第 2章 成田空港の施設 1 施設の現状と計画 ❶ 基本施設 (1)A滑走路 A滑走路は、1978年5月の開港とともに運用を開始 した、長さ4000mの滑走路である。滑走路の両端には、 長さ60mずつの過走帯が設けられている。また、滑走 路の幅員は60mで、その両側には9.5mのショルダー 舗装を設置している。 A滑走路の舗装は、南側端部の一部においてはコン クリート舗装やコンポジット舗装で、そのほかはアス ファルト舗装となっている。舗装の厚さは、頻繁な離 着陸に耐えられるよう中央部で1.3m、端部で1.5mと ▲B滑走路(2015年3月現在) なっている。 多いが、この部分にアスファルト舗装と同色の黒色で だ長さ4120m×幅300mの長方形の平面となっており、 を与えないよう配慮している。舗装の厚さは、中央部で A滑走路の着陸帯は、滑走路および過走帯を含ん 航空機が滑走路から万が一逸脱した際に、人命の安 全を図り航空機の損傷を軽微にすることなどを目的と して植生が施されている。 塗装を施すことにより、パイロットへの視覚的違和感 1.2m、端部で1.3mとなっている。 B滑走路の着陸帯は、滑走路および過走帯を含ん だ長さ2620m×幅150mの長方形の平面となっており、 A滑走路の着陸帯と同様に植生が施されている。 表2-1 基本施設の現状と計画 現状 計画 1,090ha 1,151ha ― 2,620m×300m 着陸帯B’ 2,620m×150m 同左 滑走路B ― 2,500m×60m 2,500m×60m 同左 敷地面積 着陸帯 着陸帯A 4,120m×300m 着陸帯C ― 着陸帯B 滑走路A 滑走路 (2)B滑走路 B滑 走 路 は、2002年4月に運 用を開 始した、長さ 2500mの滑走路である。B滑走路の長さは、運用開 始当初は2180mであったが、その後2009年10月に北 誘導路 (面積) エプロン (スポット数) ― 同左 3,320m×300m 同左 3,200m×60m 31,362m×30m 38,320m×30m 164 − 2,409,812㎡ 表2-2 現状のスポット数 区 分 2,771,521㎡ 2015年9月末現在 スポット数 T1スポット 38 T2スポット 28 T3スポット 10 走帯が設けられている。また、滑走路の幅員は60mで、 貨物地区スポット 21 オープンスポット 34 B滑走路の舗装は、北側端部や中央部などの一部に 整備地区スポット 33 側へ320m延伸して、現在の長さ2500mとなっている。 滑走路の延伸により、就航路線の拡大が可能となった。 A滑走路と同様に、滑走路の両端には60mずつの過 その両側には10mのショルダー舗装を設置している。 おいてはコンクリート舗装で、そのほかはアスファルト 舗装となっている。B滑走路はコンクリート舗装部分が 78 4,000m×60m 滑走路C 滑走路B’ ▲A滑走路(2015年3月現在) 2015年9月末現在 1. 施設の現状と計画 合 計 (注)一時閉鎖中のものを含む 164 (3)誘導路 ミドルマーカー(MM)およびカテゴリーⅡの進入限界 31kmにおよび、滑走路と同様に一部を除いてアスファ から構成される〕があり、OMおよびMMの代替えとし 誘 導 路 の 幅 は30m( 一 部23m、 25m )、長さ 約 高度となる位置に設置されるインナーマーカー(IM) ルト舗装となっている。舗装の厚さは航空機の満載荷 て、GSに併設され接地点までの距離情報を連続的に 重に対応できるよう、アスファルト舗装部で1.5m(一 提供するILS-DMEがある。 部1.4m) 、コンクリート舗装部で1.1m(一部1.0m)と なっている。 (表2-1参照) 第2章 航空機は、ILS施設から進入方向と進入角度を示す 2種類の誘導電波を受け、悪天候でも正確に進入コー スに乗って安全な着陸が可能となる。 (4)エプロン/スポット 現在の成田空港の進入方向は、A滑走路およびB滑 ろし、給油・停留あるいは整備などのためのエリアで、 入 用ILS(16R ILS)は、LOC、GS、ILS-DME、IM、南 エプロンは旅客の乗降、貨物・郵便物などの積み降 ランプともいう。このエプロン上にあって航空機を駐機 させるために特に指定された場所がスポットである。こ 走路ともに北側と南側の2通りがあり、A滑走路北側進 側進入用ILS(34L ILS)は、LOC、GS、ILS-DMEで構 成されている。 れまでに整備したエプロンの面積は約240万㎡、 スポッ 一方、B滑走路は北側進入用ILS(16L ILS) 、南側進 ト数は164であり、このうち142スポットで給油が可能 入 用ILS(34R ILS)ともに、LOC、GS、ILS-DMEから である。 (表2-2参照) 構成されている。 ILSは機器の性能により着陸最低気象条件が異なる カテゴリーⅠ(CAT Ⅰ)からカテゴリーⅢ(CAT Ⅲ)ま (5)航空保安施設(無線施設、照明施設) でに分類され、さらにCAT Ⅲは気象状況によりCAT Ⅲ 航空保安施設は、航空機の運航を援助し、安全運 航に欠くことのできない重要な施設であり、無線施設 A、CAT ⅢB、CAT ⅢCに分けられている。 と照明施設がある。 A滑走路16R ILSについては決心高設定なし、滑走 路視 距離100m以 上のCAT ⅢBの運用であり、他の 1)無線施設 ILSはCAT Ⅰの運用となっている。 (表2-3参照) 航 空保安 無 線 施 設とは、電 波によって航 空 機の VORならびにDMEについては、航空機に対し方位情 航行を援助するための施設であり、航空機が着陸す 報と距離情報を提供することから、VOR/DMEとして る際に、進入路、進入角などを指示する計器着陸装 併設されており、A滑走路の進入出発用としてA滑走路 置(ILS=Instrument Landing System)と、空港の方 中心線延長線上北側に成田VOR/DME(2015年10月 位を示す超短波全方向式無線標識施設(VOR=VHF から2016年3月まで(予定)は成田VOR/DMEの機材 Omni-directional Radio Range) 、空 港 ま で の 距 離 更新のため、A滑走路中心線延長上南側に芝山VOR/ を 示 す 距 離 測 定 装 置(DME=Distance Measuring DMEを設置)が、同じくB滑走路の進入出発用としてB Equipment)などがある。 ▼無線施設 ILSの機器構成としては、着陸する航空機に対し滑 走路の中心線延長線上を進入できるように直線のコー スを示すLOC(Localizer)、滑 走 路上の接地 点に向 け3度の降下角を示すGS(Glide Slope)、滑走路中心 線延長線上に設置され進入コース上の所定地点通過 を知らせるマーカービーコン〔Marker Beacons、降下 を開始する位置に設置されるアウターマーカー(OM)、 カテゴリーⅠの進入限界高度となる位置に設置される 表2-3 滑走路の進入カテゴリー カテゴリー 16R ILS 決心高 滑走路視距離 30m 350m以上 CAT ⅢA ― 200m以上 CAT ⅢB ― 100m以上 CAT Ⅰ CAT Ⅱ 60m 550m以上 34L ILS 決心高 60m 着陸最低気象条件 滑走路視距離 550m以上 決心高 60m 16L ILS 滑走路視距離 550m以上 34R ILS 決心高 75m 滑走路視距離 600m以上 1. 施設の現状と計画 79 第 2章 成田空港の施設 滑走路中心線延長線上北側に北総VOR/DMEが設置 されている。 2)照明施設 航空保安照明施設は、灯光により航空機の航行を 援助するための施設であり、大きくは航空機の離着 陸や地上走行の安全をサポートするための航空灯火 と、荷物の積み降ろしや航空機のスポットインなどを 援助するエプロン照明との2つに分けられる。成田空 港には現在、航空灯火だけでも約1万3000、エプロン ▲管制施設 照明まで含めると約1万4500の灯器が設置されている (駐機場)の割り当ておよび飛行場面管理などの業務 が、これら灯器は、航空法や国際民間航空条約などに (ランプコントロール業務)を行っている。着陸機を例 基づいて国際的に統一された基準に沿って光学性能 にとると、航空機は管制所の指示で滑走路に着陸、誘 や配列が規定され、それぞれ特別な役割を担っている。 導路を走行してエプロン(駐機場で旅客の乗降や貨物 例えば、離着陸に関わるものとして進入灯、進入角 の積み降ろしを行うエリア)に通じるゲートウェイ(誘 指 示 灯(PAPI=Precision Approach Path Indicator)、 導路とエプロンの境界で航空機の地上移動の出入口) 滑走路灯、滑走路中心線灯、接地帯灯、滑走路末端灯、 からエプロンへと走行する。このゲートウェイから目的 地上走行に関わるものとして誘導路灯、誘導路中心線 スポットに入るまでのエプロン内の航空機の移動につ 灯、誘導案内灯、駐機位置指示灯、飛行場の位置を示 いては、NAAのランプコントロールが指示を出している。 すものとして飛行場灯台(A滑走路南端東側)など、さ なお、第2旅客ターミナルビル地区付近には、中央 まざまな灯火がある。そして灯火の色は、例えば滑走 運用室から死角となる部分があるため、第2旅客ターミ 路中心線灯は滑走路の終端に近づくことを白と赤との ナルビル本館中央部にランプコントロールタワー(ラ 組み合わせで示したり、滑走路終端灯や禁止区域灯 ンプイースト)を設置し、中央運用室と合わせ2カ所で は赤を用いることにより進入禁止を示したりと、灯火の 空港全体のランプコントロール業務を実施している。 目的と設置場所によって使用する色が決められている。 各滑走路には、 表2-3に記載されている滑走路の進 入カテゴリーに対応した照明施設が設置されている。 ❷ 旅客ターミナル施設 また、誘導路では、低視程時での地上走行のガイダン 成田空港には、第1旅客ターミナルビル、第2旅客ター スを強化するため、誘導路中心線灯には高光度の灯器 ミナルビル、第3旅客ターミナルビルの3つのビルがあ が設置され、誘導路から滑走路への入り口には滑走路 る。第1旅客ターミナルビルは、北ウイングと南ウイン への誤進入による事故を防止するためストップバー・ グに分かれ、北ウイングでは外国航空会社12社が、南 システムが設置されている。航空灯火は連続して組み ウイングでは本邦航空会社4社と外国航空会社18社 合わされた灯火パターンとして認識され、パイロットに の計22社が運航しており、北ウイングと南ウイングを 必要な視覚情報のガイダンスを提供している。これに 合わせて計34社が運航している。第2旅客ターミナル よって悪天候下でも安全に離着陸および地上走行を行 ビルでは、本邦航空会社1社と外国航空会社26社の計 うことができるようになっている。 27社が運航している。第3旅客ターミナルビルでは、本 邦航空会社3社と外国航空会社2社の計5社が運航し (6)管制施設 ている。 成田空港の航空機の地上移動にかかわる業務は、 全発着回数を100とすると、第1旅客ターミナルビル、 国土交通省航空局とNAAによって役割分担されている。 