MRSA血 液由来株における病原因子の検討

788
第71回 日本 感染 症学 会総 会学 術講 演会座 長推 薦論 文
MRSA血
液 由来 株 にお け る病 原 因子 の検 討
国立 療 養 所長 崎 病 院 内科1),佐 世 保 市立 総 合 病 院 内科2),検 査 科3),長 崎 大 学 医学 部 第2内 科4)
水 兼
隆 介1)中
富
浅 井
貞 宏2)猿
渡 克 比 孔3)平
朝 野
和 典4)河
野
Key
昌 夫1)夫
淳
崎
繁 文4)
洋 一4)前
受 付)
(平成10年4月28日
受 理)
words:
MRSA,
toxic
toxin-1,
enterotoxin
shock
syndrome
旨
キ シ ッ ク シ ョ ッ ク シ ン ドロ ー ム トキ シ ン-1(TSST-1)
重 要 で あ り,こ れ ら の トキ シ ン が 細 菌 性 シ ョ ッ ク や トキ シ ッ ク シ ョ ッ ク な
ど の病 態 に関 与 す る と報 告 さ れ て い る.我
々 は1994年 か ら1996年 まで に 佐 世 保 市 立 総 合 病 院 で 分 離 さ れ
701株 に つ い て, TSST-1とSEの
全MRSAの67%がTSST-1ま
の88%が
潤2)
(平成10年2月9日
黄 色 ブ ドウ 球 菌 の 産 生 す る病 原 因 子 と して,ト
た 全MRSA
木
茂4)
要
と エ ン テ ロ トキ シ ン(SE)は
津 木 要 二2)荒
た はSE産
産 生 お よ び コア グ ラ ー ゼ 型 を検 討 した .
生(以 下 トキ シ ン産 生)株 で あ る の に 対 し,血 液 由 来MRSA
トキ シ ン を 産 生 し て い た.ま た,全MRSAの45%がTSST-1とSEのC型
血 液 由 来 株 で は69%で
高 く(p<0.05),ま
今 回,MRSA病
あ っ た.血
を産 生 し て い た が,
液 由 来 株 に お け る トキ シ ン産 生 の頻 度 は尿,咽
た,TSST-1とSECの
頭 由 来 株 に比 べ 有 意 に
産 生 頻 度 は 咽 頭 由来 株 に 比 べ 有 意 に高 か っ た(p<0
原 因 子 を検 討 す る こ と に よ っ て, MRSA感
.05).
染 症 の 予 防,治 療 に お い て 有 力 な情 報 が 得
られ る こ とが 示 唆 さ れ た.
序
文
起 こ す 耐 性 黄 色 ブ ドウ 球 菌 で あ る が,一
細 菌 感 染 症 の難 治 化 に 関与 す る細 菌 側 の 因 子 と
MRSAの
般 に,
多 くが こ れ ら の トキ シ ン を産 生 す る こ
して は,感 染 症 の 発 症 や そ の後 の 病 状 の進 展 に関
とか ら臨 床 上,血 液 由来 株 特 有 の病 原 因 子 は な い
与 す る病 原 性 す な わ ち病 原 因 子 と,感 染 症 の 治 療
と も い わ れ て い る4).
の 中 心 とな る化 学 療 法 に対 す る薬 剤 耐 性 が 考 え ら
我々 は 佐 世 保 市 立 総 合 病 院 で 分 離 さ れ た
れ る.黄 色 ブ ドウ球 菌 の産 生 す る病 原 因 子 と して,
MRSAの
病 原 因 子 を調 査 し,血 液 由来 株 に お け る
外 毒 素 で あ る トキ シ ッ ク シ ョ ッ ク シ ン ドロ ー ム ト
病 原 因 子 を再 検 討 し,他 材 検 体 由来 株 と トキ シ ン
キ シ ン とエ ン テ ロ トキ シ ン(以 下 トキ シ ン と総 称)
産 生 性 を比 較 した.
