女心を捉えるアート＆カルチャー

インターネット調査にみる
女心を捉えるアート＆カルチャー
－興味あるカルチャートップ3 は音楽・絵画・演劇、
好きな絵画トップ3 は「印象派」「19 世紀以前の西洋絵画」「日本画」－
東京都品川区東五反田5−24−10
テラサキ第3ビル2Ｆ
TEL:03−5795−0941
ポーラ文化研究所では、昨年末、
20 代から 60 代までの女性を対象に、美
今回のレポートを含め、３つのレポートはすべて、下記の調査結果に
3部
術・ファッション・化粧に対する関与度・嗜好性を調査した。その結果を
基づいている。
のレポートにまとめる予定であるが、本レポートはその第
2 弾である。
調査レポートの全タイトルと内容は下記の通りである。
アート、ファッション、メークの嗜好性調査と、
クラスタ分析による女性のタイプ分類
!?アート、カルチャーに関心がある人はど
①「ファッションとメークでわかる
んな人？」（
2003.2.4 発行）
2002 年 11 月 13 日(水)∼14 日(木)
アート、メーク、アートの嗜好性を軸にクラスタ分類し、女性をアー
トとの関わりを軸にタイプ分けしたレポート。
インターネットサーベイ
（電子メールで告知、
WEB で回答）
②「女心を捉えるアート＆カルチャー」（
2003.2.14 発行）
カルチャー、アートの分野で、女性たちの支持が高いのはどのよ
関東地方在住の女性モニター
うな分野かがわかるレポート。
20 代∼60 代
2003 年 2 月末発行予定）
③「（仮）美術館によく行く人はどんな人？」（
1061 名
美術館に行く頻度が高い人はどんな人か？世帯年収、子供の有
無などの属性がわかるレポート。
2
３．回答者のプロフィール
有効回答数 1061 人の 20 代～60 代女性パネラーを、4 つの年代区分で集
２）職業
計した。区分は下記の通りである。①20 代 ②30 代 ③40 代 ④50 代以上と
専業主婦の割合が 52％と過半数である。
4 区分とし、各区分の N 数が 250 人前後で均等になるようにした。
働いている人の割合は約 43％である。
また、インターネット調査という特性上、パネラーとして登録されているのは、
この数値は 2000 年の国勢調査にみる女性の労働力率、48.2％と比較する
「比較的アクティブなマインドを持つ女性」の割合が高いと言われている。
と 5％ほど高い。
１）年代構成
若干 40 代の割合が高いが、各区分ともほぼ同数である。
年代別(N= 1 0 6 3 )
職業別 (N= 1 0 6 3 )
公務員
1.0%
経営者・役員
0.7%
11.0%
会社員(事務系)
50代/60代
25.3%
20代
24.6%
会社員(技術系)
2.9%
会社員(その他)
2.5%
自営業
3.6%
自由業
2.2%
52.0%
専業主婦
13.6%
パート・アルバイト
40代
25.7%
30代
24.4%
学生
5.1%
その他
5.4%
無回答/無効
0.0%
3
3. 調査結果
興味のあるアート、カルチャー（全体）
％
70
１）興味のあるアート、カルチャー
60
①全体
50
64
61
49
42
右に挙げた 16 種類のアート、カルチャーの中から、興味のあるものに○
41
40
をつけてもらった。興味のあるものがこの中にはないという回答は全体の
34
27
30
4％なので、ここに挙げた 16 種類で、ほとんどの興味の対象はカバーでき
23
22
21
21
20
ていると思われる。
19
19
17
15
10
10
この集計結果から、全年代を合計した数値を見ると、人気が高いのは、
この中にはない
パフォーマンス
茶道
オペラ
書道
彫刻
華道
となっている。これらはすべて、古典的なものから現代的なものまで含む、
建築
歌舞伎・能・狂
言
工芸
ダンス
デザイン
3 位演劇・芝居
ミュージカル
2 位絵画
写真
演劇・芝居
0
絵画
音楽
1 位音楽
4
バラエティに富んだ分野である。
次に、写真・ダンス・デザインといった、どちらかというと現代的な分野が続
き、最後に、比較的伝統色が濃い分野が登場する
