4 9 都 市 科 学 研 究 第 2号 2008 〈都市研究報告〉 フランスの都市計画と持続可能な発展 FrenchUrbanP l a n n i n gandS u s t a i n a b l eDevelopment ベルナール・マルシャン1) B e r n a r dMARCHANDJ) 西国奈保子 2) ・羽員正美 3) 訳 仕a n s l a t i o n :NahokoNISHIDN), MasamiHAGAI) 3 要 約 持続可能な発展というヴ、ィジョンは、社会的公正、経済的発展および環境保護という 3つの基本的な目標を束ね たものである。フランスの都市計画においては、過去 30年の一連の法律が、こうした持続可能な発展にかかわる 目標に取り組んできている。もっとも重要なのは、 2000年の SRU法(都市連帯再生法)である。この法律は、大 都市における公共交通や自転車が果たす役割を拡大しようとするものである。またそれは、大気汚染と闘い、廉 価な社会住宅の建設に 20%の最低基準を課し、さらに多くの地域計画の一貫性を確保するために包括的な枠組み (SCOT:広域統合スキーム)を創設した。しかしながら主要な問題は、国家(中央政府)と大都市圏とのあいだで、 依然、利害の衝突があることである。すなわち、一方で、国家が国富のほぼ半分を租税というかたちで徴収し、遠 隔の生産性の低い農村地域にその大部分を移譲し、他方で、国富のほとんどを生産している大都市圏では、その地 域が必要とする都市施設整備のための財源が不足しているということである。 キーワード:持続可能な発展、都市計画、社会住宅、大気汚染、自転車、公共交通、地域計画の一貫性 A b s t r a c t S u s t a i n a b l edev e 10pmentcombinest h r e eb a s i cg o a l ss o c i a lj u s t i c e, economicdevelopmentande n v i r o n m e n t a lp r o t e c t i o n .A 0y e a r s .Th emosti m p o r t a n t , byf a r , i s s e r i e so fl a w shast r i e dandi n t r o d u c e ds u s t a i n a b l eg o a l si nFrenchurbanp l a n n i n gs i n c e3 出eSRUL a w( 2 0 0 0 ) .I t 凶e sandi n c r e a s e st h er o l eo fp u b l i ct r a n s p o r t a t i o nando ft h eb i c y c l ei nb i gc i t i e s .I tf i g h t sa i rp o l l u t i o n, i m p o s e sa20%t h r e s h o l do fcheapS o c i a 1Housingandc r e a t e sag l o ba 1Scheme(SCO司 i no r d e rt oi n s u r et h ec o h e r e n c eo ft h e 1plans.τnemainproblem,however , r e m a i n st h ec o n f l i c t so fi n t e r e s tbetweent h en a t i o na 1S t a t e, onones i d e, which manyl o ca p e r c e i v e s, t h r o u g ht a x e s, a 1 mo s tha 1 fo ft h en a t i o na 1wealthandt r a n s f e r sal a r g ep o r t i o no fi tt oremoter u r a lr e g i o n sw i t hlow ont h eo t h e rs i d e, t h eb i gu r b a na g g l o m e r a t i o n s, whichp r o d u c emosto ft h en a t i