論文内容要旨 Amygdala response during anticipatory anxiety in patients with tension-type headache THE SHOWA SCIENCES(Vol.27 UNIVERSITY No.1 JOUNAL of MEDICAL 2015 年 3 月) 生理系生理学(生体調節機能学分野)専攻 佐藤佳渚子 緊張型頭痛は、一次性頭痛の中で最も多い頭痛と言われている。しかし、 他の一次性頭痛に比べると注目度は低く、そのメカニズムも明らかにはさ れていない。中枢神経もしくは末梢神経が関係していると言われ、頭蓋骨 周囲の筋緊張が強くなったため、もしくは痛みに対する過敏性の増加によ ると言われている。また、心理的要因も緊張型頭痛には大きく関係してお り、抑うつや不安は頭痛の頻度を上げると言われている。 本研究では、心理的ストレスに対する緊張型頭痛患者の生理的反応を検討 した。緊張型頭痛患者 6 名(平均 30±13;全て女性)と健常者 8 名(平均 30 ±13;全て女性)を対象に、通電による予期不安与え、不安値と呼吸流量 の反応を観察した。さらに、脳波と呼吸流量を同時に測定し、不安関連電 位や扁桃 体の 賦活 を観察し た。 状態 不安、特 性不 安の 評価のた め、 State-Trait Anxiety Inventory(STAI)を施行、さらに性格特性を検討する ためミネソタ多面人格目録(MMPI)を施行した。健常の場合、負の感情に より呼吸数は上昇し、呼吸と同期して扁桃体の賦活化、呼吸数上昇と個々 の特性不安に相関があるとされている。 その結果、健常者と比較し、緊張型頭痛患者では高状態不安が認められた。 また、緊張型頭痛患者では、予期不安による呼吸数の増加が健常者に比べ 有意に高値だった。MMPI では、緊張型頭痛患者の MMPI 第 8 尺度(統合失 調症)と状態不安の間に負の相関を認め、MMPI 第 8 尺度が高いと状態不安 は低く、MMPI 第 8 尺度が低いと状態不安は高いという関係だった。つま り状態不安が高い人は自己制御が強く、慎重で責任感が強く社会的ストレ スを受けやすいという性格を示す。呼吸関連電位では、健常者では右側の 扁桃体賦活化を、緊張型頭痛患者では両側の扁桃体賦活化を認めた。扁桃 体は特に恐怖や不安などの情動反応に重要な役割を担う。Dolan and Morris によると右の扁桃体は内部状態に、左は外部刺激に関連するとし ている。我々の緊張型頭痛患者では、内からの不安に対してより敏感に反 応し、それとともに外部刺激に大きく反応することにより両側の扁桃体に 賦活化を認めたと考えた。 緊張型頭痛患者では、頭蓋骨周囲の筋緊張が頭痛に関係していると言われ ており、上記のような心理的特性による筋緊張の高まりが頭痛を引き起こ す1つの要因と考えられる。実際に不安により呼吸数が上昇する過換気症 候群や不安症候群は胸部や頸部の筋緊張が認められ、その筋緊張がさらに 呼吸を浅く早くさせるという悪循環がみられる。近年では、行動療法は軽 症の緊張型頭痛の治療に有効とされている。将来的には、高状態不安の緊 張型頭痛患者にも行動療法を行い、効果の是非を検討する必要があると思 われる。
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