興味のあるアート、カルチャー（年代別）
％
80
72
71
70
②年代別傾向
60
ここでは同じデータを年代別に分析したものを紹介する。
50
右のグラフは、すべての分野の年代別支持率を記載したものである。
40
大まかな傾向として、「高年代になるほど支持率が高くなる分野」と「若年
30
代ほど支持率が高い分野」があることをおわかりいただけると思う。このグ
20
ラフでは小さくて少々わかりづらいので、次ページに、２つの傾向別グラ
10
60 61
63
56
54
56
47 48
45
46
42 44
38
49
42
39
35
45
36
29
25
34
30
25
20
35
31
2221
17
22
17
14
28
26
26
22
22
21
2119
20
18
1819 17
17 16
16
16
15 16 16
15
1414 14 13
14
5
7
5
3 43
この中にはない
パフォーマンス
茶道
オペラ
書道
彫刻
華道
建築
歌舞伎・能・狂
言
工芸
ダンス
デザイン
写真
ミュージカル
演劇・芝居
絵画
音楽
フを掲載した。
0
20代
30代
40代
50代/60代
67
4
③熟年層からの人気が高い「絵画」「「工芸」「歌舞伎」「書道」
上の年代に関心が高いアート、カルチャー
中高年層からの支持が高いのは、「絵画」「工芸」「歌舞伎・能・狂言」「華
80
％
道」「書道」である。「絵画」以外は、日本の伝統文化が並んでいる。
「絵画」の人気は今期挙げた 16 種のアート、カルチャーの中で 2 位であり、
60
すべての年代から支持されているが、高年齢になるほど、さらに支持率が
50
上がることが特徴である。
40
日本の伝統文化系統は、50 代以上の支持率は 30％前後だが、40 代以
30
下になると 20％前後に下がる。
20代
30代
40代
50代/60代
72
70
63
54
56
35
31
28
22 21
17
20
17
21
22
19
17
16
14
26
15 16
10
「建築」などである。仮に現在の 20 代が今の関心の対象をそのまま持ち
60
続けるとしたら、これらのアート、カルチャー分野は、今後、よりさかんにな
50
があることが興味深い。
書道
対して、比較的若年層ほど支持が高いのは、「写真」「デザイン」「ダンス」
70
に対し、複製が容易であり、大量生産にも適用されるという対照的な特徴
華道
80
史の浅い分野であり、なおかつ、「絵画」「工芸」が一点物という感覚なの
歌舞伎・能・狂
言
若い年代に関心が高いアート、カルチャー
④若年層からの支持が高い「写真」「デザイン」「ダンス」「建築」
っていくと予想される。特に、「写真」「デザイン」は芸術としては比較的歴
工芸
絵画
0
％
20代
30代
40代
50代/60代
49
45
42
39
40
35
36
34
30
29
30
25
26
25
20
22
20
20
16
14
10
5
7
パフォーマン
ス
建築
ダンス
デザイン
写真
0
17
5
２）アートジャンルの人気№１は「印象派絵画」
好きなアートジャンル（全体）
％
70
次にご紹介するのは、各アートジャンルへの好感度である。
62
60
60
古典的芸術から現代アートまで、様々な分野の芸術について、「知らな
55
50
46
50
い」「好き」「まあ好き」「どちらともいえない」「やや嫌い」「嫌い」の 6 段階で
45
41
40
尋ね、「好き」＋「まあ好き」の全体に占める割合を好感度とした。
39
39
30
調査対象は右グラフに挙げた 13 項目である。
20
13
12
11
バウハウス
コンセプチュアルアート
インスタレーション
20
10
パフォーマンス
日本の洋画
抽象絵画
アールデコ
アールヌーヴォー
業ベースにのって成長した近年のアート。
コンピュータグラフィック
4 位「映像・ビデオアート」、5 位「コンピュータグラフィック」は、いずれも商
映像・ビデオアート
以前の西洋絵画」（60％）と西洋の古典が続き、3 位に「日本画」が入る。
日本画