o n a lwea 1 t hb u tl a c kr e s o u r c e s p r o d u c t i v i t yand, f o rt h e i rn e c e s s a r ye q u i p m e n t s . Urbanp l a n n i n g, S o c i a lh o u s i n g, A i rp o l l u t i o n, B i c y c l e, P u b l i ct r a n s p o r t a t i o n, R e g i o n a l KeyWords:S u s t a i n a b l edevelopment, p l a n n i n gcoherence Un i v e r s i t yo fPari吋, E c o l eN a t i o n a l ed e sT r a v a u xPub l i c sd eI 'E t a t F a c u l t yo fC o n t e m p o r a r yL a w, T o 匂oK e i z a iUn i v e r s i t y 3 ) 首都大学東京都市環境科学研究科 G r a d u a t eS c h o o lo fU r b a nE n v i r o n m e n t a lS c i e n c e s , T o k y oMe 廿u p o l i t a nU n i v e r s i t y 1 ) パリ第 8大学名誉教授、国立リヨン公土木学校 2 ) 東京経済大学現代法学部 都市科学研究第2 号 2 0 0 8 5 0 1 . 社会的公正:低廉住宅の建設と住民の はじめに 多様性の確保 持続可能な発展は、フランスでは 3つの基本的な目標 すべての大都市がそうであるように、フランスの大都 を束ねるものとして定義されてきた。その 3つの目標とは、 市における地価は高騰している(例を挙げると、パリ市で 社会的公正、経済的発展および環境保護である。このよ は 1mあたり約 7 , 0 0 0ユーロ =112万円)。そうした高い地 うな目標は、廉価な住宅の不足、社会的隔離、大気汚染、 価が、貧困世帯や若年世帯を大都市から遠方の郊外に追 交通渋滞といった一般的問題に苦しむ大都市では、とり 8 ) )。こうした社会的分化は、北アフリ い立てている(注 ( わけ実現困難なものである。それほど言及されてこなかっ 0年 カや中央アフリカからの移民の増加によって、ここ 3 たことだがもっとも重大な問題のひとつは、何百万もの で、いっそう悪化している。彼らは、通常貧しく、未熟練で、 住民と何千もの独立した行政単位をもっ広大な地域の管 人種差別的方法で移民を扱う傾向にあるフランス社会に , 1 0 0 理運営である。パリ都市圏(イル・ド・フランス州)は、 1 十分に統合されていない。社会的民族的ゲットーの形成 万人の住民を擁し、 1 , 3 0 0あまりの互いにきわめて異なっ は、まぎれもなく都市の今後の発展を脅かす危機となる。 たコミューヌ(基礎自治体)を抱えている。パリ市自体は 1 9 1 0年以来、フランスの歴代政府は、廉価な集合住宅 巨大都市 ( 2 1 0万人)であるが、多くのコミューヌはきわめ を提供するための社会住宅政策に努めてきた。この社会 て小規模で農村である。 住宅とは、低廉住宅 ( HBM)、1 9 4 6年以後は適正家賃住 9 7 0 フランスにおける環境に対する関心の高まりは、 1 HLM)( 注( 9 ) )と呼ばれるもので、主として公的資金 宅 ( 年代に始まる。しかし、中央政府と大資本との対立や、 1 0 ) )により提供された。それらの社会住宅は、主と ( 注( 都市経営と都市計画へのそれらの影響が、数世紀にわたっ して農村部から都市に流入するフランス人の移住者(離村 て猛威を振るっている。これらは、都市の持続可能性に 農民)を念頭においており、今日的状況に照らせば貧しい も重要な影響をもたらしている。 外国人移民の資力に対応するものではない。つまり社会 フランスの法は、 1 9 1 9年(コルニュデ' ( C o r n u d e t )法)( 注 住宅にかかわる制度は、現在、もはや貧困家庭の必要に 0年間の一連 (1))以来土地利用を制御してきたが、ここ 2 応えるものとはなっていない。