Rules for Nomenclature of Mouse and Rat Strains

マウスおよびラット系 統 の命 名 法 に関 する規 則 と指 針
2007 年 7 月 改 定
2009 年 1 月 改 定
2011 年 7 月 改 定
2013 年 10 月 改 定
マウスの遺 伝 学 的 命 名 法 の標 準 化 に関 する国 際 委 員 会
委 員 長 :Dr. Janan T. Eppig
(e-mail: [email protected] )
ラットゲノムおよび命 名 法 委 員 会
委 員 長 :Dr. Goran Levan
(e-mail: [email protected] )
2001 年 マウスおよびラットの国 際 命 名 法 委 員 は、合 同 で系 統 命 名 法 を確 立 することに合
意 した。見 直 されたガイドラインでは改 訂 されたルールを記 述 してあり、系 統 の命 名 に関 する
新 しいあるいは改 定 されたルールが加 えられている。
マウス系 統 の命 名 に関 する以 前 の版 についての文 献 は次 の通 りである。Snell (1941)、マ
ウスの国 際 標 準 化 命 名 規 約 委 員 会 (1952, 1960, 1976, 1981, 1989, 1996), Festing (1979,
1993), Staats (1986), Maltais et al. (1997) 。マウスのガイドラインの最 近 のまとめは、2006 年 に出
版 さ れ た (Eppig 2006)。ラット系 統 の命 名 についての以 前 の規 則 の文 献 はラット命 名 規 約 委
員 会 で 見 る こ と が で き る (1992) 。 ラ ッ ト の 旧 系 統 命 名 規 約 に つ い て は Committee on Rat
Nomenclature (1992)にある。
以 前 のオンライン版 (2011 年 7 月 )は、ここから入 手 できる。
現 行 の系 統 命 名 規 約 (英 語 版 )は、下 記 のアドレスで入 手 可 能 である。
マウス: http://www.informatics.jax.org/mgihome/nomen/gene.sh tml# gen enom
1
目次
1. 序 文
1.1.マウス
1.2. ラット
2. ラボコード
3. 近 交 系 と交 雑 種
3.1. 定 義
3.2. 近 交 系 の命 名
3.3. 近 交 系 の表 記
3.4. 亜 系 統
3.5. 交 雑 系
4. 複 数 の近 交 系 を基 に育 成 される系 統
4.1. リコンビナント近 交 系
4.2. 混 合 型 近 交 系
4.3. リコンビナントコンジェニック
4.4. アドバンストインタークロスライン
5. コアイソジェニック、コンジェニックおよび分 離 型 近 交 系
5.1. コアイソジェニック系 統
5.2. コンジェニック系 統
5.3. コンソミック系 統
5.4. 分 離 型 近 交 系
5.5. コンプラスティック系 統
6.アウトブレッドとクローズドコロニー
6.1.アウトブレッド
6.2.クローズドコロニー
7.ES 細 胞 株 および iPS 細 胞 株
8. 文 献
1.序 文
実 験 用 マウスおよびラットは様 々な資 源 に由 来 している。近 交 系 の育 成 は、系 統 の歴 史 的
背 景 を明 確 にし、命 名 の慣 習 が必 要 となることを意 味 する。遺 伝 的 浮 動 は、系 統 内 の個 体
間 で見 られる未 知 の遺 伝 的 違 いがまだあるかもしれないことを意 味 するということを記 憶 すべ
きである。
1.1.マウス
ほとんどの実 験 動 物 マウスは Mus musculus musculus と Mus musculus domesticus に由
2
来 している。 Mus musculus molossinus と Mus musculus castaneus の貢 献 もあるという証 拠
がすこしある。従 って、種 名 ではなく、むしろ実 験 用 マウスとして、または、特 異 的 な系 統 ある
いは集 団 名 を使 って述 べられるべきである(加 えて、 いくつかの最 近 育 成 された実 験 動 物 マ
ウス系 統 はもっぱら他 の Mus 種 、または、 他 の亜 種 ( M. spretus )に由 来 している。マウス
系 統 名 は、MGD (Mouse Genome Database
http://www.informatics.jax.org/mgihome/submissions/amsp_submission.cgi . )を通 して登 録 される
べきである。
1.2.ラット
実 験 用 ラット系 統 は、 Rattus norvegicus に由 来 している。他 の種 、例 えば、 Rattus rattus
も使 われることはあるが、通 常 の系 統 には貢 献 していない。
ラ
ッ
ト
の
系
統
名
は
Genome
Database
(RGD)
at
http://rgd.mcw.edu/tools/strains/strainRegistrationIndex.cgi .を 通 して登 録 される。
2.ラボコード(施 設 記 号 )
マウスおよびラットの命 名 の主 要 な特 徴 は、施 設 登 録 記 号 (ラボコード)であり、通 常 、3、4
文 字 からなり(最 初 の文 字 は大 文 字 でその後 は小 文 字 )、マウス、ラットの系 統 を育 成 または
保 持 する個 々の研 究 所 、研 究 室 、個 人 を特 定 するものである。コンジェニックや他 の系 統 で