第2旅客ターミナルビル、第3旅客ターミナルビルの発 航空局の飛行場管制所は開港以来、空港管理ビルに 着回数の比率は、約25対16対9 となっている(2015 隣接する旧管制塔の最上階(16階)で業務を行ってき 年冬ダイヤ当初/共同運航便のみの航空会社および たが、1993年の新管制塔(高さ92.3m:避雷針含む) 運休中航空会社を除く定期便) 。 の完成に合わせて移転し、以来ここで管制業務を行っ 80 ている。また、飛行場管制所が移転したことに伴い、 1. 第1旅客ターミナルビル NAAのランプコントロール中央運用室は1995年3月に (1)概要 旧管制塔の13階から視界の広がる16階へと移転した。 成田空港の航空旅客数は増加傾向にあり、2002年 ここで、エプロンを走行する航空機の誘導、スポット 4月18日の暫定平行滑走路の運用開始後はさらにその 1. 施設の現状と計画 1)第1段階 設やサービスを提供していくため、また1978年にオー 第1段階分の工事として、北ウイング・中央ビル新館・ プンした第1旅客ターミナルビルと1992年にオープン 第1サテライト・第2サテライトの新設・改修を進めた。 した第2旅客ターミナルビルとのサービス面における格 1998年2月に第1サテライトの 運 用を開 始し、1999 差の是正を図り、将来の旅客増に対応するため、1995 年3月の北ウイング・中央ビル新館の運用開始後、航 年から第1旅客ターミナルビルの改修および増改築工 空会社は南ウイングから北ウイングへの移転を行った。 事を進めてきた。 第2サテライトは2000年7月に運用を開始し、中央ビ 改修工事は順次進められ、2006年6月2日に第1旅 ル旧館については1999年12月に工事に着手し、2001 客ターミナルビルは生まれ変わり、グランドオープンし 年8月にパブリックエリアの南側半分を、一部運用開始 た。改修にあたっては、1988年から各旅客ターミナル した。 ビル内に設置されているご意見箱「お客様の声」に寄 せられたお客様の生の声を取り入れ、大幅な利便性の 〈1〉改修工事の前段工事 向上が図られた。 改修工事中においても旅客に対するサービスレベル その後も施設改修および増築を行っており、2007 や利便性の維持を図るため、1993~95年の期間、改 年12月に中央ビル新館3階と北ウイング3階のリニュー 修工事に先立ち以下のとおり前段工事を実施してきた。 アル、2008年4月には新たな施設として内際乗り継ぎ ・南ウイングのリフレッシュ 施設を整備し運用を開始した。同年7月には、インライ ・南ウイングのチェックインカウンターブース増設 ンスクリーニングシステム導入に伴う北ウイング出発ロ ・第3・第4サテライトの航空会社ラウンジ増設 ビーのリニューアルを行った。 〈2〉北ウイング(1999年3月16日運用開始) (2)改修工事の経緯 1995年3月30日、北ウイング・北オフィスビルの工 1988年から、航 空 会社とNAAは、第1旅 客ターミ 事に着手し、改修によって延べ床面積は改修前の11万 ナルビル改修工事の計画内容について協議を開始し、 9200㎡ (南ウイング、第2~第4サテライト、中央ビル 1993年の本改修工事手順についての合意に基づき設 旧館)の約1.8倍にあたる21万3000㎡に拡張された。 計を行った後、1995年から本格的な改修工事を行っ そのうち北ウイングの出発ロビーは当時の南ウイング てきた。 の7500㎡を上回る1万700㎡となり、チェックインカウ 第1旅客ターミナルビル改修工事における基本計画 ンターブース数も南ウイングの96に対して156ポジショ コンセプトは、既存建物である北・南ウイング、中央ビ ンとなった。 ル旧館および第1~第4サテライトの改修に加えて、中 主な施設改良は、 央ビル新館・第5サテライトの新設を行い、また4つあ ・各施設(出発・到着ロビー、出入国検査場、搭乗待 るサテライトのうち常に3つのサテライトを運用しなが ら工事を段階的に分けて行うというもので、これら一 連の工事は2006年6月のグランドオープンにより完了 した。 これまでの工事内容は次のとおりである。 (図2-1参照) 第2章 増加が著しい。NAAは、お客様により便利で快適な施 合ロビー、手荷物引渡場、航空会社ラウンジなど) を広くとり、ゆったりとしたスペースを確保 ・チェックインカウンターブースなどを増設し、旅客の 取扱能力を大幅に改善 ・建物の耐震性能や防災設備などの機能を向上 ・ハイジャック検査を出国審査の前に行い、出発・到 ▼第1旅客ターミナルビル 着旅客動線を完全に分離 ・お年寄りやお身体の不自由なお客様が安心して利 用できる施設を提供 ・日本道路交通情報センターとオンラインで結び、き め細かい道路情報を提供 などである。 また、第2旅客ターミナルビルに引き続き、欧米の有 名ブランドブティックが、出国審査後エリアに2001年 9月26日にオープンした。2012年10月には、国内空港 免税エリア初出店となるシャネルの化粧品・香水専門 ブティックが出店、12月には国内空港免税エリア初出 店となるクロエなども出店し、リニューアルを行った。 1. 施設の現状と計画 81 第 2章 成田空港の施設 図2-1 第1旅客ターミナルビルの改修マスタープラン 第1旅客ターミナルビル工事段階図 マスタープラン 第4サテライト 第3サテライト 第2サテライト 中央ビル新館 北ウイング 南ウイング 第5サテライト 開港時 1978年 第3サテライト 第2サテライト 北ウイング 南ウイング 第4サテライト 当初運用 工事中 リニューアル運用 閉鎖中 運用スポット 中央ビル旧館 中央ビル本館 第1サテライト 第4サテライト本格工事着手時 2002年7月(第3サテライト、中央ビル本館工事中) 第4サテライト 第3サテライト 第2サテライト 第1サテライト 増改築工事着手時 1995年3月(第2~第4サテライト運用) 第3サテライト運用開始時 2002年12月(同11月中央ビル本館運用) 第4サテライト 中央ビル新館 南ウイング 第5サテライト 第1サテライト運用開始時 1998年2月(第2サテライト閉鎖) ※2003年4月、第2サテライト部分改修完了後、 第5サテライト並びに南ウイング本格改修工事着手 第1-第2サテライト連絡通路工事着手時 2003年8月 第4サテライト 第1サテライト 中央ビル本館 第1-第2サテライト 連絡通路 南ウイング 第5サテライト 北ウイング・中央ビル新館運用開始時 1999年3月(南ウイング閉鎖) 第4サテライト運用開始時 2004年11月(同10月 第1-第2サテライト連絡通路運用) 中央ビル新館 北ウイング 第4サテライト 第4-第5サテライト 連絡地下通路 南ウイング 第5サテライト 第2サテライト運用開始時 2000年7月 (第3サテライト閉鎖、 中央ビル本館工事中) 第3サテライト ※第4サテライトスポットは段階使用 ※第4-第5サテライト連絡地下通路本格工事着手 南ウイング、第5サテライト運用開始時 2006年6月 第2サテライト 第5サテライト 南ウイング ※第4-第5サテライト連絡地下通路運用開始 82 1. 施設の現状と計画 〈3〉中央ビル新館(1999年3月16日運用開始) 主な施設改良は、 中央ビル新館の工事は、北ウイング・北オフィスビル ・航空会社ラウンジ(延べ床面積約3300㎡)を2~4 工事と同時の1995年3月30日に着手された。中央ビル 階に設置、中央部の自然光を取り入れた、柔らかな 新館には「AIRPORT MALL( エアポートモール)/空 雰囲気のアトリウムに2~4階を結ぶエスカレーター 港の街」と呼ばれる新店舗街を設けている。運用開始 とシースルーのエレベーターを設置 階は「WORLD PLAZA(ワールドプラザ)/くつろぎの 広場」 (現在は「ナリタ北斎プラザ」)、4階は「GARDEN SQUARE ( ガーデンスクエア)/庭のある街」、5階は 「VIEW SQUARE( ビュースクエア)/空の見える街」 とそれぞれの特徴をイメージしたフロア名称を付した。 延べ床面積は6万8400㎡である。 主な施設改良は、 ・中央ビル新館4、5階を店舗街とし、中央部に吹き抜 けを設け明るく開放感のあるスペースとし、5階の展 望デッキを併せて回遊性を確保(一般エリア) ・リフレッシュルームや子供のキッズパークなどサー ビス施設の充実(3階・制限エリア) ・乗り継ぎカウンターを増設し、旅客の取扱能力を大 幅に改善 ・店舗面積を約3倍に拡充し、出発のお客様の利便性 が向上 ・出発ゲート付近に成田空港初の完全密閉型の喫煙 室を設置し、完全な分煙化を実施 ・航 空 機 の 運 用につ いて、わ が 国 で 初 めてVDGS (Visual Docking Guidance System)と呼ばれる駐 機位置指示灯を#21~26に設置 などである。 ※再配置計画により、現在は4階のみ航空会社ラウンジとして使用し、2階は2003 年4月1日から出発のお客様のゲートラウンジとなっている。 2)第2段階 ・航空会社ラウンジの配置(3階・制限エリア) 引き続き改修工事の第2段階では、中央ビル本館、 ・ランプバス専用の出発バスゲート(28A~28G)、到 第3サテライト、第4サテライト、南ウイング・同増築部、 着バスゲート(29A、29B) 、第2旅客ターミナルビル 第5サテライトの改修を順次行ってきた。 連絡バスラウンジの集中配置(2階・制限エリア) 中央ビル本館については2002年11月に全館がオー ・中央ビル新館5階では、2012年7月にフードコートの プンし、また第3サテライトも第2サテライトの運用開 座席数を拡大するなどのリニューアル などである。 〈4〉第1サテライト(1998年2月1日運用開始) 始後直ちに改修に取りかかり、同年12月に運用を開始 した。また2003年4月には旧第4サテライトにて運用 を行っている航空会社の第2サテライトなどへの移転 を行い、旧第4サテライトおよび南ウイングの閉鎖を 1995年12月、第1サテライトは、北ウイング、中央ビ 行った。 ル新館から8カ月遅れて工事に着手した。従来はほぼ 第4サテライトは2004年11月に運用を開始。第5サ 円形であったサテライトの長径を伸ばして楕円形とし、 テライト・南ウイング・南ウイング増築部は2006年6 ゲートラウンジを改修前と比べて約50%拡張し、航空 月に運用を開始した。 (図2-1参照) 会社ラウンジなども十分なスペースが確保できるよう 改修に伴い、第3サテライトの延長部分に新しいサ になった。スポット数は計7スポット(#11、12、14、15、 テライトを設け、これを第4サテライトとし、旧第4サテ 16、17、18) 、延 べ 床 面 積 は 従 来 の8100㎡ から1万 ライトは改修後、第5サテライトと称することとなった。 6300㎡へと約2倍に拡大した。4階に到着コンコース と航空会社ラウンジ、3階に出発ゲートラウンジ・乗り ●航空会社再配置 継ぎカウンター・店舗、2階(エプロンレベル)に事務 成田空港では、1992年12月に第2旅客ターミナルビ 室を設けている。 