ちなみに、 HLMの借家人 の都市計画関連の法律は、抜本的に都市計画のプロセス の 80%は貧しくはなしそのうえ、貧困世帯の 3分の 2は を変化させてきた。 HLMに居住していないのである。 1990年における HLM ・ロティ ( L O T I )法(注 ( 2 ) )1 9 8 2年:交通計画 (PDU( 注 。))を創設) 居住者の 3分の lは外国人で、その半数は北アフリカの出 身である。 ・ロール ( LAURE)法(注(の) 1 9 9 6年 :PDUを義務化 最悪なことに、全社会住宅のうち 51%の建物は、フラ C h e v e n e m e n t )法(注 ( 5 ) ) 1 9 9 9年: .シュヴェーヌマン ( . 5 %に集中している。言い ンスの全コミューヌのうちの 8 中核的都市をコアにしてコミューヌを再編成し包括 換えれば、社会住宅のほとんどは大都市周辺の貧しい郊 的な交通計画を体系化 外に位置している。社会的・民族的ゲットーの危険性は V o y n e t )法(注(め) 1 9 9 9年:環境保護の強 ・ヴォワネ ( 化 明らかである。スウェーデン同様、自らの社会に移民を 統合しようとする国であるフランスでは、とくに慎重に 'SRU法(注 (η) 2000年:8 0年間でもっとも重要な計 画法 扱うべきであろう。ここに、民族的ゲットーを容認し助 長さえしている英国や米国といったアングロサクソン系 2 0 0 0年に至るまで、都市計画は主として近隣地区で立 案・策定され、後に都市レベルで同様に立案・策定され の政策とのあいだに大きな相違がみられる。 SRU法は一般によく知られるようになった施策(第 5 5 てきた。 SRU 法では、複数の地域都市計画のあいだ、での 条)を含んでいる。それは、人口が 5万人以上の都市圏に 一貫性を確保するために、都市計画を構想する範囲が都 おいて一定規模 ( 3 ∞ ,0人、イル・ド・フランスでは1,500 市圏全域にまで拡大された。これらの各種の法は、 3つの 人)の人口を擁するすべてのコミューヌは、住宅ストック 主要な課題一一社会的公正を実現すること、適切な交通 の少なくとも 20%を社会住宅として提供しなければなら システムと環境保護とを束ねること、地域的な一貫性を ないとするものである。 2 0年当時、この基準からみで 確保すること 0 0でーあった。しかし、こ かかわりのあるコミューヌ数は 8 に取り組むものである。 ∞ フランスの都市計画と持続可能な発展 5 1 のうち 7 4 0のコミューヌにおける社会住宅のストックは 負担すれば(年間 2 9ユーロ)、どのレンタルスポットから 20%未満であった。結果として、全体で 4 1万 4 , 0 0 0戸の でも自転車を借り、 3 0分間は無料で利用し、別のスポッ 0 2 0年までに全体 社会住宅が不足していた。 SRU法は、 2 0分を超過する場合は、 トに自転車を返す権利をもっ。 3 5万戸を調達するために、毎年約 2万 2 , 0 0 0戸の社会住 で4 割り増し料金で請求されるため、自転車は短距離の移動 宅を建設することを目標に定めている。パリ地域だけで に有効である。パリには、現在約 1 , 0 0 0のレンタルスポッ 約3 0万世帯が社会住宅に入居を希望している。 トがあり ( 3 0 0 m毎に)、 1 万台の自転車がある。 2 0 0 7年末 この施策は非常に大きな混乱を引き起こしている。左 には 2万台になる予定である。この試みは大きな成功を 派政党は大変好意的にこれを評価し(左派一一社会主義 0人の異なる人々 収めている。各自転車は毎日平均して 1 者と共産主義者一ーが多数を占めていたときにこの法律 に利用されているのである。郊外の基礎自治体(コミュー は成立した)、右派はこれに強く反対した。 2 0%の水準を ヌ)もこうした先駆的取り組みに倣おうとしているが、 2 下回るコミューヌは課徴金を支払わなければならない(不 つの課題が浮上している。ひとつの課題は、移動距離が 件につき毎年 1 5 2ユーロ)。豊かな郊外のコミュー 足住戸 1 大きくなる低密度市街地で自転車の利用を促進すること ヌのなかには、この法律を遵守するのを拒否し、課徴金 が困難で、あること、いまひとつは、巨大な都市圏を形成 を支払うほうを選ぶと発表した首長もいる。