マウスおよびラット系統の命名法に関する規則と指針

マウスおよびラット系 統 の命 名 法 に関 する規 則 と指 針
2006 年 11 月 改 訂
マウスの遺 伝 学 的 命 名 法 の標 準 化 に関 する国 際 委 員 会
(委 員 長 :Dr. Janan T. Eppig)
ラットゲノムおよび命 名 法 委 員 会
(委 員 長 :Dr. Goran Levan)
2001 年 マウスおよびラットの国 際 命 名 法 委 員 は、合 同 で系 統 命 名 法 を確 立 することに合
意 した。見 直 されたガイドラインでは改 訂 されたルールを記 述 してあり、系 統 の命 名 に関 する
新 しいあるいは改 定 されたルールが加 えられている。
マウス系 統 の命 名 に関 する以 前 の版 についての文 献 は次 の通 りである。Snell (1941)、マ
ウスの国 際 標 準 化 命 名 規 約 委 員 会 (1952, 1960, 1976, 1981, 1989, 1996), Festing (1979,
1993), Staats (1986), Maltais et al. (1997) 、 オ ン ラ イ ン (Mouse Genome Database :
http://www.informatics.jax.org/mgihome/nomen/old_strain.shtml) 。 ラ ッ ト の 旧 系 統 命 名
規 約 については Committee on Rat Nomenclature (1992)にある。
現 行 の系 統 命 名 規 約 (英 語 版 )は、下 記 のアドレスで入 手 可 能 である。
マウス: http://www.informatics.jax.org/mgihome/nomen/gene.shtml#genenom
ラット: http://rgd.mcw.edu/nomen_rules.html
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目次
1. 序 文
1.1.マウス
1.2. ラット
2. ラボコード
3. 近 交 系 と交 雑 種
3.1. 定 義
3.2. 近 交 系 の命 名
3.3. 近 交 系 の表 記
3.4. 亜 系 統
3.5. 交 雑 系
4. 複 数 の近 交 系 を基 に育 成 される系 統
4.1. リコンビナント近 交 系
4.2. 混 合 型 近 交 系
4.3. リコンビナントコンジェニック
4.4. アドバンストインタークロスライン
5. コアイソジェニック、コンジェニックおよび分 離 型 近 交 系
5.1. コアイソジェニック系 統
5.2. コンジェニック系 統
5.3. コンソミック系 統
5.4. 分 離 型 近 交 系
5.5. コンプラスティック系 統
6. 文 献
1.序 文
実 験 用 マウスおよびラットは様 々な資 源 に由 来 している。近 交 系 の育 成 は、系 統 の歴 史 的
背 景 を明 確 にし、命 名 の慣 習 が必 要 となることを意 味 する。遺 伝 的 浮 動 は、系 統 内 の個 体
間 で見 られる未 知 の遺 伝 的 違 いがまだあるかもしれないことを意 味 するということを記 憶 すべ
きである。
1.1.マウス
ほとんどの実 験 動 物 マウスは Mus musculus musculus と Mus musculus domesticus に由
来 している。 Mus musculus molossinus と Mus musculus castaneus の貢 献 もあるという証 拠
がすこしある。従 って、種 名 ではなく、むしろ実 験 用 マウスとして、または、特 異 的 な系 統 ある
いは集 団 名 を使 って述 べられるべきである(加 えて、 いくつかの最 近 育 成 された実 験 動 物 マ
ウス系 統 はもっぱら他 の Mus 種 、または、 他 の亜 種 ( M. spretus )に由 来 している。マウス
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系 統 名 は、MGD (Mouse Genome Database
http://www.informatics.jax.org/mgihome/submissions/submissions_menu.shtml)を通 して
登 録 されるべきである。
1.2.ラット
実 験 用 ラット系 統 は、 Rattus norvegicus に由 来 している。他 の種 、例 えば、 Rattus rattus
も 使 わ れ る こ と は あ る が 、 通 常 の 系 統 に は 貢 献 し て い な い 。 ラ ッ ト の 系 統 名 は Genome
Database (RGD) at http://rgd.mcw.edu.を通 して登 録 される。
2.ラボコード(施 設 記 号 )
マウスおよびラットの命 名 の主 要 な特 徴 は、施 設 登 録 記 号 (ラボコード)であり、通 常 、3、4
文 字 からなり(最 初 の文 字 は大 文 字 でその後 は小 文 字 )、マウス、ラットの系 統 を育 成 または
保 持 する個 々の研 究 所 、研 究 室 、個 人 を特 定 するものである。コンジェニックや他 の系 統 で
はいくつかの異 なるフォームがあって、他 に識 別 する方 法 がないような場 合 には亜 系 統 はラボ
コ ー ド で 識 別 さ れ る べ き で あ る 。 ラ ボ コ ー ド は Institute for Laboratory Animal Research
