発 生 学 概 論 I 体細胞の有糸分裂と細胞周期・・・体細胞分裂 細胞周期:細胞の活動形態を表している G1 期(Gap1 Phase、DNA 合成準備期) 細胞が増殖を完全に停止しているときは、G0 期という 生体内で分裂している細胞はわずかで、ほとんどの細胞は分裂していない S 期(Synthesis Phase、DNA 合成期) 分裂に先駆けて、DNA を複製する G2 期(Gap2 Phase、DNA 合成後の期間) M 期(Mitotic Phase、分裂期) 前期 Prophase 染色質糸 chromatin fiber → 46 本の染色体、 動原体、紡錘体形成・・・有糸分裂に特徴的 中期 Metaphase 核膜消失、染色体が細胞の赤道面に移動 後期 Anaphase 染色体が縦裂、染色糸 chromatid → 娘染色体 終期 Telophase 娘染色体→染色質、核膜再生、細胞質がくびれて 2 個の細胞に II 染色体(chromosomes) 静止細胞では染色質として認識される。M 期の時だけ光線顕微鏡で観察可能。 動原体(くびれ)を中心に長腕と短腕に分けられる。 2 つの染色分体(DNA 合成でコピーされ 2 倍体になっている)は動原体で接合する。 細胞分裂(M 期)の際に紡錘糸が付着し、二つに分かれる。 相同染色体:同形、同大の染色体(父親、母親由来) 常染色体: 44 本(22 対) 性染色体: X 染色体と Y 染色体(男性:XY、女性:XX) III 減数分裂 = 生殖細胞分裂 精子、卵子の形成途上に起こる 2 回の連続した有糸分裂 1 個の 2 倍体 diploid(2n)細胞より 4 個の半数体 haploid (n)の細胞(配偶子)ができる 第一次分裂(DNA の合成の準備段階ののち分裂を開始) 2 本の染色分体は常に接合、1 つの染色体として行動する 前期に 染色体形成ののち、相同染色体の接合(二価染色体) ・交叉(相同組換え)がおこる。 交叉・・・キアズマ形成、遺伝的多様性において極めて重要 → 前中期 → 中期 → 後期 → 終期 ののち、娘細胞が生じる・・・半数体(n) 次に、分裂間期をはさんで(DNA 合成はおきない)、 第二次分裂(染色分体の分離)がおこる。・・・体細胞分裂とほぼ同様の手順で 染色体異常:数的異常と構造的異常 数的異常は染色体不分離による ダウン症候群: 第 21 染色体が 1 個余分 trisomy ターナー症候群: 女性、X 染色体が1つ欠如(女性の容姿、卵巣が痕跡的) クラインフェルター症候群: 余分の X 染色体(男性の容姿、精巣発達不全、乳房肥 大) 女性では年齢とともに染色体不分離を含めて染色体異常の頻度が増加(35 歳以上で顕著) 体外受精(in vitro fertilization: IVF) 女性 35 歳未満で 1 回の試行で 30%成功率、年齢が 上がると確率低下、多胎は若い女性で高頻度 構造的異常は染色体の切断による起きる←ウイルス、放射線、薬物など - 50 - IV 精子形成と卵子形成 卵子形成 1 個の一次卵母細胞から1個の卵子ができる 原始生殖細胞・・・1 個、有糸分裂 卵祖細胞・・・有糸分裂、出生前に分裂停止 一次卵母細胞(卵母細胞)・・・第一減数分裂(1 個の二次卵母細胞+1 個の一次極体) 一次(原始)卵胞(卵胞上皮細胞に囲まれた一次卵母細胞) ・・・約 700 万個? → 出生時に数十万個(他は閉鎖卵胞になる) 分裂前期の段階で分裂を休止したまま二次卵胞に成熟 二次卵胞(果粒層(←卵胞上皮細胞)、透明帯に囲まれる) 