<生徒実験を通じて学力・進学意識の向上につなげる化学授業の実践>

<生徒実験を通じて学力・進学意識の向上につなげる化学授業の実践>
・・・『坂戸高校チャレンジ化学』の取り組み・・・ 埼玉県立坂戸高等学校 山田暢司
1. はじめに
科学(化学)教育にはこれまでも大きな期待が寄せられてきたが、現場は教員の多忙化や予算不足、生徒
の実態の多様化など、様々な教育課題に直面している。発表者が勤務する当該校は、落ち着いた生徒の割
合の多い公立の中堅進学校である。しかし、赴任当初は、化学教育に関しては板書中心の全く凡庸な教育
内容で、生徒実験が実施された形跡はほとんどなく、実験設備も劣悪な環境にあった。生徒自身による化
学実験というツールを有効に活用し、生徒の興味関心を学習成果・進路意識の向上・社会性の育成に活か
した約 10 年に及ぶ実践を紹介したい。
2. 科学(高校化学)教育の現状と課題:
「理科離れ」はなぜ改善しないのか?
魅力ある教材や実験の充実により、化学への興味関心を高めることを目指した授業は、現場教師の共通
して目指すところである。しかし、幾たびかの教育改革、予算的な優遇施策を経てもなかなか改善しない。
それは、次の①~⑤のような厳しい現状があるからである。
① 「ゆとり教育脱却」に対する誤解 → まず演習問題の訓練・てっとり早く点数を取るべし?
短期的成績・進学実績の向上 > 科学への興味関心・実験観察(手間&リスク)
② 化学=知識暗記のイメージ固定化:生徒が、座学中心の学習スタイルに慣れきってしまい、観察を通
じて思考力を高める訓練がなされない。たまたま化学の成績が良かったから進学 → 進学後、実は
化学分野にはさほど関心を持っていなかったという進路指導とのミスマッチ。
③ 化学教員が実験や実習を忌避し知識伝達型授業を好む:a.学校事故へのおそれ・制約の強化 b.実験予
算の削減 c.生徒よりもまずパソコン前で作業・・・業務拡大により実験教材開発の余裕がない。
④ 教員の実験指導のスキル低下:ベテラン教員の大量退職 → 若い教員増加 …ノウハウや経験が伝
達されず世代交代が進行。 → そういう先生に指導される生徒が増加していく悪循環
※化学は最も嫌いで学ぶ価値が見いだせない科目!(平 17 年国立教育政策研究所の高校生を対象にした調査より)
⑤ 生活体験不足と7・5・3現象:幼少時から利便な生活に浸り、学校でも工作活動や動植物の飼育な
ど物質や現象に触れる機会が減少。科学的な体験を通じ考える習慣が不足し、小・中・高と学年が進
むに従い科学に興味のある子供の割合が減少、高校では3割に。大学生・社会人の科学リテラシーも?
3. 現状と課題①~⑤を踏まえた『坂戸高校チャレンジ化学』の実践内容:生徒実験を通じて意欲・
進路実績の向上にどのように取り組んだか(2005 年~)
(1) 具体的な目標(ねらい):①授業内容を知識伝達から関心意欲を高める方向へシフトする ②学習意欲・
学力向上を目指し進路実現に活かす ③教育課程(履修)上の整合性、施設設備使用等の環境整備、予算
上の措置、実習助手活用などの教科内での協力・連携体制の構築。 ④実験内容の工夫・改善、作業
を通じて楽しんで取り組める魅力的で優れた教材を考案・提供していく。
(2) 実践内容:生徒実験の内容を工夫し、戦略的に実践。とにかく実験回数を増やすことを優先させた。
① 全授業の約 1/4~1/3 を生徒実験(×演示実験)として実施:科目 1 単位あたり年間 10 時限実施を目指
した(例:旧課程理科総合 2 単位、新課程化学 3 年次 3~5 単位)。2005~
2014 まで、個人担当として約 1500 時限を超える生徒化学実験を実施。
② 実施形態:授業時間内に「導入(教員による演示実験と解説)-実験準備-
実験-片付け-レポート作成(一部)」サイクルの徹底・習慣化。
③ グループ実験での生徒の役割分担意識の醸成:実験材料、器具の準備を
可能な限り生徒に行わせ(画像右)、実験グループ(3~4 人)内で役割分担の
習慣化。実習助手と連携(安全配慮等)、実験のお膳立てを極力排し生徒自
身で判断し行動するという実験形態とした。
④ 興味関心を喚起させ多領域をカバーできる実験テーマ設定:
【例:酸塩基
(中和)反応の導入実験『ミカンの皮むき』】a.モル濃度の考え方と計算 b.
