乳房 Breast

「乳房
Breast」
組織構造から乳房撮影に必要とするX線エネルギーが他の組織よりも低い(軟線撮影)
乳房の組織構造は?
乳腺実質と脂肪組織からなる。
乳腺は、体格、体質、年齢など、女性の生理周期条件によ
り個人差が大きい。
加齢に伴い次第に退縮、乳房組織は脂肪組織に置換される。
一般的に若年層は高度の実質性乳房(dense-breast)で、
高年層は脂肪優位型乳房(fatty-breast)の傾向。
乳房のX線像の所見は?
1.
腫瘤影
2.
微小石灰化像
等、その形状や大きさ、あるいは分布などが良悪の鑑別に重要。
組織間の吸収係数 20keV
0.80cm-1
乳腺組織
0.45cm-1
脂肪組織
0.85cm-1
乳癌腫瘤
12.50cm-1
微小石灰化
微小石灰化と乳腺組織の吸収差;11.7
微小石灰化と脂肪組織との吸収差;12.05
乳癌腫瘤と乳腺組織の吸収差;0.05
腫瘤影の描出の難しさがある。
腫瘤像の読影に必要な特徴は?
1.
腫瘤の濃度自体とその均一性
2.
形状が放射状にあるかどうか
3.
辺縁の状態
※
わずかなコントラストを写真上に描出する必要あり。
1
悪性微小石灰化像の特徴は?
1.
乳癌の約半数にみられる
2.
大小不同
3.
不整形
※
鑑別のために高い分解能が必要。
乳房撮影の最重要ポイントは?
z
軟部組織に大きなコントラストをつける
z
微小石灰化の検出と形状の同定
z
被曝線量(軟線撮影のため)
撮影装置の特徴は?
乳房撮影
Mo (モリブデン)/Rh (ロジウム)
Be (ベリリウム)
Mo(モリブデン)/Rh(ロジウム)/Al(アルミ)
フィラメント
放射口の材料
フィルタ
焦点サイズ
線質
(K 吸収端)
小焦点;0.1mm(0.15×0.15mm)
大焦点;0.3mm(0.45×0.45mm)
Mo;20keV 付近/Rh;23keV 付近 W;70keV 付近
線質の違いは?
乳腺組織が発達し、間質に脂肪組織
が少ないまたは厚みのある乳房を
撮影するときは、
フィラメント/フィルタ;Mo/Rh
Rh/Rh
(東芝
一般撮影
W (タングステン)
ガラス
AI( ア ル ミ ) / Cu( 銅 ) / Ta( タ ン タ ル )
etc.
を使用。
Rh フィラメント製品なし)
2
フィルタの役目は?
被曝要因
画質低下要因
Mo フィルタなしとありの違い
・特性X線
(K 吸収端付近;) よりも高い部分は、
被写体の吸収差をなくし、コントラストを低下させる要因。
・低い部分は、
画質情報に起因することなく被写体表面で吸収され被曝線量増加の要因。
Mo フィルタと Rh フィルタでは何が変化するの?
Rh フィルタを使用
( K 吸 収 端 が 23keV 付
近)
乳腺含有率の高い
(Dense-Breast)の乳腺
描出の向上に寄与。
3
照射条件の選択に影響する因子は?
z
年齢
z
ホルモン治療
z
豊胸手術インプラント;シリコン
z
放射線治療
z
遺伝
z
乳房厚
z
出産回数
z
手術歴;瘢痕組織、血腫、組織摘出
z
月経閉止前か後か
z
授乳期乳房
z
病理学的な異常
z
圧迫の容易さ
上記で考慮する点は?
1.
圧迫されると乳房厚はどのようになるか?
CC 方向、ML 方向、MLO 方向で乳房圧迫厚みは違うか
2.
乳房組織の構成は?
脂肪組織乳房か充実性の乳房か?(圧迫厚のみでは判断してはダメ!)
3.
ホルモン治療の有無?
エストロゲンを投与している場合、老、中年でも照射条件増加。
4.
放射線治療の有無?
放射線治療部分が肥厚し、X線透過性が悪くなる。
5.
