26. 荷重履歴による材料特性変化を考慮した疲労き裂伝播評価について 28 15 10 5 20 (B-1) ▲ :PRPG △ :Pclose ● :Pmax 〇 :Pmin Load P (kN) 20 15 5 10 4 10 5 10 6 10 Number of cycles N(cycle) Fig.1 Relationship between crack length and number of cycles (破線はスパイク載荷を示す) 20 10 40 Subtract strain Δε (B-2) 4.ヒステリシスループによる疲労き裂先端挙動の評価 昨年までの研究での処理方法により,き裂先端が閉口す る閉口点荷重(Pclose)と,再引張り塑性域が生じ始める荷重 (PRPG)を求めることができる。一定振幅荷重試験とスパイク 荷重試験の最大荷重(Pmax),最小荷重(Pmin),Pclose,PRPG〜 き裂長さ関係を Fig.3(A),Fig.3(B)に示す。 一定振幅荷重載荷試験では,Fig.1 よりき裂はほぼ定常 進展しており,Fig.3(A)での PRPG と Pclose は大きく変動してい ない。次に,スパイク荷重試験ではスパイク荷重直後は, Fig.1 より疲労き裂進展が減速,停留状態にあり,Fig.3(B)で は,PRPG とPclose が Pmax へ近づいている。これは,き裂伝播に 寄与する荷重範囲が減少していることを意味しており,ブロ ック荷重試験でも同様の現象が認められた。荷重振幅が小 さくなると,直前の荷重で形成された大きな塑性域の影響 により,き裂伝播に寄与する荷重範囲が減少していることが 考えられる。 Load P (kN) Crack length a(mm) (A) 22 昨年までの研究により,除荷過程で圧縮域が現れる時に は,き裂先端に開閉口挙動が存在し,ループの低荷重域 に しっぽ 現れることが明らかになっている。一定振幅荷 重試験において疲労き裂が定常進展している状態のルー プ Fig.2(A)では, しっぽ が現れていることから,開閉口 挙動が存在していることが分かる。また,ランダム荷重試験 における(B)点のループをFig.2(B-1),Fig.2(B-2)を示す。 前述のループとの違いは,一波形おきに荷重が変動する ため,閉じないループとなる。Fig.2(B-1),Fig.2(B-2)のル ープには,大きさの異なるしっぽが現れている。つまり, Fig.2(B-1)のループは Fig.2(B-2)のものに比べ,大きな 圧縮荷重域の影響を受けてき裂が進展過程にあることがわ かる。よって,これを把握することが疲労き裂伝播メカニズ ムの解明につながるものと考えられる。 一定振幅荷重試験 50 24 (B)Random loading Fig.2 Hysteresis curves of one cycle スパイク荷重試験 (破線:スパイク載荷) (B) 26 (A)Constant loading ランダム荷重試験 60 601519 田北 克明 18 Subtract strain Δε 3.疲労き裂伝播挙動の評価 き裂長さの算出は,試験片形状が同じであればコンプラ イアンス〔c〕とき裂長さ〔a〕の関係が変化しないことから,コ ンプライアンスを逐次算出することにより,ビーチマーク法 でa-c関係を求め,き裂長さを推定することができる。き裂 伝播試験より得られた,一定振幅荷重試験とスパイク荷重, そしてランダム荷重のき裂長さ〜繰返し回数関係を,Fig.1 に示す。さらに,この図中の(A),(B)の時点でのヒステリシス ループ(以下 ループ と呼ぶ)を Fig.2 に示す 70 30 20 0 2.疲労き裂伝播試験概要 試験片は,溶接構造用軟鋼(SM400B)を用い,板厚10 ㎜, 試験片基準幅150 ㎜のコンパクトテンション(CT)型とした。 疲労き裂伝播試験では,それぞれ載荷速度 10Hz の引 張り sin 波荷重を負荷し,一定振幅荷重試験,周期的に荷 重範囲が変動するブロック荷重試験,及びスパイク荷重試 験を行った。また,ランダム荷重も負荷し,試験を行った。 80 25 Load P (kN) 1.研究目的 鋼構造物には構造的不連続部や溶接止端部などの局部 的応力集中源が多数存在する。この応力集中源に繰返し 荷重が作用すると,疲労き裂が早い段階で発生,進展し, 破壊に至ることが多い。 この疲労き裂の先端では,載荷過程において引張り塑 性域,除荷過程において圧縮塑性域が繰返し形成される ことにより,疲労き裂が進展することが明らかになって いる。しかし,疲労き裂先端微小領域における伝播挙動 は十分に解明されていないのが現状である。 そこで本研究では,疲労き裂先端微小領域での弾塑性 挙動による新しい見地から伝播メカニズムを把握するため, 丸棒試験片による静的圧縮・引張り試験により,予圧縮塑性 変形が引張り変形能に及ぼす影響を調査する。また,実際 の構造物に起こりうる不規則な繰返し荷重環境を想定し,ラ ンダム荷重載荷試験を行う。この結果を一定振幅荷重,ブ ロック荷重,スパイク荷重載荷試験と比較,検討することに より,疲労き裂先端での伝播挙動の解明を行う。 Load P (kN) 600523 長浦 弘典 15 10 5 7 35 40 45 50 55 60 65 70 75 Crack length a(㎜) (A)Constant loading 80 85 35 40 45 50 55 60 65 70 75 Crack length a(㎜) (B)Spike loading Fig.3 Relationship between each load and length of fatigue crack 80 85 5.