はいくつかの異 なるフォームがあって、他 に識 別 する方 法 がないような場 合 には亜 系 統 はラボ
コ ー ド で 識 別 さ れ る べ き で あ る 。 ラ ボ コ ー ド は Institute for Laboratory Animal Research
(ILAR) http://dels.nas.edu/global/ilar/lab-codes が割 り当 てている。
例
J
ジャクソン研 究 所
Rl
W.L. and L.B. Russell(人 名 )
Jr
John Rapp (人 名 )
Mcw
Medical College of Wisconsin
Kyo
Kyoto University
3.近 交 系 と交 雑 種
3.1. 定 義
系 統 は、20 世 代 かそれ以 上 兄 妹 交 配 が行 われた時 、近 交 系 とみなされ、その系 統 の個 体
をたどると 1 組 の祖 先 にたどることができる。近 交 系 になった時 点 で個 体 のゲノムは平 均 して
1%のヘテロの遺 伝 子 座 をもち(遺 伝 的 浮 動 を除 く)、目 的 どおり遺 伝 的 に同 じとみなされる。
以 降 、近 交 系 は兄 妹 交 配 かそれに準 じる方 法 で交 配 を続 けなければならない。
3
近 交 系 を作 るのに他 の育 種 スキームを使 っても良 い。例 えば、連 続 した親 仔 交 配 でもよい
し、親 の若 い方 の個 体 を使 う(例 :親 と交 配 する仔 は続 けてその仔 と交 配 する。連 続 20 回 の
兄 妹 交 配 と同 等 であるような他 の交 配 スキームも受 け入 れられる ( Green 1981 ) 。
3.2. 近 交 系 の命 名 法
近 交 系 は、簡 潔 に、大 文 字 、ローマ字 、または、文 字 から始 まる文 字 と数 字 の組 み合 わせ
からなる特 徴 のあるシンボルで表 される(ただし、すでに存 在 している系 統 の中 でこの習 慣 に
従 わない例 が 129P1/J である)。
注 意 すべきこととして、マウス、ラットの系 統 はオーバーラップしないように命 名 されるべきで
ある (備 考 :歴 史 的 なこととして、数 は少 ないがマウスとラットで類 似 の名 前 が存 在 する。それ
らをユニークに認 識 するために亜 系 統 の表 記 を行 って存 続 できるようにする。
同 じ由 来 であるが、F20 前 に分 かれた場 合 、それらは近 縁 の系 統 であり、このことが分 かる
ようなシンボルにする。
例
マウス:
NZB, NZC, NZO
ラット:
SR, SS
3.3. 近 親 交 配 の表 記
兄 妹 交 配 世 代 数 は、必 要 に応 じて括 弧 の中 に F と世 代 数 で表 す。
例
ラット:ACI/N
(F159)
世 代 の情 報 がない場 合 であっても最 近 の世 代 数 が分 かっている場 合 、F 疑 問 符 +最 新 世
代 数 で表 す。
例
マウス:
C3H/HeJ– ruf
(F?+25)
3.4. 亜 系 統
すでに確 立 された近 交 系 は、遺 伝 的 に多 くの環 境 に因 り、時 間 と共 に亜 系 統 へと分 かれ
ていると考 える。
・ F20 から 40 世 代 で 2 つのラインに分 かれた場 合 、2 ラインが遺 伝 的 に違 うことを証 明
するヘテロ型 の遺 伝 子 座 が多 数 存 在 すると考 えられる ( Green 1981 )。
・ もし、2 ラインが共 通 祖 先 から分 かれて F20 代 以 上 である場 合 、ライン間 の遺 伝 的 変
異 が突 然 変 異 や遺 伝 的 浮 動 によって起 こっていると考 えられる。
4
・ ライン間 で遺 伝 的 違 いが起 こっていることが遺 伝 解 析 によって証 明 される。
亜 系 統 は、オリジナル系 統 の後 ろにスラッシュと亜 系 統 表 示 により表 記 するが、亜 系 統 表
示 は通 常 その系 統 が由 来 する個 人 や研 究 室 の記 号 である。
例
IS/Kyo : 京 都 大 学 由 来 の IS 系 統 の亜 系 統
A/He
:
Walter Heston に由 来 する A 系 統 の亜 系 統
もし、一 つの研 究 室 が 1 つ以 上 の亜 系 統 持 つ場 合 、ラボコードに連 番 をつけて亜 系 統 を
標 記 する。
例
FL/1Re、FL/2Re
(備 考 : 歴 史 的 にこのルールに合 わない例 外 :BALB/c マウスは亜 系 統 ではない。
DBA/1 と DBA/2 は別 系 統 であって亜 系 統 ではない。)
異 なる研 究 者 がさらに系 統 維 持 を行 うことによって、また、新 しいコロニーが確 立 されること
により、さらに別 の亜 系 統 が生 み出 される。亜 系 統 はオリジナルの亜 系 統 と遺 伝 的 に異 なるこ
とが証 明 された場 合 に生 じる。どちらの場 合 も、さらに亜 系 統 表 記 がなされるが、スラッシュを
重 ねることはない。
例
C3H/HeH: C3H の Heston (He) 亜 系 統 が Harwell (H) へ移 った亜 系 統
SR/JrIpcv: SR の the John Rapp (Jr)亜 系 統 が Institute of Physiology,
Czech Academy of Sciences (Ipcv) へ移 った亜 系 統
遺 伝 的 違 いは時 間 と共 に蓄 積 されるので、ラボコードは重 ねて表 記 する。その率 rate は、
その系 統 あるいは亜 系 統 を収 容 し、繁 殖 してい る施 設 での異 なる品 質 統 御 レベルにある程