ルがオープンして以来、2つのターミナルビルで運用し 〈5〉第2サテライト(2000年7月7日運用開始) 第2章 当時、この新店舗街は誰にでも分かりやすいように、3 てきた。第2旅客ターミナルビルは本邦航空会社、第1 旅客ターミナルビルは外国航空会社が使用し、ピーク 1998年2月から改修工事を進めてきた第2サテライ 時間帯がビルごとに異なるため、施設利用の面では非 トは、2000年7月から運用を開始した。4階建て構造で、 効率であった。 4階は到着コンコース・航空会社ラウンジ、3階は出発 また、旅客便の36%が共同運航便(コードシェア)で ゲートラウンジ・乗り継ぎカウンター・店舗、2階(エ あり、そのうち66%が異なるターミナルビルを利用して ※ プロンレベル)に航空会社ラウンジ ・事務室を設け いた。これらの不便さを解消するために、2006年6月 ている。スポット数は計6スポット(#21~26)、延べ床 の第1旅客ターミナルビルグランドオープンを機に航空 面積は従来の8800㎡から1万5800㎡へと約1.8倍に 会社の再配置を実施した。これにより、ピーク時間が平 拡大した。 準化され、施設の利用効率、旅客取扱能力が向上した。 1. 施設の現状と計画 83 第 2章 成田空港の施設 提携している航空会社が同一のターミナルビルに配 第4サテライトなどの乗り継ぎのお客様に配慮して双 置されることによって、提携航空会社間の乗り継ぎが 方向のムービングサイドウォーク(動く歩道)を設けた、 短時間でできるようになり、共同運航便を利用するお ②第3・4サテライト内の乗り継ぎのお客様が非常に多 客様が両ターミナルビルのどちらから出発するのか迷 くなることが予想されるため、それぞれのサテライトに わずに済むようになった。また、共同運航便のうち、異 セキュリティチェック施設を設置(4階)し、同エリアに なるターミナルビルを使用する航空会社はそれまでの は十分な待ちスペースを確保した、③サービス施設(ト 60%から数%へと激減した。 イレ・授乳室・喫煙室など)は各出発ゲートラウンジ 再配置計画は、2007年4月のコンチネンタル航 空、 から最大50m以内に設置し、お客様の利便に十分対 コンチネンタル・ミクロネシア航空、デルタ航空の移 応できる規模とした、などである。 転により終了した。 〈1〉中央ビル本館(2002年11月全館運用開始) 〈3〉第2サテライト整備工事(2003年4月1日運用開始) 旧第4サテライト、南ウイングの改修工事に着手する 1999年12月から工事が着手され、第1段 階として ため、第3サテライト運用開始後の2003年4月、旧第 2001年8月7日には中央ビル本館(地下2階・地上7階 4サテライトで運用を行っていた航空会社の第2サテラ 建て。リニューアルを機に旧館から本館に名称変更) イトなどへの移転を実施した。その移転にあたり、第2 のパブリックエリアの南側半分を運用開始した。さら サテライトに関して以下の整備工事を行った。 に、第2段階として2002年9月3日、中央ビル本館のパ ・出発ゲートラウンジの増設(2階) ブリックエリアの全体(一般ロビー、4階コスモスプラ 第2サテライト2階(旧航空会社ラウンジ)を出発 ザなど)を運用開始し、同年11月に中央ビル本館は全 のお客様のゲートラウンジ(約850㎡)として整備を 館運用を開始した。 行い、3階の既設ゲートラウンジ(約1400㎡)と合 主な施設改良は、4階および5階部分に吹き抜け空 わせてゆったりとした待合スペースを確保した。 間を新設し、 「音と光」のアート「コスモスCOSMOS」 ・出発エリアの拡張(3階) で演出したことなどである。5階にはお客様に気軽に お客様のサテライト内の移動を円滑にするため、 芸術を鑑賞していただける空間として、 「NAAアート 旧航空会社ラウンジ入り口と乗り継ぎカウンターの ギャラリー」も開設している。 一部を撤去したうえでサテライト中央吹抜部に通路 ※コスモスプラザ、 「音と光」のアート「コスモスCOSMOS」は「エアポートモール」 リニューアル工事に伴い、2014年6月に撤去。 〈2〉第3サテライト(2002年12月16日運用開始) 2000年7月の第2サテライト運用開始後、第3サテラ イトを直ちに閉鎖して工事に着手し、2002年12月に運 用を開始した。スポット数は計7スポット(#27、31~ を架け、ここを出発エリアとして使用している。 ・航空会社ラウンジの再整備(4階) 第2サテライト4階(約1560㎡)の改修を行った。 〈4〉中央ビル新館バスゲート一体化 (2003年9月18日運用開始) 36) 。同サテライトは将来第4サテライトと接続するた 2階出発バスゲートラウンジ(28番ゲート)の拡張を め、建物の形状を改修前の円形からピア(直線)型へ 行い、既存の5カ所(28A~28E)のバスゲートカウン と変更したのが特徴。延べ床面積は従来の8800㎡か ターに新たに2カ所(28F、28G)増設し、計7カ所とした。 ら約3万1000㎡へと約3.6倍にも拡大している。 さらに、従来暫定のゲートラウンジで運用していた27 改修のポイントは、①出発コンコース内に、将来の 番ゲート(3階)に隣接した旧航空会社ラウンジを撤去 ▼第3サテライト (33番ゲートラウンジ) し、跡地をゲートラウンジとして整備し、お客様により 十分な待合スペースを確保した。 〈5〉第1サテライト~第2サテライト連絡通路 (2004年10月19日運用開始) 2003年7月から工事が進められていた第1サテライ トと第2サテライト間の連絡通路(約160m)が2004 年10月19日に運用を開始した。乗り継ぎのお客様の利 便性を高めるため、双方向のムービングサイドウォーク やゲートラウンジが設置されている。 また、お客様の移動を効率的に行うため、セキュリ ティエリアをおのおののサテライトのエプロン側に増 84 1. 施設の現状と計画 第5サテライトのスポット数は8スポット、第3・第4サ テライトと同様、4階に到着コンコース、セキュリティ チェック施設、航空会社ラウンジ、3階に出発ゲート ラウンジ、また2階(エプロンレベル)に出発バスゲー ト(59A、59B) 、第2旅客ターミナル連絡バスラウンジ、 第2章 事務室を配置。 また、航空会社のターミナルビル間の再配置計画に 基づく、全日本空輸(ANA)の第1旅客ターミナルビル ▲2004年10月に運用開始した第1・第2サテライト間の連絡通路 への配置に対応した国内線施設を整備しており、第5 サテライトには、第2旅客ターミナルビルですでに運用 設。これにより、乗り継ぎ動線はエプロンを眺めなが を行っている国際線および国内線兼用スポット(スイ らセキュリティを通過することができ、自分の位置を確 ングゲート)の導入を行った。 認しやすくなった。 南ウイングでは、新しいセキュリティシステムとして 〈6〉第4サテライト(2004年11月25日運用開始) インラインスクリーニングシステムを導入した。爆発物 検知装置 (EDS)をバゲージハンドリングシステム (BHS) 第3サテライトの延長部分にあたる第4サテライトは のライン上に組み込むことで、従来のチェックインカウ 2002年7月に本格工事が着手され、2004年11月25日 ンター前でのX線による手荷物検査(検査後、手荷物 に運用を開始した。 が再び旅客の手に渡ることになるため異物混入の恐れ 同サテライトは地下1階・地上3階建てで、延べ床面 が生じる)に比べ、受託手荷物のセキュリティの向上 積は約3万3000㎡である。特徴として、①滞留面積が が図られた。また、このインラインスクリーニングシス 広い、②お客様が現在位置を把握しやすい、③災害時 テムによりチェックインカウンター周りのセキュリティ にお客様を安全かつ迅速に誘導できる、④乗り継ぎ フェンスが不要となり、出発ロビースペースの有効活 のための保安検査場を間近に整備するため、乗り換え 用が可能となって広々とした空間が出現した。第1旅客 がスムーズに行える、などが挙げられる。本館到着ロ ターミナルビルの改修工事はすべて完成し、延べ床面 ビーと同サテライト間は約1kmと距離が長いため、第 積は改修前の約2.4倍にあたる約45万㎡となり、第2旅 3サテライトより双方向にムービングサイドウォークも 客ターミナルビルの約33万㎡ (当時)を大幅に上回った。 設けている。サテライト3階には、ゲートラウンジのほ 同時に、出国審査後エリアには売り場面積約3500㎡ か、インターネットコーナー、カフェなども整備されて を誇る免税店・ブランドモール「na r it a na k a m i se いる。到着コンコースは4階である。 ( ナリタ ナカミセ)」が登場し、豊富な品揃えと市価よ またサテライトの中央部には天井窓を採用し、明る りも安い免税価格でショッピングできるためオープン く開放感のある空間を実現している。日中照明がほぼ 以来人気を呼んでいる。2012年7月にはリニューアル 不要となるなど、省エネの効果もある。 を行い、国内空港免税エリアブティック初出店となる ロエベが出店している。 (3)グランドオープン後の改修および新規施設整備 1)北ウイング出発ロビー改修 北ウイングは、2006年6月にオープンした南ウイン グとのサービス面における格差を是正し、将来の旅 客増にも対応していくために、2007年から自動チェッ クイン機専用カウンターの設置やチェックインカウン ▲2004年11月に運用開始した第4サテライト (43・44番ゲートラウンジ) 〈7〉南ウイング、南ウイング増築部、第5サテライト (2006年6月2日運用開始) 南ウイング、南ウイング増築部、第5サテライトの改 修工事は2002年12月の第3サテライトの運用開始後、 2003年4月の旧第4サテライトの閉鎖をもって本格的 な撤去工事を開始した。 ターへの案内表示板の設置など、順次各アイランドの リニューアルを進めてきた。そして、2008年7月のイン ラインスクリーニングシステム導入により、出発ロビー の新規施設整備が完了した。 2)内際乗り継ぎ施設の整備 2008年4月から南ウイング第5サテライトにおいて 内際乗り継ぎ施設(約1000㎡)の運用を開始した。国 1. 施設の現状と計画 85 第 2章 成田空港の施設 表2-4 旅客ターミナルビルの施設規模 区 分 2015年9月末現在 第1旅客ターミナルビル 延べ床面積(㎡)※ 固定ゲート数 主な施設 チェックインカウンター・ブース数 455,000 37 第2旅客ターミナルビル 第3旅客ターミナルビル 375,000 66,000 28 340 9 244 33 出発ロビー(㎡)※ 23,600 19,500 3,300 ゲート&トランジットラウンジ(㎡)※ 24,500 16,000 5,800 航空会社ラウンジ(㎡)※ 手荷物荷捌場など(㎡)※ 15,000 11,400 31,600 ― 28,500 6,100 (※国内線機能部分含む) 内線搭乗時にスルーチェックインした旅客が国際線へ 乗り継ぐ際に使用する施設で、乗り継ぎがスムーズに 畳をモチーフにしたカーペットへの張り替えや和紙 行えるよう、ハイジャック検査場施設と出国検査施設 をあしらった照明を配置して、明るく華やかな空間で などで構成されたものである。