日常での有用感から学習への意欲を高める生物授業

兵庫教育大学教職大学院
授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2011
日常での有用感から学習への意欲を高める生物授業
小嶋睦子・松本伸示
校種・学年: 高等学校 3年生
教科: 理科(生物Ⅰ)
単元名: 「腎臓のつくりとはたらき」 東京書籍平成 19 年度教科書準拠
あらまし
生物学習への意欲を高める取り組みとして,日常生活での有用感を高めることに焦点をあてた授業を
提案します。その手法として,授業の中に日常生活で起こりうる諸問題について,科学的な視点で思考
し,判断する場面を設定し,学習への興味関心を高めるために実験(演示実験)を取り入れます。
手立てと活動
①日常生活で起こりうる諸問題に対して,授業で学習した知識を活用する場面の設定
生徒が日常生活で起こりうる諸問題(例えば健康問題)について,身近に感じることができるように,
テレビ番組や WEB ページなどから,単元の学習内容と関連の深い話題で教材を作成します。
【具体例】慢性腎臓病を考える
NHK 総合テレビ「ためしてガッテン・予備軍 2000 万人!腎臓病の真実」の WEB ページ
(http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20071024.html)をもとに,授業プリントを作成しました。
WEB ページの内容をプリントに掲載し読み物として生徒に配布し,その続きに以下のような問いを記
入させました。
赤色のペン(色鉛筆等も可)を用意してください。
(なければ,黒以外の他の色で可)
1.今までの学習を通して聞いたことがあるが意味は分からない言葉や内容に,下線(
)を引いてください。
2.今までの学習を通して,内容もだいたい分かる言葉や内容を,
で囲んでください。
以下は,黒のシャープペンシル等で記入してください。
3.次のことについて,あなたの考えを書いてください。
(1)以下の腎臓病の主な初期症状は,腎臓のはたらきのどのあたりが不調でおきていると思うか,それぞれについてこ
のプリントと今まで学習したことをふまえて,あなたの考えを書いてください。
・頭痛
・貧血
・むくみ
・高血圧
・尿量の減少
・頻尿
(2)「慢性腎臓病」にならないために,どのようにすればよいと思いますか。
このプリントと今まで学習したことをふまえて,考えたこととその理由を書いてください。
(3)このプリントに取り組んで,今までの生物分野の学習について考えたことを書いてください。
・1.および2.の作業は生徒の知識を,生徒自身に確認させるのがねらいです。
・3.では,このプリントに取り組む以前に,腎臓について学習した内容(構造および働き)をふまえ
て,(1)では生徒なりの考えで初期症状の原因を記入する,(2)では予防法を考える,といった学習した
知識を活用する場面を設定しています。また,(3)では,生物学習の意義を生徒自身に自覚させるのがね
らいです。
②学習への興味関心を高めるための実験(演示実験)の導入
ここでは,ヒトの腎臓に近い,ブタの腎臓の解剖の様子を撮影し,短時間に編集し,腎臓の構造の導
入で紹介します。脂肪に包まれた腎臓を,生徒の目の前で取り出すには,慣れていても約 30 分はかか
るため撮影を行いました。
【授業展開例】
時
教科書
【1章】内 A . 腎 臓
部環境の の つ く り
調節
B . 腎臓
1 3.腎臓 のは たら
のつくりと き
はたらき
本時の目標
授業内容
準備物
ブタの腎臓の解剖映像を通してみること ビデオ教材でブタの腎臓の解剖の様子を ブタの腎臓の解剖の様子(実
で,腎臓に対する興味関心を高める。腎 確認する。腎臓の構造では ,腎単位を中 験映像)/授業プリント/PC
臓の構造およびはたらきを理解する。
心に整理する。
(パワーポイント)
②
腎臓の構造およびはたらきを理解する。 はたらきとしては,ろ過と再吸収が重要で
血しょうや原尿、尿の成分を比較しながら あり,タンパク質やグルコースの動きにも注
水分や老廃物が排出され、体液の恒常 目する。
性が保たれるしくみを理解する。
濃縮率や再吸収率の計算方法を理解す 腎臓の働き(ろ過と再吸収 )に つい て血 授業プリント/PC(パワーポイ
る。
しょうや原尿,尿の成分の違いから学習す ント)
る。尿と血しょう(原尿)の濃度から,濃縮率
や再吸収率を計算する。
2
腎臓病について紹介さ れているホ ーム 腎臓病の症状や予防に対して今まで得た 授業プリント/PC(パワーポイ
ページから,症状や予防に対して考えを 知識を用いて考える。
ント)
まとめ、生物学習の意義を考える。
①
・通常の授業の最後に,作成した授業プリントに取り組ませます。時間があれば,テレビ番組そのもの
を見せると,腎臓の働き等が模式的に表現されているので,生徒の学習内容の確認にも役に立ちます。
期待される効果
生物の授業で学習したことが,ある程度考えるための基礎的な知識や考え方になることに気づき,日
常生活の有用性を感じることが期待できます。しかし,扱っている内容が医学的なものであるので,確
信を持って答えられる生徒は少なく,さらに勉強することできちんと答えられるようになるのではない
かという考えから,学習への意欲を高めることにつながることが期待できます。
腎臓の解剖の様子は,実際に目の前で実験を行うより,生徒にとっては見やすく興味関心が高まりや
すいと考えられます。
補
足
質問を設定する際,確実に学習した内容を基に答えにたどり着けそうなものにすることが重要です。
実際には正解にたどり着けなくても,生徒が学習した内容を基に考えることが大切です。全く習ってい
ない上に,考えても関連を見いだせない場合は,かえって,日常生活で活かせないという思いを持たせ
ることにつながる可能性があります。
出典) 小嶋睦子(2011)「高校生の生物学習に対する意欲を高める授業実践-日常生活での有用感に焦
点をあてて-」
,授業実践リーダーコース報告書(指導教員 松本伸示)