engineering Task Force の略で、インターネットで利 用される技術の標準化を進める組織である。ここで決められた標準が RFC(Request For Comment )と呼ばれる文章で公開される。この組織を通じた標準のためインターネット との親和性が高いとも言われているようだ。その SIP を、その他の VoIP プロトコルと比較し た場合「通信方式:ピア・ツー・ピア」「データ形式:テキスト」「インターネット技術と親和性が高 い」などの特徴がある。 SIP の基本機能にはいくつかの代表的な機能が挙げられる。 1)「ユーザ ロケーション(User Location)」 相手の IP 電話の IP アドレスなど位置を特定する機能 2)「ユーザ アベイラビリティ(User Availability) 」 相手の IP 電話が通信できる状態かどうかを確認する機能 3) 「セッション セットアップ(Session Setup) 」 IP 電話間でセッションを確立する機能 4)「セッション マネージメント(Session Management) 」 IP 電話間で確立したセッションを管理する機能 SIP の接続シーケンス(呼制御)の一例を挙げてみると、以下のようになる。H.323 と比較 するとシンプルなのがわかる。 IP電話技術調査報告書 6-7 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 発呼側のユーザがオフフック(受話器を上げること)後、ダイヤルトーン(DT)が流れて いる状態で、着呼側の電話番号をダイヤルする。 1.INVITE INVITE コマンドが流れて、着信側の相手に通話を求める。 2.着信表示 着呼側 IP 電話はユーザへ着信要求があることを鳴動もしくは LED 点滅、ソフトフォン であればウィンドウのポップアップを行う。 3.RBT(リングバックトーン) 着信側の IP 電話が鳴動などユーザへ着信があったこと知らせている旨のレスポンス を受信した発呼側 IP 電話は、スピーカーからリングバックトーン(RBT)を流す。 4.オフフック 着呼側ユーザが IP 電話をオフフック。 5.通話 通話が開始。 以上のようなシンプルな構成の呼制御を持つ SIP プロトコルは、新しい機器やソフトフォ ンなどのソフトウェア製品に実装されている。今後もこの傾向は続くと思われ、SIP を実装 した製品がさらに増えるようである。 IP電話技術調査報告書 6-8 第7章 IP 電話システムプロトコル 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 7 VoIP プロトコルを実装した機器 IP 電話システムを実現するためには、さまざま機器が有機的に働きあって、ひとつのシス テムを作ることが調査を通じて理解できた。ここでは、システムの構成要素の働きを明確 にして、その機能を実現する機器を各メーカの製品を例に紹介しながら、全体の IP 電話シ ステムで必要な機能や機器を明確にする。 IP 電話システムを構成する機器には、以下のようなものが代表的である。 1)IP 電話機 ・IP 電話機 ・内線専用無線 IP フォン ・FOMA 連携 2)サーバ ・SIP サーバ ・H.323 サーバ ・IP-PBX 3)各種機能 ・プレゼンス機能 ・自動プレゼンス機能 それぞれの機器や機能について見てみる。 IP電話技術調査報告書 7-2 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 7.1 IP 電話機 IP 電話機とは、ユーザと IP 電話システムとのインタフェースであり、一般的に我々が目に する機器である。この機器は、後述するサーバから電話番号に対応する IP アドレス情報を もらい、その IP アドレスを持つ相手側 IP 電話機と呼制御手順を通じてコネクションを確 立する。その後、IP ネットワークを通じて音声通話を実現する機器である。 IP 電話機は、アナログ波である人間の声などをデジタル化し、それを IP パケットへ変換し て相手側 IP 電話機へ送信する。逆に受け取ったパケットは、デジタル信号からアナログ波 を再生して音として受話器から流すのである。 この IP 電話機は、それぞれの IP 電話機メーカから発売されているが、主なものを以下に あげる。 ・日本電気株式会社(以下、NEC) 例:NEterm シリーズ、Dterm シリーズなど 参考 URL: http://www.sw.nec.co.jp/products/hard/telephone.html NEC では、SIP サーバのための IP 電話機である NEterm シリーズと、SIP ではないが IP 電話機としての Dterm シリーズが用意されている。国内のメーカの IP 電話は基本的にそ うであるが、一見すると従来からある多機能電話との違いはわからない。