ランダム荷重下での疲労き裂伝播挙動 σ y = Eε ec (σ max − σ y ) = Fε pc …(1) σy :降伏応力 σmax:最大圧縮応力 ε c = ε ec + ε pc εec :圧縮弾性ひずみ εpc :圧縮塑性ひずみ εc :予圧縮ひずみ Table.1 Result of the tensile examination after a compressive examination 応力集中率 α=1.00 (試験片①) α=1.52 ● :Pmax 〇 :Pmin (試験片②) ▲ :PRPG 30 α=2.56 (試験片③) 24 22 20 26 24 22 20 18 18 3000670 3000676 3000670 3000680 Number of cycles N(cycle) 3000676 3000680 Number of cycles N(cycle) Fig.5 Relationship between each load and number of cycles Fig.4 Relationship between load and number of cycles 6.丸棒静的圧縮・引張り試験概要 丸棒圧縮・引張り試験には,応力集中が異なる3種類の 試験片を用いた。試験片形状を Fig.6 に示す。供試材料は 溶接構造用軟鋼(SM400B)を用い,図中のαは応力集中 率である。 予め静的圧縮試験により圧縮塑性変形を与え,その後, 静的引張り試験を行った。予圧縮なしの場合と破断伸びを 比較して,予圧縮塑性変形の影響を調査した。 10 20 試験片番号 ① (α=1.00) 10 50 20 ② 10 R10 (α=1.52) 20 ③ 60° (α=2.56) Fig.6 Shape of round bar specimen (Unit:㎜) 7.丸棒静的圧縮・引張り試験結果 試験後の破断伸びは,実際に微小部分の伸びを計測す ることは不可能であるため,破断面面積を計測し,体積 一定則に基づき(1)式により伸びに換算した。圧縮条件及 び算出結果を Table.1 に示す。また,予圧縮ひずみ〜破断 伸び関係を Fig.7 に示す。グラフ中の網目部は,予圧縮ひ ずみに対する破断判定の 95%信頼性区間である。 0 73.31 4.76 1605 73.16 4.72 最大圧縮応力 87877 71.37 4.32 予圧縮なし 0 63.27 2.98 3.09 降伏応力程度 1725 64.09 最大圧縮応力 198595 51.70 1.85 予圧縮なし 0 36.50 1.00 降伏応力程度 4019 18.77 0.40 最大圧縮応力 68241 0.81 3 2 1 0 0.1 0.2 Compressive strain εc α=1.00 破断伸び ⊿L(㎜) 予圧縮なし 4 0 絞り率 RA(%) 降伏応力程度 5 –1 予圧縮ひずみ ε(μ) 圧縮条件 Elongation ⊿ L(㎜) 26 Elongation ⊿ L(㎜) 28 Load P (kN) Load P (kN) (破線はその荷重範囲の中心を示す) 30 28 F :塑性係数 F=2.0×103 (N/㎜ 2) Elongation ⊿ L(㎜) ランダム荷重試験で負荷した荷重の波形をFig.4に示す。 また最大荷重,最小荷重,PRPG〜き裂長さ関係を Fig.5 に示 す。Fig.5 より,大きな荷重振幅の直後に荷重振幅が小さく なると,PRPG が上昇しているのが分かる。この現象はスパイ ク荷重試験,ブロック荷重試験でも確認でき,この時,疲労 き裂は減速,または停留状態にある。また,Fig.1 のき裂長 さ〜繰返し回数関係において他の試験と比較すると,き裂 長さが 65mm 程度まで進展した以降でも,き裂進展速度が 緩やかになっている。つまり,ランダム荷重試験では,き裂 進展に寄与する荷重範囲が一時的な減少を繰返すため, 疲労き裂進展が遅くなっているものと考えられる。 E :弾性係数 E=2.0×105 (N/㎜ 2) 5 4 3 2 1 0 –1 0 0.1 0.2 Compressive strain εc α=1.52 0.01 5 4 3 2 1 0 –1 0 0.1 0.2 Compressive strain εc α=2.56 Fig.7 Relationship between the elongation and compressive strain Table.1 より,降伏応力を超える予圧縮荷重を作用させる ことで引張り変形能が減少していることがわかる。降伏応力 程度の予圧縮荷重では,応力集中が小さい試験片①及び 試験片②において引張り変形能に大きな変化が見られな かった。それに比べ,応力集中率が大きい試験片③につ いては,降伏応力程度の予圧縮荷重においても引張り変 形能が減少している。これは応力集中率が大きい場合,圧 縮塑性域が破断断面に集中して形成され,局部的断面の 引張り変形能が著しく低下したためであると考えられる。 応力集中率が小さい場合,試験片広域に圧縮塑性域が分 散して形成されたため,引張り変形能の減少が小さく, 破断伸びにあまり変化が見られなかったと考えられる。 予圧縮ひずみ〜破断伸び関係を示した Fig.7 からも,予 圧縮ひずみの増加に伴い破断伸びが線形的に減少してい ることがわかる。このような引張り変形能の減少が,疲労き 裂先端でも起きていると考えられ,この現象がき裂進展に 大きく影響していると考えられる。 8.結言 大きな予圧縮に伴う引張り変形能の減少を確認できた。 また,ランダム荷重下では,き裂進展に寄与する荷重範囲 が一時的に減少するため,一定振幅荷重試験と比較し,疲 労き裂進展に遅れを生じることを確認できた。 参考文献 豊貞雅宏,丹波敏男「鋼構造物の疲労寿命予測」共立出版
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