が あ り,こ れ らが 敗 血 症 お よ び細 菌 性 シ ョ ック な
ど の病 態 にお い て,重 要 な病 原 因 子 で あ る とす る
報 告 が 多 い1)∼3).一方,MRSAは
る患 者 か ら多 く分 離 され,と
基 礎 疾 患 を有 す
き に敗 血 症 を も引 き
材 料 お よび 方 法
菌 株:供
試 菌 株 は佐 世 保 市 立 総 合 病 院 にお い て
1994年 か ら1996年 ま で の3年
MRSAの
間 に分離 され た
全 株,701株 で,同 一 時期,同 一 患 者 か ら
得 られ た 同 一 検 体 か らの 分 離 株 は重 複 を 除 外 し
別 刷 請 求先:(〒850-8523)長
た.オ
崎 市桜 木 町6-41
国立 療 養 所 長崎 病 院 内科
水兼
隆介
キ サ シ リン の 最 小 発 育 阻止 濃 度(MIC)が
4μg/ml以 上 の黄 色 ブ ドウ球 菌 をMRSAと
感染症学雑誌
した .
第72巻 第8号
MRSA血
これ らの 菌 株 の 由来 検 体 別 のMRSA分
液 由来 株 の 病 原因 子 離 頃度,
Table
お よび 血 液 由 来 株 が 分 離 され た 症 例 の 基 礎 疾 患 と
感 染 経 路 を そ れ ぞ れTable
1とFig.1に
1
MRSA
789
Clinical
sources
and number
of isolates
of
in 1994-96
示 す.
感 染 経 路 の特 定 は基 礎 疾 患 お よ び 同一 個 体 よ り分
離 され た 同 一 型MRSAの
血液 以外 の分離箇 所 か
ら推 定 した.検 体 別 の病 原 因 子 の比 較 検 討 に は,
比 較 的,無 症 候 性 キ ャ リア ー か ら分 離 され る こ と
が 多 い 咽 頭 由来 株 と尿 由来 株 を選 ん だ.血 液 由来
株16株,咽
頭 由来 株39株,尿
由来 株32株 を 用 い た.
全 尿 由 来 株 は34株 で あ っ た が,血 液 由来 株 と トキ
シ ン産 生 とコ ア グ ラー ゼ タ イ プ が 同一 で,同 一 患
者 か ら,同 一 時期 に分 離 さ れ た 尿 由来 株2株
Fig.
1
Underlying
16 patients
は敗
disease
with MRSA
and infection
route
in
septicemia
血 症 の起 炎 菌 と同 一 株 とみ な し,除 外 した.
薬 剤 感 受 性:薬
MIC測
剤 感 受 性 試 験 は,NCCLSの
定 標 準 法(微 量 液 体 希 釈 法)に 従 い5),セ プ
タ ー テ ス トパ ネ ル(日 本 ベ ク トン デ ィキ ン ソ ン株
式 会 社)を
用 い て,測 定 を行 った.点 滴 用 抗 生 剤
で あ る ミノ サ イ ク リン,ア ル べ カ シ ン,ま た はバ
ン コマ イ シ ンが 臨 床 上,MRSA敗
用 さ れ る た め,こ
MRSAの
感 受 性 を調 べ 検 討 を加 え た.薬 剤 感 受 性
基 準 は ミノ サ イ ク リン がMIC
ベ カ シ ン はMIC
MIC
血 症 の 治 療 に使
れ ら の 薬 剤 に 対 す る血 液 由 来
Underlying
disease
2μg/ml以 下,ア ル
4μg/ml以 下,バ ン コマ イ シ ン は
1μg/ml以 下 を感 受 性 と した.