大きな卵胞腔を持ったグラーフ卵胞(三次卵胞)に成熟 排卵直前に第一減数分裂が完了 二次卵母細胞(卵娘細胞)・・・第二減数分裂 排卵・・・数百個/生涯 排卵 3 時間前に第二減数分裂中期で休止 受精により第二減数分裂が完了(1 個の二次卵母細胞+1 個の一次極体) 一次極体も受精により第二減数分裂を行う(2 個の極体) 1 個の成熟卵子と 3 個の極体 精子形成 1 個の一次精母細胞から 4 個の精子細胞ができる 原始生殖細胞:胎生期に分化、支持(セルトリ)細胞に囲まれる、生後に有糸分裂開始 精祖細胞:思春期に活発に有糸分裂 A 型精祖細胞:クローンを多数形成 B 型精祖細胞 :A 型精母細胞の最終分裂型 一次精母細胞:大型、22 日間の前期、第一成熟分裂(=第一減数分裂) 、n=23 二次精母細胞(精娘細胞):第二成熟分裂(=第二減数分裂) 精子細胞 V 卵巣と子宮での出来事(月経と排卵) 月経周期とは、下垂体の働き(ホルモン)と卵巣(卵胞) ・子宮(粘膜)の周期的変化のこと。 ホルモンの働き 視床下部から: 性腺刺激ホルモン放出ホルモン gonadotropoin-releasing formone: GnRH 下垂体前葉から: 性腺刺激ホルモン gonadotropin すなわち、 卵胞刺激ホルモン(Follicle-stimulating hormone=FSH、卵胞成熟に働く)と 黄体化ホルモン(luteinizing hormone=LH、卵胞破裂・排卵誘発・黄体化促進・ プロゲステロン産生促進) 卵胞から: エストロゲン(卵胞ホルモン):子宮粘膜の肥厚(増殖期) 、LH 分泌促進 黄体から: プロゲステロン(黄体ホルモン):子宮粘膜を分泌期にする 卵胞の変化 月経周期がはじまると、15-20 個の原始卵胞が発育開始(←FSH) 月経周期中ごろに LH の急増 排卵: 1 個だけ、他は閉鎖卵胞→閉鎖体に退化 第二減数分裂中であることに注意 基礎体温の上昇、月経中間期痛 排卵後の出血により「赤体」を形成、2-3 日後に「黄体」へと変化 卵子の輸送: 卵管采→卵管→子宮 受精卵は 3-4 日で子宮腔に達する 受精が起こらない場合、黄体細胞が退化して「白体」になる - 52 - 子宮内膜の変化 子宮壁 = 子宮内膜(粘膜)+子宮筋層+子宮外膜、子宮内膜の周期的変化(約 28 日) 卵胞期(増殖期):2 週間 子宮内膜の肥厚←エストロゲン 分泌期(妊娠前期):10-12 日間 子宮腺の活性化、粘液分泌 ← プロゲステロン 子宮内膜の 3 層構造(緻密層、海綿層、基底層)明瞭 月経期:4 日間 受精が起きない場合、子宮内膜の脱落←プロゲステロン低下 受精が起きた場合 子宮内膜固有層の組織液増加 内膜は脱落膜を形成、基質の細胞は上皮様の脱落膜細胞に 胚盤胞の着床(子宮体の後壁または前壁、子宮腺の開口部に埋没) 閉経:卵胞からのエストロゲン分泌低下、45-50 歳 生殖器の退行的変化、卵巣の委縮し膠原線維の塊と化す 荻野学説:月経周期に関わらず次期予定月経から遡って 14±2 日の間に排卵が起こる VI 受精と着床 受精は卵管膨大部でおこなわれる。 