モル濃度の調整 c.酸・塩基反応 d.ミカンに含まれるペクチンの働き等を
学習の狙いに。お遊び的な体験に陥らないよう、実験内容の理解を深化
させる実験プリントの確認演習問題を工夫。
⑤ 実験費用抑制:多数回実施するため低価格、身近な素材で効果の大きい教材を研究。
【参考:一人の生徒(理科系)が卒業までに履修した実験テーマ:約 75 テーマ】
燃料電池をつくる・カラフルなコピー食品・反応熱で卵を焼く・不思議な BZ 振動反応・色素増感電池・液晶作り・寒天で
ろうそくの型取り・フラーレン模型作り・墨流し・紙漉きでハガキ・生バターやチーズ作り・エジソン電球・固まる水ガラ
ス・テルミット反応・アルコール模擬ロケット実験・電気とイオンの働きでホットケーキを焼く・安全簡易爆鳴器製作・液
体窒素による極低温の世界・超伝導を観察する・人工香料エステル合成・ゴムボール作り・ヨウ素やドライアイスの昇華・
1
硫黄の同素体・アルカリ金属・水中でも燃えるマグネシウム・大気圧で空缶つぶし・化学発光ルミノール・振ると色が変わ
る液体・輝く火薬・炭電池製作・空気中でも燃える鉄粉・ダニエル電池を作る・ミカンの薄皮を溶かす・古代紅染め・イオ
ン化傾向・火文字を描く・気体反応の法則・過冷却・中和二段階滴定・コバルト錯体の色変化・アルケンの付加反応・湿布
薬を作る・アルコールからアルデヒドへ・カーバイドからアセチレン・塩化アンモニウムの星形結晶…他 20 数種類。
【画像左より:超伝導物質・ペットに金メッキ・エタノールと反応熱・生分解性プラスティックで光るアクセサリー工作】
(3) 生徒実験外での実践:授業その他でのサイエンスに関わるアプローチを実践
① 特別活動での活用例:学校の花壇でベニバナ(紅花)を栽培、色素抽出によりハンカチ繊維の染色。本校
がたまたま万葉集のベニバナを詠み込んだ歌の当該地であったことを縁に、古典・家庭科・化学・地
理の多領域に関わる総合教材とした。(2006~10)
② 学習支援サイトの構築:実験の様子を撮影したデータをサイトに UP、教室設置のパソコンから視聴可
能とし、部活動等の公認欠席者への配慮として活用させた。(2005~14)
③ その他の活用:大学(埼玉大・東北大)との連携事業「サイエンスコラボ」で教職志望の大学院生が化学
実験を実施(2013~計 11 回)・海外からの短期留学生と共同化学実験イベント(2008~3 回実施)・JST
支援によるサイエンスパートナーシップ事業(SPP)による蛍光タンパク(GFP)をテーマにした生徒実
験を企画(2010)・化学実験を織り交ぜた化学の学習のみを行う「オール化学合宿」実施(2008)・文化
祭でサイエンスショー&販売コーナーの実施(2008~)…他、大学推薦入試や AO 入試での活用大学や
関連機関で実施されている高校生向けのセミナー・化学グランプリ・科学の甲子園・研究所機関への
体験的研修等への参加(2007~)…。
【画像左より:SPP 事業・大学とのサイエンスコラボ・文化祭サイエンスショー・海外留学生と共同化学実験】
4. 「チャレンジ化学」実施による具体的な成果
(1) 受験・進路実績:
『チャレンジ化学』実施の受験結
果調査(右表:県に報告済)による成果分析
① センター化学の得点と進路データ:右に卒業後の
追跡アンケートが実現した 2009 年春卒業生(*:
学年移行で完成年度)につながる 2007~9 年連続
のデータを特に掲載した。
『チャレンジ化学』を実
施した A 群と実施しない群に分けて単純比較し
たもので、実施 A 群は、進級時に理系を志望する
生徒の割合が極端に高く、そのままセンター試験
の結果と国立大学理系への進路状況が大幅に向上
(2007 年 2.4%→2009 年 22.2%:チャレンジ化学
