秋田県立大学生物資源科学部附属フィールド教育研究センターニュース 第 35 号 2013 年 7 月 8 日 フィールドセンターニュース http://www.akita-pu.ac.jp/bioresource/F-CENTER 〒010-0451 秋田県南秋田郡大潟村字大潟6番地 tel 0185-45-2858 fax 0185-45-2415 フィールドセンターを利用した教育・研究の紹介(1) 干拓地特殊雑草「コウキヤガラ」の塊茎の水への浮沈 FC 准教授 保田謙太郎 保田謙太郎・松尾蛍(アグリビジネス学科 3 期生) 今回は雑草科学に関連した研究を紹介します。コウキヤガラというカヤツリグサ科ウキヤガラ属の多年生の植物がありま す(図 1) 。雑草学の教科書では、干拓地での発生が多いと記述されています。退職された千葉和夫先生が精力的に研究され ていた雑草であり、名前を知っている方も多いのではないでしょうか。塊茎から萌芽するため、初期の生育がイネよりも早 く、素早く増殖する。塊茎が数十年にわたって土中で生存するなど、耕種的防除が難しいのが特徴です。大潟村では、入植 時より猛威をふるいましたが、ベンタゾン(商品名:バサグラン)という除草剤が登場したことにより、その害は収まりま した。ただし、完全に撲滅できたわけではなく、村内の水田ではしばしば見られます。また、除草剤を使用しない有機農業 では、手取りしか防除方法がなく、本センターの有機圃場でも管理に困っていました。 2011 年の田植え前のことであります。荒代かきが終わった水田の畦畔際で、コウキヤガラ の塊茎や幼植物体が漂着しているのを見つけました。もしかしたら、コウキヤガラの塊茎や 幼植物体は水に浮き、水田より流し出せるのはないかとひらめ、卒業研究として研究を行い ました。担当したのはアグリビジネス学科 3 期生の松尾蛍さんです。まずは、材料の採集か ら始めました。コウキヤガラの塊茎にデンプン反応がみられ、完熟となるのは 8 月下旬以降 図 1 コウキヤガラ ですので、9~10 月に本センターの水田から 1200 個の塊茎を集めました。塊茎から土や枯 死した根などを除去し、比重を測定し、重さとの関係を調べました。コウキヤガラの塊茎の 半分は比重が 1 以下であり、水に浮くことが判明しました(図 2) 。また、サイズの小さな塊茎は浮きやすい傾向にあること もわかりました。次に幼植物体について調べました。秋に採集したコウキヤガラの塊茎は休眠状態にあるので、芽はでませ ん。しかし,塊茎を低温で保存することによって休眠から覚醒するので、水の張ったプラスチック容器に入れ、冷蔵庫で 40 日以上保存しました。10 月下旬から,塊茎をプラスチック容器に数個ずつ置き,窓際で萌芽させました。実験には水に沈む 塊茎を用いました。萌芽を試みた 300 個の塊茎のうち,87 個が萌芽しました。萌芽個体は,シュート長が 3.0cm 以上~4.0cm 未満から浮き始め、およそ半分にあたる 41 個体は 7.0cm 未満で浮きました(図 3) 。さらに,すべての萌芽個体はシュート 長が 14.5cm になった時点で浮きました。水に浮くようになるのは,成長にともない塊茎に蓄積されたデンプンが消費され ることと,シュートの割合(シュートの比重は 1 以下)が増えることによると考えられます。コウキヤガラの発生時期は 3 月下旬からであります。田植え時期を遅らせば、多くの塊茎が萌芽しており、代かき時に個体を浮かせて除去できると考え られます。2012 年に試してみたところ、ワラ処理の問題は残りますが、塊茎と幼植物体を多く除去できました。この研究は、 現場でのひらめきから始まったこと、 卒業研究であったこと、 雑草の生態的特徴の解明が防除に結びつけられたこともあり、 本大学に来てからの一押しの成果として紹介させていただきました。 