(ILAR) (http://dels.nas.edu/ilar_n/ilarhome/search_lc.shtml)が割 り当 てている。
例
J
ジャクソン研 究 所
Rl
W.L. and L.B. Russell(人 名 )
Jr
John Rapp (人 名 )
Mcw
Medical College of Wisconsin
Kyo
Kyoto University
3.近 交 系 と雑 種
3.1. 定 義
系 統 は、20 世 代 かそれ以 上 兄 妹 交 配 が行 われた時 、近 交 系 とみなされ、その系 統 の個 体
をたどると 1 組 の祖 先 にたどることができる。近 交 系 になった時 点 で個 体 のゲノムは平 均 して
1%のヘテロの遺 伝 子 座 をもち(遺 伝 的 浮 動 を除 く)、目 的 どおり遺 伝 的 に同 じとみなされる。
以 降 、近 交 系 は兄 妹 交 配 かそれに準 じる方 法 で交 配 を続 けなければならない。
近 交 系 を作 るのに他 の育 種 スキームを使 っても良 い。例 えば、連 続 した親 仔 交 配 でもよい
し、親 の若 い方 の個 体 を使 う(例 :親 と交 配 する仔 は続 けてその仔 と交 配 する。連 続 20 回 の
兄 妹 交 配 と同 等 であるような他 の交 配 スキームも受 け入 れられる (Green 1981) 。
3.2. 近 交 系 の命 名
近 交 系 は、簡 潔 に、大 文 字 、ローマ字 、または、文 字 から始 まる文 字 と数 字 の組 み合 わせ
からなる特 徴 のあるシンボルで表 される(ただし、すでに存 在 している系 統 の中 でこの習 慣 に
従 わない例 が 129P1/J である)。
注 意 すべきこととして、マウス、ラットの系 統 はオーバーラップしないように命 名 されるべきで
3
ある (備 考 :歴 史 的 なこととして、数 は少 ないがマウスとラットで類 似 の名 前 が存 在 する。それ
らをユニークに認 識 するために亜 系 統 の表 記 を行 って存 続 できるようにする。
同 じ由 来 であるが、F20 前 に分 かれた場 合 、それらは近 縁 の系 統 であり、このことが分 かる
ようなシンボルにする。
例
マウス:
NZB, NZC, NZO
ラット:
SR, SS
3.3. 近 交 系 の表 記
兄 妹 交 配 世 代 数 は、必 要 に応 じて括 弧 の中 に F と世 代 数 で表 す。
例
ラット:ACI/N
(F159)
世 代 の情 報 がない場 合 であっても最 近 の世 代 数 が分 かっている場 合 、F 疑 問 符 +最 新 世
代 数 で表 す。
例
C3H/HeJ‐ ruf
マウス:
(F? +25)
3.4. 亜 系 統
すでに確 立 された近 交 系 は、遺 伝 的 に多 くの環 境 に因 り、時 間 と共 に亜 系 統 へと分 かれ
ていると考 える。
・ F20 から 40 世 代 で 2 つのラインに分 かれた場 合 、2 ラインが遺 伝 的 に違 うことを証 明
するヘテロ型 の遺 伝 子 座 が多 数 存 在 すると考 えられる (Green 1981)。
・ もし、2 ラインが共 通 祖 先 から分 かれて F20 代 以 上 である場 合 、ライン間 の遺 伝 的
変 異 が突 然 変 異 や遺 伝 的 浮 動 によって起 こっていると考 えられる。
・ ライン間 で遺 伝 的 違 いが起 こっていることが遺 伝 解 析 によって証 明 される。
亜 系 統 は、オリジナル系 統 の後 ろにスラッシュと亜 系 統 表 示 により表 記 するが、亜 系 統 表
示 は通 常 その系 統 が由 来 する個 人 や研 究 室 の記 号 である。
例
IS/Kyo : 京 都 大 学 由 来 の IS 系 統 の亜 系 統
A/He
:
Walter Heston に由 来 する A 系 統 の亜 系 統
もし、一 つの研 究 室 が 1 つ以 上 の亜 系 統 持 つ場 合 、ラボコードに連 番 をつけて亜 系 統 を
標 記 する。
例
FL/1Re、FL/2Re
(備 考 : 歴 史 的 にこのルールに合 わない例 外 :BALB/c マウスは亜 系 統 ではない。
DBA/1 と DBA/2 は別 系 統 であって亜 系 統 ではない。)
異 なる研 究 者 がさらに系 統 維 持 を行 うことによって、また、新 しいコロニーが確 立 されること
により、さらに別 の亜 系 統 が生 み出 される。亜 系 統 はオリジナルの亜 系 統 と遺 伝 的 に異 なるこ
とが証 明 された場 合 に生 じる。どちらの場 合 も、さらに亜 系 統 表 記 がなされるが、スラッシュを
重 ねることはない。
例
C3H/HeH:
C3H の Heston (He) 亜 系 統 が Harwell (H) へ移 った亜 系 統
SR/JrIpcv: SR の the John Rapp (Jr)亜 系 統 が Institute of Physiology,
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Czech Academy of Sciences (Ipcv) へ移 った亜 系 統
遺 伝 的 違 いは時 間 と共 に蓄 積 されるので、ラボコードは重 ねて表 記 する。その率 rate は、
その系 統 あるいは亜 系 統 を収 容 し 、繁 殖 して いる施 設 での異 なる品 質 統 御 レベ ルにある程