乳房手術の有無?
大きな血腫や瘢痕組織が問題。
瘢痕組織は周囲の組織よりも肥厚しているため。
6.
年齢、出産の有無?
一般的に妊娠回数が多いほど、脂肪組織乳房になる。
7.
乳汁分泌の有無?
授乳中は、密のため照射因子を増加させるか高感度のF/Sシステムを使用。
8.
Paget(パジェット)病など、いくつかの型の乳房疾患の有無?
可能であれば、低 mAs と低管電圧で撮影。
4
「ポジショニング」
乳癌の好発部位は?
C′
C
A
E
D
B
C−C′領域が好発部位。
基本的な撮影方向は?
z
CC;頭尾方向(Cranio−Caudal)
乳輪下、中央内側および外側組織の一部が
良く描出。
5
z
MLO;内外側斜位(Medio−Lateral−Oblique)
マンモグラフィにおいて、最も一般的。
乳房の上部外側の深部組織を描出。
z
ML;内外側方向(Medial−Lateral)
現在は、CC/MLO 方向撮影が一般的。
ML は、補足方向。
(術前、針生検前に撮影される事もある。
)
ポジショニングによっての盲点(ブラインドエリア)は?
ML O
ブラ イ ン ド エリ ア
CC
ブラインド エリ ア
6
圧迫の効果は?
適切な圧迫は、被曝線量を低減し高画質のマンモグラムを得るために重要である。
1.
散乱線の減少によってコントラストおよび解像力が向上
2.
乳腺濃度の均一化
3.
乳腺構造の重なりに分離によって組織間コントラストが向上
4.
乳腺組織線量の減少
5.
被写体−フィルム間距離の縮小によって幾何学的ボケが減少
6.
乳房の固定によるボケの防止
適切な圧迫の目安は?
1.
少なくとも、組織がピンと張られるまで
1.
受診者に過大な苦痛を与えない程度、
日本人女性の最大圧迫圧は、12kg(120N)が目安。
乳房圧迫厚比較
25
20
%
15
10
5
0
2 2.
5
3 3.
5
4 4. 5 5. 6 6.
5
5
5
圧迫厚( cm)
7
7 7.
5
8
日本
U. S. A.
Eur ope
MLO 画像の合格基準は?
乳腺組織が、最大限に描出されていることが重要。
1.
左右の写真が、対称であること
2.
乳頭が profile に出ていること
3.
大胸筋が乳頭ラインまで写っていること
4.
乳腺後方にある脂肪組織が良く描出されていること
(乳腺組織の下深部が切れていないこと)
5.
腹部組織が入っており、inframammary-fold が伸びて
いること
6.
乳房の皺がないこと
7.
腋窩部分が多く描出されていること
CC 画像の合格基準は?
1.
左右の写真が、対称であること
2.
内側乳腺組織は必ず描出され、外側も出来るだけ入っていること
3.
胸壁深くまで入っているとこ(胸筋が出るくらい)
4.
乳房の皺のないこと
5.
乳頭が profile に出ていること
読影環境については?
部屋の照度やシャウカステンの輝度、遮光マスクの使用。
特にシャウカステンの輝度は読影に対する影響が大きく、暗いものでは黒化度のの高い部
分の読影が出来ない。
z
(一般の5倍)
マンモ用シャウカステンの輝度は3,500cd/m2以上が望ましい。
z
読影室内の照度は、シャウカステン付近で50lx以下。
8
乳癌の発生率に関わる要因は?
1.
初潮が早い
2.
閉経が遅い
3.
高年齢出産
4.
未婚、未産
5.
肥満
6.
放射線被曝
等
50歳頃にピークがある。
下垂体から出る、卵胞刺激ホルモン(エストロゲン)と黄体化ホルモン(プロゲストロン)
の分泌のバランスに関係。
ヒストロゲンが過剰になると、乳腺症を起こす。
乳癌と乳腺症の違いは?