この施設により、乗り継 お客様をお出迎えしている。 ぎにかかる移動距離、移動時間が大幅に短縮された。 3)中央ビル新館3階と北ウイング3階(出国審査後エ リア)の商環境整備 4)和的整備 南ウイング第3サテライトの到着階コンコースに、 「竹」を主体に格子や着物・帯などで「和」の魅力を 中央ビル新館3階と北ウイング3階(出国審査後エ 表現した空間演出を行い、到着のお客様に和の雰囲 リア)は、南ウイング、特に「narita nakamise( ナリ 気を楽しんでいただいている。 タ ナカミセ) 」との環境の格差を埋めるため、 「narita nakamise」と同じく「和の風合い」というデザインコン 5)南ウイングの能力増強 セプトのもと、リニューアルを行った。 第1旅客ターミナルビル南ウイングにおいて、年間発 これにより、第1旅客ターミナルビル3階制限エリア 着枠拡大に伴いピーク時発着回数が増加することによ は、北ウイングから南ウイングまで全体が、 「和」に統 る混雑緩和のため、以下の整備を行った。 一された環境に生まれ変わった(2007年12月26日リ ・2013年5月末 新国内線BHSブレイクダウン運用開始 ニューアル) 。 ・2013年7月末 新国内線BHSメイクアップ運用開始 〈1〉中央ビル新館3階「ナリタ北斎プラザ」 南北両ウイングをつなぐ大切なスペースとして、葛飾 北斎の作品をコラージュした壁面や和紙をアレンジし ・2013年9月末 南ウイング付属棟の運用開始 ・ 2014年3月末 新国際線BHS運用開始、南ウイング 入国審査場の拡張 たガラス壁面をあしらい、また、環境アーティスト・サ 6)空港ショッピングのイメージを一新 イヒロコ氏のアートワークを配置して、出発前のお客様、 第1旅客ターミナルビル4階ショッピング&ダイニング 特に外国の方や乗り継ぎのお客様に「日本のこころ」 エリア「エアポートモール」は、1999年の運用開始以 「日本文化」を感じていただけるような空間を提供して いる。 ▼2008年7月にリニューアルした北ウイング出発ロビー 86 〈2〉北ウイング3階「NARITA NORTH STREET」 1. 施設の現状と計画 来15年が経過したことから、これまで以上にお客様に 快適に過ごしていただくために、全面リニューアル工事 ▼2006年6月にリニューアルした南ウイング出発ロビー グを進めた。 オープンした。 お客様に選ぶ楽しみを提案するバラエティーに富ん リニューアルのデザインコンセプトは、 「わかりやす だ商業エリアとして、今まで空港になかった靴、帽子、 く、見やすく、楽しく、安心して」ご利用いただける、明 ステーショナリーといった新しいアイテムを取り扱う店 るく賑やかな商業施設。明るく見通し感の良い空間と 舗の導入に至った。加えて、 「成田空港ならでは!」 「こ 回遊性を意識するとともに、お客様ご自身がモール内 こでしか買えない!」ショッピングを楽しんでもらうこと で今どこにいるのかを感覚的に認識できるようなデザ も視野に入れ、出店テナントに依頼をして成田空港限 インとした。例えば、ターミナル内の案内表示に使用し 定商品を登場させるなど、買い物目的でも空港に行き ている色を、南ウイング・北ウイングの入り口壁面にも たくなる商品を揃えている。 使用し、色の連動を行うことによって、お客様がいる 場所、向かう方向が分かりやすくなるよう印象づけて 2. 第2旅客ターミナルビル いる。 (1)概要 南北ウイングおよびカーブサイドのエントランスに 1992年12月6日にオープンした第2旅客ターミナル は光天井を新設し、商業施設のゲート感を演出して人 ビルは、地 上6階・地下1階 の本 館と、地 上3階 のサ の流れの誘引を図っている。また共用部の床や天井は、 テライトから構成されている。延べ床面積は約37万 三角形や曲線の意匠を施すことにより、お客様を奥へ 5000㎡で、28のスポットを設けており、本館(11スポッ と引き込む感覚を表現するとともに明るさ感を向上さ ト)またはサテライト(17スポット)から搭乗橋を通じ せ、回遊する楽しさを感じる工夫が施されている。 て直接航空機に乗り込むことができる。なお、本館の 今回のリニューアルで店舗面積は約800㎡増え、従 4スポットについては、国際線と国内線兼用のスポッ 来の約15%増。これは、エスカレーターや噴水などを ト(スイングゲート)として運用されている。また、本 撤去して生まれたもので、店舗が連なることにより賑わ 館とサテライトの間約300mには、空港では世界で初 い感の創出を図っている。 めての空気浮上式シャトルシステムが導入されていた 「エアポートモール」の店舗数は、従来の55店舗か が、2013年9月末をもって廃止され、現在は、ムービ ら73店舗へと18店舗増加し、新規店舗27店舗のうち ングサイドウォークを併設した連絡通路を整備し、運 国内空港初出店が22店舗もあり、従来の空港ショッ 用している。さらに、搭乗までの待ち時間を快適にお ピングのイメージを一新する店舗が揃うことになった 過ごしいただくためのエリアとして、2015年4月24日に (2014年7月グランドオープン時点) 。 「NARITA SKY LOUNGE 和」がオープンした。 成田空港をご利用されるお客様の国籍や年代は 国内線旅客ターミナルビルは、第2旅客ターミナルビ さまざまで、渡航目的もレジャーやビジネスなど多岐 ル本館の南側に位置している。地下1階・地上3階建て にわたるため店舗はバラエティーに富んだ構成とした。 のビルで延べ床面積は約2万3600㎡である。2012年 従来の店舗の売上動向や売れ筋商品、客層などを検 8月以降、LCCの受け入れなどに対応するため、第2旅 証するとともに、さまざまな旅のシーンやスタイルをリ 客ターミナルビル本館から国内線旅客ターミナルビル サーチし、機内やホテル、渡航先で必要なものを洗い へつながる連絡通路に隣接する位置に、国内線チェッ 出した。そしてリニューアル後の店舗バラエティーや店 クインカウンター、国内線到着バスゲートを有する施設 舗配置をイメージしていくなかで、市中の人気店、有名 (南側国内線施設)を9月12日に、また、10月23日に本 店の導入、日本の文化や旬な店舗を成田空港から発信 館北側に隣接した位置には国内線出発バスゲート(北 していきたいとの考えから、店舗を選定し、リーシン 側国内線施設)を整備したほか、既存国内線施設に出 ▼南ウイング側からの入り口。ぬくもりあるオレンジ色のライティングが特徴 第2章 を実施。2014年3月から工事に着手し、7月にグランド ▼北ウイング側からの入り口。ブルーを基調にクールなデザインが特徴 1. 施設の現状と計画 87 第 2章 成田空港の施設 (3)サービス施設 サービス・アメニティー施設としては、本館3階(出 国審査後エリア)には航空会社ラウンジ、本館とサテ ライトをつなぐ連絡通路にはリラクゼーション施設が ある。また、サテライト3階(出国審査後エリア)には 乳児や子供用のキッズパークが設けられているほか、 2015年4月に、シャワールームと仮眠室を完備したリ フレッシュルームが本館3階(出国審査後エリア)より 移転しリニューアルオープンした。 ▲第2旅客ターミナルビル ル間連絡バスに、乗り降りが容易な低床車両が導入さ 発ゲートの機能を強化するためのG・Hゲートラウンジ れた。2002年5月からエコ・エアポート基本構想の一 を2013年3月12日に、6月4日にはIゲートを新規に整備 環として天然ガス自動車を導入、さらに2012年2月か した。 らはハイブリッドバスが導入され、運行を開始している。 なお、2015年4月8日の第3旅客ターミナルビルオー また、2011年11月には、本館3階南側ウエイティング プンに伴いLCC3社が移転し、南北両国内線施設の運 エリアにNarita Airport Stage “SKYRIUM (スカイリウ 用を終了した。 ム)” が誕生した。このステージは、演奏会や展示会な 現在、国内線は日本航空1社が運航している。 どを行うことにより、お客様の待ち時間のひとときを (2)飲食・物販・免税店舗 88 1994年4月、両旅客ターミナルビルを結ぶターミナ 有意義にお過ごしいただいたり、成田空港からの新た な情報発信を行う場として設置した。これまでラジオ 本館4階には約60店のレストランと専門店が入る の公開生放送や演奏会、フラダンスショーなど数多く ショッピングモールが設けられている。和食、洋食から のイベントが行われ、多くのお客様を楽しませている。 中華料理まで味わえる多彩なレストランをはじめ、民 2014年7月20日、カプセルホテル「ナインアワーズ 芸品、旅行用品、ファッション、雑貨など、また本館4 成田空港」が第2旅客ターミナルビルに直結した第2駐 階以外にも理容施設、医療施設、銀行、郵便受付カウ 車場ビル地下1階に誕生した。以前からターミナルビル ンター、コンビニエンスストアなどが揃っており、さな に直結した宿泊施設を要望する声があったことを受け、 がら1つの街をイメージさせるような構成になっている。 宿泊施設の「利便性」と「快適性」に加え、手軽に利 また、2000年9月には本館出国審査後エリアに、欧 用できる料金設定を追求した結果、このカプセルホテ 米の有名ブランドブティックが成田空港で初めてオー ルの導入となった。 プンした。2007年4月には免税店・ブランドモール「ナ ナインアワーズは2009年に第1号店を京都にオープ リタ5番街」がオープンし、グッチ、バーバリーが国内 ンさせ、その利用客の半数が外国人という実績を持つ。 空港免税エリアに初出店した。2012年7月のリニュー 2010年グッドデザイン賞金賞を受賞したという洗練さ アルでは、国内空港免税エリアブティック初出店となる れたデザインは、従来のカプセルホテルのイメージを トゥミ、レスポートサックのほか、成田国際空港免税エ 超えた高品質な滞在施設を実現。デザインのみならず、 リアブティック初出店となるオメガが出店している。 清潔感、利便性、寝具やアメニティーの品質にもこだ ▼さまざまなイベントが行われるNarita Airport Stage“SKYRIUM” ▼カプセルホテル「ナインアワーズ成田空港」 1. 施設の現状と計画 わっている新しいスタイルのカプセルホテルだ。 従来、国内線出発のお客様は第2旅客ターミナル ビル南側の国内線ターミナルビルよりバスにて機内 デイユースやシャワーのみといった時間単位での利用 への搭乗を行っており、バスに乗り換えなければな も可能。例えば、早朝出発便のご利用や乗り継ぎのお らない手間や混雑、搭乗までの時間は、固定ゲート 客様など、さまざまなターゲットに合わせたメニューを の国際線と比べると不便であった。さらに暫定平行 提供することで、利便性の向上を図る。 滑走路の運用によって増加した国内線需要に対応し、 (4)暫定平行滑走路運用に対応した能力増強工事 国内線のお客様も固定ゲートより直接乗り降りでき る施設として計画されたのがスイングゲートである。 2002年4月の暫定平行滑走路運用に伴う需要増加 このゲートは、基本的に管理扉の開閉によってエリ に対応するため、以下の施設整備を行った。 