右派が政権 する多様なコミューヌ聞での調整の欠落である。いずれ 0 0 2年以降は、第 5 5条の規定を緩和するた を取り戻した 2 にしても、ヴェリブは、持続可能な都市の発展に向けた めにさまざまな修正案が提示されている。だが、大変興 大きな進歩を意味している。 5条の削除を提案した人はいない。一 味深いことに、第 5 法 ( 2 0 0 0年)は、都市交通計画 =PDU( 注 また、 SRU 方で郊外は、交通と公害問題を増大させながら成長し続 ( 1 1 ) )を強化することによって都市における交通計画の効 けている。 率性を高めてきた。 1 9 7 0年代の目標は、都市における交 通をより円滑にすることであり、それゆえに自動車優位 であった。しかし、エコロジー運動の発展と交通渋滞の 2 . 突通と持続可能性 深刻化は優先順位の転換を促すことになった。新しい法 交通問題は、 3 0年前から 2つの一般的傾向を伴って深 律 ( LOTI 、1 9 8 2年)は、 PDUという手法を創設したが、 刻の度を増している。ひとつは、自動車の席巻、いまひ 1 9 9 6年には LAURE法の制定に伴って 1 0万人以上の都 とつは、郊外への人口の集積とそこでの戸建て住宅の増 市圏でその策定が義務づけられた。この交通計画の主要 加である。計画当局は、長年にわたって都市のスプロー な目的は、自動車交通の削減、公共交通とそのほかの無 ル現象による危機を認識してきた。彼らは近年、低密度 公害方式(徒歩や自転車による移動)の開発、駐車スペー ∞ によるコストを認識しはじめている。 2 6年、パリ市長が、 スの整備と商品の輸送を円滑にすること、自動車の相乗 都市部の一定地区のなかで高層建築を認可するために建 りの促進である。残念なことに、 PDUはコミューヌ内部 築基準を変更することを提案した。彼は激しい反対を前 つの異なる PDU で作成され、例えばニース都市圏では 4 に企画を断念した。世論は高密度の居住形態に反発して がみられたように、コミューヌ間での一貫性を確保でき おり、いまだ戸建て住宅に住む夢をあきらめる準備がで なかった。これに対し、 SRU法は、 PDUの果たす役割 きていないのである。人々は都心から相当に遠く離れた をより大きなものにしている。例えば、交通手段を整備 田園地帯にある農村に転居し、かつ、都市で働き続けな しなければならないし、公共交通機関は、都市圏におい がら、質の高い公共サービスと円滑な交通システムを要 て単一共通の乗車券システムを構築しなければならなく 求し続けている。残念なことに、そうした選択に伴うコ なった。このプランは、交通計画全体の一貫性を確保す ストについてはっきりと明確に説明する人はいまだあら るために SCOT(広域統合スキーム)に盛り込まれなけ われていない。 ればならない。 パリ市自体の内部では、リヨン市の例に倣って「ヴェリ この法律 ( SRU法)は、異なる計画聞の垂直的統合を定 V e l i b )と呼ばれる興味深い試みを始めている。自転 ブJ ( めるものである。つまり、都市計画ローカルフ。ラン ( P L U ) 車の活用を促す公共サービスが、地方自治体と民間の広 は、より広域的な PDUと両立していなければならないし、 告会社によって生み出されたのである。安価な登録料を PDUは包括的な SCOTと整合するものでなければならない。 5 2 都市科学研究第2 号 2 0 0 8 をさらに遠方に推し進め、歯止めをかけることを期待さ 3 . 広域的一貫性:巨大で細分化された大 都市地域の管理運営 , 0 0 0のコミューヌは最初から 15km区 批判である。 2万 4 計画に一貫性を確保するためのこのような取り組み 域に包含されていた。その後、この手法は実質的に緩和 は 、 SRU法によって実現された重要な進歩のあかしであ されている。つまり、抜け道がつけられ、関係する都市 る。これは典型的なフランスの問題であるが、この国は、 の規模は人口 5万人にまで引き上げられた。関係するコ 1 7 9 1年につくられた約 3万 6, 0 0 0ものコミューヌを依然と ミューヌの数は、主として大都市周辺と海岸沿いで、 1万 0 0年の聞の農民の都市部への大量流 して擁している。 2 5, 000にまで削減されたのである。 