の実施群が合格者全体の 77.8%を占める)した。実
施前は、クラスに 1~2 名ほどの合格者だったもの
が大幅に増加し、センター試験で全国平均点以上
をマークした生徒の実に 87.5%が1年次に A 群に
属していた。 ※③の化学系とは、医学・薬学・歯学・
センター試験結果+進路データ
項目\西暦卒業年
07 年
08 年
* 09 年
①3 年理系選択者数
A 群実数/割合%
126
106
40/37.7%
81
47/58.0%
(3 クラス)
(3 クラス)
(2 クラス)
29/23.0%
-
63.1
56.8
-6.3
85
7/24.1%
―
31/29.2%
-
65.8
56.5
-9.3
87
11/35.5%
―
45/55.6%
31/68.9%
69.5
74.6
+5.1
100
24/53.3%
21/87.5%
49/38.9%
―
54/50.9%
―
59/72.8%
37/62.7%
②センター試験化
学受験者数/割合%
A 群の実数/割合%
全国平均点
本校平均点
本校平均-全国
本校生徒最高点
全 国 平 均 点 超 /割合 %
A 群の実数/割合%
③化学系大学進学
者数/割合
A 群の実数/割合%
④国公立大学理系
合格者数/割合
A 群の数/割合%
-
理工・基礎化学・応用化学・農業・環境化学・物質化学・
5/4.7%
3/2.4%
18/22.2%
生命化学・バイオ・教育学部理科専攻・栄養・看護等。④
―
―
14/77.8%
は多数の併願・複数受験が可能な私立大学を除外し国公立
大学合格者のみを扱っている(合格者数=実質進学者人数)。また、A 群で理系クラスに属しながら、国公立大の経済系(概
2
して数学に強い)合格者は文系扱いなので除外してある。その他、年度により、学級数減や教育課程、担当教員の変更
があるので、学年間の単純比較はできないが、リーマンショック後の大不況後で理系大学が難化した状況での成果。
② 関連する進路指導での活用成果:化学実験を重視した授業実践の題材を入試の志願理由書や推薦書の
資料として活用し成果を挙げた。(例:地元埼玉大学工学部だけで1クラスから同時に3名の推薦合格
者を出すという全国にも珍しい実績(2008)
(2) 『チャレンジ化学』実施群の卒業生アンケート(卒業 2 年 2 ヶ月後 2012 年実施:回収率 38.3%):特に
2011 年に理系クラス卒業生全員(81 名)に郵送によるアンケートを予算化、理科教育に対する意識や本
校での理科指導について幅広い観点から設問 19 項目について5段階評価で回答を得た。回答では、体
験的学習を重視すべきであるか(4.6)、実験時間を確保しながら大学入試の対策も平行させた取り組み
を評価するか(4.5)をはじめ、日本の国策としての理数科目の強化の必要性があるか(平均 4.1 点)といっ
た社会性の高いトピックでも比較的高い反応が得られた。また、受験に直結する学習内容の確認実験
よりも、むしろ応用的で手間のかかるテーマ(化学発光・染色・燃料電池などの工作的実験・メッキ作
業・ミカンの皮むきなど食品製造)への評価が高かったことは特徴的で考えさせられる内容であった。
(3) 事故ゼロ・予算内で実施できた:1500 時間もの生徒実験を実施したが、実験操作中での事故は、ピペ
ット先で指を切った怪我 1 件のみであった。(服や床を汚した軽微のものを除く) 予算もほとんどの年
度で特別に増額要求をしなくても済んでいる。
(4) 情報発信の効果が発生した:活動の一部の WEB 公開により外部から多くの関心が寄せられ、児童・
生徒、理科系教職を目指す大学生から内容に関する質問、他県の教育委員会研修や民間企業研修のテ