度 依 存 している。マウス、ラットを分 与 している機 関 は、系 統 情 報 の中 に親 系 統 から離 れてか
らの世 代 数 を記 述 する必 要 がある。系 統 名 は、最 初 に正 式 名 称 を与 えておけば、以 下 省 略
しても構 わない。
3.5. 交 雑 系 (ハイブリッド)
同 じ手 順 で交 配 した 2 系 統 の子 孫 であるマウス、ラットは遺 伝 的 に同 一 で、2 系 統 の省 略
記 号 を使 って大 文 字 で表 記 し、そのうしろに F1 をつける。(ただし、母 系 統 を最 初 に記 述 )。
備 考 : 雌 雄 正 逆 交 配 の F1 は遺 伝 的 に同 一 とはみなされないし、F1 の表 記 も別 になる。
5
例
D2B6F1
DBA/2 母 、C57BL6/J 父 の仔
フル表 記 は、(DBA/2NxC57BL/6J)F1 である。
B6D2F1
上 記 の父 母 を逆 にした場 合 の仔
フル表 記 は、(C57BL/6JxDBA/2N)F1 である。
CB1BD22F1 リコンビナント近 交 系 である CXB1(母 )と BXD22(父 )の仔
フル表 記 は、(CXB1/ByJxBXD22/TyJ)F1 である。
さらに交 配 を続 けると遺 伝 的 にはもはや同 一 でなくなる。しかし、その交 配 にも親 系 統 がわ
かるような何 かしらの表 記 を与 える。
例
D2B6F2
D2B6F1 同 士 の交 配 による仔
B6(D2AKRF1) C57BL/6J メスに (DBA/2 x AKR/J)F1 オスを戻 し交 配 して
生 まれた仔
上 記 のいずれについても、出 版 物 では最 初 に正 式 名 称 を与 えておく必 要 がある。もし、交
雑 系 統 が元 の系 統 と遺 伝 的 に、あるいは、表 現 型 がはっきりと違 っている亜 系 統 を使 って育
成 された場 合 は、それが分 かるように表 記 する。
例
BALB/cBy = CBy, C3H/HeSn = C3Sn
省 略 が認 められている系 統 は下 記 の通 り。
129
129 strains (サブタイプを含 む:例 129S6 は、129S6/SvEvTac の略 )
A
A strains
AK
AKR strains
B
C57BL
B6
C57BL/6 strains
B10
C57BL/10 strains
BR
C57BR/CD
C
BALB/c strains
C3
C3H strains
CB
CBA
D1
DBA/1 strains
D2
DBA/2 strains
6
HR
HRS/J
L
C57L/J
R3
RIIIS/J
J
SJL
SW
SWR
4. 複 数 の近 交 系 を基 に育 成 される系 統
2 つあるいはそれ以 上 の近 交 系 の交 配 で作 られるマウス、ラットは明 確 な遺 伝 背 景 を持 っ
ているが、遺 伝 的 に同 一 のこともあればそうでないこともある。そういった動 物 は、交 配 様 式 な
どを明 記 して適 切 な表 記 を行 う。
4.1. リコンビナント近 交 系 Recombinant Inbred Strains
リコンビナント近 交 系 Recombinant inbred (RI) の場 合 、2つの親 系 統 がユニークに、おお
よそ等 しい割 合 で寄 与 している。伝 統 的 には、RI系 統 は 2 系 統 を基 に 20 代 かそれ以 上 の連
続 した兄 妹 交 配 によって作 られる ( Bailey 1971 , Taylor 1978 ) 。別 の交 配 様 式 をとることも
できる。たとえば、Advanced Intercross LinesからRI近 交 系 セットを作 るような場 合 であって、
F2 が非 兄 妹 で数 世 代 交 配 され、続 いて 20 代 あるいはそれ以 上 兄 妹 交 配 を行 われる。一 方
の親 系 統 へ戻 し交 配 が行 われた場 合 は、リコンビナントコンジェニック系 統 の作 出 ということに
なるので、それに応 じて命 名 が行 われることになる。RI系 統 は、両 親 系 統 の名 前 の1または 2
文 字 の大 文 字 の略 記 号 で表 記 する。ただし、スペースなしでメス系 統 を先 に書 き、大 文 字 X
でつなぎ、次 にオス系 統 を書 く。同 じ両 親 系 統 に由 来 するRIセットのメンバー(系 統 )は、それ
らが一 ヶ所 あるいはそれ以 上 の研 究 機 関 等 で作 出 されたかどうかにかかわらず、連 続 して番
号 をつけるようにする。番 号 は、MGD(e-mail to: [email protected])から得 られる。
例
CXB : BALB/c と C57BL/6J の交 配 による RI
系 統 数 が複 数 の場 合 は番 号 をつける
例
BXD1, BXD2, BXD3 : BXD(C57BL/6 x DBA/2)の RI セットメンバー
HXB1, HXB2, HXB3 : SHR/OlaIpcv と BN– Lx /Cub の交 配 で作 出 された
HXB セットメンバー
もし、2 番 目 の系 統 の略 記 号 が数 字 で終 わる場 合 は (例 :CX8 RI strains)、数 字 の後 に
来 る亜 系 統 の番 号 を分 けるためにハイフンをつける。
7
例
CX8–1
リコンビナント近 交 系 は、多 因 子 形 質 の遺 伝 子 マッピングを目 的 として交 配 に使 うこともあ
る。そのような F1s は、recombinant inbred intercrosses (RIX) と呼 ばれ、他 の近 交 系 との間