アを国際線仕様もしくは国内線仕様へと切り替えて、 ・出発ロビー増築工事(W、Yカウンター) 国際線と国内線が交わり合うことなく円滑に運用で ・出発階 南・北カーブサイド・チェックインカウンター きるもので、第2旅客ターミナルビル南側の既存の の増設(M、Vカウンター) 第2旅客ターミナルビルのチェックインカウンター は18カウンター(292ポジション)となり、3階出発 ロビーの延べ床面積は2万2500㎡となった。 63番、64番ゲートと増設した65番、66番ゲートの 計4ゲートが、スイングゲートとして施設整備された。 (5)本館北側固定スポットの増設 ・70番出発バスゲートの増築 2006年8月、固定ゲート使用率の向上を目的として バスゲートの午前帯のピーク時において非常に狭 本館北側フィンガーを増築し、固定スポット2カ所(76 隘化が進んでいたバスゲートラウンジの拡張を行い、 番、77番ゲート)の運用を開始した。これにより、第2 6カ所のゲートカウンターを11カ所に増設した。バス 旅客ターミナルビルで直接航空機に搭乗できる固定ス ゲートの延べ床面積は1200㎡から2040㎡となった。 ポットは30カ所となった。 ・NAAランデブープラザ なお、第3旅 客ターミナルビル 建 設 工 事 に伴 い、 NAAは、お客様に出発までの時間を有効に過ごし 2014年4月9日をもって固定スポット2カ所(76番、77 ていただく施設として、お客様のニーズに対応したさ 番ゲート)が閉鎖されたため、2014年9月末現在、固 まざまな機能を持つ施設「NAAランデブープラザ」 定スポットは28カ所となっている。 を2002年3月に設置した。第2旅客ターミナル本館3 階に位置し、延べ床面積は約260㎡である。 (6)和的整備 NAAランデブープラザは南半分の区画にラウン 2008年4月、第2旅客ターミナルビルサテライト到 ジ施設(無料) 、北半分の区画にインターネットコー 着コンコース500mの空間に和的整備を施した。これ ナー、コーヒースタンドがテナントとして入居してい は出発動線に比べて無機質感が否めなかった到着動 る。なお、入り口には案内所を設置し、お客様への 線に、到着されたお客様を「和的な雰囲気」でお迎え 案内も行っている。 するべく環境の整備を図ったものである。 ・国内線バスゲート増設工事 到着コンコースの壁には、日本が作り出した建築素 暫定平行滑走路の運用に合わせた国内線の増便 材や伝統的手工芸素材を用い、日本古来の知恵、美し に対応するため、1階バスゲートに従来4カ所しかな かったゲートカウンターを6カ所に増設した。 さを求める細やかな手技を紹介した作品が並ぶ。 アートディレクター・吉岡幸雄氏の演出で、サテラ ・75番、98番、99番ゲート増設 イト北側から光屏風(藍)・木・土・瓦・陶・漆と作品 従来運用を休止していた98番、99番ゲートに搭 が旅客を出迎える。またサテライト南側からは光屏風 乗橋の整備を行い、また75番ゲートを新設し固定 (紅)・石・竹・金箔・磁器・蒔絵があり、外国人のお ゲートの増設を行った。 客様にも日本の心、文化を感じられる空間となっている。 ・ハイジャック検査施設増強工事 なお、この和的整備は、2008年度グッドデザイン賞 ピーク時におけるお客様のハイジャック検査の混 を受賞した。 雑緩和を図るため、南北検査場にそれぞれ2ブース また2011年3月、より多くのお客様に作品を見て日 ずつ増設し、南(9ブース) 、北(9ブース)の計18ブー 本の魅力を感じていただくため、以下の点に主眼をお スでの運用が可能となった。さらに、乗り継ぎ検査 いて和的整備の充実を図った。 場についても本館(4ブース)、サテライト(3ブース) ①作品に連続性を持たせる、②作業工程を見せること とそれぞれ1ブースずつ増設した。 で作品を印象づける、③照明効果により壁全体を際立た ・国内線スイングゲート整備 第2章 「ナインアワーズ成田空港」では、宿泊はもちろん、 せる、④「何かがある」というお客様の気付きを誘発する。 1. 施設の現状と計画 89 第 2章 成田空港の施設 ▲ 「和的」 空間に生まれ変わった第2旅客ターミナルビルサテライト到着コンコース (2008年4月) ▼追加整備を行い、より印象的となった第2旅客ターミナルビルサテライト到着コン コース (2011年3月) ▲内際乗り継ぎ施設の運用開始により国内線から国際線への乗り継ぎが便利に (2008年6月) 2)第2旅客ターミナルビル4階店舗フロアが 大幅リニューアル(出国審査前エリア) 第2旅客ターミナルビル4階ショッピング&ダイニン グエリア「エアポートモール」では2011年度、オープン 以来初となる大幅リニューアルを実施した。 「わかりや すく、見やすく、楽しい」をコンセプトに、2011年7月か ら順次リニューアルを進め、同年度末までには、通路 やレストスペースなどお客様動線も明るくなり、スタイ (7)内際乗り継ぎ施設 リッシュな空間へと生まれ変わった。 2008年6月、国内線から国際線への乗り継ぎがス ムーズに行えるよう、国内線ターミナルビル2階、3階に 内際乗り継ぎ施設約1180㎡を整備した。内際乗り継 ぎ施設とは、国内線で到着した旅客が国際線に短時間 で円滑に乗り継げるよう、ハイジャック検査施設、出 国検査施設などで構成されたものである。この施設に より、乗り継ぎにかかる移動距離、移動時間が大幅に ▲4階商業エリアの存在感を演出 短縮された。 (8)第2旅客ターミナルビル本館リニューアル工事 1)最新システムの導入によるターミナル機能、 お客様満足度向上 第2旅客ターミナルビルでは、1992年の運用開始以 降、当時のデザイン、スタイルを継続し運用をしてきた が、航空会社再配置を契機として、さまざまなリニュー アル工事を実施した。 2007年1月、 「ナリタ5番街」近接エリアに、新たな 航空会社ラウンジがオープンした。また、同年8月から 段階的に、出発ロビー、チェックインカウンターおよび (9)第2旅客ターミナルビルサテライト ゲートラウンジのリニューアル工事を実施した。出発ロ ビー、チェックインカウンターは白を基調とした仕様に 第2旅客ターミナルビルサテライト3階中央部分につ “ホワイトリニューアル” され、大型液晶ディスプレイを いては、高級感あふれる本館「ナリタ5番街」の雰囲気 各所に用い、設備、デザイン、サービスの一新を図り、 と統一するためリニューアル工事を実施した。これによ 16カウンター(244ポジション)となった。さらに2008 り、サテライトにおいても、明るく華やかで魅力あふれ 年4月から、インラインスクリーニングシステムを導入 る空間となっている。 した。この結果、セキュリティーレベルが向上し、また、 90 ▲4階の環境デザインを一新 出発コンコースリニューアル工事 お客様のチェックインに要する時間が大幅に短縮され、 1) 「ナリタ5番街」と統一感のある明るい商環境に 出発ロビーの混雑緩和が図られている。 2006年6月にオープンした免税店・ブランドモール 1. 施設の現状と計画 「narita nakamise」 (第1旅客ターミナルビル) 、2007 (10)国内線能力増強工事 2011年冬ダイヤからスカイマークが国内線に新規 ナルビル)のように商業施設の充実が図られるなかで 就航したことに伴い、第2旅客ターミナルビルの国内線 リニューアルが実施され、2009年9月18日から全面運 就航社は日本航空とスカイマークの2社となったこと 用開始となった。具体的な改修エリアは、サテライトの から、この国内線需要の増加に対応するために、第2 シャトル乗り場前面と左右の搭乗ゲートに向かう中央 旅客ターミナルビル国内線施設などについて以下の整 部分の約2400㎡。 備を行った。 リニューアルの基本コンセプトは「明るさ感のある ・国内線チェックインカウンターおよびバゲージハンド 開放的な空間」で、本館3階のナリタ5番街と同等レベ ルの商環境を整備することを目的としている。具体的 リングシステム(BHS)のコンベアを延伸 ・チェックインカウンターおよびBHSを延伸したこと には、①コンコースの見通しを遮るシャッター柱や壁 により、航空会社事務室の一部およびトイレを移設。 を撤去し広々とした空間にするとともに、壁面は白を また、処理能力を向上させるためソーティング場を 基調としたものに張り替えた、②床のカーペットはデザ 増築 イン性のあるものに張り替えて高級感を演出した、③ 天井部分のルーバーを撤去し、さらに間接照明を施す 第2章 年4月にオープンした「ナリタ5番街」 (第2旅客ターミ ・旅客のスムーズな動線を確保するためチェックイン カウンター前の階段を移設 ことにより店舗前面を華やかに演出した、④インフォ 2012年夏ダイヤからジェットスター・ジャパンおよ メーションカウンターはお客様の目にとまりやすいよう、 びエアアジア・ジャパンが国内線に新規就航したこと シャトル乗り場の正面に移設した、などとなっている。 に伴い、第2旅客ターミナルビルの国内線就航社が4 このほか、CMボードとフライトインフォメーションシス 社となった。この国内線需要の増加に対応するために、 テム(FIS)を壁面と一体化させ、すっきり感を演出して 第2旅客ターミナルビル国内線施設などについて以下 いる。これらにより、今までのサテライトとは違った華 の整備を行った。 やかで明るい雰囲気へと生まれ変わった。お客様は搭 ・第2旅客ターミナルビル本館から国内線旅客ター 乗ゲートに向かう直前までナリタ5番街同様にショッピ ミナルビルへつながる連絡通路に隣接した国内線 ングや食事を楽しむことができるようになっている。 チェックインカウンターおよび国内線到着口を新た 2)多彩なショップが目白押し に設置 ・第2旅客ターミナルビル本館北側に隣接した国内線 2009年のリニューアルはあくまでもコンコース部分 チェックインカウンターおよび国内線出発バスゲート の商環境整備が目的であり、新規店舗のオープンや拡 を新たに設置 張は行われなかったが、コンコース周辺の店舗からは 「周辺がすっきりし明るくなった」 、お客様からは「買い ・既存国内線施設にG・H・Iゲートラウンジを新たに設 置 物が楽しくなった」と好評であった。 その後、飲食店では、味噌をコンセプトとした「BLUE (11)第2旅客ターミナルビル「到着ロビー」 リニューアル SKY MISO KITCHEN」が2010年4月にオープンし、総 第2旅客ターミナルビルでは、2020年の東京オリン 合免税店では2015年3月に「ジャパンデューティーフ ピック・パラリンピックの開催を見据え、日本到着時に リー」 、4月に「JAL DUTYFREE」が拡張・改装を行っ おける第一印象の向上および空港イメージの刷新を図 ている。また、2015年3月には成田空港免税エリアブ るため、2014年11月より「到着ロビー」のリニューアル ティック初出店となる「ヴィクトリアズ・シークレット」 を実施している。 がオープンし、さらなる店舗の充実が図られている。 ▼天井部分のルーバーを撤去し、自然光を取り入れて明るくなったコンコース 運用開始後20年以上が経過した第2旅客ターミナ ルビル1階、2階の照明にLEDを用い、壁・床の色調 および天井を見直すことで、明るさと落ち着きを兼 ね備えた空間を提供する。また日本の玄関としてふ さわしい「和の抽象美」を彷彿させるモチーフを取 り入れ、日本の品格、繊細さ、落ち着いた上質感を 演出する。 地下1階エレベーターホール、立体駐車場連絡通路 についても同様のリニューアルを実施しており、2015 年度内には到着階南側(Aゾーン)吹き抜け部などの工 事を終え完成予定である。 1. 施設の現状と計画 91 第 2章 成田空港の施設 (12)旅客ターミナルビルのそのほかの取り組み 示されていたが、 「国際乗り継ぎ」 「到着・国内乗り継 NAAは、 「お客様の満足を追求し、期待を超えるサー ぎ」を区分して表示するようになった。さらに第2旅客 ビスの提供を目指します」を経営ビジョンに掲げ、空港 ターミナルビルの出発動線では、28カ所のコンコース 全体のサービス向上を図る方針を打ち出している。そ 表示に新たにゲート番号を入れて分かりやすくした。日 の一環として、出国審査後エリア商業施設の充実、イ 本語と英語の2カ国語表記だった案内表示も、中国語、 ンターネットなどサービス施設の拡充、分煙化の推進 韓国語を加えて4カ国語へと充実させた。 など、 「くつろげる環境づくり」に取り組んでいる。 成田空港では、お客様に快適な空間の提供をする 特に「国際 線や国内線への乗り継ぎ 時の案内表 ため、JTの協力により旅客ターミナルビル内にある喫 示が分かりにくい」というお客様からの要望に応え、 煙室を改修し、2011年3月までに全33室の喫煙室がリ 2004年7月、両旅客ターミナルビル合わせて68カ所の ニューアルされた(現在31室)。 案内表示を改善した。これまでは、両旅客ターミナル NAAは空港勤務者に対する環境整備も積極的に行っ ビルの到着動線では「到着手荷物受取所」とだけ表 ており、2004年4月1日の民営化に合わせ、勤務者のた めの保育所「NAA保育ルーム たんぽぽ」 (約350㎡)を オープンしている。近年、女性の社会進出で共働きが 増え、子育て支援策が急務となっているが、4万人以 上が勤務する成田空港でも「空港内に保育所を開設し てほしい」との強い要望があり、これに対応したもので、 国内の空港としては初の試みである。場所は第2旅客 ターミナルビル近くの第2駐車場ビル南棟1階となって いる。遊戯室や授乳室、ダイニングルーム、クラスルー ムなどのほか、園庭や砂場も併設している。対象とな るのは未就学児で、入園者は42人(2015年9月1日現 在)。保育士8人、栄養士1人を配置している。 ▲空港内勤務者のための保育所 「たんぽぽ」 が2004年4月1日にオープン 2013年7月、成田空港初の24時間営業となるコンビ ニエンスストア「セブン-イレブン」が第2旅客ターミナ ルビル本館4階にオープンした。2014年9月には第1旅 客ターミナルビル中央ビル5階の「ローソン」が24時間 営業を開始し、両ターミナルビルで早朝から深夜まで いつでも利用できるようになった。その後、2015年7月 に第1旅客ターミナルビル中央ビル地下1階に「ローソ ン」が、第2旅客ターミナルビル本館地下1階に「セブ ン-イレブン」が新たにオープンし、現在は両ターミナ ルビルで2店舗ずつ営業している。 LCCの運航は早朝出発・深夜到着も多いことから、 空港施設内で夜を過ごす利用者が増え、コンビニエン ▲セブン-イレブン(第2旅客ターミナルビル) スストアの出店は、こうした新しい利用者のニーズにも 応える。さらに、営業時間を拡大する店舗もあり、早 朝や深夜の利用者に対応する動きが広がってきている。 2015年4月8日にオープンした第3旅客ターミナル ビルにおいても、24時間営業のコンビニエンスストア 「ローソン」が出店していることに加え、出国審査前エ リアは全店舗とも早朝4時から営業を行っている。 3.ビジネスジェット専用ターミナル (1)ビジネスジェット専用ターミナルのオープン 2012年3月31日、首 都 圏 初のビジネスジェット専 ▲ローソン(第1旅客ターミナルビル) 92 1. 施設の現状と計画 用ターミナルとしてオープンした「Business Aviation Terminal -Premier Gate-」。これは、以下の3つをコン の利用も可能である。 お客様からは使い心地の良さ、 プライバシーとセキュ リティーが確保でき安心ということで好評を得ている。 (図2-2参照) 第2章 Premier Gate施設概要 ▲ビジネスジェット専用ターミナル内のラウンジ セプトにした専用ターミナルである。 ①ビジネスジェットの利用者だけが利用できる空間と 運用時間 施設利用料 駐機スポット CIQ施設 予約方法 6:00〜23:00 到着または出発ごとに250,000円 18スポットを整備、最大30日駐機可 駐機場までは専用車で送迎 プレミアゲート専用のCIQ施設を整備 発 着枠とスポット…専用ウェブサイトもしく は電話で空港事務所へ プ レミアゲート利用予約…前日15時までに 受付へ申し込み してプライバシーとセキュリティーを確保 ②専用のルート・CIQ施設を整備。短時間かつストレス フリーな出入国の手続きが可能 ③着陸から短時間で送迎車に乗り換え。出発時も、車 で到着後すぐに飛び立てる (2)国際商談会でもプロモーション 国内外での商談会やワークショップなどにも積極的 に参加し、Premier Gateをハンドリング会社や運航会 社にアピールしている。Premier Gateオープン前から、 ビジネスジェットは、利用者のスケジュールに合わせ 米国で開催されたNBAA2011に出展したことを皮切り て出発・到着時刻を設定でき、定期便が就航していな に、2012年3月には上海で開催されたABACE2012、5 い場所や時間帯での移動が可能になる。また、移動中 月にスイス・ジュネーブで開催されたEBACE2012、10 でも機内で仕事を続けることができ、プライバシー確 月に名古屋で開催された国際航空宇宙展などのさまざ 保も容易なため、グローバルな展開を進める企業のエ まな展示会に出展。その後も毎年NBAA・ABACEにお グゼクティブにとっては必要不可欠な存在になってき いて、継続的にPRを行っている。 ている。 また、富裕層向けの雑誌や専門誌への広告出稿、ハ 施設内にはラグジュアリーな雰囲気のラウンジを設 け、飲み物が用意されるなど、出発前や到着後のひと ときを快適に過ごすことができる。Premier Gate内で の、事前予約による免税品などの受け取りおよび外貨 両替サービスもある。また、旅客ターミナルビル内にあ る免税店に立ち寄り、専用のスタッフがお客様のお買 い物をサポートする「免税店コンシェルジュサービス」 図2-2 ビジネスジェット専用ターミナルレイアウト図 ▲EBACEでは多くのビジネスジェットの展示があった ▲NBAAでの出展ブースの様子 1. 施設の現状と計画 93 第 2章 成田空港の施設 ンドリング会社や運航会社、駐日大使館などに対し、 たなアクセス道路が運用を開始。これまでは、1本のア PRレターやパンフレットを送付するなど、 広くPRを図っ クセス道路を高速車と低速車が混在して走行していた ている。 が、新たな道路を高速車用とすることで移動時間が短 (3)ビジネスジェット受け入れ環境の整備 ジネスジェットのお客様の移動時間がこれまでの約16 昨今、ビジネスジェット機としてB737やA320などの 分から約8分へ大幅に短縮され、 利便性が一層向上した。 大型機による利用が増加し、2011年度の大型機の割 成田空港ではこれまで、専用ターミナルの建設、駐 合が9.8%だったのに対し、2013年度は13.2%となった。 機可能日数の延長、スポット・スロット利用のウェブ これを受け、2014年6月26日から大 型機材用の駐 での申請受け付けなど、受け入れ環境を整備してきた。 機スポットを増設。これまで大型機材が駐機できるビ 引き続き「選ばれる空港づくり」を目指して、成田空港 ジネスジェット用スポットは1スポットだったが、既存 の利便性を向上させ、ビジネスジェットの誘致拡大に スポットの一部をマルチスポット化することで最大3ス 取り組んでいく。 縮し、より効率的な空港運用が可能となった。特に、ビ ポットに。多様なニーズに応じた柔軟な運用が可能と なった。 (図2-3参照) ❸ 貨物ターミナル施設 2014年9月18日には、2014年度中の空港処理能力 30万回化の実現に向けて整備を進めていた横堀地区 (1)貨物取扱施設 エプロンが運用開始した。スポットは主に定期便が使 現在、成田空港の貨物取扱施設(上屋)は19.8万㎡ 用するが、定期便が使用していない時間にはビジネス で、貨物処理能力は年間235万tとなっている。ここ数 ジェットの乗降にも使用が可能。これにより、ビジネス 年の貨物取扱量は200万t前後で推移しているが、今 ジェットのお客様の利便性もさらに向上した。 後、国際線ネットワークのさらなる拡充による、貨物需 また、同日にはターミナル地区と整備地区を結ぶ新 要動向、航空会社のニーズなどに合わせ、貨物取扱施 表2-5 プレミアゲートの利用実績 年度 月 回数(回) 年度 月 回数(回) 年度 月 回数(回) 年度 月 回数(回) 2012年度 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 4月 5月 6月 7月 15 35 38 50 32 22 31 12 9 36 31 25 12 19 11 11 10 21 2015年度 25 8月 44 13 39 25 9月 33 11月 52 23 2013年度 11月 48 47 2014年度 11月 35 50 12月 1月 2月 3月 2012年度計 12月 1月 2月 3月 2013年度計 12月 1月 2月 3月 2014年度計 20 22 28 2015年度計 189 図2-3 ビジネスジェット用スポット配置図 黒塗り:新設したスポット (2スポット) 94 1. 施設の現状と計画 8 35 30 25 36 33 32 64 58 252 413 391 設の展開計画を進めていくこととしている。 している。NAAでは県や周辺自治体と連携し、物流関 2015年度は、日航貨物ビルの旧事務棟撤去および 連施設などの誘致活動を側面支援するとともに、成田 跡地への屋根掛工事に着手し、2017年3月の完成を予 市が取り組む成田市場を活用した農産物の輸出促進 定している。本工事により、トラックドックが12台増設 活動にも参画している。 (図2-5参照) され、上屋からトラックドックへの動線も新たに確保さ (3)フォークリフト&パレットビルディング競技会の開催 物処理能力も年間5万t増強される。 貨物取扱事業者のスキルを競い、向上させていくこ また、貨物地区の混雑緩和対策として、貨物地区入 とを通じて、航空貨物利用者に、より高品質なサービ 構ゲートの変更、構内道路の線形変更に取り組む。 (図 2-4、表2-6参照) 第2章 れることから、日航貨物ビルの機能向上が図られ、貨 スを提供することにより、空港全体としての貨物取扱 量の拡大を図ること、および貨物取扱事業者の安全意 識の高揚と、さらなる品質の向上を図り、貨物地区に (2)空港周辺の物流施設 おける安全作業の確立と労働災害の防止に資すること 空港周辺地域ではフォワーダーによる自社貨物取 を目的に、2015年8月27日に「第1回成田国際空港貨 扱施設の建設、物流専門不動産会社による賃貸施設 物地区フォークリフト&パレットビルディング競技会」 が展開されている。主に輸出入貨物の空港外保税蔵 を開催した。競技会には、5社9チームが参加し、パレッ 置場の役割を担うことを目的としている。荷主からフォ トビルディング(貨物積み付け作業)とフォークリフト ワーダー施設内保税蔵置場に持ち込まれた輸出貨物 基本操作技術について競った。 はここで輸出通関手続きを終え、空港内の航空会社 ▼「第1回成田国際空港貨物地区フォークリフト&パレットビルディング競技会」 の様子 上屋へ搬入しビルドアップ後、航空機に搭載される。 2015年10月現在、39社42カ所の保税蔵置場が設けら れており、2015年6月には圏央 道「神崎IC-大 栄JCT」 が開通したこともあって、2014年以降も新たに4社が 進出している。それらの保税蔵置場を含めた倉庫面積 は空港内の上屋面積(約19.8万㎡)の約2倍の規模と なっている。 施設は空港の南約1kmに位置する南部工業団地(芝 山町)に特に集中しており、今や物流団地といった様 相を呈している。このように数多くのフォワーダー施設 が進出することにより、地域社会に与える影響も大きく、 地域振興から雇用に至るまで多くの経済効果をもたら 図2-4 貨物取扱施設の位置図 B滑走路 第3旅客ターミナルビル 第5貨物ビル 第2旅客 ターミナルビル 整備地区貨物上屋 トラック待機場 第7貨物ビル 第1旅客ターミナルビル 整備地区 誘導路 A滑走路 貨物ターミナルビル地区 南部貨物地区 貨物ローディングスポット 1. 施設の現状と計画 95 第 2章 成田空港の施設 ▲2008年10月にオープンした第7貨物ビル ▲国際航空貨物取扱量は世界第6位 ▲貨物施設の整備・拡充により、 効率化とスムーズな物流を実現 表2-6 貨物取扱施設規模・面積 貨物取扱施設 1 第1貨物ビル 名 称 敷地面積 延床面積 上屋面積 2 第2貨物ビル 9,000 5,000 3,600 800 31,400 74,200 19,200 6,900 16,000 57,500 20,600 40,400 16,100 59,500 12,300 2,900 15,200 49,800 25,900 10,400 12,900 43,400 9,400 2,900 10,100 40,300 15,600 9,700 1,400 5,400 1,200 − 1,100 9,500 5,600 600 75,000 10,600 10,000 500 2003.7 輸出入上屋・事務所 46,600 11,200 10,000 1,100 2004.7 輸出入上屋・事務所 59,300 11,200 10,000 900 2005.4 輸出入上屋・事務所 11,400 3,000 13,800 5,800 580 700 − 500 1991.6 事務所 1,800 − 503,280 12,500 400 283,700 − − 197,500 8,000 − 48,900 2000.10 1987.9 事務所 7,300 16,700 − − 1978.5 4,400 1,700 3,600 3,700 18,200 38,900 3,000 1,100 3,400 14,400 − 38,600 − − − − − − − − − − 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 第3貨物ビル 第4貨物ビル 第5貨物ビル 第6貨物ビル 第7貨物ビル 日航貨物ビル 輸入共同上屋ビル 整備地区貨物上屋 南部第1貨物ビル 南部第2貨物ビル 南部第3貨物ビル 南部第4貨物ビル 南部第5貨物ビル 南部第6貨物ビル 第1貨物代理店ビル 第2貨物代理店ビル 19 第2貨物代理店ビル付 属棟 20 貨物管理ビル 21 燻蒸倉庫 小 計 22 官庁合同庁舎 関連施設 96 2015年10月現在 23 24 25 26 27 南部第1官庁ビル 南部第2官庁ビル 成田国際空港郵便局 貨物駐車場ビル ULD置場 小 計 1. 施設の現状と計画 30,400 20,400 15,900 3,700 (60) 事務室面積 2,300 6,700 3,300 運用年月 主な役割など 1978.5 輸出上屋・事務所 輸出上屋・フォワーダー上屋・ 〃 事務所 1984.11 輸出上屋・事務所 1996.4 輸出入上屋・事務所 1994.2 輸出上屋・事務所 2002.6 輸入上屋 2008.10 輸出上屋・事務所 1978.5 輸出入上屋・事務所 〃 輸出入上屋・事務所 2001.4 輸出上屋・事務所 1978.5 フォワーダー上屋・事務所 1989.4 事務所 税関、植防、食品検疫など関係 庁舎 2004.6 税関 2005.4 植防、動検 1978.5 1995.1 1978.9 図2-5 成田空港周辺の物流施設 2015年10月現在 6 野毛平 工業団地 115 2 1 3 成田市 JR 7 113 4 成田小見川鹿島港線 51 295 西エリア 京成電鉄 H H 79 横芝下総線 新空港IC 関 東 成田松尾線 富里IC 東 自動 車道 1 芝山鉄道 芝山千代田駅 貨物地区 62 八街三里塚線 296 10 9 12 〈南エリア〉 1 近鉄エクスプレス △ 2 近鉄コスモス △ 3 アルプス物流 △ 4 新開トランスポートシステムズ △ 296 17 18 19 22 空港南部工業団地 芝山中入口 2 3 「プロロジスパーク成田 1」 内 ◇◇は 芝山町 21 16 15 14 62 43 20 11 13 南エリア 2 南部 1 貨物地区 1 〈西エリア〉 1 丸全昭和運輸 ◇ 2 エムオーエアロジスティックス ◇ 3 SGHグローバル・ジャパン ◇ 4 マルハニチロ物流 ◇ 7 9 3 106 2 6 成田空港 〈北エリア〉 ①②日本通運 ③④サンリツ ⑤コイケ ⑥日本空港ロジテム ⑦ヤマトパッキングサービス 多古町 5 成田東武ホテル エアポート 44 2 3 4 日航 成田 成田IC 東エリア 8 新空港自動車道 408 4 5 第2章 成田下総線 北エリア 4 3 290 6 5 5 原伸梱包物流 △ 7 6 日立物流バンテックフォワーディング △ 8 7 キューネ・アンド・ナーゲル △ 8 ワコン △ 9 日新 △ 19 ユーピーエスサプライチェーン 10 国際空港上屋 △ △ 11 名鉄観光サービス △ ソリューション・ジャパン 20 三菱倉庫 12 郵船ロジスティクス △ △ 21 東芝ロジスティクス 13 西日本鉄道 △ △ 22 西濃シェンカー 14 福山通運 △ △ 15 ロジレックス △ 7 は 6 「GLP 成田 Ⅱ」内 16 インターナショナル・カーゴ・サービス △△ △ 16 17 18 19 は △△△△ 「GLP 成田」内 17 シーバロジスティクスジャパン △ 20 21 は △△ 「プロロジスパーク成田 3」内 18 航空集配サービス △ 〈東エリア〉 1 2 阪急阪神エクスプレス □□ 3 日祥物流 □ 4 丸運国際フレート □ 5 鴻池運輸 □ 6 スコア・ジャパン □ 7 ネクスト・コーポレーション □ 8 朝日森運輸 □ 9 ホンダロジスティクス □ ◎許可済み計39社42カ所 (注)通関のための保税蔵置場のみを表示 1. 施設の現状と計画 97 第 2章 成田空港の施設 ❹ 給油施設 後の1983年8月に運用を開始した。それまでの間は鉄 道による暫定輸送であったため給油制限を余儀なく 成田空港で使用する航空燃料は、成田空港が内陸 されていたが、パイプラインの運用開始により輸送能 部に位置しているため、東京湾の千葉港にある「千葉 力が大幅に増大し、航空機発着回数の増加に順次対 港頭石油ターミナル」に荷揚げし、約47kmに及ぶ「パ 応が可能となった。パイプラインは2条敷設されてお イプライン」により輸送されてくる。輸送された燃料 り、輸送能力は、当初1条1時間あたり500㎘であった は、成田空港内の「第1給油センター」と「第2給油セ が、増大する航空需要に合わせて能力を増強するため、 ンター」に貯蔵され、 「ハイドラント施設」により航空 1996年4月に四街道石油ターミナル(中間地点で再加 機に給油される。 (図2-6参照) 圧する施設)の運用を開始して以降、1条1時間あたり 700㎘となっている。 (1)千葉港頭石油ターミナル 千葉港頭石油ターミナルには、東京湾などの国内各 (3)第1給油センターおよび第2給油センター 製油所からタンカーで輸送された燃料を荷揚げするた A滑走路西側の第1給油センターには、貯蔵・払出 めの揚油バース(4桟橋)と、燃料を一時貯蔵するため 用タンク25基(4000㎘×14基、8000㎘×11基)が設 のタンク13基(4000㎘×6基、1万1000㎘×4基、9000 置されている。また、2004年4月にB滑走路東側に備 ㎘×3基)が設置されている。また、パイプラインに燃 蓄量確保のため建設された第2給油センターには、貯 料を送り出すための送油ポンプが設置されている。 蔵・払出用タンク8基(6000㎘×8基)が設置されてお なお、既存バースおよび護岸の耐震補強工事中の荷 り、第1給油センターと合わせて、空港で消費される航 揚げ能力を確保するため、先行して新1号バースを建設 空燃料の7日分以上を備蓄している。 中である。 (4)ハイドラント施設 (2)パイプラインおよび四街道石油ターミナル ハイドラント施設は、スポットに駐機している航空機 航空燃料パイプラインは、成田空港の開港から5年 に給油するための払出施設であり、第1および第2給油 図2-6 パイプラインルート図 98 1. 施設の現状と計画 の時点での混雑状況のほか、2時間後の混雑予測も表 ン下に埋設された給油配管によって燃料を供給してい 示している。対象となる駐車場は、P1、P5およびP2である。 る。空港開港時から運用している第1ハイドラントは1 同サービスには、成田国際空港公式ウェブサイト、公式 時間あたり2300㎘の払出能力があり、貨物地区と第1 携帯サイトおよび公式スマートフォンサイト(駐車場混雑 旅客ターミナルビルの1部の37スポットに供給している。 状況)から簡単にアクセスできるため、出発前にご自宅 第2旅客ターミナルビル建設に合わせた2期地区エプロ のパソコン、携帯電話、スマートフォンで事前に混雑状況 ン展開時の1992年8月に運用を開始した第2ハイドラ を確認してから空港へ行くことが可能である。 ントは1時間あたり4500㎘の払出能力があり、 99スポッ 第2章 センターの貯蔵タンクから払出ポンプによって、エプロ 2)駐車場の事前予約サービス トに供給している(スポット数は2015年9月1日現在) 。 