第 1 期(放線冠貫入):受精能を獲得した精子が放線冠細胞の間に貫入 第 2 期(透明帯貫入):透明帯と精子の結合による先体反応、透明帯に貫入 第 3 期(卵子と精子の細胞膜融合) :接着→細胞膜融合 卵子の反応 表層反応と透明帯反応:多精子受精の防止 第二減数分裂の再開:第二極体(後に消失)+最終的卵子(核:女性前核、n) 卵子の代謝活性化:男性前核(n)(←精子の核)と女性前核の核膜消失(2n) 男性・女性前核発育中に DNA 量が倍加していることに注意 受精卵の輸送 卵管壁の蠕動的収縮と粘膜上皮の線毛運動 受精後 3-4 日で子宮腔に達する→着床(受精後 5.5-6 日) 輸送中に有糸分裂、着床時には胚盤胞 8 細胞期までは緩やかな結合→コンパクション(受精後 3 日)→桑実胚→胚盤胞 内細胞塊(→胚子)と外細胞塊(→栄養膜) 着床によって妊卵から伸びだす絨毛膜がヒト絨毛性ゴナドトロピン hGH を分泌:黄体の成熟 黄体はプロゲステロンを産生し続ける(妊娠黄体) VII 胎齢の数え方と妊娠週齡数 基数表記と序数表記 「発生 4 週」=受精後、満 4 週(28 日) 「発生第 4 週」=受精後、満 3 週から満 4 週までの 1 週間 胎齢の実際 産科臨床: 最終月経後の胎齢: 発生学: 受精後胎齢 WHO 方式:最終月経後胎齢を週・日の基数で表記(「月」は使わない) 日本古来の一般表記(民間人は常用している) :序数表記 「妊娠 3 カ月」=第3カ月=満2カ月から満3カ月の一カ月間 妊娠期間:最終月経の開始から 280 日(40 週)=月経後胎齢 受精後 266 日(38 週)=受精後胎齢 - 54 - VIII 胚子発生全体の概略 第1週 受精~着床・・・受精卵の分割、内細胞塊の形成→将来の胚子 第2週 二層性胚盤の形成・・・内細胞塊→2層に分かれる 「2つの週」 第3週 三層性胚盤の形成・・・「原腸形成期」 外・中・内胚葉が分化 外胚葉→表皮、神経系など 中胚葉→筋、結合組織、骨、循環器、泌尿・生殖器系など 内胚葉→消化管、肝臓、膵臓、甲状腺、胸腺など 第 3~8 週 「胚子期」・・・主要な組織や器官が作られる時期 第 38 週 分娩 IX 着床から二層性胎盤形成まで 発生第 2 週中の出来事(要約) 「2つの週」 ・・・いろいろな構造物が分化して 2 つの構造物になる 栄養膜の分化 → 栄養膜細胞層と栄養膜合胞体層 胚外中胚葉の分化 → 胚外壁側中胚葉と胚外臓側中胚葉 胚盤葉 → 上層と下層に分化 羊膜腔と卵黄嚢の2つの腔ができる 第 8 日の出来事 栄養膜(←外細胞塊)が2層に分化 栄養膜細胞層(有糸分裂)→栄養膜合胞体層 内細胞塊が2層に分化 胚盤葉下層 胚盤葉上層:羊膜腔、羊膜芽細胞 第 9 日の出来事 裂孔期:発達した栄養膜の合胞体層内に裂孔が出現 胚外体腔膜(ヒューザー膜)+胚盤葉下層=原始胚外体腔(原始卵黄嚢)を囲む層 第 11・12 日の出来事 子宮胎盤循環の確立:シヌソイド(洞様血管)形成、母体血液が合胞体層の裂孔に流入 胚外中胚葉の形成:栄養膜細胞層と原始卵黄嚢の間 胚外体腔(絨毛膜腔)、胚外壁側中胚葉、胚外臓側中胚葉の形成 子宮内膜の反応:脱落膜反応・・・浮腫状 第 13 日の出来事 栄養膜裂孔における血量増加→出血 = 月経血と混同しやすいので注意 一次絨毛:栄養膜合胞体層の合胞体で囲まれた細胞柱 二次卵黄嚢(最終的卵黄嚢):原始胚外体腔内にできた新しい腔 絨毛膜腔と胚外体腔嚢胞(←原始胚外体腔) 付着茎→血管の発生に伴って臍帯へ分化 着床異常 前置胎盤:子宮頚管の入り口近くに着床 子宮外妊娠:子宮外での着床・・・卵管(膨大部)、卵巣、腹腔内(直腸子宮窩、腸間膜など) - 56 - X 三層性胚盤の形成 発生第 3 週・・・原腸形成と三胚葉形成・・・発生学的には「原腸胚」 原腸形成 ヒトの場合、原腸≒卵黄嚢 原始線条と原始結節(原始窩を取り囲む小さな隆起) 胚盤葉上層からの細胞遊走 → 原始結節から下層へともぐりこむ(陥入)=内・中胚葉 胚盤葉上層の残りの細胞=外胚葉 脊索前板:原始結節を通って頭側に郵送した最初の細胞の一部=前脳の誘導に重要 