の F1s と同 様 に記 号 として表 記 する。
例
(BXD1/Ty x AXB19/Pgn)F1 : BXD1/Ty メス と AXB19/Pgn オスの F1
4.2. 混 合 型 近 交 系 Mixed Inbred Strains
二 つの親 系 統 に由 来 している(一 方 は、標 的 破 壊 遺 伝 子 ES 細 胞 系 )近 交 系 ストックまた
は近 交 系 については、二 つの系 統 をセミコロン(;)で分 ける。セミコロンの前 はホスト系 統 で、セ
ミ コ ロ ン の 後 ろ は ド ナ ー 系 統 ( 破 壊 さ れ た 遺 伝 子 を 持 つ ES 細 胞 系 ) と す る 。 2 系 統 が
donor/host の関 係 にない場 合 、F1 表 記 と同 じように、最 初 の交 配 で使 ったメスをセミコロンの
前 に記 述 する。ラボコードと番 号 を使 って異 なる研 究 室 あるいは同 じ研 究 室 で育 成 された系
統 を区 別 する。この表 記 は、まだ近 交 系 として確 立 されない「遺 伝 的 混 合 状 態 のストック」に
対 して使 われるので、F20 以 上 になるまでは近 交 系 とはみなされない。
例
B6;129– Acvr2 t m 1 Zu k
標 的 破 壊 (ノックアウト)された Acvr2 遺 伝 子 を持
つ 129 ES cell line と C57BL/6J とから得 られた混
合 系 統 である。
例
B6Brd;B6Dnk;B6N- Tyr c - B r d Jph3 t m 1 a ( K O M P) W t s i / Mbp
Jph3 遺 伝 子 の標 的 変 異 を持 つ混 合 型 系 統 。この
系 統 は 、 C57BL/6Brd- Tyr c - B r d 、 C57BL/6Dnk 、
お よ び C57BL/6N の 混 合 で 、 Mouse Biology
Program UCD (Mbp)で維 持 されていることを意 味
する。
二 つ以 上 の系 統 で作 られるかあるいは未 知 の遺 伝 資 源 に由 来 する突 然 変 異 系 統 は「混
合 型 」近 交 系 と考 えられ、STOCK の後 にスペースを設 け(ハイフンではない)、突 然 変 異 記 号
または異 常 染 色 体 をつけて表 記 するのが適 当 である。
8
例
STOCK Rb(16.17)5Bnr
Robertsonian translocation Rb(16.17)5Bnr をも
つ、遺 伝 的 背 景 が不 明 な、あるいは、複 雑 な近 交
系
そうした突 然 変 異 ストックが近 交 系 に達 した時 には、適 切 な系 統 表 記 にする。もし、その系
統 がもつ遺 伝 的 突 然 変 異 についてすべて大 文 字 のシンボルを使 って表 記 される場 合 は、短
くする。その理 由 は、系 統 名 の変 更 は、(強 く推 奨 される)、オプショナルであるからであって、
STOCK として表 記 されている系 統 の中 には近 交 系 になっているものもあるかもしれない。
例
gr (grizzled)遺 伝 子 と ji (jittery)遺 伝 子 を持
JIGR/Dn
ち、混 ざった遺 伝 背 景 を持 つ近 交 系
突 然 変 異 の対 立 遺 伝 子 または染 色 体 異 常 が毎 世 代 あるいは 1 世 代 おきに変 異 遺 伝 子 を
持 つ動 物 を F1 雑 種 へ交 配 することによって維 持 されている場 合 、そのストックは F1 であるけ
れども F1 をうしろにつけないで、適 切 な対 立 遺 伝 子 または染 色 体 異 常 の記 号 をつけて表 記
する。
例
B6C3Fe a/a–Dh
Dh (dominant hemimelia) が 毎 世 代 ( B6C3Fe
a/a) F1 へ交 配 することによって維 持 されている。
ストックそれ自 身 は F1 ではない。
4.3. リコンビナントコンジェニック系 統 Recombinant Congenic Strains
リコンビナントコンジェニック(RC)系 統 は、2 つの近 交 系 の交 配 と、それに続 けて一 方 の親
系 統 (レシピエント)への数 回 (通 常 2 回 )の戻 し交 配 を行 って、さらに、いかなるマーカーなど
の選 択 もすることなしで近 親 交 配 を行 って育 成 される(Demant and Hart, 1986) 。そうした近
交 系 では、ドナーのホモ型 断 片 がレシピエント系 統 ゲノムのバックグラウンドに散 在 している(ド
ナー系 統 のゲノムの量 はバッククロスの回 数 に依 存 していて、例 えば 2 回 のバッククロスであれ
ば平 均 12.5%である)。 RC 系 統 は、理 論 上 の近 交 係 数 が近 交 系 のものと同 等 になれば、十
分 に近 交 系 としてみなされるべきである。1回 の戻 し交 配 による世 代 は兄 妹 交 配 の 2 世 代 に
相 当 すると考 えられる。このように、2 回 のバッククロスで育 成 された系 統 (N3, equivalent to
F6)をさらに 14 世 代 兄 妹 交 配 を行 うと十 分 に近 交 系 とみなされる。 RC 系 統 は、2 系 統 の略
記 号 (大 文 字 )で表 記 するが、レシピエント系 統 を先 に記 述 し、小 文 字 の c をその後 に、そし
て、ドナー系 統 を記 述 する。
例
CcS
BALB/c をレシピエントとして、STS をドナーとして作 製 された。
9
RC 系 統 がいくつかある場 合 、連 番 をつけて表 す。
例
CcS1, CcS2, CcS3 etc.