ーマに採用したいなどの要望も寄せられている。特に、実験の様子を撮影したデータを WEB に UP
し、教室設置パソコンから視聴可能とした取り組みは、授業欠席者のみならず、他校、海外でもその
利用者が拡大(指導者が個人の責任で運営する YouTube チャンネルは総アクセス数が 200 万件に迫る)
している。今後の学校教育現場におけるタブレット端末の有効な活用事例として注目を集めている。
(5) 取り組みの結果が具体的な評価につながった:『チャレンジ化学の取り組み』の内容はクラブ活動(科
学部)とも連動している。科学振興展覧会3年連続(2012~14)地区優秀賞、2年連続(2013~14)で県中
央展出展(優秀賞)、2015 全国高文祭自然科学研究部門参加決定。
(6) 学校内外・メディアでの評価の高まり:生徒・保護者・卒業生から名物講座的な扱いを受けるように
なった。他校からの視察、体験授業、海外からの交流授業等、教科や学校という枠を超えた教育活動
として広く認知されるようになった。また、公私関わらず多くの機関からの取材、協力依頼(メディア
での制作協力等)を受けるようになった。これらは、教育活動として認められる範囲のもので、テレビ
やポスター等での扱いが生徒の化学の学習に対する大きな励みになった。(画像下)
(7) グループ実験が社会性を育む充実感のある学習体験となる:生徒はグループでの化学実験を楽しんで
取り組んでいる。グループ実験が、学校教育活動の中で充実した時間となり、生徒間の学びを通じた
役割分担意識、人間関係や社会性を育む機会となっているように思える。教科指導以外の場面(クラス
経営や生徒指導・行事等において)で有効に機能することがある。(画像下)
【画像左より】テレビ番組のコラボ実験・実験の解説をクイズ番組でコメント・ドリンク商品への開発協力・グループ実験】
5. 『チャレンジ化学』実践の意義
(1) 生徒実験のノウハウの確立によって、実験実施のハードルを下げ持続可能な仕組みを構築できる:生
徒実験は、演示実験(教材提示)とは比較にならないほど、手間・規模・安全性・生徒の行動管理・予算
その他のリスクを有している。実験をたくさん実施するからといって教員の授業担当時数での優遇も
なく、履修内容との整合性や他の教員の理解も得なければならない。しかし、安全・確実に無理なく
実施・継続できるようなフォーマット化された教材を確立することで、教員の負担を軽減し実験実施
環境を改善することができる。
(2) 学校(授業)を基軸にした理科教育の振興を目指す:理科離れに対する危機意識から、これまでも様々な
組織レベルでの取り組み、特別な予算を組んでの実践が数多くなされてはいる。しかし、生徒がその
多くの時間を費やすのは圧倒的に学校の正規の授業内である。一過性のイベントの中には学校 PR に
3
重心を置いたものも少なくなく、授業内容の一部先取りをしているだけのもの、指導が未熟で狙いが
不明なもの、科学に対する趣味的で一方的な扱いが生徒の飽きっぽい学習態度につながっている点も
見逃すことができない。やはり、科学教育は、教育課程に明確に位置づけられた日々の学習活動の中
で継続的に実践、発展的に育まれるべきものである。
(3) どのような実態の学校でも実践でき成果を挙げられる可能性がある:本校(坂戸高校)での実践は、たま
たま中堅の進学校であったために、進学実績を含めた学習・学力の成果がわかりやすい数値として客
観的に得られたに過ぎない。これまで個人的には、数校(旧制中学、単位制通信制課程、学力不十校)
に勤務しており、化学実験を重視した授業展開が、生徒の実情の差にさほど依存せず、様々な実態の
生徒に柔軟に適合させやすい実践プログラムである。
(4) 生徒や教員の学習や学力観についての意識改革に波及する:他教員や保護者から「実験は楽しいだろ
