EU 諸国の長期低迷 EU の南欧諸国は、 過去の優し過ぎた政府のツケや銀行の過剰な融資の破たん処理で積み 上げた政府累積債務を減らす必要性に迫られ、政府支出の削減と増税を余儀なくされてい ます。これを、一気に進めるのは反動が大き過ぎますので、徐々に年数をかけて実施せざ るを得ないようです。 この結果、 過去の政府及び民間の過剰支出でかさ上げされていた GDP の減少圧力を長期に受けることに成るようです。 イタリア、スペイン、ポルトガルなどの南欧諸国は、経済改革が遅れ、EU 経済が好調な 時 期でも、過剰支出による見かけの成長を取り去ると、殆ど経済成長を示していませんで し た。これらの国が、一気に経済改革を進めて結果を出すのは困難と考えられますので、 財 政健全化の過程で、長期のゼロないしはマイナス成長となるのは避けらないようです。 こ の減少圧力を跳ね返すだけの高い経済成長力は EU 全体で見てもないようですので、南 欧諸国に引きずられ、EU 全体が10年程度の長期低迷に陥ると予想されています。 最善のシナリオとして、シェールガス革命等で米国経済が力強い経済成長を始め、中国 が順調に高い経済成長を示し、新興国も目覚ましい経済成長を再開し、EU が数年で成長路 線に戻ることも考えられます。 しかし一方では、最悪のシナリオとして、EU が解体し、これに伴う金融ショックで、第 2 のリーマンショックが世界を襲う可能性も否定できないようです。リーマンショック時 のことを忘れず、万一に備えた予備力の蓄積も必要と考えられます。 追記[2013 年9 月6 日] 2009 年のギリシャ危機発生を発端に、財政再建を優先させたEU諸国は、GDPのマ イナス成長に苦しんできましたが、ここに来て漸く下げ止まりの現象が見られ、若干明る さが出てきたようです。単一通貨のユーロ圏では、高い輸出競争力を持つドイツや北欧諸 国がより有利となり、これらの国々が南欧の国々を支えることで、ユーロ圏崩壊を避け、 徐々にではありますが成長軌道に戻るのかもしれません。 ここで着目すべきは、 好調なドイツや北欧諸国は、 高い技術力に慢心することなく、 1990 年 代後半から、社会保障費の抑制と構造改革に積極的に取り組んできている点です。 早くから構造改革に取り組んできたドイツや北欧諸国は、2000 年代の世界的好景気に支 えられ、 大きな痛みと困難を伴わずに政策を推進出来ましたが、 高い技術競争力を持たず、構 造改革着手が遅れた南欧諸国は、リーマンショック後の世界的低成長の中、大変な困難 と 苦痛に見舞われているようです。 翻って、日本を見ますと、世界の先進国で最悪の政府累積債務を抱え、最速で高齢化社会に 突入しようとしています。このまま、大幅な財政赤字を続けることは、加速度を増し、 没 落の坂を転がり始めることを意味しますので、財政再建が、EU諸国に劣らず重要課題と なります。日本は民間部門の財務が健全であり、高い技術競争力と、円安による調整を期 待できる点、南欧諸国より有利となりますが、ドイツや北欧諸国に比べると社会保障費 1 抑制や構造改革で大きく遅れを取っており、日本の膨大な累積債務と急速な高齢化社会突 入という特殊事情を勘案すると、財政健全化対応に相当の困難と苦痛が避けられないと考 えられます。尚、ドイツや北欧諸国の成功事例から見ましても、構造改革の顕著な成果が 出るまで5 年から10 年かかるようですので、その間どうしのぐか、例えば、金銭的に余裕の ある人および企業の消費及び投資を活発化させる有期キャンペーンの展開を図る等を、財 政健全化プロセスにしっかり組み込む必要が有ると考えられます。 2 3
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