度 依 存 している。マウス、ラットを分 与 している機 関 は、系 統 情 報 の中 に親 系 統 から離 れてか
らの世 代 数 を記 述 する必 要 がある。系 統 名 は、最 初 に正 式 名 称 を与 えておけば、以 下 省 略
しても構 わない。
3.5. ハイブリッド(交 雑 系 )
同 じ手 順 で交 配 した 2 系 統 の子 孫 であるマウス、ラットは遺 伝 的 に同 一 で、2 系 統 の省 略
記 号 を使 って大 文 字 で表 記 し、そのうしろに F1 をつける。(ただし、母 系 統 を最 初 に記 述 )。
備 考 : 雌 雄 正 逆 交 配 の F1 は遺 伝 的 に同 一 とはみなされないし、F1 の表 記 も別 になる。
例
D2B6F1
DBA/2 母 、C57BL6/J 父 の仔
フル表 記 は、(DBA/2NxC57BL/6J)F1 である。
B6D2F1
上 記 の父 母 を逆 にした場 合 の仔
フル表 記 は、(C57BL/6JxDBA/2N)F1 である。
CB1BD22F1 リコンビナント近 交 系 である CXB1(母 )と BXD22(父 )の仔
フル表 記 は、(CXB1/ByJxBXD22/TyJ)F1 である。
さらに交 配 を続 けると遺 伝 的 にはもはや同 一 でなくなる。しかし、その交 配 にも親 系 統 がわ
かるような何 かしらの表 記 を与 える。
例
D2B6F2
D2B6F1 同 士 の交 配 による仔
B6(D2AKRF1) C57BL/6J メスに (DBA/2 x AKR/J)F1 オスを戻 し交 配 して
生 まれた仔
上 記 のいずれについても、出 版 物 では最 初 に正 式 名 称 を与 えておく必 要 がある。もし、交
雑 系 統 が元 の系 統 と遺 伝 的 に、あるいは、表 現 型 がはっきりと違 っている亜 系 統 を使 って育
成 された場 合 は、それが分 かるように表 記 する。
例
BALB/cBy = CBy, C3H/HeSn = C3Sn
省 略 が認 められている系 統 は下 記 の通 り。
129
129 strains (サブタイプを含 む:例 129S6 は、129S6/SvEvTac の略 )
A
A strains
AK
AKR strains
B
C57BL
B6
C57BL/6 strains
B10
C57BL/10 strains
BR
C57BR/CD
C
BALB/c strains
C3
C3H strains
5
CB
CBA
D1
DBA/1 strains
D2
DBA/2 strains
HR
HRS/J
L
C57L/J
R3
RIIIS/J
J
SJL
SW
SWR
4. 複 数 の近 交 系 を基 に育 成 される系 統
2 つあるいはそれ以 上 の近 交 系 の交 配 で作 られるマウス、ラットは明 確 な遺 伝 背 景 を持 っ
ているが、遺 伝 的 に同 一 のこともあればそうでないこともある。そういった動 物 は、交 配 様 式 な
どを明 記 して適 切 な表 記 を行 う。
4.1. リコンビナント近 交 系 Recombinant Inbred Strains
リコンビナント近 交 系 Recombinant inbred (RI) の場 合 、2つの親 系 統 がユニークに、おお
よそ等 しい割 合 で寄 与 している。伝 統 的 には、RI 系 統 は 2 系 統 を基 に 20 代 かそれ以 上 の連
続 した兄 妹 交 配 によって作 られる (Bailey 1971, Taylor 1978) 。別 の交 配 様 式 をとることも
できる。たとえば、Advanced Intercross Lines から RI 近 交 系 セットを作 るような場 合 であって、
F2 が非 兄 妹 で数 世 代 交 配 され、続 いて 20 代 あるいはそれ以 上 兄 妹 交 配 を行 われる。一 方
の親 系 統 へ戻 し交 配 が行 われた場 合 は、リコンビナントコンジェニック系 統 の作 出 ということに
なるので、それに応 じて命 名 が行 われることになる。RI 系 統 は、両 親 系 統 の名 前 の1または 2
文 字 の大 文 字 の略 記 号 で表 記 する。ただし、スペースなしでメス系 統 を先 に書 き、大 文 字 X
でつなぎ、次 にオス系 統 を書 く。同 じ両 親 系 統 に由 来 する RI セットのメンバー(系 統 )は、そ
れらが一 ヶ所 あるいはそれ以 上 の研 究 機 関 等 で作 出 されたかどうかにかかわらず、連 続 して
番 号 をつけるようにする。番 号 は、MGD(e-mail to: [email protected])から得 られ
る。
例
CXB : BALB/c と C57BL/6J の交 配 による RI
系 統 数 が複 数 の場 合 は番 号 をつける
例
BXD1, BXD2, BXD3 : BXD(C57BL/6 x DBA/2)の RI セットメンバー
HXB1, HXB2, HXB3 : SHR/OlaIpcv と BN‐ Lx /Cub の交 配 で作 出 された
HXB セットメンバー
もし、2 番 目 の系 統 の略 記 号 が数 字 で終 わる場 合 は (例 :CX8 RI strains)、数 字 の後 に
来 る亜 系 統 の番 号 を分 けるためにハイフンをつける。
例
CX8‐1
リコンビナント近 交 系 は、多 因 子 形 質 の遺 伝 子 マッピングを目 的 として交 配 に使 うこともあ