出は多くのコミューヌを過疎化させ、巨大な都市を生み れた都市のスプロール現象の拡大をさらに進めるという 都市中心部周辺の広い領域の計画を体系化しようとす 出したが、他方で行政区画は事実上変更されていない。 3 、 SRU法のなかでも、おそらくもっとも興味 るSCOTは 万を超えるコミューヌの人口は 1 , 0 0 0人未満であり、存続 0 0 5年 1月時点で、 1万のコ 深い施策のひとつである。 2 可能な行政団体ではない。しかしながら、今日までいか ミューヌと約 2 , 5 0 0万人の住民が関係する 2 1 9の SCOTが なる政権もそれらをあえて廃止しようとはしてこなかっ 策定されている。 残念なことに、 SCOTは2つの異なる手段によって形 た 。 9 9年)は、より大きく、行財政 シュヴェーヌマン法(19 骸化されつつある。 能力のある行政単位を形成するために、コミューヌ共同 第一に、農村部のコミューヌは、通常、隣接する都 体、都市圏共同体、大都市圏共同体といった制度を設け 市の影響を懸念している。多くのコミューヌは環状の ている。したがって、いまや 2つの行政階層構造 SCOT い制度と新しい制度 古 が併存するに至っている。ただ 互いに距離を保ち続けたものやコアとなる コミューヌと共同することを拒んだもの一ーを策定した。 し、持続可能な計画という観点からみると、この状況は これは、少なくとも真の SCOTの理念に、文字通りの意 かなり混沌とした状況を生みだした。そこで SRU法は、 味ではないにせよ反している。 それぞれが個別に計画を策定していた複数のコミューヌ , 3 0 0のさまざまなコミューヌからなるパリ都 第二に、 1 をまとめるための非常に重要な枠組みを制度化したので 市圏は、何にもまして、包括的で一貫した枠組みを必要 注( 1 2 ) )である。 ある。それが、広域統合スキーム =SCOT( とする。しかし国は、どんな SCOTもパリを中心とする この枠組みは、二重の統合を体系化するものである。 区域にはつくらないこととしている。こうした国の政策 つまり、垂直的には、地域住宅プログラム (PLH)、地域 判断は決定的に重大な意味をもっている。なぜならそれ 商業計画 (SDUC)、都市交通計画 (PDU)、持続可能な発 は、細分化された都市圏を維持し、パリにおける持続可 注( 1 3 ) )等は、 SCOTと両立することが 展計画 (PADD)( 能な発展に資するような都市計画をより困難にするだけ 求められる。また水平的には、それぞれの独自計画を互 でなく、より根本的には、巨大な首都と強い中央集権国 いに両立させることができるように、都市周辺の異なる 家との関係はどのようにあるべきか、という基本的な問 コミューヌどうしは連携し、調整を行うことが求められる。 いをわれわれに投げかけるものだからである。 SCOTを策定するようにコミューヌを促すために、法 律は r15kmルール」を規定している。これは、 SCOT がない場合、都市(人口 1万 5 , 0 0 0人以上を有する)から 結論 15km未満または海岸から 15km未満の距離に位置するコ フランスにおける過去 2 0年の都市の持続可能な発展に ミューヌは、新市街地の開発は認められないというもの 資するような計画づくりは、近隣地区レベルから都市レ である。言い換えれば、都市中心部(および海岸沿い)の ベルへと、そして SRU法によって、人口集積地域とその 周辺 15km半径内の開発は、無計画な成長を避け、環境 周辺の農村部を含む地域レベルへと発展してきた。この を保護するために、凍結されるのである。 ことは、計画担当当局がますます多くの責任と権限を担 この施策は、 2つの理由で強く批判されている。ひとつ うべきだという意味を含んでいる。こうして巨大都市は、 は、市街地のなかで地価を上昇させるかもしれないこと、 数世紀にわたって、ほとんどの権限とほとんどの資源を いまひとつは、結局は不可抗的なものとして郊外の開発 その手に集中させている国家と対立するようになるので フランスの都市計画と持続可能な発展 ある。 