2 番 目 の系 統 の略 が数 字 で終 わる場 合 (例 129P2), 連 番 と区 別 するために、ハイフンを
使 う。
4.4. アドバンスドインタークロスライン Advanced Intercross Lines
Advanced intercross lines (AIL) は、2 系 統 間 のF2 世 代 を作 ることによって育 成 される。
ただし、その後 に続 く各 世 代 では兄 妹 交 配 を避 けながらインタークロッシングを行 う ( Darvasi
and Soller, 1995 )。この系 統 の目 的 は連 鎖 している遺 伝 子 間 の組 換 えの確 率 を上 げるため
である。
シンボルは、このラインを育 成 した研 究 室 のラボコードを含 め、続 けてコロン(:)を表 記 し、さ
らにコンマ(,)で区 切 った 2 近 交 系 の略 記 号 を続 ける。さらに、ハイフン(‐)をつけ、世 代 数
(G3, G4, etc)を記 述 する。
例
Pri:B6,D2–G#
Pri で育 成 された C57BL/6 と DBA/2 の AIL ストック。世 代 と共 に
G 番 号 は増 える。
5.コアイソジェニック、コンジェニックおよび分 離 型 近 交 系 Coisogenic, Congenic,
and Segregating Inbred Strains
近 交 系 がゲノムの小 部 分 だけで違 うようにする方 法 としていくつかある。
5.1. コアイソジェニック系 統 Coisogenic Strains
この系 統 は、基 の系 統 に起 こった突 然 変 異 遺 伝 子 座 だけで違 う。ES 細 胞 の標 的 破 壊 遺
伝 子 を含 む系 統 は、作 製 に使 った同 じ近 交 系 の亜 系 統 へ交 配 され、維 持 され場 合 はコアイ
ソジェニックとみなされる。ただ、ゲノムのどこかで突 然 変 異 が起 こっている可 能 性 を無 視 でき
ないことを考 慮 する。同 じように、化 学 あるいは放 射 線 によってある近 交 系 に誘 導 された突 然
変 異 遺 伝 子 を持 つ 場 合 もコアイソジェニックと考 える。ただし、その 突 然 変 異 以 外 に別 の変
10
化 もあろう。コアイソジェニック系 統 は、親 系 統 に定 期 的 に戻 し交 配 をしないと遺 伝 的 浮 動 に
より、時 間 と共 に遺 伝 的 変 化 がゲノム中 に蓄 積 していくことが考 えられる。
コアイソジェニック系 統 は、適 切 に亜 系 統 シンボルを使 い、違 いのある遺 伝 子 (イタリック表
記 )をそれに続 けてハイフンで結 んで系 統 表 示 法 に従 って表 される。
例
129S7/SvEvBrd– Fyn t m 1 S o r
Fyn 遺 伝 子 の標 的 変 異 が AB1 ES 細 胞 (129S7/SvEvBrd)由 来 で
作 製 された。キメラ動 物 が 129S7/SvEvBrd へ交 配 され、このコアイソ
ジェニック系 統 で遺 伝 子 が保 存 されている。
例
C57BL/6JEi– tth
C57BL/6JEi で起 こった tilted head 突 然 変 異 を持 つがん
ケースによっては、そういった突 然 変 異 遺 伝 子 がヘテロ型 で保 存 されることもある。系 統 表
記 は育 種 方 法 を反 映 していなこともあるし、そのマウスあるいはラットの目 的 とする遺 伝 子 の遺
伝 子 型 を表 していないこともある。
例
C57BL/6J– Aqp2 c p h
Aquaporin 2 遺 伝 子 で の 先 天 性 進 行 性 水 腎 症 ( congenital
progressive hydronephrosis)突 然 変 異 がC57BL/6Jに生 じた。コア
イソジェニックではあるが、 ホモ型 個 体 は一 般 に幼 若 で致 死 。
Aqp2 c p h /+ x Aqp2 c p h /+(ヘテロ型 同 士 の交 配 )で維 持 される。
突 然 変 異 がコアイソジェニック系 統 で起 こってからの近 交 世 代 数 を示 す場 合 は、突 然 変 異
が起 こってからの世 代 数 をそれ以 前 の世 代 数 の後 ろに付 け加 えて表 す。
例
F110 + F23
ある近 交 系 において F110 世 代 で突 然 変 異 が起 こり、その後 兄 妹
交 配 を 23 代 続 けていることを示 している。
5.2. コンジェニック系 統 Congenic Strains
コンジェニック系 統 は、ある近 交 系 (レシピエントすなわち遺 伝 的 背 景 となる)へドナー系 統
からある特 殊 なマーカーを選 択 しながら繰 り返 し戻 し交 配 を行 って育 成 される ( Snell 1978 ,
Flaherty 1981 ) 。組 織 適 合 抗 原 遺 伝 子 座 で違 っていて、それ故 にお互 いの移 植 片 に対 し
11
て抵 抗 性 があるコンジェニック系 統 はコンジェニックレジスタントラインと呼 ばれる。
この方 法 で育 成 された系 統 は、バックグラウンド系 統 へ少 なくとも 10 回 戻 し交 配 が行 われ
た場 合 、コンジェニック系 統 とみなされる。なお、最 初 の交 雑 仔 またはF1 世 代 は 1 世 代 と数 え
る。コンジェニックになった時 点 で、その系 統 に導 入 されたドナーゲノムであって、連 鎖 してい
ないゲノムが残 っている量 は、1%以 下 であろう(選 択 した遺 伝 子 あるいはマーカーに連 鎖 し
ているドナーのゲノム量 は減 少 するのが遅 く、おおよそ、200/Nである。ただし、Nは、戻 し交 配
の世 代 数 でN>5)(Flaherty 1981; Silver 1995 )。
マーカーを補 助 として使 う交 配 またはマーカーを補 助 として使 う選 択 交 配 は、スピードコン
ジェニックとして知 られており、5 世 代 という少 ない世 代 で通 常 の 10 回 の戻 し交 配 に匹 敵 する
コンジェニック系 統 を作 ることが可 能 である ( Markel et al., 1997 ; Wakeland et al., 1997 )。
適 切 なマーカー選 択 が使 われるという条 件 で、もし、選 択 された遺 伝 子 座 または染 色 体 部 位
に連 鎖 していないドナー系 統 の貢 献 が 0.01 よりも少 ない場 合 はコンジェニック系 統 と呼 ばれ
る。原 則 として、最 初 の出 版 の中 ではスピードコンジェニック系 統 の表 記 として、その系 統 のコ
ン ジェ ニ ッ ク の 度 合 い を 定 義 す る た め に 使 わ れた マ ー カー の 数 と そ れ らの 間 の スペ ー ス( 距
離 )が述 べられるべきである。スピードコンジェニックは完 全 なマーカー分 析 に依 存 しているし、
実 験 プロトコールによって多 少 変 化 することから、近 交 系 としての状 態 を理 解 する場 合 注 意