口咽頭膜:将来の口腔の開口部 脊索の形成 原始窩から陥入した細胞 → 脊索前板→脊索板(内胚葉から分離)→(最終的)脊索 脊索前板から原始窩まで伸びる索状の構造物、神経系の誘導に重要 神経腸管:羊膜腔と卵黄嚢腔の連絡(一過性) 排泄腔膜 尿膜の形成(発生 16 日頃):膀胱の形成に関与 体軸の確立(前後、左右の確立) 前後軸:前方内臓性内胚葉(AVE)・・・頭部形成因子の分泌、転写調節因子の発現 左右軸:原始結節からの FGF8 分泌→LEFTY の発現誘導・・・左側化 心臓、胃、腸管原基が左側にある理由 栄養膜のその後の発達 一次絨毛 → 二次絨毛(中胚葉の芯を持つ)→ 三次絨毛(絨毛毛細血管を持つ)の確立 =胎盤と胚子との連絡確立 絨毛膜腔(胚外体腔)の拡大、胚子は付着茎(→臍帯)で連結されている この時期の発生異常 催奇形因子に対して非常に感受性の高い時期 例)アルコールによる全前脳胞症 腫瘍:仙尾骨部奇形腫・・・原始線条の遺残が仙尾骨領域に存続、増殖したもの XI 発生第 3 週~8 週「胚子期(器官形成期)」の出来事 多くの組織や器官が作られる。 発生学的には「神経胚」と呼ばれる。 外胚葉由来の構造 神経管の形成: 神経板 → 神経ヒダ → 神経溝 → 神経管 → 前後神経孔の閉鎖 神経堤細胞の遊走と移動:上皮性~間葉性に変化**注**「中胚葉」と「間葉」の違い 神経堤細胞の分化:さまざまな組織に分化 外胚葉の肥厚により耳板と水晶体板の形成・・・それぞれ陥入して耳胞と水晶体を形成 中胚葉由来の構造 沿軸中胚葉→分節して体節分節(頭側から尾側へ)、頭部では神経分節 体節 → 骨(椎骨、肋骨など)、筋、真皮などに分化 発生早期の胚子齢は体節を数えると正確に決定できる。 中間中胚葉 → 泌尿生殖器系に分化 側板中胚葉 → 壁側層:外胚葉と共に外側体壁ヒダの形成、腹側体壁の閉鎖 骨、結合組織、真皮などへ分化 臓側層:胚内内胚葉と共に腸管壁を形成、中皮膜(漿膜)の形成 漿膜腔(腹膜腔、胸膜腔、心膜腔) 、漿液の分泌 - 58 - 内胚葉由来の構造 消化管の形成(内胚葉は、消化管壁のうち粘膜上皮のみに分化) 頭屈、尾屈、側方への折り畳みによって体壁が閉鎖 前腸、中腸、後腸の形成、中腸は卵黄腸管によって卵黄嚢と連絡 前腸の前端:口咽頭膜が破れて口腔が開口(第 4 週) 後腸の後端:排泄腔の形成、排泄腔膜が破れて肛門が開口(第 7 週) この時期の発生異常 神経管閉鎖異常 無脳症、二分脊椎・・・葉酸(400g/day)の摂取で 70%予防可能。 女性のビタミン不足に注意(妊娠に気付く時には既に 2 カ月に入っているので!!) 発生第 3~8 週は遺伝、環境因子から影響を受けやすい時期 母親は臨界期に妊娠を自覚していない可能性があるので注意が必要(喫煙、飲酒など) XII 心血管系の発生 血液・血管の発生(発生第 3~8 週) 血液・血管:中胚葉由来 卵黄嚢壁の血島から血管芽細胞(血管と血球の共通前駆細胞)形成 血島中心部(造血幹細胞→血球)と辺縁部(血管芽細胞→血管)に分化 大動脈-生殖巣-中腎域(中腎付近の大動脈を囲む中胚葉)から造血幹細胞が発生 血液・血管の発生(発生第2~7 か月) 造血幹細胞は肝臓へ入り込む 最終的に骨髄に移動(発生 7 か月以降) 脈管形成(胎生期)と血管新生(既存の血管からの芽出)の違い=シグナル分子の違い 血液・血管の発生にかかわる因子 FGF2-FGFR、VEGF-VEGF-R1/R2 血管新生では周皮細胞が重要な役割を担う 心臓脈管系の発生(発生第 3 週) 神経板のまわりに馬蹄形の心臓発生域 心筒:頭屈、側方への折り畳みによって形成される筒 