乳腺症
好発年齢
30∼45歳
腫瘤の状態
z 弾性がある
z 境界がはっきりしない
z 圧痛があることもある
z 指で触ると良く動く
z 月経前に腫脹する
乳頭部の異常
乳汁様の分泌物が見られることが良
くある
乳 房 の 皮 膚 特になし
の異常
9
乳癌
40∼60歳
z かたい
z 境界がはっきりしない
z 初期には痛みがない
z 進行すると、触っても動かない
z 月経ににつれての変化なし
血液の混じった分泌物が見られるこ
とがある
進行すると、
陥凹等の異常や発赤が生
じる
特殊撮影とは?
標準撮影では描出しにくい部位を、他方向からの撮影や関心領域に重点を置いたポジショ
ニングによって描出する撮影方法。
スポット撮影、拡大撮影、両側乳房撮影、腋窩稜撮影、接線撮影、ロール撮影等がある。
スポット撮影(Spot compression)の特徴は?
z
偽陽性や偽陰性の判定に効果大。
z
乳房全体の圧迫と違い、関心領域の局所圧迫の
ため乳腺組織の分離能が高い。
z
散乱線の減少によりコントラストや解像力の改
善がみられる。
乳腺組織内に埋没した識別困難な腫瘤または石灰化
胸壁に近い深部に対して有効
拡大撮影(M;Magnification)の特徴は?
メリット
石灰化(乳癌の石灰化の多くは0.5mm以下)や腫瘤辺縁
の特徴(形状の不整、濃淡の不均一など)をより鮮鋭
に描出。
デメリット
密着撮影に較べてコントラストがやや劣る
被曝線量が増加
密着撮影に比べて微小石灰化の検出能力は飛躍的に向
上する。
10
マンモグラフィ検査の進め方
2 方向を 撮影
乳頭異常分泌
乳管内視鏡
乳管内石灰化
乳管内生検
乳管造影
微小石灰化像
CC,MLO
病理組織診断
小腫瘤
腫瘤あ り
マ ーキ ン グ
生検
ステレオバ イオプ シ
細胞診
超音波誘導穿刺
組織診
他の画像診断機器との違い
MMG
US
MRI
描出能
石灰化病変
腫瘤病変
腫瘤のSensituvityに優れる
侵襲性
X線被曝
非浸潤
Gd造影剤の静注
スプール
早い。検診向き
術者の技量に依存
悪い。検診に不向き
コスト
比較的安価
比較的安価
高額
バイオプシ
石灰化のみでも可
石灰化に弱い
可能
壮年層(30∼64歳)の部位別ガン死亡数
肝臓
胃
肺
大腸
膵臓
食道
男性
10,359
10,053
7,919
5,903
3,010
2,868
女性
乳房
胃
大腸
肺
肝臓
子宮
5,011
4,968
3,783
2,952
2,039
1,960
平成7年、ガンによる死亡者数は
概数で26万2,952人に達した。
(平成7年厚生省統計情報部集計)
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乳管区分切除生検
腫瘤な し
拡大撮影
ガン死亡数と死亡率(厚生省統計情報部資料)
死亡者数
全ガン
食道
胃
大腸
肝臓
膵臓
肺
乳房
子宮
白血病
その他
計
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
7年
262,952
159,634
103,318
7,252
1,385
32,016
18,056
17,310
13,956
22,779
8,939
8,963
7,053
33,376
12,352
99
7,721
−
4,860
3,639
2,482
34,199
26,515
6年
243,670
146,896
96,774
6,778
1,365
30,564
17,227
15,761
13,157
20,764
7,913
8,294
6,696
31,724
11,752
64
7,131
−
4,575
3,348
2,562
29,599
24,396
死亡率(人口10万対)
7年
6年
211.5
196.4
262.9
241.5
162.4
153.1
11.9
11.1
2.2
2.2
52.7
50.2
28.4
27.2
28.5
25.9
21.9
20.8
37.5
34.1
14.0
12.5
14.8
13.6
15.1
10.6
16.0
52.1
19.4
18.6
0.2
0.1
12.1
11.3
−
−
1.6
7.2
6.0
5.5
3.9
4.1
56.3
48.7
41.7
38.6
注)6年は確定数、7年は概数。
(対がん会報より)
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