また使い勝手も 基本的に変わらないようである。 ・沖電気工業株式会社(以下、沖電気工業) 例:MKT/IP-30DKW など 参考 URL: http://www.oki.com/jp/IPtel/product/e-oto/phone.htm 沖電気工業では、高音質 IP 電話として「eおと」フォンという、広帯域の IP 電話機を販売 している。これは、広い帯域の音声周波数をサポートすることで音声品質の向上を図った とのことである。ホームページ上には音質の比較ができるページも用意されていた。 ・シスコシステムズ株式会社(以下、シスコシステムズ) 例:Cisco IP Phone 7961G-GE など 参考 URL: http://www.cisco.com/japanese/warp/public/3/jp/product/hs/iptel/ipphone/ipp7961gge/ IP電話技術調査報告書 7-3 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト シスコシステムズの IP 電話機で特徴的なのは、IP 電話機自体が LAN スイッチとしての機 能を持つことである。IP 電話機にイーサネットポートを持ち、その先に PC を接続できる。 IP 電話機と PC の配線を1本でまかなえるのである。また、IP 電話機そのものが LAN ス イッチのため、IP 電話からの音声パケットと PC からのデータパケットがお互いに干渉せ ず、音声品質への影響が少ない。 ・ノーテルネットワークス株式会社(以下、ノーテルネットワークス) 例:IP Phone 2007など 参考URL: http://products.nortel.com/go/product_content.jsp?segId=0&catId=null&parId=0&prod_ id=49641&locale=ja-JP ノーテルネットワークスの前身は、ノーザンテレコムで電話システムの世界では、歴史と 実績のある会社である。海外では、IP電話製品はじめ、電話システムで広く使用されてい るが、日本では大型交換機などの分野で使用されていて、一般ユーザへの知名度は低いが、 業界ではよく知られている。このIP電話機もひとつイーサネット回線でPCも接続できるよ うにできており、配線のコストに貢献しているようだ。 ※各社様、敬称略。五十音順記載。製品情報は、2006 年 2 月現在のものを基準。 IP 電話機は、国内メーカの機器が、従来の PBX などに接続されてきた多機能電話機をほぼ そのまま踏襲しているようである。したがって、日本人には一般的に使いやすい。しかし、 海外メーカの IP 電話機は、最近のワークスタイルにあった、一人ひとりが電話番号と電話 機を持ち、不在時は携帯電話への転送やボイスメールなどのシステムと連動させたビジネ ススタイルを実現することを目的にしているようである。国内メーカも対応一部対応して いるようだが、従来の代表電話、グループ着信など、国内の電話文化を継承したスタイル になっているようである。 IP 電話機は、最近無線化が進んでいるようである。これは、視察など通じてデモンストレ ーションなど拝見すると、ほとんどが無線 IP 電話を使用してのデモであった。さらに、進 化した形式として、NTT ドコモの FOMA との連携システムがあった。これは、社内や学 校内など内線網では、無線 IP 電話機として動作するが、内線網でカバーしている区域から 出ると、そこでの発信や着信は、FOMA すなわち一般の携帯電話として使用できるのであ る。このメリットは、社内などでは内線 IP 電話としてほぼ無料で内線通話ができる。しか し、外に出たときもそのまま同じ電話機で携帯電話として使用できるため、何台も電話機 IP電話技術調査報告書 7-4 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト を持つ必要がないことである。各社、無線 IP 電話および FOMA などの携帯電話との連携 に力を入れているようであった。 IP電話技術調査報告書 7-5 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 7.2 サーバ SIP サーバなどの、IP 電話システムにおけるサーバの役割は、電話番号と IP アドレスとの 対応付けとのことである。サーバにもいくつかのタイプがある。SIP サーバと呼ばれる SIP というプロトコルを実装したサーバや H.323 サーバ(シスコシステムズのコールマネージ ャなど)、IP-PBX のように、従来の PBX の仕組みを使いながら PBX と電話機との間で IP ネットワークを利用するタイプなどある。このプロジェクトでは、IP 電話システムとして SIP、H.323 を主体としている。ここでも、各社の製品などを見てみる。 ・日本電気株式会社(以下、NEC) 例:SV7000 など NEC では、SIP サーバとして、SV シリーズがある。