が必 要 である。
コンジェニック系 統 は、3 つの部 分 から構 成 される記 号 で表 記 される。レシピエント系 統 の
完 全 な、また、省 略 した記 号 はドナー系 統 (対 立 遺 伝 子 または突 然 変 異 遺 伝 子 のオリジンで
あって、そのコンジェニック系 統 を構 成 している直 接 の資 源 であるかもしれないし、そうでない
かもしれない)の略 記 号 とピリオドで分 ける。
突 然 変 異 が起 こった染 色 体 が未 知 の場 合 、例 えば、ドナーが近 交 系 でないか、複 雑 な場
合 、あるいは、F1 雑 種 のようなケースでは、コンジェニックをあらわすために記 号 として Cg を使
う。ドナー系 統 の記 号 または Cg の使 用 は、コンジェニック系 統 とコアイソジェニック系 統 と区 別
するために必 須 である。Cg は、同 じホスト(背 景 )でありながらそれぞれのドナー系 統 は異 なる
系 統 へ別 々に戻 し交 配 された 2 種 類 のコンジェニック系 統 を一 緒 に交 配 して作 られる系 統 を
標 記 する場 合 にも使 われる。それぞれのケースで、Cg の使 用 は系 統 名 の中 の対 立 遺 伝 子 が
一 つ以 上 の資 源 からき たこと を示 す 。系 統 名 と ドナー系 統 から来 た 異 なる対 立 遺 伝 子 の記
号 (イタリック表 記 )を分 けるためにハイフンをつける。
例
B6.AKR– H2 k
C57BL/6 系 統 にAKR/Jの H2 k が導 入 された。
LEW.BN– RT1 n
BNの RT1 n がLEWに導 入 された。
DA.F344– Cia5
F344 系 統 の Cia5 QTL が DA 系 統 に導 入 された。
B6.Cg- Kit W - 4 4 J Gpi1 a ドナー系 統 がミックス状 態 で、C3H/HeJ由 来 の Kit 遺
伝 子 と CAST/Ei 由 来 の Gpi1 対 立 遺 伝 子 が
C57BL/6 系 統 に導 入 された。
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もし、同 じレシピエントバ ックグラウン ドとドナー 系 統 に由 来 し、同 じく 異 なる対 立 遺 伝 子 を
持 つようなラインがいくつかある場 合 、個 々のラインは系 統 名 の後 にスラッシュをつけ、続 けて
連 番 とラボコードを表 記 する。
例
C.B10- H2 b /1Sn
C.B10- H2 b /2Sn
もし、異 なる対 立 遺 伝 子 が第 3 の系 統 を経 由 した場 合 、その系 統 をカッコ内 に記 入 する。
近 交 系 、最 初 のコンジェニック系 統 、または、コンジェニック近 交 系 がホストの背 景 系 統 やド
ナー系 統 よりもむしろマイナーな貢 献 をしている可 能 性 がある場 合 にカッコを使 って示 す。近
交 系 あるいはコンジェニック系 統 の表 記 の後 に付 加 的 系 統 を一 つの省 略 記 号 でカッコ内 に
示 す。複 数 、混 合 型 、または、不 明 の系 統 が関 係 している場 合 は、記 号 「Cg」をカッコに入 れ
て示 す。もし、ドナー系 統 が Cg であらわされる場 合 は、他 のことの中 途 で起 こる情 報 は含 まな
いかもしれない。
例
B6(C)- mut
あ る 突 然 変 異 遺 伝 子 ( こ こ で は mut と 表 記 ) が 近 交 系 ( 例 え ば
C57BL/6)に由 来 し、いったん他 系 統 (例 えば BALB/c)に移 され、
その後 交 配 によりもとの背 景 系 統 へ戻 された。
C.129P(B6)– Il2 t m 1 H o r
129ES を使 って作 成 された標 的 破 壊 遺 伝 子 が B6;129P 混 合 背 景
から BALB/c へ移 された。
B6(Cg)- mut
C57BL/6 で生 じた突 然 変 異 が、交 配 を経 て混 合 あるいは不 明 の遺
伝 背 景 に移 され、その後 B6 系 統 にバックスロスで移 された。
B6(C)- mut
ある突 然 変 異 遺 伝 子 ( mut )が別 の突 然 変 異 遺 伝 子 を持 つコンジ
ェニック系 統 (例 えば B6.C- m )に生 じ、オリジナル突 然 変 異 ( m )をも
つ新 しい系 統 として育 成 された。
備 考 :もしオリジナル突 然 変 異 が除 かれたことを証 明 できない場
合 、記 号 は B6.C m - mut となる。
B6(C)- mut
あ る 突 然 変 異 遺 伝 子 ( mut ) が 雑 種 ま た は 混 合 背 景 系 統 ( 例 え ば
B6CF1 ) に 生 じ 、 そ の 変 異 遺 伝 子 を 親 系 統 の 一 つ ( 例 え ば
13
C57BL/6)へ戻 し交 配 されて育 成 された。
B6.C(Cg)- mut
ある突 然 変 異 遺 伝 子 ( mut )がある系 統 (例 えば BALB/c)から別 の
系 統 (例 えば C57BL/6J)へ戻 し交 配 されたが、混 合 背 景 系 統 で生
じたかあるいは複 雑 な歴 史 を持 っていて染 色 体 断 片 の由 来 が不 明
確 である。
移 された染 色 体 の一 部 がいくつかの遺 伝 子 あるいは複 数 の DNA 遺 伝 子 座 で明 らかにで
きる場 合 、その染 色 体 部 分 はもっとも近 いマーカーならびにもっとも遠 いマーカーを掲 げること
によって記 号 で表 すことができる。なお、括 弧 の中 の染 色 体 部 分 のマーカーをハイフンでつな
ぐ。
例
B6.Cg–( D4Mit25–D4Mit80) /Lt
アウトブレッドもしくは混 合 系 統 の第 4 染 色 体 の
( D4Mit25–D4Mit80) を C57BL/6J へ導 入 したコンジェニック系
統
B6.CBA–( D4Mit25–D4Mit80 )/Lt
CBA/J 由 来 の染 色 体 部 分 (カッコ内 )を B6 に導 入 したコンジェ
ニック系 統
染 色 体 断 片 を示 すマーカーは、検 査 した最 も遠 いものともっとも近 いものを記 述 するだけで
よい。これは、もっと近 いあるいは遠 い未 検 査 マーカーがないということではない。もし、同 じラ
ボあるいは異 なるラボで同 じ染 色 体 部 分 を含 み、方 法 を変 えても区 別 が付 かない数 ラインが
作 られた場 合 は、スラッシュ、連 番 およびラボコードをつけて区 別 する。
必 要 に応 じ、戻 し交 配 世 代 数 については N と数 字 を括 弧 に入 れて、系 統 名 の後 ろに置 く。
世 代 を系 統 名 に組 み入 れないようにする。コンジェニックの初 期 では、戻 し交 配 世 代 数 が系