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る。そのような F1s は、recombinant inbred intercrosses (RIX) と呼 ばれ、他 の近 交 系 との間
の F1s と同 様 に記 号 として表 記 する。
例
(BXD1/Ty x AXB19/Pgn)F1 : BXD1/Ty メス と AXB19/Pgn オスの F1
4.2. 混 合 型 近 交 系 Mixed Inbred Strains
二 つの親 系 統 に由 来 している(一 方 は、標 的 破 壊 遺 伝 子 ES 細 胞 系 )近 交 系 ストックまた
は近 交 系 については、二 つの系 統 をセミコロン(;)で分 ける。セミコロンの前 はホスト系 統 で、セ
ミ コ ロ ン の 後 ろ は ド ナ ー 系 統 ( 破 壊 さ れ た 遺 伝 子 を 持 つ ES 細 胞 系 ) と す る 。 2 系 統 が
donor/host の関 係 にない場 合 、F1 表 記 と同 じように、最 初 の交 配 で使 ったメスをセミコロンの
前 に記 述 する。ラボコードと番 号 を使 って異 なる研 究 室 あるいは同 じ研 究 室 で育 成 された系
統 を区 別 する。この表 記 は、まだ近 交 系 として確 立 されない「遺 伝 的 混 合 状 態 のストック」に
対 して使 われるので、F20 以 上 になるまでは近 交 系 とはみなされない。
例
B6;129‐ Acvr2 t m 1 Z u k
標 的 破 壊 (ノックアウト)された Acvr2 遺 伝 子 を持
つ 129 ES cell line と C57BL/6J とから得 られた
混合系統
二 つ以 上 の系 統 で作 られるかあるいは未 知 の遺 伝 資 源 に由 来 する突 然 変 異 系 統 は「混
合 型 」近 交 系 と考 えられ、STOCK の後 にスペースを設 け(ハイフンではない)、突 然 変 異 記 号
または異 常 染 色 体 をつけて表 記 するのが適 当 である。
例
STOCK Rb(16.17)5Bnr
Robertsonian translocation Rb(16.17)5Bnr をも
つ、遺 伝 的 背 景 が不 明 な、あるいは、複 雑 な近 交
系
そうした突 然 変 異 ストックが近 交 系 に達 した時 には、適 切 な系 統 表 記 にする。もし、その系
統 がもつ遺 伝 的 突 然 変 異 についてすべて大 文 字 のシンボルを使 って表 記 される場 合 は、短
くする。その理 由 は、系 統 名 の変 更 は、(強 く推 奨 される)、オプショナルであるからであって、
STOCK として表 記 されている系 統 の中 には近 交 系 になっているものもあるかもしれない。
例
JIGR/Dn
gr (grizzled)遺 伝 子 と ji (jittery)遺 伝 子 を持 ち、
混 ざった遺 伝 背 景 を持 つ近 交 系
突 然 変 異 の対 立 遺 伝 子 または染 色 体 異 常 が毎 世 代 あるいは 1 世 代 おきに変 異 遺 伝 子 を
持 つ動 物 を F1 雑 種 へ交 配 することによって維 持 されている場 合 、そのストックは F1 であるけ
れども F1 をうしろにつけないで、適 切 な対 立 遺 伝 子 または染 色 体 異 常 の記 号 をつけて表 記
する。
例
B6C3Fe a/a–Dh
Dh
(dominant
hemimelia)
が 毎 世 代
( B6C3Fe a/a) F1 へ 交 配 す る こ と に よ っ て
維 持 さ れ て い る 。 ス ト ッ ク そ れ 自 身 は F1 で
はない。
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4.3. リコンビナントコンジェニック系 統 Recombinant Congenic Strains
リコンビナントコンジェニック(RC)系 統 は、2 つの近 交 系 の交 配 と、それに続 けて一 方 の親
系 統 (レシピエント)への数 回 (通 常 2 回 )の戻 し交 配 を行 って、さらに、いかなるマーカーなど
の選 択 もすることなしで近 親 交 配 を行 って育 成 される(Demant and Hart, 1986) 。そうした近
交 系 では、ドナーのホモ型 断 片 がレシピエント系 統 ゲノムのバックグラウンドに散 在 している(ド
ナー系 統 のゲノムの量 はバッククロスの回 数 に依 存 していて、例 えば 2 回 のバッククロスであれ
ば平 均 12.5%である)。 RC 系 統 は、理 論 上 の近 交 係 数 が近 交 系 のものと同 等 になれば、十
分 に近 交 系 としてみなされるべきである。1回 の戻 し交 配 による世 代 は兄 妹 交 配 の 2 世 代 に
相 当 すると考 えられる。このように、2 回 のバッククロスで育 成 された系 統 (N3, equivalent to
F6)をさらに 14 世 代 兄 妹 交 配 を行 うと十 分 に近 交 系 とみなされる。 RC 系 統 は、2 系 統 の略
記 号 (大 文 字 )で表 記 するが、レシピエント系 統 を先 に記 述 し、小 文 字 の c をその後 に、そし
て、ドナー系 統 を記 述 する。
例
CcS
BALB/c をレシピエントとして、STS をドナーとして作 製 された。
RC 系 統 がいくつかある場 合 、連 番 をつけて表 す。
例
CcS1, CcS2, CcS3 etc.