病 原 因 子 測 定:ト
キ シ ッ ク シ ョ ック シ ン ドロ ー
ム トキ シ ン-1,(以
下TSST-1)お
キ シ ンA,B,C,D,E(以
SED,SEE)の
よび エ ン テ ロ ト
下SEA,SEB,SEC,
産 生 は五 十 嵐,藤 川 らの 方 法 に従 っ
た6)7).供 試 菌 株 を5%血 漿 加 ブ レ イ ンハ ー トイ ン
フ ユー ジ ョ ン(BHI)液
Infection
route
体 培 地 に て24時 間 振 湯 培
養 後 の 遠 心 上 清 を10培 連 続 希 釈 し た.TSST-1は
検 出 用 キ ツ トで あ るTST-RPLA(デ
式 会 社)を,SEは
研)を
た.こ
ン カ生 研 株
同 じ くSET-RPLA(デ
乗 検 定 を用 いp<0.05を
結
ンカ 生
1.ト
用 い て 逆 受 身 ラ テ ッ ク ス凝 集 法 に て測 定 し
れ らTSST-1ま
た はSEの
少 な く と も一 つ
を産 生 す る株 を以 下,ト キ シ ン産 生 株 と表 記 す る.
キ シ ン産 生MRSAの
当 院 のMRSAト
移 を示 す.ト
液 体 培 地 に 接 種 し,6時
年66%,1996年60%で,年
球 菌 コ ア グ ラー ゼ型 別 用 免 疫 血 清(デ
ン カ生 研)
を用 い た凝 集 反 応 で 定 性 的 に判 定 した.
統 計:検 体 別 の病 原 因 子 の比 較 検 討 に は カ イ2
平 成10年8月20日
果
分 離 頻 度 と年 次 推
移
コ ア グ ラー ゼ 型 別 は 潮 田 ら の 方 法 に従 い8),BHI
間 培 養 後 の 上 清 を ブ ドウ
有 意 と判 定 した.
キ シ ン産 生 株 の 割 合 の 年 次 推
キ シ ン産 生 株 は1994年 が77%,1995
々 減 少 傾 向 に あ った が,
3年 間 の 平 均 の トキ シ ン産 生 株 は全 体 の67%を
め た.血 液 由来 株 で は88%が
占
トキ シ ン産 生 株 で,
有 意 差 は な い が 平 均 よ り多 い 傾 向 に あ った.
790 水兼
MRSAに
多 いTSST-1お
よ びSEC産
隆介 他
生 株 につ い
キ シ ン産 生 株 で わ け,そ の頻 度 を血 液 由 来 株 と比
て も検 討 した が,1994年 が50%,1995年44%,1996
較 した.血 液 株 は トキ シ ン産 生 株 が88%で
年38%で
に対 し,咽 頭 株 と尿 株 で は,そ れ ぞれ51%と56%
ほ ぼ 同様 の減 少 傾 向 を示 し,3年
均 が45%で
間 の平
あ った の に対 し,血 液 由 来 株 は69%で,
相 対 的 に平 均 値 よ り多 い傾 向 に あ っ た(Fig.2).
2.コ
ア グ ラ ー ゼ 型 の 分 離 頻 度 と年 次 推 移
つ ぎ に 当 院 のMRSAの
Table
コ ア グ ラーゼ 型 を
占 め て い るが,1996年
はII型
株 は減 少 傾 向 に あ りIII型,VII型 が 増 加 して い る.
血 液 由来 株 は16株 中1株
93.8%と
を除 い て はII型 で あ り,
な っ て いた.
また,TSST-1お
よ びSEC両
3A).
産 生 株 とそ れ 以 外
頭 株 は36%,尿
株 は50%で,血
対 し咽
液 株 は咽 頭 株 よ り
有 意 に 多 か っ た(p<0.05)(Table
3B).