5 3 付記 本稿は、 G r a d u a t eS c h o o lo fU r b a nE n v i r o n m e n t a 1S c i e n c e s, 大都市の無限の成長、地域運動の発展、およびヨーロッ To 匂oM 出 o p o l i 回 U n i v e r s i t y “ ,P r o c e e d i n go ft h eI n t e r n a t i o n a l パ連合の誕生は、上と下から国家を弱体化することに貢 p p .4 4 4 9 . Symposiumo nS u s t a i n a b l eU r b a nE n v i r o n m e n t2 0 0 7 ", 献してきた。持続可能な都市の発展に資するような都市 の翻訳である。 計画は、巨大都市が、その膨大な都市問題を解決するた めに莫大な資源を利用できる場合には可能であるが、そ れは国家を弱体化することになるだろう。 注 1)フランスでは通常、法律は、法律の名称の頭文字か、または フランスの税制と国土計画にかかわる政策は、大都市 国会でそれを提出した政治家の名前によって識別されている。 圏の富を吸収し、主に補助金で存続する小都市や農村と 2 )L O T I :L oi d ' l 仇宮' ( J n i s a t i ωd e 宮T r a n s p o r t sI n t e r i e u r s国内交通の いった残りの国土にそれを再分配するものである。具体 的には、主要な 8大都市圏の税収で、国家予算の 75%以 9 9 5年には、 2 2の 上を賄っているのである。ちなみに、 1 州のうち 1 9の州は、国庫に納めるよりも多くを固から受 け取っている(公務員の給料、公共投資、各種の補助金 9州への財政調整の原資を負担し、 など)。残る 3つの州が 1 このうちイル・ド・フランス州はこれらの補助金につい てみると、その 95%を支払っている。こうした各種補助 金に相当する財政移転は、社会的理由によって正当化さ れてきている。しかし、それらはまさに国家権力の基礎 を構成するものでもある。 この方式は、 2つの主要な理由で、持続可能な発展に 資するような都市計画にとっておそらく有害である。そ の理由は次の点にある。 ' 生の高い人口集積地帯から生産性の低い 第一に、生産1 , 9 8 2年 1 2月 3 0日 1 9 8 2年 1 2月 3 0 方向づけに関する法律 1 日 3 ) PDU:P l a nd eD e p l a c e m e n t sU r b a i 俗都市交通計画 4 ) LAURE:Lo i s u rl ' Ai re tI ' U t i l i s a t i o nR a t i o n n e l l ed e1 包z e r g i e大 気とエネルギーの効率的利用に関する法律、 1 9 9 6年 1 2月 3 1 日 5 ) 市町村間協力の強化と簡易単純化に関する法律、 1 9 9 7年 7月 1 2日 6 ) 1βADDT: 国土の持続可能な開発と計画に関する法律、 1 9 9 9 年 6月 2 5日 7 )S R U :S o l i d a r i t ee tR e n o u v e l l e m e n tU r b a i n 都市の連帯と再生 に関する法律 8 ) 米国モデルに反して、フランスでは通常、都市中心部に比べ て郊外はより貧しい。 9 ) 低廉住宅 (HBM:H a b i t a t i o n saBonM a r c h e ) は、その後、適 a b i t a t i o n saLo y e rM o d e r e ) 正家賃住宅 (HLM:H 1 0 )フランスにおける社会住宅戸数は約 4 ω 万戸で全体の 18%を , 2 0 0万人が居住している。 占め、約 1 1 1 )P l a nd eD e p l a c e m e n t sU r b a i n s :都市交通計画。この計画は、そ 地域に向けて巨大な資金の流れを導くことは、十分な経 のプロジェクトの費用の半額を支援する都市圏内の州によっ 済的効果を実現する最適な方法ではないであろうという て承認されなければならない。 ことである。 