25 20 15 個 体 数 10 5 0 シュートの長さ(cm) 図 2 比重と塊茎の重さの散布図 図 3 浮遊する時点でのシュートの長さ 図 4 浮かぶコウキヤガラの幼植物 秋田県立大学生物資源科学部附属フィールド教育研究センターニュース 第 35 号 2013 年 7月 8 日 「地域交流室 便り」 vol 32 は 羊の毛刈り 5月の連休明けからが羊の毛刈りシーズン。病気予防 と夏を快適に過ごすためである。頭を上にして座らせ首 の辺りから脱がせるように手際良く刈るのがポイントの ようです。毛の長さは10cm前後で外側は黒色ですが 内側は真っ白です。最後に蹄の手入れで終了となると、 すっきりしたのか解放と同時に一目散で駆けていきまし た。お疲れ様でした。 サークル活動「田植えと枝豆播種」 播」 」活動のの田植えの田植えの田 5 月 18 日、快晴のもと水田公園の現代田で秋田キャンパスの畑っこサークルと交流 植えの田植えの田植え 会も兼ね今年も合同で田植えを行った。今年は 23 名と大勢のメンバーが参加しもち米 と赤米を植えた。新入生は初体験者も多く、田んぼの泥に足が埋まり、泥だらけになり ながら田植えを体感していました。田植えの後は、さっとこ村の畑にジャガイモとあき た香り五葉(エダマメ)も播種。昼食は活動室で、昨年栽培したもち米を使ったおこわ と豚汁をみんなで食べながら相互の親睦を深めました。今後も継続し、より良いサーク ル活動をしていきたいと思います。 畑っこサークル会長 森田祥司 清華大学深圳大学院来訪 後列左から4人目が唐所長 清華大学(中国)と秋田県立大学の大学間協定調印に先立ち、6 月 15 日(水) 、中国清華大学深玔大学院、唐国翌(コ クイ)新材料研究所長が来訪し、大潟キャンパス、FC の農場を視察し、果樹ではリンゴの生育の状況、水田の乾田直播 き、放牧場では短角牛等について熱心に質問されていた。本莊 CP 国際交流室の浅田さん(通訳)を介し、FC は「広大 な圃場を有し多様なプロジェクトに高い関心を持っている」と話されていた。次回は、学生間交流を紹介します。 園児が動物との触れ合いとイチゴ摘み体験 大潟幼稚園年長児が、5月22日は動物と触れ合い餌やりを体 験し、6月18日には、全園児で露地イチゴ摘みに挑戦した。あ ま~い香りの広がる畑で、園児は大きくおいしいイチゴを見定め ながら収穫をしていた。この後、日陰となる格納庫に移動し、各 自が摘みとったイチゴをさっそく味わっていた。 フィールド開放デー 石窯 7 月 13 日(土) 9:30~15:30、フィールド教育研究センターを一般市民に開放し たフィールド開放デーが開かれる。プロ農家から小学生までを対象とし、教育・ 研究内容をパネルで展示紹介。あきたキイチゴ利活用研究会の研修会や稲本民 夫氏(秋田県立大教授)が酒米栽培と酒造りと新政酒造株式会社社長 佐藤祐 輔氏が講演(13~14 時)される。バスツアーで研究圃場の視察ができる。 交流公園では、サットサークルが石窯で焼いたピザやハーブティー、金魚すくいを無料で提供 するほか学生による竿灯も披露する。昼時は短角牛肉の試食ができ、花の販売や動物との触れ合 いコーナーも設け全農場を開放します。皆さん、お誘い合わせのうえご来場下さい。 編集後記:新年度がスタートして3ヶ月。センターニュース・地域交流便りは2ヶ月毎の発行予定。各班には写真撮影や 取材で協力を頂き感謝しています。何かと目新しいものが好きな私です。今後もトピックス情報を積極的に地域交流室ま でお知らせ下さい。さて、夏本番…。熱中症対策には塩分も必須条件であることをお忘れなく。地域交流班:渡邊良一
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