うが授業進度はどうなのか?」
「ただ遊ばせているのでは?」「学力や進路実現につながるのか?「予
算を圧迫しているのでは?」といった固定的・否定的な捉え方を、一定の学力向上・進路実績の成果
をもって一気に払拭することが可能となる。
(5) 体験的教育活動から「学びとは何か?」との再認識の機会をもたらす:生徒の体験不足は深刻である。
特に、手先の不器用さは年々ひどくなる一方だ。化学実験は、教科書の単元にとどまらず多岐に渡る
幅のある学習体験となる。
【実施例:下画像左より:燃料電池の実験ではチューブの切断や金網の切り
出し、電池セル組み立て、テスターや電解装置の機器操作などバラエティーに富む工作活動となり内
容は電気エネルギーの発生体験から資源環境問題にまで及ぶ・子供用の玩具ボールを使って安価で迫
力のあるフラーレンモデルの作成・透明石けんを制作して使ってみる・墨流しアート作品を作る】
6. 課 題
本実践の『坂戸高校チャレンジ化学』という名称は、当初は校内で事実上承認されていたという程度に
過ぎず、化学の学習に幅を持たせる試みとして個人レベルから開始し、結果として公表に至っているもの
である。本来、教育効果を数値化して評価するというのは難しい側面があり、この『チャレンジ化学』の
ように生徒を実施対象群と非対象群とに分けて、仮説を立てての検証は大変なリスクを負うことになる。
組織的に計画を立ち上げることで講座やクラス編成、予算、人事に多大な影響を及ぼすため、学校社会の
現実からは支持されないことも考えられる。生徒を研究対象にする取り組みは、批判の対象になる可能性
が常にあり、保護者からの信頼喪失を招きかねない。例えば、2 ページの進路データに関わる資料は、県
に報告済みではあるものの、クラス編成や教育課程での整合性の実情を知らないと誤解されやすいため、
公開することは大変に勇気を要した。それ以前の問題として、卒業後2年以上経過した生徒に郵送(往復)
アンケートを実施するだけでも、一定の予算確保の理解を得ねばならない。このように、学習成果を客観
的にどのように評価するかということはあらゆる教育プログラムに共通の大きな課題である。(しかし、本
実践がそういう組織的な大きな計画性を持たない挑戦的なプログラムであったことが、一定の成果を挙げ
ることにつながったのかも知れない。)
7. おわりに
本プログラムの意義とユニークさをいくつかの要素にまとめると「手間いらず」「低予算」「効果抜群」
「日々継続・蓄積」
「波及効果」
「感謝感激」・・・である。実践は 10 年間に及び、対象者は直接的に関わっ
た生徒がのべ 2000 名、生徒実験に限っても実施時間は 1500 時限を超えている。『チャレンジ化学』は、
単に魅力的な実験を提供してますというような一過性のイベントではない。対象生徒数と時間的スケール
の点から、学校を舞台にした前例のない規模の『社会実験』となったと確信している。実は、このプログ
ラムは発表者自身が 31 年間の勤務経験で 5200 時間を超える生徒実験を実施してきた延長線上に位置づけ
られるもので、個人の実験実施時間数としては、おそらくは日本一であろうとの自負はある。しかし、特
別な予算的措置や組織的事業としてでなく、通常の学校教育課程の範囲内で十分に計画・実施できたもの
である。生徒の学力層も平均よりやや上という程度で無理なく楽しく取り組まれ、現在も着任して間のな
い新任教員と分業しており、今後も継続拡大されていくことになるだろう。質と量の向上を求められる理
科教育の振興に十分寄与する実践となったと考えている。
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