統 情 報 に明 示 される場 合 に限 り N5 でコンジェニック表 記 をする。さらに複 雑 な交 配 システム
を使 う必 要 がある場 合 、世 代 は NE(N equivalents)で表 し、 コンジェニック系 統 としてみなさ
れるには NE10 が要 求 される。例 えば、近 交 系 のバックグラウンドにある劣 性 遺 伝 子 を導 入 す
る場 合 、10 回 の戻 し交 配 とその後 のホモ型 個 体 を得 るためのインタークロッシングを行 った後
に、その系 統 は NE10 となる。あるコンジェニック系 統 が戻 し交 配 の後 に兄 妹 交 配 で維 持 され
ている場 合 、兄 妹 交 配 世 代 数 は戻 し交 配 世 代 数 の後 につけて表 す(例 N10F6:戻 し交 配
10 回 の後 に兄 妹 交 配 6 世 代 を行 った。例 NE12F17:戻 し交 配 12 回 に匹 敵 する複 雑 な交
配 を行 い、その後 兄 妹 交 配 を 17 回 行 った。) 。
14
スピードコンジェニックを作 った場 合 、N は 10 よりも小 さいであろうが、N のうしろに実 数 を括
弧 の中 に入 れて表 記 すること、また、育 種 の方 法 と使 われたマーカーの詳 細 については出 版
物 あるいはデータベースなどに詳 細 に書 くべきである。
5.3. 染 色 体 置 換 系 統 またはコンソミック系 統 Consomic Strains
染 色 体 置 換 系 統 またはコンソミック系 統 ( Nadeau et al., 2000 )は、ある近 交 系 にある染 色
体 一 本 を丸 ごとバックスロスによって導 入 して育 成 される。染 色 体 置 換 系 統 という用 語 は、コ
ンソミック、サブコンソミックおよびコンプラスティック系 統 に共 通 して使 われる。染 色 体 置 換 系
統 を育 成 するためには、一 本 の染 色 体 あるいは染 色 体 の一 部 が移 される。一 方 、コンジェニ
ック系 統 の場 合 は遺 伝 子 あるいはマーカー、または、ある遺 伝 子 または領 域 を含 むゲノムの
一 部 を移 すことである。
5.3.1.コンソミック系 統
コンソミック系 統 は、一 本 の染 色 体 を別 の近 交 系 へ戻 し交 配 を繰 り返 すことにより移 して育
成 される。コンジェニック系 統 と同 様 、少 なくとも 10 回 の戻 し交 配 が必 要 で、F1 世 代 を 1 世 代
と数 える。常 染 色 体 については、ドナーの染 色 体 とレシピエントの染 色 体 に組 換 えがないこと
を確 認 するために仔 世 代 について遺 伝 子 型 判 定 をする必 要 がある。コンソミック系 統 の表 記
はHOST STRAIN–Chr # D O N O R
例
STRAIN
とする。
SHR–Chr Y B N
この系 統 では、BN の Y 染 色 体 が SHR に戻 し交 配 で導 入 された。
例
C56BL/6J–Chr 19 S P R
M.spretus Chromosome 19 が C57BL/6J に戻 し交 配 で導 入 され
た。
例
C56BL/6J–Chr 1 A / J Chr 3 D B A / 2 J
A/J の Chromosome 1 と DBA/2J の Chromosome 3 が戻 し交 配
により C57BL/6J に導 入 された。
ある系 統 の染 色 体 1 本 を他 の系 統 へ移 すことがその染 色 体 に含 まれる致 死 効 果 によって
不 可 能 なことがある。例 えば、PWD/Ph 系 統 の個 々の染 色 体 を C57BL/6J へ移 そうとしたコン
ソミックセットの場 合 、Chr 11 と Chr X はそのまま移 せなかった。そういう場 合 、染 色 体 の部 分
について小 数 点 を付 け、1,2,3というように表 示 する。そのようにすると Chr 11 の部 分 は次 の
ようになる。
例
C57BL/6J-Chr 11.1 P W D / P h /ForeJ
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コンソミック系 統 はコンセプトと育 成 に関 してコンジェニック系 統 と似 ている。コンソミックの命
名 規 約 は、ホスト系 統 名 は省 略 しないでピリオドなしでドナー系 統 を続 け、起 源 となった系 統
は肩 付 きで表 す。肩 付 き部 分 の全 文 字 を大 文 字 で表 すことと染 色 体 の文 字 と番 号 ならび肩
付 き文 字 をイタリックにしないことは、対 立 遺 伝 子 記 号 と染 色 体 識 別 体 を区 別 するためのもの
である。
5.4. 分 離 型 近 交 系 Segregating Inbred Strains
分 離 型 近 交 系 では、目 的 の遺 伝 子 または突 然 変 異 がヘテロ型 の状 態 で維 持 されている。
それらは近 親 交 配 で育 成 され(通 常 は兄 妹 交 配 )、毎 世 代 ヘテロ型 が選 ばれる。分 離 してい
る遺 伝 子 座 はその系 統 の標 準 的 遺 伝 子 型 の部 分 であるため、近 交 系 と同 じ表 記 がなされる。
(5.1Coisogenic Strains を参 照 )。分 離 する毛 色 遺 伝 子 が近 交 系 の正 常 な表 現 型 の一 部 で
あるとすると、系 統 名 に記 述 する必 要 はない(下 記 を参 照 )。近 交 系 の遺 伝 子 型 の詳 細 は出
版 物 およびデータベースで入 手 可 能 である。
例
129P3/J
このマウス系 統 では、tyrosinase遺 伝 子 の allelesである albino
( Tyr c ) とchinchilla ( Tyr c – c h )が分 離 している。
WB/Re
このマウス系 統 では、kit oncogene ( Kit W )の優 性 白 斑 が分 離 し
ている。
カップリングまたはリパルジョンの状 態 で連 鎖 する対 立 遺 伝 子 を持 つ系 統 は、それら連 鎖 し
た遺 伝 子 の状 態 が分 かるように表 記 されるべきである。
例
B6.Cg– m Lepr d b /+ +
この近 交 系 では、 m と Lepr d b が一 つの染 色 体 上 に、野 生 型 は別
の染 色 体 にあるいわゆるカップリングの状 態 にある。
例
B6.Cg– m +/+ Lepr d b
この近 交 系 では、 m と Lepr d b が別 の相 同 染 色 体 上 にあるいわゆるリ
パルジョンの状 態 にあり、バランス型 系 統 と呼 ばれる。
5.5. コンプラスティック系 統 Conplastic Strains
コンプラスティック系 統 は、交 配 によって一 つの系 統 の核 ゲノムを別 の系 統 の細 胞 質 へお
いたものである。表 記 は NUCLEAR GENOME–mt C Y T O P L A S M I C
GENOME.