2 番 目 の系 統 の略 が数 字 で終 わる場 合 (例 129P2), 連 番 と区 別 するために、ハイフンを
使 う。
4.4. アドバンスドインタークロスライン Advanced Intercross Lines
Advanced intercross lines (AIL) は、2 系 統 間 の F2 世 代 を作 ることによって育 成 される。
ただし、その後 に続 く各 世 代 では兄 妹 交 配 を避 けながらインタークロッシングを行 う (Darvasi
and Soller, 1995)。この系 統 の目 的 は連 鎖 している遺 伝 子 間 の組 換 えの確 率 を上 げるため
である。
シンボルは、このラインを育 成 した研 究 室 のラボコードを含 め、続 けてコロン(:)を表 記 し、さ
らにコンマ(,)で区 切 った 2 近 交 系 の略 記 号 を続 ける。さらに、ハイフン(‐)をつけ、世 代 数
(G3, G4, etc)を記 述 する。
例
Pri:B6,D2‐G#
Pri で育 成 された C57BL/6 と DBA/2 の AIL スト
ック。世 代 と共 に G 番 号 は増 える。
5.
コアイソジェニック、コンジェニックおよび分 離 型 近 交 系 Coisogenic, Congenic, and
Segregating Inbred Strains
近 交 系 がゲノムの小 部 分 だけで違 うようにする方 法 としていくつかある。
5.1. コアイソジェニック系 統 Coisogenic Strains
この系 統 は、基 の系 統 に起 こった突 然 変 異 遺 伝 子 座 だけで違 う。ES 細 胞 の標 的 破 壊 遺
伝 子 を含 む系 統 は、作 製 に使 った同 じ近 交 系 の亜 系 統 へ交 配 され、維 持 され場 合 はコアイ
ソジェニックとみなされる。ただ、ゲノムのどこかで突 然 変 異 が起 こっている可 能 性 を無 視 でき
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ないことを考 慮 する。同 じように、化 学 あるいは放 射 線 によってある近 交 系 に誘 導 された突 然
変 異 遺 伝 子 を 持 つ 場 合 もコアイソ ジェニックと 考 える 。た だし、 その 突 然 変 異 以 外 に 別 の 変
化 もあろう。コアイソジェニック系 統 は、親 系 統 に定 期 的 に戻 し交 配 をしないと遺 伝 的 浮 動 に
より、時 間 と共 に遺 伝 的 変 化 がゲノム中 に蓄 積 していくことが考 えられる。
コアイソジェニック系 統 は、適 切 に亜 系 統 シンボルを使 い、違 いのある遺 伝 子 (イタリック表
記 )をそれに続 けてハイフンで結 んで系 統 表 示 法 に従 って表 される。
例
129S7/SvEvBrd‐ Fyn t m 1 S o r
Fyn 遺 伝 子 の標 的 変 異 が AB1 ES 細 胞 (129S7/SvEvBrd)
由 来 で作 製 された。キメラ動 物 が 129S7/SvEvBrd へ交 配 され、
このコアイソジェニック系 統 で遺 伝 子 が保 存 されている。
例
C57BL/6JEi‐ tth
C57BL/6JEi で起 こった tilted head 突 然 変 異 を持 つがん。
ケースによっては、そういった突 然 変 異 遺 伝 子 がヘテロ型 で保 存 されることもある。系 統 表
記 は育 種 方 法 を反 映 していなこともあるし、そのマウスあるいはラットの目 的 とする遺 伝 子 の遺
伝 子 型 を表 していないこともある。
例
C57BL/6J‐ cph
先 天 性 進 行 性 水 腎 症 ( congenital progressive hydronephrosis )
が C57BL/6J に生 じた。コアイソジェニックではあるが、 ホモ型 個 体
は一 般 に幼 若 で致 死 。+/ cph x +/ cph .(ヘテロ型 同 士 の交 配 )で維
持 される。
突 然 変 異 がコアイソジェニック系 統 で起 こってからの近 交 世 代 数 を示 す場 合 は、突 然 変 異
が起 こってからの世 代 数 をそれ以 前 の世 代 数 の後 ろに付 け加 えて表 す。
例
F110 + F23
ある近 交 系 において F110 世 代 で突 然 変 異 が起 こり、その後 兄 妹
交 配 を 23 代 続 けていることを示 している。
5.2. コンジェニック系 統 Congenic Strains
コンジェニック系 統 は、ある近 交 系 (レシピエントすなわち遺 伝 的 背 景 となる)へドナー系 統
からある特 殊 なマーカーを選 択 しながら繰 り返 し戻 し交 配 を行 って育 成 される (Snell 1978,
Flaherty 1981) 。組 織 適 合 抗 原 遺 伝 子 座 で違 っていて、それ故 にお互 いの移 植 片 に対 し
