挨拶・基調講演概要(PDF: 19KB)

挨拶・基調講演概要
(1)挨拶
中国財務局長
其田 修一
地域密着型金融の取り組みも開始から 10 年以上が経過した。現在では、
「地域経済の活性
化」が国の大きな政策になり、地域金融機関が地方創生・地域経済活性化にどう貢献してい
くかが重要な課題となってきている。
そこでは、企業の発掘、既存企業の事業拡大、あるいは企業再生支援等を通じ、地域の金
融を強固なものとし、地域の金融機関自身の収益力も高めていくことが求められる。
本日の講演、パネルディスカッションでの議論等を参考に、今後の業務に役立てていただ
きたい。地域金融機関全体として、良い方向に向かっていくことを期待している。
(2)基調講演
①「中小企業の地域性と金融」 福山大学経済学部
教授 中沢 孝夫 氏
地域金融機関のビジネスは、中小企業(経営者)をどうやって見分けるのかだと考えてい
る。例えば、営業マンの勘とコツで仕事を行うのでなく、ノウハウを共有化し、組織的なフ
ォーマットを整備していて、受注時にすぐ仕事に入れる体制が構築されている会社は良い会
社と言える。
また、中小企業においては、経営者以外に他社からの仕事のオーダー(相談)に対応でき
る「キーマン」がいるかどうか、相手方からの相談に対する聞き取り能力があり、お互いが
相談しながら仕事を進める「擦り合わせ型(インテグラル型)
」の営業が出来る人材がいる
かどうかが重要である。
最後に、中小企業に一番大切なのは「人材」である。職場の仕事というのは、基本的に
90%が「 Must 」の仕事、それが出来るようになり「 Can 」
、その成功体験によって、次は
これをやってみようと「 Will 」へと進む。人材育成を図るこの 3 つのサークル活動をどう
構築していけるかが大切である。
その為には、人材を積極的に外に出すこと。つまりキーマンと一緒に外に行き、顧客は何
を考えているのか、自分は今何が求められているのかを常に考える人間を育成すること。
それをやっている中小企業は、やはり素晴らしい。
②「リレーションシップバンキングから事業性評価型の中小企業取引へ」
一般社団法人地域の魅力研究所 代表理事 多胡 秀人 氏
リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムに係る取組み
の中で、2003 年 6 月 30 日の「事務ガイドラインの一部改正」は非常に大きな意味を持つ。
取引先への支援業務が付随業務に該当することが明確化され、地域金融機関は保有する人
材・情報・ネットワーク(以下、
「人材等」という。)を地域経済のために活用する道が開け
たのである。そのリレバンの集大成が、平成 26 事務年度金融モニタリングの基本方針にあ
る、
「事業性評価に基づく融資等」に代表される中小企業取引と言える。
翻って、地域金融機関を取り巻く収益環境は、貸出金利は低金利政策と競争により低下し、
量的緩和で急降下した有価証券運用利回りにも期待できない非常に厳しい状況。
地域金融機関はこれからの収益基盤をどこに求めれば良いのか。解は「事業性評価型の中
小企業取引」にある。地域金融機関の保有する人材等によって、中小企業の事業価値アップ
を実現することは企業にとって大きなメリットがある。同時にその中で誘発される増加運転
資金や新しい設備資金への対応等、地域金融機関の得られるものは大きい。まさに Win-Win
の取引なのである。
地域金融機関にとって、
「事業性評価型の中小企業取引」をいかに日常的に、組織的かつ
継続的に行うかが閉塞状況からの脱出策だが、多くの地域金融機関にとって容易なことでは
ない。経営トップから現場に至るまで危機感を共有化し、意識変革を行い、行動につなげて
いかねばならない。