大規模用としての SV7000 のほかに、 中規模用の SIP サーバとして、SV7000SS もある。前者が、4,000 台までサポートするが、 後者の中規模用としては、500 台までサポートする。 ・沖電気工業株式会社(以下、沖電気工業) 例:SS9100など 沖電気工業では、SIPサーバとして、SS9100シリーズが用意されている。大規模用のSS9100 と中規模用のSS9100 Type Mがある。NECと同様、FOMAとの連携機能や国内メーカ特有 の従来型PBXとの使い勝手を継承した部分など同じである。 ・シスコシステムズ株式会社(以下、シスコシステムズ) 例:CiscoCallManager、Cisco CallManager Express など シスコシステムズのサーバは、CallManager である。ここも、大規模な環境までサポート できる CallManager があり、中規模までのシステムをサポートする CallManager Express が用意されている。Express では、ISR ルータでサーバ機能を実現するため、ルータの機能 とサーバの機能を共有できる。 ・ノーテルネットワークス株式会社(以下、ノーテルネットワークス) 例:Multimedia Communication Server 5100 など IP電話技術調査報告書 7-6 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト ノーテルネットワークスのサーバは、Multimedia Communication Server である。ノーテ ルネットワークスでは、 従来のデジタル PBX である Meridian シリーズと IP PBX である、 Communication Server 1000 などがある。 各社共通であるが、IP 電話システムの最大の弱点は、サーバと IP 電話機との間の通信がで きなくなると、電話番号と IP アドレスとの対応付けを行う機器がないため、電話が掛けら れなくなってしまうことである。そこで、サバイバルサーバという機能を提供している。 このサバイバルサーバを使用することで、本来のサーバとの間の IP ネットワークに障害が あったとしても、各拠点などに設置したサバイバルサーバに IP 電話の問い合わせを行って、 障害時を乗り切るのである。サバイバルサーバには、本来のサーバにあるテーブル情報(電 話番号と IP アドレスの対応表)のコピーが置かれるとのことである。 IP 電話機の最大のメリットは、オフィスレイアウトの変更や異動などの際の設定変更の容 易さである。従来の PBX では、オフィスのレイアウト変更などで内線電話番号を変更する ことになると複雑な設定を行うため、業者に委託して作業を依頼するのが一般的であった。 しかし、IP 電話システムでは、場合によっては、設定変更をせずに運用を続けることも可 能である。運用コストを最大限削減できるのが、IP 電話システムのメリットである。 7.3 各種機能 IP 電話システムを導入する目的のひとつは、コスト削減であった。確かに、初期の IP 電話 環境ではそのメリットが最大限に活かせたようである。しかし、最近の IP 電話ソリューシ ョンについて視察を通じて調査したところ、コスト削減だけではないようである。業務の 効率化など回線費用や運用費用など比較的目に見えやすいコストの削減だけではなく、ホ ワイトカラーなど一般社員たちの業務を効率的に行えるような環境を作ることを目的に各 社差別化しているようである。その代表的な機能としてプレゼンス機能がある。 ・プレゼンス機能 プレゼンス機能は、電話を掛けたい相手が現在どのような状態にあるかあらかじめわかる 仕組みである。たとえば、PC 上のソフトフォンなどのソフトの場合、通話したい相手をあ らかじめ登録しておくと、その相手の状態が、帰宅など不在なら不在表示、会議中などの 表示、電話を受けられる表示など、現在の状態を相手に通知してくれるのである。この機 能で、無駄に電話をすることもなく、効率的にコミュニケーションが図れるのである。 IP電話技術調査報告書 7-7 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト このように IP 電話は、単なる電話にではなく、IP ネットワーク上のコミュニケーション手 段の様相を呈している。 IP電話技術調査報告書 7-8 第8章 IP 電話技術者に求められるスキル 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 8 IP 電話技術者に求められるスキル IP 電話技術者に必要なスキルを洗い出すことが、本プログラムで作成する育成カリキュラ ムと教材の基本となるため、当委員会で討議を重ねた。スキルには大別して 3 つのレベル があると考えた。