第二に、都市圏およびとくにその郊外地帯一一若年夫 婦が住み、働き、税金を納め、子どもをかかえているも のの、多くの都市施設が不足しているーーは、その資源 1 2 )SCOT:S c h e m ad eC o h e r e n c eT e r r i t o r i a l e広域統合スキーム 1 3 )PADD:P r o J 切s d ' Am e n a g e m e n te td eD e v e l o p p e m e n tD u r a b l e空 間整備と持続可能な発展の構想 1 4 ) U ←d争 France: パリ地域圏全体を包含する州(レジオン)のひ とつ の大部分を持ち去られる場合、持続可能な都市の発展に 資するような計画づくりがほとんど不可能になるという ことである。 参考文献 2 0 0 2,D e v e l o p p e m e n td u r a b l e,U r b a n i s m e,N o . 3 2 4,m a i j u i n2 0 0 2, p p . 3 7 6 6 . 1 9 8 4年、時の内務大臣は重要な地方分権化法案を提出 した際、州住民による州知事の直接公選をミッテラン大 統領が拒んできた理由を次のように説明した。「考えて 1 4 ) )の知事は、 みてください。イル・ド・フランス州(注 ( 首相よりも大きな力を持つでしょう!J ここに、一言で言えば、フランスにおける都市の持続 可能な発展にかかわる問題が集約されている。 1 ρ iSRU, D i a g o n a l , N o . 1 5 5, m a i j u i n2 0 0 2, p p . 14 2 1 . 2 0 0 2, C a i l l a u dM &A u b e r tB,2 0 0 2,LaLoiSRUe n9 0q u e s t i o n s,EdLe M o n i t e u r , p . 1 8 0 . 句:// w w w . a u r g . o r g / s u r / s u r . h 加 h h t t p : / / w w w . a u r g . o r g /s u r / s u r _ h a b i t a . t p d f ゆ:// w w w 2 . l ogemen . t g o u v : 企 / a c t u / l o i _ s r u / d e f a u l . t h 加 h t A s c h e rFe ta l i i,2 0 0 2,L e sd e b a ss u rl av i l l e,E d i t i o n sC o n f l u e n c e, P a r i s 0 0 2,Dut r a n s p o r td e sm a r c h a n d i s e se nv i l l e"l a R o i t h i e rJ L,2 l o g i s t i q u eu r b a i , 担2 0 0 1p l u s, N o . 5 9, p . 6 5 . 5 4 都 市 科 学 研 究 第2号 2 0 0 8 2 0 0 3, L e 宮s c h e m a sd ec o h e r e n c et e r r i t o r i a ld el al o iSRU, T r a v o r eS, L ' Harma 仕組. He 1 l u i n] J ,2 0 0 6, L e se f f e t sdel a“ r e g l ed e s1 5km"s u rl amai 凶s e ∞ le t a l e m e n tu r b a i n, E t u d e sf o n c i e r e s , N o . 1 2 0, mfm トa v r i l 2 6, de' p p . 2 8 3 3 . 著者略歴 ベルナール・マルシャン ( B e r n a r dMARCHAND) 1 9 7 7年 、 0 パリ大学で地理学の博士号を取得。 2 5年間、パリ第 8大学都 市計画研究所で教鞭をとり、諸外国の大学一一米国(ペンシ lA)、カナダ(ト ルヴァニア大学、ノースウエスタン大学、 UC ロント大学)、ヴェネズエラ (UCV)、ブラジル(リオデジャ ネイロ大学)、ドイツ(ベルリン工科大学)、イタリア(ミラ ノ理工科大学)、タイ(シラパコーン大学) においても数 年間教鞭をとった。都市の歴史、都市のモデル化、コンビュー ター・シミュレーションに取り組む。
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