P2およびP5では、確実に駐車場の利用ができるよう、 ご利用の3カ月前からインターネットまたは電話での事 ❺ 駐車場施設 前予約を受け付けている。 成田空港ではお客様の利便性を向上させるため、駐 車場の充実を図っている。 3)駐車料金の割引サービス 駐車場には、3種類に区分した用途別駐車場として、 早朝便または深夜便をご利用になるお客様の成田 一般用時間貸駐車場、業務用月極駐車場および従業 空港へのアクセス向上を目的とし、深夜0時から早朝8 員用定期貸駐車場がある。2015年9月末現在、一般用 時までに入庫、または深夜22時から翌2時までに出庫 時間貸駐車場は5カ所(P1、P2、P3、P5、貨物)全体 し、6時間以上駐車したお客様を対象とした駐車場料 で普通車約3800台、大型車約40台の駐車が可能と 金割引制度を導入している。 なっており、そのうちお身体の不自由なお客様専用駐 ・対象駐車場:P1、P2、P3、P5 車スペースとして合計57台分(P1:16台、P2:28台、P3: ・対象車種:すべての車種(普通・大型・自動二輪) 4台、P5:8台、貨 物:1台)が 設 置されている。 ( 図2-7、 表2-7参照) ・割引内容:駐車場利用時間が6時間以上48時間以 内の場合は半額割引、48時間を超える場合は一律 24時間分を割引 図2-7 一般用時間貸駐車場マップ ・利用方法:精算機または出口有人ブースにて精算 第2 旅客ターミナルビル ・割引適用除外日:5月2~6日、8月11~17日、12月29 P3 P2 日~1月4日の間に入庫かつ出庫した場合、割引の適 P1 至多古 用除外となる 第6ゲート 第2ゲート 第1ゲート 車道 港自動 新空 貨物地区 至成田IC 東京方面 至芝山 P5 貨物地区駐車場 第1 旅客ターミナルビル 4)電気自動車用急速充電器の設置 より多くのお客様に快適に来港いただけるよう、電気 自動車によるアクセス性の向上を図ることおよびエコ・ エアポートの推進を図ることを目的として、2012年10月、 ジャパンチャージネットワーク㈱の協力により、電気自 1)混雑状況の事前確認サービス 動車用急速充電器がP1およびP2に各1基ずつ設置さ 空港内の駐車場の混雑状況が一目で確認できるサー れ、運用を開始した。設置された機器は、約30分の急 ビスを提供している。毎日9・11・13・15・17時の1日5回、そ 速充電で80%充電できるCHAdeMO方式である。 表2-7 駐車場料金表 一般用時間貸駐車場 P1 / P2 /貨物 P3 / P5 予約 料金(普通車) 対応車種 P2可 最初の3時間30分まで30分ごとに260円 3時間30分を超える24時間まで2,060円 24時間を超える120時間まで、24時間を超えるごとに24時間 ごとの上限(2,060円)に達するまで30分ごとに260円 120時間を超える24時間ごとに520円 P2および貨物は大型車不可 P5可 最初の3時間30分まで30分ごとに210円 3時間30分を超える24時間まで1,540円 24時間を超える120時間まで、24時間を超えるごとに24時間 ごとの上限(1,540円)に達するまで30分ごとに210円 120時間を超える24時間ごとに520円 P3は自動二輪不可 P5は大型車・自動二輪不可 1. 施設の現状と計画 99 第 2章 成田空港の施設 5)P2駐車場北附属棟の運用開始 性、省エネが図られている。 2015年8月1日より、第2旅客ターミナルビルに隣接 中央受配電所は成田空港の電力施設の大きな特徴 するP2駐車場を北側に拡張し、新たにP2北附属棟の であり、電力会社から6万6000ボルトで一括受電して 運用を開始した。これにより、新たに655台の駐車が いる。この一括受電方式は個別受電による受電設備 可能となり、第2・第3旅客ターミナルビルをご利用のお や予備電源などの重複を避け、設備効率や運転効率 客様の利便性が向上している。 を高める利点がある。 停電対策については、空港内に設置されている発電 機が自動的に起動するシステムとなっているとともに、 ❻ そのほかの施設 管制施設などのように瞬時の停電も許されない重要な (1)供給施設 設備についてはさらに無停電電源装置を設置すること 成田空港には、中央冷暖房所、中央受配電所、上水 により、 不測の事態に対しての信頼性を向上させている。 道施設などの供給施設が整備されている。 また、2000年度からコージェネレーションシステム 中央冷暖房施設は、空港内各施設の快適な環境と (CGS)が設置された。このCGSは、都市ガスを燃料と 航空保安施設や情報システム機器に対する適切な環 したガスタービンで発電機を駆動し、発電(6500kW 境を維持するため、冷水・高温水を24時間安定供給し ×2台)するとともに、廃熱ボイラーで蒸気を製造して ている。 いる。この電力は、中央受配電所を経て空港内に送電 地域冷暖房方式とは、エネルギープラントから地域 するとともに、蒸気は中央冷暖房所にて高温水・冷水 配管を通して冷水・高温水などの熱媒を各ビルに供給 の製造に使用されている。これにより、従来方式によ する方式で、地域全体を冷暖房するのに最適な方法で る発電システムではエネルギー効率が43%であったが、 ある。成田空港の場合は、中央冷暖房所で作られた冷 CGSでは65%に向上し、省エネルギーが図られている。 水・高温水を地域配管で旅客ターミナル施設、 貨物ター なお、空港全体で使用される電力量は年間約3億 ミナル施設、管理地区などに供給し、ビル側の空気調 1000万kWhであり、一 般 住 宅に換 算すると、約9万 和設備などで冷温エネルギーを使用した後、中央冷暖 1000戸分相当の電力量規模となっている。 房所へ送り返す循環方式を採用している。 上水については、千葉県から供給を受け、空港の西 冷熱源は電気、都市ガス、A重油、また、温熱源は 側地区にある給水センターで受水し、その後、高架水 都市ガス、A重油の選択が可能となっており、これら多 槽に揚水され空港内各施設へと供給されている。給水 様なエネルギー源の導入により供給の安定性や経済 センターには貯水槽 (5000㎥) 2基、 高架水槽 (1250㎥) 1基などが整備されている。 (2)航空機整備施設 航空機を点検・整備するためのハンガー(格納庫) が、空港南側の整備地区に計6棟(日本航空2棟、全 日本空輸1棟、日本貨物航空1棟、NAA2棟〈エージー ピーとデルタ航空へ1棟ずつ賃貸〉)設置されている。 点検・整備は、航空機の心臓部ともいえるエンジンを はじめ、ランディングギア、コックピット、フラップなど の動翼、客室などすべてに及び、整備規定の量は百科 ▲中央受配電所 ▼コージェネレーションシステム 事典数冊分にもなる。定期点検ではB777型機の場合、 飛行時間が約500時間経過するごとに行うものと、さ 図2-8 ハンガー位置図 NCA ライン整備 ハンガー B滑走路 (2,500m) 日本航空 成田A ハンガー 日本航空 成田第1ハンガー A滑走路 (4,000m) 100 1. 施設の現状と計画 NAA第1ハンガー NAA第2ハンガー ANA 成田第1号格納庫 らに約5000時間ごとに行うものとの2種類がある。 にも十分な消火活動を行うことができる。また、消火 なお、日本航空では航空機エンジンの新整備工場 体制を強化するため2007年に西分遣所へ高速給水シ (地下1階・地上4階)を1995年10月から稼働させている。 ステムを配置している。 日本航空ではこれまで羽田整備工場で一貫したエンジ (4)気象施設 沖合展開に伴う一部施設の取り壊しなどで手狭になっ 成田空港の空港管理ビルにある成田航空地方気象 たことから、一部修理部門を除いて整備業務を成田へ 台では、航空機や空港関連施設などに影響を及ぼす 移管する準備を進めてきた。成田にはエンジンの分解・ 気象現象を常に監視し、必要な情報を提供している。 組み立てを行う工場があり、新工場の稼働で一貫整備 なかでも低高度での風の急激な変化(低層ウィンド 体制が整うこととなった。日本貨物航空がB747-8F型機 シアー)は離着陸しようとする航空機にとって大変危険 まで収容可能なハンガー1棟を新たに建設し、2009年6 な現象である。この低層ウィンドシアーを検出するため 月から運用を開始している。 (図2-8参照) 第2章 ン整備を行っていたが、事業規模の拡大や羽田空港の に1996年4月に空港気象ドップラーレーダー(DRAW) 、 2008年4月に空港気 象ドップラーライダー(LIDAR) (3)消防所 を整備し、それぞれの特性から降水時にはDRAW、非 成田国際空港では航空機災害などに備え、消防所 降水時にはLIDARを主とした観測成果を利用すること (整備地区) 、西分遣所(A滑走路西側) 、東分遣所(B により、全天候に対応した低層ウィンドシアーの観測が 滑走路東側)、暫定待機所(ランプイースト)の4カ所 可能になった。2008年7月からは、DRAWとLIDARの に消防施設を分散配置している。24時間対応可能な 観測成果を一元化することにより低層ウィンドシアー 体制を組み、大型化学消防車を中核とした消火救難 検出情報を降水現象の有無に関わらず航空局へ常時 車両は、空港内のどこへでも短時間で出動できる体制 提供し、航空局で作成された低層ウィンドシアー情報 を整えている。特に東西分遣所からの緊急出動は、そ 文の航空機への提供により安全運航に寄与している。 れぞれの滑走路の両端まで約2分で駆けつけることが また、気象実況を把握し予想資料などにより、成田空 できる。 港周辺半径約9kmの地上および直上空域を対象とし 配備されている消火救難車両は、指揮車1台、化学 た飛行場予報を発表するほか、航空機の運航並びに 消防車6台、給 水 車3台、救 急車2台、泡タンク車1台、 空港施設および業務に悪影響を及ぼす気象状態につ 破壊救難車1台、救急医療器材搬送車1台、小型救急 いて、飛行場警報や飛行場気象情報を発表している。 医療器材搬送車1台および総合指揮車1台の計17台で 成田空港では、2008年4月に多機能型地震計(震 ある。総合指揮車は現場で関係機関との調整を行うこ 度情報と緊急地震速報機能を併せ持つ)を整備し、そ とを目的とした移動指揮所といった性格を持ち、車内 の観測点(ナリタコクサイクウコウ)で測定された震度 には会議用のテーブルをはじめ、情報の収集・伝達に 情報は、NAAや航空局の行う滑走路や空港施設の点 必要な各種媒体が搭載されている。 検の必要の判断に利用されている。また、航空機の運 泡消火剤や粉末消火剤などを搭載する化学消防車 航に影響を及ぼすおそれのある緊急地震速報が発表 6台のうち5台は、国内最大級の大型化学消防車を配 された場合は、ただちに管制官からパイロットにその 備している。同車は1分間あたり6000ℓの放水能力が 情報が提供され、離着陸の回避など航空機の安全運 あり、射程距離も約100mに及ぶため、A380型機(全 航に役立てている。 長約73m)などの大型航空機の消火活動にあたる際 ▼西分遣所 ▼気象レーダー 1. 施設の現状と計画 101
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