全体でもっとも好感度が高いのは「印象派絵画」（62％）、次に「19 世紀
1 9 世紀以前の西洋絵画
0
右上のグラフは、全体集計の結果である。
印象派絵画
①全体傾向
最も現代的なアートの支持率は低くなっている。
②年代別傾向
アート、カルチャーのように、「熟年好み」と「若年好み」の傾向を明確に分
類できなかった。
80
60
50
るほど高くなっている。また、「印象派絵画」も高年齢層の支持が高い。
40
その他に目立つのは、残念ながらこの調査からでは理由は不明だが、40
30
代の「アールヌーボー」「アールデコ」への支持が特異的に高いこと。また、
20
53 51
60
56
53
52
5050 48 48
43 43
20代
30代
40代
50代/60代
42
57
56
52
48
46
47
41
43
35
43
40 4139 41
36
30
29
26
24 21
19
16
14121312
17
16
111111
10
9 811
インスタレーション
コンセプチュアルアート
バウハウス
パフォーマンス
日本の洋画
抽象絵画
アールデコ
アールヌーヴォー
コンピュータグラフィック
映像・ビデオアート
日本画
0
1 9 世紀以前の西洋絵画
あるという見方もできる。
71
65 65
印象派絵画
代と比較して若干高く、今後、若い世代を中心に、定着していく可能性が
73 71
70
しいて言えば、「日本の洋画」「日本画」への支持率は、ほぼ年代が上が
現代アートに関しては、全体の支持率は 1 割強だが、20 代の支持が他年
好きなアートジャンル（年代別）
％
6
４．考察
一般に、文化への関心は、時間とお金に余裕のある中高年層が高く、若年層は
あまり文化的ではないと考えられているが、本当にそうであろうか？今回の調査
結果から、若年層の文化への関心が低いというわけではなく、関心の対象が中
高年層と違うだけで、文化的なものへの興味はけっして低くないことがわかっ
た。
関心のあるアート＆カルチャー回答率累計
％
600
513
503
473
467
500
400
300
200
100
5 0代 / 6 0代
4 0代
0
3 0代
2 0代
右の２つのグラフは、「関心のあるアートとカルチャー」と「好きなアートジャンル」
への回答率を年代別に合計したものである。
この２つを比較すると、「関心のあるアート＆カルチャー」の累計は、年代差がほ
とんどないのに対して、「好きなアートジャンル」の累計は、40～60 代が 530％前
後に対し、20～30 代が 450％前後。若年層で「興味がある」と回答した割合が
「15％減」となっている。
この要因は、「アート＆カルチャー」の項目が、「音楽」「写真」「デザイン」「ダン
ス」「建築」など、幅広いカルチャー分野を含めたのに対し、「好きなアートジャン
ル」の項目は、「絵画」や美術品などに絞ったためと考えられる。
好きなアートジャンル回答率累計
これらの結果から、「アート」に限定して見ると、若年層の文化的なものへの関心
度が熟年層に比較して低いように思われるが、それは対象を絞って考えた結果
であることがわかる。文化の範疇を「アート＆カルチャー」の項目のように、より幅
広く捉えるならば、若年層も文化とは疎遠にはなっていない。
％
533
600
454
500
535
446
400
日本女性、特に若い世代と文化との関わりは、質的には変化をしながら、関心
の高さとしては、変わっていないと推測する。
300
200
5 0代 / 6 0代
4 0代
0
3 0代
今回の調査から、「若年から熟年まで、ほとんどの女性にとって、アート＆カル
チャーは、深い興味・関心の対象である」ということが言える。
100
2 0代
さらに、「関心がある」と回答した項目数は、一人当たり、「関心のあるアート＆カ
ルチャー」は 16 項目中 4.85 個、「アートジャンル」は 13 項目中 4.93 個（全年代
平均）。興味の対象として、それぞれ 5 個前後の項目が選ばれている。
7

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