て抵 抗 性 があるコンジェニック系 統 はコンジェニックレジスタントラインと呼 ばれる。
この方 法 で育 成 された系 統 は、バックグラウンド系 統 へ少 なくとも 10 回 戻 し交 配 が行 われ
た場 合 、コンジェニック系 統 とみなされる。なお、最 初 の交 雑 仔 または F1 世 代 は 1 世 代 と数 え
る。コンジェニックになった時 点 で、その系 統 に導 入 されたドナーゲノムであって、連 鎖 してい
ないゲノムが残 っている量 は、1%以 下 であろう( 選 択 した遺 伝 子 あるいはマーカーに連 鎖 し
ているドナーのゲノム量 は減 少 するのが遅 く、おおよそ、200/N である。ただし、N は、戻 し交
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配 の世 代 数 で N>5)(Flaherty 1981;Silver 1995)。
マーカーを補 助 として使 う交 配 またはマーカーを補 助 として使 う選 択 交 配 は、スピードコン
ジェニックとして知 られており、5 世 代 という少 ない世 代 で通 常 の 10 回 の戻 し交 配 に匹 敵 する
コンジェニック系 統 を作 ることが可 能 である (Markel et al., 1997; Wakeland et al., 1997)。
適 切 なマーカー選 択 が使 われるという条 件 で、もし、選 択 された遺 伝 子 座 または染 色 体 部 位
に連 鎖 していないドナー系 統 の貢 献 が 0.01 よりも少 ない場 合 はコンジェニック系 統 と呼 ばれ
る。原 則 として、最 初 の出 版 の中 ではスピードコンジェニック系 統 の表 記 として、その系 統 のコ
ンジェニックの度 合 いを定 義 するために使 われたマーカーの数 とそれらの間 のスペース(距
離 )が述 べられるべきである。スピードコンジェニックは完 全 なマーカー分 析 に依 存 しているし、
実 験 プロトコールによって多 少 変 化 することから、近 交 系 としての状 態 を理 解 する場 合 注 意
が必 要 である。
コンジェニック系 統 は、3 つの部 分 から構 成 される記 号 で表 記 される。レシピエント系 統 の
完 全 な、また、省 略 した記 号 はドナー系 統 (対 立 遺 伝 子 または突 然 変 異 遺 伝 子 のオリジンで
あって、そのコンジェニック系 統 を構 成 している直 接 の資 源 であるかもしれないし、そうでない
かもしれない)の略 記 号 とピリオドで分 ける。 (突 然 変 異 が起 こった染 色 体 が未 知 の場 合 、例
えば、ドナーが近 交 系 でないか、複 雑 な場 合 、あるいは、F1 雑 種 のようなケースでは、コンジ
ェニックをあらわすために記 号 として Cg を使 う。ドナー系 統 の記 号 または Cg の使 用 は、コンジ
ェニック系 統 とコアイソジェニック系 統 と区 別 するために必 須 である。Cg は、同 じホスト(背 景 )
でありながらそれぞれのドナー系 統 は異 なる系 統 へ別 々に戻 し交 配 された 2 種 類 のコンジェ
ニック系 統 を一 緒 に交 配 して作 られる系 統 を標 記 する場 合 にも使 われる。それぞれのケース
で、Cg の使 用 は系 統 名 の中 の対 立 遺 伝 子 が一 つ以 上 の資 源 からきたことを示 す。系 統 名 と
ドナー系 統 から来 た異 なる対 立 遺 伝 子 の記 号 (イタリック表 記 )を分 けるためにハイフンをつけ
る。
例
B6.AKR‐ H2 k
C57BL/6 系 統 に AKR/J の H2 k が導 入 された。
LEW.BN‐ RT1 n
BN の RT1 n が LEW に導 入 された。
DA.F344‐ Cia5
F344 系 統 の Cia5 QTL が DA 系 統 に導 入 された。
B6.Cg- Kit W - 4 4 J Gpi1 a
ドナー系 統 がミックス状 態 で、C3H/HeJ 由 来 の Kit
遺 伝 子 と CAST/Ei 由 来 の Gpi1 対 立 遺 伝 子 が
C57BL/6 系 統 に導 入 された。
もし、同 じレ シピエントバ ックグラウン ドとドナー 系 統 に 由 来 し 、同 じく異 な る対 立 遺 伝 子 を
持 つようなラインがいくつかある場 合 、個 々のラインは系 統 名 の後 にスラッシュをつけ、続 けて
連 番 とラボコードを表 記 する。
例
C.B10- H2 b /1Sn
C.B10- H2 b /2Sn
もし、異 なる対 立 遺 伝 子 が第 3 の系 統 を経 由 した場 合 、その系 統 をカッコ内 に記 入 する。
10
例
B6(C)- mut
ある突 然 変 異 遺 伝 子 (ここでは mut と表 記 )が近 交 系 (例
え ば C57BL/6 ) に 由 来 し 、 い っ た ん 他 系 統 ( 例 え ば
BALB/c)に移 され、その後 交 配 によりもとの背 景 系 統 へ