4.血 液 由 来 株 と咽 頭,尿 由 来 株 の コ ア グ ラー ゼ
型 の比 較 検 討
さ ら に,コ ア グ ラー ゼ 型 に 関 し て も血 液 由 来 株
と咽 頭 拭 い 液 お よび 尿 由来 株 で比 較 検 討 した が,
3.血 液 由来 株 と咽 頭,尿 由 来 株 の トキ シ ン産 生
の比 較 検 討
MRSAキ
意 差 が あ っ た(p<0.05)(Table
の タ イ プ と も比 較 した が,血 液 株 が69%に
2に 示 した.コ ア グ ラ ー ゼII型 が 多 く,3年
間 の 集 計 で は87%を
で,有
あるの
血 液 株 は16株 中15株,咽
頭 株 は39株 中30株,尿
株
は32株 中24株 で,血 液 株 が 咽 頭 お よ び尿 由 来 株 よ
ャ リア ー か ら分 離 さ れ た 咽 頭 拭 い 液
と尿 路 系 か らの 分 離 検 体 を トキ シ ン産 生 株 と非 ト
り も,II型 株 が 多 い傾 向 に は あ った が,統 計 学 的
有 意 差 は 認 め られ な か った(Table
5.MRSA血
4).
液 由来 株 の薬 剤 感 受 性
ミノ サ イ ク リン,ア ル ベ カ シ ン,お よ びバ ン コ
Fig. 2
Frequency
of TSST-1 or/and enterotoxin
production (A), and that of TSST-1 and enterotoxin C production (B) by MRSA strains in
1994-1996.
94-96: total strains obtained from 1994 to 1996
マ イ シ ン の3剤
あ っ た.ミ
全 て に 感 受 性 の あ る株 は69%で
ノサ イ ク リ ン耐 性 で,ア ル ベ カ シ ン と
バ ン コ マ イ シ ン感 受 性 株 は25%に 認 め られ た .バ
ン コ マ イ シ ン 耐 性 株 の 出 現 は な か った(Fig.
3A).3剤
に対 す る感 受 性 に関 して は,全MRSA
菌株 で も検 討 した が,血 液 由 来 株 とほ ぼ 同 様 の薬
剤感 受 性 を 示 し,血 液 株 が 特 に耐 性 化 し て い る傾
向 は認 め られ な か っ た(Fig.3B).
考
MRSAが
察
血 液 か ら分 離 さ れ た16症 例 の 感 染 経
路 は静 脈 カ テ ー テ ル か らの侵 入 と経 気 道 感 染 が 多
く を 占 め て い た.基 礎 疾 患 と して は血 液 透 析 患 者
の慢 性 腎 不 全 が 多 く,つ い で 多 い のが 悪 性 疾 患 と
な っ て い る(Fig.1).分
Table 2
94-96:
NT:
total
strains
離 検 体 数 を比 較 す る と,
Coagulase type of MRSA in 1994-1996 (%)
of MRSA
in 1994-1996
nontypable
感染症学雑誌 第72巻 第8号
MRSA血
液 由来株 の病 原 因子
791
喀 痰 由 来 株 が 圧 倒 的 に多 く,当 院 の血 液 由 来 株 は
所 見 を 示 す 患 者 よ りTSST-1を
3年 間 で わ ず か16株 で あ り,検 体 別 で は尿 や 咽 頭
み を 産 生 す る ブ ド ウ 球 菌 が 分 離 さ れ る こ と か ら,
拭 い液 な ど に つ い で5番
SEもTSSの
しか し,Fig.1の
目 で あ った(Table
1).
よ う な基 礎 疾 患 を もつ患 者 が 敗
血 症 を ひ きお こす と致 死 的 転 帰 を とる こ とが あ る
産 生 せ ず,SEの
原 因 毒 素 とみ な され る よ う に な っ
た3).
TSST-1やSEが
生 体 の リ ンパ 球 や マ ク ロ
た め臨 床 的 に血 液 株 の 分 離 培 養 は重 要 で あ る.