心臓ループの形成(発生 23~28 日):屈曲と局所的拡張 心臓中隔の形成 心内膜隆起 ① 心房中隔(胎生第 4 週末) 一次中隔と一次口の形成 → 細胞死による二次口形成 → 二次中隔の形成、卵円孔、卵円孔弁(一次中隔の遺残) 胎生期には右心房⇒左心房間の血流がみられる 生後の肺循環開始(左心房の圧が上昇)と共に卵円孔が閉鎖 ② 心室中隔 筋性心室中隔の形成 心室間孔は下心内膜隆起からの組織の成長で閉じられる=心室中隔の膜性部 - 60 - 大動脈弓と背側大動脈の発生・・・反回神経との関連を念頭に 発生第4~5 週に鰓弓の形成 各鰓弓には独自の脳神経、動脈・・・大動脈弓 大動脈嚢から新しく鰓弓ができると(血管の)枝を伸ばす(頭側から尾側へと順に鰓弓 が発現)同時にすべての大動脈弓が存在するのではないことに注意 5 対の大動脈弓(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ・・・Ⅴは不完全にしか形成されない) 大動脈肺動脈中隔による動脈管の分割・・・腹側大動脈と肺動脈に分割 大動脈嚢の分割・・・腕頭動脈と大動脈弓 ~27 日 第一大動脈弓消失(一部は顎動脈として残る) 第二大動脈弓の消失・・・残存部は舌骨動脈とアブミ骨動脈 第四大動脈弓、六大動脈弓(→原始肺動脈)は形成中 ~29 日 第三、四、六大動脈弓の発達 第六大動脈弓が肺動脈幹と連絡 第三大動脈弓→総頚動脈と内頚動脈の起始部(外頸動脈は第三動脈弓から芽出) 第四大動脈弓の左側→大動脈弓 第四大動脈弓の右側→右鎖骨下動脈の近位部 第五大動脈弓・・・形成しない、あるいは形成不全で消失 第六大動脈弓(肺動脈弓)右側→右肺動脈起始部、遠位部は消失* 左側→左肺動脈起始部、遠位部は動脈管(→動脈管索)《注》左右の反回神経との関係 頸動脈管(第三、四大動脈弓入り口の間の背側大動脈)消失 右第七節間動脈-左背側大動脈の連絡消失 心臓下降に伴い総頸動脈と腕頭動脈が伸長、 → 左鎖骨下動脈(左第七節間動脈)の位置上昇 背側大動脈から各分節に分枝した一連の小血管・・・肋間動脈など 第七節間動脈 → 左右鎖骨下動脈 胎生期血流路の出生後の変化 動脈管 → 動脈管索 静脈管 → 静脈管索 臍静脈 → 肝円索 臍動脈 → 臍動脈索 卵円孔 → 卵円孔の機能的閉鎖(出生後の最初の一息)、癒合(生後 1 年) 心臓の発生異常 ヒトの先天異常の中で最も多い異常 心内膜隆起の異常(大血管転換、ファロー四徴症など) 円錐動脈管隆起には神経堤由来の細胞を含む=同一個体内での心臓異常と頭蓋顔面異常 心房中隔欠損・・・二次口の欠損 XIII 消化器系と呼吸器系の発生 呼吸器系 胎生第 4 週・呼吸器憩室(肺芽)が前腸腹側壁から芽出 気管食道稜により気管(腹側)と食道(背側)に分割 肺芽の発育に伴い、(心腹膜管を通って)体腔内に侵入 (心腹膜管:前腸の両側にある横中隔の開口部、胸腔と腹腔を連絡) 胸膜腔の形成 - 62 - 消化器系 前腸、中腸、後腸の形成(前述) 前腸 → 呼吸器憩室、食道、胃、十二指腸、肝臓と胆嚢、膵臓 中腸 → 十二指腸遠位部から横行結腸近位2/3 腸と腸間膜の伸長 → 一次(原始)腸ループの形成 → 中腸の回転(腸間膜とその中 の血管を伴い、臍を中心として反時計回りに約 270°)、 生理的ヘルニア→腸ループの腹腔内への戻り 後腸→横行結腸の遠位 1/3 から肛門管の上部 XIV 泌尿生殖期系の発生 泌尿系 前腎:痕跡的で無機能。発生第 4 週初めに7~10 個の細胞群の出現→約 1 週間で消失 中腎:胎生初期のみ機能。 