戻 された。
C.129P(B6)‐ Il2 t m 1 H o r
129ES を使 って作 成 された標 的 破 壊 遺 伝 子 が B6;129P
混 合 背 景 から BALB/c へ移 された。
B6(C)− mut
ある突 然 変 異 遺 伝 子 ( mut )が別 の突 然 変 異 遺 伝 子 を持
つコン ジェニ ック系 統 ( 例 えば B6.C- m )に生 じ、オリジナ
ル突 然 変 異 ( m )をもつ新 しい系 統 として育 成 された。
備 考 :もしオリジナル突 然 変 異 が除 かれたことを証 明 でき
ない場 合 、記 号 は B6.C m - mut となる。
B6(C)− mut
ある突 然 変 異 遺 伝 子 ( mut )が雑 種 または混 合 背 景 系 統
(例 えば B6CF1)に生 じ、その変 異 遺 伝 子 を親 系 統 の一
つ(例 えば C57BL/6)へ戻 し交 配 されて育 成 された。
B6.C(Cg)- mut
ある突 然 変 異 遺 伝 子 ( mut )がある系 統 (例 えば BALB/
c)から別 の系 統 ( 例 え ば C57BL/6J) へ戻 し交 配 され た
が、混 合 背 景 系 統 で生 じたかあるいは複 雑 な歴 史 を持 っ
ていて染 色 体 断 片 の由 来 が不 明 確 である。
移 された染 色 体 の一 部 がいくつかの遺 伝 子 あるいは複 数 の DNA 遺 伝 子 座 で明 らかにで
きる場 合 、その染 色 体 部 分 はもっとも近 いマーカーならびにもっとも遠 いマーカーを掲 げること
によって記 号 で表 すことができる。なお、括 弧 の中 の染 色 体 部 分 のマーカーをハイフンでつな
ぐ。
例
B6.Cg‐( D4Mit25‐D4Mit80) /Lt
アウトブレッドもしくは混 合 系 統 の第 4 染 色 体 の
( D4Mit25‐D4Mit80) を C57BL/6J へ導 入 したコンジェニ
ック系 統
B6.CBA‐( D4Mit25‐D4Mit80 )/Lt
CBA/J 由 来 の染 色 体 部 分 (カッコ内 )を B6 に導 入 したコ
ンジェニック系 統
染 色 体 断 片 を示 すマーカーは、検 査 した最 も遠 いものともっとも近 いものを記 述 するだけで
よい。これは、もっと近 いあるいは遠 い未 検 査 マーカーがないということではない。もし、同 じラ
ボあるいは異 なるラボで同 じ染 色 体 部 分 を含 み、方 法 を変 えても区 別 が付 かない数 ラインが
作 られた場 合 は、スラッシュ、連 番 およびラボコードをつけて区 別 する。
11
必 要 に応 じ、戻 し交 配 世 代 数 については N と数 字 を括 弧 に入 れて、系 統 名 の後 ろに置 く。
世 代 を系 統 名 に組 み入 れないようにする。コンジェニックの初 期 では、戻 し交 配 世 代 数 が系
統 情 報 に明 示 される場 合 に限 り N5 でコンジェニック表 記 をする。さらに複 雑 な交 配 システム
を使 う必 要 がある場 合 、世 代 は NE(N equivalents)で表 し、 コンジェニック系 統 としてみなさ
れるには NE10 が要 求 される。例 えば、近 交 系 のバックグラウンドにある劣 性 遺 伝 子 を導 入 す
る場 合 、10 回 の戻 し交 配 とその後 のホモ型 個 体 を得 るためのインタークロッシングを行 った後
に、その系 統 は NE10 となる。あるコンジェニック系 統 が戻 し交 配 の後 に兄 妹 交 配 で維 持 され
ている場 合 、兄 妹 交 配 世 代 数 は戻 し交 配 世 代 数 の後 につけて表 す( 例 N10F6: 戻 し交 配
10 回 の後 に兄 妹 交 配 6 世 代 を行 った。例 NE12F17:戻 し交 配 12 回 に匹 敵 する複 雑 な交
配 を行 い、その後 兄 妹 交 配 を 17 回 行 った。) 。
スピードコンジェニックを作 った場 合 、N は 10 よりも小 さいであろうが、N のうしろに実 数 を括
弧 の中 に入 れて表 記 すること、また、育 種 の方 法 と使 われたマーカーの詳 細 については出 版
物 あるいはデータベースなどに詳 細 に書 くべきである。
5.3. コンソミック系 統 Consomic Strains
コンソミック系 統 (染 色 体 置 換 系 統 とも呼 ばれる Nadeau et al., 2000)は、ある近 交 系 にあ
る染 色 体 一 本 を丸 ごとバックスロスによって導 入 して育 成 される。コンジェニック系 統 と同 様 、
少 なくとも 10 回 の戻 し交 配 が必 要 で、F1 世 代 を 1 世 代 と数 える。常 染 色 体 については、ドナ
ーの染 色 体 とレシピエントの染 色 体 に組 換 えがないことを確 認 するために仔 世 代 について遺