TSST-1は
ト キ シ ック シ ョ ック シ ン ド ロ ー ム
(以下TSS)患
者 よ り分 離 され た 黄 色 ブ ドウ球 菌
が 産 生 す る外 毒 素 と して 発 見 さ れ,TSSの
原 因毒
Fig. 3
Susceptibility
or vancomycine
isolates
minocycline,
テ ロ トキ シ ン(以 下SE)は
ABK+VCM:
生 す る外 毒 素 で あ るが,本 来 食 中 毒 の 原 因 毒 素 と
して 知 られ て い た が,TSSと
類似 した 症 状 や検 査
isolates
susceptible
arbekacine
susceptible
strains
MINO+VCM:
isolated
Cmparison
of toxin
from blood
production
and other
susceptible
strains
susceptible
strains
by MRSA
sources
TSST-1
or/and
enterotoxin
producing
strain
Toxin(-):
Toxin nonproducing strain
*Significantly higher than for isolates
Blood
from
strains,N=16
other
B
sources (p<0.05)
B
TSST
& SEC: TSST-1
and enterotoxin
strain
Other: other type strain
**Significantly higher than for isolates
C producing
from pharynx
Total strains,N=701
(p<0.05)
Table
4
ohther
NT:
平 成10年8月20日
Comparison
sources
nontypable
of coagulase
for arbekacine
for
for vancomycine
A
Toxin(+):
for
minocy-
cline and vancomycine
A
3
strains
and vancomycine
and vancomycine
VCM:
Table
arbekacine
(A) and total
(B) of MRSA.
MINO+ABK+VCM:
素 と考 え られ,こ の 名 称 で 呼 ばれ て い る1)2).エ ン
同 じ くブ ドウ球 菌 の産
of minocycline,
for blood
type of MRSA
isolates
from blood
and
only
水兼
792
隆介 他
フ ァー ジ に対 して 多 彩 な生 物 活 性 を示 す こ とが 近
分 離 さ れ て い た.基 礎 疾 患 を有 す る症 例 か ら トキ
年 の 研 究 で 明 らか に な りつ つ あ り9),さ ら に は細
シ ン産 生MRSAが
菌 性 ス ー パ ー抗 原 と し てT細
胞 を活性 化 す る こ
の 防 止 は も とよ り,主 治 医 に敗 血 症 の 危 険 性 を促
とな どが 報 告 され て い る10).こ の よ う に病 原 因 子
し,発 熱 な どが あ れ ば血 液 培 養 の 提 出 を依 頼 す る.
と し て はTSST-1とSEは
の の,臨
て,多
広 く認 知 され て い る も
床 分 離 黄 色 ブ ドウ球 菌 はMRSAも
含め
くの菌 株 が これ ら を産 生 す る た め,日 和 見
感 染 と され て い るMRSA感
染 症 との 関 与 は あ ま
り問 題 に さ れ て い な い.実 際,我
MRSAの67%を
々の検 討 で も
産 生 株 が 占 め て お り(Fig.2),む
し ろ臨 床 で は疫 学 的 マ ー カ ー と して 用 い られ る傾
向 に あ る.
し か し,我 々 は血 液 か ら分 離 さ れ たMRSAに
TSST-1が
比 較 的 多 い とい う こ とに 着 目 し検 討 を
開 始 し た.今 回 の 結 果 で は,血 液 由来 株 は咽 頭 由
来 株 や 尿 由来 株 よ り有 意 にTSST-1ま
生 株 が 多 く,中 で もTSST-1お
た はSE産
よびSEC産
比 率 が 高 い こ とが わ か っ た(Table
3).一
生株 の
方,コ
ア グ ラ ー ゼ タ イ プ に関 して は検 体 別 で有 意 な差 は
認 め られ な か った(Table
4).高 齢 者 のMRSA敗
血 症 の死 亡 率 は コ ア グ ラ ー ゼII型MRSAが
関与
して い る場 合 が 有 意 に多 い とい う報 告 もあ り11),
宿 主 の 因 子 や定 量 的 な 問題 も考 慮 す べ きか も しれ
な い.敗 血 症16例 中,14例
生MRSAが
の 血 液 か ら トキ シ ン産
分 離 さ れ た が,14例
中12例 はSIRS
(systemic inflammatory
response syndrome)の
診 断 基 準12)を満 た し,8例
は多 臓 器 不 全 に至 っ た.