前提スキル、IP 電話コア技術スキル、IP 電話周辺技術スキルとして検討 した。 8.1 前提スキル その結果、以下のようにスキルセットを洗い出した。 前提スキル(その 1) ①コンピュータシステム基礎 ・サーバクライアント ・オペレーティングシステム ・コンピュータの構成要素 ・コンピュータの動作 コンピュータの基礎知識が必要なのは、すべての分野に共通するが、ここでは特にクライ アントサーバシステムの形態を理解していることも必要と考えた。SIP サーバなどサーバと クライアントの関係が頻繁に教材に出てくることが予想され、基本を理解している必要が ある。 前提スキル(その 2) ②ネットワーク基礎知識 LAN 技術 ・イーサネット ・無線技術 ・ハブ、LAN スイッチ ・VLAN WAN 技術 -専用線 -WAN サービス -IP-VPN -広域イーサネット インターネット IP電話技術調査報告書 8-2 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト ネットワークの基礎知識は必須である。IP 電話システムは、LAN、WAN 環境上に構築さ れて、回線の種別によっては帯域に制限などあり、音声品質に影響することも考えられる。 そこで、LAN や WAN とは何か、あわせてそれぞれのメディアの特徴を押さえておくこと が必要である。 前提スキル(その 3) ③OSI モデルと TCP/IP ・IP 層 ・IP アドレスの構成 ・トランスポート層 ・ルーティング ・ルータ 前提の最後としては、OSI モデルと TCP/IP である。特に IP アドレスの構成や TCP/IP プ ロトコルの特徴はしっかりと理解していないと、IP 電話環境のデザインができないため必 要である。また、ルータという装置の役割を理解していることが望ましい。これは、ルー タのバッファ内で IP 電話パケットが滞留してレスポンスに影響が出るなど、音声品質にも 大きく影響する。そのため、ルータの役割などは押さえておいてほしい。 以上が、前提知識であると位置づけた。これらの、前提がある上で、以下のコア技術スキ ルをカリキュラムの中心にすえた。 IP電話技術調査報告書 8-3 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 8.2 コア技術スキル IP 電話コアスキル(その 1) ①音声系基礎知識 ・公衆電話網構成要素 -構成デバイス ・アナログ音声技術 ・デジタル音声技術 -多重化サービス ・音声符号化基礎技術 -PCM、CELP etc. ・シグナリング技術 ここでは、IP 電話の基本となる、VoIP 技術について学ぶための項目である。IP 電話シス テムは、VoIP 技術(音声を IP パケット化する技術)がベースになっており、そのベース 技術をコアスキル技術と位置づけた。 その他のコアスキル技術は以下の通りである。 IP電話技術調査報告書 8-4 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 8.3 IP 電話周辺技術スキル その他の必要技術として、帯域制御技術が挙げられる。これは、音声パケットを通過させ るための帯域を守る技術である。一般的には、ルータや LAN スイッチ内で実現する技術で ある。 ・帯域制御技術 キューイング 帯域保障技術 などがある。基本的に音声パケットは最優先で転送するのが基本である。音声は、即時性 が強いので、なるべく早く相手方へ届けることが大切である。そのための技術である。 上記前提スキル、コア技術スキル、IP 電話周辺技術スキルからカリキュラムの構成をした。 テキストは、本必要スキル習得を目的にした、汎用的な内容として特定のメーカや技術に 偏らないようにした。そのため、テキストの本編を基本にして、演習部分を他のメーカの 製品で同様のことを実現してもよいように構成している。 IP電話技術調査報告書 8-5 「ユビキタス社会に対応する IP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト IP電話技術調査報告書 8-6 平成17年度 文部科学省委託 社会人キャリアアップ教育推進事業 IP電話調査報告書 平成 18 年 3 月 1 日 発 行 初版第 2 刷発行 「ユビキタス社会に対応するIP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト 「ユビキタス社会に対応するIP 電話技術者を育成する教育プログラム開発」プロジェクト事務局 (学校法人麻生塾 〒812-0016 麻生情報ビジネス専門学校内) 福岡市博多区博多駅南 2-12-32 TEL:092-415-2290 FAX:092-415-2295 http://www.asojuku.ac.jp
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