連載 第2回 木内由美子 高齢者看護に生かす 日本浮腫療法協会 会長兼技術開発部部長 浮腫学と浮腫療法 の基本手技 しかし,浮腫療法における浮腫とは, 第三者が肉眼で見て認める浮腫だけでは 療法の概念の歴史的背景を紹介し,浮腫 なく,たとえ肉眼的に浮腫が見られなく 療法の必要性,対象疾患と禁忌,浮腫療 とも,細胞組織レベルで間質液が貯留し 法の基礎知識として,脈管系とリンパ系 ている状態のことを言います。 を中心に説明しました。今回は,浮腫に 圧窩:むくみのある部位を指先で圧迫す ついて理解を深めた後,浮腫療法の基本 ると,その痕が残ること(このような 的な手技について説明します。 場合は,水分の貯留によって体重が正 常の10%以上増加していることが多 いと言われています) 。 一般的に,浮腫とは,身体の中の水分 代謝が乱れ組織間液が異常に増え,皮下 組織に細胞外液が過剰に貯留した状態を 言います。 潜在性浮腫:体重増加が10%以下の場 合で,圧窩を認めることが少ない状態。 浮腫の原因 浮腫は,よく見られる臨床症状の一つで 浮腫形成の主な原因 す。浮腫の原因(表1, 2)を把握し,そ 【毛細血管静水圧上昇】 ・うっ血性心不全(肺性心を含む) の原疾患を特定することは,適切な治療 ・妊娠,月経前浮腫 ・特発性浮腫 を行うために重要であると考えられます。 ・静脈閉塞:肝硬変・肝静脈閉塞,急性肺浮腫,局 所性静脈閉塞(上・下大静脈症候群,四肢静脈血 栓症,静脈瘤など) 浮腫の分類と特徴 ・細動脈抵抗減少:Ca拮抗薬など 【血漿膠質浸透圧減少】※膠質浸透圧とはタンパクの 水分を引き付ける性質によるもの ●全身性浮腫 ◎心性浮腫 ・タンパク喪失:ネフローゼ症候群,タンパク漏出 性胃腸症 うっ血性心不全に最もよく見られるの ・アルブミン合成減少:肝硬変,低栄養 は, 下 肢 のpitting edemaで す。 重 症 度 【毛細血管透過性亢進】 ・特発性浮腫,熱傷,外傷,炎症,敗血症,血管性浮腫, 成人呼吸促迫症候群,糖尿病など 【リンパ系閉塞】 ・悪性腫瘍の結節増大,甲状腺機能低下症(粘液水 腫) ,乳癌リンパ郭清術後,リンパ管炎,放射線治 療後 98 理学療法士。2004年日本浮腫療法協会を設立し「浮腫療法」を開 発。2008年株式会社ゆうゆう代表取締役就任,同年徳島医療福 祉専門学校特別講師就任。2010年日本浮腫療法協会会長就任。 前回(本誌Vol.21,No.6)は,浮腫 浮腫の定義 表1 株式会社ゆうゆう 代表取締役 臨床老年看護 vol.22 no.2 に応じ,臀部・大腿内側部・体幹背側部 にも浮腫が出現します。 ◎腎性浮腫 ネフローゼ症候群によるものと腎障害 によるものがあります。 ➡続きは本誌をご覧ください
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