お そ ら く,病 原 因 子 で あ るTSST-1ま
た はSEが
マ ク ロ フ ァ ー ジ を活 性 化 し,イ ン ター ロ イ キ ンや
TNF(tumor
necrosis factor)な
ど のサ イ トカ イ
ン の誘 導 が 惹 起 され,こ れ らが 重 要 臓 器 に集 積 し
た 好 中球 に作 用 した と考 え る13)14).前述 した よ う
にTSST-1やSEは
生 体 に種 々 の生 物 活 性 を与 え
る こ とが 基 礎 実 験 で は証 明 さ れ て お り9)10),細
菌性
シ ョ ック の誘 因 に な る こ とは充 分 予 想 され る が,
明 確 な作 用 機 序 に 関 す る報 告 は な い.今 後,動 物
実 験 等 に よ るprospectiveな
検 討 が 期 待 さ れ る.
我 々 は新 し い試 み と して 分 離 さ れ た 黄 色 ブ ドウ
球 菌 の病 原 因 子 産 生 性 をす べ て主 治 医 に報 告 して
い る.実 際,今
回 の敗 血 症16例 中12例 にお い て血
液 培 養 陽 性 前 か ら,同 一 型MRSAが
他検体 よ り
分 離 さ れ た 場 合 は,院 内 伝 播
そ れ に よ っ て,早 期 にMRSA敗
血 症 が 診 断 され
れ ば,抗 菌 薬,γ-グ ロ ブ リン や ス テ ロ イ ドな どの
投 与 も よ り効 果 的 と考 え る.今 回 のMRSA病
因 子 の 検 討 は,今 後 のMRSA感
原
染 症 の発 症 を予
測 し,予 防,治 療 す る上 で有 力 な 情 報 に な る可 能
性 が 示 唆 され た.
謝辞:本 研究にあたって協力頂 きました佐世保市立総合
病院検査科細菌室,山 口英人氏,松 尾 由美氏に感謝 します.
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Isolated from Blood Samples
Ryusuke MIZUKANE1), Masao NAKATOMI1, Yoji FUTSUKI2), Jun ARAKI2),
Sadahiro ASAI2), Katsuhiko SAWATARI3), Yoichi HIRAKATA4),
Shigefumi MAESAKI4), Kazunori TOMONO4)
& Shigeru KOHNO4)
Internal Medicine, National
1) Nagasaki Hospital
2)Internal Medicine and 3)Clinical Laboratory , Sasebo City General Hospital
4)The Second Department of Internal Medicine , Nagasaki University Hospital
Toxic
shock syndrome
toxin-1 (TSST-1) and enterotoxins
are important
virulence
factors
produced by Staphylococcus aureus. It is reported that these toxins are associated with septic
shock and toxic shock syndrome. We investigated the toxin production and coagulase types of
701 MRSA strains isolated in Sasebo City General Hospital between 1994 and 1996 TSST-1
or/and enterotoxins were detected in 67% of all MRSA strains, and thous were detected in 88%)
of MRSA strains isolated from blood samples. 45% of all MRSA strains produced both TSST1 and enterotoxin C, and 70% of MRSA strains obtained from blood produced those toxins.
Frequency of TSST-1 or/and enterotoxin production by MRSA strains isolated from blood
samples was significantly higher than that by MRSA strains isolated from urine and pharynx
(p<0.05), and frequency of both TSST-1 and enterotoxin C production by MRSA isolates from
blood was significantly higher than that by MRSA strains isolated from pharyngeal sample (p<
0.05).
This study indicated that investigation of virulence factors produced by MRSA might give
the useful information on prevention and treatment of MRSA infection.
平成10年8月20日