腎細管がボーマン嚢を形成 糸球体(毛細血管の房状分岐)と共に腎小体を形成 中腎管(ウォルフ管):縦走する集合管 中腎+生殖腺(中腎の内側)=尿生殖堤 中腎の頭側は胎生カ月末までに消失 尾側の腎細管と中腎管は男性では生殖器系の形成にかかわる(女性では消失) 後腎:永久腎 中腎管から増生する尿管芽から発生 後腎組織(後腎芽体)内へ尿管芽の侵入、細管形成 後腎組織帽→後腎胞 毛細血管の後腎胞への入り込み→糸球体 ネフロンの形成 腎臓の位置の上昇 位置異常:骨盤腎・・・左右臍動脈に挟まれて滞留 馬蹄腎・・・左右の腎臓下端が癒合、下腸間膜動脈に妨げられて滞留 生殖系 生殖堤の中に生殖細胞が発生(第 6 週) 胚盤葉上層由来の原始生殖細胞→生殖細胞 生殖管の発生 未分化期 中腎管(ウォルフ管)・・・のちの精管 中腎傍管(ミュラー管) ・・のちの卵管 子宮管:左右ミュラー管が癒合、尿生殖洞に開口・・・のちの子宮 性分化の異常 クラインフェルター症候群: 47,XXY (あるいは 48,XXXY など) XY 女性生殖腺形成異常:SRY 遺伝子(精巣発達に必須)の変異 ターナー症候群:45,X 半陰陽:男女両性の特徴を備えている場合 46,XX が多い 仮性半陰陽:男性仮性半陰陽、46,XY 女性仮性半陰陽・・・先天性副腎過形成が多い 46,XX アンドロゲン不感性症候群:46,XY、アンドロゲン受容体の欠損など - 64 - XV 胎盤 母体と胎児の間の栄養、ガス交換の場 胎児側構成要素 栄養膜と胚外中胚葉 胎生第 2 カ月初めまでに二次絨毛、三次絨毛が形成される 母体側から 子宮のラセン動脈が栄養膜細胞層への侵入 母体血が絨毛間腔へ流入 胎盤の完成 胎生 4 カ月初めまでに胎盤の形成 胎児部(絨毛膜有毛部) 絨毛膜板から伸びる幹(付着)絨毛、中に絨毛膜血管(→臍帯へ)を入れる 自由絨毛が伸びる 母体部(基底脱落膜) 胎盤中隔(第4~5 か月)の形成で、胎盤が多数の区画(絨毛叢)に分けられる 胎盤中隔は絨毛膜板まで達していないことに注意 胎盤が厚くなるのは、絨毛の樹枝状化した結果であることに注意 母体と胎児の血液循環を隔てているのは、合胞体層と血管の内皮壁のみ(胎盤膜) 胎盤膜=胎盤関門 母体血と胎児血が混じることがない 胎盤の機能:物質代謝、ガス交換、ホルモン産生 母体抗体(IgG)が輸送される(14 週から)ことにより、感染症に対する受動免疫の獲得 胎盤からのホルモン: プロゲステロン、卵胞ホルモン、ゴナドトロピン、 ソマトマンモトロピン、など インスリンは胎盤通過(胎児に助けられ、糖尿病の母体の症状が軽快) XVI 遺伝疾患、先天異常について 遺伝疾患: 遺伝子の異常による。素因遺伝は遺伝「疾患」とは言わない。 染色体異常: Ⅲの項目で解説 先天異常:出生時に見られる構造、機能、行動、代謝の異常 奇形、破壊、変形、症候群に分類される 奇形: 環境因子、遺伝因子によって起きる 発生第 3~8 週は、先天異常誘発因子に最も感受性が高い =主要な組織・器官が形成される時期(胎児期) 各器官で、それぞれ感受期がある 脳では胎児期でも分化が進行中=環境因子による精神遅滞の可能性 催奇形因子: 環境因子、感染因子、放射線、化学物質、ホルモン、母体疾患、栄養欠乏、 肥満、低酸素、重金属など 先天異常の予防 葉酸の摂取:二分脊椎、無脳症 ヨードの摂取:クレチン病(精神遅滞、骨変形) アルコール摂取の制限:精神遅滞、心臓異常、胎児性アルコール症候群 薬物処方時にも注意が必要 - 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