『医療メディエーター』 高木洋行(長野県)

いま地域医療は
自治医科大学卒業生
からの現地リポート
﹃医療メディエーター﹄
分な説明ができないまま医療が行わ
れて、我々医療者も多忙を理由に十
は、不安と不満を抱えたまますごさ
ト が 生 じ て い ま す。 患 者 さ ん た ち
実と思いがあり多くのコンフリク
は、同じ事実に対してさまざまな現
くかつ健康への思いが強い現場に
いところにある思いに気付き自分ら
院の双方からお話を聞いてその心深
メディエーションは、患者さんと病
かっていることがわかります。医療
ほしい﹂と、根本では同じ方向に向
た だ き た い。 早 く お 元 気 に な っ て
あり、病院も﹁じっくり診させてい
なかったとか、外来予約時間を過ぎ
しさをとりもどしていくお手伝いを
一般の方はまだ聞きなれない医療
てもなかなか診てもらえなかったと
あるからなかなか予定どおりにいか
な い ﹂と 考 え て い ま す。 病 院 は﹁ 重
症の患者さんを先に診るために予約
患者さんに申し訳ないが待っていた
だ き た い ﹂と 思 っ て い ま す が﹁ 自 分
だって病人なんだから順番どおりに
えていきたいと考えています。
メディエーションマインドを広く伝
地 域 医 療 の 現 場 に 潤 い を も た ら す、
かく医療崩壊などと殺伐としている
信越支部の代表を司っています。と
エーター協会が設立され、自分が甲
す。 平 成 二 十 年 に 日 本 医 療 メ デ ィ
リクトに対応していきたいと思いま
ションマインドでさまざまなコンフ
け と し て、 波 田 病 院 は メ デ ィ エ ー
うになりました。長野県内でも先駆
多くの病院で共感の声を聞かれるよ
たメディエーションの考え方は広く
せてくれます。この対話を中心とし
し、コンフリクトを解決へと向かわ
れます。前述の待ち時間について考
メディエーターという言葉、実は医
か、何回も針を刺されてやっと点滴
する考え方です。それを担うのが医
療界では急速に広まりつつあり注目
が入ったとか、大小さまざまなコン
えてみます。予約どおりに外来で診
を集めています。メディエーターと
フリクトが生じます。コンフリクト
療メディエーターです。医療メディ
はメディエーションを司る人のこ
とは葛藤と訳されますが、同じ事実
ていただけない事実に対して人それ
と、 そ し て、 メ デ ィ エ ー シ ョ ン を
に対しても見る人のとらえ方で思い
高木 洋行
辞書で調べると調停・仲裁という言
が違い、ときとして衝突してしまう
長野県
波田総合病院
葉がでてきますが、医療メディエー
ことがあります。雲一つない快晴の
診て欲しい﹂と考えている患者さん
エーターは、とにもかくにもお話を
ションは少し趣が異なります。病気
青空をみて、多くの人は気持ちがい
もいます。こんな思いの違いがコン
ぞれの思いが違い、温度差とすれ違
に対する不安や闘病生活を余儀なく
いなと感じています、今日は洗濯日
フリクトの始まりです。それがだん
聞かせていただきます。会話を重ね
されている患者さんやそれを愛しむ
和だわと肯定的なお母さん、今日は
だんと大きなものに変わっていって
いを生じます。ある患者さんは﹁予
家族は、早く元気になりたいとか元
遠足日和だ、やったーと喜ぶ子供た
しまう事があります。しかし、一見
ることで、気付きがおきます。気付
気になってほしいという気持ちが当
ち。しかし、一方で雨量の少ないこ
くいちがった意見の対立に見えるこ
約なんだから当然約束どおりにみて
然あります。その気持ちが強ければ
と を 憂 い で い る 農 家 の 人 も い れ ば、
のことも、深く掘り返していくと患
きが心の奥深くあった思いを導き出
強いほど我々の医療行為の一つひと
かけっこの苦手な子は運動会が予定
者 さ ん は﹁ し っ か り と 診 て ほ し い。
欲しい﹂と思っていますし、違う患
つが気に掛かり不安を抱く事があり
どおり行われることが悲しい現実で
早く元気になりたい﹂という思いが
者さんは﹁医療は不確実なところが
ま す。 主 治 医 の 説 明 が わ か り に く
あります。医療という、専門性が高
300
かったけれど質問できる雰囲気で
51
NO.