である。
16
例
C57BL/6J–mt B A L B / c
核 ゲノムが C57BL/6J であり、細 胞 質 (ミトコンドリア)ゲノムが BALB/c
である。
C57BL/6J オスマウスと BALB/c メスを交 配 することにより育 成 された系 統 で、仔 のメスを毎
世 代 C57BL/6J オスへ戻 し交 配 することにより育 成 される。コンジェニック系 統 と比 較 して、少
なくとも 10 世 代 の戻 し交 配 が必 要 で、F1 世 代 を 1 世 代 と数 える。
6.アウトブレッドおよびクローズドコロニー
6.1.アウトブレッド
アウトブレッドストックは、遺 伝 的 には定 義 づけされない。つまり、アウトブレッドストックから任
意 に選 んだ 2 個 体 が同 じでないからである。アウトブレッドでは、意 図 的 に兄 妹 交 配 や近 親 個
体 同 士 の交 配 が行 われているわけではない。アウトブレッドの目 的 は、ヘテロ性 を最 大 に保 つ
ために行 われる。アウトブ レッドを使 う利 点 と しては、相 対 的 に寿 命 が長 い、病 気 に強 い、高
い繁 殖 性 を示 すなどの理 由 で、低 コストであることである。それらは、遺 伝 子 型 が重 要 でない
実 験 あるいは任 意 交 配 集 団 が望 ましい実 験 に有 用 である。アウトブレッドでは、共 通 の系 統
ルーツの前 にその系 統 を維 持 している機 関 を示 すラボコードをつけて表 す。
例 Tac:ICR
タコニックファーム(Taconic Farms, Inc)が維 持 している ICR のアウトブレ
ッド
例 Hsd:NIH
Swiss ハーランスプラグドーレイ(Harlan Sprague Dawley, Inc)が維 持 し
ている NIH スイスアウトブレッド
6.2.クローズドコロニー
クローズドコロニーは限 られた遺 伝 的 分 化 を含 んでおり、兄 妹 交 配 でもヘテロ性 を最 大 にす
るような選 択 交 配 が行 われているわけでもない。すべての交 配 はコロニーの個 体 間 で行 われ、
子 孫 を残 す親 (breeders)は特 に選 択 されることがない。世 代 が変 わっても他 のストックから個
体 を導 入 することなく維 持 される。
クローズドコロニーは、維 持 が困 難 な変 異 遺 伝 子 をより容 易 に維 持 する方 法 として確 立 され
るかもしれない。その場 合 、一 定 の遺 伝 的 背 景 を保 ち、一 方 では低 い繁 殖 能 力 のために兄
妹 交 配 を避 ける。注 意 点 として、クローズドコロニーは、恒 久 的 な交 配 システムを記 述 すること、
また、たとえば、近 交 系 が一 時 的 に繁 殖 困 難 に陥 った場 合 に一 世 代 だけその系 統 に近 い系
統 と交 配 するというようなケースに応 用 しないことである。
クローズドコロニーの表 記 は系 統 名 と突 然 変 異 で構 成 され、クローズドコロニーを示 す[cc]を
17
最 後 につける。
例 :C57BL/6Ta- Bmp4 t m 1 B l h [cc]
Bmp4 t m 1 B l h 遺 伝 子 をもつC57BL/6Tacのクローズドコロニーマウス
7. ES 細 胞 株 および iPS 細 胞 株
多 くの ES 細 胞 株 は、institution identifier および plate location に基 づいて突 然 変 異 を
作 る large-scale プロジェクトで名 づけられている。しかし、他 の ES 細 胞 株 は特 異 的 に存 在 し
ている系 統 に由 来 するか iPS として作 られている。これら細 胞 株 の命 名 は、申 し合 わせに従 う
べきである。それは、以 下 に示 した通 りである。
系 統 の表 記 、ES 細 胞 (または iPS 細 胞 )の連 番 、および LabCode であらわす。
ES 細 胞 株 : Strain-ES#/Labcode
例 : SC-Tg(EGFP)/Rrrc-ES1234/Kyo
ES 細 胞 株 の由 来 は SC-Tg(EGFP)/Rrrc である。
最 初 に作 製 したものから番 号 を付 けた ES 細 胞
は、ES1234 である。ES 細 胞 のもとは、Kyo であ
る。
iPS 細 胞 株 : Strain-iPS#/Labcode
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