伝 子 型 判 定 をする必 要 がある。コンソミック系 統 の表 記 は HOST STRAIN‐Chr# D O N O R
STRAIN
とする。
例
SHR‐Chr Y B N
この系 統 では、BN の Y 染 色 体 が SHR に戻 し交 配 で導 入 さ
れた。
例
C56BL/6J‐Chr 19 S P R
M.spretus Chromosome 19 が C57BL/6J に戻 し交 配 で導
入 された。
例
C56BL/6J‐Chr 1 A / J Chr 3 D B A / 2 J
A/J の Chromosome 1 と DBA/2J の Chromosome 3 が戻
し交 配 により C57BL/6J に導 入 された。
ある系 統 の染 色 体 1 本 を他 の系 統 へ移 すことがその染 色 体 に含 まれる致 死 効 果 によって
不 可 能 なことがある。例 えば、PWD/Ph 系 統 の個 々の染 色 体 を C57BL/6J へ移 そうとしたコン
ソミックセットの場 合 、Chr 11 と Chr X はそのまま移 せなかった。そういう場 合 、染 色 体 の部 分
について小 数 点 を付 け、1,2,3というように表 示 する。そのようにすると Chr 11 の部 分 は次 の
ようになる。
例
C57BL/6J-Chr 11.1 P W D / P h /ForeJ
12
コンソミック系 統 はコンセプトと育 成 に関 してコンジェニック系 統 と似 ている。コンソミックの命
名 規 約 は、ホスト系 統 名 は省 略 しないでピリオドなしでドナー系 統 を続 け、起 源 となった系 統
は肩 付 きで表 す。肩 付 き部 分 の全 文 字 を大 文 字 で表 すことと染 色 体 の文 字 と番 号 ならび肩
付 き文 字 をイタリックにしないことは、対 立 遺 伝 子 記 号 と染 色 体 識 別 体 を区 別 するためのもの
である。
5.4. 分 離 型 近 交 系 Segregating Inbred Strains
分 離 型 近 交 系 では、目 的 の遺 伝 子 または突 然 変 異 がヘテロ型 の状 態 で維 持 されている。
それらは近 親 交 配 で育 成 され(通 常 は兄 妹 交 配 )、毎 世 代 ヘテロ型 が選 ばれる。分 離 してい
る遺 伝 子 座 はその系 統 の標 準 的 遺 伝 子 型 の部 分 であるため、近 交 系 と同 じ表 記 がなされる。
(5.1Coisogenic Strains を参 照 )。分 離 する毛 色 遺 伝 子 が近 交 系 の正 常 な表 現 型 の一 部 で
あるとすると、系 統 名 に記 述 する必 要 はない(下 記 を参 照 )。近 交 系 の遺 伝 子 型 の詳 細 は出
版 物 およびデータベースで入 手 可 能 である。
例
129P3/J
このマウス系 統 では、tyrosinase 遺 伝 子 の alleles であ
る albino ( Tyr c ) と chinchilla ( Tyr c ‐ c h )が分 離 している。
WB/Re
このマウス系 統 では、kit oncogene ( Kit W )の優 性 白 斑 が
分 離 している。
カップリングまたはリパルジョンの状態で連鎖する対立遺伝子を持つ系統は、そ
れら連鎖した遺伝子の状態が分かるように表記されるべきである。
例
B6.Cg‐ m Lepr d b /+ +
この近 交 系 では、 m と Lepr d b が一 つの染 色 体 上 に、野
生 型 は別 の染 色 体 にあるいわゆるカップリングの状 態 に
ある。
B6.Cg‐ m +/+ Lepr d b
この近 交 系 では、 m と Lepr d b が別 の相 同 染 色 体 上 にあ
るいわゆる リパルジョンの状 態 にあ り、バランス型 系 統 と
呼 ばれる。
5.5. コンプラスティック系 統 Conplastic Strains
コンプラスティック系 統 は、交 配 によって一 つの系 統 の核 ゲノムを別 の系 統 の細 胞 質 へお
いたものである。表 記 は NUCLEAR GENOME‐mt C Y T O P L A S M I C
例
GENOME.
である。
C57BL/6J‐mt B A L B / c
核 ゲノムが C57BL/6J であり、細 胞 質 ( ミトコ ンドリア) ゲノム
が BALB/c である。
C57BL/6J オ ス マ ウ ス と BALB/c メ ス を 交 配 す る こ と に よ り 育 成 さ れ た 系 統 で 、
仔 の メ ス を 毎 世 代 C57BL/6J オ ス へ 戻 し 交 配 す る こ と に よ り 育 成 さ れ る 。 コ ン ジ ェ
ニ ッ ク 系 統 と 比 較 し て 、少 な く と も 10 世 代 の 戻 し 交 配 が 必 要 で 、F1 世 代 を 1 世 代
13
と数える。
6.文 献
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