当院で出産を希望されているみなさまへ ~~~当院における基本的な考え方~~~ 1) 自然分娩を主体としています。 当院では家庭的な雰囲気の中で新しい家族を迎える自然な経過を大切にしたいと考えています。 しかし、正常な経過から離れてきている場合には、母児の安全ために必要な対応をさせていただきます。 2) 母児同室・母児同床を取り入れています。 出産後なるべくはやいうちから赤ちゃんと一緒に過ごします。 おなかの中にいた時から聞いているお母さんや、お父さんの声がするところにいるのが 赤ちゃんにとって、一番安心です。 3) 母乳育児を支援しています。 赤ちゃんの心と身体の発育のために母乳はもっとも自然で理想的な栄養です。 妊娠中からはじめ、入院中・退院してからも母乳相談を実施しています。 母乳育児があたりまえで、楽しい経験となるように、関わらせていただきます ~~~出産に対する基本的な考え方~~~ 当院の産婦人科医師、助産師、看護師等スタッフは、母児の安全を第一に、みなさまが安心して出産して いただけますようお手伝いをいたします。 妊娠・出産は順調に進むことが理想ですが、時には医学的処置を必要とする場合が生じます。しかもその 処置は急を要することもあり、その場でゆっくりと説明する時間がないこともしばしばあります。そこで、 当院で常日頃行なっている出産時の対応についてあらかじめ知っておいていただくことが大切と思ってお りますので、下記についてお読みいただき、ご理解いただきますようお願い申し上げます。 1.陣痛促進剤について (1)分娩誘発(出産予定日を過ぎても、あるいは破水したのに自然に陣痛が来ない場合に陣痛を誘発す ること)出産予定日を過ぎるころから、胎盤の働きが低下してお腹の赤ちゃんの状態が悪くなることがあ ります。したがって、そうなる前に陣痛促進剤を使って人工的に陣痛をおこします。 また、陣痛がないのに破水してしまった場合、長時間そのままにしますと子宮内感染を起こすことがあ りますので人工的に陣痛をおこします。 陣痛促進剤はなるべく少量を使用し、分娩監視装置で赤ちゃんの状態や陣痛の強さをモニタリングする など細心の注意を払って行ないます。そうすることで子宮破裂や胎児仮死などの危険は充分回避できると 考えております。 (2)陣痛増強(陣痛が弱いとき、陣痛を強くすること)自然に陣痛がおこったもののなかなか強くならな いと分娩が長引くことになり、赤ちゃんにストレスがかかって胎児仮死になったり、また母体も疲労でま すます分娩進行が遅れることになります。したがって、この場合にも陣痛促進剤を使用いたします。 2.会陰切開について 産道の伸展が充分でないためにひどく裂けてしまうことが予想された場合や、赤ちゃんのためにできる だけ早く分娩にしたほうが良いと判断された場合に限り行なっています。 縫合には局所浸潤麻酔を使います。また、できる限りあとの痛みが少ない縫合法を心掛けています。 3.急速遂娩について 分娩中お腹の中で赤ちゃんの状態が悪くなり、急いで分娩にしなければならないことがあります。子宮 口が充分開いて、赤ちゃんの頭が適当な位置まで下がっていれば、吸引分娩や鉗子分娩などの急速遂娩を 1 行ないます(この場合会陰切開を行なうことになります) それ以外の場合は帝王切開を行ないます。 (1)吸引分娩(赤ちゃんの頭に吸引カップを装着し、牽引・娩出する方法) あと少しで赤ちゃんの頭が娩出される程度まで下がっていれば安全にできる方法です。 通常、補助手段としてお母さんのお腹を押してお手伝いをします。 まれに赤ちゃんの頭に血腫ができることがありますがほとんど自然に吸収されます。 (2)鉗子分娩(赤ちゃんの頭を鉗子を使って、頬のところで左右からはさんで牽引・娩出する方法)正し く使用すれば、安全確実に赤ちゃんを分娩させることができます。赤ちゃんの頬に鉗子の痕がつくことが ありますが、数日で消えます。 (3)帝王切開(お母さんのお腹を切って娩出する方法)お母さんや赤ちゃんにとって経膣分娩が難しい、 あるいは望ましくないと判断された場合に行なう方法です。現在いろいろな技術の進歩によって、帝王切 開は安全に行なわれるようになりましたが、それでも決して 100%安全というわけではありません。経膣 分娩にくらべて、手術中の麻酔や出血、手術後の血栓症や感染などの合併症の危険が高くなりますし、次 の分娩時に子宮破裂の危険性も生じてきます。 したがって、当院では、あらゆる面から充分に検討して帝王切開が適切であると判断した場合以外は、決 して安易に行なうべきではないと考えています。 4.骨盤位分娩について いわゆるさかご(逆子)は頭位にくらべ、危険性が増すとされています。すべてにおいて経膣分娩がで きないというわけではありませんが、一番大きな大切な赤ちゃんの頭が最後に娩出される危険性を考え、 より安全な帝王切開をお勧めしています。 分娩方法については担当医と相談し、充分に理解し、決定されるようにお願いいたします。 5.無痛分娩について 当院では自然分娩を基本とする立場から、無痛分娩は行なっておりません。 呼吸法、補助動作等で陣痛を乗り切っていけるようお手伝いさせていただこうと考えています。 6.夫立ち会い分娩について ご主人に付き添っていただき、産婦さんへの精神的な支えや、身体的苦痛の緩和を目的として夫立ち会 い出産をご希望に応じて行なっております。 そのためには、妊娠・出産経過の正しい知識を学んでいただくように、 「お産の教室」 (案内書)を読んで いただくように、お願いしています。 またご希望の方には、 「お産の教室(後期) 」(初産の方対象の母親教室)の受講も可能です。 なお、分娩中は、当院のスタッフの指示に従っていただくようお願いいたします。 7.新生児について 出生後の赤ちゃんは、観察・計測等をした後、お母さまの体調をみながら、そばにいき母児同室といた します。 (早期接触や、授乳も可能です) 体調がすぐれない時、シャワー中など新生児室でお預かりいたします。遠慮なくお申し出ください。 また、万一赤ちゃんに異常等が見つかった場合は、専門医療施設に搬送することになりますので、あらか じめご了承いただきたいと思います。 8.輸血について 出産に関連して思いがけず大出血をおこすことがあります。前置胎盤、胎盤早期剥離などの異常分娩ば かりでなく、ごく順調な経過をたどった出産の後でも大量に出血することがあります。この場合救命のた 2 めには輸血が必要です。 もちろん輸血にかわる治療法がある場合は優先してそれらの治療法を行ないます。 出産は、病気ではありませんので、自然になにごともなく終了することが理想です。しかし、正常に経過 していても突然に思いがけない変化が起こり、とてもここだけは説明しきれない様々なことが起こり得ます。 そんな時でも適切な処置をとることによって母児の安全が確保されます。それらについては必要に応じて、 その都度詳しい説明をいたします。 当院で出産される場合は、以上のような方針を充分にご理解されたうえ、納得していただけましたら 「入院誓約書」に署名をお願いいたします。 3
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